特許第6862709号(P6862709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ MCPPイノベーション合同会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862709
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体及び建装材
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20210412BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210412BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L53/00
   C08L23/14
   C08L23/08
   C08L23/26
   B32B27/30 101
   B32B27/28 101
   B32B27/32 C
   C08J7/00CES
   C08J7/00CEY
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-150034(P2016-150034)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-16759(P2018-16759A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直哉
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−054065(JP,A)
【文献】 特開平10−168271(JP,A)
【文献】 特開2008−094977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08L 23/08
C08L 23/14
C08L 23/26
B32B 1/00−43/00
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を20〜55重量%、成分(B)を29〜55重量%、成分(C)を10〜50重量%含む樹脂組成物。
成分(A):アクリル系熱可塑性エラストマー
成分(B):密度(ASTM D1505)が855〜895kg/mであるプロピレン系エラストマー
成分(C):エチレン・酢酸ビニル共重合体
【請求項2】
成分(A)がメタクリル酸メチルの重合体からなるハードセグメントとアクリル酸n−ブチルの重合体からなるソフトセグメントとを有するものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
下記成分(D)を含み、かつその含有量が成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.5〜5重量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
成分(D):無水マレイン酸変性ポリオレフィン
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する層と、その他の層とを有する積層体。
【請求項6】
ポリ塩化ビニル樹脂層、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する接着層、及びポリオレフィン樹脂層を有する積層体。
【請求項7】
前記ポリ塩化ビニル樹脂層と前記接着層及び/又は前記接着層と前記ポリオレフィン樹脂層が接している、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂層がポリプロピレン系樹脂層である、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の積層体を構成物として含む建装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂との接着性が良好な樹脂組成物及び、該樹脂組成物を含有する層を有する積層体と建装材に関する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂層及びポリオレフィン樹脂層を有する積層体を共押出または押出ラミネート等によって製造するに際し、層間剥離の生じない積層体とすることに適し、かつ該樹脂組成物を含有する層とポリ塩化ビニル樹脂層及びポリオレフィン樹脂層との接着性が加熱処理後においても良好な積層体を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
壁紙や化粧シート等の建装材の基材としては、柔軟であり成形加工性も良好であることから軟質ポリ塩化ビニル樹脂基材が多用されている。また、軟質ポリ塩化ビニル樹脂製の建装材は、手触り感の向上や意匠性が求められる用途において、エンボス加工や発泡を施したものも使用されている。軟質ポリ塩化ビニル樹脂はまた、優れた柔軟性と触感を有すると共に、低コストであることから、自動車用内装部品にも用いられているが、昨今の環境保護と燃費向上を目的とする自動車の軽量化への要求が高まる中で、軟質ポリ塩化ビニル樹脂製部品をより低比重なポリオレフィン樹脂との積層構造とすることによって軽量化を図ることが求められている。
【0003】
しかしながら、軟質ポリ塩化ビニル樹脂は通常、樹脂に対して多量の可塑剤が配合されており、この可塑剤は経時的に建装材の表面からブリードアウト(漏出)することが避けられない。軟質ポリ塩化ビニル樹脂からの可塑剤のブリードアウトは、建装材の表面を自ら汚したり、柔軟性が低下してヒビ割れを生じるばかりでなく、衛生面、環境面においても好ましくない。特にエンボス加工や発泡を施した建装材は、表面に凹凸が形成されていたり、多孔質であるため、可塑剤のブリードアウトが一層顕著となる。
【0004】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂製の建装材から可塑剤がブリードアウトすることを抑制する手段としては、表面を他の樹脂で被覆する方法が挙げられる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂は、化学的安定性が良く、可塑剤を多量に含有することも無いため、表面の汚染も少なく、衛生面、環境面においても好適である。
【0005】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂層の表面にポリオレフィン樹脂層を積層する方法としては、一般にドライラミネート法が用いられている。ドライラミネート法では通常、層間を接着するために有機溶剤を使用するが、製造工程で有機溶剤を使用することは、自然環境への影響等が懸念されることから好ましくない。このため、有機溶剤を使用しない成形方法(共押出法や押出コーティング法等の溶融成形法や熱接着法)で製造することが強く望まれている。
【0006】
この要望に対応する技術として、特許文献1には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなる外層と、酢酸ビニル含有量の高いエチレン・酢酸ビニル共重合体及び酢酸ビニル含有量の低いエチレン・酢酸ビニル共重合体とを特定量で含有する中間層と、ポリオレフィン樹脂層とからなる積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−23573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は上記特許文献1に開示されている技術について更なる検討を行った結果、加熱処理を施した場合の加熱処理後の接着性(耐熱接着性)が不十分であるという問題を見出した。
即ち、現状では、軟質ポリ塩化ビニル樹脂層とポリオレフィン樹脂層とを、有機溶剤を必須として使用せずに溶融成形法や熱接着法で一体化して、良好な層間接着性を得ることができ、かつ加熱処理後においても層間接着性が良好となる接着性樹脂は未だ見出されていない。
