(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の強弱駆動用モーター、揉み駆動用モーター、叩き駆動用モーターのように複数のモーターを用いると、部品の中でも重量があるモーターの数が複数となるため、マッサージ機全体の重量が非常に重いものとなってしまう。当然、このようなマッサージ機は設置や運搬が困難なものとなる。
また、1台のマッサージ機に複数のモーターを設けると、モータを制御する機構も複数となり、マッサージ機の内部の構造が複雑なものとなる。このような複雑な装置構成はマッサージ機の操作性やメンテナンス性の低下を招くおそれがあり好ましくない。さらに、モータ−はマッサージ機に用いられる部品の中でもコストが嵩むものであり、複数設ければ当然マッサージ機の価格を高騰させる原因となる。
【0007】
そこで、本発明は、装置の構造が簡単でありながら、異なるマッサージ態様が選択可能とされた
手持ち型マッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明のマッサージ装置は、回転駆動力を発生させる駆動部と、使用者の施療部に対して
揉み施療子と掴み施療子とで揉みマッサージを行う
揉みマッサージ機構と、
前記使用者の施療部に対して前記揉み施療子を振動させ叩きマッサージを
行う叩きマッサージ機構と、前記
揉みマッサージ機構及び
前記叩きマッサージ機構に対して前記駆動部の回転駆動力を伝達可能とする動力伝達機構と、を備えたマッサージ装置であって、前記動力伝達機構は、前記駆動部で正方向の回転駆動力を発生させた場合には
前記揉みマッサージ機構及び
前記叩きマッサージ機構の双方に回転駆動力を伝達し、前記駆動部で逆方向の回転駆動力を発生させた場合には前記
揉みマッサージ機構のみに動力伝達を行う
ことが切り替え自在な構成とされてい
て、前記揉みマッサージ機構が、前記揉み施療子を左右方向にうねり揺動させて、前記使用者の施療部に対して揉みマッサージを行い、前記叩きマッサージ機構が、前記揉みマッサージの揺動時間間隔より短い時間間隔で前記揉み施療子を振動させて、前記使用者の施療部に対して叩きマッサージを、前記揉みマッサージに付加して行う構成とされていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、好ましくは、
前記掴み施療子は、常に、前記揉み施療子に対して上下方向に近接離反しながら揺動するとよい。
なお、好ましくは、
前記叩きマッサージ機構の駆動と停止を切り替え自在とする切替手段が設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記駆動部は、一つの駆動モータを備えるとよい。
なお、好ましくは、前記駆動モータが、一端側駆動軸と他端側駆動軸とを備えた両軸モータであって、前記動力伝達機構が、前記駆動軸の一端側駆動軸に連結されて当該一端側駆動軸の回転駆動力を揉みマッサージ機構に伝達する揉み回転軸と、前記駆動軸の他端側駆動軸に連結されて当該他端側駆動軸の回転駆動力を叩きマッサージ機構に伝達する叩き回転軸と、前記叩き回転軸に設けられて、前記他端側駆動軸の回転方向に応じて回転駆動力の伝達状態を切替可能なクラッチ部材
からなる前記切替手段と、を有しているとよい。
【0010】
なお、好ましくは、前記クラッチ部材は、前記他端側駆動軸が正方向に回転した場合に前記叩き回転軸へ回転駆動力を伝達し、前記他端側駆動軸が逆方向に回転した場合に前記叩き回転軸へ回転駆動力の伝達を規制する「一方向クラッチ部材」で構成されているとよい。。
なお、好ましくは、前記揉みマッサージ機構は、前記揉み回転軸に取り付けられると共に当該揉み回転軸の軸心に対して傾斜した傾斜カム面を有する傾斜ボス部材と、前記傾斜ボス部材の傾斜カム面に摺動自在に嵌り込む環状嵌合部と、前記環状嵌合部が基端側に設けられると共に先端側が径外側に向かって突出した揉みアーム部材と、前記揉みアーム部材の先端側に設けられた揉み施療子と、前記揉みアーム部材が揉み回転軸と同伴回動することを規制する規制部材と、を備えているとよい。
