(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、化学プラントや火力発電所等において、様々な種類のガスを含む排ガス等の被処理ガスから、気液接触を利用して特定のガスを分離、除去又は回収するガス分離装置が使用されている。例えば、二酸化炭素回収装置では、モノエタノールアミン水溶液等の吸収液に二酸化炭素を含むガスを接触させることによって二酸化炭素を吸収分離し、吸収した後の吸収液を加熱しながら気液接触させることによって二酸化炭素を気相に放出させて回収する。また、排ガスから有害ガス成分を除去するためのガス浄化装置や、混合ガスから特定ガス成分を分離するためのガス分離装置においても、気液接触を利用して吸収液による特定ガス成分の吸収が行われる。更に、高温の液体又はガスを冷却する冷却装置においても気液接触が利用されている。
【0003】
一般的に、気液接触を行う装置は、液体とガスとの接触面積を増大させるための充填材を有し、充填材表面において液体とガスとを気液接触させて、ガス中の特定ガス成分や熱を液体に吸収させる。気液接触面積の増大に有用な充填材の具体的な形態として、様々なものが提案されている。
【0004】
形状や構造が複雑な不規則充填物は、加工や装填に手間が掛かり、製造コストや作業上の手間が大幅に増加することから、大容量の処理を行う工業分野においては、簡素な構成の充填材の使用が進められている。例えば、下記特許文献1には、エキスパンドメタル板を充填材として用いたガス分離装置が記載される。
【0005】
また、下記特許文献2では、充填材上を液体が濡れ拡がる面積を増加させるように表面形状を工夫した気液接触板を用いた気液接触装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の充填材や気液接触板は、板状で比較的簡素な構造であるので、装置内への装填作業等は比較的容易である。しかし、充填材の製造加工については、手間や費用の問題が残る。又、充填材表面の形状に起因して、ガスを供給した時に流通抵抗による圧力損失が生じるため、操業時の消費エネルギーが問題となる。
【0008】
この点に関し、平板(薄層材)の使用は、充填材の製造加工コストを削減可能である。この場合、多数の鉛直な平板を並列させて、上から液体を供給し、平板間の間隙にガスを供給して、平板上を流下する液体と、間隙を通過するガスとを接触させる。このような形態では、ガスの流通抵抗による圧力損失が少なく、操業時の消費エネルギーを低く抑えることが可能である。
【0009】
しかし、平板を充填材として使用する場合、液体による充填材の濡れ不足によって気液接触面積の減少を生じ易い。つまり、平面上を鉛直に流下する液体は横方向に拡がり難いので、液体の分配状況が不均等であると、液体で濡れない面が生じて気液接触効率が低下する。このため、充填材の表面全体を十分に利用できるように工夫する必要がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑みて創案されたものであり、気液接触における圧力損失を抑制しつつ、濡れ不良を解消して良好且つ効率的な気液接触を実現可能な気液接触装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者等は、充填材の液濡れについて検討したところ、平板で構成される充填材を、特定の他の充填材と組み合わせることによって良好な気液接触を実現可能であることを見出した。
【0012】
本発明の一態様によれば、気液接触装置は、気液接触部と、前記気液接触部へ上方から液体を供給する液体供給部と、前記気液接触部へガスを導入するガス導入部とを有し、前記気液接触部は、空間を空けて並列する複数の鉛直な平板を有する主充填材と、鉛直方向から傾斜した方向に沿った間隙を形成するように並列される複数の層状部材を有し、前記主充填材の上に載置される副充填材とを有することを要旨とする。
【0013】
前記主充填材において、前記鉛直な平板間の空間を気体が鉛直方向に流通する
。
【0014】
前記気液接触部を占める副充填材の高さは、前記主充填材及び前記副充填材の高さの合計の30%以下に設定するとよく、4〜20%であると好適である。前記副充填材は、前記気液接触部の最上部と中間とに分けて配置してもよい。
【0015】
前記副充填材における前記複数の平板の水平方向の間隔は、前記主充填材における前記複数の平板の間隔より大きいとよく、前記主充填材における間隔の2〜5倍であると好適である。
【発明の効果】
【0016】
