(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱融着層を備えたラミネートフィルムを2枚重ねもしくは二つ折りとした矩形状の外装体の中に、複数の正極および負極をセパレータを介して積層してなる電極積層体を収容し、上記外装体の周縁の各辺を加熱封止するフィルム外装電池の封止工程に用いられるヒートブロックであって、
少なくとも2つの辺を同時に加圧・加熱加工するように、各辺にそれぞれ対応した直線部が少なくとも2つ連結されて構成され、かつ各辺のシール線に対応した加工面を各直線部に備えた金属製のブロック部材と、
このブロック部材の直線部の各々に、各直線部の長手方向に沿って直線状に貫通形成され、かつ、2つの直線部が交わる角部において互いに干渉することなく立体交差するように、上記加工面と直交する方向の高さ位置が互いに異なって設けられたヒータ挿入孔と、
各辺のヒータ挿入孔にそれぞれ挿入配置され、かつ上記角部において、上記加工面と直交する方向に投影したときに、互いに重なりあっている棒状ヒータと、
を備えてなるヒートブロック。
上記ブロック部材は、3つの直線部が2つの角部においてそれぞれ直角に接続された略U字形をなしている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のヒートブロック。
一つの直線部が、フィルム外装電池の電極タブを備えた辺に対応しており、当該直線部の加工面は、上記辺に沿って直線状に連続したシール線の中で電極タブと重ならない領域に対応して形成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒートブロック。
上記直線部の各々が、各々の加工面付近の温度を検出する温度センサを備えており、各々の温度センサの検出温度に基づいて、各直線部の棒状ヒータが個別に温度制御される、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒートブロック。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。初めに
図1の工程説明図を参照して、フィルム外装電池の製造工程の概略を説明する。この実施例では、ワークとなるフィルム外装電池の一例として、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両駆動用電源パックを構成する偏平形状をなすフィルム外装型リチウムイオン二次電池を対象としている。このフィルム外装電池は、矩形のシート状に構成した正極および負極をセパレータを介して複数積層して電極積層体(すなわち発電要素)を構成し、この電極積層体を、ラミネートフィルムからなる袋状の外装体の中に電解液とともに収容したものである。なお、以下の実施例の説明では、電極積層体がフィルム状外装体の中に収容された後の電池を、製造工程の如何に拘わらず、単に「セル」と呼ぶこととする。
【0013】
図1にステップS1として示す工程は、電極積層体を構成する電極積層工程である。ここでは、それぞれロール状に巻回されている正極、負極およびセパレータを、矩形のシート状に切断しながら順次積層することで、複数の正極および負極がセパレータを介して積層された発電要素つまり電極積層体を形成する。正極は、集電体となるアルミニウム箔の両面に正極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものである。負極は、同様に、集電体となる銅箔の両面に負極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものである。セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成樹脂の微多孔性膜あるいは不織布からなる。
【0014】
これらの正極、負極およびセパレータは、所定枚数積層されることで、発電要素つまり電極積層体となる。複数の正極の集電体の端部は、互いに重ねられ、正の端子となる電極タブつまり正極タブが超音波溶接される。同様に、複数の負極の集電体の端部は、互いに重ねられ、負の端子となる電極タブつまり負極タブが超音波溶接される。正極タブは、帯状の薄いアルミニウム板からなり、負極タブは、帯状の薄い銅板からなる。つまり、それぞれ集電体と同種の金属から構成される。
【0015】
