(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分解処理装置が、前記濃縮水を曝気処理して前記有機化合物を揮発させて曝気ガスとして排出させる曝気装置と、前記曝気ガスを燃焼するガス燃焼装置とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明にかかる水処理システムは、有機化合物を含有する被処理水から、当該有機化合物を除去および無害化する水処理システムであり、濃縮装置と分解処理装置とを備えている。
【0015】
本発明に係る濃縮装置は、有機化合物を含有する被処理水を、繊維束から成る活性炭素繊維の構造体を含む吸着素子に通流させて、該吸着素子に前記有機化合物を吸着させて処理水を排出する吸着工程と、前記吸着素子にガスを通気させて、前記吸着素子の付着水を除去する脱水工程と、前記吸着素子に水蒸気を通気させて前記吸着素子に吸着された前記有機化合物を脱着した後凝縮し、前記被処理水よりも前記有機化合物の濃度が高い濃縮水を排出する脱着工程と、を繰返し実行する装置である。この構成により、吸着素子の交換無しに、水処理を連続的に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る濃縮装置は、以下の構成と言うこともできる。本発明に係る濃縮装置は、吸着材が充填された槽であり、導入された前記被処理水から前記有機化合物を当該吸着材に吸着させて処理水を排出する処理槽と、前記吸着素子から付着水を除去するために前記処理槽にガスを通気させるガス通気部と、前記吸着素子から前記有機化合物を脱着するために前記処理槽に水蒸気を通気させる水蒸気通気部と、前記吸着素子から脱着された前記有機化合物を含有する脱着ガスを前記被処理水よりも前記有機化合物の濃度が高い濃縮水に濃縮する濃縮部と、を備えた装置である。
【0017】
好ましい濃縮装置の構造としては、吸着素子を複数備えており、吸着工程と脱水工程と脱着工程とをダンパー等にて切替操作を行い、吸着、脱水、脱着を連続的に行う濃縮装置である。また、吸着素子が回転可能に構成されており、吸着工程で有機化合物を吸着した吸着素子の部位が、吸着素子の回転により、脱水、脱着工程へ移動する構造を有する濃縮装置も好ましい装置の構造である。
【0018】
本発明に係る分解処理装置は、濃縮装置から排出された濃縮水中の前記有機化合物を分解する装置である。一例としては、有機化合物質を含有する水を曝気処理し有機化合物を揮発させて曝気ガスとして排出させる曝気装置と、前記曝気ガスを燃焼するガス燃焼装置とを備えた処理装置である。別の例としては、フェントン法、促進酸化法、および電気分解法の少なくとも1つを用いて有機化合物質を含有する水を処理する湿式酸化分解装置である。分解処理装置によって、水中の有機化合物は分解され、水を清浄化できる。
【0019】
そこで、本実施形態では、以下に、本発明に係る濃縮装置の一例として、
図1に示すダンパー切替方式の濃縮装置100について説明する。また、本発明に係る分解処理装置の一例として、
図3に示す曝気装置210とガス燃焼装置220とで構成される分解処理装置200A、および
図4に示す促進酸化法を用いた湿式酸化分解装置である分化処理装置200Bについて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態の水処理システム300の構成を示している。
図1に示すように、水処理システムは、濃縮装置100と分解処理装置200とを備えている。
【0021】
図1に示すように、濃縮装置100は、それぞれ吸着素子11、12が充填された第1処理槽10および第2処理槽20を有している。処理槽の数は限定されない。第1処理槽10および第2処理槽20にはダンパーや弁(バルブV1〜V12)等が取付けられており、吸着工程、脱水工程および脱着工程は、これらのダンパーや弁等の開閉操作を行うことで流路を切替える制御にて実行される。
【0022】