気液接触における圧力損失を抑制しつつ、良好な気液接触及び効率的な成分移行を実現できる気液接触用の充填材が得られ、操業時のエネルギー効率が良好な気液接触装置の提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。実施形態において示す寸法、材料、その他の具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、本発明を限定するものではない。尚、明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
充填材を用いた気液接触装置は、例えば、
図1のように概略的に記載することができる。気液接触装置1は、充填材2が内部に装填される容器3を有し、これらによって気液接触部10が構成される。気液接触装置1は、気液接触部10へ上方から液体を供給する液体供給部と、気液接触部へガスを導入するガス導入部とを有する。具体的には、液体供給部として、充填材2の上方に液分配器4が配置され、液分配器4に液体供給ライン5が接続される。液体供給ライン5を通じて液体Lが液分配器4へ供給され、液分配器4から充填材2へ液体Lが流下する。更に、ガス導入部として、容器3の下部にガス供給ライン6が接続され、ガス供給ライン6を通じ供給されるガスGは、気液接触装置1の底部へ導入される。供給される液体Lは、充填材2を流下する間に、充填材2中を上昇するガスGと接触する。この気液接触の間に、液体Lは、充填材2上で液膜を形成して、例えば、ガスG中の特定成分を吸収し、特定成分が除去されたガスG’は、容器3頂部に接続されるガス排出ライン7を通じて外部へ放出される。吸収液として機能した液体L’は、容器3の底部に貯留された後、底部に接続される排液ライン8を通じて外部へ排出される。
【0020】
気液接触部に関して、空間を空けて並列される複数の鉛直な長方形の平板によって充填材2を構成すると、ガスが流通する流路は鉛直方向の真っ直ぐな空間であるので、ガスの流通抵抗が少なく、ガス供給の圧力損失が小さい。但し、鉛直な平板の表面を流下する液体の流れは拡がり難く、水平方向の液の分散が生じ難い。このため、液体が均等に分配されないと、液膜が形成されない部分が生じて、濡れ面積(気液接触面積)が減少する。濡れ面積の減少を抑えるには、充填材2を構成する平板の上端に、液体を均等に分配することが肝要である。つまり、平板の上端によって構成される充填材2の水平な上面に対して極力均等に液体を分配するように、液体Lを供給することが重要である。
【0021】
他方、液体による濡れが良好である充填材として、スルーザーケムテック社製のメラパック(商品名)等の規則充填物が市販されている。このタイプの規則充填物は、鉛直に立設した複数のコルゲート板を並列させて構成されるが、使用されるコルゲート板は、稜線が鉛直方向に対して傾斜するように湾曲した層状部材である。従って、このような規則充填物におけるガスの流路、つまり、板間の間隙は、鉛直方向(流れ方向)に対して傾斜するので、水平方向の液分散性が良い。しかも、流路は真っ直ぐであるので、ガス供給における圧力損失は、不規則充填物より小さい。それでも、ガスの流路が鉛直方向から傾斜するために、充填材表面への衝突や流路の切り換わりにおける流通抵抗が生じる。従って、鉛直な平板を並列させた充填材に比べると、同じ比表面積の平板において圧力損失が大きくなる。上述のような規則充填物の水平方向の液分散性は、鉛直な平板を並列させた充填材に比べて良好であるが、更なる改善が望まれる場合には、コルゲート板自体の設計変更を伴うなど、実用的な複雑さや制限がある。
【0022】
このような状況において、本発明では、ガス供給における圧力損失は殆ど増加させずに気液接触効率を劇的に改善可能な手法を見出し、実用的に優れた気液接触装置を実現するに至った。本発明において、気液接触部を構成する充填材は、主充填材と副充填材とを有し、主充填材として、鉛直な平板が並列する充填材を用い、副充填材として、上述の規則充填物のような、傾斜した真っ直ぐな流路を有する充填材を用いる。つまり、気液接触部は、上述の二種類の充填材を組み合わせて用いて構成される。気液接触部の構成について、以下に詳細に説明する。
【0023】
図2は、気液接触部10を構成する充填材を説明するための概略図であり、主充填材21及び副充填材22が使用される。対照標準として、
図2(a)は、副充填材22のみを有する気液接触部C1を示し、
図2(b)は、主充填材21のみを有する気液接触部C2を示す。
