特許第6862561号(P6862561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862561
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】GPS妨害およびスプーフィングの検出
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/21 20100101AFI20210412BHJP
   G01S 19/49 20100101ALI20210412BHJP
   G01C 21/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01S19/21
   G01S19/49
   G01C21/16
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-537746(P2019-537746)
(86)(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公表番号】特表2019-532307(P2019-532307A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】US2017052249
(87)【国際公開番号】WO2018125328
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】15/277,625
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519100985
【氏名又は名称】ビーエイイー・システムズ・インフォメーション・アンド・エレクトロニック・システムズ・インテグレイション・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アルトリヒテル、ウェイン・ダブリュ.
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−280997(JP,A)
【文献】 特開2004−069536(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002477(US,A1)
【文献】 米国特許第08560218(US,B1)
【文献】 特開2001−174275(JP,A)
【文献】 特開2012−208033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14,
G01S 19/00−19/55,
G01C 21/00−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位システムにおける信号干渉を検出するためのシステムであって、
少なくとも2つの個別の航法システムをプロセッサにリンクすることができるインターフェースと;
前記インターフェースに結合された慣性航法システムと;
少なくとも1つの他の全地球測位システム受信機と動作可能な通信関係にあり、前記インターフェースに結合された全地球測位システム受信機と;
前記インターフェースに結合されたプロセッサと;
前記プロセッサに結合されたメモリ記憶デバイスと;
を備え、
前記メモリ記憶デバイスは、前記プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令を含む、システム。
【請求項2】
全地球測位システムの干渉の検出に応じて、ユーザに対する警告が表示される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記インターフェースは、リンク16戦術データネットワークを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、移動式戦闘用ユニットに組み込まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、固定式戦闘用ユニットに組み込まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、民間旅客機に組み込まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
統合型データ登録ソフトウェアが、前記メモリ記憶デバイスに記憶され、前記プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、前記干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令のための媒体を提供するために使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサに、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる前記命令は、前記自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなかったとすれば存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒を検索することによって干渉を検出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、
