(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862681
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】気密パッケージの製造方法及び気密パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20210412BHJP
H01L 23/10 20060101ALI20210412BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20210412BHJP
B23K 26/324 20140101ALN20210412BHJP
【FI】
H01L23/02 D
H01L23/10 A
H01L23/02 Z
C03C27/06 101A
C03C27/06 101J
!B23K26/324
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-102407(P2016-102407)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-212251(P2017-212251A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年12月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 卓司
(72)【発明者】
【氏名】白神 徹
【審査官】
庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−023263(JP,A)
【文献】
特開2007−288441(JP,A)
【文献】
特開2015−220624(JP,A)
【文献】
特開2013−182977(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/092013(WO,A1)
【文献】
特開2013−171907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
C03C 27/06
H01L 23/10
B23K 26/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が内部に搭載された容器をガラス蓋で封止した気密パッケージを製造する方法であって、
前記容器の内部に前記素子を搭載する工程と、
前記容器の枠部と前記ガラス蓋の間に封着材料を配置して、前記容器の前記枠部の上に前記ガラス蓋を載せる工程と、
前記枠部に沿って、出力が3W〜30Wの範囲であるレーザー光を走査しながら前記レーザー光を前記ガラス蓋側から照射し前記封着材料を加熱溶融して封着材料層を形成し、前記ガラス蓋と前記枠部とを前記封着材料層で封着する工程とを備え、
前記走査方向と略垂直な方向における前記封着材料の幅が、前記レーザー光の照射スポットの幅の90%以下であり、
照射開始位置から前記レーザー光の照射を開始し、その後前記レーザー光を走査して前記枠部上を複数回以上周回させ、前記照射開始位置より走査方向側に位置する照射終了位置で前記レーザー光の照射を終了する、気密パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記照射開始位置と前記照射終了位置の間の距離が、前記レーザー光の照射スポットの半径以上である、請求項1に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記枠部上の同一箇所を1秒当たり0.1回〜100回照射する速度で前記レーザー光を走査する、請求項1または2に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記容器が、セラミック、ガラスセラミック、またはガラスから構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記封着材料が、ガラスフリットから構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記封着材料が、コーディエライト、ウイレマイト、アルミナ、リン酸ジルコニウム系化合物、ジルコン、ジルコニア、酸化スズ、石英ガラス、β−石英固溶体、β−ユークリプタイト、及びスポジュメンから選ばれる少なくとも1種からなる低膨張耐火性フィラーを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記封着材料が、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種からなるレーザー吸収材を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の気密パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子を搭載して封止するための気密パッケージの製造方法及び気密パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDなどの素子を搭載して封止するために、気密パッケージが用いられている。このような気密パッケージは、素子を搭載することができる容器と、容器内を封止するためのカバー部材が接合されることにより構成されている。
【0003】
下記の特許文献1には、ガラスセラミックス基板と、ガラス蓋が、封着材料を介して接合されてなる気密パッケージが開示されている。特許文献1では、上記封着材料として、低融点ガラスからなるガラスフリットが用いられている。また、特許文献1では、上記ガラスフリットを焼成して、溶融させることにより、ガラスセラミックス基板とガラス蓋が接合されている。
【0004】