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物層との接着性が、加熱処理前後においていずれも良好であり、有機溶剤系接着剤を必須として使用せずに溶融成形法や熱接着法で接着することが可能であり、かつ高温雰囲気下においても上記樹脂層との接着性が良好である接着層用樹脂として好適な樹脂組成物を提供することにある。また、本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを有し、柔軟性、意匠性、防汚性に優れ、可塑剤のブリードアウトが抑制された建装材の接着層として、また、ポリ塩化ビニル樹脂層とポリオレフィン樹脂層とを有し、優れた柔軟性、軽量性、触感、コストに優れた自動車向け部品の接着層として好適な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、アクリル系熱可塑性エラストマーと、特定の酢酸ビニル含有量のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、特定の密度のプロピレン系エラストマーとを所定の割合で含む樹脂組成物とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[9]を要旨とする。
【0011】
[1] 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を20〜65重量%、成分(B)を25〜55重量%、成分(C)を10〜50重量%含む樹脂組成物。
成分(A):アクリル系熱可塑性エラストマー
成分(B):密度(ASTM D1505)が855〜895kg/mであるプロピレン系エラストマー
成分(C):エチレン・酢酸ビニル共重合体
【0012】
[2] 成分(A)がメタクリル酸メチルの重合体からなるハードセグメントとアクリル酸n−ブチルの重合体からなるソフトセグメントとを有するものである、[1]に記載の樹脂組成物。
【0013】
[3] 下記成分(D)を含み、かつその含有量が成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.5〜5重量部である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
成分(D):無水マレイン酸変性ポリオレフィン
【0014】
[4] [1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【0015】
[5] [1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する層と、その他の層とを有する積層体。
【0016】
[6] ポリ塩化ビニル樹脂層、[1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する接着層、及びポリオレフィン樹脂層を有する積層体。
【0017】
[7] 前記ポリ塩化ビニル樹脂層と前記接着層及び/又は前記接着層と前記ポリオレフィン樹脂層が接している、[6]に記載の積層体。
【0018】
[8] 前記ポリオレフィン樹脂層がポリプロピレン系樹脂層である、[6]又は[7]に記載の積層体。
【0019】
[9] [6]乃至[8]のいずれかに記載の積層体を構成物として含む建装材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層との接着性が加熱処理前後においていずれも良好であり、有機溶剤系接着剤を使用せずに溶融成形法や熱接着法で接着することが可能な接着層用樹脂として好適な樹脂組成物、及びこれを用いた積層体が提供される。また、本発明によれば、ポリ塩化ビニル樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを有し、柔軟性、意匠性、防汚性に優れ、可塑剤のブリードアウトが抑制された建装材の接着層として、好適な樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0022】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を20〜65重量%、成分(B)を25〜55重量%、成分(C)を10〜50重量%含むものである。
成分(A):アクリル系熱可塑性エラストマー
成分(B):密度(ASTM D1505)が855〜895kg/mであるプロピレン系エラストマー
成分(C):エチレン・酢酸ビニル共重合体
【0023】
<成分(A)>
本発明の樹脂組成物に用いる成分(A)は、アクリル系熱可塑性エラストマーである。アクリル系熱可塑性エラストマーはポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂に対する高温雰囲気下での接着性を向上させる効果を奏する。
【0024】
成分(A)のアクリル系熱可塑性エラストマーは通常、常温(23℃)以上のガラス転移温度を有するハードセグメントと柔軟性を有するソフトセグメントを有するブロック共重合体である。
【0025】
成分(A)において、ハードセグメントに基づくガラス転移温度は好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは40℃以上であり、一方、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、更に好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲であることが耐熱性、成形性等の観点から好ましい。なお、本発明において成分(A)のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置により、温度範囲−100〜280℃、昇温速度5℃/分、周波数10Hzの条件で試験片を加熱した際に観測される損失正接(tanδ)のピーク温度である。複数のブロックを有する熱可塑性エラストマーでは通常、複数の損失正接のピークが観測されるが、この場合、低温側のピークがソフトセグメントに由来するものであり、高温側のピークがハードセグメントに由来するものである。
【0026】
成分(A)において、ソフトセグメントに基づく柔軟性から、成分(A)の硬度の下限は、デュロA硬度で60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、一方、硬度の上限はデュロA硬度で60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。硬度が上記範囲であると、ポリ塩化ビニル樹脂に対する耐熱接着性の観点で好ましい。なお、成分(A)のデュロA硬度はISO 7619に準拠して測定される値である。
【0027】
成分(A)のハードセグメントは次に挙げる(メタ)アクリル単量体の1種又は2種以上から得られる重合体ブロックであることが好ましい。このような(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。これらの中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。即ち、成分(A)のハードセグメントはメタクリル酸メチルの重合体ブロックであることが特に好ましい。
【0028】
成分(A)のソフトセグメントは次に挙げる(メタ)アクリル単量体の1種又は2種以上から得られる重合体ブロックであることが好ましい。このような(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−secブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−secブチル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェニルエチル等が好ましく、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。即ち、成分(A)のソフトセグメントはアクリル酸n−ブチルの重合体ブロックであることが特に好ましい。
【0029】
成分(A)のアクリル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントの重量比([ハードセグメントの重量]/[ソフトセグメントの重量])が10/90〜70/30であることが好ましく、15/85〜60/40であることがより好ましい。
