特許第6862634号(P6862634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862634
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20210412BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210412BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20210412BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   H02G3/30
   B60R16/02 623D
   F16B2/22 C
   F16B19/00 Q
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-229213(P2016-229213)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-85895(P2018-85895A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 猛
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−084558(JP,U)
【文献】 特開2014−052028(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02879252(EP,A1)
【文献】 特開平09−243861(JP,A)
【文献】 特開2007−242283(JP,A)
【文献】 特開平08−140234(JP,A)
【文献】 特開2015−047060(JP,A)
【文献】 実開平01−007979(JP,U)
【文献】 特開2012−235575(JP,A)
【文献】 実開昭63−143012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
F16B 2/22
F16B 19/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に開口部が設けられた樋状に形成され、ワイヤハーネスの一部又は全部を保持する保持部材と、
前記保持部材を取付対象に取り付け固定する取付具と、
を備えるワイヤハーネス固定構造であって、
前記取付具は、
前記取付対象の外面から外方へ板状に延び、取付貫通穴を有する第一取付具と、
前記保持部材の前記開口部を形成する側壁部から前記開口部に直交する方向に筒状又は柱状に延び、前記取付貫通穴に挿通可能な第二取付具と、
を有し、
前記第二取付具は、
筒状又は柱状に延びる本体部と、
前記本体部の側面から外方へ突出するように形成され、前記第二取付具が前記取付貫通穴に挿通された際に前記取付貫通穴回りの前記第一取付具に引っ掛かる爪部と、
を有し、
前記取付具を用いた前記保持部材の前記取付対象への取り付け固定は、前記開口部が前記取付対象の外面に向くように行われている、ワイヤハーネス固定構造。
【請求項2】
前記保持部材の前記開口部側の先端と前記取付対象の外面との間の距離は、前記ワイヤハーネスの外径と前記ワイヤハーネスの前記保持部材に保持されている長手方向範囲における撓み量とを加算した値よりも小さい、請求項1に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項3】
前記保持部材は、前記開口部側の先端内側に設けられ、該開口部を閉じる方向へ突出する突起部を有する、請求項1又は2に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項4】
前記突起部は、少なくとも前記保持部材の長手方向両端部それぞれに設けられる、請求項3に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項5】
前記突起部は、少なくとも前記保持部材の長手方向中央部に設けられる、請求項3又は4に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項6】
前記保持部材は、長手方向端部に設けられ、他の前記保持部材と連結するための連結部を有する、請求項1−5の何れか一項に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項7】
同種又は異種の前記保持部材同士が前記連結部を介して連結されている、請求項6に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項8】