このように構成された電極積層体は、次のステップS2として示す封止工程において、可撓性を有するフィルム状外装体の中に配置される。外装体は、例えば、アルミニウム箔の内側にポリプロピレンからなる熱融着層をラミネートするとともに、外側にポリアミド樹脂層およびポリエチレンテレフタレート樹脂層を保護層としてラミネートしてなる四層構造を有するラミネートフィルムからなる。ラミネートフィルム全体の厚さは、例えば、0.15mm程度である。本実施例では、外装体は、電極積層体の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとの2枚構造をなし、これら2枚のラミネートフィルムの間に電極積層体を配置した上で、周囲の四辺を一辺の注入口を残して重ね合わせ、かつ互いに熱融着する。従って、外装体は、注入口が開いた袋状の構成となる。ここで、正極タブおよび負極タブは、注入口を具備する一辺を上方へ向けたときに側方へ向かう辺に位置し、ラミネートフィルムの接合面から外側へ導出されている。本発明のヒートブロックは、この封止工程で用いられるものであり、その詳細は後述する。
【0016】
なお、他の例では、1枚の比較的大きなラミネートフィルムを二つ折りにし、2片の間に発電要素を挟み込んだ形に外装体を構成することも可能である。この場合は、三辺を一辺の注入口を残して熱融着することとなる。
【0017】
このように封止工程においてフィルム状外装体の中に電極積層体が収容された状態に構成されたセルは、次に、ステップS3として示す注液工程に搬送される。注液工程では、例えば減圧チャンバ内にセルを立てた状態に配置し、所定の減圧下で外装体の注入口にディスペンサの注液ノズルを差し入れて、電解液の充填(注液)を行う。
【0018】
注液が完了したら、セルの姿勢をそのまま保った状態で、注入口封止工程(ステップS4)として、注入口を熱融着により封止する。なお、ここでの封止はいわゆる仮封止であり、後述する充電後に、充電に伴って発生したガス抜きのために注入口(あるいはその近傍)が開封されるので、ガス抜き後に、最終的な封止を行うこととなる。
【0019】
ステップS4の注入口封止工程の次に、ステップS5の含浸工程として、電解液の電極積層体への十分な浸透を待つために、所定時間(例えば数時間ないし数十時間)、放置する。その後、ステップS6において、初充電を行う。そして、図外のエージング工程等の次工程に進む。
【0020】
図2は、ステップS2の封止工程を経たセル1を示しており、前述したように、ラミネートフィルムからなる外装体2の内部に仮想線で示す電極積層体3が収容されている。電極積層体3は、互いに並んで配置された正極タブ4と負極タブ5とを備えている。外装体2は、正極タブ4および負極タブ5(両者を総称して電極タブとも呼ぶ)が導出された第1の辺7と、この第1の辺7に対向する第2の辺8と、負極タブ5側において第1の辺7と第2の辺8とを結ぶ第3の辺9と、注液口となる第4の辺10と、の四辺を有する長方形状に構成されている。
【0021】
そして、封止工程において、注入口となる第4の辺10を除く3つの辺7,8,9が一対のヒートブロックによって加熱封止されている。
図2には、ヒートブロックを用いた熱融着により構成される細い帯状のシール線11,12,13が斜線を施して示されている。これら3本のシール線11,12,13は、基本的には直線状に延びており、端部において互いに交差することで、連続したシール線を構成している。第2の辺8のシール線12および第3の辺9のシール線13は、ラミネートフィルム同士を接合したものとなる。これに対し、第1の辺7のシール線11は、正極タブ4と負極タブ5とを横切って1本の直線をなすように連続的に設定されており、2枚のラミネートフィルムが正極タブ4および負極タブ5を挟み込んだ形に接合されている。
【0022】
換言すれば、第1の辺7におけるシール線11は、電極タブ4,5とラミネートフィルムとが重なる2つの領域(これをタブ領域と呼ぶこととする)11aと、電極タブ4,5と重ならずにラミネートフィルム同士が接合される3つの領域(これを非タブ領域と呼ぶこととする)11bと、を有し、これらが連続して1本の細長い帯状のシール線11を構成している。詳しくは、電極タブ4,5の表面には、シール線11が横切る部分に対応して、「先付け樹脂」と呼ばれる合成樹脂層が予め帯状に設けられており、タブ領域11aでは、この合成樹脂層の上にラミネートフィルムの熱融着層が接合されている。一実施例においては、2枚の帯状のポリプロピレンフィルムを電極タブ4,5の両面から該電極タブ4,5を挟み込むようにして電極タブ4,5表面に貼着することで、
