(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0003】
添付図面は、本書で説明する原理の様々な例を示したものであり、明細書の一部である。かかる例示した例は、例示のためだけに提供したものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0004】
図面全体にわたり、同一の符号は、類似するが必ずしも同一ではない要素を示している。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、図示の例を一層明確に示すために一部のサイズが誇張されている場合がある。更に、図面は、説明と一致する例及び/又は実施形態を提供するものであるが、該説明は、図面で提供した例及び/又は実施形態に限定されるものではない。
【0005】
一例では、プリントヘッドは、複数の流体アクチュエータを駆動することにより複数のノズルを介して流体を射出させることが可能である。一例では、流体アクチュエータは、気化チャンバ内に位置する少量の流体を急速に加熱して該流体を気化させて前記ノズルから射出させる熱抵抗素子を含むことが可能である。別の例では、流体アクチュエータは、複数の流体チャンバ内に配置された複数の圧電材料を含むことが可能であり、該圧電材料は、該圧電材料に電界が印加された際にその形状を変化させて流体チャンバ内の圧力を増大させて該流体チャンバから流体を射出させる。流体アクチュエータを駆動するために、該流体アクチュエータに電力が供給される。流体アクチュエータにより消費される電力はViに等しいことが可能である。ここで、Vは流体アクチュエータの両端の電圧、iは流体アクチュエータを流れる電流である。プリンティング装置の処理電子装置の一部として配置することが可能な電子的なコントローラは、プリンティングヘッドの外部にある電源から流体アクチュエータに供給される電力を制御する。
【0006】
特定のタイプの流体射出プリンティングシステムでは、プリントヘッドは、複数の駆動パルスを含む駆動信号をコントローラから受信する。該コントローラーは、駆動信号のタイミングを制御することにより、プリントヘッドの液滴発生器のエネルギーを制御する。該駆動信号に関するタイミングには、駆動パルスの幅と、駆動パルスが発生する時点とが含まれる。該コントローラはまた、電源の電圧レベルを制御することで流体アクチュエータを流れる電流を制御することにより、液滴発生器のエネルギーを制御することが可能である。
【0007】
プリントヘッドは、プリントヘッドから流体を放出するために使用される複数の流体アクチュエータを含むことが可能であり、これらの流体アクチュエータは、複数のプリミティブ(primitive:基本的なもの)へとグループ化することが可能である。一例では、各プリミティブにおける流体アクチュエータの数は、各プリミティブ毎に異なることが可能である。別の例では、流体アクチュエータの数は、各プリミティブで同じにすることが可能である。
【0008】
各流体アクチュエータは、例えば、電界効果トランジスタ(FET)等の関連するスイッチング装置を含む。一例では、単一の電力リード線が各プリミティブにおける各FET及び流体アクチュエータに電力を供給する。一例では、1つのプリミティブにおける各FETは、該FETのゲートに結合された別個に通電可能なアドレスリード線で制御することが可能である。別の例では、各アドレスリード線を複数のプリミティブにより共有することが可能である。該アドレスリード線は、所与の時点で1つのFETのみがオンになるように制御され、このため、1つのプリミティブで最大1つの流体アクチュエータに電流が流れ、対応するチャンバ内の流体が所与の時点で射出される。一例では、複数のプリミティブは、プリントヘッド内で複数の行及び複数の列をなすよう配置することが可能である。1つのプリントヘッド内には、任意数の複数列のプリミティブと任意数の複数行のプリミティブとが存在することが可能である。
【0009】
1つのプリミティブ内の各流体アクチュエータには、アドレスを1つずつ割り当てることが可能である。殆どの場合、一度に、各プリミティブ毎の1つの流体アクチュエータのみが、該プリミティブに提供されたアドレスに基づいて駆動される。駆動パルスがプリミティブの1つの列へと搬送される際に、該駆動パルスは、複数のプリミティブ間又は複数のプリミティブグループ間で遅延される。この遅延により、ピーク電流及び電流の最大時間変化率(di/dt)が低下して、プリントヘッドへの電源供給の過負荷が回避され、及びプリントヘッド内の各アクチュエータに十分な電力が供給される。プリミティブの遅延はまた、駆動されていない又は「オフ」のプリミティブとして機能する一種の仮想プリミティブとして機能し、その結果として、駆動され又は「オン」であるプリミティブの最大数が少なくなる。これにより、消費電力が制限され、及びプリントヘッド又は流体ダイ内のピーク電流が減少する。プリントヘッドにプリミティブ遅延を利用させる1つの代償は、駆動パルスがプリミティブの列の最下部に到達して該列内の全てのプリミティブのための駆動パルスが完了するのにより多くの時間を要することである。これは、プリミティブ遅延を利用しない場合ほど高速にプリントジョブを完了させることができないことに等しい。前の駆動イベントについて最下部のプリミティブで駆動が開始されるまで、後続の又は次の駆動パルスが最初の又は最上部のプリミティブで開始することができないからである。その結果として、システムによっては、駆動パルスがプリミティブの列を下方へ伝搬するのに要する時間によって最大駆動周波数が制限される場合がある。本書で述べる理由により、プリントヘッド内の電流の一層優れた制御を提供する流体ダイは、該流体ダイ内の電流の最大時間変化率(di/dt)の減少を確実にするのに効果的なものであることが分かる。
