(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排出口における被乾燥物の含水量を監視する含水量センサと、前記含水量に応じて、前記投入口に投入される被乾燥物の量又は前記乾燥室に送給される流動化ガスの量の少なくとも一方を制御する制御装置を備えた、請求項1又は2に記載の流動層乾燥機を用いた流動層乾燥システム。
前記排出口における被乾燥物の含水量を監視する含水量センサと、前記含水量に応じて、前記投入口に投入される被乾燥物の量又は前記乾燥室に送給される流動化ガスの量若しくは前記伝熱管に送給される熱媒体の量の少なくとも一つを制御する制御装置を備えた、請求項3に記載の流動層乾燥機を用いた流動層乾燥システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1〜
図5は本発明の実施による流動層乾燥機及びこれを用いた流動層乾燥システムの形態の一例を示している。
図1は本実施例の流動層乾燥システムの全体構成を示しており、流動層乾燥機1は、乾燥炉2内に画成した乾燥室3に、コンベヤの終端にホッパを備えた投入装置4から投入口5を介して褐炭等の被乾燥物Cを投入し、該被乾燥物Cを流動させつつ乾燥室3内を移動させる過程で水分を除去し、排出口6から取り出した被乾燥物Cをバーナ7へ供給するようになっている。
【0017】
乾燥炉2は、
図2に示す如き略円筒形状に形成されており、その内部には平面視で渦巻状に区画された通路が形成され、この通路が乾燥室3を構成している。渦巻状の乾燥室3は、中央側を上流、周縁側を下流とし、乾燥炉2中央部の上面に開口された投入口5から投入された被乾燥物Cを、平面視で時計回りに渦巻状に移動させ、周縁部(
図2では右側)に備えた排出口6から排出するようになっている。乾燥室3の床面8は、上流から下流に向かって下り勾配をなしており、投入口5の直下において最も高く、排出口6の位置で最も低く設定されている。床面8は、乾燥室3のなす渦巻状の通路に沿って、例えば3°以上30°以下の滑らかな勾配をなしている。
【0018】
床面8はまた、多数の穴を備えたガス分散板として構成されており、この床面8により乾燥室3の下に画成された乾燥炉2内の空間は、乾燥室3に流動化ガスを送給するための送風箱9として構成されている。そして、この送風箱9から乾燥室3へ床面8を介して流動化ガスを送り込み、乾燥室3内で被乾燥物Cと共に流動層Fを形成するようになっている。
【0019】
本実施例では、流動化ガスとして、乾燥室3の形成する通路の上流側に送給される第一の流動化ガスと、下流側に送給される第二の流動化ガスの二種類の流動化ガスを用いる。第一の流動化ガスとしては、加熱した水蒸気Wと用い、第二の流動化ガスとしては、空気Aを用いている。尚、第一及び第二の流動化ガスとしては、ここに挙げた水蒸気W及び空気Aのほか、種々の気体を用いることができ、例えば、第二の流動化ガスとしては、窒素や二酸化炭素といった不活性ガスを用いることができる。ただし、費用面からは空気を用いることが最も好適であると考えられる。また、第一の流動化ガスとしても、空気や窒素、二酸化炭素等を用いることが可能であるが、後述する排気ライン13から排出される気体から潜熱を回収して利用する場合には、効率の良い潜熱のためには水蒸気Wを用いることが好適である。
【0020】
被乾燥物Cの通路である乾燥室3は、仕切板10によって複数に区画されている。本実施例では、
図3に示す如く、平面視で乾燥炉2の半径方向に一直線に配列した計3枚の仕切板10により、渦巻状の乾燥室3は上流側から順に第一乾燥室3a、第二乾燥室3b、第三乾燥室3cの3つに区切られている。各仕切板10は、通路である乾燥室3を完全に閉塞してはおらず、上下に被乾燥物Cを通過させるための隙間が空けられている。