【0030】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は20,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが更に好ましく、一方、600,000以下であることが好ましく、400,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることが更に好ましい。また、成分(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、即ち分子量分布(Mw/Mn)は通常1.1〜5.0、好ましくは1.1〜3.0である。
【0031】
ここで、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)により以下の条件により測定することができる。
装置:東ソー社製 HLC−8120
カラム:Inertsil WF300
溶媒:テトラヒドロフラン
較正:ポリスチレン
【0032】
成分(A)のアクリル系熱可塑性エラストマーは市販品として入手することができる。例えば、クラレ社製クラリティ(登録商標)シリーズ、カネカ社製ナブスター(登録商標)シリーズ等から選択して用いることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)のアクリル系熱可塑性エラストマーは1種のみを用いてもよく、ハードセグメントやソフトセグメントの組成、物性等の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<成分(B)>
本発明の樹脂組成物は、成分(B)として、密度(ASTM D1505)が855〜895kg/mであるプロピレン系エラストマーを含む。成分(B)のプロピレン系エラストマーは、プロピレン含量(プロピレンに由来する単量体単位が全単量体単位に占める重量割合)が50重量%以上であり、密度(ASTM D1505)が855〜895kg/mのものであれば特に制限されない。成分(A)、成分(C)に加えて成分(B)を含むことにより、後述するポリオレフィン樹脂層として、ポリプロピレン系樹脂を用いた場合において、特に耐熱接着性がより良好となる傾向にある。
【0035】
成分(B)のプロピレン系エラストマーのプロピレン含量は50重量%以上であり、好ましくは55重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上である。一方、成分(B)のプロピレン含量の上限は特に制限されないが、通常、90重量%以下であり、好ましくは88重量%以下であり、より好ましくは86重量%以下である。成分(B)において、プロピレン含量が、上記下限値以上であると、ポリプロピレン系樹脂に対する接着性の観点で好ましく、上記上限値以下であると、成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体との相溶性の観点で好ましい。
【0036】
成分(B)のプロピレン系エラストマーはプロピレン以外に他の共重合成分を含有していることがエチレン・酢酸ビニル共重合体との相溶性の観点で好ましい。このような他の共重合成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。他の共重合成分としては、これらの中でも、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましく、エチレン、1−ブテンが特に好ましい。以上に挙げた他の共重合成分は、1種のみを含有していても、2種以上を含有していてもよい。
【0037】
成分(B)の密度(ASTM D1505)は855〜895kg/mである。成分(B)の密度が上記範囲であると、成分(B)を含む樹脂組成物に、ポリオレフィン樹脂との良好な接着性保持の効果が付与される。成分(B)の密度(ASTM D1505)は好ましくは860〜880kg/mである。
【0038】
成分(B)は、230℃、荷重21.2Nでのメルトフローレート(JIS K7210(1990)が1〜60g/10分であることが成形性の観点から好ましい。成分(B)のメルトフローレートはこの観点からより好ましくは2〜50g/10分である。
【0039】
成分(B)のプロピレン系エラストマーは、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法により製造することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。この重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせて製造してもよい。
【0040】
成分(B)のプロピレン系エラストマーは、市販品として入手することができる。該当する市販品としては、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、エクソンモービル社製「ビスタマックス(Vistamaxx)(登録商標)」シリーズ等から適宜該当品を選択して用いることができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物において、成分(B)のプロピレン系エラストマーは、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
<成分(C)>
本発明の樹脂組成物に用いる成分(C)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体である。成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体を、前述の成分(A)とともに用いることにより、本発明の樹脂組成物はポリ塩化ビニル樹脂に対する接着性が良好となる。
【0043】
成分(C)におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは25重量%以上であり、一方、通常99重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。酢酸ビニル含有量が上記範囲であることが、ポリオレフィン樹脂に対する接着性の観点から好ましい。
【0044】
ここで、酢酸ビニル含有量とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する全単量体単位(後述する「他の共重合成分」も含む。)のうち、酢酸ビニル由来の単量体単位の重量割合を意味する。なお、該酢酸ビニル含有量には、重合モノマー段階では酢酸ビニルモノマーを用いずに、重合後の変性等によって同一の化学構造を形成している単量体単位も包含する。
【0045】
本発明において、成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、JIS K7192(1999)に順じて測定した値を意味する。
【0046】
成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレン及び酢酸ビニル以外に、他の共重合可能な成分に由来する単量体単位を含有していてもよい。他の共重合可能な成分は限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の1種又は2種以上が挙げられる。成分(C)が他の共重合可能な成分に由来する単量体単位を含有する場合、その含有量は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する全単量体単位のうち50重量%以下であることが好ましい。
【0047】
成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、JIS K7210(1999)に従い、190℃、荷重21.2Nで測定した値が、通常0.2〜60g/10分、好ましくは1〜35g/10分、さらに好ましくは2〜30g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値以下であると、得られる樹脂組成物の押出成形性が良好となる傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が向上する傾向がある。MFRが上記の下限値以上であると流動性が良好となる傾向があるため、得られる樹脂組成物の成形性も良好となる傾向がある。
