(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の光学用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、樹脂組成物)は、所定の(A)脂環式ポリ(メタ)アクリレート(以下、(A)成分)、所定の(B)アクリル共重合体(以下、(B)成分)、及び所定の(C)ポリ(メタ)アクリレート(以下、(C)成分)、並びに必要に応じて光重合開始剤(D)(以下、(D)成分)及び/又は有機溶剤(E)(以下、(E)成分)を含む。
【0019】
(A)成分は、所定の(a1)脂環式モノマー(以下、(a1)成分)及び所定の(a2)ウレタンポリ(メタ)アクリレート(以下、(a2)成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0020】
(a1)成分は、脂環式ポリ(メタ)アクリレートであって、(a1)少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも二環を含む脂環部分を有し、かつ該脂環部分のうち少なくとも二環が2個以上の原子を共有していることを特徴とする脂環式モノマーであり、芳香環は有しない。
【0021】
(a1)成分を用いることで、本発明の樹脂組成物は、ベースフィルム、特にTACフィルムの表面に1層のみであっても硬度及び低透湿性に優れた硬化塗膜を形成する。一方、(a1)成分に代えてフルオレン環等の芳香族系骨格を含む(メタ)アクリレートを使用すると、硬化皮膜の耐光性が低下する。また、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートやジオキサンジグリコールジアクリレートのような非多環式(メタ)アクリレートを用いると硬化皮膜の透湿度が高くなる。また、二環以上の脂環部分を有し、かつ該脂環部分のうち少なくとも二環が2個以上の原子を共有しているような化合物であっても、(メタ)アクリロイル基が1つの場合には硬化皮膜の硬度が低下する。
【0022】
(a1)成分の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、アダマンタントリオールトリ(メタ)アクリレート、アダマンタントリメタノールトリ(メタ)アクリレートが挙げられ、一種以上を使用できる。中でも、低透湿度の点で、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートが好ましい。
【0023】
(a2)成分は、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも二環を含む脂環部分を有し、かつ該脂環部分のうち少なくとも二環が2個以上の原子を共有していることを特徴とする脂環式ポリオール、ポリイソシアネート並びに水酸基含有(メタ)アクリレート及び/又はイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、(a1)成分同様、芳香環は有しない。
【0024】
前記脂環式ポリオールの具体例としては、例えば、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、水添ジヒドロキシナフタレン等の脂環式ジオールが挙げられ、二種以上を併用できる。中でも合成の容易さの点でトリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0025】
前記ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネーや、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート及び水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられ、二種以上を併用できる。これらの中でも、特に低透湿性の点で脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0026】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレートや、グリセリンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0027】
前記イソシアネート含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタクリル酸2−(0−[1´メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等イソシアネート含有モノ(メタ)アクリレートが挙げられ、二種以上を併用できる。
【0028】
(a2)成分の製造法は特に限定されず、各種公知のポリウレタン(メタ)アクリレートの製法を採用できる。
【0029】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートを使用する場合、前記脂環式ポリオールとポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを一旦製造する。両者の使用比率は特に限定されないが、前者の水酸基のモル数と後者のイソシアネート基のモル数との比(NCO’/OH’)が通常0.5〜0.75程度となる範囲であればよい。次いで、該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと前記水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより、(a2)成分が得られる。両者の使用比率は特に限定されないが、前者のイソシアネート基のモル数と後者の水酸基のモル数との比(NCO/OH)が通常0.9〜1程度となる範囲であればよい。各反応において、温度及び反応時間は特に限定されず、通常70〜85℃程度、1〜5時間程度である。
【0030】
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートを使用する場合は、前記脂環式ポリオールとポリイソシアネートを反応させて水酸基末端ウレタンプレポリマーを一旦製造する。両者の使用比率は特に限定されないが、前者のイソシアネート基のモル数と後者の水酸基のモル数との比(OH’/NCO’)が通常0.5〜0.75程度となる範囲であればよい。次いで、該水酸基末端ウレタンプレポリマーと前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより、(a2)成分が得られる。両者の使用比率は特に限定されないが、前者の水酸基のモル数と後者のイソシアネート基のモル数との比(OH/NCO)が通常1.0〜1.1程度となる範囲であればよい。各反応において、温度及び反応時間は特に限定されず、通常70〜85℃程度、1〜5時間程度である。
