(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862640
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】バッテリモジュールの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/20 20210101AFI20210412BHJP
【FI】
H01M2/10 Y
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-125732(P2017-125732)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-9055(P2019-9055A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和久
(72)【発明者】
【氏名】小原 光晴
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/021288(WO,A1)
【文献】
特開2006−147546(JP,A)
【文献】
特開2013−140698(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/109101(WO,A1)
【文献】
特開2007−250330(JP,A)
【文献】
特開2002−298833(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203386853(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20〜50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平なフィルム外装電池を複数積層してなるセルユニットの厚み方向に沿った貫通孔に、モジュールケースの一部となるスリーブを挿通させるバッテリモジュールの製造装置であって、
上記スリーブを起立状態に保持するスリーブ側治具と、
上記セルユニットを把持する把持部を有する把持ハンドと、
上記貫通孔と上記スリーブとが整列する位置において、上記把持ハンドと上記スリーブ側治具とを上記セルユニットの厚み方向に沿って相対的に接近させる駆動機構と、
上記把持ハンドの上記貫通孔に対応する位置に該貫通孔と同軸状に配置され、かつ上記の接近動作に伴って先端が上記セルユニットの上記貫通孔の開口周縁を押圧する押圧筒と、
上記押圧筒の中に該押圧筒の軸方向に沿って移動可能に配置され、かつ上記把持部による把持前に上記貫通孔に嵌合して該貫通孔を上記把持ハンドに対し位置決めするガイドピンと、
を備えてなるバッテリモジュールの製造装置。
【請求項2】
上記ガイドピンは、上記押圧筒の先端から一部が突出するようにスプリングによって付勢されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項3】
上記ガイドピンは、上記貫通孔に対応した径を有する位置決め用の大径部と、この大径部の先端から延びる小径部と、を有し、
上記の接近動作に伴って上記小径部先端が上記スリーブ側治具に当接することで、上記ガイドピンが上記押圧筒内で後退する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項4】
上記スリーブ側治具は、上記スリーブの内周に嵌合する支持ピンを有し、この支持ピンの先端に上記小径部先端が当接する、ことを特徴とする請求項3に記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項5】
上記スリーブ側治具は、上記スリーブをその先端部を残して外側から挟持するクランプを有し、
このクランプは、上記の接近動作に伴い上記スリーブの先端が上記貫通孔に挿入されたときに外側へ退避するように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項6】
上記セルユニットの周縁の複数箇所に上記貫通孔を有し、
上記把持ハンドは、各々の貫通孔に対応して複数の押圧筒を有し、この複数の押圧筒で囲まれる領域の内側に上記把持部が配置されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項7】
上記セルユニットの周縁の複数箇所に上記貫通孔を有し、
上記把持ハンドは、各々の貫通孔に対応して複数の押圧筒を有し、この複数の押圧筒の中の一部の押圧筒が上記ガイドピンを備えている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバッテリモジュールの製造装置。
