特許第6862661号(P6862661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6862661-化粧シート、及び化粧シートの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862661
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】化粧シート、及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20210412BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210412BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B32B27/00 E
   E04F15/10 104A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-40000(P2016-40000)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-154389(P2017-154389A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】穂積 賢吾
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−072633(JP,A)
【文献】 特開2008−238728(JP,A)
【文献】 特開2007−291836(JP,A)
【文献】 特開2000−334892(JP,A)
【文献】 特開平04−298350(JP,A)
【文献】 特開2008−106591(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02308678(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー層と、
透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された下台樹脂層と、
ポリエチレン樹脂で形成された印刷用原反層と、
二液ウレタン樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂バインダーインキを用いて印刷された絵柄模様層と、
透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された上台樹脂層と、
凹部の深度が15μm以上であるエンボス模様が賦型された表面保護層と、
が順次積層され、
前記下台樹脂層の厚さは125μm以上150μm以下であり、
前記印刷用原反層の厚さは55μm以上100μm以下であり、
前記絵柄模様層の厚さは0.1μm以上10μm以下であり、
前記上台樹脂層の厚さは150μm以上200μm以下であり、
前記表面保護層の厚さは0.1μm以上15μm以下であり、
前記プライマー層は、二液ウレタン樹脂系のプライマーで形成されており、
前記下台樹脂層の厚さは、前記上台樹脂層の厚さよりも薄く、
前記印刷用原反層は、前記下台樹脂層側の面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーで形成されたプライマー層を備え、
前記絵柄模様層は、前記上台樹脂層側の面と、前記印刷用原反層側の面とに、二液ウレタン樹脂系のプライマーで形成されたプライマー層をそれぞれ備え、
前記表面保護層に賦型された前記エンボス模様は、前記上台樹脂層にも賦型されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転しても絵柄の磨耗が無いという条件を満たす磨耗性を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
ポリエチレン樹脂を用いて厚さ55μm以上100μm以下の印刷用原反層を形成し、
前記印刷用原反層の表面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを塗工した後に、二液ウレタン樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂バインダーインキを用いて木目柄を乾燥後の坪量3g/m2で印刷して絵柄模様層を形成し、
前記絵柄模様層の表面に、透明性を有するポリプロピレン樹脂を150μm以上200μm以下の厚さで押出してラミネートして上台樹脂層を形成し、
前記上台樹脂層の表面に、紫外線硬化型樹脂を坪量6g/m2で塗工して表面保護層を形成し、
前記表面保護層の表面にエンボス加工を施して、凹部の深度が15μm以上であるエンボス模様を賦型し、
紫外線を照射して前記表面保護層の前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、
前記表面保護層の前記紫外線硬化型樹脂を硬化させた後に、前記印刷用原反層の裏面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを塗工した後に、透明性を有するポリプロピレン樹脂を125μm以上150μm以下の厚さで裏面押出してラミネートして下台樹脂層を形成し、
前記下台樹脂層の表面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを乾燥後の坪量1.2g/m2で塗工して、プライマー層を形成する工程を有し、
前記下台樹脂層の厚さは、前記上台樹脂層の厚さよりも薄く、
前記表面保護層に賦型された前記エンボス模様は、前記上台樹脂層にも賦型されていることを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項4】
前記エンボス模様は、前記印刷用原反層、前記絵柄模様層、前記上台樹脂層、及び前記表面保護層を備えた積層体を、深度15μm以上の凹部を備えたエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、賦型されることを特徴とする請求項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項5】
欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転しても絵柄の磨耗が無いという条件を満たす磨耗性を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用ビニルタイル等に用いられる化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床、壁、天井等の建築物内装材、扉等の建具、家具等の表面材等の用途に用いる化粧シート(化粧材)では、通常、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性が要求される。特に、建築物内装材の外表面に貼る化粧シートにおいては耐傷性、耐磨耗性が強く要求されている。特許文献1には、このような化粧シートを用いた床用化粧材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−051832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の化粧シートは、例えば、耐磨耗性について欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転した場合、絵柄の磨耗(削れ)が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、耐磨耗性について欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転しても絵柄の磨耗が無い化粧シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る化粧シートは、プライマー層と、透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された下台樹脂層と、ポリエチレン樹脂で形成された印刷用原反層と、印刷用原反層に印刷された絵柄模様層と、透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された上台樹脂層と、エンボス模様が賦型された表面保護層と、が順次積層されている。上台樹脂層の厚さは150μm以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、耐磨耗性について欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転しても絵柄の磨耗が無い床用ビニルタイル用化粧シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る化粧シートを表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る化粧シートについて説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(化粧シート10)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧シート10は、プライマー層1と、下台樹脂層2と、印刷用原反層3と、絵柄模様層4と、上台樹脂層5と、表面保護層6とが順次(この順で)積層されている。また、本実施形態に係る化粧シートの積層方向の最表層である表面保護層6には、エンボス模様7が賦型されている。
【0011】
(プライマー層1)
プライマー層1は、樹脂の接着性を改善することを目的としたアンカーコート層である。また、プライマー層1の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。プライマー層1を形成するプライマー(下塗り剤)としては、例えば、二液ウレタン樹脂系のプライマーが使用可能である。プライマーの種類は、被着材や用途に応じて異なる。被着材としては、例えば、金属系又は木質系からなる板状の部材がある。金属系としては、例えば、アルミ、鋼、ステンレス、複合パネル等がある。複合パネルとしては、例えば、芯材となる樹脂層と、樹脂層の両面それぞれに貼り付けられた金属板(アルミニウム、ガルバリウム、ステンレス等)とを備えたものがある。また、木質系としては、MDF(medium density fiberboard:中密度繊維板)、合板、パーチクルボード等がある。
【0012】
なお、プライマー層1は、下台樹脂層2の表面(印刷用原反層3と反対側の面)に限らず、下台樹脂層2、印刷用原反層3、絵柄模様層4、上台樹脂層5、及び表面保護層6それぞれの層間にも形成されていても良い。
【0013】
(下台樹脂層2)
下台樹脂層2は、衝撃吸収(緩衝)等を目的としたバッカー層であり、かつ、印刷用原反層3と被着材とを接着するための接着剤層でもある。下台樹脂層2の樹脂成分としては、特に限定はないが、例えば、透明性を有するポリプロピレン樹脂が好ましい。下台樹脂層2の厚さは、耐衝撃性を考慮して、例えば、125μm以上150μm以下程度であると好ましい。
【0014】
(印刷用原反層3)
印刷用原反層3は、表面に印刷されることを目的とした基材シートである。印刷用原反層3は、例えば、樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムの樹脂成分としては、特に限定はないが、例えば、ポリエチレン樹脂が好ましい。印刷用原反層3の厚さは、例えば、55μm以上100μm以下程度であると好ましい。
【0015】
なお、印刷用原反層3の表面には、印刷用原反層3と絵柄模様層4との接着性を向上するためのベタ層が形成されていても良い。ベタ層としては、例えば、二液ウレタン樹脂と塩酢ビ樹脂とを混合した樹脂を使用できる。樹脂には、着色のために顔料が添加されている。ベタ層は、例えば、印刷用原反層3の上にベタ層構成用の樹脂を塗工して形成する。乾燥後の坪量は、例えば、2g/mとする。
【0016】
(絵柄模様層4)
絵柄模様層4は、化粧シート10に意匠性を付与するための絵柄層である。絵柄模様層4は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。絵柄模様層4の厚さは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0017】
絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、目的に応じて選択できる。
絵柄模様の印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、例えば、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0018】
着色剤としては、例えば、顔料を適宜使用することができる。顔料については、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10質量部以上50質量部以下程度が好ましく、15質量部以上30質量部以下程度がより好ましい。
【0019】
結着材樹脂は、絵柄模様層4を形成する下層の樹脂の種類に応じて設定できる。結着材樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0020】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0021】
(上台樹脂層5)
上台樹脂層5は、衝撃吸収(緩衝)等を目的としたバッカー層であり、かつ、絵柄模様層4と表面保護層6とを接着するための接着剤層でもある。更に、上台樹脂層5は、絵柄模様層4を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり絵柄模様層4の耐傷性を向上させたりする。上台樹脂層5の樹脂成分としては、特に限定はないが、例えば、透明性を有するポリプロピレン樹脂が好ましい。上台樹脂層5の厚さは、耐磨耗テスト(2000回転)をクリアするため、例えば、150μm以上200μm以下程度であると好ましい。
【0022】
(表面保護層6)