【0031】
(a2)成分中の物性は特に限定されないが、通常、(メタ)アクリロイル基当量(理論値)が200〜600程度、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)が通常2000〜10000程度である。
【0032】
反応生成物(B)(以下、(B)成分)は、エポキシ基含有ビニル化合物を含む重合成分(b1)(以下、(b1)成分)の重合体及びカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物(b2)(以下、(b2)成分)の付加反応物である。
【0033】
(b1)成分のうちエポキシ基含有ビニル化合物は、ラジカル重合可能なビニル基を有する化合物であってエポキシ基及びビニル基をそれぞれ1つ有するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられ、一種以上を使用できる。中でも、硬化被膜の硬度を高める観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
(b1)成分のうちエポキシ基含有ビニル化合物以外の重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の窒素含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル化合物等が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチルは、硬化被膜の耐水性や耐熱性の点で好ましい。
【0035】
エポキシ基含有ビニル化合物とその他の重合成分の使用比率は特に限定されないが、通常、質量比で10/0〜2/8程度であり、硬化被膜の硬度と耐熱性のバランスを考慮すると好ましくは10/0〜5/5程度である。
【0036】
(b1)成分の重合体の製造方法(重合方法)としては、例えば、公知のラジカル重合法を採用すればよく、例えば、(b1)成分をラジカル重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤の存在下、加熱することにより製造することができる。また、反応溶媒として(E)成分を使用できる。
【0037】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられ、一種以上を使用できる。ラジカル重合開始剤の使用量は特に限定されず、(b1)成分100重量部に対して通常0.01〜8重量部程度である。
【0038】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン等が挙げられ、一種以上を使用できる。連鎖移動剤の使用量は特に限定されず、(b1)成分100重量部に対して通常0.01〜5重量部程度である。
【0039】
(b2)成分としては、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル化合物であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等が挙げられ、一種以上を使用できる。中でも、樹脂組成物の光硬化性の点でアクリル酸が好ましい。(b2)成分の使用量は特に限定されないが、活性エネルギー線照射後に(b2)成分を残存させない、及び、上記重合反応系のゲル化を抑制する観点から(B)成分中のエポキシ基と等モル程度とすることが好ましい。
【0040】
(b1)成分の重合体と(b2)成分との反応は、付加反応(エポキシ開環反応)であり、公知の反応条件を採用することができる。例えば、必要に応じて触媒の存在下、加熱することにより得られる。触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類;2−メチルイメダゾール等のイミダゾール類;ジブチル錫ラウレート等のラウリン酸エステル類等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体と(b2)成分の合計重量100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部程度とすることが好ましい。
【0041】
付加反応の際、必要に応じて後述の(E)成分及び重合禁止剤を用いてもよい。具体的には、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等が挙げられる。なお、重合禁止剤の使用量は特に限定されないが、得られるコーティング剤の重合性が悪化する場合があるため、重合体と(b2)成分の合計重量100重量部に対して、通常、1重量部程度以下とすることが好ましい。また、重合を防止するために、反応系中に空気を吹き込む等してもよい。
【0042】
このようにして得られた(B)成分は、(メタ)アクリロイル当量(理論値)が210〜800g/eq、水酸基価が50〜270mgKOH/g及び重量平均分子量が5,000〜50,000であることを特徴とする。
【0043】
(メタ)アクリロイル当量が210g/eqを下回ると、樹脂組成物の硬化時に収縮が生じ光学フィルムがカールする傾向にある。また、800g/eqを超えると硬化皮膜の強度が低下する傾向にある。かかる観点より、好ましくは210〜500g/eqである。
【0044】
水酸基価が50mgKOH/gを下回ると硬化皮膜の強度が不足する傾向にある。また、270mgKOH/gを超えると、樹脂組成物の硬化時に収縮が生じ光学フィルムがカールする傾向にある。かかる観点より、好ましくは110〜270mgKOH/gである。
【0045】
重量平均分子量が5,000を下回ると硬化収縮低減効果が不足する傾向にある。また、50,000を超えると樹脂組成物の安定性が不十分となる傾向にある。かかる観点より、好ましくは、8,000〜30,000である。
【0046】
化合物(C)(以下、(C)成分)は、1分子中に3つ以上、好ましくは3〜15個の(メタ)アクリロイル基を有し、(メタ)アクリロイル基当量74〜250g/eqである化合物であれば、公知のものを特に制限なく使用することができる。(C)成分を用いることで、高硬度の皮膜を形成することができるので、低透湿・高硬度・耐光性を有する光学用フィルムとして好適に使用することができる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基当量が74g/eqを下回ると、樹脂組成物の硬化時に収縮が生じ光学フィルムがカールする傾向にある。また、250g/eqを超えると得られる硬化皮膜の硬度(鉛筆硬度)が不十分となる傾向にある。かかる観点より、(メタ)アクリロイル基当量は88〜200g/eqが好ましい。
【0048】
