特許第6862695号(P6862695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6862695-インナーライナー用ゴム組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862695
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】インナーライナー用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/22 20060101AFI20210412BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20210412BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L23/22
   C08K3/04
   C08L23/28
   C08L91/00
   C08L57/02
   C08K7/00
   B60C5/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-131301(P2016-131301)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-2872(P2018-2872A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】志水 佑樹
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−038183(JP,A)
【文献】 特開平02−231202(JP,A)
【文献】 特開昭56−135536(JP,A)
【文献】 特表2008−528739(JP,A)
【文献】 特開2004−143366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴムをC質量部およびハロゲン化ブチルゴムを含むジエン系ゴム100質量部に、オイルをA質量部、樹脂をB質量部、無機充填材を30〜120質量部、カーボンブラックを、前記無機充填材およびカーボンブラックの合計Xが90〜130質量部になるように配合してなるゴム組成物であって、前記無機充填材がモース硬度2.0未満の板状鉱物であり、かつ前記無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、前記オイルの配合量A質量部、樹脂の配合量B質量部およびブチルゴムの配合量C質量部が、以下の数式(1),(2)および(3)の関係を満たすことを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物。
0.084X−1.04 ≦A≦ 0.084X+0.96 (1)
−0.16X+22.95≦B≦−0.166X+26.95 (2)
1.015X−70.90≦C≦ 1.015X−50.90 (3)
【請求項2】
前記無機充填材およびカーボンブラックの合計Xが、90〜110質量部であることを特徴とする請求項1に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを有することを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫故障を抑制しながら生産性を改良するようにしたインナーライナー用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りタイヤの燃費性能を改良するため、インナーライナーの空気透過防止性能を改良し、その厚さを薄くして軽量化することが検討されている。例えば特許文献1は、インナーライナー用ゴム組成物に板状粘土鉱物を多量に配合することにより、空気透過性を小さくすることを提案する。
【0003】
しかし、インナーライナー用ゴム組成物に板状粘土鉱物を多量に配合すると、耐疲労性および低温脆化性が悪化するという課題があった。また、インナーライナー用ゴム組成物からなる未加硫ゴムシートを切断するとき切断面の不良を起こし易く、更にスプライス部の粘着性の悪化により加硫成形時に加硫故障を起こし易くなるという問題があった。このように、耐疲労性、低温脆化性および加硫故障を悪化させずに空気透過防止性能を改良することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−24922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐疲労性、低温脆化性および加硫故障を悪化させることなく、空気透過防止性能を従来レベル以上に向上するようにしたインナーライナー用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムをC質量部およびハロゲン化ブチルゴムを含むジエン系ゴム100質量部に、オイルをA質量部、樹脂をB質量部、無機充填材を30〜120質量部、カーボンブラックを、前記無機充填材およびカーボンブラックの合計Xが90〜130質量部になるように配合してなるゴム組成物であって、前記無機充填材がモース硬度2.0未満の板状鉱物であり、かつ前記無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、前記オイルの配合量A質量部、樹脂の配合量B質量部およびブチルゴムの配合量C質量部が、以下の数式(1),(2)および(3)の関係を満たすことを特徴とする。
0.084X−1.04 ≦A≦ 0.084X+0.96 (1)
−0.16X+22.95≦B≦−0.166X+26.95 (2)
1.015X−70.90≦C≦ 1.015X−50.90 (3)
【発明の効果】
【0007】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムをC質量部を含むジエン系ゴム100質量部に、オイルをA質量部、樹脂をB質量部、モース硬度2.0未満の板状鉱物からなる無機充填材を30〜120質量部、この無機充填材およびカーボンブラックの合計Xを90〜130質量部配合してなると共に、無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、オイルの配合量A質量部、樹脂の配合量B質量部およびブチルゴムの配合量C質量部が、上述した数式(1),(2)および(3)の関係を満たすようにしたので、耐疲労性、低温脆化性および加硫故障を悪化させることなく、空気透過防止性能を従来レベル以上に向上することができる。
