特許第6862665号(P6862665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6862665-トイレットペーパー 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862665
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】トイレットペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   A47K10/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-57178(P2016-57178)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-169682(P2017-169682A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】槌本 真和
(72)【発明者】
【氏名】大塚 真理子
(72)【発明者】
【氏名】小原 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小坂 亜弓
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄一郎
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−070678(JP,A)
【文献】 特開2013−189728(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/007534(WO,A1)
【文献】 特開2013−202345(JP,A)
【文献】 特開2003−275128(JP,A)
【文献】 特開2013−202346(JP,A)
【文献】 特開2013−217004(JP,A)
【文献】 特開2008−088612(JP,A)
【文献】 特開2003−199687(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0101774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、かつパルプ繊維を含む1プライのトイレットペーパーであって、
前記第1面のハンドフィール値と、前記第2面のハンドフィール値の平均が65.0以上であり、
前記トイレットペーパーに0.5gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとし、前記トイレットペーパーに50gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、(T−T)/Tの値が0.56以上であり、
記トイレットペーパーの長さ方向の引張強度が1.25N/15mm以上1.4N/15mm以下であり、前記トイレットペーパーの幅方向の引張強度が0.35N/15mm以上であり、
前記トイレットペーパーは、エンボス入りトイレットペーパーであって、
前記エンボスの高さは100μm以上150μm以下であり、
前記パルプ繊維の長さ加重平均繊維長は0.75mmより大きく1.1mm以下である、1プライのトイレットペーパー。
【請求項2】
前記トイレットペーパーは、針葉樹パルプを含み、
前記針葉樹パルプの含有量は、前記トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、35質量%より多く80質量%以下である請求項1に記載のトイレットペーパー。
【請求項3】
前記トイレットペーパーはさらに広葉樹パルプを含み、
前記広葉樹パルプの含有量は、前記トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下である請求項2に記載のトイレットペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状もしくはシート状のトイレットペーパー製品は、トイレットペーパーウェブを1枚又は2枚以上に重ねたトイレットペーパーを所定の大きさに切断して製造される。一般的には長尺のトイレットペーパーがロール状に巻回されてなるロール状トイレットペーパーが多用されている。1枚のトイレットペーパーウェブからなるトイレットペーパーは1プライのトイレットペーパーと称され、2枚重ねのトイレットペーパーウェブからなるトイレットペーパーは2プライのトイレットペーパーと称されている。
【0003】
ロール状トイレットペーパーは、ロールから巻き解かれ使用されるものであるから、使用時にはある程度の引張強度が要求される。一方で、トイレットペーパーは、直接肌に触れるものであるから、滑らかでふっくらとした風合いも要求される。このため、強度と良好な風合いを実現するために、トイレットペーパーの坪量や厚みを適切な範囲に調整すること等が検討されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209150号公報