【0021】
送風箱9は、
図2及び
図4、
図5に示す如く、隔壁18により第一の送風箱9aと第二の送風箱9bとに分割されている。この隔壁18は、周方向に延びる隔壁18aと径方向に延びる隔壁18bとにより平面視で閉断面をなしており、周方向の隔壁18a、及び径方向の隔壁18bは、床面8を介して送風箱9の直上に位置する第二乾燥室3bと第三乾燥室3cとの境界に対応した位置に配置されている。すなわち、周方向の隔壁18aは第二乾燥室3bと第三乾燥室3cの間を径方向に隔てる渦巻状の壁の直下に位置し、径方向の隔壁18bは、第二乾燥室3bと第三乾燥室3cの間を周方向に隔てる仕切板10の直下に位置している。こうして、送風箱9は、平面視で中心側に位置して第一乾燥室3a及び第二乾燥室3bに第一の流動化ガスを送給する第一の送風箱9aと、周縁側に位置して第三乾燥室3c(下流側の乾燥室3)へ第二の流動化ガスを送給する第二の送風箱9bとに分割される。第一の送風箱9aには、ボイラのタービン等である加熱装置11(
図1参照)にて加熱された水蒸気Wが供給され、該水蒸気Wは第一の流動化ガスとして第一の送風箱9aから床面8を介して第一乾燥室3aと第二乾燥室3bへ送り込まれ、被乾燥物Cと共に流動層Fを形成する。一方、第二の送風箱9bには第二の流動化ガスとして空気Aが供給され、ここから床面8を介して第三乾燥室3cへ送り込まれ、被乾燥物Cと共に流動層Fを形成するようになっている。
【0022】
また、
図2〜
図5に示す如く、上流側の乾燥室3(第一乾燥室3a、第二乾燥室3b、)には、加熱装置11(
図1参照)から送られる水蒸気Wを内部に流通させる伝熱管12が備えられており、乾燥室3内を加熱するようになっている。すなわち、加熱装置11で加熱される水蒸気Wは、乾燥室3内で被乾燥物Cと共に流動層Fを形成する役割のほか、熱媒体として流動層Fを加熱する役割をも担っている。伝熱管12は、第一乾燥室3a内に床面8を貫通して下方から入り込み、上下に蛇行しながら通路に沿って下流へ向かって延びた後、仕切板10を迂回して第二乾燥室3bに入り込み、さらに蛇行しながら下流へ向かって延びた後、再び床面8を貫通して下方へ抜けるように配されている。このように、伝熱管12は乾燥室3内の空間を蛇行することで、流動層Fとの接触面積を大きく取って熱媒体の熱を流動層Fに効率良く伝達するようになっている。伝熱管12を通過した熱媒体としての水蒸気Wは加熱装置11に戻され(
図1参照)、再度加熱されて伝熱管12ないし第一の送風箱9aに送られる。尚、本実施例では第一乾燥室3aから第二乾燥室3bにわたって伝熱管12を備えているが、
図2中では説明の都合上、第一乾燥室3a内の伝熱管12のみを図示している。また、
図1中に示す伝熱管12は、実際の形状を正確に反映したものではなく、伝熱管12の大まかな配置を概略的に示すものである。
【0023】
乾燥炉2上部の適宜位置には排気ライン13が備えられており、乾燥室3内に流動化ガスとして送り込まれた水蒸気Wや空気Aを含む気体は、この排気ライン13から適宜排出されるようになっている。
【0024】
図1に示す如く、排出口6からバーナ7へ被乾燥物Cを供給するラインには含水量センサ14が備えられており、排出口6から排出される被乾燥物C中の含水量を監視するようになっている。含水量センサ14で検出された被乾燥物Cの含水量は、含水量信号14aとして制御装置15に入力される。
【0025】
制御装置15は、流動層乾燥機1の運転を監視し制御する装置であり、本実施例の場合、さらに第一の送風箱9a及び伝熱管12に供給される水蒸気Wの量や、投入口5から投入される被乾燥物Cの量をも制御するようになっている。
【0026】