表面保護層6は、艶調整及び/又は絵柄模様層4の保護を目的としたトップコート層である。表面保護層6の樹脂成分としては、特に限定はないが、例えば、紫外線(UV)硬化型樹脂が好ましい。表面保護層6の厚さは限定的ではないが、例えば、0.1μm以上15μm以下程度が好ましい。
【0023】
なお。艶調整を目的とする表面保護層6であれば、例えば、シリカ等の既知フィラーを含む表面保護層6がある。表面保護層6の形成方法としては、例えば、グラビア印刷等の公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層4と表面保護層6との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層4の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層6を設けることもできる。
また、化粧シート10の表面強度(耐スクラッチ性等)、耐汚染性、絵柄模様層4の保護等を目的として表面保護層6を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0024】
(エンボス模様7)
化粧シート10の最表層である表面保護層6の表面に対してエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施し、化粧シート10の表面にエンボス模様7を賦型(付与)する。化粧シート10は、表面保護層6の表面に賦型されたエンボス模様7により、触感による立体感をより感じさせる構成とすることができる。エンボス加工では、例えば、深度15μm以上の凹部をエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、化粧シート10に凹凸形状を施すようにしても良い。硬度の計測方法としては、例えば、JIS K−6301 A型を用いることができる。エンボス模様7としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【実施例】
【0025】
以下に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本実施形態は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエチレン樹脂を用いて厚さ55μmの印刷用原反層3を形成した。
次に、印刷用原反層3の表面に、二液ウレタン樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂バインダーインキを用いて木目柄を乾燥後の坪量3g/mで印刷して、絵柄模様層4を形成した。
次に、絵柄模様層4の表面に、透明性を有するポリプロピレン樹脂を150μmの厚さで押出してラミネートして、上台樹脂層5を形成した。このとき、絵柄模様層4の表面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを乾燥後の坪量1.2g/mで塗工した後、その上に透明性を有するポリプロピレン樹脂を150μmの厚さで押出してラミネートして、上台樹脂層5を形成しても良い。
次に、上台樹脂層5の表面に、紫外線(UV)硬化型樹脂を坪量6g/mで塗工して、表面保護層6を形成した。このとき、絵柄模様層4の裏面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを乾燥後の坪量4g/mで塗工した後、その上に紫外線(UV)硬化型樹脂を坪量6g/mで塗工して、表面保護層6を形成しても良い。
更に、表面保護層6の表面にエンボス加工を施してエンボス模様7を賦型し、紫外線を照射して表面保護層6の紫外線(UV)硬化型樹脂を硬化させた。
【0026】
次に、印刷用原反層3の裏面(絵柄模様層4と反対側の面)に、透明性を有するポリプロピレン樹脂を125μmの厚さで裏面押出してラミネートして下台樹脂層2を形成した。このとき、印刷用原反層3の裏面に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを乾燥後の坪量1.2g/mで塗工した後、その上に透明性を有するポリプロピレン樹脂をラミネートして下台樹脂層2を形成しても良い。
最後に、下台樹脂層2の表面(印刷用原反層3と反対側の面)に、二液ウレタン樹脂系のプライマーを乾燥後の坪量1.2g/mで塗工して、プライマー層1を形成した。
【0027】
このようにして、プライマー層1と、透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された厚さ125μmの下台樹脂層2と、ポリエチレン樹脂で形成された厚さ55μmの印刷用原反層3と、印刷用原反層3に印刷された絵柄模様層4と、透明性を有するポリプロピレン樹脂で形成された厚さ150μmの上台樹脂層5と、エンボス模様7が賦型された表面保護層6と、が順次積層されている化粧シート10を作成した。
【0028】
(比較例1)
上台樹脂層5として、透明性を有するポリプロピレン樹脂を130μm押出してラミネートした。それ以外は実施例1と同様にして比較例の化粧シートを作製した。
【0029】
(性能評価)
耐磨耗性については、欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで、磨耗輪(ホイール)の幅12.7mm、加圧5.4Nとした条件下で2000回転した後に、外部観察を行い、絵柄の磨耗(削れ)が無いものを合格とした。性能評価の結果を下記の表1に記載する。
【表1】
【0030】
実施例1の化粧シート10は、絵柄の磨耗(削れ)が無いため、総合評価を合格とした。
比較例1の化粧シートは、絵柄の研磨部(磨耗輪の接触部)10%の面積において絵柄の磨耗(削れ)が発生したため、総合評価を不合格とした。
これにより、化粧シートにおいて絵柄模様層4上に上台樹脂層5を設けた上で、上台樹脂層5の厚さを150μmとしたときには、絵柄の磨耗(削れ)が発生しないことが確認された。また、上台樹脂層5の厚さを130μmとしたときには、絵柄の磨耗(削れ)が発生することが確認された。
したがって、絵柄の磨耗(削れ)を発生させないためには、化粧シートにおいて絵柄模様層4上に上台樹脂層5を設けた上で、上台樹脂層5の厚さを150μm以上にすることが好ましいことがわかった。
【0031】
(本実施形態の効果)
下台樹脂層、印刷用原反層、及び上台樹脂層を必要最低限の厚さで形成した上で、耐磨耗性について欧州規格EN13329:2006+A1:2008(E)に準拠したEN16511:2014(E)のCLASS33−3の耐磨耗テストで2000回転しても絵柄の磨耗が無い床用ビニルタイル用化粧シートを得た。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本実施形態に係る化粧シートは、欧州規格EN16511:2014(E)のClass33−3の耐磨耗テストで2000回転以上でも絵柄の磨耗(削れ)がない床用ビニルタイル用化粧シートであり、主に欧州住宅市場向け比塩ビ床用タイル等に利用可能である。
【0033】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。
【符号の説明】
【0034】
1…プライマー層
2…下台樹脂層
3…印刷用原反層
4…絵柄模様層
5…上台樹脂層
6…表面保護層
7…エンボス模様
10…化粧シート
図1