既知の干渉がない条件下で受信機によって受信される全地球測位システムのデータを監視することと;
記憶手段上に分析のために前記データを記憶することと;
後の時点で、干渉を示す特徴の存在を決定するために、時間期間にわたって、前記データを、純粋な慣性航法システムの位置出力と比較することと;
を備え、
干渉を示す前記特徴は、前記データにおいて規則的に再発生する最小値および/または最大値の時間的なずれを含む、方法。
【請求項10】
GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、
既知の干渉がない条件下で受信機によって受信される全地球測位システムのデータを監視することと;
記憶手段上に分析のために前記データを記憶することと;
後の時点で、干渉を示す特徴の存在を決定するために、時間期間にわたって、前記データを、純粋な慣性航法システムの位置出力と比較することと;
を備え、
前記比較することのステップが、様々な時間における、慣性航法システムによって与えられる位置と、全地球測位システムによって与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算することを備える、方法。
【請求項11】
前記特徴は、前記慣性航法システム(INS)のデータの決定性のある特徴を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
決定性のある前記特徴が、シューラー誤差や地球ループ誤差を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
慣性航法システムの動作の忠実度の高い誤差モデルが、前記慣性航法システムが通常の動作状態のもとでどのように振る舞うのかを規定するために使用され、それによって、前記慣性航法システムがいつ異常に動作しているのかを観察するための手段を提供する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、
慣性航法システムの位置データから真値の基準を差分することと;
差分されたデータを、純粋な慣性航法システムデータと比較することと;
純粋なINS位置と前記真値の基準との間の計算された位置の差について、スペクトルコンテンツを、または、等価的に自己相関関数を、評価することと;
前記自己相関関数の出力、または、パワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するために、前記データを評価することと;
を備える、方法。
【請求項15】
サンプリングされた前記自己相関関数が、緯度と経度の両方について計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
周波数領域における等価な表現が、緯度と経度についてのサンプリングされたパワースペクトル密度関数を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
アルゴリズムが、慣性航法システムの位置データと、全地球測位システムの位置データとの比較に基づく、純粋な慣性航法システムデータの位置誤差についての自己相関関数を計算するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記真値の基準が、全地球測位システムの受信機と関連付けられた位置データである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記自己相関関数の出力またはパワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するために前記データを前記評価することのステップは、前記自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなければ存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒を検索することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001] 本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2016年9月27日に出願された米国特許出願第15/277,625号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本開示は、全地球測位システム(Global Positioning System: GPS)に関連し、より具体的には、GPS妨害(jamming)およびスプーフィング(spoofing: なりすまし)の検出のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] ほとんどの既存の戦術的なシステムは、少なくとも部分的には、ナビゲーションおよび位置決めのために、正確なGPSデータの存在に、直接的または間接的に依存する。移動体は、例えば、統合されたGPS/INSソリューションを創出するために、一般的には、GPSデータを、移動体内の慣性航法システム(Inertial Navigation System: INS)によって生成されたデータと統合する。静止体は、その固定の位置を確立するためにGPSを利用することができる。