図2に示すように、先付け樹脂15がそれぞれ形成されており、この先付け樹脂15の上をシール線11が横切っている。
【0023】
上記のタブ領域11aの封止加工(タブ領域封止加工)と上記の非タブ領域11bの封止加工(非タブ領域封止加工)とは、それぞれ後述するタブ領域用ヒートブロックもしくは非タブ領域用ヒートブロックを用いて、個別に行われる。
【0024】
図3は、上述した3本のシール線11,12,13を封止加工する具体的な工程の順序の一例を示している。最初の工程(a)では、第1の辺7において正極タブ4および負極タブ5とそれぞれ重なっている2箇所のタブ領域11aの封止加工を行う。これは、2つのタブ領域11aを含むように構成された一対のタブ領域用ヒートブロックを用い、ラミネートフィルムと電極タブ4,5(詳しくは表面の先付け樹脂15)との接合に適した圧力および温度でもって加圧しながら加熱することにより行う。
【0025】
次の工程(b)では、第1の辺7におけるシール線11の中で電極タブ4,5と重なっていない3箇所の非タブ領域11bの封止加工と、第3の辺9におけるシール線13の封止加工と、を同時に行う。これは、2つの辺7,9に対応するL字形に構成された一対の非タブ領域用ヒートブロックを用い、ラミネートフィルム同士の接合に適した圧力および温度でもって加圧しながら加熱することにより行う。工程(a)および工程(b)によって、電極タブ4,5を横切る第1の辺7に沿ったシール線11および第3の辺9に沿ったシール線13が封止状態に完成する。
【0026】
次の工程(c)では、第2の辺8に沿ったシール線12の封止加工を行う。これは、シール線12に対応した形状の一対のヒートブロックを用い、ラミネートフィルム同士の接合に適した圧力および温度でもって加圧しながら加熱することにより行う。なお、シール線12の下端部はシール線13の端部と交差する。これによって外装体2つまりラミネートフィルムが袋状に構成される。
【0027】
図4は、上記の工程(a)におけるタブ領域11aの封止加工の説明図であって、ここでは、シール線11に沿って2枚のラミネートフィルム20を電極タブ4,5とともに両側から挟み込む一対のタブ領域用ヒートブロック21が用いられる。図の(A)は一対のタブ領域用ヒートブロック21が互いに開いている状態を示し、図の(B)は、一対のタブ領域用ヒートブロック21によって加圧・加熱を行っている状態を示している。なお、
図4の説明図における各部の寸法関係などは必ずしも正確なものではない。
【0028】
図5は、タブ領域用ヒートブロック21の概略形状を示した斜視図である。ヒートブロック21は、直線状をなす鋼製のブロック部材21Aのヒータ挿入孔25に図示しない棒状ヒータを挿入配置したものである。一対のタブ領域用ヒートブロック21は、基本的に対称形状をなしており、ラミネートフィルム20の表面と接することがないように設定された基準面22に対し、2つのタブ領域11aにそれぞれ対応する2つの加工部23,24が突出した形に形成されている。正極タブ4に対応した一方の加工部23は正極タブ4の厚さに対応した突出量を有し、負極タブ5に対応した他方の加工部24は負極タブ5の厚さに対応した突出量を有する。正極タブ4と負極タブ5は互いに厚さが異なることから、両者の突出量は互いに異なっている。一例を挙げると、正極タブ4および負極タブ5のそれ自体の厚さは、それぞれ、0.4mmおよび0.2mm程度であり、先付け樹脂15を含む厚さは、それぞれ、0.7mmおよび0.4mm程度である。さらに、加工部23は、より詳細には、正極タブ4と重なったラミネートフィルム20を加圧・加熱する主加工面23aと、この主加工面23aの両端部において主加工面23aからさらに微小量突出した状態に設けられた補助加工面23bと、を備えている。主加工面23aは、金属製の正極タブ4の幅よりも極僅かだけ大きな幅を有し、補助加工面23bは、金属製の正極タブ4から側方へ張り出した状態となる先付け樹脂15の張り出し部15a(
図4(B)参照)に重なる位置に設けられている。加工部24も同様であり、負極タブ5と重なったラミネートフィルム20を加圧・加熱する主加工面24aと、この主加工面24aの両端部において主加工面24aからさらに微小量突出した状態に設けられた補助加工面24bと、を備えている。主加工面24aは、金属製の負極タブ5の幅よりも極僅かだけ大きな幅を有し、補助加工面24bは、金属製の負極タブ5から側方へ張り出した状態となる先付け樹脂15の張り出し部15a(