吸着素子11、12は、被処理水(原水)を接触させることで被処理水に含有される有機化合物を吸着する。濃縮装置100では、第1処理槽10に被処理水を被処理水導入ラインL1から供給することで有機化合物が吸着素子11に吸着され、これにより被処理水が清浄化されて処理水排出ラインL2を通して処理水として排出される。同様に、第1処理槽20に被処理水を被処理水導入ラインL1から供給することで有機化合物が吸着素子12に吸着され、これにより被処理水が清浄化されて処理水排出ラインL2を通して処理水として排出される。
【0023】
濃縮装置100は、吸着工程後に吸着素子11,12に付着した付着水をガスの通流により除去する脱水工程を実施する。第1処理槽10および第2処理槽20には、ガス供給ラインL5よりガスの通流が流通される。付着水をガスの通流により除去することにより、その後の加熱ガスによる有機化合物の脱着が容易になる。
【0024】
脱水工程で供給するガスは、空気、窒素、不活性ガス、水蒸気などが挙げられるが、特に限定しない。脱水工程で排出される付着水は、戻水返却ラインL6より濃縮装置100入口の被処理水に戻すことが好ましい。かかる方法によれば、工程数を省略でき、効率的だからである。
【0025】
濃縮装置100は、脱水工程後に吸着素子11,12に吸着した有機化合物を水蒸気の通流により脱着する脱着工程を実施する。第1処理槽10および第2処理槽20には、加熱ガス供給ラインL3より水蒸気が通流される。
【0026】
脱着工程で供給される水蒸気は、水蒸気もしくは水蒸気を加熱した過熱水蒸気などが挙げられる。脱着工程にて脱着された有機化合物は水蒸気と混合されて脱着ガスとして脱着ガス排出ラインL4を通じて、冷却器30へ供給される。
【0027】
冷却器30は脱着ガスを冷却する装置である。脱着ガスは冷却器30にて冷却されて液化凝縮され、吸着素子11,12から脱着した有機化合物を含む水(濃縮水)として、濃縮装置100から濃縮水排出ラインL7を通じて排出される。冷却器30の冷却方式は特に限定しないが、例えば、冷媒(冷却水、冷水など)を使用して間接的に脱着ガスを冷却する方式を用いることができる。濃縮装置100から濃縮水排出ラインL7を通じて排出された濃縮水は、分解処理装置200に供給されて処理される。分解処理装置200の例については後段で詳細に説明する。分解処理装置200からの排水は返水ラインL8に濃縮装置100入口の被処理水に戻してもよい。
【0028】
濃縮装置100では、吸着素子が複数(ここでは2つ)の処理槽に分割して充填され、吸着工程を行う処理槽(吸着槽)と脱水および脱着工程を行う処理槽(脱着槽)とを交互に切替える構成となっている。しかし、例えば、処理槽を単槽とし、脱水および脱着工程中は被処理水を一時的にタンクなどに貯水し、次の吸着工程に一時貯水された被処理水も併せて吸着処理する構成であってもよい。
【0029】
吸着素子11,12は、繊維束から成る活性炭素繊維の構造体を有する。吸着素子11,12は、性能面から活性炭素繊維を用いる。つまり、活性炭素繊維は表面にミクロ孔を有することと構造であることで、水との接触効率が高く、特に水中の有機化合物の吸着速度が速くなり、他の吸着材に比べて、極めて高い除去効率を発現できる。
【0030】
吸着素子11,12に用いる繊維束から成る活性炭素繊維の構造体は、原料である繊維を、後述する構造体に加工し、炭化・賦活して得ることができる。
【0031】
吸着素子11,12に用いる繊維束から成る活性炭素繊維の構造体の原料となる繊維は、特に限定されるものではないが、フェノール系繊維、セルロース系繊維、アクリロニトリル系繊維、ピッチ系繊維が好ましい。中でもフェノール系繊維がさらに好ましい。炭化・賦活後の活性炭素繊維の収率が高く、繊維強度が強いからである。
【0032】
前記フェノール系繊維としては、フェノール樹脂に脂肪酸アミド類、リン酸エステル類、セルロース類よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(配合物)を混合した混合物を紡糸して得られるフェノール系繊維を原糸としてもよい。さらに繊維強度が高まるからである。
【0033】
