特許第6862628号(P6862628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本総合研究所の特許一覧

特許6862628フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム
<>
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000002
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000003
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000004
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000005
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000006
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000007
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000008
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000009
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000010
  • 特許6862628-フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862628
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/00 20060101AFI20210412BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20210412BHJP
   H04L 12/58 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G06F13/00 610Q
   G06Q50/10
   H04L12/58 100D
   H04L12/58 100F
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-55821(P2017-55821)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-160015(P2018-160015A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年6月26日
【審判番号】不服2019-11392(P2019-11392/J1)
【審判請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】神谷 良樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】山谷 奈央
(72)【発明者】
【氏名】シュース エンゲルバート健人
【合議体】
【審判長】 角田 慎治
【審判官】 富澤 哲生
【審判官】 小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−14835(JP,A)
【文献】 特開2005−84747(JP,A)
【文献】 特開2001−325372(JP,A)
【文献】 特開2001−84186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/00
H04L 12/58
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための検証装置であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、
前記抽出された複数のメールアドレスに、同時刻に別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御する手段とを、
備えることを特徴とする検証装置。
【請求項2】
前記同内容のメールに、前記ユーザと前記メールの送信元の間で定めた合言葉を挿入する合言葉挿入手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の検証装置。
【請求項3】
前記メールアドレス抽出手段は、前記ユーザの複数のメールアドレスを別々の記憶手段から抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の検証装置。
【請求項4】
前記複数のメールは、宛先、CC又はBCCに前記複数のメールアドレスを記入した同報メールでないこと、を条件とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の検証装置。
【請求項5】
ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とする検証方法であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するステップと、