【請求項8】
上記スリーブは、モジュールケースの一部となる板状部材に一端が固定されており、
上記スリーブ側治具は、上記板状部材とともに上記スリーブを保持する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバッテリモジュールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏平なフィルム外装電池を複数積層してなるセルユニットの貫通孔に、モジュールケースの一部となるスリーブを挿通させるバッテリモジュールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン二次電池として、複数のシート状の正極および負極をセパレータを介して積層してなる発電要素(電極積層体とも呼ばれる)が、可撓性を有するラミネートフィルムからなる外装体の中に電解液とともに収容された偏平形状をなすフィルム外装電池が知られている。この種のフィルム外装電池は、その取り扱いを容易にするために、特許文献1に開示されているように、複数個積層してセルユニットとした上で、金属缶のようなモジュールケース内に収容して、バッテリモジュールとして構成することがしばしば行われている。
【0003】
特許文献1のものでは、モジュールケースは、アッパケースとロアケースと両者を連結する複数の円筒形のスリーブとから構成されており、セルユニットに設けられた貫通孔にスリーブを挿通させることで、モジュールケースにおけるセルユニットの位置決めならびに固定がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/021288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、セルユニットの貫通孔にどのようにしてスリーブを挿通させるのか具体的な開示はないが、この工程を自動化する場合、一般には、スリーブの一端部(あるいはスリーブの一端を支持したアッパケースないしロアケース)を治具によって固定支持し、セルユニットを吸着ハンドにより把持し、吸着ハンドを支持するロボットアーム等の駆動機構を介して、スリーブと貫通孔とが一直線上に整列した位置において吸着ハンドを治具に向かって移動させることで、貫通孔にスリーブを嵌合させることとなる。
【0006】
このような場合に、一般に吸着ハンドはワークつまりセルユニットの中央部分を吸着しているのに対し、セルユニットの貫通孔は、発電要素と重ならない周縁部に位置しているので、貫通孔の端部にスリーブの先端が嵌合し始めると、両者間で生じる挿入抵抗によってセルユニットが撓み、貫通孔の中心軸線が傾く、という問題がある。このような貫通孔の傾きが生じると、挿入抵抗はさらに増加するので、円滑な挿入がさらに困難となる。この結果、例えば、セルユニットを構成するフィルム外装電池の変形や損傷等が生じる懸念がある。
【0007】
なお、セルユニットの貫通孔の径をスリーブの外径に対し十分に大きく設定すれば挿入は容易となるが、それだけバッテリモジュールにおけるセルユニットの位置精度が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るバッテリモジュールの製造装置は、
スリーブを起立状態に保持するスリーブ側治具と、
セルユニットを把持する把持部を有する把持ハンドと、
セルユニットの貫通孔と上記スリーブとが整列する位置において、上記把持ハンドと上記スリーブ側治具とを上記セルユニットの厚み方向に沿って相対的に接近させる駆動機構と、
上記把持ハンドの上記貫通孔に対応する位置に該貫通孔と同軸状に配置され、かつ上記の接近動作に伴って先端が上記セルユニットの上記貫通孔の開口周縁を押圧する押圧筒と、
上記押圧筒の中に該押圧筒の軸方向に沿って移動可能に配置され、かつ上記把持部による把持前に上記貫通孔に嵌合して該貫通孔を上記把持ハンドに対し位置決めするガイドピンと、
を備えている。
【0009】
このような構成では、ガイドピンにより貫通孔が把持ハンドに対して正しく位置決めされた状態でもってセルユニットが把持ハンドに把持される。そして、把持ハンドがスリーブ側治具に向かって相対的に接近動作することで、互いに整列しているスリーブが貫通孔に挿入される。このとき、セルユニットは、ガイドピンにより貫通孔の位置が保たれたまま押圧筒によって貫通孔の開口周縁が押圧され、スリーブへ向かって貫通孔が押し込まれていく。そのため、挿入抵抗によって貫通孔が傾くことがない。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、モジュールケースの一部となるスリーブをセルユニットの貫通孔に挿通させる工程において、貫通孔やスリーブが傾くことなく円滑にスリーブを挿通させることができ、フィルム外装電池の変形や損傷の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係る製造装置の一実施例を概略的に示した構成説明図。