前記連結部は、同種又は異種の前記保持部材同士を位相を変えて連結可能である、請求項7に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項9】
異種の前記保持部材が複数組み合わされている、請求項1−6の何れか一項に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項10】
前記異種の前記保持部材は、直線状に形成されたストレート形、円弧状に形成された部分円弧形、及びS字状に形成されたS字形のうちの何れか二以上である、請求項9に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項11】
前記取付対象は、ステアリング装置における転舵シャフトを軸方向に移動可能に収容する筒状のハウジングであり、
前記取付具は、前記保持部材を前記取付対象としての前記ハウジングの外面に取り付け固定する、請求項1−10の何れか一項に記載のワイヤハーネス固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを固定するワイヤハーネス固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスを固定するワイヤハーネス固定構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この固定構造は、外装保護部材と、アンカー部と、取付孔と、を備えている。外装保護部材は、長手方向に延在しており、ワイヤハーネス全体を覆う大きさ及び形状に形成されている。外装保護部材は、断面形状が一端面を開放した形状となるように樋状に形成されており、ワイヤハーネスを保持することができる。外装保護部材は、底壁部と、底壁部の両端から延びる互いに対向する二つの側壁部と、底壁部に対向する開口部と、を有している。
【0003】
アンカー部は、外装保護部材に長手方向に沿って所定間隔を隔てて複数箇所、配置されている。アンカー部は、外装保護部材の二つの側壁部のうちの一方に長手方向に並んで設けられている。アンカー部は、取付対象に設けられた孔に差し込まれて係止される。外装保護部材は、二つの側壁部のうちの一方を取付対象に接した状態で、アンカー部を介してその取付対象に取り付け固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−217226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外装保護部材が二つの側壁部のうちの一方を取付対象に接した状態でその取付対象に取り付けられると、その外装保護部材の開口部が取付対象の取付面に向かず、その取付面の法線に対して直交する方向に向く。このため、かかる固定構造では、外装保護部材に保持されているワイヤハーネスが撓んだ際にその外装保護部材の開口部から外部へ飛び出し易く、そのワイヤハーネスが不必要に膨らむおそれがある。
【0006】
本発明は、取付対象に取り付け固定された樋状の保持部材の開口部からワイヤハーネスが外部へ飛び出るのを防止することが可能なワイヤハーネス固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネス固定構造は、一側面に開口部が設けられた樋状に形成され、ワイヤハーネスの一部又は全部を保持する保持部材と、前記保持部材を取付対象に取り付け固定する取付具と、を備える。前記取付具を用いた前記保持部材の前記取付対象への取り付け固定は、前記開口部が前記取付対象の外面に向くように行われている。
【0008】
この構成によれば、ワイヤハーネスが樋状の保持部材及び取付対象の外面に囲まれるので、ワイヤハーネスの経路を規制することができ、そのワイヤハーネスを大きく撓ませて膨らませることなく保持部材内に収めることができる。従って、樋状の保持部材の開口部からワイヤハーネスが保持部材の外部へ飛び出るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス固定構造を備える装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造の上面図である。
図3】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造の側面図である。
図4】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を開口部側から見た際の斜視図である。
図5】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を開口部とは反対側から見た際の斜視図である。