【0004】
[0004] 上述の移動体上で使用されるものなどの慣性航法システムは、GPSデータなどの外部の基準を必要とすることなく、推測航法(dead reckoning)によって、移動体の位置、向き、および、速度(運動の方向と速度)を連続的に計算するために、コンピュータと、動きセンサ(例えば、加速度計)と、回転センサ(例えば、ジャイロスコープ)とを使用する航法支援装置である。そのようなシステムは、一般的に、使用可能なデータを提供するために知られるべき開始位置、速度、および、向きに関する情報を必要とする。また、このようなINSは、推定における誤差がひどくなり、経時的に蓄積すると、ドリフトを受けやすい。
【0005】
[0005] 全地球測位システムは、位置データを更新することにおいて以前の推定値へのそれらの依存がないことにより、ドリフト誤差に影響されやすくはないので、多くの場合、頑健な位置と速度のデータを提供するために、INSと組み合わせて使用される。しかし、GPSは、地形やその他の可変要素による信号の損失または破損を経験することに影響されやすく、それは、GPSが、不正確な情報を提供したり、ある状態では機能することを完全に停止してしまったりという結果になり得る。これら期間の間、GPSデータの損失を緩和するために、INSが使用されることができる。
【0006】
[0006] しかし、GPS技術のユーザすべてによる主な懸念は、戦時の作戦の間に遭遇され得るような、意図的な干渉に対するGPS信号の相対的な感受性である。非常に安価で単純なハードウェアが、GPS信号へのプラットフォームのアクセスを拒む(妨害)ために有効に使用されることができると実証されており、ますます深刻になる脅威が、GPS受信機に誤った結果を生成させる(スプーフィング)ように干渉するための手段の開発に存在する。
【0007】
[0007] 意図的なGPSへの干渉(妨害とスプーフィング)の検出および/または緩和のための現在の方法の多くは、GPS受信機を強化するために利用可能な信号特性とアンテナ技術に基づいている。例えば、アンテナの不感帯、または、低減された感度のゾーンが干渉源を包含するようなアンテナ空白化(antennae-nulling)が、妨害の影響を最小にするために使用される1つの選択肢である。アンテナ空白化は、送信しているプラットフォームによって実行されなければならず、干渉源の位置と、目的となる受信機に対するそれらの位置によって、干渉を十分に減衰させることができないことがあり得る。特に、干渉源が、信号の目的とされる受信者の比較的近くにある場合には、アンテナ空白化は、目的となる受信者にとっての深刻な信号損失をもたらし得る。
【0008】
[0008] 意図的なGPS干渉の検出および/または緩和のための第2の選択肢は、GPS受信機の妨害対抗能力を増すために使用される信号処理技術を強化することを含む。しかし、このような技術は、計算コストが高い。米国政府は、また、干渉信号に対する感度を最小にするように強化されたGPS受信機の使用を可能にする目的で、第3のGPS周波数を導入しているが、この技術は、受信機に、新たな周波数を受信し、処理できることを要求し、結果、この技術の統合は、時間がかかり、高価である。
【0009】
[0009] 上述の問題は、主に、軍事の戦術的な状況の文脈で説明されたが、GPS干渉は、軍事と商用との用途の両方のために問題となる。
【0010】
[0010] 従って、必要とされるものは、基盤となるハードウェアの変更を必要とせず、コンピュータ処理上のコストも大きくない、妨害やスプーフィングを検出し、克服するための技術である。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 本開示の一実施形態は、測位システムにおける信号干渉を検出するためのシステムを提供し、システムは: 少なくとも2つの個別の航法システムをプロセッサにリンクする能力を有するインターフェースと; インターフェースに結合された慣性航法システムと; 少なくとも1つの他の全地球測位システムと動作可能な通信関係にあり、インターフェースに結合された全地球測位システム受信機と; インターフェースに結合されたプロセッサと; プロセッサに結合されたメモリ記憶デバイスと; を備え、 メモリ記憶デバイスは、プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令を含む。
【0012】
[0012] 本発明の他の実施形態は、全地球測位システムの干渉の検出に応じて、ユーザに対する警告が表示される、上述のシステムを提供する。
【0013】
[0013] 本発明のさらなる実施形態は、インターフェースが、リンク16戦術データネットワークを備える、上述のシステムを提供する。
【0014】