【特許文献2】特開2013−217004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2で開示されたトイレットペーパーにおいてもその官能的品質(滑らかな風合いやふっくら感といった風合い)は十分ではなく、さらなる改善が求められていた。特に1プライのトイレットペーパーにおいては、引張強度の不足や、厚み不足による風合いの低下が問題となっていた。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ある程度の強度を有しつつも、優れた官能的品質を有するトイレットペーパーを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、トイレットペーパーのハンドフィール値(HF値)と、圧縮率を所定の範囲内とすることにより、強度と官能的品質を両立し得ることを見出した。本発明者らは、上記構成のトイレットペーパーにおいては、滑らかな風合いとふっくらとした触感が得られ、このような場合に特に優れた官能的評価が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する1プライのトイレットペーパーであって、第1面のハンドフィール値と、第2面のハンドフィール値の平均が65.0以上であり、トイレットペーパーに0.5gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとし、トイレットペーパーに50gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、(T−T)/Tの値が0.56以上である、1プライのトイレットペーパー。
[2] トイレットペーパーは、エンボス入りトイレットペーパーであって、エンボスの高さは100μm以上である[1]に記載のトイレットペーパー。
[3] トイレットペーパーは、針葉樹パルプを含み、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、35質量%より多く80質量%以下である[1]又は[2]に記載のトイレットペーパー。
[4] 針葉樹パルプの長さ加重平均繊維長は1.85mmより大きく2.5mm以下である[3]に記載のトイレットペーパー。
[5] トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の長さ加重平均繊維長は0.75mmより大きく1.1mm以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のトイレットペーパー。
[6] トイレットペーパーはさらに広葉樹パルプを含み、広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、10質量%以上70質量%以下である[3]〜[5]のいずれかに記載のトイレットペーパー。
[7] トイレットペーパーの長さ方向の引張強度が1.4N/15mm以下であり、トイレットペーパーの幅方向の引張強度が0.35N/15mm以上である[1]〜[6]のいずれかに記載のトイレットペーパー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度と官能的品質を兼ね備えたトイレットペーパーを得ることができる。本発明のトイレットペーパーは、滑らかな風合いと、ふっくらとした触感の両方を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のトイレットペーパーの構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(トイレットペーパー)
本発明は、第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する1プライのトイレットペーパーに関する。本発明のトイレットペーパーの第1面のハンドフィール値と、第2面のハンドフィール値の平均は65.0以上である。さらに、トイレットペーパーに0.5gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとし、トイレットペーパーに50gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、(T−T)/Tの値は0.56以上である。
本発明のトイレットペーパーは、ロール状トイレットペーパーであることが好ましく、このようなロール状トイレットペーパーは、トイレットロールと称されることもある。
【0013】
本発明のトイレットペーパーは、上記構成を有するため、滑らかな風合いとふっくらとした触感を兼ね備えたものである。さらに本発明のトイレットペーパーは十分な引張強度も有しており、実用的強度を備えつつも、優れた風合いや触感を兼ね備えたものである。
【0014】
本発明のトイレットペーパーは1プライのトイレットペーパーである。1プライのトイレットペーパーは、1枚のトイレットペーパーウェブからなるトイレットペーパーである。
【0015】
本発明では、トイレットペーパーはロール状トイレットペーパーであることが好ましく、この場合、トイレットペーパーの第1面とは、ロール状トイレットペーパーの外面に相当する面である。ここで、ロール状トイレットペーパーの外面とは、トイレットペーパーをロール状に巻き取った際にロールの外周面側に配される面のことをいう。
トイレットペーパーの第2面は、第1面とは反対側の面であり、内面に相当する面である。ここで、ロール状トイレットペーパーの内面とは、トイレットペーパーをロール状に巻き取った際にロールの内周面側に配される面である。
図1は本発明のトイレットペーパーの構成を説明する図である。ロール状トイレットペーパー10は外周面Pと内周面Qを有する。図1(a)において点線で囲った部分の構成の拡大図が図1(b)である。図1(b)にはトイレットペーパーウェブ1の構成が示されており、外周面側に配される面が第1面2であり、内周面側に配される面が第2面4となっている。
【0016】