図4(B)参照)に重なる位置に設けられている。
【0029】
タブ領域11aの封止加工は、
図4の図(B)に示すように、上記のタブ領域用ヒートブロック21を用い、電極タブ4,5とともにラミネートフィルム20を両側から加圧・加熱して行う。これにより、ラミネートフィルム20は、金属製の電極タブ4,5の表面に先付け樹脂15を介して接合される。また、先付け樹脂15の全体が主加工面23a,24aによって加圧される結果、軟化した先付け樹脂15の一部が張り出し部15aとして側方へ伸び、この張り出し部15aの先端縁が、ラミネートフィルム20とともに補助加工面23b,24bによって狭圧される。つまり、電極タブ4,5の近傍において、単純に2枚のラミネートフィルム20が重なっている部分と、2枚のラミネートフィルム20の間に先付け樹脂15の張り出し部15aが介在している部分と、の厚さの異なる2つの部分の境界周辺が、補助加工面23bによって加圧・加熱される。
【0030】
このようにして、
図6に斜線を施して示すタブ領域11aの封止加工が完了する。このタブ領域11aの封止加工は、電極タブ4,5の熱容量が大きいこと、ならびに、金属製の電極タブ4,5を介して内部の電極積層体3の集電体等に熱が伝わること、を考慮して、比較的に高い加工温度、例えば230℃程度の温度でもって、比較的長い時間、例えば6秒程度、加圧・加熱する。加工時の圧力も比較的高く設定され、例えば7MPa程度の圧力がタブ領域用ヒートブロック21に与えられる。このように電極タブ4,5と重なるタブ領域11aのみを最適な加工条件で封止加工することにより、電極タブ4,5とラミネートフィルム20との確実な封止が得られる。
【0031】
図7は、
図3の工程(b)における第1の辺7での非タブ領域11bの封止加工の説明図である。ここでは、シール線11に沿って2枚のラミネートフィルム20同士を両側から挟み込む一対の非タブ領域用ヒートブロック30が用いられる。図の(A)は一対の非タブ領域用ヒートブロック30が互いに開いている状態を示し、図の(B)は、一対の非タブ領域用ヒートブロック30によって加圧・加熱を行っている状態を示している。
【0032】
図9〜
図12は、本発明の一実施例であるL字形に構成された非タブ領域用ヒートブロック30を示している。一対の非タブ領域用ヒートブロック30は、基本的に対称形状をなしており、各図は、その一方のみを示している。この非タブ領域用ヒートブロック30は、熱伝導に優れた金属例えば鋼製のブロック部材31と、2本の棒状ヒータ51(第1棒状ヒータ51Aおよび第2棒状ヒータ51B)と、から大略構成されている。ブロック部材31は、非タブ領域11bを有する第1の辺7に対応した第1直線部31Aと、第3の辺9に対応した第2直線部31Bと、が角部31Dにおいて互いに直角に接続されている。つまり2つの直線部31A,31BがL字形に連結された構成となっている。
【0033】
図7に示すように、第1の辺7に対応する第1直線部31Aにおいては、ラミネートフィルム20の表面と接することがないように設定された基準面32に対し、3つの非タブ領域11bにそれぞれ対応する3つの加工部33,34,35が突出した形に形成されている。これら3つの加工部33,34,35は、いずれも等しい突出量を有する。さらに、加工部33,34,35は、より詳細には、ラミネートフィルム20同士を加圧・加熱する主加工面33a,34a,35aと、これら主加工面33a,34a,35aの端部において主加工面33a,34a,35aから微小量後退した状態に設けられた補助加工面33b,34b,35bと、を備えている。主加工面33a,34a,35aは、非タブ領域11bの中で先付け樹脂15の張り出し部15aと重ならない範囲に設けられており、補助加工面33b,34b,35bは、金属製の電極タブ4,5から側方へ張り出した先付け樹脂15の張り出し部15aの先端縁(つまり2枚のラミネートフィルム20同士の接合部との境界)に重なる位置に設けられている。特に、タブ領域11aの封止加工の際に用いられるタブ領域用ヒートブロック21の補助加工面23b,24bと上記の非タブ領域用ヒートブロック30(第1直線部31A)の補助加工面33b,34b,35bとが、上記の張り出し部15aの先端縁の上で互いにオーバラップするように構成されている。なお、