図2(c)及び2(d)は、気液接触部10の例として、主充填材21及び副充填材22を有する気液接触部10A及び10Bを示し、これらは、気液接触部C2の主充填材21の一部を副充填材22で置換することによって得られる。
【0024】
主充填材21は、一定の空間を空けて並列する複数の鉛直な平板によって構成され、鉛直方向の真っ直ぐな流路が形成される。これに対し、副充填材22は、並列される複数の層状部材によって構成され、鉛直方向から傾斜した方向に沿った間隙が形成される。従って、主充填材21において、ガスG及び液体Lは、鉛直方向(流れ方向)に真っ直ぐ流通し、副充填材22においては、ガスG及び液体Lは、鉛直方向から傾斜した方向に真っ直ぐ流通する。気液接触部C1,C2及び10Aを比較した時、ガス流通における圧力損失は、気液接触部C1、気液接触部10A、気液接触部C2の順に減少し、気液接触効率も同様に、気液接触部C1、気液接触部10A、気液接触部C2の順に変化するものと常識的には予想される。しかし、実際には、
図2(c)の気液接触部10Aでは、気液接触部C2とさほど差がない程度に圧力損失を抑制することが可能であり、気液接触効率については、格段に向上させることが可能である。主充填材21及び副充填材22を用いた気液接触部の有効性は、
図3において明らかであり、これについては、後述の実施例において詳細に説明する。
【0025】
図2(c)の気液接触部10Aは、主充填材21と、主充填材21の上に載置される副充填材22とを有し、気液接触部10Aに供給される液体は、最上部に位置する副充填材22を通って主充填材21を流下し、ガスは、主充填材21を上昇した後に、副充填材22から上方へ放出される。気液接触効率の向上は、副充填材22が主充填材21上に載置される配置によるものであり、副充填材22の直下に位置する主充填材21への作用による。具体的には、傾斜方向に液体を流通させる副充填材22が、充填材としての機能だけでなく、主充填材21への液分配器として機能することによる効果である。鉛直な平板においては、液体を均等に供給することが気液接触面積を確保する上で重要であり、流路が傾斜する副充填材22は、並列する平板への液体供給の均等性を高めるのに好都合に作用する。つまり、この副充填材22による効果は、主充填材21が鉛直な平板である時に特有であり、この組み合わせにおいて顕著な効果である。又、圧力損失については、気液接触部10Aの充填材全体に対して副充填材22が占める割合が適正に制限されていることによって、圧力損失の増加が小さく抑制される。
【0026】
図2(d)の気液接触部10Bにおいても、高い気液接触効率と低い圧力損失とを兼ね備えることが可能である。気液接触部10Bは、気液接触部10Aと同様に、副充填材22が主充填材21上に載置され、副充填材22は、気液接触部10Bの最上部と中間とに分けて配置されている。つまり、主充填材21の途中部分にも副充填材22が組み込まれている。主充填材21の中間に位置する副充填材22も、最上部の副充填材22と同様に、液分配器と充填材の機能を兼ね備えるので、主充填材21を流下する液体が途中で再分配される。従って、気液接触部10Bの構成は、気液接触部の高さ(充填材の段数)を増加して気液接触時間を延長する場合に非常に有効であり、液体の再分配によって、濡れ不良による濡れ面積の減少を好適に防止することができる。尚、圧力損失の増加抑制は、充填材全体に対して副充填材22が占める割合を適正に制限することによるので、気液接触部10Bの構成において、副充填材22の割合が過剰にならないように配慮される。
【0027】
以下に、主充填材21及び副充填材22を用いて構成する気液接触部について具体的に説明する。気液接触部10、充填材2及び容器3の形状は、必要に応じて適宜設計変更が可能であり、様々な軸性形状から適宜選択することができる。従って、充填材2の形状は、四角柱状や円柱状に限らず、多角柱状や楕円柱状等も含む様々な柱状の形状から選択してよい。気液接触部の形状及び寸法に対応した充填材2を構成し、これを内包可能な容器3に装填して、気液接触部10が構成される。
【0028】
充填材2は、一段を構成する充填材ユニットを1単位として、複数の充填材ユニットが鉛直方向に積み上げられた多段構造に構成される。必要に応じて任意の数の充填材ユニットを用いて充填材2の段数を設定することができる。上述の主充填材21及び副充填材22を充填材ユニットとして用いて、
図2に示すような気液接触部が構成される。
【0029】