【0048】
成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、通常、溶液重合やラテックス重合、高圧法ラジカル重合等の公知の製造方法が挙げられる。特に成分(C)の範囲の酢酸ビニル含有量を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体を製造するためには、溶液重合により製造することが好ましい。成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体を溶液重合で製造する際の具体的な条件は限定されないが、通常、エチレンと酢酸ビニルとを必須の原料とし、tert−ブタノール等を溶媒とし、有機過酸化物又はアゾ化合物等のラジカル開始剤を用い、50〜150℃、好ましくは55〜70℃の温度で、10〜70MPa(100〜700バール)、好ましくは30〜40MPa(300〜400バール)の圧力下に行われる。このような製造方法は、例えば、特開平1−101304号公報、特開平7−33829号公報、欧州特許出願公開第A0341499号明細書、欧州特許出願公開第A0510478号明細書等に記載されている。
【0049】
成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体は市販品としても入手することができる。市販品としては、例えば、ランクセス社製「LEVAPREN(登録商標)」、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックス(登録商標)」等から上記に該当するものを選択して使用することができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物において、成分(C)のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
<成分(D)>
本発明の樹脂組成物は、成分(D)として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含有することが好ましい場合がある。樹脂組成物中に無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含有することにより、ポリ塩化ビニル樹脂や、ポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等との接着性が向上する場合がある。その理由は明らかでないが、無水マレイン酸変性ポリオレフィンは、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を主成分とする樹脂組成物中で微分散化するためであると考えられる。
【0052】
成分(D)の無水マレイン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸で変性したものである。
【0053】
変性する原料として用いることが出来るポリオレフィン樹脂は限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィン同士あるいはそれらのα−オレフィンと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
【0054】
ポリオレフィン樹脂として具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を含む)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体等のポリ1−ブテン系樹脂;及び、ノルボルネンの開環メタセシス重合体やノルボルネン誘導体・エチレン共重合体等の所謂環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂として共重合体を用いる場合の連鎖形式は限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。これらのポリオレフィン樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0055】
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂が好ましく、エチレン系共重合体がより好ましい。なお、本発明においてポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ1−ブテン系樹脂とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、または1−ブテンに由来する単量体単位を全単量体単位中に50重量%以上含有する樹脂を言う。
【0056】
ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸で変性する方法は限定されず、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカル発生剤を添加してもよい。また、反応させる手法としては、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法のほか、懸濁分散反応法等の方法を用いてもよい。中でも、溶融変性法が好ましい。溶融変性法としては、ポリオレフィン樹脂と無水マレイン酸、及び必要により公知のラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練させて反応させる方法や、混練機中で溶融したポリオレフィン樹脂に、溶剤等に溶解した無水マレイン酸とラジカル発生剤との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
【0057】
無水マレイン酸の配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは5重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。ラジカル発生剤の配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上で、通常3重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.2重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以下である。
【0058】
ポリオレフィン樹脂の変性率(グラフト量)は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは7重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。変性率(グラフト量)を前記範囲内とした成分(D)を本発明の樹脂組成物に含有することにより、ポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との接着性が一層向上する場合がある。なお、変性率(グラフト量)は公知の方法で確認することが可能であり、H−NMR、赤外吸収スペクトル、高周波プラズマ発光分析装置を用いたICI発光分析法等により確認することができる。
【0059】
成分(D)のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分、さらに好ましくは1.0〜60g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値以下であると、得られる樹脂組成物の押出成形性が良好となる傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が向上する傾向がある。MFRが上記の下限値以上であると流動性が良好となり、得られる樹脂組成物の成形性も向上する傾向がある。ここで、MFRは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン系樹脂またはポリ1−ブテン系樹脂である場合は190℃、荷重21.2Nでの値を意味し、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合は230℃、荷重21.2Nでの値を意味する。
