特許第6862738号(P6862738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862738
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】測位装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/50 20100101AFI20210412BHJP
   G01C 21/30 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01S19/50
   G01C21/30
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-186853(P2016-186853)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-54311(P2018-54311A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正一
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163740(JP,A)
【文献】 特開2015−053678(JP,A)
【文献】 特開平06−148307(JP,A)
【文献】 特開平05−090989(JP,A)
【文献】 特開2012−177681(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0285849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 − G01S 19/55
G01C 21/00 − G01C 21/36
G01C 23/00 − G01C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌のキャビン内に配設されたGPSアンテナを介して、複数のGPS衛星から送信される測距信号を受信する測位装置であって、
前記測距信号に基づいて、前記車輌の位置を示す測位点を算出する測位部と、
前記車輌が走行している方向又は前記測距信号の信号強度に基づいて、前記測距信号の受信方向を特定すると共に、所定時間内に前記測位部に算出された複数の前記測位点に基づいて、複数の前記測位点それぞれの測位誤差が緯度方向及び経度方向に対して二次元正規分布すると仮定して、誤差円の中心点を設定する誤差円設定部と、
を備え、
前記誤差円設定部は、前記所定時間内に前記測位部に算出された複数の前記測位点のうち、前記測距信号の前記受信方向側に偏位する位置に算出された前記測位点のみを参照して、前記誤差円の中心点から最も遠方に存在する位置に算出された前記測位点までの距離を前記誤差円の半径として設定し、
前記GPSアンテナは、前記車輌のキャビン内において、当該GPSアンテナの指向方向が車輌前方側に向かうように配設されている、
測位装置。
【請求項2】
道路情報を含む地図データを参照し、
当該地図データと前記誤差円とに基づいて、前記車輌の位置を決定するマップマッチング部、を更に備える、
請求項に記載の測位装置。
【請求項3】
前記車輌のキャビンは、フロントガラスが直立した形状を有する、
請求項1又は2に記載の測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、複数のGPS衛星からの測距信号を利用して受信点の位置を算出するものであり、このシステムは、車輌等の移動体用のナビゲーション装置に広く利用されている。GPSにおいては、一般に、4つ以上のGPS衛星を測位に利用すれば、受信機の緯度、経度および高さを算出することができる。
【0003】
測距信号に基づく測位位置は、実際の位置に対して誤差を含んでいる。測位位置に誤差を生じさせる要因としては、例えば、衛星軌道のずれや衛星クロックのずれ等のGPS衛星側における要因、電離層遅延等の伝搬経路における要因、受信機雑音やマルチパス等の受信機側における要因等が挙げられる。
【0004】
GPSによる測位位置が、実際の位置に対してどの程度の誤差を含む可能性があるかの目安の距離を円で表したものを誤差円と称される。換言すると、誤差円の半径が小さい状態は、測位精度が高い状態であり、誤差円の半径が大きい状態は、測位精度が低い状態を表す。かかる誤差円は、例えば、車載用ナビゲーション装置において、測位位置を道路位置へマッチングさせるマップマッチング技術に用いられる。
【0005】
かかる誤差円半径を縮小するため、種々の提案がなされており、例えば、特許文献1には、GPS衛星から送信される精度情報(User Range Accuracy: URA)と、GPS衛星の配置により算出される精度低下率(Position Dilutionof Precision: PDOP)や(Horizontal DOP: HDOP)とにより誤差円半径を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−148307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、GPSアンテナは、車外に配設する場合、破損防止の処置や測位装置へのケーブル引き回し等が必要となることから、一般に、車輌のキャビン内のフロントガラスの付近に配設される。
【0008】
しかし、車輌のキャビン内にGPSアンテナを配設すると、車輌のキャビンの形状によっては、所定方向から到来する測距信号がキャビンの天板に遮蔽されるおそれがある。