繊維束から成る活性炭素繊維の構造体は、糸で形成された組織構造体であるのが好ましい。編物もしくは織物であるのがより好ましい。均一に繊維が交絡された不織布と比較して、糸で形成された組織構造のため、吸着素子内の活性炭素繊維の適度に粗密構造をとり、尚且つ規則正しく活性炭素繊維が配列する構造をとるので、低圧損となり、結果として脱水効率が高くなるからである。さらに編物が好ましい。同じ長さの経糸と緯糸の交錯によって格子状の組織構造が形成される織物と比較して、縦もしくは横方向に糸を編んで組織構造を形成する編物の方が、上述した粗密構造をとりやすいので、より低圧損で脱水効率が高くなるからである。繊維束から成る活性炭素繊維の構造体は、上記に限定されず、例えば、糸を固めてシート状にしたものであってもよい。
【0034】
繊維束から成る活性炭素繊維の構造体が織物である場合、織物の組織は、一重組織、重ね組織、添毛組織、からみ組織など挙げられ、特に限定されるものではない。織物の例を
図2の(b)に示す。
【0035】
繊維束から成る活性炭素繊維の構造体が編物である場合、編物の組織構造は、フライス編(ゴム編)、天竺編(平編)、両面編(パール編)に分類されるニットの他、タック、ウェルトも含むよこ編、デンビー編、コード編、アトラス編などを含むたて編、またこれらの編組織を複合した編物(例えば、フライスとタック編を複合した両畦編など、が挙げられる。特に限定されるものではないが、フライス編が好ましい。適度な粗密構造をとるからである。編物の例を
図2の(a)に示す。
【0036】
吸着素子11,12に用いる繊維束から成る活性炭素繊維の構造体における繊維束の太さは、100〜600μmが好ましい。100μm未満の場合、繊維束の強度が低下し、吸着材として組織構造を保持できない可能性が生じ、600μmを超えると、より粗密構造をとるので、吸着工程時に被処理水のショートパスが生じるなどの吸着性能が低下する可能性があるからである。ここで、繊維束の太さは、構造体のSEM写真を用いて、複数個所の直径(太さ)の測定から求めることができる。他の方法にて計測してもよい。
【0037】
また、繊維束として糸を用いる場合、糸は所定の番手の一本の糸で形成される単糸や、二本以上の単糸を撚って形成される撚糸などが挙げられるが、上記の繊維束から成る活性炭素繊維の構造体における繊維束の太さに収まれば、特に限定しない。また、原料の糸の繊度は、綿繊度で40番手単糸〜5番手単糸、またその繊度に相当する撚糸(20番手双糸など)が想定されるが、炭化・賦活によって、糸径が収縮するため、原料の繊度は、活性炭素繊維の構造体として、好適な糸径の範囲となる繊度であればよい。
【0038】
吸着素子11,12に用いる繊維束から成る活性炭素繊維の構造体の上記以外の物性は特に限定されるものではないが、BET比表面積が900〜2500m
2/gで、細孔容積が0.4〜0.9cm
3/gで平均細孔経が14〜18Åのものが好ましい。BET比表面積が900m
2/g未満、細孔容積が0.4cm
3/g未満、細孔径が14Å未満では、有機化合物の吸着量が低くなる。BET比表面積が2500m
2/gを超え、細孔容積が0.9cm
3/gを超え、細孔径が18Åを超えると、細孔径が大きくなることで、有機化合物の吸着能力が低下したり、吸着素子の強度が弱くなったり、また素材のコストが高くなったりと、経済的では無くなる。
【0039】
濃縮装置100が処理する被処理水に含まれる有機化合物は、特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレインなどのアルデヒド類、メチルエチルケトン、ジアセチル、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、フェノール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの芳香族有機化合物、ジエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類、アクリロニトリルなどの二トリル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、エピクロロヒドリンなどの塩素有機化合物、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドの有機化合物、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン (PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF)、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル (DL-PCB)などのダイオキシン類、テトラサイクリン、オセルタミビル、リン酸オセルタミビル、ベザフィブラート、トリクロサンなどの抗生物質、ベザフィブラート、フェノフィブラートなどの抗脂血症剤成分、ジクロフェナク、サリチル酸、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤成分、カルバマゼピンなどの抗てんかん剤成分、フミン酸、フルボ酸などのフミン物質、ヘキサメチレンテトラミン、ジオスミン、2−メチルイソボルネオールなどが、一例として挙げられる。本実施形態の濃縮装置100が処理する被処理水に含まれる有機化合物は、これらのうちの1種類あるいは複数種類であってもよい。
【0040】
図3および
図4は、それぞれ、水処理システム300が備えた分解処理装置200の一例である、分解処理装置200A、分解処理装置200Bを示す構成図である。
【0041】
図3に示すように、分解処理装置200Aは、曝気装置21とガス燃焼装置22とを備えている。濃縮装置100から排出される濃縮水を曝気装置21で曝気して有機化合物をガス化させ、ガス燃焼装置で燃焼することで有機化合物を分解する処理装置である。
【0042】
曝気装置21は、濃縮装置100から排出された、濃縮水排出ラインL7を通して供給される濃縮水を処理するための装置であり、曝気槽211と曝気槽211へ気泡ガスを供給するガス供給器212を有している。曝気槽211では、供給された濃縮水がガス供給器212から発生する気泡と接触し、濃縮水中の有機化合物がガスへ移行する。曝気槽211は、有機化合物濃度が低減された水(曝気水)と有機化合物を含んだ曝気ガスとを排出する。曝気水は、返水ラインL8を通して濃縮装置100の被処理水として再供給する構成が好ましい。
【0043】
ガス燃焼装置22は、曝気装置21から排出された曝気ガスを処理するための装置である。ガス燃焼装置22は、熱交換器221と加熱炉222とを備えている。曝気槽21から排出された曝気ガスは曝気ガス排出ライン9Lを通ってガス燃焼装置22に供給され、曝気ガスは熱交換器221にて熱交換により予熱され、加熱炉222にて所定温度にてガス中の有機化合物を酸化分解することで清浄化された処理ガスを清浄ガス排出ラインL10から排出する。処理ガスは熱交換器221を通過して曝気ガスと熱交換された後、装置外へ排出される。
【0044】
ガス燃焼装置22としては、特にその種類が限定されるものではないが、例えば、曝気ガスを650〜800℃の高温で直接的に酸化分解させる直接燃焼装置、白金触媒等を利用して曝気ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、蓄熱体を利用して熱回収を行ないつつ経済的に直接酸化分解を行なう蓄熱式直接燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に曝気ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。
【0045】
図4は、分解処理装置200の別の一例である分解装置200Bの構成を示す図である。分解処理装置200Bは、濃縮装置100から排出される濃縮水を装置内で発生させたラジカル類によって水中の有機化合物を酸化分解する、促進酸化法を用いた湿式酸化分解装置である。
【0046】
図4に示すように、分解装置200Bは反応槽31を備えている。さらに、ラジカル類を発生させる機器としてオゾン発生器32、紫外線ランプ33、薬剤供給器34のうち、1つ以上を備える。
ここでいう薬剤は過酸化水素などの酸化剤である。反応槽31では、オゾン、薬剤、紫外線などが供給されることで、水中にヒドロキシラジカルなどのラジカル類が発生し、濃縮水中の有機化合物はラジカル類と酸化反応することで分解され、有機化合物濃度が低減された水を排出する。詳しくは説明しないが、フェントン法、電気分解法を用いた装置もラジカル類を発せさせて水中の有機化合物を酸化分解する湿式酸化分解装置である。