本発明のトイレットペーパーの第1面のハンドフィール値と、第2面のハンドフィール値の平均は65.0以上である。第1面のハンドフィール値と、第2面のハンドフィール値の平均は68.0以上であることが好ましく、70.0以上であることがより好ましく、73.0以上であることがさらに好ましい。なお、HF値の上限は特に限定されるものではないが、一般的に95.0以下であることが好ましい。HF値は、柔らかさや滑らかさの要素を示す指標であるが、使用態様によって好ましい範囲が異なる傾向があった。本発明においては、1プライのトイレットペーパーに最適なHF値を見出したものであり、加えて他の条件も同時に満たすことにより、柔らかで、滑らかな表面質感を実現することに成功したものである。
【0017】
ここで、ハンドフィール値(HF値)は、ティシューソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて、以下の測定方法によって測定することができる。
まず、ティシューソフトネスアナライザーのサンプル台に、直径112.8mmの円形にカットしたサンプルを設置する。このサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込む。その後、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、その時の振動周波数を測定する。
また、直径112.8mmの円形にカットした別のサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNと、60mNの圧力で押し込んだ際の上下方向の変形変位量を算出する。HF値は、振動周波数と変形変位量から、算出される値であり、計算のアルゴリズムはTPIIを用いることができる。
HF値を算出する際は、各サンプルの第1面(外面)と第2面(内面)についてそれぞれ10回ずつ行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外する。そして、第1面及び第2面について各々平均値を算出し、そのように算出された2つの平均値からHF値の平均値を算出し、それを本発明におけるHF値とする。
なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。また、測定の際には、付属の説明書に従い標準サンプル(emetec ref.2X(nn.n))で校正し、アルゴリズムをTPIIに設定する。計算ソフトウェアとしてはemetec measurement system ver.3.22を使用する。
【0018】
本発明のトイレットペーパーに0.5gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、Tは、0.25以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.31以上であることがさらに好ましい。また、Tは、0.40以下であることが好ましく、0.35以下であることがより好ましく、0.34以下であることがさらに好ましい。
トイレットペーパーに50gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、Tは、0.10以上であることが好ましく、0.11以上であることがより好ましく、0.12以上であることがさらに好ましい。また、Tは、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.14以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明のトイレットペーパーに0.5gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとし、トイレットペーパーに50gf/cmの圧力をかけた際の厚みをTとした場合、(T−T)/Tの値は0.56以上である。(T−T)/Tの値は、0.58以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましい。また、(T−T)/Tの値は0.80以下であることが好ましく、0.70以下であればさらに好ましい。(T−T)/Tの値を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーのふっくら感といった触感をより効果的に高めることができる。また、(T−T)/Tの値を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの引張強度を保持することもできる。
本発明においては、(T−T)/Tの値と、HF値について上記条件を同時に満たすことにより、優れた表面質感と触感の両方を付与することができ、官能的品質を良好なものとすることができる。
【0020】
(T−T)/Tの値は圧縮性もしくは圧縮率と呼ぶことができる。すなわち、圧縮性や圧縮率を一定程度以上とすることにより、トイレットペーパーのふっくら感といった触感を高めることができる。
ここで、T及びTの値はKES FB3−AUTO−A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、KES FB3−AUTO−A自動化圧縮試験機の2cmの加圧板と受圧板間に10cm×10cmの大きさにカットしたサンプルを設置し、50秒/mmの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力とその時のサンプルの厚みを測定する。Tは圧力が0.5gf/cmにおけるサンプルの厚み(mm)であり、Tは圧力が50gf/cmにおけるサンプルの厚み(mm)である。
本発明における(T−T)/Tの値は、サンプルの第1面を加圧板側として10回の測定を行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、平均値として算出した値である。なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
【0021】