前記抽出された複数のメールアドレスに、同時刻に別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする検証方法。
【請求項6】
請求項5に記載の各ステップを、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシング詐欺防止のための検証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関等からの正規のメールを偽装したメールを送信し、このメールに表示された偽のWEBサイトのアドレスにアクセスさせ、暗証番号やパスワード、クレジットカード番号などを詐取する不正行為(いわゆるフィッシング詐欺)が増加している。
【0003】
このようなフィッシング詐欺を防止するために、ユーザインタフェースに対する操作が、他のWEBサイトへの接続を指示する操作と異なる所定の第1条件に適合する場合、電子メール本文に含まれる第1リンク情報が示すリンク先の安全性の検証を依頼し、その検証結果に対応する表示情報を、第1リンク情報とは異なる他のリンク先を示す第2リンク情報とともに視認可能に表示する端末装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
このような端末装置によれば、電子メールに記載されたリンク先へのアクセス動作を行うことなく、当該リンク先の安全性を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−103078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不正行為を行うWEBサイトは、日々、巧妙になっており、全ての不正行為を行うWEBサイトの安全性を検証することは困難になってきている。一方、安全性を確保するためのセキュリティーのレベルを上げた場合、本来、不正行為を行うWEBサイトでなく、正規のWEBサイトへのリンク情報にもかかわらず、不正行為を行うWEBサイトと判断され、正規のWEBサイトにアクセスできず、ユーザの利便性を損なうという問題がある。
【0006】
このような問題は、メールを受信したユーザが、正規の機関(例えば、金融機関等)からのメールなのか、正規の機関を偽装した者からのメールなのかを判別できないことに起因する。このため、メールに表示されたWEBサイトの安全性を検証するのではなく、メールが正規の機関(例えば、金融機関等)から送信されたことの信用性を向上することが望まれている。
【0007】
そこで本発明では、上記のような課題に鑑み、メールが正規の機関(例えば、金融機関等)から送信されたことを、メールを受信したユーザ自らが検証することが可能な検証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の検証装置は、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
(1)ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールの送信元を検証するための検証装置であって、ユーザの複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、
前記抽出された複数のメールアドレスに、別々のステップで、同内容のメールを送信する手段とを、備えることを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記同内容のメールに、前記ユーザと前記送信元の間で定めた合言葉を挿入する合言葉挿入手段を備えることを特徴とする。
【0011】
(3)前記メールアドレス抽出手段は、前記ユーザの複数のメールアドレスを別々の記憶手段から抽出することを特徴とする。
【0012】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの構成において、前記複数のメールは、ほぼ同時刻に送信されたものであること、宛先、CC又はBCCに前記複数のメールアドレスを記入した同報メールでないこと、を条件とする。
【0013】
(5)ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールの送信元を検証するための検証装置であって、ユーザを識別する1つのユーザ識別情報に対応付けられた互いに異なる複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、前記送信元を検証するための検証情報を抽出する検証情報抽出手段と、前記メールアドレス抽出手段が抽出した複数のメールアドレス宛に、前記検証情報抽出手段が抽出した前記検証情報を送信する検証情報送信手段と、を備え、前記検証情報抽出手段は、前記ユーザ端末において、互いに表示される態様が異なる複数種類の前記検証情報を抽出することを特徴とする。
【0014】
(6)上記(5)の構成において、前記検証情報抽出手段は、互いに合わせることで、検証を確定するための情報である検証確定情報となる複数種類の前記検証情報を抽出することを特徴とする。