主充填材21は、鉛直な長方形の平板を並列させて構成され、上述のような様々な柱状形状に構成可能である。四角柱状の場合は、同一形状の平板を用いて主充填材21を構成可能である。円柱状の主充填材21の場合は、平板の形状は、円柱を軸方向に沿って等間隔に切断した平行な断面に対応する長方形であり、使用する平板の横幅は各々異なる。全ての平板を並べて充填材2を組み立てた状態で、これを円環状の側壁を有する容器3内に装填すれば、円柱状の主充填材21となる。
【0030】
ガスと液体とを接触させる際のガスの流通抵抗は、操業時の消費エネルギーを左右する。主充填材21における平板の厚さ及び間隔によって、充填材における単位容積当たりの濡れ面積(気液接触面積)、ガス流量及びガスの流通抵抗が変化するので、これらを考慮して、好適な流通空間になるように主充填材21の平板の数が設定される。平板の間隔は、例えば、スペーサーを介在させて固定することができる。ガス及び液体の流動を妨げないように、スペーサーの寸法及び設置位置を適宜調整すればよい。複数の平板を纏めて充填材ユニットとして一体化させるための外枠を用い、平板がスペーサーを介して並列するように外枠内に平板を組み込んで主充填材21を組立てることにより、充填材ユニットとして使用することができる。あるいは、スペーサーと平板とを溶接等によって一体化することにより、充填材ユニットとすることができる。
【0031】
副充填材22として、例えば、上述したような規則充填物等を利用可能である。このような規則充填物には、モンツ社製のモンツパック(商品名)、三冷テクノ(株)社製のテクノパック(商品名)、マツイマシン社製のMCパック(商品名)、住友重機械工業(株)社製のSFLOW(登録商標)、日本化学機械製造(株)社製のNK Pack(商品名)等も含まれる。このような市販の規則充填物は、コルゲート板を用いた副充填材22である。しかし、副充填材22は、このような市販製品に限定されず、層状部材を用いて副充填材22を構成することが可能である。層状部材として、平板又はコルゲート板を適用することができ、例えば、鉛直に立設した状態で稜線が鉛直方向に対して傾斜するように屈曲したコルゲート板が使用可能である。平板又はコルゲート板を用いて副充填材22を構成する具体例を
図4に示す。
図4(a)は、稜線が傾斜するように山形に屈折したコルゲート板23を並列させる構成の一例を示し、
図4(b)は、稜線が傾斜するように波形に湾曲したコルゲート板24を並列させる構成の一例を示す。コルゲート板23,24における稜線の傾斜角度は、副充填材22の軸方向(流れ方向、鉛直方向)に対して30°程度未満、好ましくは25°程度未満であると、流通抵抗を抑制する点で好適である。隣接するコルゲート板の稜線が互いに交差するように配置することによって、並列するコルゲート板にスペーサーを介在させずに規則的な配列を維持できる。この場合にガスが流通する流路の幅は、コルゲート板の波形湾曲の振れ幅に実質的に対応する。
【0032】
平板を用いた副充填材22は、例えば、
図4(c)のように、平板25を鉛直方向に対して傾斜させて並列させることによって構成することができる。横幅が比較的小さい平板25を用いて、傾斜する平板25を並列させた列を複数並行させて副充填材22を構成すると好適である。この際、平板が傾斜する方向が、隣接する列間で互いに反対になるように平板を配列すると、液体の分配機能の点で好適である。平板25を傾斜させて並列させた状態を固定するには、接合剤やビス等の固定具を用いた一般的な接合手法を利用することができる。例えば、平板の相互接触部分を接合して、多数の平板25を一体化することができるが、これに限定されず、必要に応じて、既存の器具や加工手段を用いて一体化すればよい。並行する線材を有する形状の網等を平板の位置決め手段として使用してもよい。これを補助的手段として用いて、平板を接合しても良い。平板を纏めて充填材ユニットとして一体化させるための外枠に網を組み込んで固定し、網の線材間のスリットに平板25を並べると、平板25は線材によって位置決めされるので、組立が容易である。
図4(c)のように平板25を並列させて充填材ユニットに組み立てることによって、副充填材22として用いることができ、容器3内に装着して気液接触部10を構成することができる。
【0033】
傾斜する平板を用いて副充填材22を構成する場合、副充填材22における複数の平板の水平方向の間隔は、主充填材21における複数の平板の間隔より大きいとよく、主充填材21における間隔の2〜5倍であると好適である。副充填材22における平板間の空間が狭いと、ガスの通気抵抗が増加し易く、空間が過剰に広いと、液体の分配に偏りが生じ易くなり、その結果、主充填材21における気液接触面積が減少して気液接触効率が低下する可能性が高くなる。