【0060】
成分(D)としては市販品を用いることもでき、例えば、三菱化学社製「モディック(登録商標)」、三井化学社製「アドマー(登録商標)」等が挙げられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物において、成分(D)は、1種のみを用いてもよく、ポリオレフィン樹脂の種類や変性率、物性等の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
<成分(E)>
本発明の樹脂組成物は、成分(E)として脂肪酸アミドを含有することが好ましい。樹脂組成物中に脂肪酸アミドを含有することにより、本発明の樹脂組成物から得られる成形品の成形性や取り扱い性が向上する傾向がある。特に、本発明の樹脂組成物を含有する層と、ポリ塩化ビニル樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂等からなる層とを有する積層体を共押出成形し、ロール状に巻き取った場合、該ロール状シートからのシートの巻き出し易さが向上する傾向がある。成分(E)の脂肪酸アミドは、脂肪酸とアミン化合物又はアンモニアとの反応によって得られた構造を有するものであれば特に制限されない。なお、化学構造が同一であれば、上記反応によって得られるものに限定されるものではない。
【0063】
成分(E)の脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖脂肪酸であっても分岐を有する脂肪酸であってもよい。更には、脂環族カルボン酸も包含される。更には、脂肪酸を構成する炭化水素基が極性基やハロゲン等で置換されていてもよい。具体的には、例えば、飽和脂肪酸としてはカプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸等が、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸、エルカ酸等が、脂環族カルボン酸としてはシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。更には、カルボキシル基を2以上有する化合物であってもよく、これらと以下のアミン化合物とを反応させることにより、ビスアミド等とすることができる。
【0064】
成分(E)の脂肪酸アミドを構成するアミン化合物は、脂肪族アミンであっても芳香族アミンであってもよい。脂肪族アミンの脂肪族基は飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、また直鎖脂肪族炭化水素基であっても分岐を有する脂肪族炭化水素基であってもよい。更には、脂環族炭化水素基も包含される。また、脂肪族アミンの脂肪族基又は芳香族アミンの芳香族基を構成する炭化水素基が極性基やハロゲン等で置換されていてもよい。脂肪酸アミドを構成する脂肪族アミンの脂肪族基として具体的には、例えば、飽和脂肪族炭化水素基としてはカプリル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘリル基等が、不飽和脂肪族炭化水素基としてはオレイル基、エルカリル基等が、脂環族炭化水素基としてはシクロヘキシル基等が挙げられる。また、芳香族アミンの芳香族基としては、具体的にはフェニル基、フェニルメチル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。更に、脂肪酸アミドを構成するアミン化合物は、アミノ基又は置換アミノ基を2以上有する化合物であってもよく、これらと上記の脂肪酸とを反応させることにより、ビスアミド等とすることができる。
【0065】
また、脂肪酸アミドを構成するアミン化合物は、1級アミンであっても2級アミンであってもよい。また、原料の段階では3級アミンであってもよい。1級アミンを用いることにより、N−1置換の脂肪族アミドが得られ、2級アミンを用いることにより、N,N−2置換の脂肪酸アミドが得られる。本発明における成分(E)としては、N,N−2置換の脂肪酸アミドであることが好ましい。N,N−2置換の脂肪酸アミドとしては、具体的には、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0066】
本発明の樹脂組成物において、成分(E)の脂肪酸アミドは、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0067】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂」という場合がある。)、成分(E)以外の添加剤、充填材等を配合することができる。その他の樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0068】
その他の樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン樹脂(成分(B),(C)に含まれるものを除く);ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂(成分(A)に含まれるものを除く);ポリスチレン等のスチレン系樹脂;等の熱可塑性樹脂や各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0069】
これらの中では、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、前記の成分(D)の原料として用いることのできるポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0070】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、成分(E)以外の種々の添加剤等を配合することができる。成分(E)以外の添加剤としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、離型剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等が挙げられる。これら添加剤は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0071】
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0072】
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が環境面で好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、添加剤としてブロッキング防止剤を配合することが好ましい。ブロッキング防止剤を配合することにより、本発明の樹脂組成物からなるペレット製造工程、その後の貯蔵、輸送等におけるペレット同士の耐ブロッキング性が向上する傾向がある。ブロッキング防止剤としては、ポリオレフィン微粉末、ポリエチレンワックス及びその分散液等が挙げられる。
【0074】
充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0075】
<配合量>