図7の説明図における各部の寸法関係などは必ずしも正確なものではない。また、
図13は、3つの加工部33,34,35の細部を示した斜視図である。
【0034】
非タブ領域11bの封止加工は、
図7の図(B)に示すように、上記の非タブ領域用ヒートブロック30を用い、電極タブ4,5と重ならない2枚のラミネートフィルム20同士を両側から加圧・加熱する。これにより、2枚のラミネートフィルム20は、互いに接合される。また、タブ領域11aの封止加工によって既に融着されている先付け樹脂15の張り出し部15aの先端縁付近が、ラミネートフィルム20とともに補助加工面33b,34b,35bによって再度加圧・加熱される。つまり、タブ領域用ヒートブロック21による加圧・加熱領域と非タブ領域用ヒートブロック30による加圧・加熱領域とが僅かにオーバラップしており、このオーバラップ領域が、張り出し部15aの先端縁の上に位置している。
【0035】
一例を挙げると、タブ領域用ヒートブロック21の補助加工面23b,24bは2mm程度の幅を有するのに対し、非タブ領域用ヒートブロック30(第1直線部31A)の補助加工面33b,34b,35bは1mm程度の幅を有しており、両者は、非タブ領域用ヒートブロック30の補助加工面33b,34b,35bの幅(つまり1mm程度)だけオーバラップしている。このようにタブ領域封止加工の加工領域と非タブ領域封止加工の加工領域とがオーバラップしていることで、シール線11における連続した封止が確実なものとなる。そして、タブ領域用ヒートブロック21の補助加工面23b,24bが主加工面23a,24aから僅かに突出し、非タブ領域用ヒートブロック30の補助加工面33b,34b,35bが主加工面33a,34a,35aから僅かに後退していることで、電極タブ4,5の近傍において、単純に2枚のラミネートフィルム20が重なっている部分と、2枚のラミネートフィルム20の間に先付け樹脂15の張り出し部15aが介在している部分と、の段差が吸収される。
【0036】
このようにして、第1の辺7におけるシール線11の中で
図8に斜線を施して示す非タブ領域11bの封止加工が完了する。この非タブ領域11bの封止加工は、電極タブ4,5による吸熱がなくラミネートフィルム20同士は比較的容易に熱融着することを考慮して、比較的に低い加工温度、例えば200℃程度の温度でもって、比較的短い時間、例えば1〜2秒程度、加圧・加熱する。加工時の圧力も比較的低く設定され、例えば1MPa程度の圧力が非タブ領域用ヒートブロック30に与えられる。このように電極タブ4,5と重ならない非タブ領域11bをタブ領域11aとは別に最適な加工条件で封止加工することにより、ラミネートフィルム20を過度に加熱することなく良好な封止が得られる。
【0037】
そして、非タブ領域11bの封止加工領域は、
図8に示すように、第1の辺7において先に行ったタブ領域11aの封止加工領域と連続するので、1本の連続したシール線11が得られる。従って、シール線11全体として、良好な封止品質を確保することができる。
【0038】
このように、上記実施例では、第1の辺7の電極タブ4,5を横切るシール線11について、タブ領域11aと非タブ領域11bとをそれぞれ最適な加工条件(温度、圧力、時間、等)で封止加工することができ、全体として高い封止品質を得ることができる。すなわち、仮に第1の辺7のタブ領域11aと非タブ領域11bとを同時にヒートブロックによって加圧・加熱して熱融着させようとすると、温度、圧力、時間といった加工条件を個別に設定することができないため、両者の妥協点となる加工条件で封止加工せざるを得ず、封止品質が低下しやすい。また、タブ領域11aと非タブ領域11bとを同時に加圧・加熱する場合には、ヒートブロックとして、タブ領域11aに対する加工面と非タブ領域11bに対応する加工面との間で電極タブ4,5の厚さに応じた段差を有するヒートブロックが用いられることとなるが、仮に段差を適切に設定しても、加工時の樹脂層の軟化・溶融に伴う厚さの変化がタブ領域11aと非タブ領域11bとで異なることから、加工の途中で実質的な受圧面積が変動し、適切な加圧力を維持できなくなる。上記実施例では、このような実質的な受圧面積の変化による加圧力変化も抑制できる。
【0039】