【0034】
ガスが副充填材22を流れる距離が短ければ、ガス供給における圧力損失は減少する。従って、圧力損失を低く抑える観点から、気液接触部10(充填材2)を占める副充填材22の割合を規制して、副充填材22の高さ(鉛直方向つまり流れ方向の長さ)が、主充填材21及び副充填材22の高さの合計(充填材2の全高)の30%以下になるように設定するとよく、4〜20%であると好適である。
図2(d)の気液接触部10Bのように、副充填材22を複数箇所に分けて配置する場合においても、全ての副充填材22の高さの合計が充填材2の全体の高さの30%以下になるように設定される。
【0035】
気液接触装置1において、副充填材22は、主充填材21に対して液体分配機能を発揮するので、充填材2に液体を供給するための液分配器4としては、一般的に使用されるものから適宜選択して使用することができる。つまり、分配性能が高いものを選択する必要はなく、ドリップポイントの密度(面積当たりの液体の供給点数)が30〜400点/m
2程度の一般的な液分配器を用いて好適な気液接触処理を実施できる。概して、ドリップポイントの密度が100〜300点/m
2の液分配器を利用すると良い。液体をドリップポイントから鉛直方向に供給する液分配器は、概して、液体を各ドリップポイントへ誘導し分配するための分配管を主体として構成され、分配管の各ドリップポイントに、開口、細管ノズル、誘導爪等のような液体を落下させる手段が設けられる。このような何れのタイプの液分配器も利用可能であり、液分配器に供給される液体は、分配管を通じて各ドリップポイントへ分配され、落下手段から自由落下して鉛直に流下し、充填材2の副充填材22へ供給される。
【0036】
尚、平板を用いて構成される充填材ユニットについて、充填材ユニットの段毎に平板の並列方向を変えることができる。例えば、上段の平板の並列方向が下段における並列方向と垂直になるように装填すると、安定性や液体の分配が良好である。又、必要に応じて、充填材ユニットの間に網板を介在させてもよい。
【0037】
平板を用いて構成される充填材ユニットにおいて、平板を薄くするに従って平板の強度が低下する。従って、充填材ユニットの高さ(平板の高さ)がかなり高い場合に、容積当たりの気液接触面積を大きくするために薄い平板を用いる時には、必要に応じて補強手段を用いても良い。補強手段として、例えば、平板の両側部にリブを添設したり、クリップ等を用いて支持固定することが挙げられるが、公知の手段から適宜選択して適用して良い。スペーサーの配置を工夫して補強効果を得ても良い。
【0038】
上述のような気液接触装置1において、平板で構成される充填材は、製造加工コストも低く抑えることができる。又、上述のような主充填材21及び副充填材22の組み合わせによって、流通抵抗を少なく抑えて操業費用を削減すると共に、高い気液接触効率を実現することができる。従って、大容量の処理及び高速での処理が求められる気体−液体接触装置として有用である。
【0039】
上述のような気液接触装置1によって処理されるガスGとして、例えば、化学プラントや火力発電所等の設備内で発生した廃ガス(排ガス)や反応ガスが挙げられ、屡々、二酸化炭素や、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性ガスが特定成分として処理される。ガスGから除去する特定成分に応じて、吸収液として使用する液体Lが選択され、例えば、二酸化炭素の回収除去には、環状アミン化合物やアルカノール系アミンやフェノール系アミン、アルカリ金属塩等のアルカリ剤の水溶液が屡々用いられ、硫黄酸化物の除去には、カルシウム化合物、マグネシウム化合物などのアルカリ剤の水性液が一般的に用いられる。二酸化炭素の回収において屡々用いられるモノエタノールアミン(MEA)水溶液では、二酸化炭素との反応によって、カルバミン酸塩・アミン塩(カーバメート)、炭酸塩、重炭酸塩等が生じる。
【0040】
