特許第6862623号(P6862623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862623
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】車両用バックドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20210412BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20210412BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B60J5/10 Z
   B60J5/04 R
   F16B5/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-136938(P2017-136938)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-18639(P2019-18639A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】大上 真吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕二
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−100526(JP,A)
【文献】 特開2017−100529(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013010125(DE,A1)
【文献】 特開2016−084106(JP,A)
【文献】 実開昭58−042020(JP,U)
【文献】 特開2013−220785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00− 5/14
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のインナパネルと、
前記インナパネルに接合されるアウタパネルと、
前記アウタパネルに接合されるバックウインドウと、を構成要素に含む車両用バックドアであって、
前記インナパネルは、前記バックウインドウに通じる内側開口部と、前記内側開口部の左右両側に位置し、かつ車両後方に向けて開口した一対の側部と、を備え、
前記側部には、車両後方を向く底部と、前記底部の周縁を取り囲む箱枠部と、前記底部から車両後方に向けて突出する突起部と、を有する連結片が配置され、
前記突起部は、その軸方向に対して交差する方向を向き、かつ当該軸方向回りにおいて離間した複数の周面を有し、
前記アウタパネルには、前記バックウインドウが接合される接合面から前記側部の内側に向けて凹む陥入部が形成され、
前記陥入部には、車両前後方向に貫通するとともに、前記連結片の前記突起部が挿通される基準孔が形成され、
前記基準孔の孔縁に前記突起部の前記周面が接触するとともに、前記連結片において前記底部および前記箱枠部により構成される収容部が、前記陥入部で塞がれていることを特徴とする、車両用バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のインナパネルと、インナパネルに接合されるアウタパネルと、アウタパネルに接合されるバックウインドウとを構成要素に含む車両用バックドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の軽量化および製造コストの縮減のため、従来の板金製に替わって合成樹脂製のバックドアが知られている。当該バックドアは、射出成形により製造されたインナパネルおよびアウタパネルを構成要素として、インナパネルにアウタパネルが接着剤により接合された構成となっている。インナパネルにアウタパネルを接合する際においてインナパネルに対するアウタパネルの位置決めの精度が低い状態では、接合箇所にずれが発生し、バックドアの建て付けが悪化することが懸念される。
【0003】
こうした事情から、たとえば特許文献1において、インナパネルとアウタパネルとの位置決めの精度を向上させることが可能な合成樹脂製のバックドアが開示されている。当該バックドアのインナパネルには、車室外側に向かって突出する突起部が設けられている。また、当該バックドアのアウタパネル(アウタロア)には、当該突起部が嵌合する穴部が設けられている。このような構成をとることによって、インナパネルに対するアウタパネルの位置決めの精度を向上させることが可能となる。
【0004】
ここで、特許文献1に開示されているアウタパネルの位置決め構造を適用する場合、穴部の周面全体にわたって突起部が接触すると、穴部と突起部との摩擦力が増大するため、インナパネルに対するアウタパネルの微調整が困難となる。微調整可能とするためには、突起部の形状を十字状にするなどにより突起部と穴部との接触面積を小さくして、穴部と突起部との摩擦力の低減を図ることが望ましい。この場合、突起部と穴部との間に空隙が形成される。
【0005】