【0010】
本書で説明する例は、流体ダイを提供する。該流体ダイは、該流体ダイから流体を射出するための複数のアクチュエータを含むことが可能である。複数のアクチュエータが複数のプリミティブを形成する。一列をなす複数のプリミティブ内に複数の遅延が含まれることが可能である。流体ダイはまた、複数の駆動パルスが通過する、複数の遅延を制御するための処理装置を含むことが可能である。複数の駆動パルスは、複数のプリミティブに関連付けられた複数のアクチュエータの各々を駆動する。該複数の駆動パルスが、複数の遅延のうちの少なくとも1つを介して複数のプリミティブ間で遅延されて、流体ダイのピーク電力需要が低減される。
【0011】
流体ダイは更に、該流体ダイ上に駆動パルス発生器を含むことが可能である。一例では、アクチュエータは、前駆パルス時間(PCP:Precursor Pulse Time)、無駄時間(DT:Dead Time)、及び発射パルス発生器により生成される発射パルス時間(FPT:Fire Pulse Time)に基づいて駆動することが可能である。更に、複数の駆動パルスの各エッジの時間は、ダイメモリに格納される。駆動パルス発生器は、PCP、DT、及びFPTをプリミティブの列に送信する。別の例では、単一の発射パルス(FP)を該プリミティブ列に送信することが可能である。ただし、これらの例の何れも場合も、本書で説明する遅延要素は、何れのタイプのパルスに対しても同じ機能を果たすものである。
【0012】
駆動パルスが通過する複数の遅延は、各プリミティブ内のノズルの数、プリミティブの数、プリント機能、プリント要求、又はそれらの組み合わせに基づくものとすることが可能である。駆動パルスは、複数の駆動パルスを含むパルス列を含み、該複数の駆動パルスの合計が、総駆動エネルギーを形成する。該複数の駆動パルスは、複数の遅延を介して複数のプリミティブ間で遅延される。流体ダイは更に、複数の遅延から複数の信号を選択するために各プリミティブに結合されたマルチプレクサを含むことが可能である。
【0013】
本書で説明する例はまた、プリンティング装置を提供する。該プリンティング装置は、複数の流体ダイを含むことが可能である。該流体ダイは、該流体ダイから流体を射出するための複数のアクチュエータを含むことが可能であり、該複数のアクチュエータは複数のプリミティブを形成する。該流体ダイはまた、所与のプリミティブ列内の(各プリミティブ間に挿入される)複数の遅延と、(複数のプリミティブに関連付けられた複数のアクチュエータを駆動する)複数の駆動パルスが通過する複数の遅延を制御するための処理装置とを含むことが可能である。
【0014】
プリンティング装置はまた、前記処理装置から受信した命令に基づいて複数の遅延から複数の信号を選択するために各プリミティブに結合されたマルチプレクサを含むことが可能である。該処理装置から受信した該命令は、流体ダイのピーク電力需要を削減するように各プリミティブ間の時間的な遅延を定義する。前記マルチプレクサは、複数の遅延から複数の信号を選択する。該プリンティング装置は、プログラム可能なクロック分周器を含むことが可能であり、該プログラム可能なクロック分周器は、プリミティブ列における駆動パルスの伝搬を遅くするようにシフトクロックからの信号を分周する。プリミティブ間の時間的な遅延は、各プリミティブ内のアクチュエータの個数、プリミティブの個数、プリント機能、プリント要求、又はそれらの組み合わせに基づくものとすることが可能である。駆動パルスは、複数の駆動パルスを含むパルス列を含み、該複数の駆動パルスの合計が総駆動エネルギーを形成する。
【0015】
本書で説明する例は更に、少なくとも1つの流体ダイのピーク電力需要を低減させる方法を提供する。この方法は、処理装置を使用し、該処理装置から受信した命令に基づいて流体ダイのプリミティブ遅延を決定することを含むことが可能である。該処理装置は、各プリミティブ間の複数の遅延を使用してノズルプリミティブ列内の複数のアクチュエータのための複数の駆動パルスを遅延させるよう流体ダイに命令することが可能である。本方法はまた、流体ダイの複数のノズルプリミティブの各々毎に駆動パルスを生成すること、及び該駆動パルスを介して、複数のノズルプリミティブに関連付けられた複数のノズルの各々に結合された複数のアクチュエータをプリミティブ遅延に基づいて駆動することを含むことが可能である。本方法はまた、複数の遅延を介して各ノズルプリミティブ間の駆動パルスを遅延させることを含むことが可能である。本方法は更に、複数の遅延に結合されたマルチプレクサを用いて複数の遅延から複数の信号を選択することを含むことが可能である。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる場合、「複数の」又はそれと同様の用語は、1から無限大を含む任意の正数として広く理解されることを意図したものであり、ゼロは数字ではなく、数字が存在しないことである。
【0017】
以下の説明では、説明を目的として、本システム及び方法の完全な理解を提供するために多くの特定の詳細について説明する。しかし、本装置、システム、及び方法は、かかる特定の詳細なしで実施可能であることは当業者には明らかであろう。本書で「一例」又はそれと同様の用語に言及した場合、これは、かかる例に関して説明した特定の機能、構造、又は特徴が、その説明どおりに含まれている一方、他の例では含まれていることも含まれていないことも可能であることを意味している。
【0018】
ここで図面を参照すると、