図6】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造が備える保持部材の上面図である。
図7】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を開口部側から見た際の側面図である。
図8】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を長手方向外方から見た際の側面図である。
図9図7に示す保持部材のIX−IX断面図である。
図10】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造を模式的に表した図である。
図11】第1実施形態のワイヤハーネス固定構造における各部の配置位置関係を表した図である。
図12】本発明の一変形形態に係るワイヤハーネス固定構造を模式的に表した図である。
図13】本発明の一変形形態に係るワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を複数互いに連結するうえで用いる連結形状を表した斜視図である。
図14図13に示すワイヤハーネス固定構造が備える保持部材を長手方向から見た図である。
図15】本発明の一変形形態に係るワイヤハーネス固定構造が備える保持部材の形状を表した図である。
図16】本発明の一変形形態に係るワイヤハーネス固定構造が備える保持部材の形状を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るワイヤハーネス固定構造の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(1.第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス固定構造20を備える装置22の全体構成図を示す。装置22は、操舵トルクを電動モータによるアシストトルクにより補助することが可能な車両の電動パワーステアリング装置である。
【0012】
(1−1.装置22の構成)
装置22は、ステアリングホイール24と、ステアリングシャフト26と、転舵シャフト28と、ボールネジ機構30と、操舵補助装置32と、軸受部34と、を備えている。装置22は、転舵シャフト28をその転舵シャフト28の軸方向Aに沿って移動させることにより、その転舵シャフト28の両端それぞれに連結されている転舵輪38を転舵させる装置である。
【0013】
ステアリングホイール24は、車室内に配設されており、回転可能に支持されている。ステアリングホイール24は、車両運転者の回転操作により回転する。ステアリングホイール24には、ステアリングシャフト26の一端が連結されている。ステアリングシャフト26は、車体に固定されたハウジング40に回転可能に保持されている。ステアリングシャフト26は、ステアリングホイール24の回転に伴って回転する。
【0014】
ステアリングシャフト26の他端には、ラックアンドピニオン機構を構成するピニオン42が形成されている。また、転舵シャフト28には、上記ピニオン42と共にラックアンドピニオン機構を構成するラック44が形成されている。ラック44は、転舵シャフト28の何れか一端に偏った位置に設けられている。ステアリングシャフト26のピニオン42と転舵シャフト28のラック44とは、互いに噛合している。ステアリングシャフト26は、車両運転者の回転操作によってステアリングホイール24に加わったトルクを転舵シャフト28に伝達する。転舵シャフト28は、車幅方向に延在している。転舵シャフト28は、ステアリングシャフト26の回転に伴ってその軸方向Aすなわち車幅方向に移動する。
【0015】
転舵シャフト28の両端には、ボールジョイント50を介してタイロッド52が揺動可能に連結されている。タイロッド52には、ナックルアーム54を介して転舵輪38が連結されている。転舵輪38は、転舵シャフト28の軸方向Aへの移動により転舵される。この転舵輪38の転舵により車両は左右に操舵される。
【0016】
ボールネジ機構30は、ボールネジ部58と、ボールネジナット(図示せず)と、を備えている。ボールネジ部58は、転舵シャフト28の外周面に螺旋状に複数回巻かれて形成された外周溝である。
【0017】
転舵シャフト28は、軸方向Aへ移動可能にハウジング40に挿通されてそのハウジング40に保持されている。ハウジング40は、筒状に形成されている。ハウジング40は、小径部60と、大径部62と、を有している。小径部60は、転舵シャフト28の外径に比して僅かに大きな内径を有している。小径部60には、ステアリングシャフト26が挿通されるステアリングシャフト挿通部64が連結されている。大径部62は、小径部60の内径に比して大きな内径を有している。大径部62には、ボールネジ機構30が収容されると共に、後述の駆動力伝達機構が収容される。