一方、非タブ領域用ヒートブロック30の第3の辺9に対応した第2直線部31Bには、該第2直線部31Bの全長に亘って直線状に連続した細長い帯状の加工面37が形成されている。この加工面37は、第3の辺9におけるシール線13に対応した形状を有しており、第1直線部31Aにおける3つの主加工面33a,34a,35aと同一の平面上に設けられている。そして、角部31Dにおいては、加工面37の端部が第1直線部31Aにおける主加工面35aと直角に交わっており、
図8に示すように、第1の辺7と第3の辺9との間で連続したシール線11,13が得られるように構成されている。
【0040】
図9および
図10に示すように、ブロック部材31は、主加工面33a,34a,35aおよび加工面37を含む平面(以下、この平面を「加工面平面」ともいう)と平行な平面に沿った取付面39を備えている。この取付面39において、非タブ領域用ヒートブロック30は、図示せぬ加熱封止装置の開閉機構部に取り付けられる。取付面39は、第1直線部31Aと第2直線部31Bの双方に亘ってL字形に連続している。
【0041】
ブロック部材31の第1直線部31Aにおいては、主加工面33a,34a,35aと取付面39との間に、加工面平面と平行に延びた断面円形の第1ヒータ挿入孔41Aを備えている。この第1ヒータ挿入孔41Aは、第1直線部31Aを該第1直線部31Aの長手方向に沿って直線状に貫通しており、その両端は、第1直線部31Aの開放端部(つまり第2直線部31Bが連結していない方の端部)側の端面42aおよび角部31D側の端面42bにおいて、それぞれ円形の開口41a,41bとして開口している。
【0042】
同様に、ブロック部材31の第2直線部31Bにおいては、加工面37と取付面39との間に、加工面平面と平行に延びた断面円形の第2ヒータ挿入孔41Bを備えている。この第2ヒータ挿入孔41Bは、第2直線部31Bを該第2直線部31Bの長手方向に沿って直線状に貫通しており、その両端は、第2直線部31Bの開放端部(つまり第1直線部31Aが連結していない方の端部)側の端面43aおよび角部31D側の端面43bにおいて、それぞれ円形の開口41c,41dとして開口している。なお、第2直線部31Bの角部31D側の端面43bは、実質的に、第1直線部31Aの外側の側面と同一面となっている。
【0043】
ここで、第1ヒータ挿入孔41Aと第2ヒータ挿入孔41Bは、角部31Dにおいて互いに干渉することなく立体交差するように、加工面平面と直交する方向の高さ位置が互いに異なっている。一実施例では、第1ヒータ挿入孔41Aが加工面平面に相対的に近い位置に、第2ヒータ挿入孔41Bが加工面平面から相対的に遠い位置に、それぞれ形成されている。
【0044】
また、第1直線部31A内部の第1ヒータ挿入孔41Aよりも主加工面33a,34a,35aに近い位置に、温度センサ挿入孔45Aが形成されている。この温度センサ挿入孔45Aは、第1直線部31Aの角部31D側の端面42bに基端が開口しており、封止された先端が、第1直線部31Aのほぼ中央に達している。
【0045】
同様に、第2直線部31B内部の第2ヒータ挿入孔41Bよりも加工面37に近い位置に、温度センサ挿入孔45Bが形成されている。この温度センサ挿入孔45Bは、第2直線部31Bの開放端部側の端面43aに基端が開口しており、封止された先端が、第2直線部31Bのほぼ中央に達している。
【0046】
図11および
図12は、ブロック部材31の第1ヒータ挿入孔41Aおよび第2ヒータ挿入孔41Bにそれぞれ棒状ヒータ51(第1棒状ヒータ51Aおよび第2棒状ヒータ51B)を取り付けるとともに、温度センサ挿入孔45A,45Bにそれぞれ温度センサ52(第1温度センサ52Aおよび第2温度センサ52B)を取り付けた状態を示している。なお、
図11および
図12においては、内部構成を示すためにブロック部材31を仮想線でもって示している。
【0047】
第1,第2棒状ヒータ51A,51Bは、基本的な構成はいずれも同一のものであり、円管状のシース54の中に粉末状ないし固体状の絶縁材料とともにコイル状の電熱線が収容され、かつ電熱線の両端に接続された一対のリード線55がシース54の一端(基端)から引き出されたカートリッジヒータからなる。なお、この種のカートリッジヒータの基本的な構成は、例えば、特開2017−62957号公報や特開2007−134171号公報等に開示されている。リード線55が引き出されたシース54の基端には、取付フランジ56が設けられている。またシース54の先端は、直線的に切り落とした形で封止されている。この先端部においては、内部の電熱線は、リード線55との接続構造等が存在することから、シース54の先端面から少なくとも数mm程度は離れた位置で終端している。すなわち、シース54の先端付近では、内部に電熱線は存在しない。