また、特許文献1に開示されているバックドアにおいては、衝突などによりバックウインドウが破損したとき、ガラス片がインナパネルの側部(バックウインドウの左右両端に重なる部分)からバックドア内部に進入する。バックドア内部に進入したガラス片を除去することはアウタパネルを撤去しない限り困難であるため、バックドアの使用性および修復性が低下する。こうした事情から、たとえば特許文献2に開示されている合成樹脂製のバックドアによると、アウタパネルがインナパネルの側部を覆い、バックウインドウはアウタパネルに接合される構成となっている。このような構成をとることによって、バックウインドウのガラス片がバックドア内部に進入することを防止できる。
【0006】
ここで、特許文献2に開示されているバックドアにおいて、特許文献1に開示されている位置決め構造を適用する場合、比較的剛性が高いインナパネルの側部に当該構造を適用することが位置決め精度確保の観点からも望ましい。この場合において、インナパネルに対するアウタパネルの微調整を可能とするために、突起部と穴部との間に空隙が形成されると、当該空隙からバックウインドウのガラス片が進入することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−220785号公報
【特許文献1】特開2016−120792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑み、インナパネルに対するアウタパネルの位置決め精度の向上を図りつつ、バックウインドウのガラス片がバックドア内部に進入することを防止できる車両用バックドアを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供される車両用バックドアは、合成樹脂製のインナパネルと、前記インナパネルに接合されるアウタパネルと、前記アウタパネルに接合されるバックウインドウと、を構成要素に含む車両用バックドアであって、前記インナパネルは、前記バックウインドウに通じる内側開口部と、前記内側開口部の左右両側に位置し、かつ車両後方に向けて開口した一対の側部と、を備え、前記側部には、車両後方を向く底部と、前記底部の周縁を取り囲む箱枠部と、前記底部から車両後方に向けて突出する突起部と、を有する連結片が配置され、前記突起部は、その軸方向に対して交差する方向を向き、かつ当該軸方向回りにおいて離間した複数の周面を有し、前記アウタパネルには、前記バックウインドウが接合される接合面から前記側部の内側に向けて凹む陥入部が形成され、前記陥入部には、車両前後方向に貫通するとともに、前記連結片の前記突起部が挿通される基準孔が形成され、前記基準孔の孔縁に前記突起部の前記周面が接触するとともに、前記連結片において前記底部および前記箱枠部により構成される収容部が、前記陥入部で塞がれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる車両用バックドアにおいては、突起部を有する連結片がインナパネルの側部に配置され、かつアウタパネルには、側部の内側に向けて凹む陥入部に基準孔が形成されている。突起部および基準孔が、インナパネルに対するアウタパネルの位置決め構造を構成する。突起部が基準孔に挿通されたとき、基準孔の孔縁に突起部の周面が接触し、かつ隣り合う2つの周面の間には空隙が形成される。このような構成をとることによって、突起部と基準孔との摩擦力が低減され、位置決めの微調整がより容易となる。また、連結片において底部および箱枠部により構成される収容部が、陥入部で塞がれている。このような構成をとることによって、バックウインドウが破損した際、空隙に進入したガラス片は、収容部に捕捉される。したがって、本発明にかかる車両用バックドアによれば、インナパネルに対するアウタパネルの位置決め精度の向上を図りつつ、バックウインドウのガラス片がバックドア内部に進入することを防止できる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる車両用バックドアの分解斜視図である。
図2図1に示すバックドアを構成するインナパネルの正面図(車両後方から視た図)である。
図3図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4図2のIV−IV線に沿う断面図である。
図5図2のV−V線に沿う断面図である。
図6図2のVI−VI線に沿う断面図である。
図7図2の部分拡大図(左側側部付近)である。
図8図7の部分拡大図(連結片付近)である。
図9図1に示すバックドアの部分拡大正面図(インナパネル左側側部付近)である。
図10図9に対してバックウインドウおよび上部パネルを取り外したときの状態を示す部分拡大正面図である。
図11図9の部分拡大図(アウタパネルの上部パネルの陥入部付近)である。
図12図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図12に基づき、本発明の一実施形態にかかる車両用バックドア(以下「バックドアA10」という。)について説明する。なお、理解の便宜上、図9および図11は、バックウインドウ30(詳細は後述)を透過している。
【0015】