【0011】
なお、好ましくは、前記揉み回転軸には、前記揉みマッサージ部材の揉み施療子に対して近接離反する掴み施療子を備えた掴みマッサージ部材が設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記叩きマッサージ機構は、前記揉み回転軸の軸心を挟んで前記揉み施療子とは反対側に設けられた係合片と、前記叩き回転軸に取り付けられると共に当該叩き回転軸の軸心に対して偏心回転する叩きボス部材と、一端側が前記叩きボスの外周面に回転自在に嵌り込むと共に、他端側と前記係合片とが自在継ぎ手で連結されている連結シャフトと、を備えていているとよい。
また、本発明にかかる
手持ち型マッサージ装置の好ましい形態は、
使用者の背面側に対するマッサージを可能とするマッサージユニットが格納された筐体と、前記筐体の左右両側から前方に向かって突き出ていて使用者が把持可能とされた取手部と、を有する手持ち型マッサージ装置であり、前記マッサージユニットは、回転駆動力を発生させる駆動部と、使用者の施療部に対して揉み施療子と掴み施療子とで揉み
動作と掴み動作を行う揉みマッサージ機構と、前記使用者の施療部に対して前記揉み施療子を振動させ叩き
動作を行う
叩きマッサージ機構と、を備え、
前記駆動部は、一つの駆動モータを備え、前記駆動モータが、一端側駆動軸と他端側駆動軸とを備えた両軸モータであって、前記一端側駆動軸の回転駆動力により、前記揉みマッサージ機構が、前記揉み施療子を左右方向に揺動運動させて、前記使用者の施療部に対して揉みマッサージを行い、前記他端側駆動軸の回転駆動力により、前記叩きマッサージ機構が、前記揉みマッサージの揺動時間間隔より短い時間間隔で前記揉み施療子を振動させて、前記使用者の施療部に対して叩きマッサージを、前記揉みマッサージに付加して行う構成とされていることを特徴とする。
更に好ましい手持ち型マッサージ装置は、前記揉みアーム部材の先端下側には下部揉み施療子が設けられ、前記揉みアーム部材の先端上側には上部揉み施療子が設けられており、前記一端側駆動軸による回転駆動力により、前記掴み施療子は、下部揉み施療子に近接離反することで上下方向の掴みマッサージを発現し、前記上部揉み施療子は、揉みアーム部材の揺動運動により左右方向の掴みマッサージを発現するように構成されている。
更に好ましい手持ち型マッサージ装置は、前記上部揉み施療子が、前記下部揉み施療子よりも幅方向内側へオフセットされた位置に設けられている。
更に好ましい手持ち型マッサージ装置は、前記叩きマッサージ機構の駆動と停止を切り替え自在とする切替手段が設けられている。
更に好ましい手持ち型マッサージ装置は、前記切替手段は、前記他端側駆動軸が正方向に回転した場合に前記叩き回転軸へ回転駆動力を伝達し、前記他端側駆動軸が逆方向に回転した場合に前記叩き回転軸へ回転駆動力の伝達を規制する「一方向クラッチ」を有する。
更に好ましい手持ち型マッサージ装置は、前記一端側駆動軸側に、前記揉みマッサージ部材の揉み施療子に対して近接離反する掴み施療子を備えた掴みマッサージ部材が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の
手持ち型マッサージ装置によれば、装置の構造が簡単でありながら、異なるマッサージ態様が選択可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のマッサージ装置を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本実施形態のマッサージ装置1は、使用者の肩や腰といった施療部に対して、施療部の上を通過するように、左右に延びる取手を有する筐体2(装置本体)を回し掛けて、筐体2に内蔵された施療子を施療部に押し当てることで施療部のマッサージを行うものである。
【0015】