【0048】
ヒータ挿入孔41A,41Bは、いずれもシース54の外径にほぼ一致した内径を有し、シース54すなわち棒状ヒータ51が比較的密に嵌合する。第1棒状ヒータ51Aは、第1ヒータ挿入孔41Aに角部31D側の開口41bから挿入されており、取付フランジ56が第1直線部31Aの角部31D側の端面42bに固定されている。そして、第1棒状ヒータ51Aの先端は、第1直線部31Aの開放端部側の端面42aにおけるヒータ挿入孔41Aの開口41aから僅かに突出している。つまり、第1棒状ヒータ51Aは、第1直線部31Aの全長を貫通して配置されている。
【0049】
第2棒状ヒータ51Bは、第2ヒータ挿入孔41Bに開放端部側の開口41cから挿入されており、取付フランジ56が第2直線部31Bの開放端部側の端面43aに固定されている。そして、第2棒状ヒータ51Bの先端は、第2直線部31Bの角部31D側の端面43bにおけるヒータ挿入孔41Bの開口41dから僅かに突出している。つまり、第2棒状ヒータ51Bは、第2直線部31Bの全長を貫通して配置されている。
【0050】
従って、L字形をなすブロック部材31の角部31Dにおいては、第1棒状ヒータ51Aの基端側の端部と第2棒状ヒータ51Bの先端側の端部とが立体交差した形となる。つまり、
図14に示すように、加工面平面と直交する方向に投影して見たときに、第1棒状ヒータ51Aと第2棒状ヒータ51Bとが互いに重なり合っている。そのため、それぞれの内部に電熱線が存在する領域(つまり発熱領域)が部分的に重なり合ったものとなり、角部31Dにおいて発熱領域が不連続となることがない。
【0051】
すなわち、前述したように、棒状ヒータのシース54の先端部には、電熱線とリード線55との接続構造等に起因して、少なくとも数mm程度の非発熱部が存在する。従って、仮に2本の棒状ヒータの先端を互いに突き当てた形に配置すると、発熱領域が不連続となる。これに対し、上記実施例では、2本の棒状ヒータ51A,51Bの発熱領域が互いに重なり合うように2本の棒状ヒータ51A,51Bが立体交差しているので、角部31Dにおける加工面37ないし主加工面35aの局部的な加熱不足ひいては局部的な接合不良を回避することができる。
【0052】
第1直線部31Aおよび第2直線部31Bのヒータ挿入孔41A,41Bにそれぞれ配置された温度センサ52(第1温度センサ52Aおよび第2温度センサ52B)は、いずれも熱電対からなり、先端部が測温点となる。第1温度センサ52Aは、第1棒状ヒータ51Aと同様に角部31D側から挿入され、第2温度センサ52Bは、第2棒状ヒータ51Bと同様に開放端部側から挿入されている。第1温度センサ52Aは、加工面平面からの距離として第1棒状ヒータ51Aよりも主加工面33a,34a,35aに近い位置に位置し、主加工面33a,34a,35a付近の温度を検出している。第2温度センサ52Bは、同様に、加工面平面からの距離として第2棒状ヒータ51Bよりも加工面37に近い位置に位置し、加工面37付近の温度を検出している。
【0053】
棒状ヒータ51A,51Bの温度制御機構については特に図示していないが、第1棒状ヒータ51Aは第1温度センサ52Aの検出温度に基づいて、第2棒状ヒータ51Bは第2温度センサ52Bの検出温度に基づいて、それぞれ個別に温度制御される。例えば、目標温度と検出温度との偏差を用いたフィードバック制御により各棒状ヒータ51A,51Bの発熱量(通電量)が制御される。なお、第1直線部31A(第1棒状ヒータ51A)側の目標温度と第2直線部31B(第2棒状ヒータ51B)側の目標温度とは、基本的には等しく設定されるが、実際の加熱封止の試験結果等から両者を異なる温度に設定することも可能である。
【0054】
なお、好ましい一実施例においては、棒状ヒータ51A,51Bの全長の中で、
図14に領域L1,L2として示す開放端部に近い端部領域では、シース54内部のコイル状の電熱線が、他の領域(例えば直線部31A,31Bの中央部分)に比較して相対的に密に巻回されている。つまり、単位長さにおける発熱量が領域L1,L2では高く設定されている。このように開放端部の領域L1,L2で電熱線を密に配置することにより、外気等への放熱量が多く温度低下しやすい開放端部付近での熱量を補うことができ、より均一な温度分布を得ることができる。