【0018】
操舵補助装置32は、主にボールネジ機構30の径方向に配置されている。操舵補助装置32は、トルクセンサ66と、電子制御ユニット(以下、ECUと称す。)68と、電動モータ70と、駆動力伝達機構72と、を有している。トルクセンサ66は、ステアリングシャフト26に配設されている。ECU68及び電動モータ70は、ハウジング40の大径部62近傍に固定されるケース74に収容されている。ECU68と電動モータ70とは、ケース74内において隣接して配設されている。電動モータ70は、その出力軸が転舵シャフト28の軸方向Aに対して平行となるように配置されている。トルクセンサ66は、電源線及び信号線を纏めたワイヤハーネス76を介してECU68に電気的に接続されている。トルクセンサ66の出力信号は、ECU68に供給される。
【0019】
ECU68は、トルクセンサ66から入力される信号に基づいてステアリングホイール24に加わるトルクを検出する。更に、ECU68は、検出トルクに基づいて電動モータ70によるアシストトルクを設定して電動モータ70の出力を制御する。電動モータ70は、ECU68からの指令に従ってアシストトルクを発生する。電動モータ70により発生されたアシストトルクは、駆動力伝達機構72に伝達される。
【0020】
駆動力伝達機構72は、入力側が電動モータ70の出力軸に接続されていると共に、出力側がボールネジナットの外周側に接続された構造を有している。電動モータ70から駆動力伝達機構72にアシストトルクが伝達されると、ボールネジ機構30のボールネジナットが回転駆動されて、複数の転動ボールを介して転舵シャフト28が軸方向Aに移動される。
【0021】
上記の装置22において、ステアリングホイール24が操作されると、操舵トルクがステアリングシャフト26に伝達され、ピニオン42とラック44とを備えるラックアンドピニオン機構を介して、転舵シャフト28が軸方向に移動される。また、ステアリングシャフト26に伝達された操舵トルクは、トルクセンサ66を用いてECU68に検出される。ECU68は、操舵トルク及び電動モータ70の回転位置などに基づいて電動モータ70の出力制御を行う。電動モータ70は、ECU68からの指令に従ってアシストトルクを発生する。このアシストトルクは、ボールネジ機構30を介して転舵シャフト28を軸方向に移動させる駆動力に変換される。
【0022】
転舵シャフト28が軸方向に移動されると、ボールジョイント50、タイロッド52、及びナックルアーム54を介して転舵輪38の向きが変更される。従って、かかる装置22によれば、ステアリングシャフト26への操舵トルクに応じた電動モータ70によるアシストトルクを転舵シャフト28の軸方向移動に付与することができるので、運転者がステアリングホイール24を操作する際の操舵力を軽減することができる。
【0023】
(1−2.ワイヤハーネス固定構造20の構成)
ワイヤハーネス固定構造20について、図1に加えて、図2図11を参照して説明する。ワイヤハーネス固定構造20は、装置22におけるトルクセンサ66とECU68とを電気的に接続するワイヤハーネス76を保持する保持部材を装置22の取付対象に取り付け固定する構造である。ワイヤハーネス76が取り付け固定される取付対象は、ハウジング40において、トルクセンサ66が配設されるステアリングシャフト26が挿通されるステアリングシャフト挿通部64と、ECU68を収容するケース74が固定される大径部62近傍と、の間である。ワイヤハーネス76は、主に、ハウジング40において、軸方向Aに延びる転舵シャフト28を覆う長手方向部分に沿って配策されている。すなわち、ワイヤハーネス76は、ステアリングシャフト挿通部64と大径部62とを繋ぐ筒状の小径部60に沿って配策されている。
【0024】
ワイヤハーネス固定構造20は、トルクセンサ66とECU68とを電気的に接続するワイヤハーネス76を保持する保持部材78と、その保持部材78をハウジング40の小径部60に取り付け固定する取付具80と、を備えている。
【0025】
保持部材78は、直線状に延在してワイヤハーネス76の長手方向全体のうちの一部(具体的には、ステアリングシャフト挿通部64側と大径部62側との間の部位)の外周面を覆う大きさ及び形状を有している。保持部材78は、成形容易な樹脂などにより構成されている。保持部材78は、ハウジング40の小径部60の表面に沿って転舵シャフト28の軸方向Aへ延びるように配置されている。保持部材78は、ワイヤハーネス76の一部を長手方向に亘って覆うことで、そのワイヤハーネス76が大きく撓んで膨らむのを防止する機能を有する。
【0026】