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量に対する成分(A)の含有量が20〜65重量%である。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量に対し、成分(A)の含有量が20重量%以上であると、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂に対する高温雰囲気下での接着性の観点で好ましく、一方、成分(A)の含有量が65重量%以下であると、ポリオレフィン樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物との接着性の観点から好ましい。これらの観点から、成分(A)の含有量は、好ましくは23重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、一方、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは55重量%以下である。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量に対する成分(B)の含有量が25〜55重量%である。成分(B)の含有量が25重量%以上であると、ポリオレフィン樹脂、特にポリプロピレン樹脂に対する耐熱接着性の観点で好ましく、一方、成分(B)の含有量が55重量%以下であると、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂に対する高温雰囲気下での接着性や耐熱接着性の観点から好ましい。これらの観点から、成分(B)の含有量は、好ましくは27重量%以上であり、より好ましくは29重量%以上であり、一方、好ましくは重量50%以下であり、より好ましくは45重量%以下である。
【0077】
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量に対する成分(C)の含有量が10〜50重量%である。成分(C)の含有量が10重量%以上であると、ポリオレフィン樹脂に対する耐熱接着性の観点で好ましく、一方、成分(C)の含有量が50重量%以下であると、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂に対する高温雰囲気下での接着性やポリ塩化ビニル樹脂との接着性の観点から好ましい。これらの観点から、成分(C)の含有量は、好ましくは13重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、一方、好ましくは47重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下である。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物が成分(D)を含む場合、成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.5〜5重量部であることが好ましく、0.6〜4重量部であることがより好ましく、0.7〜3重量部であることが更に好ましい。成分(D)の含有量が上記範囲内であると、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリオレフィン樹脂に対する高温雰囲気下での接着性を阻害することなく、ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂等との接着性を向上させることができる。
【0079】
また、本発明の樹脂組成物が成分(E)を含む場合、成分(E)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.001〜0.5重量部であることが好ましく、0.003〜0.4重量部であることがより好ましく、0.005〜0.3重量部であることが更に好ましい。成分(E)の含有量が上記範囲内であると、本発明の樹脂組成物を含有する層と、ポリ塩化ビニル樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂等からなる層とを有する積層体を共押出成形し、ロール状に巻き取った場合に、該ロール状シートの巻き戻し易さが向上する傾向がある。
【0080】
本発明の樹脂組成物が前述のその他の樹脂を含有する場合の含有量は限定されないが、通常、樹脂組成物中に0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。その他の樹脂の含有量が前記上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が不十分な場合がある。
【0081】
本発明の樹脂組成物に成分(E)以外の他の添加剤を含有する場合の含有量は限定されないが、通常、樹脂組成物中に0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。他の添加剤の含有量が前記上限値を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が不十分な場合がある。なおこれらの添加剤は、本発明の樹脂組成物をマスターバッチとして用いる場合には、前記した含有量の2〜50倍、好ましくは3〜30倍の濃度で含有させることもできる。
【0082】
本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、JIS K7210(1999)に従い、190℃、荷重21.2Nで測定した値が、通常0.2〜60g/10分、好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは2〜25g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記の上限値以下であれば、樹脂組成物の押出成形性が良好となる傾向があり、更に、積層体とした場合の機械的強度が向上する傾向がある。MFRが上記の下限値以上であれば、流動性が良好であるため、樹脂組成物の成形性が向上する傾向がある。
【0083】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限はない。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分散した組成物を得ることができる。より均一な混合、分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、目的とする成形体を製造する際の成形時に各原料を適宜配合(ドライブレンド)して溶融混合してもよい。
【0084】
混合方法や混合条件は、各原料成分等が均一に混合されれば特に制限はないが、生産性の点からは、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて原料を混合し、単軸押出機や二軸押出機のような連続混練機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機で溶融混練する方法が好ましい。これらの方法で樹脂組成物を製造する際の製造条件は限定されず、周知の条件で適宜設定することができる。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行うことができる。
【0085】
[成形体]
本発明の樹脂組成物から得られる成形体には限定は無く、種々の押出成形体や射出成形体とすることができる。成形体の製造方法も特に制限は無く、具体的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形等の各種成形方法及び、これらの成形方法によって得られたシートを用いた真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の二次的成形方法が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物を単独で使用し、単層シートなどの成形体とすることもできるが、本発明の樹脂組成物はポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等との接着性に優れるので、該樹脂組成物を1つの層とした積層体として利用するとより効果的である。
【0086】
[積層体]
本発明の樹脂組成物を用いた積層体は、本発明の樹脂組成物からなる層(以下、樹脂組成物層という場合がある)を含む2層または3層以上に積層された積層体である。本発明の積層体の形状は限定されず、フィルムやシート、板状等の平面状や、パイプ状、袋状、不定形状等いずれの形状であってもよい。樹脂組成物層以外の層(以下、他の層という場合がある。)を構成する材料は限定されず、樹脂層のみならず金属層であってもよい。積層体を構成する樹脂層の材料は限定されず、例えば、本発明の樹脂組成物に用いることができるその他の樹脂として例示したものが挙げられる。また、積層体を構成する樹脂層には、本発明の樹脂組成物に用いることが出来る添加剤を含有することもできる。
【0087】