【0047】
分解処理装置200Bにて処理されて有機化合物濃度が低減された水(分解水)は、返水ラインL8を通して濃縮装置100の被処理水として再供給する構成が好ましい。
【0048】
図5は、オゾン添加量に対する有機化合物濃度の低減傾向の一例を示すグラフである。
図5に示す通り、処理開始初期においては、有機化合物の低減量が多いが、有機化合物濃度の低減に伴い、低減量は小さくなる傾向を示すことが知られている。
図5を基に、処理効率(分解率)と必要電力の関係の一例を
図6に示す。
図5の傾向を受けて、高効率に処理するに応じて膨大に電力が必要となる。これは、曝気装置21についても同様の傾向示すことが知られている。そのため、高効率(例えば、99.9%以上の除去効率)に有機化合物を処理する場合は、分解処理装置200,200A,200Bの除去効率を高めるよりも、濃縮装置100にて吸着処理した方が効率的である。
従って、分解処理装置200,200A,200Bの処理水(曝気水、分解水)は、濃縮装置100へ供給される被処理水と同等の有機化合物濃度まで除去できる処理効率でよく、高除去効率に処理する必要はない。
【0049】
図1から6を用いて説明した以上の本実施形態では、説明の簡略のため、ポンプやファン等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を示していないが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0050】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。後段で説明する実施例および比較例についての各測定は、下記の方法により行った。
【0052】
(繊維束の太さ)
繊維束太さ(直径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影を行い、SEM画像に映し出された多数の繊維束からランダムに100本の繊維束を選び、繊維束直径を測定し、その平均を繊維束の直径とした。
【0053】
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m
2/g)を求めた。
【0054】
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
【0055】
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m
2/g)
【0056】
(有機化合物濃度)
装置入口・出口の水中の有機化合物濃度は、ガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0057】
(付着水分量)
付着水分量は、脱水操作後の吸着材の重量を測定し、以下の式で求めた。
付着水分量(g/g)=脱水操作後の吸着材重量(g)/絶乾時の吸着材重量(g)
【0058】
[実施例1]
本実施例1では、水処理システム300として、
図1に示す濃縮装置100と、
図3に示す曝気装置21およびガス燃焼装置22で構成された分解処理装置200Aと、を備えたシステムを構成した。さらに、本実施例1では、分解処理装置200Aにおいて、ガス処理装置22として触媒酸化装置、触媒として白金を使用し、加熱は電気ヒーターを使用した。
【0059】
まず、フェノール系繊維を用いた綿繊度20番手の糸を使用したフライス編を炭化および賦活処理して、糸径(繊維束の直径)250μmの糸(繊維束)であり、比表面積1500m
2/gの活性炭素繊維シート(繊維束から成る活性炭素繊維の構造体)を作製した。この活性炭素繊維シート20kgを積層した吸着素子を2つ作製し、
図1に示す濃縮装置100の処理槽10,20それぞれに設置した。なお、活性炭素繊維シートの細孔容積は、0.60cm
3/gであり、平均細孔径は、15Åであった。
【0060】