図1は、本書で説明する原理の一例による流体ダイ(100)のブロック図である。流体ダイ(100)は、例えば、ノズル等のオリフィスからインク等の流体を射出することが可能な任意の装置とすることが可能である。本書の説明は、サーマルインクジェット又は圧電プリントヘッドに関するものであるが、該説明は、電源の電流引き込みを減少させるためのプリミティブの遅延に関するものである。
【0019】
流体ダイ(100)は、該流体ダイ(100)から流体を射出するための複数の流体アクチュエータ(102-0,102-1,102-2,102-3,102-4,102-5,102-6,102-7,102-n0,102-n1,102-n2,102-n3)を含むことが可能であり、本書では包括的に102と称する。アクチュエータ(102)は、流体を所定方向に移動させるため又はノズル等のオリフィスに流体を強制的に通過させるために使用される任意の装置とすることが可能である。例えば、アクチュエータ(102)は、熱抵抗素子、圧電素子、ポンプ、マイクロポンプ、マイクロ再循環ポンプ、その他の射出装置、又はそれらの組み合わせとすることが可能である。一例では、各アクチュエータ(102)は、電界効果トランジスタ(FET)等のスイッチング装置を含むことが可能である。FETは、該FETのゲートに結合された別個に通電可能なアドレスリード線で制御することが可能である。一例では、各アドレスリード線は、複数のプリミティブ(101)により共有することが可能である。アドレスリード線は、所与の時点で1つのFETのみがオンになるように制御されるため、該所与の時点でプリミティブ(101)内の多くとも1つのアクチュエータ(102)に電流が流れて該アクチュエータ(102)が駆動される。
【0020】
アクチュエータ(102)は、複数のプリミティブ(101-0,101-1,101-n(本書では包括的に101と称す))へとグループ化することが可能である。プリミティブ(101)は、アクチュエータ(102)のアレイ内の複数のアクチュエータ(102)を任意にグループ化したものである。一例では、各プリミティブ(101)内のアクチュエータ(102)の数は、プリミティブ毎に異なることが可能である。別の例では、アクチュエータ(102)の数は、流体ダイ(100)内の各プリミティブ(101)毎に同じとすることが可能である。本書で説明する例では、各プリミティブ(101)は、それぞれ4つのアクチュエータ(102)を含むことが可能である。更に、様々な数のプリミティブ(101)が複数の図全体にわたって描かれており、図に含まれる省略記号は、任意数のプリミティブ(101)が流体ダイ(100)内に含まれる可能性を示している。省略記号は、任意数の要素が流体ダイ(100)内に含まれることが可能であることを示すために全図にわたって使用されている。
【0021】
流体ダイ(100)は、一列のプリミティブ(101)内に複数の遅延(105)を含むことが可能である。一例では、アクチュエータ(102)の駆動に使用される駆動パルスが各プリミティブ(101)に送信される際に該駆動パルスをどの程度遅延させるかに関する命令を各プリミティブ(101)に提供するために、一組の複数の遅延(105)が各プリミティブ(101)間に含まれていることが可能である。遅延(105)は、プリミティブ(101)による駆動パルスの使用を遅延させ、又は後続のプリミティブ(101)及びそのアクチュエータ(102)が作動し始めるタイミングを変更する、任意の装置又は回路とすることが可能である。一例では、遅延(105)は、1つの遅延(105)につき約22ナノ秒(ns)のプリミティブ(101)の駆動間の遅延を生じさせ、一列のプリミティブ(101)内の累積的な遅延は約1.5〜3マイクロ秒(μs)となる。
【0022】
駆動パルスは、処理装置(103)により命令されるように、プリミティブ(101)に関連付けられたアクチュエータ(102)の各々を駆動する。一例では、複数の遅延(105)は、プログラム可能にすることが可能である。更に、複数のプリミティブ(101)間の複数の遅延(105)の各組をプログラムすることが可能である。この例では、複数の遅延(105)は、それぞれ、駆動パルスを異なる時間量だけ遅延させるように異なってプログラムすることが可能である。このように、処理装置(103)を使用して遅延(105)をプログラムすることが可能である。各遅延(105)は、処理装置(103)により選択された遅延(105)に基づいて異なる時間量でプリミティブ(101)内の駆動パルス及びアクチュエータ(102)の作動を遅延させるために使用することが可能である。駆動パルスは、流体ダイのピーク電力需要を低減させるために、複数の遅延の少なくとも1つを介して複数のプリミティブ間で遅延される。流体ダイ(100)に関する詳細は、本書でより詳細に提供される。
【0023】
一例では、複数のプリミティブ(101)が共にグループ化され、該複数のプリミティブ(101)のうちの最初のプリミティブに適用される遅延(105)が該グループ内のプリミティブの数で除算されるようにすることが可能である。例えば、2つのプリミティブ(101)がグループ化され、その2つのプリミティブ(101)のグループに対して遅延(105)が選択された場合、それら2つのプリミティブ(101)の遅延は、プリミティブ(100)についての遅延の半分になる。このようにして、遅延(105)は、プリミティブ(101)をプログラムされた時間的な遅延まで遅延させるようプログラムすることが可能であり、かかる態様での複数のプリミティブ(101)のグループ化は、該グループ内のプリミティブ(101)の数に相当する複数の遅延のグループに関して遅延(105)を分割するために使用することが可能である。
【0024】
図2は、本書で説明する原理の一例による、