すなわち、加熱装置11からは水蒸気Wが加熱されて第一の送風箱9aないし伝熱管12にそれぞれ供給されるようになっているが、第一の送風箱9a及び伝熱管12に水蒸気Wを供給するラインには、それぞれ流動化ガス供給バルブ16及び熱媒体供給バルブ17が備えられている。そして、制御装置15は、この流動化ガス供給バルブ16及び熱媒体供給バルブ17の開度をそれぞれ流動化ガス制御信号16a又は熱媒体制御信号17aの入力により操作し、第一の送風箱9aや伝熱管12に流動化ガスないし熱媒体として供給される水蒸気Wの量を制御するようになっている。
【0027】
また、投入口5にはコンベヤやホッパを備えた投入装置4から被乾燥物Cが投入されるが、制御装置15は、投入量信号4aの入力により、例えば投入装置4を構成するコンベヤの運搬速度を制御し、乾燥室3へ投入される被乾燥物Cの量を制御するようになっている。
【0028】
尚、流動層乾燥機1を含む流動層乾燥システムの全体構成は、ここに示した例に限定されない。例えば、排気ライン13から回収した気体は、集塵機にて煤等の固体分を除いた後、加圧して熱媒体又は流動化ガスとして伝熱管12や送風箱9に送り込み、回収した水蒸気Wに含まれる潜熱を流動層Fの加熱に再利用するよう構成することもできる。また例えば、伝熱管12内を流通する水蒸気W中に発生した凝縮水を回収し、残った気体分を流動化ガスとして送風箱9に送り込むよう構成することもできる。その他、流動化ガスや熱媒体の流路構成は適宜変更し得る。
【0029】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0030】
褐炭等である被乾燥物Cは、図示しないミル等により適当な大きさの粒状に粉砕された後、投入装置4を介して投入口5から第一乾燥室3aへ投入される(
図1及び
図2、
図5参照)。第一乾燥室3aへ投入された被乾燥物Cは、第一の送風箱9aからガス分散板である床面8を介して送給される流動化ガスとしての水蒸気Wと共に流動層Fを形成し、渦巻状の通路の一部として形成された第一乾燥室3a内を下流へ向かう。床面8は、上述の如く下流へ向かって下り勾配をなしているため、流動層Fは重力に従って自動的に床面8上を下流へ移動する。
【0031】
ここで、床面8の勾配は、被乾燥物Cの粒径や密度、粘性といった物性や、これによる乾燥室3内での流動のしやすさ、さらに乾燥炉2の性能や乾燥室3の寸法その他の条件に合わせ、被乾燥物Cが乾燥室3内をスムーズに移動し、且つ投入口5から排出口6までの移動の過程で十分に水分を除去されるよう、適宜設定すれば良い。
【0032】
流動層Fは、第一乾燥室3a内を移動する間、第一の流動化ガスとして送り込まれる水蒸気Wの熱により、被乾燥物Cに含まれる水分を水蒸気として放出していく。これに加え、流動層Fは伝熱管12内を流通する熱媒体としての水蒸気Wとも熱交換を行い、この熱によっても水分が放出される。放出された水蒸気は、乾燥室3上方の排気ライン13から適宜排出される。
【0033】
第一乾燥室3aとその下流側の第二乾燥室3bとの間は仕切板10によって隔てられているが、仕切板10の上下には隙間が空けられているので、被乾燥物Cを含む流動層Fは仕切板10の下側を潜るか、仕切板10の上側を乗り越えて第二乾燥室3bに流入する。こうすることで、第一乾燥室3a内に形成された流動層Fは大部分が第一乾燥室3a内に留まりつつ、一部ずつ第二乾燥室3bへ移動するようになっており、被乾燥物Cが十分に水分を除去されないまま速やかに下流へ流されていくことを防止するようになっている。すなわち、仕切板10は第一乾燥室3aから第二乾燥室3bへの流動層Fの移動を遮りつつ部分的に許容し、流動層Fの移動の速さを制御する邪魔板として働く。
【0034】