具体的には、本実施形態のマッサージ装置1は、上方から見た場合にU字状となるような外観の筐体2を備えている。この筐体2は、前方に向かって突き出た左右両側の部分が取手部3L、3Rとされている。また、筐体2における左右の取手部3L、3Rの間には、施療部に対して施療を行うマッサージ機構4が設けられている。そして、このマッサージ機構4は、取手部3L、3Rよりも後方に位置するようになっており、使用者の背面の施療部などに対する施療が可能となっている。つまり、本実施形態のマッサージ装置1は、上述した取手部3L、3Rを手で掴んで位置を変えることで、施療子によりマッサージを行う場所を適宜変更可能となっている。
【0016】
具体的には、左右の取手部3L、3Rの間の筐体2には、前方に向かって開口する開口部5が形成されている。そして、上述したマッサージ機構4は、この開口部5から施療子(後述する揉み施療子6及び掴み施療子7)を前方に突出させるようにして、筐体2の内部に収容されている。
また、左側の取手部3Lの近傍に位置する筐体2には、マッサージ機構4に電力を供給する電源ボタン、マッサージコースやマッサージモードを選択できる選択ボタン、施療時間や施療強さといったマッサージ条件を変更可能な条件変更ボタンなどの各種ボタン8が設けられており、取手部3Lの先端には電源コード用の挿し込み部9も形成されている。
【0017】
なお、実際のマッサージ装置1では、筐体2の開口部5は、マッサージ機構4に異物が入り込むことを防止するカバーで覆われているが、
図1ではカバーを省略した状態で図示を行っている。
図2及び
図3は、本実施形態のマッサージ装置1に設けられるマッサージ機構4を示したものである。
【0018】
本発明のマッサージ機構4は、回転駆動力を発生させる駆動部10と、使用者の施療部に対してマッサージを行う第1のマッサージ機構11と、第1のマッサージ機構11とは異なるマッサージを行う第2のマッサージ機構12と、第1のマッサージ機構11及び第2のマッサージ機構12に対して駆動部10の回転駆動力を伝達可能とする動力伝達機構13と、を有している。
【0019】
上述した動力伝達機構13は、駆動部10で正方向の回転駆動力を発生させた場合には第1のマッサージ機構11及び第2のマッサージ機構12の双方に発生させた回転駆動力を伝達し、駆動部10で逆方向の回転駆動力を発生させた場合には第1のマッサージ機構11のみに発生させた回転駆動力を伝達する構成とされている。
以降では、本実施形態のマッサージ機構4を構成する駆動部10、第1のマッサージ機構11、第2のマッサージ機構12、並びに動力伝達機構13について説明する。
【0020】
駆動部10は、上述した第1のマッサージ機構11及び第2のマッサージ機構12などを駆動させるための回転駆動力を発生させる部分であり、本実施形態では1基の駆動モータ14を備えている。この駆動モータ14は、上下方向に駆動軸15を向けるようにして配備された両軸モータであり、上方に突出する駆動軸15(一端側駆動軸15U)と下方に突出する駆動軸15(他端側駆動軸15D)とのそれぞれから回転駆動力を出力可能な構成となっている。
【0021】
本実施形態の場合、上側の駆動軸15U(一端側駆動軸)からは第1のマッサージ機構11に回転駆動力が出力され、下側の駆動軸15D(他端側駆動軸)からは第2のマッサージ機構12に回転駆動力が出力される。つまり、上側の駆動軸15Uと第1のマッサージ機構11の間には第1の動力伝達機構16が設けられており、下側の駆動軸15Dと第2のマッサージ機構12の間には第2の動力伝達機構17が設けられていて、駆動軸15の回転駆動力をそれぞれのマッサージ機構11,12に分けて伝達できるようになっている。
【0022】
ところで、本発明のマッサージ装置1は、1基の駆動モータ14でありながら、複数のマッサージ機構11,12を選択的に用いて、多様なマッサージを行うことを特徴としている。このように1基の駆動モータ14から複数のマッサージ機構11,12に回転駆動力を分けて伝達可能な構成であれば、駆動部10の設置数が少なくて済むためマッサージ機構4の構造が簡単なものとなり、装置の重量増加や価格の高騰も抑えることができる。
【0023】