図1の複数の流体ダイ(100)を含むプリンティング装置(200)のブロック図である。
図1に含まれ、及び
図1に関連して説明される同様の符号の要素は、
図2内の同様の要素を示している。プリンティング装置(200)は、流体ダイ(100)を組み込むことが可能な任意の装置とすることが可能である。プリンティング装置(200)は、流体ダイ(100)と相互作用するための任意のハードウェアを含むことが可能であり、及び流体をプリントするために流体ダイ(100)に命令を提供することが可能である。該命令は、プリンティング装置(200)の機能を制御し及びグラフィックス又はテキストの人間が読める表現をプリントするために使用されるページ記述言語(PDL)という形で流体ダイ(100)に提供することが可能である。
【0025】
任意数の流体ダイ(100)をプリンティング装置(100)内に含めることが可能である。このため、
図2のプリンティング装置(200)内には1つの流体ダイ(100)が示されているが、複数の流体ダイ(100)が含まれていることが可能である。プリンティング装置(200)内の複数の流体ダイ(100)に関するこの例では、処理装置(103)は、プリンティング装置(200)内の全ての流体ダイ(100)を制御することが可能である。プリンティング装置(200)は、複数の流体ダイ(100)を含むことが可能であり、その各流体ダイ(100)は、該流体ダイ(100)から流体を射出するための複数のアクチュエータ(102)を含むことが可能である。該複数のアクチュエータ(102)は、複数のプリミティブ(101)を形成し、又は複数のプリミティブ(101)へとグループ化することが可能である。プリンティング装置(200)はまた、プリミティブ(101)の列内に複数の遅延(105)を含むことが可能であり、該遅延(105)は各プリミティブ(101)間に挿入される。更に、プリンティング装置(200)は、複数の駆動パルス(302)が通過する複数の遅延(105)を制御する処理装置(103)を含むことが可能である。該複数の駆動パルス(302)は、複数のプリミティブ(101)に関連付けられた複数の流体アクチュエータ(102)を駆動する。
【0026】
図3は、本書で説明する原理の一例によるプリミティブ遅延設計(300)のブロック図である。
図1及び
図2に含まれ並びに
図1及び
図2に関して説明した同様の符号の要素、
図3における同様の要素を示している。プリミティブ遅延設計(300)は、複数のプリミティブ(101)を含むことが可能であり、その各プリミティブ(101)は複数のアクチュエータ(102)を含むことが可能である。該アクチュエータ(102)をディジタル的に作動させるために、各アクチュエータ(102)に、その個々のプリミティブ(101)内の他のアクチュエータ(102)に固有のアドレス(301)、流体ダイ(100)内の全てのアクチュエータ(102)に固有のアドレス(301)、又はそれらの組み合わせを割り当てることが可能である。一例では、1つのアクチュエータ(102)が所与の時点で1つのプリミティブ(101)内で駆動される。この例では、プリミティブ(101)に提供されるアドレス(301)は、複数のアクチュエータ(102)のうちのどれが駆動されるかを識別する。
【0027】
駆動パルス(302)は、プリミティブ(101)の列の最上部に入力される。各駆動パルス(302)は、複数の駆動パルスを含むパルス列を含み、駆動パルスの合計が総駆動エネルギーを形成する。一例では、各パルス列は、前駆パルス(PCP)、無駄時間パルス(DTP)、及び発射パルス(FP)を含むことが可能である。PCP、DTP、及びFPの合計は、駆動パルス(302)の総駆動エネルギーを形成する。
【0028】
プリミティブ遅延設計(300)はまた、三角形で示す複数の遅延ブロック(303)を含み、所与のプリミティブ(101)に駆動パルス(302)を選択的に送信し、及びプリミティブ(101)内のアクチュエータ(102)の発射を遅延させる。遅延ブロック(303)は、本書で説明する遅延(105)を含む。駆動パルス(302)がプリミティブ(101)の列に伝達される際に、ピーク電流及び最大di/dtを低減させるために、複数のプリミティブ(101)間又は複数のプリミティブグループ間で、該駆動パルス(302)を遅延させることが可能である。
図3の例では、駆動パルス(302)は最上部から最下部へと伝搬し、局所的に遅延された駆動パルス(302)が、関連するプリミティブ(101)へと伝達される。
【0029】
一例では、次の又は後続の駆動パルス(302)が、複数のプリミティブ(101)の列の最上部にある最初のプリミティブ(101)で開始する間に、該複数のプリミティブ(101)の列内の少なくとも最後のプリミティブ(101)に前の駆動パルス(302)が伝搬することを可能にするために、該複数のプリミティブ(101)の各々がメモリ装置を含むことが可能である。しかし、次の又は後続の駆動パルス(302)による最上部のプリミティブ(101)の駆動は、前の駆動パルス(302)について最下部のプリミティブ(101)で駆動が開始されるまで開始することができない。その結果として、一例では、駆動パルス(302)が複数のプリミティブ(101)の列を伝搬するのに要する時間によって最大駆動周波数が制限され得る。
【0030】