しかしながら、耐熱性の低い素子が搭載される場合、特許文献1のようにガラスフリットを焼成して溶融させると、焼成の際の加熱により素子特性が熱劣化するおそれがある。これを解消する方法として、ガラスフリットにレーザーを照射し局所的に加熱することでガラスフリットを溶融する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−236202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のレーザー照射による封着を採用することにより、搭載される素子の熱劣化を防止することができる。また、気密パッケージを構成する全ての材料が無機材料からなるため、酸素及び水等の透過による劣化も効果的に防止することができる。
【0007】
一方、気密性を維持しながら、パッケージ強度を高めるためには、ガラス蓋の厚みを大きくしたいという要望がある。しかしながら、ガラス蓋の厚みを大きくすると、レーザー照射による加熱でガラス蓋内部での温度差が大きくなり、熱応力によりガラス蓋にクラックが発生するという課題があることを本発明者等は見出した。
【0008】
本発明の目的は、レーザー光の照射によってガラス蓋内部に生じる熱応力を低減し、ガラス蓋にクラック等が発生するのを抑制することができる気密パッケージの製造方法及び気密パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造方法は、素子が内部に搭載された容器をガラス蓋で封止した気密パッケージを製造する方法であって、容器の内部に素子を搭載する工程と、容器の枠部とガラス蓋の間に封着材料を配置して、容器の枠部の上にガラス蓋を載せる工程と、枠部に沿ってレーザー光を走査しながらレーザー光をガラス蓋側から照射し封着材料を加熱溶融して封着材料層を形成し、ガラス蓋と枠部とを封着材料層で封着する工程とを備え、照射開始位置からレーザー光の照射を開始し、その後レーザー光を走査して枠部上を複数回以上周回させ、照射開始位置より走査方向側に位置する照射終了位置でレーザー光の照射を終了することを特徴としている。
【0010】
本発明においては、照射開始位置と照射終了位置の間の距離が、レーザー光の照射スポットの半径以上であることが好ましい。
【0011】
枠部上の同一箇所を1秒当たり0.1回〜100回照射する速度でレーザー光を走査することが好ましい。
【0012】
走査方向と略垂直な方向における封着材料の幅が、レーザー光の照射スポットの幅の90%以下であることが好ましい。
【0013】
容器は、セラミック、ガラスセラミック、またはガラスから構成されることが好ましい。
【0014】
封着材料は、ガラスフリットから構成されることが好ましい。
【0015】
封着材料は、コーディエライト、ウイレマイト、アルミナ、リン酸ジルコニウム系化合物、ジルコン、ジルコニア、酸化スズ、石英ガラス、β−石英固溶体、β−ユークリプタイト、及びスポジュメンから選ばれる少なくとも1種からなる低膨張耐火性フィラーを含有していることが好ましい。
【0016】
封着材料は、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種からなるレーザー吸収材を含有していることが好ましい。
【0017】
本発明の気密パッケージは、使用上限温度が350℃以下である素子と、素子を内部に搭載する容器と、0.2mmを超える厚みを有し、容器を封止するガラス蓋と、容器の封止部とガラス蓋の間に配置される封着材料層とを備え、封着材料層が、レーザー吸収材を含むガラスから構成されていることを特徴としている。
【0018】
封着材料層は、コーディエライト、ウイレマイト、アルミナ、リン酸ジルコニウム系化合物、ジルコン、ジルコニア、酸化スズ、石英ガラス、β−石英固溶体、β−ユークリプタイト、及びスポジュメンから選ばれる少なくとも1種からなる低膨張耐火性フィラーを含むことが好ましい。
【0019】
素子は、例えば、MEMSまたは深紫外線LEDである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によれば、レーザー光の照射によってガラス蓋内部に生じる熱応力を低減し、ガラス蓋にクラック等が発生するのを抑制することができる。
【0021】
本発明の気密パッケージは、優れた気密性及びパッケージ強度を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態の気密パッケージを示す模式的断面図である。
【
図2】
図1に示す気密パッケージを製造する工程を説明するための模式的断面図である。
【
図3】
図2(a)に示す気密パッケージの製造工程を説明するための模式的平面図である。
【
図4】
図2(b)に示す気密パッケージの製造工程を説明するための模式的平面図である。
【
図5】レーザー光を封着材料に照射する状態を示す模式的断面図である。
【
図6】本実施形態におけるレーザー光の照射開始位置及び照射終了位置を説明するための模式的平面図である。
【
図7】レーザー光の照射開始位置及び照射終了位置を拡大して示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態の気密パッケージを示す模式的断面図である。
図1に示すように、本実施形態の気密パッケージ10は、素子5を内部に搭載する容器1と、容器1を封止するガラス蓋3と、容器1の枠部2とガラス蓋3との間に配置される封着材料層4とを備えている。封着材料層4で枠部2の上面2aとガラス蓋3とが接合されることにより、容器1がガラス蓋3で封止されて気密な構造が形成されている。
【0025】
ガラス蓋3を構成するガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3−RO(RはMg、Ca、SrまたはBa)系ガラス、SiO
2−B
2O
3−R’