仕切板10は、ここで説明した以外にも種々の構成を取り得る。例えば、本実施例では仕切板10の枚数を3枚としているが、乾燥炉2の大きさや性能を考慮してこれより多くしても良いし、少なくすることもできる。また、本実施例では渦巻状の通路をなす乾燥室3に対し、3枚の仕切板10を平面視で半径方向に一直線に配置しており、通路の長さは下流側に位置する乾燥室3ほど長くなっているが、この配置を変更し、例えば各乾燥室3の長さが等しくなるように仕切板10を配しても良い。また、本実施例では仕切板10の上下に開口を備えているが、この上下の開口の大きさないし高さは適宜変更でき、例えば、被乾燥物Cとして粒径の大きな物体を扱う場合には、詰まり防止のために仕切板10の下側の開口を大きくする等の調整を加えることができる。あるいは、例えば最も上流に位置する仕切板10は下側にのみ開口を備え、その下流に位置する仕切板10は上側にのみ開口を備え、さらにその下流に位置する仕切板10は下側にのみ開口を備えるようにして、流動層Fが乾燥室3内を互い違いに上下に蛇行しながら移動するよう、仕切板10により流路を構成することもできる。その他、被乾燥物Cの性質や、乾燥室3の寸法等に応じ、仕切板10の枚数や配置は床面8の勾配と共に適宜設定すべきである。
【0035】
第二乾燥室3bへ移動した流動層Fは、さらに第一の流動化ガスとしての水蒸気Wを供給され、また伝熱管12を介して加熱されつつ、渦巻状の通路に沿って下流へ向かい、その過程で水分を除去されていく。そして、仕切板10を越えて下流側の乾燥室3にあたる第三乾燥室3cに到達すると、供給される流動化ガスがここで第一の流動化ガスである水蒸気Wから第二の流動化ガスである空気Aに切り替わる。また、この第三乾燥室3cには伝熱管12が備えられておらず、熱媒体としての水蒸気Wによる加熱が行われない。被乾燥物Cと水蒸気Wに加えて空気Aを含む流動層Fは、第三乾燥室3c内を排出口6に向かって移動する間、水分を放出しながら温度を低下させていく。この間、流動層Fを構成する流動化ガスを徐々に空気Aに置き換えつつ、ゆっくりと温度を低下させていくことで、飽和水蒸気圧を下げながら流動層F中の水分を除去していくことができる。
【0036】
ここで、本実施例では上流側の乾燥室3a、3bにのみ伝熱管12を備えた構成としているが、乾燥室3内における熱効率その他の条件に鑑みて、下流側の乾燥室3cにも加熱が必要である場合には、適宜伝熱管12を配置するようにしても良い。逆に、第二乾燥室3bにおいては伝熱管12を省略し、第一乾燥室3aにのみ伝熱管を配することもできる。また、伝熱管12は一本ではなく複数備えても良い。あるいは、例えば第一乾燥室3a、第二乾燥室3b、第三乾燥室3cの各乾燥室3毎に伝熱管12を別々に備えることもできる。その他、伝熱管12は加熱の効率や熱媒体の流通性、流動層Fとの接触性等を考慮して種々の構成を取り得る。
【0037】
制御装置15では、排出口6から排出される被乾燥物C中の含水量を含水量センサ14からの含水量信号14aにて監視し、検出される含水量に応じて流動化ガス供給バルブ16や熱媒体供給バルブ17に流動化ガス制御信号16a又は熱媒体制御信号17aを入力し、開度を制御している。また、制御装置15は、前記含水量に応じて投入装置4に供給量信号4aを入力し、被乾燥物Cの投入量を制御している。こうすることで、上流側の乾燥室3(第一乾燥室3a、第二乾燥室3b)内における流動化や加熱の状況を最適化するようになっている(
図1参照)。
【0038】