[0014] 本発明のさらに他の実施形態は、システムが、移動式戦闘用ユニットに組み込まれる、上述のシステムを提供する。
【0015】
[0015] 本発明のさらなる実施形態は、システムが、固定式戦闘用ユニットに組み込まれる、上述のシステムを提供する。
【0016】
[0016] 本発明のさらに他の実施形態は、システムが、民間旅客機に組み込まれる、上述のシステムを提供する。
【0017】
[0017] 本発明のさらなる実施形態は、統合型データ登録ソフトウェアが、メモリ記憶デバイスに記憶され、 プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令のための媒体を提供するために使用される、上述のシステムを提供する。
【0018】
[0018] 本発明のさらなる他の実施形態は、プロセッサに、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令は、自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなかったとすれば存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒(bin: ビン)を検索することによって干渉を検出する、上述のシステムを提供する。
【0019】
[0019] 本発明の一実施形態は、GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法を提供し、方法は: 既知の干渉がない条件下で受信機によって受信される全地球測位システムのデータを監視することと; 記憶手段上に分析のためにそのデータを記憶することと; 後の時点で、干渉を示す特徴の存在を決定するために、時間期間にわたって、そのデータを、純粋な慣性航法システムの位置出力と比較することと; を備える。
【0020】
[0020] 本発明の他の実施形態は、干渉を示す特徴が、上記データにおいて規則的に再発生する最小値および/または最大値の時間的なずれを含む、上述の方法を提供する。
【0021】
[0021] 本発明のさらなる実施形態は、比較することのステップが、様々な時間における、慣性航法システムによって与えられる位置と、全地球測位システムによって与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算することを備える、上述の方法を提供する。
【0022】
[0022] 本発明のさらに他の実施形態は、特徴は、慣性航法システム(INS)のデータの決定性のある特性を含む、上述の方法を提供する。
【0023】
[0023] 本発明のさらに他の実施形態は、決定性のある特徴が、シューラー誤差や地球ループ誤差を含む、上述の方法を提供する。
【0024】
[0024] 本発明のさらに他の実施形態は、慣性航法システムの動作の忠実度の高い誤差モデルが、航法システムが通常の動作状態のもとでどのように振る舞うのかを規定するために使用され、それによって、システムがいつ異常に動作しているのかを観察するための手段を提供する、上述の方法を提供する。
【0025】
[0025] 本発明の一実施形態は、GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、方法は: 慣性航法システムの位置データから真値の基準を差分することと; 差分されたデータを、純粋な慣性航法システムデータと比較することと; 純粋なINS位置と真値の基準との間の計算された位置の差について、「スペクトル」のコンテンツを、または、等価的に自己相関関数を評価することと; 自己相関関数の出力、または、パワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するためにデータを評価することと; を備える。
【0026】
[0026] 本発明の他の実施形態は、サンプリングされた自己相関関数が緯度と経度の両方について計算される、上述の方法を提供する。
【0027】
[0027] 本発明のさらなる実施形態は、周波数領域における等価な表現が、緯度と経度についてのサンプリングされたパワースペクトル密度関数を利用する、上述の方法を提供する。
【0028】
[0028] 本発明のさらに他の実施形態は、アルゴリズムが、慣性航法システムの位置データと、全地球測位システムの位置データとの比較に基づく、純粋な慣性航法システムのデータの位置誤差についての自己相関関数を計算するために使用される、上述の方法を提供する。
【0029】
[0029] 本発明のさらなる実施形態は、真値の基準が、全地球測位システム受信機と関連付けられた位置データである、上述の方法を提供する。
【0030】
[0030] 本発明のさらに他の実施形態は、自己相関の出力またはパワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するためにデータを評価することのステップは、自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなければ通常存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒を検索することを含む、上述の方法を提供する。