2O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SiO
2−B
2O
3−RO−R’
2O系ガラス、SnO−P
2O
5系ガラス、TeO
2系ガラス又はBi
2O
3系ガラスなどを用いることができる。
【0026】
ガラス蓋3の厚みは、本発明において特に限定されるものではないが、一般には、0.01mm〜2.0mmの範囲内のものが用いられる。ガラス蓋3の厚みが0.2mmを超えると、レーザー照射における熱応力が大きくなり、クラックを生じやすくなる。そのため、ガラス蓋3の厚みが0.2mmを超えると、本発明の効果がより発揮されやすくなる。また、ガラス蓋3が0.2mmを超える厚みを有することにより、パッケージ強度を高めることができる。ガラス蓋3の厚みは、さらに好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。
【0027】
容器1は、例えば、セラミック、ガラスセラミック、またはガラスなどから構成される。セラミックとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ジルコニア、ムライトなどが挙げられる。ガラスセラミックとしては、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)などが挙げられる。LTCCの具体例としては、酸化チタンや酸化ニオブ等の無機粉末とガラス粉末との焼結体などが挙げられる。ガラス粉末としては、例えば、ガラス蓋3と同様のガラスを用いることができる。
【0028】
封着材料層4を形成するための封着材料6としては、低融点ガラス粉末を含むガラスフリットを用いることが好ましい。低融点ガラス粉末を含んでいる場合、より低温で封着材料を溶融させることができ、素子の熱劣化をより一層抑制することができる。低融点ガラス粉末としては、例えば、Bi
2O
3系ガラス粉末や、SnO−P
2O
5系ガラス粉末、V
2O
5−TeO
2系ガラス粉末などを用いることができる。なお、レーザー光の吸収を向上させるために、ガラス中にCuO、Cr
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2等から選ばれる少なくとも1種の顔料が含まれていてもよい。また、封着材料には、上記の低融点ガラス粉末の他に、低膨張耐火性フィラーや、レーザー光吸収材などが含まれていてもよい。低膨張耐火性フィラーとしては、例えば、コーディエライト、ウイレマイト、アルミナ、リン酸ジルコニウム系化合物、ジルコン、ジルコニア、酸化スズ、石英ガラス、β−石英固溶体、β−ユークリプタイト、スポジュメンが挙げられる。また、レーザー光吸収材としては、例えば、Cu、Fe、Cr、Mnなどから選ばれる少なくとも1種の金属または該金属を含む酸化物等の化合物が挙げられる。レーザー光吸収材は、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種からなることが特に好ましい。
【0029】
素子5は、本発明において特に限定されるものではないが、本発明の製造方法によれば、耐熱性の低い素子であっても、パッケージングの際の熱劣化を抑制することができるので、使用上限温度の低い素子を用いた場合に、本発明の効果がより発揮されやすくなる。また、本発明によれば、気密パッケージ10の強度を高めるために、ガラス蓋3の厚みを大きくしても、気密性の高いパッケージングにすることができる。このため、高い強度と気密性が求められる素子を用いた場合に、本発明の効果がより発揮されやすくなる。したがって、素子5として、使用上限温度が低く、かつ高い気密性が求められる素子を用いた場合に、本発明の効果がより発揮されやすくなる。このような素子として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、深紫外線LED(Light Emitting Diode)などが挙げられる。
【0030】
したがって、使用上限温度が350℃以下である素子としては、上記のMEMS及び深紫外線LEDが挙げられる。なお、素子の使用上限温度は、素子毎に規格として定められた温度であり、動作上限温度、最高使用温度などとも称される温度である。
【0031】
しかしながら、素子5は、上記のものに限定されるものではなく、上記以外のLED、LD(Laser Diode)などの発光素子、CCD(Charge Coupled Device)などの受光素子や、その他の素子も用いることができる。
【0032】
図2は、
図1に示す気密パッケージを製造する工程を説明するための模式的断面図である。本実施形態の製造方法では、まず、
図2(a)に示すように、容器1の内部に素子5を搭載する。
図3は、
図2(a)に示す気密パッケージの製造工程を説明するための模式的平面図である。
図3に示すように、本実施形態において、枠部2は矩形形状を有している。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように、枠部2の上面2aの上に、封着材料6を塗布する。
図4は、
図2(b)に示す気密パッケージの製造工程を説明するための模式的平面図である。
図4に示すように、封着材料6は、枠部2の形状に沿って、枠部2の上面2aの上に塗布される。
【0034】
次に、
図2(c)に示すように、封着材料6を塗布した枠部2の上に、ガラス蓋3を載せる。これにより、枠部2の上面2aとガラス蓋3の間に封着材料6を配置することができる。
【0035】
図5は、レーザー光を封着材料に照射する状態を示す模式的断面図である。
図5に示すように、枠部2の上面2aとガラス蓋3の間に配置された封着材料6に、レーザー光20を照射し、封着材料6を加熱溶融する。このとき、
