特許第6862688号(P6862688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6862688-ピペリン含有経口組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862688
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ピペリン含有経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4525 20060101AFI20210412BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 36/67 20060101ALI20210412BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61K31/4525
   A61P9/12
   A61K36/67
   A23L33/105
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-119969(P2016-119969)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-25056(P2017-25056A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-147383(P2015-147383)
(32)【優先日】2015年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原島 健展
(72)【発明者】
【氏名】最所 一隆
(72)【発明者】
【氏名】高柴 雅人
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−080356(JP,A)
【文献】 特開2005−162745(JP,A)
【文献】 特開2015−010068(JP,A)
【文献】 特開2005−350422(JP,A)
【文献】 特開2009−149585(JP,A)
【文献】 特開2010−110283(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141018(WO,A1)
【文献】 特開2007−274929(JP,A)
【文献】 特開2009−173639(JP,A)
【文献】 特開2005−112846(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010656(WO,A1)
【文献】 Int. J. Res. Pharm. Sci.,2010年,Vol.1, Issue 3,pp.300-307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/105
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一日の摂取量当たり、ピペリンを有効成分として30μg以上90μg以下含有することを特徴とする、血圧低下用経口組成物。
【請求項2】
ピペリンがコショウ科植物に由来する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
飲食品組成物である請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧を低下させることが可能な、ピペリン含有経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は別名「サイレント・キラー」と呼ばれ、自覚症状無く進行するケースが多く、動脈硬化症や心臓病、脳卒中等、様々な循環器疾患を引き起こす原因となる。脳血管疾患や心疾患を含む循環器系疾患は日本における主要死因の一つであり(非特許文献1)、これらの疾患は患者自身の身体的及び金銭的負担が大きいことに加え、介護者等の周囲の人々や国民医療費の増加など社会的な負担も大きいことから、毎日摂取しても安全な血圧低下剤は、高血圧の予防、治療の観点からも強く求められている。これまで天然物由来の血圧低下剤としてクロロゲン酸(非特許文献2)、燕龍茶フラボノイド(非特許文献3)などが知られている。しかし、クロロゲン酸の場合、1日299mgもの多量を摂取しても収縮期血圧及び拡張期血圧においてプラセボに対して有意差が認められるまで10週間を要する。また、燕龍茶フラボノイドの場合、1日30mgもの多量を摂取しても収縮期血圧及び拡張期血圧においてプラセボに対して有意差が認められるまで8週間を要する。したがって、より少量でかつ短期間で効果を発現する天然物由来の血圧低下剤が求められている。
【0003】
ヒハツ(英名:Long pepper)は東南アジアに分布するコショウ科の植物である。ヒハツ抽出物には様々な作用が知られているが、例えば特許文献1ではヒハツ抽出物がアンジオテンシンにより誘導される血圧上昇を抑制することが示されている。しかしながら、一般的に植物やその抽出物はその含有成分が必ずしも均一ではないことから、確実に血圧低下作用を有する組成物を、安定的に提供することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4797363号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】厚生科学審議会 健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料 生活習慣病 分子メカニズムと治療 92-98 中山書店 2001
【非特許文献2】Prog Med 2006 26(7) 199-212
【非特許文献3】Health Sciences 2005 21 115-129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、毎日摂取しても安全で、かつ確実に血圧低下作用を示す組成物を安定的に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、課題を解決するために種々検討した結果、ヒハツ抽出物に含まれるピペリンが血圧を低下させることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)一日の摂取量当たり、ピペリンを30μg以上含有することを特徴とする経口組成物、
(2)ピペリンがコショウ科植物に由来する、請求項1に記載の経口組成物、
(3)一日の摂取量当たり、ピペリンを有効成分として30μg以上含有することを特徴とする、血圧低下用経口組成物、又は
(4)飲食品組成物である(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のピペリンを30μg以上含有するヒハツ抽出物は、血圧を低下させることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はプラセボ品、30μgピペリン含有品、60μgピペリン含有品、90μgピペリン含有品の摂取による収縮期血圧の平均値を示す(*:プラセボ群に対してP<0.05、Tukey の多重比較検定)。