すなわち、乾燥室3内に流動化ガスないし熱媒体としての水蒸気Wを介し送り込まれる熱エネルギーは、多いほど被乾燥物Cを素早く乾燥することができるが、一方で、水蒸気Wはボイラのタービン等である加熱装置11にて加熱されることで熱エネルギーを得ており、省エネルギーの観点からは乾燥室3に加えられる熱エネルギーは被乾燥物Cに対してなるべく少ない方が良い。そこで、本実施例では、排出口6から排出される乾燥後の被乾燥物C中の含水量を常時監視し、これに応じて第一の送風箱9aや伝熱管12へ供給する水蒸気Wの量や、乾燥室3に投入する被乾燥物Cの量を調整するようにしている。つまり、含水量信号14aとして検出される含水量が所定の閾値より少なければ第一の送風箱9aや伝熱管12へ送り込む水蒸気Wの量を減少させ、あるいは乾燥室3に投入する被乾燥物Cの量を増加させる。反対に、前記含水量が別の所定の閾値より多い場合には、第一の送風箱9aや伝熱管12へ送り込む水蒸気Wの量を増加させ、あるいは乾燥室3に投入する被乾燥物Cの量を減少させる。ここで、水蒸気Wの供給量や被乾燥物Cの投入量の操作は、適宜選択し又は組み合わせて実行するよう制御装置15を構成すれば良い。すなわち、流動化ガス供給バルブ16の開度、熱媒体供給バルブ17の開度、被乾燥物Cの供給量は、前記含水量に応じていずれかのみを操作するようにしても良いし、また、状況に合わせてそれぞれを組み合わせつつ制御するようにしても良い。また、前記「所定の閾値」及び「別の所定の閾値」は、被乾燥物Cの性質や、乾燥室3の熱効率その他の条件により適宜設定される。
【0039】
以上の工程により、例えば被乾燥物Cが褐炭である場合、投入口5への投入時には70%程度の水分を含有しているが、乾燥室3を移動する間に水分が放出される結果、排出口6からの排出時には20%程度にまで含水量が低下する。また、流動層Fの温度は、投入口5付近では100℃前後の高温であるが、第二乾燥室3bでは70℃前後に低下し、さらに第三乾燥室3cへと至る過程で冷却されて排出口6付近では20℃程度の常温にまで低下する。
【0040】
ここで、本実施例の流動層乾燥機1の場合、乾燥室3は上述の如く全体として渦巻状の通路を形成しているので、乾燥室3内の温度は中央部ほど高く、周縁部へ向かうほど低くなる勾配をなしている。そして、第一乾燥室3aは径方向外側にて第二乾燥室3bと隣接し、該第二乾燥室3bは径方向外側にて第三乾燥室3cに隣接している。この構成により、乾燥炉2全体のエネルギー効率を向上している。
【0041】
すなわち、上述の如く、従来の縦長の乾燥炉では容積に対する表面積が大きいために外部空間への放熱量が多いという問題があり、特に温度の高い上流側の通路において、この問題は顕著であった。そこで、本実施例の流動層乾燥機1では、乾燥室3を渦巻状の通路として構成することで、従来の縦長の乾燥炉と比較して乾燥炉2全体の寸法を小さくすると共に容積に対して表面積を小さくし、表面からの放熱を抑えるようにしている。
【0042】
しかも、渦巻状に区画された乾燥室3では、互いに上流と下流の関係にある通路同士が隣接する関係にあるため、該隣接する乾燥室3同士の間で熱交換が行われる。したがって、第一乾燥室3aからの放熱は隣接する第二乾燥室3bにて部分的に回収し、さらに該第二乾燥室3bからの放熱は隣接する第三乾燥室3cにて部分的に回収し、被乾燥物Cからの水分の放出に利用することができる。こうして、通路の上流にて加えられた熱エネルギーの多くが外部空間へ放熱される代わりに下流の通路に伝達されるので、熱エネルギーの再利用が図られて乾燥炉2全体に供給すべき熱エネルギー量を低減することができるようになっている。
【0043】
ここで、本実施例では、渦巻状の通路をなす乾燥室3の中央部に投入口5を、周縁部に排出口6を備え、乾燥室3の中央側を上流、周縁側を下流としているが、反対に、乾燥室3の周縁部に投入口5を、中央部に排出口6を備え、乾燥室3の周縁側を上流、中央側を下流として構成することも可能である。ただし、熱効率の面からは中央側を上流とすることが好ましい。流動層乾燥機では、乾燥室の上流側は下流側と比較して高温であるため、上流側の通路を外界との接触面積の多い周縁側に配置すると、ここから外界への熱エネルギーの散逸量が大きくなってしまうからである。本実施例では、高温となる上流側の通路を中央部に、上流側より低温となる下流側の通路を周縁部に配置することで、より多くの熱エネルギーを回収し、熱効率を一層向上するようにしている。
