(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置の構成材料として、シリコン(Si)が用いられている。パワー半導体装置は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETに比べて電流密度は高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、パワーMOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやパワーMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。このため、パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている(例えば、下記非特許文献1参照)。
【0005】
炭化珪素は、化学的に非常に安定した半導体材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用することができる。また、炭化珪素は、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいため、オン抵抗を十分に小さくすることができる半導体材料として期待される。このような炭化珪素の特長は、例えば窒化ガリウム(GaN)などシリコンよりもバンドギャップの広い他の半導体(以下、ワイドバンドギャップ半導体とする)にも同様にあてはまる。このため、ワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、半導体装置の高耐圧化が可能となる(例えば、下記非特許文献2参照)。
【0006】
このような高耐圧半導体装置では、素子構造が形成されオン状態のときに電流が流れる活性領域だけでなく、活性領域の周囲を囲んで耐圧を保持するエッジ終端領域にも高電圧が印加され、エッジ終端領域に電界が集中する。高耐圧半導体装置の耐圧は、半導体の不純物濃度、厚さおよび電界強度によって決定され、このように半導体固有の特長によって決定される破壊耐量は活性領域からエッジ終端領域にわたって等しい。このため、エッジ終端領域での電界集中によりエッジ終端領域に破壊耐量を超えた電気的負荷がかかり破壊に至る虞がある。すなわち、エッジ終端領域での破壊耐量で高耐圧半導体装置の耐圧が律速されてしまう。
【0007】
エッジ終端領域の電界を緩和または分散させることで高耐圧半導体装置全体の耐圧を向上させた装置として、接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造や、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)構造などの耐圧構造をエッジ終端領域に配置した装置が公知である(例えば、下記特許文献1、2、3参照)。
【0008】
従来の高耐圧半導体装置の耐圧構造について、JTE構造を備えたMOSFETを例に説明する。
図5は、従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
図5に示す従来の半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体(半導体チップ)とする)40に、活性領域20と、活性領域20の周囲を囲むエッジ終端領域30と、を備える。炭化珪素基体40は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(以下、n
+型炭化珪素基板とする)1のおもて面上に、炭化珪素からなるn
-型半導体層(以下、n
-型炭化珪素層とする)2と、炭化珪素からなるp型半導体層(以下、p型炭化珪素層とする)6と、を順に積層してなる。
【0009】
活性領域20には、炭化珪素基体40のおもて面(p型炭化珪素層6側の面)側にトレンチ構造のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が設けられている。エッジ終端領域30は、全域にわたってp型炭化珪素層6が除去され、炭化珪素基体40のおもて面にエッジ終端領域30を活性領域20よりも低くした(ドレイン側に凹ませた)段差31が形成され、段差31の底面31aにn
-型炭化珪素層2が露出されている。また、エッジ終端領域30には、外側(チップ端部側)に配置されるほど不純物濃度を低くした複数のp
-型低濃度領域(ここでは2つ、内側からp
-型、p
--型とし符号32a,32bを付す)を隣接して配置したJTE構造32が設けられている。また、JTE構造32の外側(チップ端部側)にチャネルストッパとして機能するn
+型半導体領域33が設けられている。
【0010】
p
-型低濃度領域(以下、第1JTE領域とする)32aおよびp
--型低濃度領域(以下、第2JTE領域とする)32bは、それぞれ、n
-型炭化珪素層2の、段差31の底面31aに露出する部分に選択的に設けられている。第1JTE領域32aは、段差31に延在し、p型炭化珪素層6に設けられたp
++型コンタクト領域8に接する。このJTE構造32で耐圧構造が構成される。炭化珪素基体40の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)に接するドレイン電極14が設けられている。また、従来の高耐圧半導体装置は、p
+型ベース領域3、n型領域5、n
+型ソース領域7、p
++型コンタクト領域8、ゲート絶縁膜9、ゲート電極10、層間絶縁膜11、ソース電極12、ソース電極パッド13およびトレンチ15を備える。
【0011】
図5に示す構成のMOSFETでは、ソース電極12に対して正の電圧がドレイン電極14に印加された状態で、ゲート電極10にしきい値電圧以下の電圧が印加されているときには、p型ベース領域6aとn型領域5との間のpn接合が逆バイアスされた状態となるため、活性領域20の逆方向耐圧が確保され電流は流れない。p型ベース領域6aとは、p型炭化珪素層6の、n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8以外の部分である。
【0012】
一方、ゲート電極10にしきい値電圧以上の電圧が印加されると、p型ベース領域6aの、ゲート電極10の部分の表面層にn型の反転層(チャネル)が形成される。それによって、n
+型炭化珪素基板1、n
-型炭化珪素層2、n型領域5、p型ベース領域6aの表面反転層およびn