そこで、本実施形態のマッサージ装置1に設けられるマッサージ機構4では、上述した第1の動力伝達機構16または第2の動力伝達機構17のいずれかに、駆動部10の駆動軸15が正方向に回転した場合には回転駆動力を伝達するが、駆動軸15が逆方向に回転した場合には回転駆動力を伝達しないものが用いている。例えば、本実施形態のマッサージ機構4の場合であれば、上述した第2の動力伝達機構17に、駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達を切り換えるものを用いている。具体的には、駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達を切り換える手段として、本実施形態では一方向クラッチ18(ワンウェイクラッチ部)を設けている。
【0024】
本発明の一方向クラッチ18としては、駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達が切り換え可能なものであれば、さまざまな手段を用いることができる。図例の一方向クラッチ18は、駆動側の軸部(後述する第2回転軸19)に設けられた歯部と、従動側の部材(後述する第2ウォームホイール21)の内周側に形成された爪部と、を有している。この一方向クラッチ18は、第2ウォームホイール21の接線方向に対して歯部の歯が傾けて形成されていて、第2ウォームホイール21の回転方向によって爪部が歯部に噛み合ったり噛み合わなかったりするラチェット機構を構成している。
【0025】
つまり、
図5Aに示すように、本実施形態のマッサージ機構4では、駆動軸15が正方向に回転する場合には、一方向クラッチ18の爪部が歯部に噛み合って、正方向に回転する駆動軸15の回転駆動力が第2回転軸19に伝達される。ところが、
図5Bに示すように、駆動軸15が逆方向に回転する場合には、一方向クラッチ18の爪部が歯部に対して滑り、逆方向に回転する駆動軸15の回転駆動力は第2回転軸19に伝達されない。
【0026】
その結果、
図6Aに示すように、駆動軸15が正方向に回転する場合には、第1回転軸23と第2回転軸19とが共に回転駆動されて、第1回転軸23に連結された第1のマッサージ機構11及び第2回転軸19に連結された第2のマッサージ機構12が動作する。
ところが、
図6Bに示すように、駆動軸15が逆方向に回転する場合には、第1回転軸23は回転駆動されても、第2回転軸19は回転駆動されることはない。その結果、第1のマッサージ機構11は動作しても、第2のマッサージ機構12が動作することはない。
【0027】
なお、上述したラチェット機構は、駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達を切り換える一方向クラッチ18の一例に過ぎない。駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達を切り換える部材としては、スプラグやカムなどを用いた部材を用いてもよい。
上述したマッサージ機構4では、駆動軸15の回転方向によって回転駆動力の伝達が切り換えられるため、駆動モータ14の回転方向を切り換えるだけで、動作させるマッサージ機構4を選択することができる。そのため、駆動モータ14の設置数が1基の場合であっても動作させるマッサージ機構4を切り換えてバリエーションに富んだマッサージを実施することが可能となる。
【0028】
なお、上述した第1の動力伝達機構16や第2の動力伝達機構17には、駆動部10の回転駆動力を利用したマッサージ機構4のうち、「マッサージの種類」や「施療部の位置」などが互いに異なるものを用いることができる。例えば、本実施形態のように揉みマッサージ機構24を第1のマッサージ機構11とした場合には、「マッサージの種類」が異なる叩きマッサージ機構25を第2のマッサージ機構12とすることができる。また、肩を揉む揉みマッサージ機構を第1のマッサージ機構11とした場合には、「マッサージの種類」が同じ揉みマッサージ機構24とされた背中を揉む揉みマッサージ機構を第2のマッサージ機構12として用いることもできる。さらに、第1のマッサージ機構11または第2のマッサージ機構12に、揉みマッサージ機構24、叩きマッサージ機構25、掴みマッサージ機構26などを複数設けても良い。つまり、本発明のマッサージ機構4は、駆動部10で発生させた回転駆動力を、動力伝達機構13を介して、「マッサージの種類」や「施療部の位置」などが互いに異なる複数のマッサージ機構4に伝達し、これらのマッサージ機構4を選択的に動作可能とする構成とされている。