図4は、本書で説明する原理の一例による、複数のプリミティブ(101)の駆動中の流体ダイ(100)内の総電流(401)を、該複数のプリミティブ(101)の駆動(402-1,402-2,402-3,402-n(本書では包括的に402と称す))と比較して示す線グラフである。複数のプリミティブ(101)の複数のアクチュエータ(102)の駆動(402)は、後続のプリミティブ(101)の駆動(402-2,402-3)の前縁が、前のプリミティブ(101)の前の駆動(402-1)後であってその駆動中に発生するように行うことが可能であり、全てのプリミティブが駆動される(402-n)まで同様に行うことが可能である。このため、時間t1(403)でプリミティブ(101)の最初の駆動(402-1)により及びそれに次ぐ駆動(402-2,402-3)により電流が上昇し始める。最終的に、t2(404)とt3(405)との間で電流が停滞期に入り、最後の複数のプリミティブ(101)が非駆動状態になり始めた後に電流が減少し始める。電流は、t4(406)で最後のプリミティブ(101)の駆動が完了して非駆動状態になるまで減少する。このように、プリミティブ(101)及びその個々のアクチュエータ(102)の駆動を遅延させることにより、全体的な総電流を経時的に低減させることが可能である。
図3及び
図4の説明は、
図4及び
図5の説明で利用することとする。
【0031】
図5は、本書で説明する原理の一例による、流体ダイ(100)内のプリミティブ遅延設計(500)のブロック図である。
図5に含まれ及び
図1ないし
図4に関して説明した同様の符号の要素は、
図5中の同様の要素を示している。
図5のプリミティブ遅延設計(500)はダイメモリ(501)を含むことが可能である。一例では、ダイメモリ(501)は、
図5及び
図6に示すように流体ダイ(100)上に位置することが可能である。本書で説明するダイメモリ(501)及びその他のメモリ装置は、揮発性及び不揮発性メモリを含む様々なタイプのメモリモジュールを含むことが可能である。ダイメモリ(501)は、とりわけ、コンピュータ読み取り可能媒体、コンピュータ読み取り可能記憶媒体、又は非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含むことが可能である。例えば、ダイメモリ(501)は、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、又は半導体のシステム、装置、若しくは素子、又はそれらの任意の適当な組み合わせとすることが可能であるが、これらには限定されない。コンピュータ読み取り可能記憶媒体のより具体的な例としては、複数のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、RAM(randam-access meomry)、ROM(read-only memory)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学式記憶装置、磁気記憶装置、又はそれらの任意の適当な組み合わせ等が挙げられる。本書の文脈では、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、命令実行システム、装置、又は素子により使用し又はそれらに関連して使用するためのコンピュータにより使用可能なプログラムコードを含み又は格納することができる任意の有形の媒体とすることが可能である。別の例では、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、命令実行システム、装置、又は素子により使用し又はそれらに関連して使用するためのプログラムを含み又は格納することができる任意の非一時的な媒体とすることが可能である。
【0032】
ダイメモリ(501)は、複数の遅延(105)のうちの少なくとも1つを選択するためのレジスタを含むプリンティングモードを格納する。一例では、処理装置(103)は、複数のプリミティブ(101)間の所望の時間的な遅延、ひいてはプリミティブ(101)の列内及びプリント期間内で所望のピーク又は最大電流を得るために、任意数の利用可能なプリンティングモードのうちの所望のプリンティングモードをダイメモリ(501)に格納する。流体ダイ(100)及びプリンティング装置(200)は、任意数のモードで動作することが可能であり、それらモードは、任意数の関連する時間的な遅延を定義することが可能であり、該時間的な遅延は、次いで複数の遅延(105)へとプログラムすることが可能である。一例では、
図4の遅延(105)はアナログ遅延とすることが可能である。別の例では、
図4の遅延(105)はディジタル遅延とすることが可能であり、この場合にはディジタル信号を使用して遅延(105)が選択される。ダイメモリ(501)に格納されたモードを使用して遅延(105)をプログラミングすることにより、プリンティング装置(200)の流体ダイ(100)によるプリンティングに先立って、所望の時間的な遅延を選択することが可能である。
【0033】
プリミティブ遅延設計(500)は更に、プリミティブ(101)の動作(例えば、その個々のアクチュエータ(102)の駆動)を調整するために同期ディジタルクロック信号を提供する発射クロック(202)を含むことが可能である。発射クロック(202)は、そのクロック信号を、遅延(105)を含む各遅延ブロック(302)に供給する。
【0034】
駆動パルス発生器(503)がプリミティブ遅延設計(500)に含まれていることも可能である。一例では、駆動パルス発生器(503)は、流体ダイ(100)上に配置することが可能である。駆動パルス発生器(503)は、矩形駆動パルス(203)を生成し、該駆動パルス(203)をプリミティブ(101)の列内の第1のプリミティブ(101-1)に送る、任意の電子回路とすることが可能である。駆動パルス発生器(503)は、発射クロック(202)からの入力に基づいて複数の駆動パルス(203)を生成することが可能である。一例では、駆動パルス発生器(503)は、各プリミティブ(101)内のどのアクチュエータ(102)が駆動されるべきかを示す信号を第1のプリミティブ(101)に送信する。一例では、流体ダイ(100)の処理装置(103)は、プリントジョブの制御に使用されるPDLに基づいて駆動パルス発生器(503)を制御することが可能である。