【
図7】同じく把持ハンドの一部を拡大して示した一部断面の斜視図。
【
図8】仮置き台上でのセルユニットの把持工程を示す工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、この発明に係るバッテリモジュール製造装置の構成を概略的に示した構成説明図である。この製造装置は、モジュールケースの一部となるロアケース1に支持されているスリーブ2を、セルユニット3の周縁4箇所の貫通孔4に挿通させて、セルユニット3をロアケース1に組み付けるための装置である。この装置は、図示しない搬送機構によりワークとなるセルユニット3が順次に仮置きされる仮置き台5と、この仮置き台5に並んで配置されたスリーブ側治具6と、セルユニット3を仮置き台5において吸着・把持し、このセルユニット3をスリーブ側治具6上においてロアケース1に組み付ける吸着ハンド(把持ハンド)7と、を備えている。この吸着ハンド7は、図示せぬ駆動機構に連係しており、この駆動機構を介して、少なくとも、仮置き台5の上方位置とスリーブ側治具6の上方位置との間で水平方向に往復移動するとともに、仮置き台5およびスリーブ側治具6の各々の位置において垂直方向に上昇・下降が可能なように構成されている。駆動機構としては、例えば、旋回型の複数のロボットアームを有する多軸ロボット、あるいは、2本のガイドレールを組み合わせた形のXZ直交ロボット、などを用いることができる。一実施例では、多軸ロボットのロボットアームの先端に吸着ハンド7が連結されており、所定の水平姿勢を保ったまま仮置き台5とスリーブ側治具6との間で上昇・下降および水平移動を実現している。
【0014】
図2は、スリーブ側治具6をロアケース1とともに示した斜視図である。モジュールケースは、金属製の板状部材であるロアケース1と、同じく金属製の板状部材である図示しないアッパケースと、これらロアケース1とアッパケースとを両者間にセルユニット3を挟み込んだ形で連結する円筒状の複数(図示例では4本)の金属製のスリーブ2と、から構成される。スリーブ2は、ロアケース1およびアッパケースにそれぞれ設けた円形の孔を軸部が通るハトメ(図示せず)の圧入によって、両端がロアケース1およびアッパケースにそれぞれ固定される。スリーブ側治具6に搬送されてくる段階では、4本のスリーブ2の基端が図示せぬハトメによってロアケース1に固定されており、スリーブ側治具6上においてロアケース1からスリーブ2が上方へ向かって起立した状態となっている。
【0015】
スリーブ側治具6は、板状をなすベース部材11と、このベース部材11のそれぞれ上記スリーブ2に対応する位置に設けられた4本の支持ピン12と、から構成されている。支持ピン12は、基部側の大径部12aと、先端側の小径部12b(
図1参照)と、を有し、上記小径部12bの径が上記スリーブ2の内周に極僅かな隙間を介して嵌合するように設定されているとともに、上記大径部12aは、上記スリーブ2の内径よりも大きな径を有している。従って、ロアケース1は、大径部12aと小径部12bとの境界に両者の径差から生じる円環状の支持面によって、
図2のように支持され、かつ垂直方向の高さ位置が所定位置に規定される。そして、支持ピン12の小径部12bがスリーブ2の内周に嵌合することによって、各スリーブ2の位置が所定位置に位置決めされる。なお、ベース部材11は、4本の支持ピン12によって周囲4箇所が支持されるロアケース1の中央部を下方から支持するように、支持台11a(
図1参照)を中央部に備えている。
【0016】
また、
図2には示していないが、スリーブ側治具6は、
図3に示すように、固定フィンガ14aと可動フィンガ14bとによってスリーブ2をそれぞれロアケース1の外側から挟持する4個のクランプ14を備えている。これらのクランプ14は、スリーブ2の軸方向の中間部を支持するものであり、クランプ14によってスリーブ2が挟持されている状態において、スリーブ2の先端部は、クランプ14から突出している。また、これらのクランプ14は、セルユニット3をスリーブ2に挿通させる際に、水平面に沿って外側へ退避するように構成されている。詳しくは、略長方形をなすセルユニット3ないしロアケース1の長手方向に沿ってそれぞれ移動する構成となっている。
【0017】
スリーブ側治具6には、図示しない搬送機構によりワークとなるロアケース1が順次に搬送され、かつ