保持部材78は、断面において一辺が切り欠かれた断面U字状に形成されており、一側面に開口部82が設けられた樋状に形成されている。開口部82は、保持部材78の長手方向全域に亘って同じ側面に設けられている。保持部材78は、四つの側面が、開口部82と、その開口部82に対向する底部84と、底部84の両端それぞれから延びる側壁部86と、を備えている。尚、保持部材78は、開口部82と対向する底部84が隙間の全く無い壁面となるように構成されていてもよいし、また、ワイヤハーネス76をその保持部材78内に保持する強度を確保できる範囲であれば、図5に示すように、その底部84が隙間の点在する面となるように構成されていてもよい。
【0027】
取付具80は、保持部材78に一体成形される保持部材側取付具88と、ハウジング40の小径部60に一体成形されるハウジング側取付具90と、を備えている。保持部材側取付具88は、保持部材78に一箇所以上設けられている。本実施形態では、保持部材側取付具88は、一方の側壁部86に二箇所設けられており、例えば保持部材78の長手方向両端それぞれに設けられている。保持部材側取付具88は、側壁部86からその側壁部86の法線方向に延びる筒状或いは柱状の突出部であって、例えば矢じり形や楔形に形成されている。
【0028】
保持部材側取付具88の外周面には、爪部92が複数箇所に設けられている。爪部92は、例えば、軸中心を挟んで対向する二箇所それぞれに設けられている。各爪部92は、常態において保持部材側取付具88の本体面から径方向外方へ突出するように形成されている。各爪部92は、保持部材側取付具88の本体に対して径方向内方へ撓むことが可能である。各爪部92は、例えば、保持部材側取付具88の本体の先端側に接続しつつ、保持部材側取付具88の根元側にかけて径方向外方へ突出するように延びている。爪部92は、保持部材78をハウジング40に位置固定するために必要な突起である。
【0029】
保持部材78の開口部82を挟んだ二つの側壁部86にはそれぞれ、突起部94が一箇所以上設けられている。突起部94は、二つの側壁部86ごとに、間隔を空けて複数設けられている。各保持部材78の突起部94は、例えば四箇所ずつ設けられ、具体的には、その保持部材78の長手方向両端部それぞれに設けられていると共に、長手方向中央部に中央位置を挟んで対称位置に2箇所設けられている。突起部94は、側壁部86の、開口部82側の先端内側に設けられており、その開口部82を閉じる方向(すなわち、その開口部82の開口幅を狭める方向)へ突出している。
【0030】
突起部94は、車両製造時などにワイヤハーネス76を保持部材78内に挿入し易くする一方で、その挿入後にそのワイヤハーネス76を保持部材78外へ飛び出し難くする形状に形成されている。突起部94は、保持部材78の側壁部86本体に対して外方へ撓むことが可能な板状の撓み部96に形成されている。撓み部96は、車両製造時などにワイヤハーネス76を保持部材78内に挿入し易くする機能を有している。
【0031】
ハウジング側取付具90は、筒状のハウジング40の小径部60の外周面から径方向外方へ延びる板状のフランジ部である。ハウジング側取付具90は、ハウジング40においてそのフランジ面が水平に広がるように配置され形成されている。ハウジング側取付具90は、保持部材側取付具88の数に対応した数、設けられていると共に、保持部材側取付具88の配置位置に対応した位置に設けられている。ハウジング側取付具90のフランジ面には、取付貫通穴98が設けられている。取付貫通穴98は、保持部材側取付具88が挿通可能な穴であって、保持部材側取付具88の本体の外径と同じ或いはその外径よりも僅かに大きい一方、その保持部材側取付具88の爪部92の外径よりも小さな径を有している。
【0032】
保持部材78の保持部材側取付具88は、ハウジング40のハウジング側取付具90の下方からそのハウジング側取付具90の取付貫通穴98に挿通される。かかる挿通が行われた状態で、その保持部材側取付具88の爪部92が取付貫通穴98回りのハウジング側取付具90に引っ掛かると、その保持部材78がハウジング側取付具90の下方側に隣接しつつハウジング40に対して取り付け固定される。この取付具80を用いた保持部材78のハウジング40への取り付け固定は、保持部材78の開口部82がハウジング40の表面すなわち外面に向くように行われる。
【0033】
この取り付け固定において、保持部材78は、その二つの側壁部86の開口部82側の先端それぞれがハウジング40の外面に接近して、その開口部82がハウジング40の外面に対向するように配置される。また、この配置において、側壁部86の開口部82側の先端とハウジング40の外面とは密着しておらず、その間には隙間が形成される。この隙間は、転舵シャフト28の長手方向に沿って延在し、その長手方向に亘って略均一な大きさを有する。