【0008】
前記無機充填材およびカーボンブラックの合計Xは、ジエン系ゴム100質量部に対し90〜110質量部であるとよく、耐疲労性および低温脆化性をより優れたものにし、加硫故障を更に抑制することができる。
【0009】
上述したインナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを有する重荷重用空気入りタイヤは、耐疲労性、低温脆化性および空気透過防止性能を改良すると共に、加硫故障を抑制し生産効率を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の重荷重空気入りタイヤの実施形態の一例を示す子午線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、重荷重空気入りタイヤは、トレッド部1、サイド部2及びビード部3を有し、左右のビード部3,3間にカーカス層4が装架され、その両端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ径方向外側には3層構造のベルト層6が配置され、最外側のベルト層6の外側にトレッドゴム9が配置される。またカーカス層4の内側にはタイゴム7が配置され、更にその内側にインナーライナー8が配置される。インナーライナー8は、インナーライナー用ゴム組成物により構成されている。
【0012】
インナーライナー用ゴム組成物のゴム成分はジエン系ゴムであり、ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムを必ず含む。ハロゲン化ブチルゴムとして、例えば臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムを挙げることができる。ジエン系ゴム100質量部中、ブチルゴムの含有量をC質量部とし、その残部をハロゲン化ブチルゴムの含有量とする。ブチルゴムの含有量C質量部は、後述するように無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計X質量部との間で特定の関係を有するものとする。
【0013】
インナーライナー用ゴム組成物は、モース硬度が2.0未満であり、かつ板状鉱物からなる無機充填材を必ず含む。このような無機充填材を配合することにより、空気透過防止性能を優れたものにするとともに、耐疲労性、低温脆化性および加硫故障を改良することができる。無機充填材のモース硬度は、2.0未満、好ましくは0.2〜1.8である。無機充填材のモース硬度を2.0未満にすることにより、加硫故障を抑制し、製品不良品率を低減することができる。モース硬度2.0未満の無機充填材として、例えばタルク(硬度1)、黒鉛(硬度0.5〜1)、黄土(硬度0.3)等を挙げることができる。本明細書において、無機充填材のモース硬度は、無機充填材を構成する素材のモース硬度とする。
【0014】
無機充填材として、板状鉱物を配合するものとする。板状鉱物を配合することにより、空気透過防止性能を優れたものにすることができる。板状鉱物としては、タルク、偏平タルク、黒鉛、偏平クレー、マイカ等を挙げることができる。
【0015】
本発明において、無機充填材の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、30〜120質量部、好ましくは50〜115質量部、より好ましくは70〜110質量部である。無機充填材の配合量が30質量部未満であると、空気透過防止性能が低下する。また無機充填材の配合量が120質量部を超えると、加硫故障を起こし易くなり製品不良品率が高くなる。また耐疲労性、低温脆化性が悪化する。
【0016】
インナーライナー用ゴム組成物は、上述した無機充填材と共にカーボンブラックを配合する。カーボンブラックを配合することにより、ゴム強度、ゴム硬度などの機械的物性を改良することができる。カーボンブラックの配合量は、無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計Xが、ジエン系ゴム100質量部に対し70〜130質量部、好ましくは74〜123質量部、より好ましくは90〜110質量部になるように決めるものとする。無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計Xが70質量部未満であると空気透過防止性能が低下する。また無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計Xが130質量部を超えると加硫故障を起こし易くなり製品不良品率が高くなる。また耐疲労性、低温脆化性が悪化する。
【0017】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対しオイルをA質量部配合する。オイルとして、例えばアロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、シリコーン系オイルなどを挙げることができる。オイルとしては、ゴム組成物に後から配合された成分およびジエン系ゴムに油展成分として含有された成分の合計とすることができる。オイルの配合量A質量部は、後述するように無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計X質量部との間で特定の関係を有するものとする。
【0018】
インナーライナー用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し樹脂をB質量部配合する。樹脂の配合量B質量部は、後述するように無機充填材およびカーボンブラックの配合量の合計X質量部との間で特定の関係を有するものとする。樹脂として、例えば天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、芳香族系樹脂等およびこれらの変性物を挙げることができる。
【0019】
天然樹脂として、例えばテルペン系樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が好適に挙げられる。なかでも芳香族変性テルペン樹脂が好ましく、例えばα−ピネン、βピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペンとスチレン、フェノール、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂等が例示される。