【0015】
(7)上記(5)又は(6)の構成において、前記検証情報抽出手段は、互いに合わせることで、1つの内容を示す情報となる複数種類の前記検証情報を抽出することを特徴とする。
【0016】
(8)上記(5)から(7)までのいずれか1つの構成において、前記ユーザ端末が前記検証情報を受信する手段は、第2のメールアドレスで受信することに代えて、前記送信元の公式サイトのユーザ専用ページであることを特徴とする。
【0017】
(9)ユーザ端末にネットワークを介して接続された検証装置が実行する検証方法であって、ユーザを識別する1つのユーザ識別情報に対応付けられた互いに異なる複数のメールアドレスを抽出するステップと、メールの送信元を検証するための検証情報を抽出するステップと、前記抽出した複数のメールアドレス宛に、前記抽出した検証情報を送信するステップと、を含み、前記検証情報を抽出するステップは、前記ユーザ端末において、互いに表示される態様が異なる複数種類の前記検証情報を抽出することを特徴とする。
【0018】
(10)上記(9)に記載の各ステップを、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メールが正規の機関から送信されたことを、受信したユーザ自らが検証することが可能な検証システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用される検証システムにおける検証装置による検証サービスの基本概念を説明する図である。
図2】本発明の第1の実施形態におけるメールの送付例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態における広告メール送信処理フローを示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態における合言葉メールの送信処理フローを示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態における検証装置及びユーザ端末の機能構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態におけるユーザDBに格納されるデータを表形式で模式的に示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態における検証装置が実行する検証処理フローを示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態における検証情報抽出手段が抽出した検証情報に基づき、一方のユーザ端末に表示されるメールの表示例である。
図9】2通のメールの検証結果として表示される画面例、及び完成したURLでアクセスしたときに表示される画面例である。
図10】本発明の第2の実施形態における検証情報抽出手段が抽出した検証情報に基づき、他方のユーザ端末に表示されるメールの別の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0022】
(基本概念)
図1は、本発明が適用される検証システム1における検証装置10による検証サービスの概念を説明する図である。検証システム1は、メールの送付元が正規の事業者であることを検証するためのシステムである。例えば、ユーザが利用している金融機関等を偽装したメールを送信し、不正な手段により、ユーザの情報を取得する、いわゆる、フィッシング詐欺からユーザを保護するためのシステムである。
【0023】
検証システム1は、メールの送信元が正規の者であることを、ユーザ自らが検証可能とする検証装置10(送信サーバ)と、ユーザ端末20(20A,20B)とがネットワークを介して接続されている。検証装置10は、例えば、金融機関等のインターネットを利用した金銭の取引を提供する者によって管理される。複数のユーザ端末20(20A,20B)は、1人のユーザにより操作される(所持又は所有される)端末である。メールの送信元は、ユーザの2つ以上のメールアドレスをメールアドレス記憶手段100から抽出し、抽出した複数のメールアドレスに、ほぼ同時刻に同一のメールを送信する。複数の同一メールを、別々のメールアドレスで受け取ったユーザは、送信元が正規のものである可能性が高いと判断できる。
【0024】
なお、ここでいう「メール」には、ショートメッセージサービス(SMS)によるメッセージやチャット形式のメッセージサービス(メッセンジャー)によるメッセージを含むものとする。以下、本発明の実施形態を2つ挙げて詳しく説明する。
【0025】
なお、以下の実施形態の説明では、1人のユーザが複数のユーザ端末20(20A,20B)(例えば、一方の端末はスマートフォンで、他方の端末はPC)で、複数の互いに異なるメールアドレスでメールを受信する例について説明するが、これに限らず、複数の互いに異なるメールアドレスのメールを1台のユーザ端末20で受信してもよい。