【0009】
図1A図1Bは、当該問題を模式的に示す図である。図1Aは、乗用車におけるGPSアンテナ(図中のL2)の配設位置を示しており、図1Bは、トラック等の大型車輌におけるGPSアンテナ(図中のL1)の配設位置を示している。
【0010】
図1A図1Bを比較すると理解できるように、図1Aのような、フロントガラスが傾斜したキャビンの形状の場合、GPSアンテナは、キャビンの天板に遮蔽されることなく、各方位からの測距信号を受信することができる。しかしながら、図1Bのような、フロントガラスが直立したキャビンの形状の場合、車輌後方側から到来する測距信号がキャビンの天板に遮蔽されるため、GPSアンテナは、当該方向からの測距信号を受信できない状態となる。
【0011】
このように、一方からの測距信号がキャビンの天板に遮蔽されて受信できない状態となると、例えば、測位結果に偏りが生じて、誤差円が拡大してしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、車輌後方側から到来する測距信号がキャビンの天板に遮蔽されて受信できない場合にも、精度の高い誤差円を設定することを可能とする測位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決する主たる本発明は、車輌のキャビン内に配設されたGPSアンテナを介して、複数のGPS衛星から送信される測距信号を受信する測位装置であって、前記測距信号に基づいて、前記車輌の位置を示す測位点を算出する測位部と、前記測位部に算出された複数の前記測位点に基づいて誤差円の中心点を設定するとともに、前記測距信号の受信方向側に偏位する位置に算出された前記測位点を基準として前記誤差円の半径を設定する誤差円設定部と、を備える測位装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る測位装置によれば、車輌後方側から到来する測距信号がキャビンの天板に遮蔽されて受信できない場合にも、精度の高い誤差円を設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】乗用車におけるGPSアンテナの配設位置の一例を示す図
図1B】大型車輌におけるGPSアンテナの配設位置の一例を示す図
図2】第1の実施形態に係るGPS受信機の構成の一例を示す図
図3】第1の実施形態に係る測位装置の動作を示すフローチャート
図4A】比較例に係る誤差円の算出方法について説明する図
図4B】第1の実施形態に係る誤差円の算出方法について説明する図
図5】第2の実施形態に係るGPSアンテナの配設状態の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図2を参照して、本実施形態に係るGPS受信機1の構成の一例について説明する。本実施形態に係るGPS受信機1は、例えば、図1Bを参照して上記したように、大型車輌に搭載され、GPSアンテナ10が車輌のキャビン内のフロントガラスの位置に配設された状態となっているものとする。
【0017】
図2は、本実施形態に係るGPS受信機1の構成の一例を示す図である。
【0018】
本実施形態に係るGPS受信機1は、GPSアンテナ10、受信部20、測位装置30を備えている。
【0019】
GPSアンテナ10は、複数のGPS衛星それぞれから送信される測距信号を受信し、受信部20に送出する。GPSアンテナ10は、任意の方式のものを利用することが可能であり、例えば、パッチアンテナが用いられる。
【0020】
尚、各GPS衛星から送信される測距信号は、所定周波数からなる搬送波(例えば、GPSのL1波であれば1575.42MHz等)を、GPS衛星毎に設定されたPNコードによりスペクトル拡散するとともに、航法メッセージにより位相変調した電波である。
【0021】
測距信号には、当該GPS衛星のPNコード、当該GPS衛星の軌道情報、当該GPS衛星の位置、測距信号を送信した時刻情報、衛星時計の補正データ、電離層補正データ等が含まれる。
【0022】
受信部20は、RF部、AD変換部及び復調部を含んで構成される。RF部は、GPSアンテナ10から出力される測距信号と局部発振器で生成する信号とを混合して、当該測距信号の周波数を中間周波数に変換する。AD変換部は、RF部から取得した測距信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。復調部は、AD変換部から取得した測距信号をPNコードに基づいて自己相関処理を行うとともに、データ復調する。受信部20は、このようにして復調した測距信号を測位装置30へ出力する。
【0023】
測位装置30は、測距信号に基づいて、車輌の位置を測位するとともに、当該測位結果の誤差円を算出する。測位装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力ポート、出力ポート等を含んで構成されている。
【0024】
測位装置30は、測位部31、誤差円設定部32、マップマッチング部33を備えている。
【0025】
尚、測位部31、誤差円設定部32、マップマッチング部33は、例えば、CPUがROM、RAM等に記憶された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、当該機能は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路によっても実現できることは勿論である。
【0026】