ここで、説明の便宜上、各図において示されるuprを車両上方向、dwを車両下方向、frを車両前方向、rrを車両後方向、rhを車両右方向、lhを車両左方向とする。なお、以下の説明で特段なく「前後」、「上下」および「左右」を用いる場合であって、「前後」は車両前後方向の前後を指し、「上下」は車両上下方向の上下を指し、「左右」は車両左右方向(車幅方向)の左右を指すものとする。
【0016】
バックドアA10は、車両の後部開口を塞ぐように配置され、図1に示すように、インナパネル10、アウタパネル20およびバックウインドウ30を構成要素として含む。インナパネル10は、車両前方および車内側に位置し、かつ合成樹脂製である。インナパネル10は、ガラス繊維(GF)が含有されたポリプロピレン(PP)により構成され、かつ射出成形により一体成形されている。インナパネル10の色は、灰白色である。アウタパネル20は、車両後方および車外側に位置し、かつインナパネル10に接合される。本実施形態にかかるアウタパネル20は、合成樹脂製であり、かつ上部パネル20aと下部パネル20bとに上下分離された構成となっている。バックウインドウ30は、アウタパネル20よりも車両後方および車外側に位置し、かつアウタパネル20に接合される。バックウインドウ30は、ガラス製である。
【0017】
インナパネル10は、図2に示すように、内側開口部11、一対の側部12、開口上辺部13および裾部14を備える。インナパネル10の強度および剛性(曲げおよびねじり)は、アウタパネル20の強度および剛性よりも高く設定されている。
【0018】
内側開口部11は、図2に示すように、一対の側部12、開口上辺部13および裾部14によって囲まれた開口領域である。内側開口部11は、車両前後方向においてアウタパネル20の外側開口部21(詳細は後述)を介してバックウインドウ30に通じている。
【0019】
図2に示すように、内側開口部11に隣接する一対の側部12、開口上辺部13および裾部14の内縁には、車両上下方向および車幅方向において内側開口部11に向けて突出する内周フランジ151が形成されている。内周フランジ151は、内側開口部11を取り囲んでいる。また、図2に示すように、一対の側部12および裾部14の外縁には、車幅方向および車両下方においてインナパネル10の外側に向けて突出する外周フランジ152が形成されている。内周フランジ151および外周フランジ152の後面(インナパネル10の正面)にアウタパネル20を突き合わせることによって、インナパネル10にアウタパネル20が接合される。接合にあたっては、たとえばポリウレタン系接着剤が用いられる。
【0020】
一対の側部12は、図2に示すように、内側開口部11の左右両側に位置し、かつ車両上下方向に延びている。一対の側部12は、インナパネル10において柱構造を構成する。一対の側部12は、開口上辺部13と裾部14とを連結する。図3に示すように、側部12は、底面121および一対の内側面122を有する。
【0021】
図3に示すように、底面121は、車両上下方向および車幅方向に沿って配置され、かつ車両後方を向く。一対の内側面122は、底面121の左右両端につながり、かつ車両後方に向けて突出している。一対の内側面122は、車幅方向において互いに対向している。一方の内側面122の後端は、内周フランジ151につながっている。他方の内側面122の後端は、外周フランジ152につながっている。このため、内周フランジ151および外周フランジ152を含めた側部12の横断面形状は、車両後方に向けて開口したハット状である。
【0022】
連結片16は、図2および図7に示すように、側部12に配置され、かつ一対の内側面122を連結する部材である。連結片16は、側部12とともにインナパネル10において一体成形されている。本実施形態では、連結片16は、各々の側部12において上下1箇所ずつ配置されている。
【0023】
図8に示すように、連結片16は、底部161、箱枠部162および突起部163を有する。底部161は、車両後方を向く部分である。箱枠部162は、底部161の周縁を取り囲み、かつ車両後方に向けて突出する部分である。箱枠部162には、車両後方に向けて開口した締結孔162aが形成されている。インナパネル10にアウタパネル20が接合される際、締結孔162aには車両後方から締結部材29(詳細は後述)が挿通される。連結片16において、底部161および箱枠部162により収容部164が構成されている。収容部164は、車両後方に向けて開口した中空領域である。突起部163は、底部161から車両後方に向けて突出する部分である。本実施形態では、突起部163は、車両後方から視て十字状である。突起部163の突出量は、箱枠部162の突出量よりも大に設定されている。底部161につながる突起部163の前端は、箱枠部162に囲まれ、かつ収容部164に収容されている。
【0024】
図8に示すように、突起部163は、複数の周面163aを有する。各々の周面163aは、突起部163の軸方向(車両前後方向)に対して交差する方向を向いている。複数の周面163aは、当該軸方向回り(突起部163の周方向)において離間している。本実施形態では、周面163aの数は4つである。周面163aは、突起部163の軸方向に対して直交する方向(突起部163の径方向)を向く第1領域163bと、当該軸方向に対して傾斜したテーパをなし、かつ第1領域163bから突起部163の後端に向けて延びる第2領域163cとを有する。連結片16には、各々の第1領域163bから箱枠部162までに至る隔壁165が形成されている。隔壁165の前端は、底部161につながっている。本実施形態では、隔壁165は、収容部164を4つに区画している。