【0055】
このように、
図9〜
図12に示すL字形の非タブ領域用ヒートブロック30を用いることにより、第1の辺7と第3の辺9の2つの辺における加熱封止を同時に処理することができる。従って、封止工程の作業効率の向上が図れる。特に、上記実施例では、第1の辺7について、タブ領域11aと非タブ領域11bとで2回の加熱処理が必要であるが、第1の辺7の非タブ領域11bと第3の辺9とを同時に処理することで、実質的な工程数の増加を回避することができる。
【0056】
図3の工程(c)については、ヒートブロックは特に図示しないが、単純な直線状のヒートブロックを用いて加熱封止され、第2の辺8に沿ったシール線12が形成される。ここでは、非タブ領域11bと同様に2枚のラミネートフィルム20同士の接合となるので、基本的には、非タブ領域11bの封止加工と同様の加工条件でもって封止加工が行われる。
【0057】
上記のようなL字形の非タブ領域用ヒートブロック30において、互いに立体交差する第1棒状ヒータ51Aと第2棒状ヒータ51Bの上下の関係を入れ替えることも可能である。
図15,
図16は、第2棒状ヒータ51Bが配置される第2ヒータ挿入孔41Bを加工面平面に近い位置に設け、第1棒状ヒータ51Aが配置される第1ヒータ挿入孔41Aを加工面平面から離れた位置に設けた変形例を示している。
【0058】
次に、
図17〜
図20は、工程(c)の第2の辺8におけるシール線12の封止加工を上記の第1の辺7の非タブ領域11bおよび第3の辺9の封止加工と同時に行うようにした第2実施例の非タブ領域用ヒートブロック300を示している。この第2実施例の非タブ領域用ヒートブロック300のブロック部材310は、前述した第1実施例における第1直線部31Aおよび第2直線部31Bに加えて、さらに第3直線部31Cを備え、全体として略U字形をなしている。そして、この第3直線部31Cに、第1直線部31Aとほぼ対称形状をなすように、第3ヒータ挿入孔41Cおよび温度センサ挿入孔45Cが形成されており、第1実施例のものと同様の棒状ヒータ51(第3棒状ヒータ51C)および温度センサ52(第3温度センサ52C)が挿入配置されている。
【0059】
ここで、第2直線部31Bと第3直線部31Cとが直角に交わる角部31Eにおいては、やはり、第2ヒータ挿入孔41Bと第3ヒータ挿入孔41Cとが、互いに干渉することなく立体交差した配置となっている。第2棒状ヒータ51Bおよび第3棒状ヒータ51Cは、これらのヒータ挿入孔41B,41Cを貫通しており、加工面平面と直交する方向に投影したときに、互いに重なりあっている。従って、前述した実施例と同様に、角部31Eにおいて、確実な加熱が可能である。
【0060】
第3直線部31Cは、第2の辺8に必要な直線状のシール線12に対応して、該第3直線部31Cの全長に亘って直線状に連続した細長い帯状の加工面38を備えている。この加工面38は、第1直線部31Aにおける3つの主加工面33a,34a,35aや第2直線部31Bにおける加工面37と同一の平面上に設けられており、角部31Eにおいて、加工面37の端部に直角に交わっている。
【0061】
第3直線部31Cの第3棒状ヒータ51Cは、やはり第3温度センサ52Cの検出温度に基づいて個別に温度制御することが可能である。
【0062】
このように、3つの直線部31A,31B,31Cが連結された第2実施例の非タブ領域用ヒートブロック300によれば、セル1の注入口となる第4の辺10を除く3つの辺7,8,9を同時に封止加工することが可能である。
【0063】
なお、上記各実施例のようにタブ領域11aと非タブ領域11bとを個別に加熱封止する場合に、非タブ領域11bの加熱封止を先に行うようにしてもよい。
【0064】
また上記の各実施例においては、第1の辺7についてタブ領域11aと非タブ領域11bとを個別に加熱封止することを前提として、第1直線部31Aが非タブ領域11bのみを加圧・加熱する構成となっているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、2つの辺あるいは3つの辺を連続したシール線として同時に加熱封止するヒートブロックに広く適用することができる。