図4に示すように、レーザー光20の照射スポット21を、枠部2に沿って走査方向Aに走査しながら封着材料6を加熱溶融する。走査方向Aと略垂直な方向における封着材料6の幅Wは、レーザー光20の照射スポット21の幅dの90%以下であることが好ましく、10%〜80%の範囲内であることがより好ましい。これにより、封着材料6を幅方向において均一に加熱溶融することができる。
【0036】
図6は、本実施形態におけるレーザー光の照射開始位置及び照射終了位置を説明するための模式的平面図である。本実施形態では、照射開始位置Bからレーザー光の照射を開始し、その後レーザー光を枠部2に沿って走査方向Aに走査して、枠部2上を複数回以上の所定回数レーザー光を周回させ、照射終了位置Cでレーザー光の照射を終了する。照射終了位置Cは、照射開始位置Bより走査方向A側に位置する。したがって、照射開始位置Bと照射終了位置Cの間においては、所定回数より1回多くレーザー光が照射される。
【0037】
本実施形態では、枠部2上を複数回以上の所定回数レーザー光を周回させている。そのため、枠部2上の同一箇所を複数回以上の所定回数レーザー光を照射することによって、封着材料6を加熱溶融すればよい。したがって、1回のレーザー光の照射で封着材料6を加熱溶融する場合に比べ、低い出力でレーザー光を照射することができる。そのため、レーザー光の照射によりガラス蓋3の内部に生じる温度差を小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、ガラス蓋3内部の温度差を低減することができ、ガラス蓋3内部に生じる熱応力を低減させ、ガラス蓋3にクラック等が発生するのを抑制することができる。なお、ガラス蓋3内部の温度差をより低減させて、ガラス蓋3内部に生じる熱応力を低減させ、ガラス蓋3にクラック等が発生するのを抑制するには、レーザー光を周回させる回数は3回以上であることが好ましく、より好ましくは、10回以上である。但し、レーザー光を周回させる回数が多くなると、レーザー光の照射時間が長くなり生産効率が低下するため、100回以下であることが好ましい。
【0038】
ガラス蓋3の厚みが大きくなると、ガラス蓋3の内部に生じる温度差も大きくなる。このため、一般にガラス蓋3の厚みが大きくなるとクラック等が発生しやすくなるが、本発明によれば、ガラス蓋3の厚みを大きくしても、クラック等の発生を抑制することができる。
【0039】
本実施形態において、レーザー光の出力は、3W〜30Wの範囲であることが好ましく、3W〜10Wの範囲であることがさらに好ましい。このような範囲にすることにより、ガラス蓋3にクラック等が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0040】
本実施形態においては、枠部2上の同一箇所を1秒当たり0.1回〜100回照射する速度でレーザー光を走査することが好ましい。レーザー光を走査させながら枠部2上を複数回照射することにより、ガラス蓋3の面方向において徐々に温度上昇させることができる。このため、ガラス蓋3の面方向における温度差も低減することができる。したがって、より効果的にクラック等の発生を抑制することができる。レーザー光の走査速度は、より好ましくは、枠部2上の同一箇所を1秒当たり10回〜50回照射する速度である。
【0041】
レーザー光の波長は、封着材料6を加熱することができる波長であれば特に限定されるものではない。レーザー光照射によるガラス蓋3内部の温度差を低減する観点からは、レーザー光の波長は、ガラス蓋3における吸収が小さいことが好ましい。このような観点からは、レーザー光の波長は、600〜1600nmの範囲内であることが好ましい。このようなレーザー光を出射する光源としては、例えば、半導体レーザーが好ましく用いられる。
【0042】
図7は、レーザー光の照射開始位置及び照射終了位置を拡大して示す模式的平面図である。
図7に示すように、レーザー光の照射開始位置Bとレーザー光の照射終了位置Cの間の距離Dは、レーザー光の照射スポット21の半径r以上であることが好ましい。照射開始位置Bの近傍は、レーザー光の照射が不十分となり、十分に加熱されないおそれがある。本実施形態では、照射開始位置Bを通り過ぎた位置に照射終了位置Cを設定するにより、この間の領域で所定回数より1回多くレーザー光を照射し、加熱が不十分な箇所を生じないようにしている。照射開始位置Bと照射終了位置Cの間の距離Dを、レーザー光の照射スポット21の半径r以上にすることにより、より確実に加熱が不十分な箇所を生じないようにしている。照射開始位置Bと照射終了位置Cの間の距離Dは、照射スポット21の半径rの1倍〜10倍の範囲であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態では、枠部2上を複数回以上の所定回数レーザー光を周回させている。同一光源からの同一のレーザー光を周回させてもよいし、複数の光源からの異なるレーザー光を周回させてもよい。複数の光源からのレーザー光を周回させる場合、それぞれのレーザー光の照射領域は、周回長において等間隔に隔てられていることが好ましい。複数の光源を用いる場合、それぞれのレーザー光の波長や照射領域は必ずしも同じである必要はなく、互いに異なっていてもよい。例えば、照射領域の場合、走査方向に対し略垂直な方向にそれぞれの照射領域がずれていてもよい。また、照射領域の一方が広く、他方が狭くなるように設定されていてもよい。
【0044】
上記実施形態では、枠部2側に封着材料6を塗布しているが、ガラス蓋3側に封着材料6を塗布してもよい。また、枠部2側とガラス蓋3側の両方に封着材料6を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…容器
2…枠部
2a…上面
3…ガラス蓋
4…封着材料層
5…素子
6…封着材料
10…気密パッケージ
20…レーザー光
21…レーザー光の照射スポット
A…走査方向
B…照射開始位置
C…照射終了位置
D…距離
W…封着材料の幅
d…レーザー光の照射スポットの幅
r…レーザー光の照射スポットの半径