【0025】
開口上辺部13は、図2に示すように、内側開口部11よりも車両上方に位置し、かつ車幅方向に延びている。開口上辺部13は、インナパネル10において梁構造を構成する。開口上辺部13には、一対のドアヒンジ取付け部131が設けられている。一対のドアヒンジ取付け部131は、開口上辺部13の左右両端に位置する。各々のドアヒンジ取付け部131には、車両前方からドアヒンジ(図示略)が、車両後方から鋼製のドアヒンジ補強材(図示略)が、それぞれ取り付けられている。バックドアA10は、左右一対のドアヒンジを介して車両の後部開口の上縁に連結される。このため、バックドアA10は、当該ドアヒンジにより車両の後部開口の上縁回りに回動可能とされている。この回動によって、バックドアA10の開閉がなされる。
【0026】
裾部14は、図2に示すように、内側開口部11よりも車両下方に位置する。裾部14は、インナパネル10において板構造を構成する。裾部14は、開口下辺部141、一対の連結部142および枠部143を有する。
【0027】
図2に示すように、開口下辺部141は、裾部14の上端に位置し、かつ車幅方向に延びる部分である。図5に示すように、開口下辺部141には、車両後方に向けて開口した周溝144が形成されている。周溝144は、車両上下方向および車幅方向に沿って配置され、かつ車両後方を向く底面144aを有する。
【0028】
図2に示すように、一対の連結部142は、開口下辺部141の左右両側に位置し、かつ側部12の下端がそれぞれつながる部分である。各々の連結部142には、車両前方からダンパステー(図示略)が、車両後方から鋼製のドアステー補強材(図示略)が取り付けられている。図4に示すように、内周フランジ151および外周フランジ152を含めた連結部142の横断面形状は、車両後方に向けて開口したハット状である。このようなハット状断面に基づき、連結部142には、車両後方に向けて開口した周溝144が形成されている。
【0029】
図2に示すように、枠部143は、裾部14の下端および左右両端に位置し、かつ一対の連結部142につながる部分である。図5および図6に示すように、枠部143には、開口下辺部141および一対の連結部142と同じく、車両後方に向けて開口した周溝144が形成されている。開口下辺部141、一対の連結部142および枠部143において、周溝144は、車両後方から視て連続した枠状(ロ字状)に形成されている。また、枠部143の下端中央には、ラッチ取付け部143aが取り付けられている。バックドアA10は、ラッチ取付け部143aに取り付けられたラッチ(図示略)が車両の後部開口の下縁に設けられたストライカ(図示略)に係合することによって、車両の後部開口がバックドアA10により閉じられた状態が保持される。
【0030】
図2図5および図6に示すように、裾部14において周溝144により囲まれた領域には、周溝144の底面144aに対して車両後方に向けて膨出する箱形膨出部145が形成されている。箱形膨出部145は、車両後方を向き、かつ車両上下方向および車幅方向に沿った膨出面145aを有する。インナパネル10にアウタパネル20が接合されたとき、箱形膨出部145は、膨出面145aに塗布された接着剤(たとえばポリウレタン系接着剤)を介してアウタパネル20に接触する。箱形膨出部145には、膨出面145aから車両前方に向けて凹み、かつ車両後方に向けて開口した一対の凹溝146が形成されている。凹溝146の横断面形状は、溝形状(コ字状)である。一対の凹溝146は、ラッチ取付け部143aの左右両側から車幅方向に対して斜め上方に延びて、一対の連結部142に到達している。
【0031】
アウタパネル20は、図1に示すように、本実施形態では、上下分離された上部パネル20aおよび下部パネル20bにより構成される。インナパネル10に上部パネル20aおよび下部パネル20bが接合されたとき、インナパネル10の内側開口部11とバックウインドウ30との間に位置する外側開口部21がアウタパネル20において構成される。
【0032】
上部パネル20aは、図1に示すように、アウタパネル20の上半分に位置する部位である。インナパネル10に上部パネル20aが接合されたとき、一対の側部12の上半分と、開口上辺部13とが車両後方から上部パネル20aにより塞がれる。
【0033】
図1に示すように、上部パネル20aは、外側開口部21の左右両側に位置する一対の上アーム部221を備える。上アーム部221は、車両下方に向かって延びている。図9に示すように、上アーム部221は、車両後方を向く接合面23aを有する。接合面23aには、バックウインドウ30を上部パネル20aに接合するための接着剤(たとえばポリウレタン系接着剤)が塗布される。上アーム部221の下端には、車両後方から視て矩形状のフランジ241が形成されている。
【0034】
下部パネル20bは、図1に示すように、アウタパネル20の下半分に位置する部位である。インナパネル10が下部パネル20bに接合されたとき、一対の側部12の下半分と、裾部14とが車両後方から下部パネル20bにより塞がれる。