【0035】
アクチュエータ(102)は、前駆パルス時間(PCPT)、無駄時間(DT)、及び発射パルス発生器(503)により生成された発射パルス時間(FPT)に基づいて駆動される。駆動パルス(302)の各エッジについての時間は、ダイメモリ(501)に格納することが可能である。駆動パルス発生器(503)は、PCPT、DT、及びFPTをプリミティブの列に送信する。
【0036】
ダイメモリ(501)は、複数のマルチプレクサ(504-1,504-2(本書では包括的に504と称す))に電気的に結合することが可能である。マルチプレクサ(504)は、遅延(105)から複数のアナログ又はディジタル入力信号のうちの1つを選択し、該選択した入力信号を流体ダイ内(100)の複数のプリミティブ(101)の列内の後続のプリミティブ(101)への単一のラインに送る任意の装置とすることが可能である。マルチプレクサ(504)は、プリンティング装置(200)がプリントに使用するよう流体ダイ(100)に命令したプリンティングモードに関するデータをダイメモリ(501)から受信することにより、プログラム可能なプリミティブ遅延セレクタとして機能する。このため、ダイメモリ(501)及びマルチプレクサ(504)を使用し、ダイメモリ(501)に格納されたモードを用いた遅延(105)及びマルチプレクサ(504)のプログラミングを介して、プリンティング装置(200)の流体ダイ(100)によるプリンティングに先立って所望の時間的な遅延を選択することが可能である。
【0037】
プリントジョブのためにダイメモリ(501)に格納されたプリントモードは、流体ダイ(100)内及び連続する各駆動パルス(203)間のピーク電流を最小限にすると共に、駆動パルス(203)を可能な限り迅速に複数のプリミティブ(101)及び複数のアクチュエータ(102)の列に伝搬させ及び全体的なプリントジョブを可能な限り迅速に完了させるために、プリンティングプロセス中に使用すべき遅延(105)に関する情報を含むことが可能である。特定のプリントジョブに使用すべき遅延(105)の選択は設定可能なものである。例えば、プリントジョブが、より多くのアクチュエータ(102)がより頻繁に駆動されることになる比較的高いプリント密度を必要とする状況では、プリントされる文書内で必要とされる密度が達成されることを確実にするために、比較的高い時間的な遅延値を有する遅延(105)を選択することが可能である。これとは対照的に、プリンティング速度が要因であり、及びテキスト文書のようにプリント密度が比較的低い場合には、駆動パルス(203)が複数のプリミティブ(101)及び複数のアクチュエータ(102)の列を一層迅速に伝搬し、その結果としてプリンティングが一層高速になることを可能とするために、時間的に一層短い遅延を選択することが可能である。
【0038】
駆動パルス(203)は、プリミティブ(101)から、遅延(105)及びマルチプレクサ(504)を含む遅延ブロック(303)へと供給される。各遅延(105)は、駆動パルス(203)を特定の時間的な度合いで遅延させることにより該駆動パルス(203)を修正する。かかる遅延信号は次いでマルチプレクサに送られる(504)。マルチプレクサ(504)は、複数の遅延(105)の何れを選択するかについての命令をダイメモリ(501)から受信する。一例では、処理装置(103)は、特定のプリントジョブ及びその個々の駆動パルス(203)についての遅延値をダイメモリ(501)に格納し、そのデータを各マルチプレクサ(504)に送信して、該マルチプレクサ(504)に適切な遅延(105)を選択させることが可能である。駆動パルス(302)が通過する遅延(105)は、各プリミティブ(101)内のアクチュエータ(102)及びそれに対応するノズルの数、プリミティブの数(101)、ダイメモリ(501)により格納されるプリント機能又はモード、プリント要求、又はそれらの組み合わせに基づくものとすることが可能である。
【0039】
本書で説明するように、各遅延(105)は、駆動パルス(203)を異なる時間量まで遅延させるように異なってプログラムすることが可能である。一例では、各遅延ブロック(302)内のマルチプレクサ(504)は同じ遅延(105)を選択する。この例では、各プリミティブ(101)間で同一の時間的な遅延が生じる。別の例では、マルチプレクサ(504)は、少なくとも2つの別個のプリミティブ(101)間で異なる時間的な遅延が生じるように、異なる遅延(105)を選択することが可能である。更に、一例では、マルチプレクサ(504)は、複数の遅延(105)の合計である時間的な遅延を得るために複数の遅延(105)を選択することが可能である。この例では、マルチプレクサ(504)は、少なくとも2つの遅延(105)を選択し、該少なくとも2つの遅延(105)のプログラムされた総合的な時間的な遅延を加算して、新たな時間的な遅延を得ることが可能である。一例では、この新たな時間的な遅延は、遅延ブロック(303)内の遅延(105)のいずれか1つを選択することにより得ることができない時間的な遅延の量とすることが可能である。
【0040】