【0034】
ハウジング40への保持部材78の取り付け固定後、その保持部材78に保持されているワイヤハーネス76がその保持部材78外へ飛び出すのを確実に防止するうえでは、上記隙間(より具体的には、保持部材側取付具88が設けられていない側壁部86側における上記隙間)の大きさ(すなわち、その側壁部86の開口部82側の先端とハウジング40の外面との距離)Dは、ワイヤハーネス76の外径ODよりも小さいことが好ましい。
【0035】
しかし、ワイヤハーネス76は、柔軟性を有して撓むことが可能であるので、ワイヤハーネス76の保持部材78に保持されている長手方向範囲における撓み量を考慮して、上記隙間の大きさDは、ワイヤハーネス76の外径ODよりも大きくてもよい。これは、上記隙間の大きさDがワイヤハーネス76の外径ODよりも大きくても、図11に示すように、ワイヤハーネス76が撓んでいれば、ワイヤハーネス76の保持部材78に保持されている長手方向範囲内の何れかの部位が保持部材78の側壁部86の内壁に当接して、ワイヤハーネス76が保持部材78外へ飛び出すことは回避されるからである。
【0036】
そこで、上記隙間の大きさDは、具体的には、ワイヤハーネス76の外径ODと、ワイヤハーネス76の保持部材78に保持されている長手方向範囲において生じている撓み量Tと、を加算した加算値よりも小さくなるように設定されている。尚、上記の撓み量Tは、ワイヤハーネス76の保持部材78に収容保持されている部分の長手方向長さ、ワイヤハーネス76の柔軟度(すなわち、剛性度や撓み度)などに基づいて定められたものであってよい。ワイヤハーネス76は、保持部材78に保持された後、その保持部材78がハウジング40に取り付け固定されることにより、装置22のハウジング40に沿って配策される。
【0037】
このように、本実施形態のワイヤハーネス固定構造20においては、一側面に開口部82が設けられて樋状に形成された、ワイヤハーネス76を保持する保持部材78を、その開口部82がハウジング40の外面に向くように配置して、ハウジング40に取り付け固定する。より具体的には、保持部材78の側壁部86に突出するように設けた保持部材側取付具88を、ハウジング40の外面に径方向外方へ延びるハウジング側取付具90の取付貫通穴98に挿通して、保持部材側取付具88の爪部92をそのハウジング側取付具90のフランジ面に引っ掛けることで、保持部材78をその開口部82がハウジング40の外面に向くように取り付け固定する。
【0038】
ワイヤハーネス固定構造20によれば、ワイヤハーネス76の四方が保持部材78の底部84及び側壁部86並びにハウジング40の外面に囲まれるので、そのワイヤハーネス76を大きく撓ませて膨らませることなく保持部材78内に収めて、そのワイヤハーネス76の経路を規制することができる。従って、樋状に形成された保持部材78の開口部82からワイヤハーネス76が保持部材78の外部へ飛び出るのを防止することができる。
【0039】
また、保持部材78の側壁部86の先端とハウジング40の外面との間には隙間が形成されるが、この隙間の大きさDは、ワイヤハーネス76の外径ODと、ワイヤハーネス76の保持部材78に保持されている長手方向範囲における撓み量Tと、を加算した加算値よりも小さい。かかる構造においては、ワイヤハーネス76が保持部材78に保持されている長手方向範囲で撓んでいるとき、その長手方向範囲内の何れかの部位が保持部材78の側壁部86の内壁に当接し得るので、ワイヤハーネス76が保持部材78外へ飛び出るのを確実に防止することができる。
【0040】
保持部材78は、ワイヤハーネス76を長手方向のある程度の長さに亘って覆うことができるようにハウジング40の長手方向や転舵シャフト28の軸方向Aへ延びる樋状部材である。このため、ワイヤハーネス76をハウジング40に対して確実にかつ安定して取り付けることができ、ワイヤハーネス76が装置22の周辺にある車両部品や地面などに干渉するのを確実に防ぐことができる。
【0041】
また、樋状に延びる保持部材78をハウジング40に取り付け固定するうえでは、その保持部材78に一体成形された筒状又は柱状の保持部材側取付具88を、ハウジング40の小径部60に一体成形されたハウジング側取付具90の取付貫通穴98に挿通し、その保持部材側取付具88の爪部92をその取付貫通穴98回りのハウジング側取付具90に引っ掛けることとすればよい。このため、長手方向に延びるワイヤハーネス76を複数箇所でバンドタイプのクランプを用いてハウジング40に取り付け固定する構成に比して、部品点数の削減を図ることができと共に、また、ワイヤハーネス76や保持部材78をハウジング40に取り付け固定するうえで組み付け性の簡素化を図ることができる。
【0042】