【0035】
図1に示すように、下部パネル20bは、外側開口部21の左右両側に位置する一対の下アーム部222を備える。下アーム部222は、車両上方に向かって延びている。図9および図10に示すように、下アーム部222は、車両後方を向く接合面23bを有する。接合面23bには、バックウインドウ30を下部パネル20bに接合するための接着剤(接合面23aに塗布される接着剤と同一)が塗布される。図10に示すように、下アーム部222の上端には、接合面23bから凹む突合せ部242が形成されている。突合せ部242に車両後方から上部パネル20aのフランジ241が係合する。このため、本実施形態では、図10に示すように、まず、インナパネル10に下部パネル20bが接合された後、図9に示すように、インナパネル10に上部パネル20aが接合され、かつアウタパネル20にバックウインドウ30が接合される構成となる。
【0036】
一対の上アーム部221には、図9に示すように、接合面23aからインナパネル10の側部12の内側(車両前方)に向けて凹む陥入部25aが形成されている。同様に、一対の下アーム部222には、図9および図10に示すように、接合面23bから側部12の内側に向けて凹む陥入部25bが形成されている。陥入部25a,25bには、車両前後方向に貫通する基準孔251が形成されている。側部12に配置された連結片16の突起部163は、基準孔251に挿通されている。インナパネル10にアウタパネル20が接合される際、突起部163および基準孔251は、インナパネル10に対するアウタパネル20の位置決め構造を構成する。また、図9に示すように、陥入部25a,25bには、基準孔251に隣接した位置に締結部材29が配置されている。締結部材29は、たとえばタッピングねじである。締結部材29は、インナパネル10に対するアウタパネル20の位置決めが完了した際に配置される。締結部材29は、陥入部25a,25bに形成された孔(図示略)と連結片16の締結孔162aとに連通される。
【0037】
図11に示すように、インナパネル10にアウタパネル20が接合された際、基準孔251の孔縁に、突起部163の周面163a(第1領域163b)が接触する。このとき、突起部163の軸方向回りにおいて隣り合う2つの周面163aの間には、空隙251aが形成される。この場合において、図12に示すように、連結片16において底部161および箱枠部162により構成される収容部164が、陥入部25a,25bで塞がれる。空隙251aは、収容部164に通じている。なお、アウタパネル20にバックウインドウ30が接合された際、バックウインドウ30は車両後方から陥入部25a,25bを塞ぐ構成となる。
【0038】
次に、バックドアA10の作用効果について説明する。
【0039】
バックドアA10においては、突起部163を有する連結片16がインナパネル10の側部12に配置されている。あわせて、アウタパネル20には、接合面23a,23bから側部12の内側に向けて凹む陥入部25a,25bに、突起部163が挿通される基準孔251が形成されている。突起部163が基準孔251に挿通されたとき、基準孔251の孔縁に突起部163の周面163aが接触し、かつ隣り合う2つの周面163aの間には空隙251aが形成される。このような構成をとることによって、インナパネル10に対するアウタパネル20の位置決めを行うとき、突起部163と基準孔251との摩擦力が低減され、位置決めの微調整がより容易となる。
【0040】
また、連結片16において底部161および箱枠部162により構成される収容部164が、陥入部25a,25bで塞がれている。このような構成をとることによって、バックウインドウ30が破損した際、空隙251aに進入したガラス片は、収容部164に捕捉される。したがって、バックドアA10によれば、インナパネル10に対するアウタパネル20の位置決め精度の向上を図りつつ、バックドアA10内部にバックウインドウ30のガラス片が進入することを防止できる。
【0041】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0042】
A10:バックドア
10:インナパネル
11:内側開口部
12:側部
121:底面
122:内側面
13:開口上辺部
131:ドアヒンジ取付け部
14:裾部
141:開口下辺部
142:連結部
143:枠部
143a:ラッチ取付け部
144:周溝
144a:底面
145:箱形膨出部
145a:膨出面
146:凹溝
151:内周フランジ
152:外周フランジ
16:連結片
161:底部
162:箱枠部
162a:締結孔
163:突出部
163a:周面
163b:第1領域
163c:第2領域
164:収容部
165:隔壁
20:アウタパネル
20a:上部パネル
20b:下部パネル
21:外側開口部
221:上アーム部
222:下アーム部
23a,23b:接合面
241:フランジ
242:突合せ部
25a,25b:陥入部
251:基準孔
251a:空隙
29:締結部材
30:バックウインドウ
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