【0029】
以降では、マッサージ機構4の一例として、第1のマッサージ機構11に揉みマッサージ機構24と掴みマッサージ機構26、駆動部10の回転方向で動作状態が切り換えられる第2のマッサージ機構12に叩きマッサージ機構25を用いた例を挙げて、本実施形態のマッサージ装置1を説明する。
図3に示されるように、上述した第1の動力伝達機構16は、駆動モータ14の一端側駆動軸15Uに取り付けられた第1ウォームギヤ27と、上側の駆動軸15Uと交差する向きに(左右方向に沿って)配備された減速軸28に取り付けられて、第1ウォームギヤ27と噛み合う第1ウォームホイール29と、を備えている。また、減速軸28にはさらに第1減速ギヤ30が設けられていて、第1減速ギヤ30は減速軸28と平行に配備された第1回転軸23の第2減速ギヤ31に噛み合っている。つまり、上述した減速軸28、第1減速ギヤ30、第1回転軸23、及び第2減速ギヤ31が、駆動モータ14の上側の駆動軸15Uの回転駆動力を第1回転軸23に伝達する第1の動力伝達機構16を構成しており、上側の駆動軸15Uの回転駆動力は減速された状態で第1回転軸23に伝達されることになる。
【0030】
なお、本実施形態のマッサージ装置1の場合、第1のマッサージ機構11は揉みマッサージを専ら行うものとなっている。それゆえ、以降では、第1回転軸23を揉み回転軸という場合がある。
揉みマッサージ機構24は、使用者の肩、背中、腰などの施療部に対して揉み施療子6を押し当てて、施療部に対して揉み施療子6による揉みマッサージを行うものである。この揉みマッサージ機構24は、上述した第1の動力伝達機構16で揉み回転軸(第1回転軸23)に伝達された駆動部10の回転駆動力の一部を用いて動作する構成となっている。
【0031】
具体的には、上述した揉みマッサージ機構24は、揉み回転軸に取り付けられると共に当該揉み回転軸の軸心に対して傾斜した傾斜カム面32を有する傾斜ボス部材33と、傾斜ボス部材33の傾斜カム面32に摺動自在に嵌り込む第1環状嵌合部34と、第1環状嵌合部34が基端側に設けられると共に先端側が径外側に向かって突出した揉みアーム部材35と、揉みアーム部材35の先端側に設けられた揉み施療子6と、揉みアーム部材35が揉み回転軸と同伴回動することを規制するボールジョイント部36(第1規制部材)と、を備えている。
【0032】
図4に示すように、傾斜ボス部材33は、揉み回転軸に両端側に取り付けられた円筒状の部材であり、揉み回転軸の左端と右端とに1つずつ設けられている。それぞれの傾斜ボス部材33の外周面には、揉み回転軸(第1回転軸23)の軸心に対して傾斜した軸心回りを周回する傾斜カム面32が形成されている。この傾斜カム面32の傾斜方向は、左端の傾斜ボス部材33と右端の傾斜ボス部材33とで反対となっている。つまり、
図4において、左端の傾斜カム面32が左下がりに傾斜している場合は、右端の傾斜カム面32が右下がりに傾斜している。また、左端の傾斜カム面32が右下がりに傾斜している場合は、右端の傾斜カム面32が左下がりに傾斜している。これらの傾斜カム面32には、回転軸受を介して第1環状嵌合部34がそれぞれ回動可能に嵌合している。
【0033】
第1環状嵌合部34は、上述した傾斜ボス部材33の傾斜カム面32に回動可能に嵌合する円筒状の部材である。第1環状嵌合部34には、この第1環状嵌合部34が基端側に設けられると共に先端側が径外側に向かって突出した揉みアーム部材35が設けられている。