【0026】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について説明する。上記の検証システム1の第1の実施形態において、検証装置10は、図2(a)に示すように、まったく同じ内容(同一文面)のメールを、ユーザが当該送付元に登録した異なる2つのメールアドレス(sato01@aaa.jpとsato01@bbb.jp)に送信する。フィッシング詐欺メールの例としては、ダイレクトメール(DM)による、広告やキャンペーン、重要なお知らせなどの通知、通告がある。特に、金銭の支払を求め、支払がなければ法的手段に訴えるとのメール、パスワードの更新を求めるメール、むやみに個人情報の入力を求めるメールなどは、フィッシング詐欺の可能性が高いので注意を要する。上記のように、ダイレクトメールが同一内容の2通のメールが送られてくれば、ユーザは、その送付元が、自らメールアドレスを登録した正規の相手であることが容易に確認できる。
【0027】
このとき、送付元は、メール送信に先立ち、送付先のユーザの複数のメールアドレスを取得(抽出)する。なお、このような複数のメールアドレスは、あらかじめ、ユーザに対応付けられて、セキュリティーが確保されたメールアドレス記憶手段100(例えば、ユーザごとに管理されたユーザDB)に登録(記憶)されているものとし、その記憶手段からメールアドレスを抽出する。
【0028】
図2(b)は、ユーザに同一文面のメールを送るのではなく、それぞれのメールに、「合言葉」を含ませるようにしたものである。すなわち、送信元は、メールの件名、又は本文中のURL(Uniform Resource Locator)等に合言葉を含めてユーザに送信する。ここでの合言葉は、もう一方のメールを確認しないと分からないようにする。つまり、送信したそれぞれの2通のメールには、互いに合言葉となる一対の言葉が含まれており、ユーザが両方のメールを受けたとったときに初めて合言葉として完成する。例えば、メールAの件名に「山」が含まれていれば、ユーザがメールBの件名に含まれている「川」をメールAの件名に入力しない限り、メールAの本文は確認できないようにする。同様に、メールAの本文中のURLに「山」が含まれていれば、ユーザがメールBのURLに含まれた「川」を入力しない限り、そのURLが開けないようにする。メールBを開くときも同様である。ただし、実際の合言葉は、このような単純なものではなく、合言葉であることさえ他人には分からないようなものとすることが望ましい。
【0029】
(第1の実施形態の処理フロー)
図3は、最も単純な広告メールの送信処理の概略フローである。ステップS1で第1と第2のメールアドレスを抽出し、ステップS2で、第1のメールアドレスに広告URLを送信し、ステップS3で第2のメールアドレスに同一のメールを送信する。
【0030】
図4は、合言葉を含んだメール送信処理の概略フローである。ここでは、ステップS1Aで第1のメールアドレスを抽出し、ステップS1Bで第2のメールアドレスを別のメールアドレスDBから抽出している。このようにメールアドレスを別々の記憶手段で管理すると、より安全性が高まる。
【0031】
次にステップS2では、ユーザと送信元との間であらかじめ定めた合言葉(言葉のペア)を抽出して、メールの内容(件名、メール本文中のURL、その他メール本文の任意の場所)に挿入する。すなわち、検証装置10は、合言葉挿入手段を備える。なお、合言葉の抽出先はメールアドレスDBと別であってもよい。
【0032】
そして、ステップS3Aでは、第1のメールアドレスに、一方の合言葉を例えばURLに含ませた合言葉URLを送信し、ステップS3Bで、第2のメールアドレスに、もう一方のペアとなる合言葉を同じURLに含ませた合言葉URLメールを送信する。ステップS3AとステップS3Bが並列処理になっているのは、ほぼ同時刻に2つのメールを送信することを表すためである。
【0033】
このように、複数のメールは、ほぼ同一時刻に送信するものとするが、同報メール(宛先(To)、CC(Carbon Copy)、BCC(Blind Carbon Copy)等に、同一ユーザの複数のメールアドレスを記入したもの)ではなく、別々のステップでメールを送信するものとする。したがって、検証手段としては無効であると判断する条件(検証無効条件)として、ほぼ同一時刻に送信されたメールでないもの、又は同報メールで送信されたものは、たとえ合言葉が含まれていても無効とする。なお、送信元のメールアドレスは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
また、図示は省略するが、上記の第1の実施形態では、送信元の当該ユーザに対する送信記録(送信履歴データベース)を、ユーザが閲覧可能とする手段を提供してもよい。このようにすることで、2通のメールとも確実に正規の送信元から送信されたものであることをユーザが確認できる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態についてより詳しく説明する。第1の実施形態では、送信元が一方的にユーザにメールを送信する場合を想定したが、第2の実施形態では、メールを受信したユーザ自らが送信元を検証する場合を想定している。なお、第1の実施形態と共通する記載も一部に含んでいるが、第1の実施形態と第2の実施形態を独立に実施してもよいし、両者を組み合わせて実施してもよい。
【0036】