またKES FB3−AUTO−A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、圧縮直線性(LC)、圧縮仕事量(WC)、圧縮回復性(RC)を算出することもできる。圧縮直線性(LC)は0.350以上0.550以下であることが好ましい。圧縮仕事量(WC)は、0.20gf・cm/cm以上であることが好ましい。また、圧縮回復性(RC)は30%以上55%以下であることが好ましい。
圧縮直線性(LC)は、押し込み深さに対する反発力の直線比例性を表すものであり、その値が大きいほど圧縮が固く反発性があることを示す。圧縮仕事量(WC)は、圧縮時に要したエネルギーを表し、その値が大きければ圧縮されやすいことを示す。また、圧縮回復性は圧縮された状態から元に戻る際の回復性を示しており、100%に近いほど回復性があることを示す。
【0022】
本発明において、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲にするためには、製造工程や使用原料を適宜選択することが好ましい。例えば、製造工程において繊維原料の叩解条件を調整したり、繊維原料の種類や繊維原料の繊維長を好ましい範囲とすることが挙げられる。具体的には、製造工程において叩解処理を制御することで繊維原料のフリーネス(ml)を大きくしたり、繊維長が一定以上の針葉樹由来のパルプ繊維を用いたりすることが好ましい。また、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲にするためには、トイレットペーパーに施すエンボス高さを調整することも有効である。
【0023】
本発明のトイレットペーパーの長さ方向の引張強度は、0.90N/15mm以上であることが好ましく、1.10N/15mm以上であることがより好ましい。また、トイレットペーパーの長さ方向の引張強度は、1.40N/15mm以下であることが好ましく、1.35N/15mm以下であることがより好ましい。
トイレットペーパーの幅方向の引張強度は0.35N/15mm以上であることが好ましい。また、トイレットペーパーの幅方向の引張強度は0.70N/15mm以下であることが好ましく、0.60N/15mm以下であることがより好ましく、0.50N/15mm以下であることがさらに好ましい。
中でも、トイレットペーパーの長さ方向の引張強度が1.40N/15mm以下であり、かつトイレットペーパーの幅方向の引張強度が0.35N/15mm以上であることが好ましい。また、トイレットペーパーの長さ方向の引張強度と、幅方向の引張強度の幾何平均値は、0.40N/15mm以上1.5N/15mm以下であることが好ましく、0.60N/15mm以上1.0N/15mm以下であることがより好ましい。
引張強度を上記範囲内とすることにより、実用的強度と肌触り感を優れた水準で両立させることが可能となる。
【0024】
トイレットペーパーの引張強度の測定は、横型引張試験機(熊谷理器社製)を用いて行うことができる。この場合、幅が15mmのサンプルを用い、引張速度50mm/分の条件で測定を行う。本願明細書における引張強度は、6サンプルの平均値である。なお、引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
【0025】
トイレットペーパーの坪量は、20g/m以上であることが好ましく、20.5g/m以上であることがより好ましく、21g/m以上であることがさらに好ましい。一般的にトイレットペーパーの坪量の上限値は、25g/m程度である。
【0026】
トイレットペーパーの厚みは、60μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることがさらに好ましい。一般的に、トイレットペーパーの厚みの上限値は200μm程度である。
本発明においてはトイレットペーパーの坪量と厚みを上記範囲内とすることにより、実用的強度を保持しつつも、滑らかな風合いと、ふっくらとした触感を発揮することができる。
【0027】
本発明のトイレットペーパーは、エンボス入りトイレットペーパーであることが好ましい。すなわち、トイレットペーパーにはエンボス加工が施されていることが好ましい。トイレットペーパーにエンボス加工が施されている場合、エンボスの高さは、80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、エンボスの高さは150μm以下であることが好ましい。エンボス高さを上記範囲内にすることで、表面の滑らかさを損なわずふっくらとした感覚を与えることが容易となる。
ここで、エンボス高さとは、具体的には下記の方法により測定された距離をエンボス高さという。
まず、高精度形状測定システムKS−1100(KEYENCE社製)を用いて、トイレットペーパーの第2面にあたる面の高さデータを1μmの解像度で取得する。取得範囲は1cm角とし、画像取得ピッチは10μmとする。次いで、取得した画像データを、画像解析ソフトIOMate2007(株式会社アイ・スペック社製)に読み込み、得られた高さデータを256階調に分級する。穴などの欠陥部のデータを除去した後、横軸に階調、縦軸にデータの個数をとったグラフを作成する。作成したグラフについて、前後2点の合計5点で移動平均を取りグラフを描きなおし、新たに描きなおされたグラフの各点における傾きを、求める点とその前の点の2点の値を用いて算出する。得られた傾きのデータについて、前後3点の計7点で移動平均を取り、横軸を階調、縦軸を移動平均取得後の傾きとして、さらに別のグラフを作成する。得られた傾きのグラフの最下点以降の部分で最初に迎える変曲点の位置を目視判断し、その位置の横軸の階調を閾値として定める。次いで、定めた閾値を下回る部分について高さデータの加重平均を行い、得られた平均値を「非エンボス部分の平均高さ」とする。また、定めた閾値以上の部分についても高さデータの加重平均を行い、得られた平均値を「エンボス部分の平均高さ」とする。「エンボス部分の平均高さ」−「非エンボス部分の平均高さ」によって求められる値をエンボス高さとする。