揉みアーム部材35は、第1環状嵌合部34の外周側に設けられた部材であり、左右いずれかの側方から見た外観形状が前後方向に長尺な略菱形となる板部材である。つまり、揉みアーム部材35は、長手方向の中途側に上述した第1環状嵌合部34を備えている。また、揉みアーム部材35は、長手方向の一端側が前方に向かって突出していて、この前方に向かって突出した一端(前端)に揉み施療子6が取り付けられている。さらに、揉みアーム部材35における長手方向の他端側は後方に向かって突出していて、この後方に向かって突出した他端(後端)には自在継ぎ手のボールジョイント部36(係合片)が取り付けられている。
【0034】
このボールジョイント部36は、上述した揉みアーム部材35に対して叩きマッサージ機構25の叩きマッサージの駆動力を付与する部材であると共に、揉みアーム部材35が揉み回転軸と同伴回動することを規制する第1規制部材となっている。なお、このボールジョイント部36については、叩きマッサージ機構25の説明において、くわしく説明する。
【0035】
本実施形態のマッサージ機構4には、上述した第1のマッサージ機構11として、揉みマッサージ機構24以外にも、掴みマッサージ機構26が設けられている。
この掴みマッサージ機構26は、上述した揉み回転軸に取り付けられると共に当該揉み回転軸の軸心に対して偏心した偏心カム面37を有する偏心ボス部材38と、偏心ボス部材38の偏心カム面37に摺動自在に嵌り込む第2環状嵌合部39と、第2環状嵌合部39が基端側に設けられると共に先端側が径外側に向かって突出した掴みアーム部材40と、掴みアーム部材40の先端側に設けられた掴み施療子7と、掴みアーム部材40が揉み回転軸と同伴回動することを規制する回動規制片41(第2規制部材)と、を備えている。
【0036】
偏心ボス部材38は、揉み回転軸に両端側に取り付けられた円筒状の部材であり、傾斜ボス部材33よりも揉み回転軸の中央側にそれぞれ1つずつ配備された円筒状の部材である。それぞれの偏心ボス部材38の外周面には、揉み回転軸の軸心に対して偏心した軸心回りを周回する円筒面状の偏心カム面37が形成されている。この偏心カム面37の軸心は、左端の偏心ボス部材38と右端の偏心ボス部材38とで同じ方向に偏心したものとなっており、ある回転位相において左端の偏心カム面37の中心(円筒面の回転軸心)がある方向に向かってオフセットされている場合は、右端の偏心カム面37の中心(円筒面の回転軸心)も同じ方向に向かってオフセットされている。これらの偏心カム面37には、第2環状嵌合部39がそれぞれ回動可能に嵌合している。
【0037】
第2環状嵌合部39は、上述した偏心ボス部材38の偏心カム面37に回動可能に嵌合する円筒状の部材である。第2環状嵌合部39には、この第2環状嵌合部39が基端側に設けられると共に先端側が径外側に向かって突出した掴みアーム部材40が設けられている。
掴みアーム部材40は、第2環状嵌合部39の外周側に設けられた部材である。掴みアーム部材40の基端側には第2環状嵌合部39が設けられている。また、掴みアーム部材40の先端側は、基端側を基準とした場合に下側前方に位置していて、この下方に突き出た掴みアーム部材40の先端側に掴み施療子7が配備されている。
【0038】
掴み施療子7は、施療部を掴んでも痛みがないように、前方に向かって半円状に湾曲した部材であり、揉み施療子6との間に施療部を挟み込んで掴みマッサージを行うものとなっている。
回動規制片41は、前後方向に延びる円弧状の板状部材であり、掴みアーム部材40とモータハウジング(筐体2)とを連結することで、掴みアーム部材40が揉み回転軸と同伴回動することを規制する第2規制部材となっている。具体的には、回動規制片41は、後方上側から前方下側に向かって傾斜状に配備された長尺板状の部材である。回動規制片41の後端側は、モータハウジング(筐体2)に対して左右方向を向く軸回りに揺動自在に連結されている。また、回動規制片41の前端側は、掴みアーム部材40の前後方向の中途側に、左右方向を向く軸回りに揺動自在に連結されている。
【0039】