第2の実施形態においては、検証装置10は、抽出した複数のメールアドレスに、送付元をユーザが検証できるようにするための「検証情報」をメールに含ませてユーザ端末20に送信する。すなわち、検証装置10は、ユーザ端末20において表示される態様が互いに異なる複数種類の検証情報を、複数のメールアドレスにそれぞれ送信する。ここで、複数の「検証情報」とは、例えば、正規のホームページのURLを2つに分割したものであってもよい。すなわち、検証情報Aと検証情報Bとを、互いに合わせることで、1つの完成した内容として正規のホームページのURLを示す情報となる。第1の実施形態における「合言葉」も一種の検証情報である。また、本実施形態において、このような複数の検証情報を、互いに合わせることで、検証を確定するための情報(上記の例では、正規のホームページのURLを示す情報)を、検証確定情報とも言う。
【0037】
ユーザは、ユーザ端末20において、例えば、あらかじめ自分で登録していた複数のメールアドレスで、上記のような互いに異なる複数種類の検証情報を受信した場合、これら複数の検証情報を、互いに合わせることで検証確定情報を得ることができる。そして、例えば、検証確定情報が正規のホームページのURLであれば、ユーザは、このアドレスにアクセスすることで、検証装置10によって検証される。
【0038】
第2の実施形態によれば、例えば、ある1つのメールアドレス宛に、金融機関等の名称を名乗り、表示されたアドレスにアクセスすることを促すメールを、ユーザが受信しても、2つのメールアドレスに検証情報が分散されていないので、このメールが金融機関等からのものか、金融機関等を偽装したものかを容易に判別できる。したがって、メールが正規の機関(例えば、金融機関等)から送信されたことの信用性を確認することが可能となる。
【0039】
図5は、第2の実施形態における検証システム1における検証装置10及びユーザ端末20の機能構成を示す図である。検証装置10は、検証依頼受信手段11と、メールアドレス抽出手段12と、検証情報抽出手段13と、検証情報送信手段14と、検証手段15と、ユーザデータベース(以下、ユーザDB)100と、を備える。
【0040】
検証依頼受信手段11は、ユーザ端末20から、検証を依頼する検証依頼情報を受信する。検証依頼情報は、例えば、検証システム1を管理する金融機関等の正規のホームページにおける金銭取引において、ユーザが正規のユーザであることの検証を依頼する場合に、ユーザ端末20から送信される情報である。このような検証依頼情報には、検証を依頼することを示す情報に、ユーザを識別するユーザ識別情報等が対応付けられている。
【0041】
メールアドレス抽出手段12は、ユーザDB100を参照して、ユーザ端末20から検証依頼情報を送信したユーザを識別する1つのユーザ識別情報に対応付けられた互いに異なる複数のメールアドレスを抽出する
【0042】
図6は、ユーザDB100に格納されるデータを表形式で模式的に示す図である。ユーザDB100は、ユーザを識別する1つのユーザ識別情報であるユーザIDに、複数(例えば、図6に示す例では2つ)のメールアドレスと、検証手段15において送信元を検証するための複数の検証情報と、が対応付けられている。なお、図6に示す検証情報は、ユーザ端末20に表示される態様を示している。
【0043】
複数の検証情報は、互いに合わせることで、検証を確定するための情報である検証確定情報となるものが望ましい。また、複数の検証情報は、互いに合わせることで、1つの内容を示す情報となるものが望ましい。図6に示す例では、ユーザID(sato01)の2つのメールアドレスにそれぞれ対応付けられている一方の検証情報は、「https://www.abank.co.jp/AAA」である。この検証情報における「AAA」は、他の文字列等に置き換えられることを示す。また、2つのメールアドレスにそれぞれ対応付けられている他方の検証情報は、「AAA」と置き換えられる「OOO」が対応付けられている。そして、一方の検証情報「https://www.abank.co.jp/AAA」のうち、「AAA」を他方の検証情報「OOO」と置き換えることで、例えば、検証システム1を管理する金融機関等の正規のホームページにおけるユーザの検証を確定するためのページのURLとなる。すなわち、一方の検証情報と他方の検証情報を、互いに合わせることで、検証を確定するための情報である検証確定情報となり、また、互いに合わせることで、1つの内容を示す情報となる。
【0044】
なお、図5に示す例では、ユーザDB100において、複数のメールアドレスに、それぞれ互いに異なる検証情報が対応付けられている。しかしながら、これに限らず、互いに異なる検証情報は、例えば、あらかじめ記憶されたものでなく、ワンタイムパスワードのように、ユーザ端末20に送信される度に変更されるもの(例えば、ユーザの検証を確定するためのページのURLが変更されるもの)であってもよい。
【0045】
図6に戻って、検証情報抽出手段13は、ユーザDB100を参照して、検証情報を抽出する。また、上述のように、検証情報抽出手段13はユーザ端末20において、互いに表示される態様が異なる複数種類の検証情報を抽出する。また、検証情報抽出手段13は、互いに合わせることで検証を確定するための情報である検証確定情報となる複数種類の検証情報を抽出する。また、検証情報抽出手段13は、互いに合わせることで1つの内容を示す情報となる複数種類の検証情報を抽出する。