【0031】
[0031] 本明細書に記載される特徴および利点は、全てを含むものではなく、特に、多くの追加の特徴や利点が、図面、明細書、および、特許請求の範囲に鑑みて、本技術に通常の技量をもつ者には明らかである。さらに、明細書の中で使用される言葉は、原則として、読みやすさや教示目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことが留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】[0032] 図1は、本開示の一実施形態に従って構成される、リンク16端末とのGPSおよびINSインターフェースを示すブロック図である。
図2】[0033] 図2は、本開示の一実施形態に従う、典型的なINSの緯度位置誤差を示すグラフである。
図3A】[0034] 図3Aは、本開示の一実施形態に従う、干渉が無い場合のGPSの自己相関関数を示すグラフである。
図3B】[0035] 図3Bは、本開示の一実施形態に従う、干渉がある場合のGPSの自己相関関数を示すグラフである。
図4A】[0036] 図4Aは、本開示の一実施形態に従う、干渉が無い場合のGPSのパワースペクトル密度を示すグラフである。
図4B】[0037] 図4Bは、本開示の一実施形態に従う、干渉がある場合のGPSのパワースペクトル密度を示すグラフである。
【詳細な説明】
【0033】
[0038] 上記に展開されたように、INSの誤差が、以前の推定値への依存により経時的に蓄積する傾向にあり、他方、GPS誤差は、ある地勢ではGPS信号を維持することが困難である可能性があるが、それらが以前の推定値に依存しないことにより、誤差の所定の閾値以内の正確な結果を生成する傾向にあるので、重要なシステム上では、典型的には、GPSおよびINSは、組み合わせて使用される。利用可能であれば、GPSシステムからの定期的な更新によって、INSの誤差の蓄積が制限され、この組み合わせは、外部データの存在には構わず、正確な位置および速度情報がINSから得られることを可能にする。
【0034】
[0039] しかし、GPSシステムは、それらの動作のために外部信号に依存しており、信号受信を妨げること(jamming: 妨害)、または、受信機が不正確な位置データを提供するようにさせる企てにおいて信号受信を変更すること(spoofing: スプーフィング)のいずれかのために、故意に干渉され得る。妨害が起こる場合、ユーザが干渉を回避するアクションをとることを可能にするために、ユーザに対するそのような干渉の通知が望まれるけれども、INSは、いくらかの時間の間は、合理的に正確な位置と速度を提供し続けるのに十分であり得る。しかし、スプーフィングが起こる場合、INSは、新しい不正確な情報で更新され得、不正確な位置と速度の情報がユーザに提供され、ユーザにより依存される結果になる可能性がある。
【0035】
[0040] 劣化された動作を引き起こすのに十分な干渉からGPS受信機を保護する最初のステップは、そのような干渉の存在の検出である。航法システムが通常の動作状態のもとでどのように振る舞うのかを規定するために、INSのための忠実度の高い誤差モデルが使用されることができ、それによって、これらのシステムがいつ異常に動作しているのかを観察するための手段を提供する。具体的には、GPS位置データの監視および分析、並びに、純粋なINSの位置出力、即ち、当該データと、アルゴリズムまたは他の方法で修正されていない位置出力との比較が、GPS妨害またはスプーフィングタイプの干渉の存在を検出するために使用されることができる。
【0036】
[0041] 具体的には、ソフトウェアが、INS位置とGPS位置の比較に基づいた、純粋なINSの位置誤差についての経時的なサンプリングされた自己相関関数(sampled-autocorrelation function)を計算するために使用されることができる。ここでは、「系列相関(serial correlation)」とも呼ばれることがある、「自己相関」の用語が、時間上の異なる複数の点における信号のそれ自身との相関のことをいうために使用される。それは、また、それらの間の時間遅れの関数として、複数の観測間の類似度と考えられてもよい。
【0037】
[0042] 有用なことに、純粋なINSの位置誤差は、例えば、シューラー(Schuler)誤差や地球ループ(Earth-Loop)誤差などの決定性のある特性を有する。シューラー誤差は、地球ループ誤差を含むが、地球の曲率によって引き起こされ、INSデータにおける約84.4分周期の振動を生じる。外部データに依存せず、または、外部データよって引き起こされない、これら決定性のある特性とそれらに関連付けられた周期的な誤差のゆえに、INSシステムは、前項で説明されたサンプル−自己相関関数を用いてGPS干渉を検出するために使用されることができる。また、そのようなシステムは、それが動作のために外部信号に依存しないので、それ自身、妨害やスプーフィングの攻撃に影響されない。
【0038】