(C)成分の具体例としては、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシポリ(メタ)アクリレートや、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアリルエーテル、クエン酸トリアリル等のモノヒドロキシポリアリルエーテルが挙げられ、一種以上を使用できる。
【0049】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の質量比は特に限定されないが、通常、(A):(B):(C)=30〜80:5〜60:15〜60であり、高硬度・低硬化収縮性を維持しながら低透湿性を両立させる観点より、好ましくは、50〜75:10〜30〜:30〜50である。
【0050】
(D)成分は、樹脂組成物を紫外線硬化させる際に必要に応じて用いることができる。具体的には、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、一種以上を使用できる。
【0051】
(D)成分の使用量も特に限定されないが、通常、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対して1〜10重量部程度である。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ、更に(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の重合成分を含めることができる。具体的には、例えば、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられ、二種以上併用できる。該重合成分の使用量は特に限定されないが、通常全固形成分中の50%以下である。
【0053】
(E)成分としては、例えば、エチルアルコール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸ブチル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0054】
(E)成分の使用量も特に限定されないが、通常、本発明の樹脂組成物の固形分重量が30〜70%程度となる範囲であればよい。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに応じて(D)成分及び/又は前記その他の重合成分を各種公知の手段で混合することにより得られる。(A)成分は、(E)成分の溶液であってもよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、顔料等の各種公知の添加剤を含めてよい。
【0057】
本発明の光学用フィルムは、ベースフィルムの少なくとも片面に本発明の樹脂組成物からなる硬化被膜を形成したものである。
【0058】
ベースフィルムとしては各種公知のものを採用できる。具体的には、例えば、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム(ポリメチルメタクリレートフィルム等)、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ABSフィルム、ASフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム等が挙げられる。ベースフィルムの厚みは特に限定されないが、通常20〜100μm程度である。
【0059】
ところで、ベースフィルムの透湿度はその膜厚に比例するが、例えば前記アクリルフィルムは一般に低透湿性とされているところ、昨今の電子製品の小型化・軽量化に伴い薄膜化することによって透湿度が50g/m
2・24h以上となることがある。そのように透湿度が50g/m
2・24h以上のベースフィルムであっても本発明の樹脂組成物でハードコートすることにより全体の透湿度を例えば200g/m
2・24h以下に低下させることができる。かかる観点より、前記ベースフィルムの透湿度は例えば50g/m
2・24h以上、好ましくは50〜750g/m
2・24hであればよい。そのようなベースフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる硬化皮膜の優れた低透湿性と相俟って、低透湿性に優れた光学フィルムを与える。
【0060】
ベースフィルムとしては、本発明の樹脂組成物からなる硬化皮膜との密着性の点でトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。特に透湿度が50g/m
2・24h以上(好ましくは50〜750g/m
2・24h)のものが好適である。
【0061】
本発明の光学フィルムは各種公知の方法で製造できる。具体的には、本発明の樹脂組成物を前記ベースフィルムの少なくとも片面に塗工し、必要に応じて乾燥させてから、活性エネルギー線を照射すればよい。また、得られたベースフィルムの非塗工面に本発明の樹脂組成物を塗工し、その上に他のベースフィルムを貼り合わせてから活性エネルギー線を照射することで積層フィルムを製造することもできる。これらフィルムはいずれも光学用フィルムとして使用可能である。
【0062】
塗工方法としては、例えばバーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0063】
塗工量は特に限定されないが、通常、乾燥後の重量が0.1〜30g/m
2程度、好ましくは1〜20g/m
2が好ましい。
【0064】
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置を使用できる。なお、光量や光源配置、搬送速度等は必要に応じて調整でき、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して搬送速度5〜50m/分程度で硬化させるのが好ましい。一方、電子線の場合には、通常10〜300kV程度の加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分程度で硬化させるのが好ましい。
【0065】
本発明の光学用フィルムは、本発明の樹脂組成物かなる硬化皮膜の一層と、ベースフィルムとを基本構成とする。該基本構成の光学用フィルムは、透湿度が200g/m
2・24h以下、好ましくは30〜150g/m
2・24hであり、偏光板保護フィルムとして好適に用いることができる。
【0066】
以下、合成例、実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、それらによって本発明の範囲が限定されないことはもとよりである。各例中、部及び%は重量基準である。
【0067】
((メタ)アクリロイル基当量)
以下の式による計算値。