【0046】
検証情報送信手段14は、メールアドレス抽出手段12が抽出した複数のメールアドレス宛に、検証情報抽出手段13が抽出した複数の検証情報をそれぞれメールの内容に示し、ほぼ同じタイミングで、ユーザ端末20に送信する。
【0047】
検証手段15は、複数種類の検証情報を互いに合わせた検証確定情報によるユーザ端末20からのアクセスに基づき、送信元を検証する。例えば、図6に示す例によれば、ユーザは、ユーザ端末20により、検証情報送信手段14から送信された複数の検証情報を互いに合わせ、検証確定情報を得て、この検証確定情報が示すURLにアクセスする。これにより、検証手段15は、当該送信元を検証する。
【0048】
(ユーザ端末20の構成)
ユーザ端末20は、各ユーザに適した機器(例えば、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、ネットワークに接続可能なテレビ、冷蔵庫等の情報家電等)で構成されている。ユーザ端末20は、上記のような機器そのものであってもよいし、上記の複数の機器と家庭内等のローカルネットワークを介して、情報交信可能な制御機器であってもよい。また、ユーザ端末20は、店舗に設置され、ユーザが操作可能なATM(automatic teller machine)であってもよい。
【0049】
ユーザ端末20は、ユーザ端末送受信手段21と、ユーザ端末制御手段22と、ユーザ端末入出力手段23と、を備える。ユーザ端末送受信手段21は、ユーザ端末制御手段22の制御により、検証装置10に検証依頼情報を送信し、検証装置10からメールにて検証情報を受信する。なお、ユーザ端末20は、複数台で、複数の検証情報を、それぞれ受信してもよいし、1台で複数のメールアドレス宛のメールを受信可能な場合には、複数の検証情報を、複数のメールアドレス宛のメールでそれぞれ受信してもよい。
【0050】
ユーザ端末制御手段22は、ユーザ端末入出力手段23におけるユーザの操作に基づき検証依頼情報を検証装置10に送信し、検証装置10からメールに示された検証情報を、ユーザ端末入出力手段23に表示させ、ユーザの操作を受け付け、検証確定情報により、検証装置10の検証を確定させる。
【0051】
上記のシステムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0052】
(第2の実施形態の処理フロー)
図7は、本発明の実施形態に係る検証装置10が実行する検証処理フローを示す図である。このような検証処理フローは、検証装置10が実行する検証方法を示すものである。
【0053】
ステップS1において、検証依頼受信手段11は、ユーザ端末20から、検証を依頼する検証依頼情報を受信する。
【0054】
ステップS2において、メールアドレス抽出手段12は、ユーザDB100を参照して、ステップS1でユーザ端末20から検証依頼情報を送信したユーザを識別する1つのユーザIDに対応付けられた互いに異なる複数のメールアドレスを抽出する。なお、ユーザからの検証依頼でなく、例えば、金融機関等側からユーザに連絡する場合には、ステップS1を省略し、ユーザDB100を参照して、連絡したいユーザのユーザIDに対応付けられた互いに異なる複数のメールアドレスを抽出してもよい。
【0055】
ステップS3において、検証情報抽出手段13は、ユーザDB100を参照して、ステップS1でユーザ端末20から検証依頼情報を送信したユーザのユーザIDに対応付けられ、互いに合わせることで、検証を確定するための情報である検証確定情報となる複数種類の検証情報を抽出する。
【0056】
ステップS4において、検証情報送信手段14は、ステップS2でメールアドレス抽出手段12が抽出した複数のメールアドレス宛に、ステップS3で検証情報抽出手段13が抽出した複数の検証情報をそれぞれメールの内容に示し、ほぼ同じタイミングで、ユーザ端末20に送信する。
【0057】
図8は、検証情報抽出手段13が抽出した検証情報に基づき、ユーザの所持する2つの端末であるユーザ端末20Aと20Bにそれぞれで受信した2通のメールの表示例を示したものである。
【0058】
図8(a)は、図4に示すステップS4の処理により、ステップS2でメールアドレス抽出手段12が抽出した複数のメールアドレス宛の一方のメールを、ユーザ端末20Aで検証情報Aを受信し、表示したものである。図8(a)に示すように、ユーザ端末20Aのユーザ端末入出力手段23には、図6に示すユーザDB100において、ユーザID(sato01)に対応付けられた2つのメールアドレスの一方のメールアドレス(sato01@aaa.jp)に対応付けられた検証情報A(https://www.abank.co.jp/)が表示されている。
【0059】
図8(b)は、他方のユーザ端末20Bに表示されるもう一方のメールの表示例である。ユーザ端末20Bには、図6に示すユーザDB100において、ユーザID(sato01)に対応付けられた2つのメールアドレスの他方のメールアドレス(sato01@bbb.com)に対応付けられた検証情報B(OOO)が表示されている。このような検証情報が示されたメールを、ユーザ端末20A,20Bでそれぞれ受信したユーザは、これらの検証情報A,Bを互いに合わせ、検証確定情報(本実施形態に示す例では、WEBページのURL)を得て、この検証確定情報(URL)にアクセスすることができる。