吸着工程では、500mg/lのイソプロピルアルコールを含む原水を3000L/hで導入した。その際の処理水のイソプロピルアルコール濃度は、0.5mg/L以下であり、99.9%以上の除去が可能な良好な結果であった。
【0061】
次に、脱水工程では、0.1MPaの水蒸気を供給し、吸着素子に付着する水分を脱水除去し、原水へ返送した。その際の付着水分量は、後段の表1に示す通り1.8g/gであった。
【0062】
次に、脱着工程では、0.1MPaの水蒸気を供給した。脱着されたイソプロピルアルコールと水蒸気とは冷却器30にて液化凝縮され、濃縮水として回収した。その際の濃縮水量は120L/h、イソプロピルアルコール濃度は12500mg/Lであり、原水に対して25倍に濃縮されたことがわかった。なお、各処理槽は、脱着工程が完了した後、再び吸着工程へ移行して繰り返し処理を実施した。また、各処理槽は交互に脱着工程と吸着工程とを実施した。
【0063】
次に、回収した濃縮水を
図3に示す分解処理装置200Aに供給して処理した。濃縮水を、水蒸気を使用して60℃加温された曝気槽211へ供給し、曝気処理された曝気水として回収した。その際の曝気水のイソプロピルアルコール濃度は500mg/L以下であった。また、曝気水は濃縮装置100の原水に返送した。
【0064】
曝気ガスはガス燃焼装置22に供給されて300℃に加熱された後、触媒によって酸化分解され、清浄空気として排出された。
【0065】
一連の処理を、100時間実施した。100時間においても出口イソプロピルアルコール濃度は、0.5mg/L以下であり、安定して除去できる結果であった。後段の表1に示す通り、濃縮装置100の脱着に必要な水蒸気量は105kg/h、曝気装置21の加温に必要な水蒸気量は28kg/h、ガス燃焼装置22の加熱に必要な電気ヒーターの使用電力量は20kwであった。
【0066】
[実施例2]
本実施例2では、水処理システム300として、
図1に示す濃縮装置100と、
図4に示す促進酸化法を使用した促進酸化装置である分解処理装置200Bとを備えたシステムを構成した。また、本実施形態2では、分解処理装置200Bは、反応槽31に加え、オゾン発生器32および過酸化水素使用した薬剤供給器34を備えた装置として構成した。
【0067】
まず、フェノール系繊維を用いた綿繊度20番手の糸を使用したフライス編を炭化および賦活処理して、糸径(繊維束の直径)250μmの糸(繊維束)であり、比表面積1500m
2/gの活性炭素繊維シート(繊維束から成る活性炭素繊維の構造体)を作製した。この活性炭素繊維シート20kgを積層した吸着素子を2つ作成し、
図1の濃縮装置100の処理槽10,20それぞれに設置した。なお、活性炭素繊維シートの細孔容積は、0.60cm
3/gであり、平均細孔径15Åであった。
【0068】
吸着工程では、5mg/lの1,4−ジオキサンを含む原水を8000L/hで導入した。その際の出口1,4−ジオキサン濃度は、0.05mg/L以下であり、99.9%以上の除去が可能な良好な結果であった。
【0069】
次に、脱水工程では、0.1MPaの水蒸気を供給し、吸着素子に付着する水分を脱水除去し、原水へ返送した。その際の付着水分量は、後段の表1に示す通り1.8g/gであった。
【0070】
次に、脱着工程では、0.1MPaの水蒸気を供給した。脱着された1,4−ジオキサンと水蒸気とは冷却器30にて液化凝縮され、濃縮水として回収した。その際の濃縮水量は120L/h、1,4−ジオキサン濃度は330mg/L以上であり、原水に対して65倍以上に濃縮されたことがわかった。なお、各処理槽は、脱着工程が完了した後、再び吸着工程へ移行して繰り返し処理を実施した。また、各処理槽は交互に脱着工程と吸着工程とを実施した。
【0071】
次に、回収した濃縮水を
図4に示す分解処理装置200Bへ供給して処理した。分解処理装置200Bの、オゾン発生器32からオゾン、および薬剤供給器34から過酸化水素を反応槽31へ供給し、濃縮水中の有機化合物を酸化分解し、分解水として回収した。回収した分解水中の1,4−ジオキサン濃度は5mg/L以下であった。回収した分解水は濃縮装置100の原水へ返送した。
【0072】