[数1]
((メタ)アクリル基当量)=(1分子の分子量)/(1分子中に存在する(メタ)アクリロイル基の数)
【0068】
(水酸基価)
以下の式による計算値。
[数2]
(水酸基価)=(水酸化カリウム分子量:56100)/(水酸基当量)
(水酸基当量)=(1分子の分子量)/(1分子中に存在する水酸基の数)
【0069】
(重量平均分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名「HLC−8220」、カラム:東ソー(株)製、商品名「TSKgel superHZ2000」、「TSKgel superHZM−M」による測定値。
【0070】
<(a2)成分の合成>
合成例1
撹拌装置、冷却管、滴下ロートを備えた反応容器に、水添キシレンジイソシアネート131部、オクチル酸スズ0.1部を仕込み、70℃になるように昇温した。次いで、あらかじめトリシクロデカンジメタノール66部とMIBK120部の混合溶液を仕込んだ滴下ロートより、1時間かけて系内に滴下した。1時間保温した後、40℃まで冷却し、2−ヒドロキシエチルアクリレートを82部、オクチル酸スズを0.1部仕込んだ。系内の温度を約80℃に昇温し、3時間保温した後、冷却し、反応性生物(A−1)の溶液を得た。
【0071】
合成例2
撹拌装置、冷却管、滴下ロートを備えた反応容器に、水添キシレンジイソシアネート49部、オクチル酸スズ0.1部を仕込み、70℃になるように昇温した。次いで、あらかじめトリシクロデカンジメタノール25部とMIBK50部の混合溶液を仕込んだ滴下ロートより、1時間かけて系内に滴下した。1時間保温した後、40℃まで冷却し、ビスコート#300を125部、オクチル酸スズを0.05部仕込んだ。系内の温度を約80℃に昇温し、3時間保温した後、冷却し、反応性生物(A−2)の溶液を得た。
【0072】
<(B)成分の合成>
合成例3
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMA)250部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBK)1000部及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約116℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、AIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間かけて系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、3時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸507部、メトキノン1.9部及びトリフェニルフォスフィン5.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.3部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようMIBKを加え、反応生成物(B−1)の溶液を得た。該反応生成物(B−1)は、(メタ)アクリロイル基当量が214g/eq、水酸基価が262mgKOH/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0073】
合成例4
実施例1と同様の反応装置に、GMA125部、メチルメタクリレート(以下、MMA)125部、MIBK1000部及びAIBN7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約116℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA375部、MMA375部、AIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間かけて系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、3時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸254部、メトキノン1.9部及びトリフェニルフォスフィン5.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.3部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようMIBKを加え、反応生成物(B−2)の溶液を得た。該反応生成物(B−2)は、(メタ)アクリロイル基当量が314g/eq、水酸基価が179mgKOH/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0074】
合成例5 (B)成分の比較合成例
実施例1と同様の反応装置に、GMA25部、MMA225部、MIBK1000部及びAIBN7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約116℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA75部、MMA675部、AIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間かけて系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN 10部を仕込み、3時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸101部、メトキノン1.9部及びトリフェニルフォスフィン5.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.3部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようMIBKを加え、反応生成物(B−3)の溶液を得た。該反応生成物(B−3)は、(メタ)アクリロイル基当量が1500g/eq、水酸基価が37mgKOH/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0075】
合成例6