図5の例示的なプリミティブ遅延設計(500)を使用して、流体ダイ(100)及びそのプリミティブ(101)及びアクチュエータ(102)の列内のピーク又は最大電流を所望レベル未満に維持することを確実にするために、プリミティブ(101)間の遅延を制御することが可能である。このピーク電流と電流の最大時間変化率(di/dt)の低減は、流体ダイ(100)への電力供給の過負荷を回避し、及び流体ダイ(100)内の各アクチュエータ(102)に十分な電力を提供するものとなる。更に、任意の所与の時点で駆動されるプリミティブ(101)の数が削減される。
【0041】
図5の例は、任意数のプリミティブ(101)を流体ダイ(100)内に含めることが可能であることを示すために図の最下部に位置する省略記号を含み、その各プリミティブ(101)間に、遅延(105)及びマルチプレクサ(504)をそれぞれ含む複数の遅延ブロック(303)を挿入することが可能である。このようにして、流体ダイ(100)内の各プリミティブ(101)を命令通りに遅延させることが可能となる。
【0042】
図6は、本書で説明する原理の別の例による、流体ダイ(100)内のプリミティブ遅延設計(600)のブロック図である。
図6に含まれ及び
図1ないし及び
図5に関して説明した同様の符号の要素は、
図6内の同様の要素を示している。
図6の例は、クロック分周器(601)を含むことが可能である。クロック分周器(601)は、発射クロック(502)からの信号を分周するようにダイメモリ(501)によりプログラムすることが可能である。クロック分周器(601)は、発射クロック(502)からの信号を整数で分周して、分周クロック信号を取得する。次いで、該分周クロック信号は各遅延(105)に送信される。一例では、各プリミティブ(101)間に単一の遅延(105)が含まれる。
図5と同様に、
図6は、任意数のプリミティブ(101)を流体ダイ(100)に含めることが可能であることを示すために同図の最下部に位置する省略記号を含み、遅延(105)及びマルチプレクサ(504)をそれぞれ含む複数の遅延(105)を各プリミティブ(101)間に挿入することが可能である。このようにして、流体ダイ(100)内の各プリミティブ(101)を命令通りに遅延させることが可能となる。
【0043】
一例では、クロック分周器(601)は、発射クロック(502)からのクロック信号を整数で分周することが可能である。しかし、別の例では、高度なCMOS駆動型(driven)プロセスは、位相ロックループ(PLL)が含まれている場合には、非整数比での発射クロック(502)からのクロック信号を許容することが可能である。一例では、PLLは流体ダイ(100)上に配置することが可能である。
【0044】
発射クロック(502)及びクロック分周器(601)により生成された分周クロック信号は各遅延(105)に送信され、各遅延(105)は、該分周クロック信号に基づき、プリミティブ(101)及びそのそれぞれのアクチュエータ(102)の駆動を遅延させるようプログラムすることが可能である。例えば、クロック分周器(601)は、発射クロック(502)からの信号を半分に分周するようダイメモリ(501)によりプログラムすることが可能である。これにより、駆動パルス(302)内の各カウントの分解能が半分に分割されて、該分割を行わずに任意の所与の期間中にオンになるプリミティブ(101)の個数に対し、該所与の期間中に該プリミティブ(101)の個数の半分がオンになることになる。換言すれば、クロック分周器(601)が発射クロック(502)からの信号を半分に分周することにより、プリミティブ(101)間の遅延が2倍になり、及び駆動パルス(302)が全てのプリミティブ(101)及びそのそれぞれのアクチュエータ(102)を介して伝搬するのに要する時間が2倍になることとなる。
【0045】
プリミティブ(101)の駆動間の遅延を増大させるために、クロック分周器(601)は、発射クロック(502)からの信号を更に分周する。各プリミティブ(101)間の遅延(105)は、クロック分周器(601)により提供された分周信号に基づいて連続する各プリミティブ(101)の駆動を遅延させる働きをする。
【0046】
図5及び
図6を参照すると、流体ダイ(100)は、プリミティブの駆動を遅延させるようn組の遅延(105)をプログラムする。流体ダイ(100)が、例えば、所与のプリントモードに基づいてゆっくりとプリントしている場合、流体ダイ(100)は、目標とする電流の時間変化率(di/dt)を満たすよう一層大きなプリミティブ遅延を用いることが可能である。プリミティブ遅延が大きくなるほど、任意の所与の期間内に駆動され又はオンになるプリミティブの数(101)が減少する。高電圧がVPPレールに供給され、電源と流体ダイ(100)との間に抵抗が存在する。更に、アクチュエータ(102)に対し、次いでプリミティブの列(101)に対する、有限の寄生(parasitics)が流体ダイ(100)自体に存在する。このため、アクチュエータ(102)を駆動するために電流が流れると、VPPレール上で電圧降下が発生する。この電圧降下は、VPPドループ(droop)と呼ばれることがあり、アクチュエータ(102)で実際に実現される電圧は元の電源電圧よりも低くなる。これと同じ電圧ドループが電源地帰路(PGND:power ground return)で発生し、この場合、電源では電圧は存在しないが流体ダイ(100)上でPGNDの電圧が一層高くなる場合がある。その結果として、電圧の総デルタ(total delta)が減少して、元のソース電圧を想定した場合に予想される値よりも低くなる場合がある。このVPPの下降とPGNDの上昇は、流体ダイ(100)により引き込まれる電流の量によって決まる。遅延(105)は、所与の期間内に一層少数のアクチュエータ(102)及び/又はプリミティブ(101)に重複する駆動パルス(302)を提供することにより、VPPの下降とPGNDの上昇による影響を除去し、その結果として、引き込まれる電流の減少により、ピーク電流が低減され、及びVPPの下降及びPGNDの上昇が低減されることになる。更に、VPPの下降及びPGNDの上昇の低減により、600DPI(drops/600th)等のプリント密度を増大させることが可能である。