これらの中でも特に、本発明の樹脂組成物からなる層を接着層とし、後述するポリ塩化ビニル樹脂層及び/又はポリオレフィン樹脂層を有する積層体が好適である。この場合の積層体の層構成は限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂層と該接着層、及び/又は、該接着層と該ポリオレフィン樹脂層が接している積層体であることが好ましい。
【0088】
本発明の積層体を壁紙や化粧シート等の建装材に用いる場合、表面の汚染が少なく、衛生面、環境面においても好適であるポリオレフィン樹脂層を外表面側とし、本発明の樹脂組成物よりなる接着層を中間層とし、柔軟性、成形性が良好であるポリ塩化ビニル樹脂層を内側として使用する構成とすることが好ましい。この場合、ポリ塩化ビニル樹脂層側に、更に粘着層、離型層等を付与した多層構造とし、離型層を剥離して使用することができる。
【0089】
<ポリ塩化ビニル樹脂層>
積層体を構成するポリ塩化ビニル樹脂層は、少なくともポリ塩化ビニル樹脂を含有する。ポリ塩化ビニル樹脂層を構成するポリ塩化ビニル樹脂は限定されないが、塩化ビニルの単独重合体または共重合体が挙げられる。塩化ビニルに共重合可能なモノマーは限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステル、塩化ビニリデン等が挙げられる。また、部分的に架橋された樹脂であってもよい。また、ポリ塩化ビニル樹脂のポリマーブレンド物、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニリデンからなるポリマーブレンド物を用いてもよい。これらのうち、ポリ塩化ビニル樹脂層に用いるポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0090】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いるポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は限定されないが、通常、500〜6000、好ましくは800〜3000であることが望ましい。また、ポリ塩化ビニル樹脂の還元粘度(K値)は限定されないが、JIS K7367−2に準拠した値として、通常、50〜110、好ましくは60〜90であることが望ましい。
【0091】
ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法は限定されず、例えば、懸濁重合法や塊状重合法、乳化重合法等により製造することができる。また、ポリ塩化ビニル樹脂の微粒子を有機媒体に分散させたプラスチゾルや水性ラテックスであってもよい。
【0092】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いるポリ塩化ビニル樹脂は、可塑剤を含有していることが好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂に用いる可塑剤は限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソクミルフタレート、ジノニルフタレート等の炭素数1〜12のアルキル基を有するフタル酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート等の脂肪酸エステル類;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチル・トリメリテート、トリイソオクチル・トリメリテート、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチル・ピロメリテート、テトライソオクチル・ピロメリテート、ビフェニルテトラカルボン酸テトラブチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラペンチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘキシルエステル等の芳香族カルボン酸エステル類;トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の正リン酸エステル類;塩素化パラフィン;塩素化脂肪酸エステル;エポキシ化大豆油;エポキシ化あまに油;エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート;メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0093】
可塑剤を用いる場合の配合量は限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して通常1〜150重量部、好ましくは15〜120重量部、より好ましくは20〜100重量部である。可塑剤の配合量が前記下限値以上であると、本発明の積層体の柔軟性が良好となる傾向にある。一方、可塑剤の配合量が前記上限値以下であると、本発明の積層体からの可塑剤のブリードアウトが抑制され、また成形性も良好となる。
【0094】
ポリ塩化ビニル樹脂層に用いるポリ塩化ビニル樹脂は、安定剤を含有していてもよい。ポリ塩化ビニル樹脂に用いる安定剤は限定されないが、公知のポリ塩化ビニル樹脂用安定剤等の中から適宜選択することが可能であり、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ケイ酸鉛、オルトケイ酸鉛−シリカゲル共沈物、二塩基性ステアリン酸鉛、カドミウム−バリウム系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、錫系安定剤、及び、ハイドロタルサイト等のマグネシウム、アルミニウム、ケイ素等の無機塩を主成分とした安定剤等が挙げられる。これらの安定剤は、1種の化合物のみを用いても、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0095】
安定剤を用いる場合の配合量は限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部である。安定剤が上記範囲で配合されていると、熱安定性や成形性が良好となる傾向にある。
【0096】
<ポリオレフィン樹脂層>
積層体を構成するポリオレフィン樹脂層は、少なくともポリオレフィン樹脂を含有する。ポリオレフィン樹脂層に使用することができるポリオレフィン樹脂は限定されず、成分(D)の変性前のポリオレフィン樹脂として例示した樹脂などを挙げることができる。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることもできる。これらのポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0097】
ポリオレフィン樹脂層に好適なポリオレフィン樹脂は、本発明の積層体の用途および要求特性に応じて異なるが、建装材用に用いる場合は、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂が好適である。ポリエチレン系樹脂としては、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体がより好ましく、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンとエチレン或いは炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。
特に、本発明の樹脂組成物は、前述の成分(B)を含むことによりポリプロピレン系樹脂に対する接着性が特に良好となるため、ポリオレフィン樹脂層はプロピレン系樹脂層であることが好ましい。
【0098】
ポリオレフィン樹脂層に使用するポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分、さらに好ましくは1.0〜60g/10分の範囲のものが好適である。MFRが上記範囲内であれば、積層体の成形性が良好となる傾向がある。ここで、MFRは、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂またはポリ1−ブテン系樹脂である場合は190℃、荷重21.2Nでの値を意味し、ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合は230℃、荷重21.2Nでの値を意味する。