上述した第1のマッサージ機構11、つまり揉みマッサージ機構24及び掴みマッサージ機構26では、駆動モータ14の上側の駆動軸15Uから出力された回転駆動力を上述した第1の動力伝達機構16を通じて揉み回転軸(第1回転軸23)に伝達する。この回転駆動力は、傾斜ボス部材33、第1環状嵌合部34、ボールジョイント部36(第1規制部材)を介して揉みアーム部材35を左右方向に揺動させる動きに変換される。その結果、左右の揉みアーム部材35、35同士は互いに近接し合ったり離反し合ったりし、左右の揉みアーム部材35、35の間に位置する施療部に対して揉みマッサージ動作を行うことが可能となる。
【0040】
一方、掴みマッサージ機構26では、上側の駆動軸15Uから出力された回転駆動力は、偏心ボス部材38、第2環状嵌合部39、第2規制部材を介して掴みアーム部材40を上下方向に揺動させる動きに変換される。その結果、掴みマッサージ機構26では、揉み施療子6と掴み施療子7との間に位置する施療部に対して、施療部を掴み上げるような掴みマッサージ動作を行うことが可能となる。
【0041】
なお、上述した揉みマッサージ機構24や掴みマッサージ機構26の動作は、駆動軸15の回転方向が正方向であっても逆方向であっても、同様に行われる。
上述した第1のマッサージ機構11に対して、第2のマッサージ機構12は、駆動部10における下側の駆動軸15D(他端側駆動軸)から出力される回転駆動力を用いて動作するものとなっている。つまり、第2のマッサージ機構12は、駆動部10で発生した回転駆動力を、第2の動力伝達機構17を介して第2回転軸19に伝達して動作する構成とされている。
【0042】
上述した第2の動力伝達機構17は、駆動モータ14の下側の駆動軸15Dに取り付けられた第2ウォームギヤ42と、この第2ウォームギヤ42と噛み合う第2ウォームホイール21と、を備えている。この第2ウォームホイール21は下側の駆動軸15Dと交差する向きに(左右方向に沿って)配備された第2回転軸19に取り付けられている。つまり、これらの第2ウォームギヤ42、第2ウォームホイール21、第2回転軸19が、上述した第2の動力伝達機構17を構成している。
【0043】
なお、本実施形態のマッサージ装置1の場合、第2のマッサージ機構12は叩きマッサージを専ら行うものとなっている。それゆえ、以降では、第2回転軸19を叩き回転軸という場合がある。
叩きマッサージ機構25は、使用者の肩、背中、腰などの施療部に対して揉み施療子6を短い時間間隔で叩き付けて、施療部に対して揉み施療子6の打撃による叩きマッサージを行うものである。この叩きマッサージ機構25は、上述した第2の動力伝達機構17で叩き回転軸(第2回転軸19)に伝達された駆動部10の回転駆動力の一部を用いて動作する構成となっている。
【0044】
具体的には、上述した叩きマッサージ機構25は、叩き回転軸に取り付けられると共に当該叩き回転軸の軸心に対して偏心した軸回りに円筒状とされた叩きボス部材43と、叩きボス部材43の外周面に摺動自在に一端側が嵌り込むと共に他端側に揉みアーム部材35のボールジョイント部36を受けるブーツ部44を備える連結シャフト45と、を備えている。
【0045】
叩きボス部材43は、叩き回転軸の両端側に配備された部材であり、叩き回転軸の軸心に対して偏心した軸回りに円筒状に形成されている。この叩きボス部材43の外周面は円筒面状とされており、この外周面に連結シャフト45の一端側が左右方向の向く軸回りに回動自在に嵌合している。
連結シャフト45は、上下方向に延びる長尺な部材であり、叩き回転軸の回転駆動力を用いて揉みアーム部材35に伝達する部材となっている。具体的には、連結シャフト45の一端側(下端側)は上述した叩きボス部材43の外周面に回動自在に嵌合しており、連結シャフト45の下端側は叩きボス部材43に左右方向を向く軸回りに回動自在に連結されている。また、連結シャフト45の他端側(上端側)には、揉みアーム部材35のボールジョイント部36を受けるブーツ部44が形成されている。このブーツ部44は、ボールジョイント部36を軸承できるように後方に向かって球面状に凹んだ部分であり、前方から揉みアーム部材35のボールジョイント部36を差し込んで揉みアーム部材35と連結シャフト45とを連結可能とされている。さらに、連結シャフト45の長手方向の中途側は、前後方向を向く軸回りに揺動自在になっており、左右方向に揺動する揉みアーム部材35との連結を可能としている。