[0043] 干渉によって引き起こされる誤差が、GPSによって与えられる位置に存在する場合、INS−GPS間の位置の差は、図3Aと3Bなど、サンプリングされた自己相関関数の出力を観察することによって検出することができる、付加的な決定性のある誤差特性を含む。
【0039】
[0044] 好都合なことに、必要なINSとGPSのデータは、比較的近代的な移動式戦闘用機器の戦術システム内で容易に手に入る。また、固定式ユニットは、固定式ユニットの位置誤差が一定である(バイアス)であると仮定されることができるので、多くの場合に移動式ユニット上よりもより単純であるプラットフォーム上の実装でもって、技術からの利益を使用することができる。ひとたび検出が確認されると、戦闘用機器の戦術システムは、GPS干渉を回避または軽減できる。
【0040】
[0045] 先行技術のアプローチを越える、ここに提示される提案のアプローチの大きな利点は、上述のように、干渉の検出は、本開示の実施形態に従って、全体的に、ソフトウェアの実装によって提供され得る。必要とされる入力が、すでに、航空機、船舶、地上ユニット内にある既存のGPSシステムとINS航法システムの実装において、すでに容易に手に入るので、これは可能である。このアプローチの重要な点は、外部の干渉(妨害)に影響されないINS誤差の特性(シューラー特性)の使用である。即ち、ソフトウェアに実装された、サンプリングされた自己相関関数、または、それのフーリエ変換であるパワースペクトル密度は、GPSからINSを引いた位置誤差がいつ崩壊されるのかを決定するために使用されてよい。干渉がなければ、GPS−INSは、いつも、純粋なシューラー誤差として現れる。干渉がある場合、GPS−INSは、干渉誤差の特徴を含む。
【0041】
[0046] このようなソフトウェア実装において、問題解決の1つの手続き、または、アルゴリズムは、DDR3メモリなどのメモリデバイスとの通信ができ、中央処理ユニット(central processing unit:CPU)またはプロセッサとのさらなる通信ができる、ハードドライブなどの記憶装置上に記憶されてよい。また、記憶装置やメモリは、INSとGPSのデータを記憶するために使用されてもよい。
【0042】
[0047] 上述された機能は、戦闘用ユニット、並びに、民間の用途をもつユニットが、そのユニット内のGPS機器の妨害またはスプーフィングによってもたらされるナビゲーション誤差を検出することを可能にする。戦闘用および民間用のユニットは、航法システムによる重大な決定を行い、航法システムの有害な行いを回避し、GPSが劣化した場合に代替のナビゲーションソースを利用するために、本開示の実施形態に従って構成されたシステムによって提供される機能を使用することができる。
【0043】
[0048] ここで、図1を参照すると、本明細書に記載されるGPS妨害およびスプーフィングの検出システムは、本開示の実施形態に従って、データ交換を用いる、戦闘用ユニットの組み込みGPS/INS100との、典型的なリンク16(米国と、北大西洋条約機構、即ち、NATOとによって主に使用される軍事戦術データ交換ネットワーク)の端末統合体102に実装されて示される。この図では、頭字語JTIDSは、主に、航空機およびミサイル防衛共同体において、データ通信の要求をサポートするために合衆国の軍隊とそれらの同盟国によって使用されるL帯域の時分割多元接続(Time Division Multiple Access: TDMA)ネットワーク無線システムである、統合戦術情報伝達システム(Joint Tactical Information Distribution System)のことを呼ぶために用いられる。頭字語MIDSは、多機能情報伝達システム(Multifunctional Information Distribution System)のことを呼ぶために用いられ、MIDSは、リンク16ネットワークの通信コンポーネントについてのNATOの用語である。RNKF106の符号が付された要素は、RELNAVカルマンフィルタであり、RELNAVは、相対航法のタイミングおよびデータ(Relative Navigation, Timing & Data)のことを呼ぶために使用される。RNS108の符号が付された要素は、RELNAVソース選択機能である。最後に、PPLIは、リンク16ネットワークにおける参加者全員の正確な位置と身元を通信する、リンク16ネットワークにおいて交換される正確な参加者位置および識別情報(Precise Participant Location and Identification)のメッセージのことを呼ぶために用いられる。これらのPPLIは、リンク16の参加者が、全地球的測地系 WGS−84に関して航行することを可能にする位置情報の代替ソース(GPSに関する)に帰着する。
【0044】