一連の処理を、100時間実施した。100時間においても出口1,4−ジオキサン濃度は、0.05mg/L以下であり、安定して除去できる結果であった。後段の表1に示す通り、濃縮装置100の脱着に使用する水蒸気量は105kg/h、実施例2の分解処理装置200Bのオゾン発生に必要な電力は0.6kwであった。
【0073】
[比較例1]
フェノール系繊維であり、繊維径20μm、比表面積1500m
2/gの不織布である活性炭素繊維シート20kgを積層した吸着素子を作成し、
図1と同様の構成の濃縮装置に設置した。吸着工程では、500mg/lのイソプロピルアルコールを含む原水を3000L/hで導入した。その際の処理水のイソプロピルアルコール濃度は、0.5mg/L以下であり、99.9%以上の除去が可能な良好な結果であった。
【0074】
次に、脱水工程では、0.1MPaの水蒸気を供給し、吸着素子に付着する水分を脱水除去し、原水に返送した。その際の付着水分量は、後段の表2に示す通り2.4g/gであった。
【0075】
次に、脱着工程では、0.1MPaの水蒸気を供給した。脱着されたイソプロピルアルコールと水蒸気とは冷却器30にて液化凝縮され、濃縮水として回収した。その際の濃縮水量は170L/h、イソプロピルアルコール濃度は8800mg/Lであり、原水に対して17倍に濃縮されたことがわかった。なお、各処理槽は、脱着工程が完了した後、再び吸着工程へ移行して繰り返し処理を実施した。また、各処理槽は交互に脱着工程と吸着工程とを実施した。
【0076】
次に、濃縮水を、実施例1と同じ分解処理装置200Aにて処理したところ、実施例1と同様の処理性能であった。
【0077】
一連の処理を、100時間実施した。100時間においても出口イソプロピルアルコール濃度は、0.5mg/L以下であり、安定して除去できる結果であった。しかし、後段の表2に示す通り、比較例1の濃縮装置の脱着に必要な水蒸気量は125kg/h、の曝気装置21の加温に必要な水蒸気量は40kg/h、ガス燃焼装置22の加熱に必要な電気ヒーターの使用電力量は29kwと、実施例1と比べて処理エネルギーが必要であった。
【0078】
[比較例2]
フェノール系繊維であり、繊維径20μm、比表面積1500m
2/gの不織布である活性炭素繊維シート20kgを積層した吸着素子を作成し、
図1と同様の構成の濃縮装置に設置した。吸着工程では、5mg/lの1,4−ジオキサンを含む原水を1500L/hで導入した。その際の出口1,4−ジオキサン濃度は、0.05mg/L以下であり、99.9%以上の除去が可能な良好な結果であった。
【0079】
次に、脱水工程では、0.1MPaの水蒸気を供給し、吸着素子に付着する水分を脱水除去した。その際の付着水分量は、後段の表2に示す通り2.4g/gであった。
【0080】
次に、脱着工程では、0.1MPaの水蒸気を供給した。脱着された1,4−ジオキサンと水蒸気とは冷却器にて液化凝縮され、濃縮水として回収した。その際の濃縮水量は170L/h、1,4−ジオキサン濃度は235mg/Lであり、原水に対して47倍に濃縮されたことがわかった。なお、各処理槽は、脱着工程が完了した後、再び吸着工程へ移行して繰り返し処理を実施した。また、各処理槽は交互に脱着工程と吸着工程とを実施した。
【0081】
次に、濃縮水を実施例2と同じ分解処理装置200Bにて処理したところ、実施例2と同様の処理性能であった。
【0082】
一連の処理を、100時間実施した。100時間においても出口イソプロピルアルコール濃度は、0.5mg/L以下であり、安定して除去できる結果であった。しかし、後段の表2に示す通り、比較例2の濃縮装置の脱着に必要な水蒸気量は125kg/h、湿式酸化分解装置300のオゾン発生に必要な電力は1kwと、実施例2と比べて処理エネルギーが必要であった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
なお、上記開示した実施形態および各実施例はすべて例示であり制限的なものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって有効であり、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内のすべての変更・修正・置き換え等を含むものである。