測位部31は、複数のGPS衛星それぞれから送信される測距信号に基づいて、車輌の位置を測位する。尚、以下では、測位部31が算出した測位位置を「測位点」と称し、後述するマップマッチング部33が決定する「車輌の位置」と区別して説明する。
【0027】
誤差円設定部32は、所定時間内(例えば、数秒の間)に算出された複数の測位点に基づいて、誤差円を設定する。当該複数の測位点は、車輌がある地点に存在するときの、誤差を含む測位点の分布を表す。但し、誤差円設定部32は、誤差円を設定する際、車輌後方側から到来する測距信号が車輌の天板に遮蔽されることを考慮して、GPSアンテナ10が測距信号を受信する方向を基準とした半径の誤差円を設定する(図4Bを参照して後述)。
【0028】
マップマッチング部33は、誤差円設定部32に設定された誤差円と、地図データとに基づいて、最も確からしい位置を車輌の位置として決定する。尚、測位装置30のRAM等の記憶部には、緯度経度等の位置情報と関連付けて道路情報が地図データとして記憶されている。
【0029】
[測位装置の動作]
次に、図3図4を参照して、本実施形態に係る測位装置30の動作の一例を示す。
【0030】
図3は、測位装置30の動作を示すフローチャートである。尚、図3に示すフローチャートは、例えば、測位装置30がコンピュータプログラムに従って実行するものである。この動作フローは、例えば、車輌が走行しているときに、測位装置30に繰り返し実行される。
【0031】
まず、測位装置30の測位部31が、複数のGPS衛星から受信した測距信号に基づいて、測位点を算出する(ステップS1)。
【0032】
測位部31は、例えば、各GPS衛星とGPSアンテナ10の擬似距離(GPS衛星が測距信号を送信してからGPSアンテナ10で受信するまでの時間差に光速を乗じて得られる距離を表す)を基準として、三角測量の原理で測位点を算出する。
【0033】
測位部31は、例えば、各GPS衛星について、以下の式(1)を求め、その連立方程式に基づいて測位点を算出する。
(t−Δt)−(tsvi−Δtsvi
={(x−xsvi+(y−ysvi+(z−zsvi1/2/C …式(1)
但し、t:測位装置の時刻、tsvi:GPS衛星時刻、Δt:tの誤差、Δtsvi:tsviの誤差、(x,y,z):測位点、(xsvi,ysvi,zsvi):GPS衛星の位置、C:光速
【0034】
上式(1)において、擬似距離を示すt−tsvi、GPS衛星時刻tsviの誤差Δtsvi、GPS衛星位置(xsvi,ysvi,zsvi)は、各GPS衛星から送信される測距信号によって既知となる。一方、測位装置30の時刻tの誤差Δtと、測位点(x,y,z)の4個の変数は、未知数となっている。従って、測位部31は、例えば、4個のGPS衛星の連立方程式を解くことによって、一の測位点を算出することができる。
【0035】
ここで、各GPS衛星からは、測距信号が連続的に送信されており、加えて、GPSアンテナ10には、10程度のGPS衛星から測距信号が送信されている。従って、測位部31は、短時間に、複数の測位点を算出することができる。
【0036】
尚、測位部31は、測位点の分布を収束させる観点から、当該演算の際には、信号強度が閾値以下の測距信号については測位点の算出に用いない構成としたりしてもよい。測位点を算出するための演算方法は、公知の手法が種々あり、当該手法のいずれかを用いればよい。
【0037】
次に、誤差円設定部32は、上記複数の測位点に基づいて、誤差円を設定する(ステップS2、S3)。
【0038】
図4A図4Bは、誤差円の算出方法の一例について説明する図である。
【0039】
図4Aは、比較例に係る誤差円の算出方法の一例について説明する図であり、図1Aに示すように、測距信号が車輌の天板に遮蔽されないことを想定した算出方法を示している。一方、図4Bは、本実施形態に係る誤差円の算出方法の一例について説明する図であり、図1Bに示すように、測距信号が車輌の天板に遮蔽されることを想定した算出方法を示している。
【0040】
図4A図4Bにおいて、横軸は経度方向、縦軸は緯度方向を表し、縦軸と横軸が交わる中心点は、複数の測位点から推定される最も確からしい位置(ここでは、誤差円の中心点)を表す。又、図4A中において、点線R1は誤差円、ドットT1は測位点(斜線領域はドットT1の分布領域)を表す。又、図4B中において、点線R2は誤差円、実線R2aは補正後の誤差円、ドットT2は測位点(斜線領域はドットT2の分布領域)を表す。
【0041】
仮に、測距信号が車輌の天板に遮蔽されない場合、測位点T1は、図4Aに示すように、各方位で測位誤差がランダムに出現する。換言すると、測位点T1は、略円状に分布する。かかる観点から、誤差円R1の中心及び誤差円R1の半径は、通常、複数の測位点T1それぞれの測位誤差が緯度方向及び経度方向に対して、二次元正規分布すると仮定して算出される。そして、このときの誤差円R1の半径は、例えば、すべての測位点T1が誤差円R1の中に入るように、誤差円R1の中心点から最も離れた測位点T1までの距離として求められる。
【0042】
一方、測距信号が車輌の天板に遮蔽される場合、GPSアンテナ10は、車輌の後方側から到来する測距信号を受信することができない状態となり、測位点T2を算出するために利用できるGPS衛星が車輌の前方側のみに制限される(図1Bを参照)。そのため、所定方向(図4B中では左下の方向)の測位精度が悪化し、当該方向だけに測位誤差が大きい測位点T2が存在するものとなる。そのため、この際、仮に、上記図4Aと同様の演算方法で誤差円R2を算出すると、当該測位誤差が大きい測位点T2に起因して、誤差円R2の半径が大きくなってしまう。