【0099】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造する方法は限定されず、従来公知の種々の手法を採用することが出来る。特に、本発明の樹脂組成物は接着性が良好であるため、有機溶剤を用いたドライラミネーション等を行わなくとも、以下のような成形方法によって良好な接着性を有する積層体とすることができる。具体的には、例えば、押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層して成形する共押出法によって、インフレーションフィルム、T−ダイフィルム、シート、パイプ等とする方法や、溶融した個々の樹脂を同一金型内にタイムラグを付けてインジェクションする、共インジェクション成形等が挙げられる。また、各層のうちのいずれか1層を構成する樹脂フィルムを予め成形しておき、これに他の層を溶融押出する押出ラミネート成形も採用することができる。更には、予め各層を構成する樹脂フィルムを成形しておき、これら各層に熱をかけて融着することで積層体とすることも可能である。
【0100】
また、本発明の積層体は、上記のような成形法にて積層体を得た後、これを延伸することで延伸積層体とすることもできる。延伸積層体は、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に延伸積層体を加熱することによって応力が開放されて収縮する性質をもつため、シュリンクフィルムとして用いることができる。更には、これらを真空成形、圧空成形等の二次加工を経て、絞り成形容器等とすることもできる。
【0101】
本発明の積層体の厚み(総厚み)は限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、通常30〜500μmであり、さらには40〜400μmであることが好ましく、特には50〜300μmであることが好ましい。なお、後述の実施例では、接着強度の評価のために、上記上限よりも厚い積層体としている。
【0102】
本発明の積層体における樹脂組成物層(接着層)の厚みは限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、総厚みに対し通常1%以上、好ましくは5%以上であり、通常20%以下、好ましくは10%以下であることが望ましい。樹脂組成物層の厚みが前記下限値以上であれば、接着性が良好となり、前記上限値以下であれば、フィルム強度が向上する傾向にある。
【0103】
[用途]
本発明の樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等に対する接着性が良好であるため、得られる積層体は、壁紙や化粧シート等の建装材として好適に用いることができるほか、各種成形品の保護フィルム、防汚フィルム、包装材料等に広く適用することができる。これらの中で、特に壁紙として好適に用いることができる。本発明の積層体を壁紙として用いる場合は、更に粘着層や基材層、防汚層、離型層等を設けてもよい。また、エンボス加工等の物理的な処理をしてもよく、この場合も、良好な層間接着性を維持することができる。更に、本発明の樹脂組成物及び積層体は自動車内装材にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0105】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は、次の通りである。
【0106】
<成分(A)>
(A−1)
アクリル系熱可塑性エラストマー
株式会社クラレ製「クラリティ(登録商標) LA4285」(ハードセグメント:メタクリル酸メチルの重合体ブロック(50重量%)、ソフトセグメント:アクリル酸n−ブチルの重合体ブロック(50重量%)、重量平均分子量(Mw):58,000、分子量分布(Mw/Mn):1.13、ガラス転移温度(Tg):141℃、29℃、MFR:1.5g/10分(190℃、21.2N)(ISO 1133))、比重:1.11(ISO 1183)、デュロA硬度:46(ISO 7619))
【0107】
<成分(B)>
(B−1)
プロピレン系エラストマー
三井化学株式会社製 「タフマー(登録商標)PN−2070」(密度(ASTM D1505):867kg/m、MFR:7.0g/10分(230℃、21.2N)(JIS K7210(1990)、融点140℃)
【0108】
<成分(C)>
(C−1)
エチレン・酢酸ビニル共重合体
三井・デュポンポリケミカル株式会社製 「エバフレックス(登録商標)V523」(酢酸ビニル含有量:33重量%、MFR:14g/10分(190℃、21.2N)(JIS K7210(1990)、密度:0.960g/cm、融点:63℃)
(C−2)
エチレン・酢酸ビニル共重合体
三井・デュポンポリケミカル株式会社製 「エバフレックス(登録商標)EV170」(酢酸ビニル含有量:33重量%、MFR:1g/10分(190℃、21.2N)(JIS K7210(1990)、密度:0.960g/cm、融点:62℃)
(C−3)
エチレン・酢酸ビニル共重合体
三井・デュポンポリケミカル株式会社製 「エバフレックス(登録商標)V5274」(酢酸ビニル含有量:17重量%、MFR:0.8g/10分(190℃、21.2N)(JIS K7210(1990)、密度:0.940g/cm、融点:89℃)
【0109】
<成分(D)>
(D−1)
メタロセン系触媒で重合した線状低密度ポリエチレンと、無水マレイン酸及び有機過酸化物とを押出機にて溶融混練して得られた、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性率:0.59重量%、MFR:8.8g/10分(190℃、21.2N)
【0110】
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
<評価用サンプル作製>
各原料成分を表−1に示す配合割合で用い、超小型混練機及び成形機を用い、180〜200℃で混練し、厚さ1mmの硬質ポリ塩化ビニル樹脂シート(三菱化学社製 スミコンVM(登録商標)「3615G」を190℃で圧縮成形して得られたもの)、厚さ300μmのポリプロピレン樹脂フィルム(日本ポリプロピレン社製 ノバテック(登録商標)「FY6」を240℃でフィルム成形して得られたもの)を金型に設置し、インサートインジェクションを行うことで、硬質ポリ塩化ビニル樹脂シートとポリプロピレン樹脂フィルムが、それぞれ厚さ3mm及び3.9mmの各樹脂組成物の接着層で一体化された積層シートの評価用サンプル1(10mm×800mm)を作製した。
【0111】
[評価方法]
<接着強度>
実施例1〜4及び比較例1〜4の評価用サンプルをJIS K6854に準拠して、23℃、60℃、80℃の各温度にて、100mm/分の速度でTピール剥離試験を行った。
Tピール剥離試験の剥離強度を接着強度として表−1に示した。
なお、表中の評価結果のうち「対PVC」、「対PP」は、それぞれ硬質ポリ塩化ビニル樹脂シート、ポリプロピレン樹脂フィルムと樹脂組成物層(接着層)との接着強度を意味する。
【0112】
【表1】
【0113】
表−1より、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む本発明の樹脂組成物を用いたものは、60℃以上の高温雰囲気下においてもポリ塩化ビニル樹脂との接着強度が良好であることがわかる。
【0114】
これに対して、成分(A)のみで、ポリプロピレン樹脂に対する接着性を担う成分である成分(B)、ポリ塩化ビニル樹脂との接着性に寄与する成分である成分(C)を含まない樹脂組成物を用いた比較例1では、23℃の雰囲気下において、ポリ塩化ビニル樹脂ともポリプロピレン樹脂とも良好な接着強度が発現しなかった。
また、成分(A)、成分(B)のみで、成分(C)を含まない比較例2や成分(A)〜成分(C)を含んでいるが、成分(B)の配合量が少ない樹脂組成物を用いた比較例4では、ポリプロピレン樹脂との良好な接着強度が発現しなかった。更に、成分(A)〜成分(C)を含んでいるが、成分(B)の配合量が多い樹脂組成物を用いた比較例3では、ポリ塩化ビニル樹脂との良好な接着強度が発現しなかった。