+型ソース領域7の経路で電流が流れる。このように、ゲート電圧を制御することによって、周知のMOSFETのスイッチング動作を行うことができる。
【0013】
また、
図5に示す構成のMOSFETでは、電圧が印加された際に、p型ベース領域6とn
-型ドリフト層との間のpn接合から外側に向かって空乏層が伸び、第1,2JTE領域32a,32bの両方に広がる。n
-型ドリフト層とは、n
-型炭化珪素層2の、p
+型ベース領域3および第1,2JTE領域32a,32b以外の部分である。エッジ終端領域での耐圧は、第1,2JTE領域32a,32bとn
-型ドリフト層との間のpn接合で確保される。
【0014】
また、
図5に示す構成のMOSFETの第1,2JTE領域32a,32bは、以下のように形成される。まず、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、炭化珪素基体40のおもて面に、第1JTE領域32aの形成領域に対応した部分を開口したレジストマスク(不図示)を形成する。次に、このレジストマスクをマスクとしてp型不純物をイオン注入し、第1JTE領域32aを形成する。
【0015】
次に、第1JTE領域32aの形成に用いたレジストマスクを除去した後、炭化珪素基体40のおもて面に、第2JTE領域32bの形成領域に対応した部分を開口したレジストマスク(不図示)を形成する。次に、このレジストマスクをマスクとして、第1JTE領域32aの形成に用いたp型不純物より不純物濃度が低いp型不純物をイオン注入し第1JTE領域32aの外側に隣接する第2JTE領域32bを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および−を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0028】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製された炭化珪素半導体装置について、MOSFETを例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
【0029】
図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体(半導体基板(半導体チップ))とする)40に、活性領域20と、活性領域20の周囲を囲むエッジ終端領域30と、を備える。活性領域20は、オン状態のときに電流が流れる領域である。エッジ終端領域30は、ドリフト領域の基体おもて面側の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。
【0030】
炭化珪素基体40は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(n
+型炭化珪素基板)1のおもて面上に、炭化珪素からなるn
-型半導体層(n
-型炭化珪素層)2と、炭化珪素からなるp型半導体層(p型炭化珪素層)6と、を順に積層してなる。n
+型炭化珪素基板1は、ドレイン領域として機能する。活性領域20において、n
-型炭化珪素層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(基体おもて面側)の表面層には、p
+型ベース領域3およびn型領域5が選択的に設けられている。また、エッジ終端領域30において、n
-型炭化珪素層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(基体おもて面側)の表面層には、チャネルストッパとして機能するn
+型半導体領域33が選択的に設けられている。n
+型半導体領域33は、段差35により、n
-型炭化珪素層2の厚さを薄くした段差35の底部35aに設けられている。最も外側(チップ端部側)のp
+型ベース領域3は、活性領域20側からエッジ終端領域30まで延在する。なお、n
-型炭化珪素層2の、p
+型ベース領域3以外の部分がドリフト領域である。n型領域5は、n
+型炭化珪素基板1よりも低くn
-型炭化珪素層2よりも高い不純物濃度の高濃度n型ドリフト層である。
【0031】
n
-型炭化珪素層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、p型炭化珪素層6が設けられている。p型炭化珪素層6の不純物濃度は、p
+型ベース領域3の不純物濃度よりも低い。p型炭化珪素層6の内部には、n
+型ソース領域(第2半導体領域)7およびp
++型コンタクト領域8がそれぞれ選択的に設けられている。
【0032】
p型炭化珪素層6は、活性領域20の部分ではp
+型ベース領域3およびn型領域5を覆うように設けられている。また、p型炭化珪素層6は、エッジ終端領域30まで延在し、エッジ終端領域30では、段差35までp
+型ベース領域3およびn
-型炭化珪素層2を覆うように設けられている。
【0033】
p型炭化珪素層6は、エッジ終端領域30では、1つまたは複数の段差34を有する。
図1の例では、p型炭化珪素層6は、3つの段差34a、34b、34cを有する。この段差34により、p
+型ベース領域3またはn
-型炭化珪素層2の表面から測ったp型炭化珪素層6の厚さが段階的に薄くなる。これにより、p型炭化珪素層6は、活性領域20から遠ざかる方向に向けて実効的な不純物濃度が減少する傾向をもつJTE構造になる。例えば、活性領域20の部分でのp型炭化珪素層6の厚さwは、段差34aにより厚さw1(<w)と薄くなる。同様にして、p型炭化珪素層6の厚さw1は、段差34bにより厚さw2(<w1)と薄くなる。
図1には図示していないが、p型炭化珪素層6の厚さw2は、段差34cにより、薄くなる。
【0034】
また、p型炭化珪素層6は、1つの段差34のみを有する場合、この段差34により、p型炭化珪素層6の厚さを半分にしてもよい。また、段差34は、活性領域10の周囲を囲む環状の平面レイアウトに配置されてもよい。
【0035】
炭化珪素基体40のおもて面側の活性領域20の部分では、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ15は、p型炭化珪素層6のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素基体40のおもて面側)の表面から、n
+型ソース領域7およびp型炭化珪素層6を貫通してn型領域5およびp
