(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862759
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】粒子生成装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/10 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
F26B17/10 A
F26B17/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-209418(P2016-209418)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71839(P2018-71839A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐々 大輔
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭62−503004(JP,A)
【文献】
特開平10−026471(JP,A)
【文献】
特開2010−078232(JP,A)
【文献】
特開2005−291530(JP,A)
【文献】
特開2007−117937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥チャンバ内で材料を溶解させたミストを下向きに噴霧し、該ミストを落下させながら乾燥させて粒子を得るブローダウン方式のスプレードライヤと、
気流が下方から上方へと通過する乾燥塔と、
前記スプレードライヤの下部と前記乾燥塔の下部を連結する連結管と、
前記乾燥塔の上部から粒子が混入した気流を排出する排出管とを備え、
前記スプレードライヤは、乾燥チャンバ内で加熱乾燥空気を旋回させることを特徴とする粒子生成装置。
【請求項2】
前記連結管には、屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粒子生成装置。
【請求項3】
前記乾燥塔には該乾燥塔内を通過する気流を加熱するヒータが取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粒子生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が極めて微細に制限された粒子を供給する粒子生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な粒子を得るための装置の一つとして、スプレードライヤ(噴霧乾燥機)が知られている。例えば特許文献1にはスプレードライヤが開示されている。特許文献1に記載のスプレードライヤは、乾燥チャンバ内で材料を溶解させたミストを下向きに噴霧し、該ミストを落下させながら乾燥させて粒子を得るブローダウン方式である。
【0003】
また製品である粒子については、特許文献1のようにサイクロンによって回収したり、特許文献2のようにバグフィルタによって回収する構成が知られている。サイクロンとバグフィルタを併用する場合には、粒径の大きな重い粒子をサイクロンによって回収し、粒径の小さい軽い粒子はバグフィルタによって回収する。また、バグフィルタは単に排気の清浄のために設置されている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−154015
【特許文献2】特開2005−089251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来の装置においては、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を得ることは難しい。従来技術の装置によれば粒径が小さい粒子はバグフィルタによって回収される粒子ということになるが、それはすなわちサイクロンによって回収されなかった粒子である。サイクロンによって回収される粒子の粒径は制御が難しく、必然的にバグフィルタで回収される粒子には粒径の大きな粒子が多数混入してしまう。
【0006】
また、バグフィルタで製品たる粒子を回収するとなると、バグフィルタを適宜交換する作業が必要となるとともに、交換する際にはスプレードライヤを停止しなければならない。また、バグフィルタから粒子を分離させる作業も必要となる。すなわち、作業が多い上に継続して粒子を供給することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を、安定的に、継続して供給しうる粒子生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる粒子生成装置の代表的な構成は、乾燥チャンバ内で材料を溶解させたミストを下向きに噴霧し、該ミストを落下させながら乾燥させて粒子を得るブローダウン方式のスプレードライヤと、気流が下方から上方へと通過する乾燥塔と、スプレードライヤの下部と乾燥塔の下部を連結する連結管と、乾燥塔の上部から粒子が混入した気流を排出する排出管とを備えていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、乾燥塔を浮遊して上昇した粒子のみを製品として供給することができる。すなわち気流の中にコロイド状態となって沈殿しない大きさの粒子のみを供給することができるため、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を、安定的に供給することができる。なお乾燥塔を上昇する気流は緩やかであることが好ましい。
【0010】
また粒子を浮遊して供給するラインはそのまま次の工程の装置に直結させることができる。したがってフィルタ交換のためにスプレードライヤを停止する必要がなく、粒子を継続して供給することができる。
【0011】
連結管には、屈曲部が設けられていることが好ましい。屈曲部は未乾燥の液滴を除去するエリミネータとして作用する。これにより乾燥塔内の液体の量を減らすことができ、小径の液滴の乾燥を促進することができる。