図2に示すように、支持ピン12上に配置される。そして、4本のスリーブ2が支持ピン12(小径部12b)とクランプ14とによって保持された状態となる。
【0018】
仮置き台5は、板状のベース部材21の中央部に支持台22を有するとともに、周囲の4箇所に、セルユニット3の貫通孔4部分をそれぞれ支持するボス部23を備えている。
【0019】
次に、
図4〜
図7に基づいて、吸着ハンド7の構成をセルユニット3とともに詳細に説明する。
【0020】
図4は、吸着ハンド7がセルユニット3を吸着・把持している状態を示している。セルユニット3は、図示例では、4個の偏平なフィルム外装電池31を積層して一体化した構成である。フィルム外装電池31は、特許文献1に記載のものと基本的に同様の構成であり、複数のシート状の正極および負極をセパレータを介して積層してなる発電要素(電極積層体)が、可撓性を有するラミネートフィルムからなる外装体の中に電解液とともに収容され、かつこの外装体の四辺がラミネートフィルムの加熱溶着により封止された構成となっている。このフィルム外装電池31は、長方形状をなしており、その一方の短辺において、薄い金属板からなる端子となる正負の電極タブが外装体の合わせ面を通して引き出されている。
【0021】
4個のフィルム外装電池31は、外装体の短辺に沿ってそれぞれ配置される合成樹脂製のフロント側絶縁スペーサ32およびリヤ側絶縁スペーサ33を介して、積層されている。つまり、上下に隣接する2つの絶縁スペーサ32,32(33,33)の間に外装体の短辺側部分を挟み込んだ形に、4個のフィルム外装電池31が積層されている。従って、フロント側絶縁スペーサ32およびリヤ側絶縁スペーサ33は、それぞれ5個の絶縁スペーサ32,33を含んでいる。なお、上下両端の絶縁スペーサ32,33は、他の3個の絶縁スペーサ32,33とは僅かに構成が異なっている(
図6参照)が、ここでは両者を特に区別しないものとする。フロント側絶縁スペーサ32およびリヤ側絶縁スペーサ33は、それぞれ長手方向の両端に、積層方向に連なる貫通孔4を備えている。つまり、セルユニット3の周囲の4箇所に設けられる貫通孔4は、実際には、5個の絶縁スペーサ32,33を積層することによって筒状に構成されたものである。
【0022】
5個積層したフロント側絶縁スペーサ32の中央部には、断面U字形のチャンネル状をなすカバー部材34が設けられており、ここに、正負の出力端子36,37および電圧検出用端子38が配置されている。4個のフィルム外装電池31の電極タブは、カバー部材34の内側において、適宜な態様で出力端子36,37に電気的に接続されている。
【0023】
吸着ハンド7は、セルユニット3の矩形の外形よりも小さなベースプレート41と、このベースプレート41にブラケット42を介して平行に組み合わされた接続プレート43と、を有し、上記接続プレート43を介して、図示しないロボットアームの先端に連結されている。吸着ハンド7は、セルユニット3を吸着する吸着部(把持部)として、複数個、具体的には計8個の吸着カップ44を有している。これらの吸着カップ44は、容易に変形するゴム製ないし合成樹脂製のカップが金属製のバキューム配管の先端に設けられたもので、ブラケット45を介して上記ベースプレート41にそれぞれ支持されている。計8個の吸着カップ44は、セルユニット3の一対の短辺に沿ってそれぞれ4個ずつ並んで配置されており、負圧が導入されたときに、セルユニット3の上端に位置するフィルム外装電池31の外装体表面に吸着する。
【0024】
吸着ハンド7の四隅には、それぞれ中心軸線が垂直(換言すれば、ベースプレート41の主面と直交する方向)となった円筒状の押圧筒46がそれぞれ設けられている。これら4個の押圧筒46は、いずれもブラケット47を介してベースプレート41に固定されている。なお、個々のブラケット47の形状は一部で異なっているが、特に区別せずに同じ符号47を付してある。吸着部となる8個の吸着カップ44は、4個の押圧筒46で囲まれる領域の内側に配置されている。
【0025】
ここで、4個の押圧筒46は、いずれも、セルユニット3の貫通孔4の位置に対応して配置されている。換言すれば、セルユニット3の貫通孔4と同軸状に配置されている。押圧筒46の内径は、貫通孔4の内径に実質的に一致している。そして、押圧筒46の先端面(下端面)は、セルユニット3が吸着カップ44によって吸着ハンド7に吸着されている状態の下で、最上端の絶縁スペーサ32,33における貫通孔4の開口周縁にちょうど接する高さ位置に設定されている(
図6参照)。
【0026】
4個の押圧筒46の中で、対角線上に位置する2個の押圧筒46(
図4に符号46Aでもって示す)は、単に円筒状の押圧筒46のみの構成となっている。
【0027】