+型ベース領域3に達する。トレンチ15の内壁に沿って、トレンチ15の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ15内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型領域5、p
+型ベース領域3およびp型炭化珪素層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ15の上方(ソース電極パッド13側)からソース電極パッド13側に突出していてもよい。
【0036】
層間絶縁膜11は、炭化珪素基体40のおもて面側の全面に、トレンチ15に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、ソース電極パッド13が設けられている。炭化珪素基体40の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)には、ドレイン電極14が設けられている。
【0037】
図1では、1つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチゲート構造のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0038】
(実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について、例えば1200Vの耐圧クラスのMOSFETを作製する場合を例に説明する。
図2および
図3は、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、例えば2.0×10
19/cm
3の不純物濃度となるように窒素(N)などのn型不純物(ドーパント)をドーピングした炭化珪素単結晶のn
+型炭化珪素基板(半導体ウエハ)1を用意する。n
+型炭化珪素基板1のおもて面は、例えば<11−20>方向に4度程度のオフ角を有する(0001)面であってもよい。次に、n
+型炭化珪素基板1のおもて面に、例えば1.0×10
16/cm
3の不純物濃度となるように窒素などのn型不純物をドーピングしたn
-型炭化珪素層2を例えば10μmの厚さでエピタキシャル成長させる。
【0039】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入により、n
-型炭化珪素層2の表面層にn型領域5を選択的に形成する。このイオン注入においては、例えば、1×10
17/cm
3の濃度となるように窒素などのn型不純物(ドーパント)を注入してもよい。
【0040】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入により、n
-型炭化珪素層2の表面層にp
+型ベース領域3を選択的に形成する。最も外側のp
+型ベース領域3は、エッジ終端領域30にまで延在するように形成する。このイオン注入においては、例えば、アルミニウム(Al)などのp型不純物(ドーパント)をp
+型ベース領域3の不純物濃度が5.0×10
18/cm
3となるように注入してもよい。
【0041】
次に、n
-型炭化珪素層2の表面に、例えば2.0×10
17/cm
3の不純物濃度となるようにアルミニウムなどのp型不純物をドーピングしたp型炭化珪素層6を例えば1.3μmの厚さでエピタキシャル成長させる。
【0042】
ここまでの工程で、n
+型炭化珪素基板1のおもて面上にn
-型炭化珪素層2およびp型炭化珪素層6を順に積層してなる炭化珪素基体40が作製される。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによるイオン注入用マスクの形成と、このイオン注入用マスクを用いたイオン注入と、イオン注入用マスクの除去と、を1組とする工程を異なるイオン注入条件で繰り返し行うことで、p型炭化珪素層6の表面層にn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を形成する。ここまでの状態が
図2に示されている。
【0043】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、エッジ終端領域30におけるp型炭化珪素層6の表面に例えば0.3μmの深さで段差34aを形成し、エッジ終端領域30において、p型炭化珪素層6の厚さを薄くする。また、このとき、例えば等方性エッチングにより段差34aを形成することで、段差34aの側壁36に底面37に対する角度θが鈍角となる斜度をつけてもよい。同様にして、段差34b、34cを形成し、エッジ終端領域30において、p型炭化珪素層6の厚さを段階的に薄くする。
【0044】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、エッジ終端領域30におけるp型炭化珪素層6の表面に例えばp型炭化珪素層6の表面から1.5μmの深さになるように段差35を形成し、p型炭化珪素層6およびn
-型炭化珪素層2の一部を除去して、n
-型炭化珪素層2を露出させる。次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入によりn型領域33を選択的に形成する。このイオン注入においては、例えば、3×10
20/cm
3の濃度となるようにリンなどのn型不純物(ドーパント)を注入してもよい。ここまでの状態が
図3に示されている。
【0045】
次に、熱処理(アニール)を行って、例えばp
+型ベース領域3、n
+型ソース領域7、p
++型コンタクト領域8、n
+型半導体領域33を活性化させる。熱処理の温度は、例えば1700℃程度であってもよい。熱処理の時間は、例えば2分程度であってもよい。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0046】
次に、p型炭化珪素層6の表面(すなわちn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8の表面)上に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、n
+型ソース領域7およびp型炭化珪素層6を貫通してn型領域5に達するトレンチ15を形成する。トレンチ15の底部は、p
+型ベース領域3に達する。
【0047】