ワイヤハーネス固定構造20において、保持部材78は、開口部82側の先端内側に設けられ、開口部82を閉じる方向へ突出する突起部94を有する。この構成によれば、突起部94により、保持部材78に保持されているワイヤハーネス76を保持部材78外へ飛び出し難くすることができる。
【0043】
ワイヤハーネス固定構造20において、突起部94は、少なくとも保持部材78の長手方向両端部それぞれに設けられてもよく、また、少なくとも保持部材78の長手方向中央部に設けられてもよい。この構成によれば、保持部材78内でのワイヤハーネス76の撓みに合わせて突起部94を配置した保持部材78を用いてワイヤハーネス76を保持させることができるので、そのワイヤハーネス76が保持部材78外へ飛び出るのを確実に防止することができる。
【0044】
(第1変形形態)
ところで、上記の第1実施形態においては、図10に示すように、ワイヤハーネス固定構造20が、ワイヤハーネス76を保持する保持部材78と、その保持部材78をハウジング40に取り付け固定する取付具80と、を備え、取付具80が、保持部材78の側壁部86から筒状或いは柱状に突出する保持部材側取付具88と、ハウジング40の外周面から径方向外側へ延びるフランジ面を有するハウジング側取付具90と、からなり、その筒状又は柱状の保持部材側取付具88がハウジング側取付具90のフランジ面に空いた取付貫通穴98に挿通される。かかる固定構造20においては、ハウジング40への保持部材78の組み付けを、保持部材78をハウジング側取付具90のフランジ面に対向する側に配置したうえで、その保持部材78を、保持部材側取付具88が取付貫通穴98に挿通されるようにハウジング側取付具90に対してそのフランジ面の法線方向に移動させることにより実現することができる。
【0045】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図12に示すように、ワイヤハーネス固定構造20の取付具80が、保持部材78の側壁部86から突出する断面L字状の保持部材側取付具100と、ハウジング40の外周面から径方向外側へ延びる筒状のハウジング側取付具102と、からなり、断面L字状の保持部材側取付具100の、筒状又は柱状の先端部の外周面に爪部104が設けられ、筒状のハウジング側取付具102にボス穴106が設けられることとしてもよい。このボス穴106は、保持部材側取付具100の筒状又は柱状の先端部の外径に合致した径を有している。また、ボス穴106には、爪部104が嵌合する拡径部が設けられている。
【0046】
かかる変形形態1の固定構造20においては、ハウジング40への保持部材78の組み付けを、保持部材78をハウジング側取付具102の径方向外方に配置したうえで、その保持部材78を、保持部材側取付具100の筒状又は柱状の先端部がハウジング側取付具102のボス穴106に挿入されるようにハウジング側取付具102に対して径方向内方に移動させることにより実現することができる。
【0047】
(変形形態2)
また、上記の第1実施形態においては、ワイヤハーネス76が単一の保持部材78により保持されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤハーネス76が二以上の保持部材78により保持されてもよい。この場合、図13及び図14に示すように、各保持部材78は、他の保持部材78と連結するための連結部200を有することとしてよい。
【0048】
かかる変形形態2において、連結部200は、保持部材78の長手方向端部に設けられる。連結部200は、保持部材78の長手方向一端面に設けられる凸部202と、保持部材78の長手方向他端面に設けられる凹部204と、を含む。凸部202と凹部204とは、互いに合致して凸部202が凹部204に嵌合する形状に形成されている。凸部202及び凹部204はそれぞれ、長手方向端面に複数設けられてよい。この場合、長手方向一端面における複数の凸部202の配置及び長手方向他端面における複数の凹部204の配置はそれぞれ、両保持部材78同士を位相(すなわち、軸方向Aを中心軸にした回転方向の配置角度;例えば90°や180°,270°)を変えて配置しても連結可能であるように設定されていることが好ましい。かかる変形形態2によれば、保持部材78同士を位相を変えて連結させることができる。
【0049】
(変形形態3)
また、上記の第1実施形態においては、保持部材78が直線状に延在する樋状部材である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、保持部材が曲線状に延在する樋状部材であってよい。例えば、曲線状に延在する保持部材は、図15に示すように1/4円弧状に形成された部分円弧形の保持部材300や、図16に示すようにS字状に形成されたS字形の保持部材302であってよい。かかる変形形態3によれば、ワイヤハーネス76の配策の自由度を高めつつ、そのワイヤハーネス76を保持する保持部材78を筒状のハウジング40の外面に沿って延在させることができる。