[0049] 図1に示され、データ交換を用いる、戦闘用ユニットの組み込みGPS/INS100とのリンク16端末102の統合体において、特にリンク16端末102に言及すると、受信されたPPLIは、RNSモジュール106により受け取られ、処理される。RNSモジュール106は、RNKFモジュール104と動作可能な2方向通信関係にある。RNKFモジュール104は、NAVモジュール102とさらなる動作可能な通信関係にあり、そこでは、誤差補正がRNKFモジュール104からNAVモジュール102に送られる。誤差推定値は、RNKFモジュール104によるデータの処理の後、システムによって提供されてもよい。NAVモジュールは、さらに、組み込みGPS/INSシステム100のINSモジュール112から純粋な慣性データを受け取り、処理することができる。また、INSモジュール112のデータは、リンク16端末102の送信PPLIデータと組み合わされることができ、それは、組み込みGPS/INSシステム100に提供され、INSモジュール112のデータと再び組み合わされることができる。また、INSモジュール112のデータは、GPSモジュール114とJTIDS/MIDSのデータとともに、ハイブリッドカルマンフィルタ(Hybrid Kalman Filter)110の中に与えられ、その結果、ハイブリッド慣性データを提供することになる。GPSモジュール114のデータは、また、NAVモジュール104のデータとともに、処理のために、RNSモジュール108に与えられる。
【0045】
[0050] 同様のインターフェースが、多くの場合に、これらのGPS干渉検出手続き(アルゴリズム)のための媒体を提供するためにも使用され得る、上述のユニットで使用される統合型データ登録(Integrated Data Registration: IDR)ソフトウェア内に存在する。IDRは、出願人が共通に所有する特許出願第14/350,585、および、PCT/US2013/54248に記載され、それらは参照によって本明細書に組み込まれる。この技術に通常の技量を有する者は、本明細書に含まれた情報を用いて、上述の解法をIDR上に実装することができるであろう。
【0046】
[0051] ここで、図2を参照して、純粋なINS(グラフの正弦曲線の部分を参照)についての、および、GPSの支援を受けたINS(グラフ上の比較的平坦な線を参照)についての誤差 対 時間のプロットが示される。このグラフから、以前に検討されたように、純粋なINSについての位置誤差が、妨害にあっていない決定性のある正弦曲線の特徴を示すことが理解され得る。具体的には、すべてのINS位置出力は、図2の正弦曲線に示されるような、シューラー(84.4分周期)の正弦曲線誤差と地球ループ(24時間周期)の正弦曲線誤差とを含む。従って、これらの既知の特徴は、INS位置がGPS基準位置と比較される場合、他の誤差の存在を特定するために使用されることができる。即ち、INS位置がGPSなどの「真値」の基準との差分がなされる場合、それらの差は、正弦曲線と一致することを期待される。INSが正確なGPS受信機によって支援される場合、ハイブリッドGPS/INS解法の位置誤差は、「真」の位置を近似する。GPS出力が劣化される場合には、ハイブリッドGPS/INS位置は、「真」の位置から変位することになる。従って、我々は、「スペクトル」コンテンツ、または、等価的に、純粋なINS位置と、GPS位置またはハイブリッドGPS/INS位置のいずれかとの間で計算された位置の差についての自己相関関数を評価することによって、劣化されたGPS位置の存在を検出するために、これらの特性を使用してよい。
【0047】
[0052] INS−GPS位置の差のデータが集められると、サンプリングされた自己相関関数が、緯度と経度の両方について計算されることができる。周波数領域における等価な表現として、緯度および経度誤差についてのサンプリングされたパワースペクトル密度関数を利用するであろう。そして、十分な量のデータが集められた後(INSとGPSが両方とも動作していたので)、アルゴリズムの結果が、自己相関出力またはパワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するために評価されることができる。いくつかの実施形態では、ソフトウェアは、自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がないとしたら存在しないであろう閾値を超えるヒストグラムの棒(ビン)を検索するように、構成される。
【0048】
[0053] ここで、図3Aおよび3Bを参照すると、GPS干渉がない場合とある場合のそれぞれでの位置誤差についての対応する自己相関関数が図示される。
【0049】
[0054] ここで、図4Aおよび4Bを参照すると、GPS干渉がない場合とある場合のそれぞれでの位置誤差のパワースペクトル密度についての対応する結果が図示される。
【0050】
[0055]以上の記述は、例示および説明の目的で提示されている。余すところがないこと、または、開示された寸分たがわない形態に本開示を限定することは意図されない。多くの改変や変形が、本開示に照らして可能である。本開示の範囲がこの詳細な説明によってではなく、むしろ、添付された特許請求の範囲によって限定されるものであることが意図される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 測位システムにおける信号干渉を検出するためのシステムであって、
少なくとも2つの個別の航法システムをプロセッサにリンクすることができるインターフェースと;