【0043】
本発明者らは、上記問題について鋭意検討し、かかる指向特性を考慮して、測距信号が遮蔽されない方向(以下、「受信方向」と称する)側に偏位して算出された測位点を基準として誤差円の半径を設定することによって、誤差円半径を縮小することが可能であることに想到した。
【0044】
具体的には、誤差円設定部32は、まず、上記した演算方法と同様の方法で、例えば、複数の測位点それぞれの誤差が緯度経度方向に二次元正規分布すると仮定して、誤差円R2の中心点及び半径(図4B中の点線R2)を算出する(ステップS2)。この際、誤差円設定部32は、測位点T2が当該誤差円R2の中心点から遠方に広がっている方向とは反対の方向(図4B中では右上の方向)を測距信号の受信方向と特定する。
【0045】
次に、誤差円設定部32は、誤差円R2の中心点に対して受信方向側に偏位する位置に算出された測位点T2を参照し、当該測位点T2と誤差円R2の中心の距離を算出する。そして、誤差円設定部32は、算出した距離を誤差円(図4B中の実線R2a)の半径と決定して、上記で擬似的に算出した誤差円R2の半径を補正する(ステップS3)。このようにすることで、測距信号が車輌の天板に遮蔽されることによって発生する所定方向の測位誤差が大きい測位点T2を考慮することなく、誤差円半径を設定することができる。
【0046】
但し、この際の演算方法は、種々に変形できる。例えば、誤差円設定部32は、予め、補正前の誤差円と指向特性の関係を設定しておき、受信方向を特定した後は、当該指向特性に基づいて、誤差円を補正してもよい。又、誤差円設定部32は、車輌が走行している方向や測距信号の信号強度に基づいて、受信方向を特定したりしてもよい。又、誤差円設定部32は、測位誤差が大きくなっている側の端部の測位点を演算対称から除外して、再度、誤差円を算出する構成としてもよい。
【0047】
次に、マップマッチング部33は、上記ステップS3で求めた誤差円に基づいて、マップマッチング処理を行い、車輌の位置を決定する(ステップS4)。
【0048】
マップマッチング部33は、例えば、RAM等の記憶部に格納された地図データを参照し、上記で求めた誤差円を当該地図データのマップ上に重ねる。そして、マップマッチング部33は、誤差円と道路とが重なる位置で最も確からしい位置(例えば、誤差円の中心に近い位置)を車輌の位置として決定する。
【0049】
以上、本実施形態に係る測位装置30によれば、車輌のキャビンの天板によって測距信号が遮蔽される方向を考慮して、GPSアンテナ10の受信方向を基準とした半径の誤差円を設定することができる。従って、一方からの測距信号がキャビンの天板に遮蔽されて受信できない場合にも、誤差円の拡大を抑制し、精度の高い誤差円を設定することができる。これによって、例えば、マップマッチング処理においてより正確に車輌の位置を決定することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るGPS受信機1について説明する。
【0051】
本実施形態に係るGPS受信機1は、GPSアンテナ10が車輌のキャビン内において、当該GPSアンテナ10の指向方向が車輌前方側に向かうように配設されている点で、第1の実施形態と相違する。
【0052】
図5は、本実施形態に係るGPSアンテナ10の配設状態の一例を示す図である。
【0053】
GPSアンテナ10は、一般に、指向性(例えば、立体角がπ[sr]程度)を有している。そのため、仮に、当該GPSアンテナ10の指向方向が鉛直方向の上方側に向くように、GPSアンテナ10を配設した場合、キャビンの天板によって測距信号が遮蔽されていると、測位精度が一層悪化してしまう。
【0054】
この点、本実施形態では、当該GPSアンテナ10の指向方向が鉛直方向の上方側からフロント側に一定程度(例えば、30度)傾くように、GPSアンテナ10を配設している。図5では、GPSアンテナ10(図5中ではL1と示す)が車輌前方側の所定角度の範囲において測距信号に対する感度を有することを表している。これによって、車輌前方側から到来する測距信号に対する感度を高め、測位精度の悪化を抑制することができる。
【0055】
以上、本実施形態に係るGPS受信機1によれば、より精度の高い誤差円を設定することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0057】
上記実施形態では、測位装置30の一例として、測位部31、誤差円設定部32、マップマッチング部33等の機能が一のコンピュータによって実現されるものとして記載したが、複数のコンピュータによって実現されてもよいのは勿論である。例えば、複数のコンピュータが分散して演算処理を行うことによって測位部31の機能を実現してもよい。
【0058】
又、上記実施形態では、測位装置30の一例として、測位部31、誤差円設定部32、マップマッチング部33の処理を一連のフローの中で実行されるものとして示したが、これらの処理の一部が並列で実行されるものとしてもよい。
【0059】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示に係る測位装置は、トラック等の大型車輌に搭載するGPS受信機に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 GPS受信機
10 GPSアンテナ
20 受信部
30 測位装置
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5