【0012】
スプレードライヤは、乾燥チャンバ内で乾燥空気を旋回させることが好ましい。旋回流に乗せて長時間かけて乾燥させることにより、高い効率で所望の粒径の粒子を得ることができる。
【0013】
乾燥塔には該乾燥塔内を通過する気流を加熱するヒータが取り付けられていることが好ましい。本装置で発生させる「粒子を含む空気」を加熱しておくことにより、後に別途ボイラーで発生させた「水蒸気」を混合させた際に、凝縮が発生することを極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる粒子生成装置によれば、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を、安定的に、継続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】粒子生成装置の効果について説明する図である。
【
図3】粒子生成装置の他の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は実施形態にかかる粒子生成装置の構成を説明する図である。
図1に示す粒子生成装置100は、大別してスプレードライヤ120と、連結管130と、乾燥塔140とを備えている。
【0018】
スプレードライヤ120はブローダウン方式である。乾燥チャンバ122内にはミストを噴射するノズル124と、乾燥空気を供給するブローノズル126が設置されている。コンプレッサ110で外気を圧縮し、エアドライヤ112で乾燥させた後に、フィルタ114(例えばHEPAフィルタ)で空気中の塵を除去する。こうして生成した乾燥空気を水溶液供給ライン118から供給される水溶液と混合させてノズル124に供給し、ノズル124からミストを下向きに噴射する。
【0019】
またフィルタ114で生成した乾燥空気をブローノズル126に供給する。ブローノズル126の噴射方向は角度が付けられていて、乾燥空気は乾燥チャンバ122の内部で旋回流を生成する。したがってノズル124から噴射されたミストも乾燥チャンバ122内を旋回する。
【0020】
ミストが乾燥チャンバ122内で旋回することにより、ノズル124から連結管130に向かって直行する場合よりも長い時間をかけて乾燥が行われる。これにより、高い効率で所望の粒径の粒子を得ることができる。
【0021】
連結管130は、スプレードライヤ120の下部と乾燥塔140の下部を連結する。連結管130は、スプレードライヤ120の下方から乾燥塔140の下方に至る水平管132と、水平管132から乾燥塔140へ立ち上がる垂直管134を備えている。水平管132と垂直管134の接続部に屈曲部136が形成されている。
【0022】
屈曲部136は未乾燥の液滴を除去するエリミネータとして作用する。これにより乾燥塔140内の液体の量を減らすことができ、小径の液滴の乾燥を促進することができる。
【0023】
乾燥塔140は縦向きに設置された管路であり、気流が下方から上方へと通過する。ミストは乾燥チャンバ122で乾燥が行われるのであるが、乾燥チャンバ122だけでは乾燥が完了しておらず、乾燥塔140においても乾燥が行われる。そして、乾燥塔140の上部には排出管142が取り付けられていて、排出管142から乾燥した粒子が混入した気流を排出する。
【0024】
ここで、質量の大きな粒子は、乾燥塔140を上昇することができず、下方に落下してしまう。乾燥塔140内を浮遊して上昇することができるのは、空気中にコロイド状態となって沈殿しない大きさの粒子のみである。このため、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を、安定的に製品として供給することができる。なお乾燥塔を上昇する気流は緩やか(流速が遅い)であることが好ましい。流速が速いと、本来であれば上昇できない粒子も上方に運んでしまうおそれがあるためである。
【0025】
また排出管142のように粒子を浮遊して供給するラインは、そのまま次の工程の装置に直結させることができる。すなわち、サイクロンやバグフィルタを用いて粒子を回収する必要はない。したがってフィルタ交換のためにスプレードライヤ120を停止する必要がなく、粒子を継続して供給することができる。
【0026】
図2は本実施形態にかかる粒子生成装置100の効果を説明する図であって、粒径[μm]と粒子個数濃度[個/cm
3]の関係を示すグラフである。
図2に示すように、CsI水溶液(ヨウ化セシウム水溶液)を噴霧した場合には、粒径0.1μm付近に鋭いピークが生じている。一方、純粋を噴霧した場合には粒子個数濃度がきわめて低く、ほとんどの水滴は残留しない。したがってCsI水溶液を噴霧した場合の粒子は、水滴ではなくCsIの粒子であることがわかる。このように、本発明にかかる粒子生成装置においては、粒径が極めて微細(主に1μm以下)に制限された粒子を、安定的に、継続して供給可能であることが確認された。
【0027】
図3は粒子生成装置の他の構成を説明する図である。
図1に示した粒子生成装置と比較して、フィルタ114で生成した乾燥空気を加熱するエアヒータ116が設けられている。さらにスプレードライヤ120、連結管130、および乾燥塔140には、内部を通過する気流を加熱するヒータ144が取り付けられている。
【0028】
このように、本装置で発生させる「粒子を含む空気」を加熱しておくことにより、後に別途ボイラーで発生させた「水蒸気」を混合させた際に、凝縮が発生することを極力抑えることができる。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、粒径が極めて微細に制限された粒子を供給する粒子生成装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100…粒子生成装置、110…コンプレッサ、112…エアドライヤ、114…フィルタ、116…エアヒータ、118…水溶液供給ライン、120…スプレードライヤ、122…乾燥チャンバ、124…ノズル、126…ブローノズル、130…連結管、132…水平管、134…垂直管、134a…壁面、136…屈曲部、140…乾燥塔、142…排出管、144…ヒータ