【0047】
1つのプリミティブ(101)につき1つの遅延(105)が使用される例では、前駆パルス(PCP)は3アンペア(A)に達し、一定期間の無駄時間(DT)に続いて、発射パルス発生器により生成された発射パルス(FP)が約8.5Aに達することが可能である。1つのプリミティブ(101)につき2つの遅延(105)が使用される例では、前駆パルス(PCP)は1.5アンペア(A)に達し、一定期間の無駄時間(DT)に続いて、発射パルス発生器により生成された発射パルス(FP)が約5.5Aに達することが可能である。1つのプリミティブ(101)につき4つの遅延(105)が使用される例では、前駆パルス(PCP)は0.8アンペア(A)に達し、一定期間の無駄時間(DT)に続いて、発射パルス発生器により生成された発射パルス(FP)が約2.8Aに達することが可能である。使用される遅延(105)の数が増大すると、全体的な駆動パルスの期間又は(駆動パルス(302)の幅に等しい)電流が引き込まれる時間もまた増大する。一例では、使用することが可能な遅延(105)の数は、駆動周波数に依存するものとすることが可能である。この例では、プリンティング装置(200)は、該プリンティング装置(200)がプリントしようとする周波数に基づいて幾つの遅延(105)を使用することができるかを決定することが可能である。
【0048】
図7は、本書で説明する原理の一例による、少なくとも1つの流体射出装置のピーク電力需要を低減させる方法を示すフローチャートである。本方法は、処理装置(103)を使用し、該処理装置(103)から受信した命令に基づいて流体ダイ(100)のプリミティブ遅延を決定すること(ブロック701)を含むことが可能である。処理装置(103)は、複数のプリミティブ(101)の各々間の複数の遅延(105)を使用して、ノズルプリミティブ列内の複数のアクチュエータ(102)のための複数の駆動パルス(302)を遅延させるよう流体ダイ(100)に命令することが可能である。続いて、本方法は、流体ダイ(100)の複数のプリミティブ(101)の各々について駆動パルス(302)を生成し(ブロック702)、及び該駆動パルス(302)を介して、プリミティブ遅延に基づき、複数のプリミティブ(101)に関連付けられた複数のノズルの各々に結合された複数のアクチュエータ(102)を駆動する(ブロック703)ことが可能である。本方法は更に、複数の遅延(105)を介して各プリミティブ(101)間で駆動パルス(302)を遅延させることを含むことが可能である。この例では、本方法は、複数の遅延(105)に結合されたマルチプレクサ(504)を用いて、該複数の遅延(105)から複数の信号を選択することを含むことが可能である。
【0049】
本システム及び本方法の態様は、本書で説明する原理の例による、方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して本書で説明される。該フローチャート及び該ブロック図の各ブロック、及び該フローチャート及び該ブロック図の各ブロックの組み合わせは、コンピューターで使用可能なプログラムコードにより実施することが可能である。該コンピュータで使用可能なプログラムコードは、例えば、流体ダイ(100)の処理装置(103)又はその他のプログラム可能なデータ処理装置により実行された際に、前記フローチャート及び/又は前記ブロック図の1つ以上のブロックに示した機能又は動作を実施するように、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又はその他のマシンを構成するためのプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供することが可能なものである。一例では、該コンピュータで使用可能なプログラムコードは、コンピュータ読み取り可能記憶媒体内で実施することが可能であり、該コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータプログラム製品の一部である。一例では、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体である。
【0050】
本書及び図面は、流体ダイから流体を射出するための複数のアクチュエータを含む流体ダイについて説明している。複数のアクチュエータが複数のプリミティブを形成する。該流体ダイは、複数の駆動パルスが通過するプリミティブ列内の複数の遅延と該複数の遅延を制御する処理装置とを含む。該駆動パルスは、該プリミティブに関連付けられた各アクチュエータを駆動する。該駆動パルスは、流体ダイのピーク電力需要を低減させるために、複数の遅延の少なくとも1つを介して複数のプリミティブ間で遅延される。
【0051】
本書で説明する流体ダイ及びプリンティング装置は、プリミティブ遅延のプログラム可能な選択を提供し、この場合、任意数の遅延を含めることが可能であり、使用すべき遅延の選択は、オンダイメモリに格納されたデータに基づいて決定することが可能である。該遅延は、流体ダイ内の電流の最大時間変化率(di/dt)を低減させる。
【0052】
上記説明は、説明した原理の例を例示し説明するために提示したものである。該説明は、全てを網羅すること又はかかる原理を本開示の厳密な形態に限定することを意図したものではない。上記の教示に照らして多くの修正及び変更が実施可能である。