【0044】
また、従来の流動層乾燥機では、熱の漏洩を抑えるため、乾燥室の周囲に大量の断熱材の設置をも必要としていたが、本実施例の流動層乾燥機1では、隣接する乾燥室3間では上述の如く熱エネルギーを回収することができ、ここには断熱材を設置する必要がない。したがって、断熱材の設置にかかるコストを抑えると共に乾燥炉2のさらなる小型化を図ることができる。
【0045】
尚、本実施例の流動層乾燥機1ないしこれを用いた流動層乾燥システムでは、被乾燥物Cとして褐炭に限らず、泥炭や亜瀝青炭等、他の種類の石炭を利用することもでき、また、石炭以外にバイオマス等の乾燥にも適用し得る。さらに、燃料に限らず、乾燥を必要とする種々の含水物に適用でき、その際には、被乾燥物の性質に応じて仕切板10の配置や床面8の勾配、乾燥炉2の大きさ、その他の仕様を適宜調整すべきである。
【0046】
以上のように、上記本実施例においては、平面視で渦巻状の通路をなすよう区画された乾燥室3内で被乾燥物Cと流動化ガスにより流動層Fを形成し、該流動層Fを前記乾燥室3により構成される渦巻状の通路に沿って移動させながら被乾燥物Cの水分を除去するよう構成しているので、乾燥炉2全体の寸法を小さくすると共に容積に対して表面積を小さくし、表面からの放熱を抑えることができる。また、互いに上流と下流の関係にあり且つ互いに隣接する乾燥室3同士で熱交換が行われることで、熱エネルギーの再利用が図られる。さらに、断熱材の設置にかかるコストをも抑えることができる。
【0047】
また、本実施例の流動層乾燥機1において、前記乾燥室3の床面8は、前記乾燥室3の上流から下流へ向かって下り勾配をなしているので、流動層Fを重力に従って自動的に下流へ移動させることができる。
【0048】
また、本実施例の流動層乾燥機1において、前記投入口5は、前記渦巻状の通路をなす乾燥室3の中央部に備えられ、前記排出口6は、前記渦巻状の通路をなす乾燥室3の周縁部に備えられているので、高温となる上流側の通路を中央部に、上流側より低温となる下流側の通路を周縁部に配置することで、より多くの熱エネルギーを回収し、熱効率を一層向上することができる。
【0049】
また、本実施例の流動層乾燥機1においては、前記乾燥室3に、内部に熱媒体としての水蒸気Wを流通させて流動層Fを加熱する伝熱管12を備えているので、乾燥室3内の流動層Fを加熱して被乾燥物Cを一層効率良く乾燥させることができる。
【0050】
また、本実施例の流動層乾燥機1を用いた流動層乾燥システムは、前記排出口6における被乾燥物Cの含水量を監視する含水量センサ14と、前記含水量に応じて、前記投入口5に投入される被乾燥物Cの量又は前記乾燥室3に送給される流動化ガスとしての水蒸気Wの量の少なくとも一方を制御する制御装置15を備えて構成することができ、このようにすれば、乾燥室3内における流動化や加熱の状況を最適化することができる。
【0051】
また、本実施例の流動層乾燥機1を用いた流動層乾燥システムは、前記含水量に応じて、前記伝熱管12に送給される熱媒体としての水蒸気Wの量を制御するようにも構成することができ、このようにすれば、乾燥室3内における流動化や加熱の状況を一層最適化することができる。
【0052】
したがって、上記本実施例によれば、乾燥炉表面からの放熱を抑えて乾燥に係る熱効率を向上し得る。
【0053】
尚、本発明の流動層乾燥機及びこれを用いた流動層乾燥システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。