このため、気液接触装置1を構成する各部は、上述したようなガスGの成分や液体Lに含まれる化学薬剤に対して耐性を有する素材で製造される。そのような素材として、例えば、ステンレス綱、アルミニウム、ニッケル、チタン、炭素鋼、真鍮、銅、モネル、銀、スズ、ニオブ等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等の樹脂が挙げられる。充填材及びこれを構成する平板も、少なくとも表面が、上述のような、処理するガスG及び使用する液体Lとの反応(腐食)を生じない耐食性の素材で構成される。素材は、やすりがけ、サンドブラスト処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理などの表面加工によって表面に微小な凹凸を形成して表面粗さを付与したものであっても良く、また、コーティング等による表面の改質によって、上述のような使用条件に合うように調製した素材であってもよい。平板は、厚さが均一な平板又は薄層材であり、気液接触を行う条件に応じて、好適な強度を保持し得るように素材及び厚さを適宜選択することができる。金属線を用いた金網やパンチングメタル板、エキスパンドメタル板等の網板は、単体で自立可能な程度に強度を保持しつつ重量を減少させることが可能な板材であり、液体の濡れ広がりにおいても優れた性質を示す。従って、極めて目が細かい場合には、平板と同様の取り扱いが可能であり、気液接触装置1の主充填材21を構成するために用いても良い。
【0041】
尚、上述において、気液接触装置1は、ガスG及び液体Lが対向する接触形態として説明しているが、ガスG及び液体Lを気液接触部10の上方から供給して、ガスG及び液体Lが並行する接触形態に変更することも可能である。又、気液接触装置1は、上述のような特定成分を吸収・分離・除去するための気液接触装置に限らず、種々の化学プラントのプロセスに含まれる冷却、加熱、放散等において使用される装置(冷却塔、加熱塔、放散塔(再生塔)等)に適用することも可能である。
【実施例】
【0042】
<気液接触装置の組み立て>。
ステンレス綱(SUS304)製の平板を用意し、等間隔で並列する鉛直な平板によって円柱状の充填材を構成するのに適した横幅になるように平板を切断して、充填材用の平板片を作製した。得られた平板片をスペーサーを介して並べて、外枠で固定して主充填材21(高さ:210mm)を組み立てた。又、副充填材22として、市販の規則充填物(メラパック(商品名)、スルーザーケムテック社製、高さ:210mm)を用意した。
【0043】
上述の主充填材21及び/又は副充填材22を、円環状の側壁を有する容器3内に装填して、
図2(a)、(b)又は(c)に記載されるような気液接触部C1,C2又は10Aを容器3内に構成した。気液接触部C1は、5段の副充填材22を用い、気液接触部C2は、5段の主充填材21を用い、気液接触部10Aは、1段の副充填材22と4段の主充填材21を用いて各々構成した。次に、液分配器(ドリップポイントの密度:138点/m
2)を気液接触部の上方に設置して、気液接触装置の組立を完成した。
【0044】
<二酸化炭素の吸収処理>
吸収液としてアミン水溶液を用意した。気液接触部C1,C2又は10Aを有する気液接触装置の充填材に、2m/sのガス流速でガス(常温の空気)を、3L/m
3の液ガス比(ガスの流量に対する吸収液の流量の比率)で吸収液を供給することによって定常の液及びガスの流れを形成した後、ガスに二酸化炭素を5%添加して供給を継続した。この間に、ガス圧力損失、及び、出口ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。
【0045】
気液接触部C1を有する気液接触装置における二酸化炭素の吸収性能を基準とする相対値(%)として、各気液接触装置における二酸化炭素の吸収性能を評価した。この結果を、測定された圧力損失の値(Pa/m)と共に、表1及び
図3のグラフに示す。
【0046】
(表1)
気液接触部 C1 C2 10A
圧力損失 152 95 105
二酸化炭素の吸収性能 100 126 186
【0047】
副充填材22のみで構成される気液接触部C1と、主充填材21のみで構成される気液接触部C2の比較から、この実施例における副充填材22について、ガス供給における圧力損失はかなり大きいことが判る。気液接触部C1、C2の圧力損失の値から、気液接触部10Aにおける圧力損失を算術平均によって計算すると、測定によって得られた値とほぼ同等である。これに対し、気液接触部10Aにおける吸収性能は、気液接触部C1、C2の何れよりも格段に高く、気液接触部C1、C2の値から予想可能な範囲を明らかに超えている。気液接触部10Aにおける吸収性能の向上は、最上部に載置した副充填材22による効果であり、これは、副充填材22が主充填材21に対して液分配器として作用し、液分配における均等性が向上したことによるものと見なすことができる。従って、気液接触部10Aにの充填在校生においては、副充填材22は、充填材と液分配器との役割を担っている。つまり、平板による主充填材と、流路が傾斜した副充填材との組み合わせ及びその位置関係によって、良好な気液接触効率を実現することができる。