これに対し、残りの対角線上に位置する2個の押圧筒46(
図4に符号46Bでもって示す)は、
図5および
図7に示すように、押圧筒46の中に該押圧筒46の中心軸線に沿って移動可能なガイドピン49を備えている。このガイドピン49は、貫通孔4の内径に対応(詳しくは微小間隙を介して嵌合する関係)した径を有する位置決め用の大径部49aと、スリーブ2の内径に対応(詳しくは微小間隙を介して嵌合する関係)した径を有する小径部49bと、を有する。押圧筒46に摺動可能に嵌合した大径部49aは、大部分が押圧筒46内に収容されており、その先端つまり下端から小径部12bが下方へ延びている。大径部49aと小径部12bとの間は、テーパ面49cによって滑らかに連続している。また、小径部12bの先端も緩いテーパ面となっている。
【0028】
さらに、ガイドピン49は、大径部49aの基端つまり上端に接続された小径のロッド部49dを一体に備えている。このロッド部49dは、押圧筒46の上端から上方へ突出しており、ガイドピン支持ブラケット50のL字形上端部50aに設けられたスライダ52(
図5参照)を摺動可能に貫通している。そして、スライダ52と上記大径部49aとの間に、ロッド部49d周囲に巻回されたコイルスプリング51が圧縮状態に配設されている。このコイルスプリング51によって、ガイドピン49は、下方へ向かって、つまり吸着されているセルユニット3の貫通孔4の中へ向かって、常に付勢されている。このように常時下方へ付勢されるガイドピン49は、ロッド部49dの上端に取り付けられたストッパ53がスライダ52に当接することによって、初期位置に保たれている。この初期位置においては、大径部49aが押圧筒46の下端面から比較的短い所定量だけ突出している。つまり、セルユニット3が吸着されている状態では、大径部49aの円筒面の一部がセルユニット3の貫通孔4に嵌合し、貫通孔4の位置を吸着ハンド7に対し正しく位置決めする。
【0029】
なお、4個の押圧筒46の全てにガイドピン49を設けた構成も勿論可能であるが、図示の実施例では、構成の複雑化を抑制するために、一方の対角線上に位置する2個の押圧筒46のみがガイドピン49を具備している。
【0030】
小径部49bの長さは、スリーブ側治具6の支持ピン12(小径部12b)の長さと関連して、吸着ハンド7が所定高さ位置まで下降したときに、両者の先端が互いに当接するように設定されている。この当接によって、吸着ハンド7がさらに下降すれば、ガイドピン49が支持ピン12によって相対的に押し上げられることとなる。
【0031】
次に、
図8および
図9の工程説明図を参照して、セルユニット3をロアケース1に組み付ける一連の工程を順に説明する。
【0032】
図8は、仮置き台5上に置かれているセルユニット3を吸着ハンド7が取りにいくときの工程を示しており、工程(A)では、吸着ハンド7がセルユニット3(仮置き台5)の上方に位置する。この状態では、吸着ハンド7のガイドピン49は、コイルスプリング51の付勢力によって大径部49aが押圧筒46下端から僅かに突出している。この状態から吸着ハンド7が下降していき、工程(B)のように吸着カップ44がセルユニット3に当接する直前付近で吸着カップ44に負圧を導入することで、セルユニット3が吸着ハンド7に吸着・把持される。このとき、ガイドピン49は、セルユニット3が吸着ハンド7に完全に吸着される前に、その大径部49aがテーパ面49cに案内されながらセルユニット3の貫通孔4の上端開口に嵌合する。これにより、セルユニット3の貫通孔4の位置が吸着ハンド7に対して正しく位置決めされた状態でもって、セルユニット3が吸着ハンド7に把持される。なお、吸着ハンド7の下降に伴ってガイドピン49の小径部49b先端が仮置き台5のボス部23に当接すると、ガイドピン49はコイルスプリング51の付勢力に抗して上方へ押される形となり、ガイドピン49は吸着ハンド7に対し上方へ後退する。
【0033】
この状態から工程(C)として示すように、吸着ハンド7がセルユニット3を把持したまま上昇し、かつ、仮置き台5に隣接するスリーブ側治具6の上方へと水平移動する。ここで、セルユニット3が仮置き台5から離れると、吸着ハンド7のガイドピン49の先端が仮置き台5のボス部23から離れるため、コイルスプリング51の付勢力によってガイドピン49は吸着ハンド7に対して下降し、セルユニット3の貫通孔4に嵌合した状態を保持する。
【0034】