【0028】
また、本発明においては、トイレットペーパーに施されるエンボスの直径(1個分)は0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましく、好ましくは0.7mm以上1.3mm以下であることがより好ましい。トイレットペーパーに施されるエンボスの密度は、10個/cm以上30個/cm以下であることが好ましく、15個/cm以上25個/cm以下であることがより好ましい。
トイレットペーパーに施されるエンボスを上記条件となるようにすることで、トイレットペーパーの強度を高め、かつ圧縮性を好ましい範囲にすることができる。
【0029】
(繊維原料)
本発明のトイレットペーパーは、繊維原料を含むスラリーを抄紙することによって得られる。繊維原料としては、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0030】
繊維原料としては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、針葉樹パルプを用いることが好ましい。中でも、本発明においては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0031】
繊維原料として針葉樹パルプが用いられる場合は、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、35質量%よりも多いことが好ましく、36質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましい。針葉樹パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲内とすることが容易になる。
【0032】
繊維原料としては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましい。すなわち、トイレットペーパーには、針葉樹パルプの他に広葉樹パルプがさらに含まれることが好ましい。広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましい。広葉樹パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲内とすることが容易になる。
【0033】
繊維原料として用いる針葉樹パルプの長さ加重平均繊維長は1.85mmよりも大きいことが好ましく、1.86mm以上であることがより好ましく、1.88mm以上であることがさらに好ましい。また、針葉樹パルプの長さ加重平均繊維長は3.00mm以下であることが好ましく、2.50mm以下であることがより好ましい。
繊維原料として用いる広葉樹パルプの長さ加重平均繊維長は0.50mm以上であることが好ましく、0.60mm以上であることがより好ましく、0.65mm以上であることがさらに好ましい。また、広葉樹パルプの長さ加重平均繊維長は1.00mm以下であることが好ましい。
繊維原料の長さ加重平均繊維長を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲内とすることが容易になる。なお、上記繊維原料の長さ加重平均繊維長は、原料としての繊維長であり、叩解処理等を施す前の繊維長である。
【0034】
なお、トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)の長さ加重平均繊維長は0.75mmより大きいことが好ましく、0.80mm以上であることがより好ましく、0.85mm以上であることがさらに好ましい。また、トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)の長さ加重平均繊維長は1.20mm以下であることが好ましく、1.10mm以下であることがより好ましい。
ここで、トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)の長さ加重平均繊維長は、トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)を離解して得られる繊維成分の繊維長であり、離解繊維長と呼ぶこともある。繊維成分(パルプ成分)として、針葉樹パルプと広葉樹パルプが併用されている場合は、両方のパルプの繊維長から離解繊維長の長さ加重平均繊維長が算出される。離解繊維長は、以下の測定方法で算出された繊維長である。
まずトイレットペーパーを水に離解させて得られた繊維分散スラリーを作製する。繊維分散スラリーは、4gのトイレットペーパーを200mlの水に入れ、4500rpmで離解機を運転し、十分に離解するまで攪拌させることにより得る。得られた繊維分散スラリーを0.01質量%以上0.02質量%以下になるように希釈し、希釈液を作製する。この希釈液10mlに含まれる繊維成分の投影長さを、繊維長測定装置(メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いて測定し、離解繊維の長さ加重平均値を算出する。
【0035】
トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)のカナディアン・フリーネス・スタンダード(C.F.S)で表されるフリーネスは400ml以上であることが好ましく、450ml以上であることがより好ましく、500ml以上であることがさらに好ましい。また、フリーネスは700ml以下であることが好ましい。繊維成分のフリーネスを上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーのHF値や圧縮性等を所望の範囲内とすることが容易になり、滑らかな風合いとふっくらとした触感が両立したトイレットペーパーが得られる。なお、繊維成分のフリーネスは後述するように、叩解条件を制御することにより調整することができる。
【0036】
(任意成分)
本発明のトイレットペーパーには、繊維原料の他に任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
トイレットペーパーに湿潤紙力剤が含まれている場合は、湿潤紙力剤の含有量は、トイレットペーパーに含まれる繊維成分の100質量部に対して、0.001質量部以上0.10質量部以下であることが好ましい。
また、トイレットペーパーに柔軟剤が含まれている場合は、柔軟剤の含有量は、トイレットペーパーに含まれる繊維成分の100質量部に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下であることが好ましい。
【0038】
(トイレットペーパーの製造方法)
本発明のトイレットペーパーの製造方法は、繊維原料を含むスラリーを抄紙し、1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程を含む。
【0039】
スラリーを抄紙する工程の前には、繊維原料を漂白する工程を含んでもよい。漂白工程で使用する漂白剤としては、酸素系漂白剤や塩素系漂白剤等の公知の漂白剤を挙げることができる。
【0040】
1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程は、繊維原料を含むスラリーを得る工程を含む。スラリーを得る工程においては、繊維原料を叩解する工程を含むことが好ましい。叩解工程においては、例えば、ダブルディスクリファイナー等を用いて叩解処理を施すことができる。この時、針葉樹パルプと広葉樹パルプをそれぞれ単独で叩解してもよいし、混合させた後に叩解してもよい。
【0041】
1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程は、繊維原料を含むスラリーを抄紙する工程を含む。抄紙する工程で用いられる抄紙機としては、例えば、サクションブレストフォーマー(円網タイプ、長網タイプ)、ツインワイヤーフォーマー、円網フォーマー(Cラップ、Sラップ)、クレセントフォーマー等の抄紙機を挙げることができる。
【0042】
抄紙する工程では、網状のワイヤー上に繊維原料を含むスラリーが供給されてパルプの薄層が形成される。その後、プレスパートに向かって移送されながら、パルプの薄層の水分が網の下へ抜かれることでパルプの薄層は脱水される。このような工程を脱水工程と呼ぶこともある。一般に、ワイヤーは、金属またはプラスチック製の網を環にしたものである。
【0043】
抄紙する工程では、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプスラリーを抄紙して均一な1つの層として湿紙を形成する方法、もしくは、針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層を抄き合わせて1枚の湿紙を形成する方法があるが、いずれの手法を採用してもよい。
【0044】
脱水工程の後、湿紙はワイヤーからフェルトへと移動する。フェルトを介してプレスロールで湿紙に圧力を加えられることにより、湿紙はさらに機械的に搾水される。これを、プレス工程あるいは搾水工程と呼ぶこともある。
【0045】
抄紙する工程は、搾水工程の後に、さらに乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥工程は、例えば、湿紙に向かって熱風を吹き付ける工程、もしくは、ドライヤシリンダーを外周面に圧着させる工程であることが好ましい。
【0046】
乾燥工程の後には、原紙巻取り工程が設けられる。原紙巻取り工程では、上記の工程を経て仕上げられたトイレットペーパーウェブ(薄葉紙)が巻取られることで、1プライの原紙巻取が得られる。この際、トイレットペーパーウェブ(薄葉紙)の第1面が原紙巻取の外周面となるように巻取ることが好ましい。
【0047】
エンボス加工は、エンボスの付与されたエンボスロールにより加圧することで行う。エンボスロールの押し込み量または押し込み圧を変更することによって、所定のエンボス高さを有するエンボス形状を形成することができる。エンボス加工を施す際には、原紙巻取からトイレットペーパーウェブを一度巻き解きながら、エンボス加工を行うことが好ましい。その際、エンボス高さが100μmを超えるように押し込み量や圧力を適宜調整することが望ましい。
【0048】
エンボス加工工程の後には、再度巻取り工程が設けられる。この巻取り工程においては、所定の製品長を満たすように、所定の長さ分の巻取りを行う。そして、得られた巻取を所定の幅に断裁する。
【実施例】
【0049】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0050】
(実施例1)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)50質量部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)50質量部となるように混合したパルプスラリーを、ダブルディスクリファイナーを用いてフリーネスが580mlとなるように叩解した。なお、各パルプの叩解前の長さ加重平均繊維長は表1の通りであった。次いで、表1に記載の割合となるように、柔軟剤(星光PMC株式会社製)を添加し、パルプスラリーを調製した。