前記インターフェースに結合された慣性航法システムと;
少なくとも1つの他の全地球測位システムと動作可能な通信関係にあり、前記インターフェースに結合された全地球測位システム受信機と;
前記インターフェースに結合されたプロセッサと;
前記プロセッサに結合されたメモリ記憶デバイスと;
を備え、
前記メモリ記憶デバイスは、前記プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令を含む、システム。
[2] 全地球測位システムの干渉の検出に応じて、ユーザに対する警告が表示される、[1]に記載のシステム。
[3] 前記インターフェースは、リンク16戦術データネットワークを備える、[1]に記載のシステム。
[4] 前記システムは、移動式戦闘用ユニットに組み込まれる、[1]に記載のシステム。
[5] 前記システムは、固定式戦闘用ユニットに組み込まれる、[1]に記載のシステム。
[6] 前記システムは、民間旅客機に組み込まれる、[1]に記載のシステム。
[7] 統合型データ登録ソフトウェアが、前記メモリ記憶デバイスに記憶され、前記プロセッサに、様々な時間における、慣性航法システムにより与えられる位置と、全地球測位システムにより与えられる位置との比較に基づいて、前記干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる命令のための媒体を提供するために使用される、[1]に記載のシステム。
[8] 前記プロセッサに、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算させる前記命令は、前記自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなかったとすれば存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒を検索することによって干渉を検出する、[1]に記載のシステム。
[9] GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、
既知の干渉がない条件下で受信機によって受信される全地球測位システムのデータを監視することと;
記憶手段上に分析のために前記データを記憶することと;
後の時点で、干渉を示す特徴の存在を決定するために、時間期間にわたって、前記データを、純粋な慣性航法システムの位置出力と比較することと;
を備える、方法。
[10] 干渉を示す前記特徴は、前記データにおいて規則的に再発生する最小値および/または最大値の時間的なずれを含む、[9]に記載の方法。
[11] 前記比較することのステップが、様々な時間における、慣性航法システムによって与えられる位置と、全地球測位システムによって与えられる位置との比較に基づいて、干渉の存在を決定するための少なくとも1つのサンプリングされた自己相関関数を計算することを備える、[9]に記載の方法。
[12] 前記特徴は、前記慣性航法システム(INS)のデータの決定性のある特徴を含む、[9]に記載の方法。
[13] 決定性のある前記特徴が、シューラー誤差や地球ループ誤差を含む、[12]に記載の方法。
[14] 慣性航法システムの動作の忠実度の高い誤差モデルが、前記慣性航法システムが通常の動作状態のもとでどのように振る舞うのかを規定するために使用され、それによって、前記慣性航法システムがいつ異常に動作しているのかを観察するための手段を提供する、[9]に記載の方法。
[15] GPS受信機に対する干渉の存在を決定するための方法であって、
慣性航法システムの位置データから真値の基準を差分することと;
差分されたデータを、純粋な慣性航法システムデータと比較することと;
純粋なINS位置と前記真値の基準との間の計算された位置の差について、スペクトルコンテンツを、または、等価的に自己相関関数を、評価することと;
前記自己相関関数の出力、または、パワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するために、前記データを評価することと;
を備える、方法。
[16] サンプリングされた前記自己相関関数が、緯度と経度の両方について計算される、[15]に記載の方法。
[17] 周波数領域における等価な表現が、緯度と経度についてのサンプリングされたパワースペクトル密度関数を利用する、[16]に記載の方法。
[18] アルゴリズムが、慣性航法システムの位置データと、全地球測位システムの位置データとの比較に基づく、純粋な慣性航法システムデータの位置誤差についての自己相関関数を計算するために使用される、[16]に記載の方法。
[19] 前記真値の基準が、全地球測位システムの受信機と関連付けられた位置データである、[16]に記載の方法。
[20] 前記自己相関関数の出力またはパワースペクトル出力のいずれかを使用して、干渉の存在を検出するために前記データを前記評価することのステップは、前記自己相関関数またはパワースペクトル関数が、通常、干渉がなければ存在しないであろう閾値を越えるヒストグラムの棒を検索することを含む、[16]に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B