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA250部、MIBK 1000部及びAIBN 25部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約116℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、AIBN75部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間かけて系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、3時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸507部、メトキノン1.9部及びトリフェニルフォスフィン5.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.3部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようMIBKを加え、反応生成物(B−4)の溶液を得た。該反応生成物(B−4)は、(メタ)アクリロイル基当量が214g/eq、水酸基価が262mgKOH/g、重量平均分子量が4,900であった。
【0076】
合成例7
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に、2−イソシアナトエチルアクリレート141部、オクチル酸スズ0.1部、(B−1)成分428部を仕込んだ後、約1時間かけて、系内の温度を約80℃に昇温した。次いで、同温度において、反応系を3時間保持した後、冷却して、反応生成物(B−5)を得た。該反応生成物(B−5)は、(メタ)アクリロイル基当量が178g/eq、水酸基価が0mgKOH/g、重量平均分子量が23,000であった。
【0077】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
(A)成分としてライトアクリレートDCP−A(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 共栄社化学(株)製)を50部、(B)成分として合成例1のB−1成分を20部、(C)成分としてビスコート#300(ペンタエリスリトールトリアクリレート 大阪有機化学工業(株)製)を30部、及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(BASF(株)製、商品名「IRGACURE184」、以下HCPKという)を5部、を固形分割合で配合し、メチルエチルケトン(MEK)で希釈して、不揮発分50%の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0078】
実施例2〜6、比較例1〜13
(A)〜(C)成分の種類と配合量を、表1記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不揮発分50%の活性エネルギー線硬化型組成物を調製し、各組成物の硬化物の透湿度、鉛筆硬度、フィルムカール並びに耐光性を評価した。
【0079】
<硬化被膜の作製>
ベースフィルムとしての前記80μm膜厚のトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製、商品名「FT TD80ULM」、透湿度:500g/m
2・24h)上に、表1に記載の実施例1に係る樹脂組成物を、硬化後の被膜の膜厚が10μmとなるように#16バーコーターにて塗布し、80℃で1分乾燥させた。次いで、得られたフィルムを紫外線硬化装置(製品名:UBT−080−7A/BM、(株)マルチプライ製、高圧水銀灯600mJ/cm
2))を使用し、硬化被膜を備えたプラスチックフィルムを得た。実施例2〜6、及び比較例1〜13に係る樹脂組成物についても同様にフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0080】
<硬化被膜の評価>
(1)透湿度
表1に記載の実施例1に係るプラスチックフィルムについて、JIS Z0208に準じ、フィルム全体の透湿度を評価した。他の実施例及び比較例に係るプラスチックフィルムについても同様にした。結果を表1に示す。
【0081】
(2)鉛筆硬度
表1に記載の実施例1に係るプラスチックフィルムについて、JIS K5600−5−4に準じ、荷重500gの鉛筆引っかき試験により、硬化被膜の硬度を評価した。他の実施例及び比較例に係るプラスチックフィルムについても同様にして鉛筆硬度を評価した。
【0082】
(3)フィルムカール
表1に記載の実施例1に係るプラスチックフィルムについて、10cm×10cmに切り出し、プラスチックフィルムが筒状(フィルムの端部同士が重なった状態)とならなかった場合は「○」、筒状となった場合には「×」と分類した。他の実施例及び比較例に係るプラスチックフィルムについても同様にカールの有無を評価した。
【0083】
(4)耐光性
表1に記載の実施例1に係るプラスチックフィルムについて、紫外線オートフェードメーター(商品名:紫外線オートフェードメーターU48AU スガ試験機(株)製)にて、プラスチックフィルムをカーボンアークランプで100時間露光した。試験後のプラスチックフィルムを色差計(商品名:ZE 6000 日本電色工業(株)製)の透過法で測定し、露光後のイエローインデックス値が3未満であれば「○」、3以上であれば「×」と分類した。他の実施例及び比較例に係るプラスチックフィルムについても同様に耐光性を評価した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
ライトアクリレートDCP−A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学(株)製)
IBXA:イソボロニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
アロニックスM−215:イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート(東亞合成(株)製)
OGSOL EA−0200:フルオレンアクリレート(大阪ガスケミカル(株)製)
ビスコート#300:ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
アロニックスM−400:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(東亞合成(株)製)
KAYARAD DPCA−30:ε―カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
KAYARAD DPCA−60:ε―カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
ビスコート#260:1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
IRGACURE184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(BASFジャパン(株)製)