このように調製したパルプスラリーを、ツインワイヤーヤンキーマシンにより抄紙し、トイレットペーパーウェブ巻取を得た。なお、トイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
得られた原紙巻取を加工機にかけ、一度巻き解きながら、エンボス加工を行った後、再度所定の長さに巻取り、得られた巻取を所定の幅に断裁することで1プライのトイレットペーパー(トイレットロール製品)を得た。なお、エンボス加工は、エンボスの付与されたエンボスロールにより加圧することで行い、ロールの押し込み量または押し込み圧を変更することによって、表1に記載のエンボス高さとなるようにした。実施例1においては、エンボスロールの押し込み量を5.4mmに設定した。
【0051】
(実施例2)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)の平均繊維長及び添加率を表1に示す通りに変更し、フリーネスが450mlとなるように叩解し、柔軟剤(星光PMC株式会社製)と湿潤紙力剤(荒川化学工業株式会社製)を表1に記載の割合となるように添加した以外は実施例1と同様にして、1プライのトイレットペーパーを作製した。1プライのトイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
【0052】
(実施例3)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)の平均繊維長を表1に示す通りに変更し、フリーネスが550mlとなるように叩解し、柔軟剤(星光PMC株式会社製)と湿潤紙力剤(荒川化学工業株式会社製)を表1に記載の割合となるように添加した以外は実施例1と同様にして、1プライのトイレットペーパーを作製した。1プライのトイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
【0053】
(比較例1)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)の平均繊維長及び添加率を表1に示す通りに変更し、柔軟剤(星光PMC株式会社製)と湿潤紙力剤(荒川化学工業株式会社製)を表1に記載の割合となるように添加し、エンボス押し込み量を実施例1における押し込み量よりも0.6mm少なくした以外は実施例1と同様にして、1プライのトイレットペーパーを作製した。1プライのトイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
【0054】
(比較例2)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)の平均繊維長及び添加率を表1に示す通りに変更し、フリーネスが580mlとなるように叩解し、柔軟剤(星光PMC株式会社製)を表1に記載の割合となるように添加した以外は実施例1と同様にして、1プライのトイレットペーパーを作製した。1プライのトイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
【0055】
(比較例3)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)の平均繊維長及び添加率を表1に示す通りに変更し、フリーネスが570mlとなるように叩解し、柔軟剤(星光PMC株式会社製)を表1に記載の割合となるように添加した以外は実施例1と同様にして、1プライのトイレットペーパーを作製した。1プライのトイレットペーパーの坪量及び紙厚は表1に記載の通りとした。
【0056】
(比較例4及び5)
比較例4及び5は、市販されている他社製品である。比較例4及び比較例5としては、市販品を購入したものを測定に使用した。
【0057】
(評価)
(HF値の測定)
実施例及び比較例で得られたトイレットペーパーのHF値は、ティシューソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて測定した。サンプル台に、直径112.8mmの円形にカットしたサンプルを設置し、このサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込んだ。その後、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、その時の振動周波数を測定した。また、直径112.8mmの円形にカットした別のサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNと、60mNの圧力で押し込んだ際の上下方向の変形変位量を算出した。HF値は、振動周波数と変形変位量から、算出される値であり、計算のアルゴリズムはTPIIを用いた。なお、上記の測定は、各サンプルの第1面(外面)と第2面(内面)についてそれぞれ10回ずつ行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、第1面及び第2面について各々平均値を算出した。さらにこのようにして算出した2つの面のHF値の平均値を算出し、それをHF値として評価に用いた。
なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。また、測定の際には、付属の説明書に従い標準サンプル(emetec ref.2X(nn.n))で校正し、アルゴリズムをTPIIに設定した。計算ソフトウェアにはemetec measurement system ver.3.22を使用した。
【0058】