【0050】
この変形形態3における保持部材300,302は、上記した変形形態2における保持部材78同士を連結するための連結部200と同様の連結部を有することとしてよい。かかる構成によれば、部分円弧形の保持部材300同士又はS字形の保持部材302同士を連結部を介して連結することができるので、ワイヤハーネス76の配策の自由度を更に高めつつ、そのワイヤハーネス76を保持する保持部材78を筒状のハウジング40の外面に沿って適切に延在させることができる。
【0051】
また、形状が同じ同種の保持部材78,300,302同士が連結部を介して連結されることに限らず、形状が異なる異種の保持部材78,300,302同士が連結部を介して連結されることとしてもよい。すなわち、ワイヤハーネス76の所望の配策位置に対応して、直線状に形成されたストレート形の保持部材78と部分円弧形の保持部材300とS字形の保持部材302との何れか二以上を組み合わせて連結することとしてもよい。すなわち、ワイヤハーネス固定構造20が、異種の保持部材78,300,302を複数組み合わせて構成されているものとしてもよい。かかる構成によれば、ワイヤハーネス76の配策の自由度の更なる向上を図りつつ、そのワイヤハーネス76を保持する保持部材78を筒状のハウジング40の外面に沿って延在させることができ、ワイヤハーネス76の様々な経路規制に対応することができる。
【0052】
尚、部分円弧形の保持部材300において、ハウジング40に取り付け固定するための筒状或いは柱状の保持部材側取付具310は、内面側側壁部312a及び外面側側壁部312bの双方にそれぞれ設けられることが、保持部材300をその開口部の開口方向を一方に維持しつつ上下反転して配置可能とすることに対応するうえで好ましい。この場合、保持部材側取付具310は、その側壁部312a,312bの1/4円弧中央部(すなわち、長手方向中央部)に一箇所だけ設けられることが、その簡易な構造で保持部材300をその開口部の開口方向を一方に維持しつつ上下反転して配置可能とするうえで好ましい。但し、保持部材側取付具310は、保持部材300の長手方向端部に設けられることとしてもよい。
【0053】
また、S字形の保持部材302は、開口部側から見て左上側から右下側へ延在する形状に形成されるものと、開口部側から見て左下側から右上側へ延在する形状に形成されるものと、の2種類設けられることが、ワイヤハーネス76の様々な経路規制に対応するうえで好ましい。この場合、ハウジング40に取り付け固定するための筒状或いは柱状の保持部材側取付具320は、2種類の保持部材302ごとに、二つの側壁部322a,322bのうちの何れか一方に設けられていればよい。また、保持部材側取付具320は、その側壁部322a,322bのS字中央部(すなわち、長手方向中央部)に一箇所だけ設けられることが、その簡易な構造でハウジング40への保持部材302の取り付け固定を確保するうえで好ましい。但し、保持部材側取付具320は、保持部材302の長手方向端部に設けられることとしてもよい。
【0054】
(その他)
上記の第1実施形態においては、保持部材78の突起部94が長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、保持部材78の突起部94自体が長手方向に沿って延在するものであってよい。
【0055】
更に、上記の第1実施形態においては、ワイヤハーネス固定構造20を電動パワーステアリング装置である装置22に設けることとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤハーネス固定構造20をこの装置22以外のものに適用することとしてもよい。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
20:ワイヤハーネス固定構造、22:装置、28:転舵シャフト、40:ハウジング、62:小径部、66:トルクセンサ、68:電子制御ユニット(ECU)、76:ワイヤハーネス、78,300,302:保持部材、80:取付具、82:開口部、84:底部、86,312a,312b,322a,322b:側壁部、88,100,310,320:保持部材側取付具、90,102:ハウジング側取付具、92,104:爪部、94:突起部、98:取付貫通穴、106:ボス穴、200:連結部、202:凸部、204:凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16