【0046】
ボールジョイント部36は、揉みアーム部材35における揉み施療子6の反対側の端部(後端側)に配備された部分であり、後方に向かって球状に突出した部分である。ボールジョイント部36は、ブーツ部44の内径とほぼ同じ外径かやや小さい外径を備えており、ブーツ部44に上下左右方向に揺動自在に連結可能とされている。
上述した叩きマッサージ機構25では、駆動モータ14の下側の駆動軸15Dから出力された回転駆動力が上述した第2の動力伝達機構17を通じて叩き回転軸(第2回転軸19)に伝達される。この回転駆動力は、叩きボス部材43、連結シャフト45、自在継ぎ手(ボールジョイント部36及びブーツ部44)を介して、揉みアーム部材35を上下方向に沿った往復移動(振動)として伝達される。それゆえ、上述した第2のマッサージ機構12では、駆動モータ14の下側の駆動軸15Dから出力された回転駆動力により、揉みアーム部材35が前後方向に向かって短い時間間隔で往復し、施療部に対して揉み施療子6を叩き付けるような叩きマッサージを行うことが可能となる。
【0047】
なお、上述した第2のマッサージ機構12の動作は、駆動軸15の回転方向が正方向の場合のものである。駆動軸15の回転方向が逆方向になった場合には、上述した一方向クラッチ18によって駆動軸15の回転駆動力が第2回転軸19(叩き回転軸)に伝達しなくなるため、第2のマッサージ機構12がマッサージ動作を行うことはない。
つまり、ラチェット機構を採用する本実施形態の一方向クラッチ18では、駆動軸15が正方向に回転する場合には、一方向クラッチ18の爪部22が歯部20に噛み合って、正方向に回転する駆動軸15の回転駆動力が第2回転軸19に伝達される。ところが、駆動軸15が逆方向に回転する場合には、一方向クラッチ18の爪部22が歯部20に対して滑り、逆方向に回転する駆動軸15の回転駆動力は第2回転軸19に伝達されない。
【0048】
その結果、駆動軸15が正方向に回転する場合には、第1回転軸23と第2回転軸19とが共に回転駆動されて、第1のマッサージ機構11及び第2のマッサージ機構12が動作する。ところが、駆動軸15が逆方向に回転する場合には、第1回転軸23は回転駆動されても、第2回転軸19は回転駆動されることはない。その結果、第1のマッサージ機構11は動作しても、第2のマッサージ機構12が動作することはない。
【0049】
上述した本実施形態のマッサージ装置1では、駆動軸15の回転方向によって、第1のマッサージ機構11と第2のマッサージ機構12とが協働するマッサージ状態と、第1のマッサージ機構11は動作するが第2のマッサージ機構12は動作しないマッサージ状態とを切り換えることができる。そのため、1基の駆動部10(駆動モータ14)を用いたものではあっても、多様なマッサージを行うことが可能となる。
【0050】
加えて、多様なマッサージを可能とするために、高価で重量のある駆動モータ14は1基で済むため、装置の構造が簡単で、装置の重量も軽量なものでありながら、価格の高騰を抑えることも可能となる。
なお、今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された各実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0051】
例えば、本明細書においては、手持ち型マッサージ機を例に説明を進めたが、本発明のマッサージ装置1には、椅子型マッサージ機、シート型マッサージ機、座椅子タイプのマッサージ機などにも用いることが可能である。
また、上述した実施形態では、叩きマッサージ機構25(第2のマッサージ機構12)に一方向クラッチ18を設けた例を挙げて本発明のマッサージ装置1を説明した。しかし、一方向クラッチ18を設ける箇所は、叩きマッサージ機構25(第2のマッサージ機構12)に限定されるものではない。例えば、一方向クラッチ18は、揉みマッサージ機構24や掴みマッサージ機構26、詳しくは第1のマッサージ機構11の第1回転軸23に設けてもよい。