【0060】
図9(a)は、2通のメールを送信後、図7のステップS5のように、なんらかの検証を行うときに、送信元であるサービス提供者(この例ではa銀行)からの検証結果の画面例を示したものである。この例では、a銀行が、2通のメールを送ったときのエビデンスとして、メールの標題とメールの発信時刻が記載されている。
【0061】
また、図9(b)は、2通のメールで得た情報で完成したURL(検証確定情報)にユーザがアクセスしたときに表示される画面である。この例では、a銀行からの重要なお知らせとして、パスワード更新依頼の画面が表示されている。このようにすることで、ユーザは、送信されてきた2通メールが正規のものであることを確認でき、パスワード更新を求めるような重要な依頼であっても、安心して操作を進めることができる。
【0062】
ただし、ユーザ端末20Bに、同じ送信元からのメールで、検証情報Bを受信しても検証情報として万全ではない。偽メール送信者が、2通ともメールを偽造し、更に検証手段も偽造していることも考えられるからである。したがって、ユーザ端末20Bは、メールで検証情報Bを受信するのではなく、メール(第2のメールアドレス)に代わる別の受信手段として、例えば、送信元であるa銀行の公式サイトを利用することができる。
【0063】
図10(a)は、一方のユーザ端末20Aにおいて、検証情報Bがメール送信ではなく、a銀行の公式サイトであるインターネットバンキングサイト上のユーザの専用ページである「Myページ」で確認可能であることをユーザに示している。
【0064】
図10(b)は、このMyページに表示された内容を示したものである。ユーザは、このMyページから、検証情報Bを確認し、検証情報Aと合わせることで検証確定情報を得て、そのURLにアクセスすることができる。このようにすることで、偽メール送信者が、たとえ本システムの「2通のメール」方式を真似たとしても、詐欺に合うことを防止することができる。
【0065】
図7に戻って、ステップS5において、検証手段15は、複数種類の検証情報を互いに合わせた検証確定情報によるユーザ端末20からのアクセスに基づき、送信元を検証する。
【0066】
(実施形態の効果)
第1の実施形態によれば、ユーザが簡単な方法で送信元が正規の相手か否かを確認することができる。2通のメールは、ほぼ同一時刻に送信されたものであること、同一内容であること、同報メールでないこと、同一送信元であることが要求されるので、フィッシング詐欺対策として有効である。また、メールの件名又は本文に合言葉を挿入すること、また、メールアドレスの抽出を別々に管理されたデータベースからとすることで、より安全性が高まる。
【0067】
第2の実施形態によれば、ユーザは、例えば、ある1つのメールアドレス宛に、金融機関等の名称を名乗り、表示されたアドレスにアクセスすることを促すメールを受信しても、2つのメールアドレスに検証情報が分散されていないので、このメールが金融機関等からのものか、金融機関等を偽装したものかを容易に判別できる。したがって、メールが正規の機関から送信されたことの信用性を向上することが可能となる。また、仮にユーザの1つのメールアドレスが、不正行為を行う者に流出しても、他のメールアドレスが流出していなければ、不正行為を行う者が、正規の機関からのメールと同様のメールを偽装することができないため、安全性が向上することは第1の実施形態と同様である。
【0068】
また、検証装置10は、検証情報抽出手段13において、互いに合わせることで検証を確定するための情報である検証確定情報となる複数種類の検証情報を抽出する。これにより、ユーザは、ユーザ端末20において、例えば、あらかじめ自分で登録していた複数のメールアドレスで、互いに異なる複数種類の検証情報を受信した場合、これら複数の検証情報を、互いに合わせることで検証確定情報を得ることができる。そして、例えば、検証確定情報が1つの内容として、正規のホームページのURLであれば、ユーザは、このアドレスにアクセスすることで、検証装置10によって検証される。このため、1つのメールに示されていたURLにアクセスする場合に比べ、安全性を向上することができる。また、ユーザ端末20に検証情報を送信するのは、一方の端末はメールで、他方の端末は、メール以外の手段、例えば、送信元の正規のサイトに設けられたMyページに送信するようにすることで更に安全性が高まる。
【0069】
以上、2つの実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、検証装置について説明したが、本発明において検証方法の発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 検証システム
10 検証装置
11 検証依頼受信手段
12 メールアドレス抽出手段
13 検証情報抽出手段
14 検証情報送信手段
15 検証手段
20 ユーザ端末
21 ユーザ端末送受信手段
22 ユーザ端末制御手段
23 ユーザ端末入出力手段
100 ユーザDB(メールアドレス記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10