【0020】
ロジン系樹脂としては、例えば生松油をろ過精製したものから水蒸気蒸留によりテレピン油を除いた数種の樹脂酸の混合物であり、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンのいずれからなる樹脂でもよい。またエステル化されたロジン系樹脂、無水マレイン酸変性されたロジン系樹脂、エステル化および無水マレイン酸変性の両方で処理されたロジン系樹脂でもよい。
【0021】
石油系樹脂は、原油を蒸留、分解、改質などの処理をして得られた成分を重合して製造される芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂である。石油系樹脂として、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C59共重合石油樹脂などが例示される。
【0022】
芳香族系樹脂は、芳香族系炭化水素からなるセグメントを少なくとも1つ有する重合体であり、クマロン樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂などをあげることができる。これらの樹脂は、単独又は複数のブレンドとして使用することができる。なお上述したC9系石油樹脂は、芳香族系炭化水素樹脂であるが、本明細書では石油系樹脂に分類するものとする。
【0023】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物において、オイルの配合量A質量部は、無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、以下の数式(1)の関係を満たす。
0.084X−1.04 ≦A≦ 0.084X+0.96 (1)
【0024】
オイルの配合量Aは、数式(1)の左辺から算出される値を下限値とし、数式(1)の右辺から算出される値を上限値とする。オイルの配合量Aがその下限値より小さく無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部が比較的少ないと、空気透過防止性能が悪化する。また無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部が比較的多いと耐疲労性および低温脆化性が悪化する。一方オイルの配合量Aが、その上限値より大きいと空気透過防止性能が悪化する。更に加硫故障を起こし易くなり製品不良品率が高くなる虞がある。
【0025】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物において、樹脂の配合量B質量部は、無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、以下の数式(2)の関係を満たす。
−0.16X+22.95≦B≦−0.166X+26.95 (2)
【0026】
樹脂の配合量Bは、数式(2)の左辺から算出される値を下限値とし、数式(2)の右辺から算出される値を上限値とする。樹脂の配合量Bが、その下限値より小さいと加硫故障を起こし易くなり製品不良品率が高くなる。また樹脂の配合量Bが、その上限値より大きいと耐疲労性が悪化する。更に無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部が比較的多いときは、低温脆化性が悪化する。
【0027】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物において、ブチルゴムの配合量C質量部は、無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部に対し、以下の数式(3)の関係を満たす。
1.015X−70.90≦C≦ 1.015X−50.90 (3)
【0028】
ブチルゴムの配合量Cは、数式(3)の左辺から算出される値を下限値とし、数式(3)の右辺から算出される値を上限値とする。ブチルゴムの配合量Cが、その下限値未満または上限値を超えると、加硫故障を起こし易くなり製品不良品率が高くなる。同時に無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部が比較的少ないとき、空気透過防止性能が低下する虞がある。またブチルゴムの配合量Cがその下限値より少なく無機充填材およびカーボンブラックの合計X質量部が比較的多いと低温脆化性が悪化する。更に耐疲労性が低下する虞がある。
【0029】
本発明において、インナーライナー用ゴム組成物は、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのインナーラーナー用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0030】
上述したインナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを有する重荷重用空気入りタイヤは、耐疲労性、低温脆化性および空気透過防止性能を改良すると共に、加硫故障を抑制し生産効率を改良することができる。
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
表4に示す配合を共通成分の処方として、表1〜3に示す配合からなる27種類のインナーライナー用ゴム組成物(実施例1〜4、標準例1、比較例1〜22)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練して、放出、冷却しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混合することにより、27種類のインナーライナー用ゴム組成物を調製した。なお、表4の共通成分の配合量は、表1〜3に示すジエン系ゴム100質量部に対する質量部として記載した。また、カーボンブラックおよび無機充填剤の配合量の合計Xを「総フィラー量 X」の欄に記載した。更にこのカーボンブラックおよび無機充填剤の配合量の合計Xから計算される数式(1)〜(3)の右辺および左辺の値を算出し、それぞれオイルの配合量A、樹脂の配合量Bおよびブチルゴムの配合量Cの「上限値」および「下限値」として記載した。
【0033】
製品不良品率