図2図2はプラセボ品、30μgピペリン含有品、60μgピペリン含有品、90μgピペリン含有品の摂取による拡張期血圧の平均値を示す(*:プラセボ群に対してP<0.05、Tukey の多重比較検定)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ピペリンはアルカロイドの一種であり、下記構造式で表される化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
ピペリンは植物原料又は植物原料から抽出又は精製したものであってもよいし、人工的に合成されたものであってもよいが、安全性の観点から植物原料又は植物原料から抽出又は精製したものを用いることが好ましい。ピペリンはコショウ科植物に多く含まれることから、前記植物原料としては、コショウ科植物を用いることが出来るが、コショウ又はヒハツが好ましく、特にヒハツが好ましい。
【0014】
本発明において、ヒハツ抽出物とは、ヒハツを溶媒で抽出したものである。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類等の有機溶媒を、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。抽出物は、上記抽出物をそのまま使用することも、乾燥エキス、流エキス、チンキ等の一般的な形態のものを用いることもできる。
【0015】
本発明の剤形は特に限定されず、錠剤、カプセル剤、細粒剤、微粒剤、液剤、チュアブル剤、トローチなどの形態で摂取することが可能であるが、毎日続けて摂取しやすい剤形である茶風味の液剤や茶、茶抽出物又は米等を添加した製剤(摂取時に液体を添加する)が好ましい。本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合には、内服用固形剤や内服用液剤などの経口用製剤として提供することが好ましい。本発明の組成物を飲食品組成物として用いる場合、当該飲食品組成物は、例えば、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品、あるいは食品添加物であり得る。飲食品組成物の具体例としては、ドリンク類、スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状食品;食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンなどの油分を含む製品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ、インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状またはゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。本発明における飲食品組成物の製造は、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。
【0016】
また、発明の効果を損なわない質的および量的範囲で、必要に応じて他の公知の添加剤として、生薬、天然物、賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを混合することができる。
【0017】
本発明の経口組成物には、一日の摂取量当たり30μg以上のピペリンを含有する。摂取開始後のより早い時期に十分な血圧低下作用を発揮させるという点から、一日の摂取量当たり90μg以上のピペリンを含有することがさらに好ましい。ピペリンの含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することが出来るが、測定方法としてHPLCに限定するものではない。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
1.試験品
試験に用いるヒハツ抽出物は、乾燥したヒハツを熱水抽出し、デキストリンを添加した後、乾燥させることにより調製した。調製したヒハツ抽出物、矯味剤(緑茶、緑茶抽出物、米)及び賦形剤を使用して、プラセボ品(1包中にヒハツ抽出物由来のピペリンを含有しない粉末)、30μgピペリン含有品(1包中にヒハツ抽出物由来のピペリンとして30μg含有する粉末)、60μgピペリン含有品(1包中にヒハツ抽出物由来のピペリンとして60μg含有する粉末)及び90μgピペリン含有品(1包中にヒハツ抽出物由来のピペリンとして90μg含有する粉末)を1包当たり3gとなるように作製した。なお各試験品はそれぞれ外観から判別ができないようにアルミスティックへ充填した。また試験品に含まれるピペリンはHPLCにより測定した。
2.被験者
対象は、高血圧治療ガイドライン2009にて分類されている正常高値血圧者又はI度高血圧者のうち、医師の管理下での治療が必須ではないと考えられる者とした。
プラセボ群(プラセボ品を摂取した群)、30μg群(30μgピペリン含有品を摂取した群)、60μg群(60μgピペリン含有品を摂取した群)及び90μg群(90μgピペリン含有品を摂取した群)の4群にて実施した。選択・除外基準に従い被験者を120名(男性90名、女性30名)選定した。なお、本試験では血圧に影響を与える可能性のある薬剤の使用を禁止した。
3.試験方法
本試験は、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較にて実施した。 摂取期間は8週間とし、被験者は、摂取開始時から8週後来院時まで毎日試験品1包を100mLのお湯又は水に溶かし1日1回摂取した。
4.評価方法
本試験の有効性評価項目は、収縮期血圧(坐位)及び拡張期血圧(坐位)とし、各評価時期における摂取開始時からの変化量を評価指標とした。なお、摂取開始時、1週後、2週後、4週後、6週後、8週後に血圧測定を実施した。
5.試験結果
収縮期血圧の推移を図1に、拡張期血圧の推移を図2に示した。30μg群ではプラセボ群に対し、摂取4週後の拡張期血圧において有意な低下を認め、また60μg群ではプラセボ群に対し、摂取2週後の収縮期血圧において有意な低下を認めた。90μg群ではプラセボ群に対し、収縮期血圧及び拡張期血圧共に、摂取2週以降の全ての評価時期において有意な低下を認めた。以上の結果から、ピペリンが血圧低下作用を示すためには、一日の摂取量として30μg以上、より好ましくは90μg以上必要であることが明らかとなった。
【0019】
一方、試験期間中に副作用の発現はいずれの群でも認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の組成物又は血圧低下用組成物は、医薬品、医薬部外品、「血圧が気になる方に」などの表示を付した特定保健用食品(健康増進法第26条第1項の許可又は第29条第1項の承認を受け、食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品)さらには「血圧を改善する機能があります」などの表示を付した機能性表示食品(機能性表示食品制度などに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる食品)など、規制当局が保健の目的又は機能性などの表示を認めている食品として利用することが可能である。
図1
図2