(圧縮性)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの圧縮性について、KES FB3−AUTO−A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定した。2cmの加圧板と受圧板間に10cm×10cmにカットしたサンプルを設置し、50秒/mmの速さで加圧板を下降させ、その際に時々刻々と変化する圧力とその時のサンプルの厚みを測定することで、下記の項目を算出した。
:圧力0.5gf/cm下におけるサンプルの厚み
:圧力50gf/cm下におけるサンプルの厚み
LC:圧縮直線性
WC:圧縮仕事量
RC:圧縮回復性
また、圧縮率として(T−T)/Tの値を算出した。
上記の項目の値は、各サンプルの第1面を加圧板側として10回の測定を行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、平均値として算出した値である。なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0059】
(坪量)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの坪量はJIS P 8124に準拠して測定した。
【0060】
(紙厚)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの紙厚は、厚さ計(ハイブリッジ製作所製)を用いて、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろした時の値を読み取った。なお、紙厚は8サンプルの平均値を算出して紙厚とした。紙厚の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0061】
(エンボス高さ)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーのエンボス高さは、下記の手順により測定した。
(1)高精度形状測定システムKS−1100(KEYENCE社製)により、トイレットペーパーの第2面の高さデータを解像度1μmで取得した。取得範囲は1cm角とし、画像取得ピッチは10μmとした。
(2)取得した画像データを、画像解析ソフトIOMate2007(株式会社アイ・スペック社製)に読み込み、得られた高さデータを256階調に分級した。
(3)穴などの欠陥部のデータを除去した後、横軸に階調、縦軸にデータの個数をとったグラフを作成した。グラフの前後2点の計5点で移動平均を取りグラフを作成しなおし、描きなおされたグラフの傾きを、求める点とその前の点の計2点を用いて算出した。得られた傾きのデータについて、前後3点の計7点で移動平均を取り、横軸を階調、縦軸を移動平均取得後の傾きとして、さらに別のグラフを作成した。
(4)得られた傾きのグラフの最下点以降の部分で最初に迎える変曲点の位置を目視判断し、その位置の横軸の階調を閾値として定めた。
(5)閾値より小さい部分について高さデータの加重平均を行い、得られた平均値を「非エンボス部分の平均高さ」と定義した。また、閾値以上の部分についても加重平均を行い、得られた平均値を「エンボス部分の平均高さ」と定義した。
(6)以上の手順により得られた値を用いて、「エンボス部分の平均高さ」−「非エンボス部分の平均高さ」で算出される値を、エンボス高さとして求めた。
【0062】
(引張強度)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの引張強度は、サンプル幅15mm、スパン長100mm、引張速度50mm/分の条件で、横型引張試験機(熊谷理器社製)を用いて測定した。6サンプルの平均値を算出して引張強度とした。また、引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0063】
(製品離解繊維長)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの製品離解繊維長は、製品を離解させて得られた繊維分散スラリーを繊維長測定装置 (メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いて測定した。繊維分散スラリーは、4gのトイレットペーパーを200mlの水に入れ、4500rpmで離解機を運転し、十分に離解するまで攪拌させることにより得た。得られた繊維分散スラリーを0.01質量%以上0.02質量%以下になるように希釈し、希釈液10mlを繊維長測定装置により投影長さを測定し、長さ加重平均繊維長を算出した。
【0064】
(官能評価)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの柔らかさ(滑らかさ)、ふっくら感にならびに丈夫さついては、下記の評価基準で評価を行った。
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーについて、水準を隠した状態で官能評価を実施した。50人に製品を触ってもらい、製品の柔らかさ(滑らかさ)、ふっくら感、丈夫さ、ならびに全体的な使用感(全体評価)について4段階で評価を行った。表1に示した記号は下記の意味を示す。
<柔らかさ(滑らかさ)、ふっくら感、丈夫さ、全体評価>
◎:特に優れている
○:優れている
△:やや劣る
×:劣る
【0065】
【表1】
【0066】
実施例で得られたトイレットペーパーにおいては、十分な丈夫さを有しつつも、柔らかさ(滑らかさ)とふっくら感の両方が達成されている。一方で、比較例で得られたトイレットペーパーにおいては、柔らかさ(滑らかさ)とふっくら感が両立されていなかった。
【符号の説明】
【0067】
1 トイレットペーパーウェブ
2 第1面
4 第2面
10 トイレットペーパー
P 外周面
Q 内周面
図1