得られた27種類のインナーライナー用ゴム組成物からなるインナーライナーを有するグリーンタイヤを3000本作製し、その加硫成形を行った。加硫されたタイヤの内腔を目視観察しインナーライナーに剥がれ等の加硫故障の有無を評価した。得られた結果は、標準例1における加硫故障の数を100として加硫故障の指数をそれぞれ算出し以下の判定基準により評価し、表1〜3の「製品不良品率」の欄に記載した。
◎:加硫故障の指数が100未満
○:加硫故障の指数が100以上120未満
△:加硫故障の指数が120以上150未満
×:加硫故障の指数が150以上
【0034】
得られた27種類のインナーライナー用ゴム組成物を使用して、所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記の方法で空気透過防止性能、耐疲労性および低温脆化性を測定した。
【0035】
空気透過防止性能
得られたインナーライナー用ゴム組成物を用いて、幅15.0cm、厚さ2.0mmのゴムシートを押出成形し、これを加硫した。得られた加硫シートを使用して、JIS K 6275に基づき、通気度の試験を行い、空気透過係数を測定した。得られた結果は、標準例1値を100とする指数として、表1〜3の「空気透過防止性能」の欄に示した。この指数が小さいほど空気透過防止性能が優れることを意味する。
【0036】
耐疲労性
得られた試験片を用いて、JIS K6260のデマッチャ屈曲亀裂成長試験に準拠し、ストローク57mm、速度300±10rpm、屈曲回数10万回後の亀裂成長[単位mm]を測定した。得られた結果は標準例1を100にする指数とし、表1〜3の「耐疲労性」の欄に示した。この指数が小さいほど亀裂成長が小さく、耐疲労性が優れることを意味する。
【0037】
低温脆化性
得られた試験片を用いて、JIS K6261に準拠して、ゴムの脆化温度を測定した。得られた結果は標準例1の逆数を100にする指数とし、表1〜3の「低温脆化性」の欄に示した。この指数が小さいほど脆化温度が低く、低温脆化性が優れることを意味する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・IIR:ブチルゴム、エクソン化学社製エクソンブチル268
・Br−IIR:臭素化ブチルゴム、エクソン化学社製エクソンブロモブチル2222
・カーボンブラック:GPF級カーボンブラック、東海カーボン社製シーストV
・タルク:板状鉱物の無機充填材、日本ミストロン社製MISTRON VAPOR RE、鉱物種タルク、モース硬度が1
・偏平タルク:板状鉱物の無機充填材、日本ミストロン社製MISTRON HAR、鉱物種タルク、モース硬度が1
・クレー:無機充填材、山陽クレー工業社製カタルポY−K、鉱物種クレー、モース硬度が2
・樹脂:エッソ社製エスコレッツ1102
・オイル:H&R社製VIVATEC400
【0042】
【表4】
【0043】
表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・硫黄:アクゾノーベル社製クリステックスHS OT 20
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDM
【0044】
表1から明らかなように実施例1〜4のインナーライナー用ゴム組成物は、製品不良品率(加硫故障)を悪化させることなく、耐疲労性、低温脆化性および空気透過防止性能を改良することが確認された。
【0045】
比較例1のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムを配合しないので、製品不良品率が高く、耐疲労性および低温脆化性が劣る。
比較例2のインナーライナー用ゴム組成物は、クレーがモース硬度が2以上で、板状鉱物でないので、製品不良品率が高く、空気透過防止性能が劣る。
比較例3のインナーライナー用ゴム組成物は、無機充填材およびカーボンブラックの合計Xが70質量部未満であるので、空気透過防止性能が劣る。
比較例4のインナーライナー用ゴム組成物は、無機充填材およびカーボンブラックの合計Xが130質量部を超えるので、製品不良品率が高く、耐疲労性および低温脆化性が劣る。
【0046】
比較例5,7,9のインナーライナー用ゴム組成物は、樹脂の配合量Bが数式(2)の左辺(Bの下限値)より小さいので、製品不良品率が高い。
比較例6のインナーライナー用ゴム組成物は、樹脂の配合量Bが数式(2)の右辺(Bの上限値)より大きいので、耐疲労性が劣る。
比較例8,10のインナーライナー用ゴム組成物は、樹脂の配合量Bが数式(2)の右辺(Bの上限値)より大きいので、耐疲労性および低温脆化性が劣る。また製品不良品率が比較的高い。
【0047】
比較例11のインナーライナー用ゴム組成物は、オイルの配合量Aが数式(1)の左辺(Aの下限値)より小さいので、製品不良品率が高い。
比較例12,14,16のインナーライナー用ゴム組成物は、オイルの配合量Aが数式(1)の右辺(Aの上限値)より大きいので、空気透過防止性能が劣る。
比較例13,15のインナーライナー用ゴム組成物は、オイルの配合量Aが数式(1)の左辺(Aの下限値)より小さいので、耐疲労性および低温脆化性が劣る。
【0048】
比較例17のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムの配合量Cが数式(3)の左辺(Cの下限値)より小さいので、製品不良品率が高い。また空気透過防止性能が劣る。
比較例18のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムの配合量Cが数式(3)の右辺(Cの上限値)より大きいので、製品不良品率が高い。また空気透過防止性能が劣る。
比較例19,21のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムの配合量Cが数式(3)の左辺(Cの下限値)より小さいので、製品不良品率が高い。また低温脆化性が劣る。
比較例20のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムの配合量Cが数式(3)の右辺(Cの上限値)より大きいので、製品不良品率が高い。
比較例22のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチルゴムの配合量Cが数式(3)の右辺(Cの上限値)より大きいので、製品不良品率が高い。また耐疲労性が劣る。
【符号の説明】
【0049】
1 トレッド部
2 サイド部
3 ビード部
4 カーカス層
7 タイゴム
8 インナーライナー
図1