図9は、スリーブ側治具6においてセルユニット3をロアケース1に組み付ける際の工程を示している。セルユニット3を把持した吸着ハンド7は、工程(D)に示すように、セルユニット3の貫通孔4とスリーブ側治具6におけるスリーブ2とが整列する位置において、スリーブ側治具6へ向かって下降する。なお、このスリーブ側治具6上での吸着ハンド7の下降は、セルユニット3の厚み方向の接近動作に相当する。そして、最初に、セルユニット3の貫通孔4から下方へ突出しているガイドピン49の小径部49bの先端が、スリーブ側治具6に起立状態で保持されているスリーブ2の内径に嵌合する。これにより、スリーブ2の上端の位置がガイドピン49に対し正しく同軸状態となる。なお、この段階では、各々のスリーブ2は、クランプ14によって保持されている。
【0035】
吸着ハンド7がさらに下降すると、工程(E)として図示するように、ガイドピン49の小径部49bに案内されるスリーブ2の上端部が、セルユニット3の貫通孔4の下端開口に嵌合する。このとき、セルユニット3は、8個の吸着カップ44の外側を囲むように周縁の4箇所に位置する押圧筒46によって、4つの貫通孔4の開口周縁が均等に押圧される。しかも、個々のスリーブ2と貫通孔4との関係においては、貫通孔4の上端開口の開口縁の全周が、スリーブ2へ向けて直線的に、かつスリーブ2と同軸方向を保ったまま押圧される。従って、セルユニット3が撓んだりせずに、各スリーブ2がそれぞれ貫通孔4内に確実かつ円滑に入り込む。
【0036】
スリーブ2の上端部がセルユニット3の貫通孔4に所定長さだけ嵌合したら、各スリーブ2は、この貫通孔4との嵌合によって位置決めされることとなるので、工程(F)として示すように、スリーブ側治具6のクランプ14は外側へ退避する。そして、このようにスリーブ2の上端部がセルユニット3の貫通孔4に所定長さだけ嵌合した段階で、ガイドピン49の小径部49bの先端がスリーブ側治具6の支持ピン12の先端(小径部12bの先端)に当接する。そのため、吸着ハンド7がさらに下降するに伴って、ガイドピン49はコイルスプリング51の付勢力に抗して上方へ後退し、大径部49aがセルユニット3の貫通孔4から抜け出る。換言すれば、セルユニット3の貫通孔4の位置決めが、ガイドピン49による位置決めからスリーブ2そのものによる位置決めへと移行する。
【0037】
このようにスリーブ2とセルユニット3の貫通孔4とが互いに位置決めされた状態で、吸着ハンド7が所定高さ位置までさらに下降する。これにより、スリーブ2が貫通孔4に挿通され、最終的にセルユニット3がロアケース1の所定高さ位置に組み付けられた状態となる。前述したように、吸着ハンド7は周囲4箇所の押圧筒46がセルユニット3の貫通孔4の開口周縁を押圧するので、スリーブ2は円滑に貫通孔4の中を通っていく。
【0038】
ロアケース1への組み付けが完了した段階で、吸着ハンド7への負圧導入を終了し、セルユニット3を解放する。そして、吸着ハンド7は、スリーブ側治具6上で上昇し、かつ仮置き台5の上へと戻る。工程(G)は、セルユニット3を解放した吸着ハンド7が上昇し始めた段階を示しているが、上述したように、セルユニット3の貫通孔4がスリーブ2に挿通された段階では、ガイドピン49はコイルスプリング51の付勢力に抗して上方へ後退しており、ガイドピン49の大径部49aが貫通孔4から既に抜け出ている。従って、吸着ハンド7が上昇したときに、セルユニット3が付随して持ち上げられる(いわゆる持ち帰りの現象)ようなことがない。
【0039】
このように、上記実施例の製造装置によれば、モジュールケースの一部となるスリーブ2とセルユニット3の貫通孔4との挿通作業を自動化して行うことが可能となる。そして、挿通時には、吸着部となる吸着カップ44より外側に位置する押圧筒46が貫通孔4の開口周縁を押圧するので、セルユニット3や個々のフィルム外装電池31が撓み変形するようなことがなく、スリーブ2と貫通孔4とが同軸状態を保ったまま円滑に挿入される。従って、フィルム外装電池31の変形や損傷を招来することがない。
【0040】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、スリーブ側治具6に対し吸着ハンド7を下降つまり接近動作させる構成となっているが、逆にスリーブ側治具6を上昇させて固定位置にあるセルユニット3の貫通孔4にスリーブ2を挿通させるようにしてもよい。また、上記実施例では、ロアケース1にスリーブ2が取り付けられた状態でスリーブ側治具6に保持されるように構成されているが、スリーブ2を単体で(つまりロアケース1に取り付ける前に)スリーブ側治具6に起立状態に保持し、セルユニット3の貫通孔4に挿通させることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ロアケース
2…スリーブ
3…セルユニット
4…貫通孔
5…仮置き台
6…スリーブ側治具
7…吸着ハンド(把持ハンド)
12…支持ピン
14…クランプ
41…ベースプレート
44…吸着カップ
46…押圧筒
49…ガイドピン
51…コイルスプリング