次に、n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8の表面と、トレンチ15の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0048】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子(P)がドーピングされた多結晶シリコン層を形成する。この多結晶シリコン層はトレンチ15内を埋めるように形成する。この多結晶シリコン層をパターニングして、トレンチ15内部に残すことによって、ゲート電極10が形成される。ゲート電極10の一部は、トレンチ15の上方(ソース電極パッド13側)からソース電極パッド13側に突出していてもよい。
【0049】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラス(PSG)を1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をパターニングして選択的に除去することによって、コンタクトホールを形成し、n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を露出させる。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
【0050】
次いで、コンタクトホール内および層間絶縁膜11の上にソース電極12となる導電性の膜を形成する。この導電性の膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極12を残す。
【0051】
次いで、炭化珪素基体40の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)に、例えばニッケル(Ni)膜でできたドレイン電極14を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、n
+型炭化珪素基板1とドレイン電極14とをオーミック接合する。
【0052】
次に、例えばスパッタ法によって、ソース電極12および層間絶縁膜11を覆うように、例えばアルミニウム膜を、厚さが例えば5μm程度になるように、設ける。その後、アルミニウム膜を選択的に除去して、活性領域20を覆うように残すことによって、ソース電極パッド13を形成する。
【0053】
次に、ドレイン電極14の表面に、例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)を順に積層することによって、ドレイン電極パッドを形成する。以上のようにして、
図1に示す半導体装置が完成する。
【0054】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、JTE構造を、段差により外側に配置されるほど厚さが薄くなっているp型炭化珪素層とすることで、JTE構造をフォトリソグラフィおよびエッチングで形成することができる。フォトリソグラフィおよびエッチングは、イオン注入より時間が短い時間で行うことができるため、JTE構造を形成するためのイオン注入工程を省略することができる。このため、JTE構造を形成するための時間を短縮でき、半導体装置を製造するための時間とコストを削減できる。
【0055】
また、p型炭化珪素層は、外側に配置されるほど厚さが薄くなっているため、外側に配置されるほど、不純物が少なくなっている。このため、従来のJTE構造と同様に、p型炭化珪素層は、エッジ終端領域にかかる電界を緩和または分散させることができる。
【0056】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図4に示すように、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、エッジ終端領域30において、n
-型炭化珪素層2の表面に、p
+型ベース領域3から離れ、互いに離れた複数のp型半導体領域36を有するFLR構造を設けている。p型半導体領域36は、活性領域20の周囲を囲む同心円状に、段差34によりp型炭化珪素層6の厚さが薄くなった部分と対向するn
-型炭化珪素層2の表面に設けられている。
【0057】
複数のp型半導体領域36は、例えば、均等に配置して、外側に行くほど不純物濃度を低くさせることができる。これにより、活性領域20から外側に配置されるほど、不純物が少なくなり、p型半導体領域36は、エッジ終端領域にかかる電界を緩和または分散させることができる。
図4では、4つのp型半導体領域36a、36b、36c、36dが設けられている。
【0058】
複数のp型半導体領域36は、例えば、p型半導体領域36間の幅w4を同一にして、外側に行くほどp型半導体領域36の幅w3を狭くすることができる。これにより、活性領域20から外側に配置されるほど、不純物が少なくなり、p型半導体領域36は、エッジ終端領域にかかる電界を緩和または分散させることができる。例えば、p型半導体領域36aの幅は、p型半導体領域36bの幅より広い。また、p型半導体領域36bの幅は、p型半導体領域36cの幅より広い。p型半導体領域36dについても同様であり、p型半導体領域36dの幅は最も狭い。
【0059】
複数のp型半導体領域36は、例えば、p型半導体領域36の幅w3を同一にして、外側に行くほどp型半導体領域36間の幅w4を広くすることができる。これにより、活性領域20から外側に配置されるほど、不純物が少なくなり、p型半導体領域36は、エッジ終端領域にかかる電界を緩和または分散させることができる。例えば、p型半導体領域36aとp型半導体領域36bとの間の幅は、p型半導体領域36bとp型半導体領域36cとの間の幅より狭い。また、p型半導体領域36bとp型半導体領域36cとの間の幅は、p型半導体領域36cとp型半導体領域36dとの間の幅より狭い。
【0060】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のその他の構成については、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構成と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0061】
(実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。まず、実施の形態1と同様に、n
-型炭化珪素層2を形成する工程から、p
+型ベース領域3を選択的に形成する工程までを順に行う。
【0062】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入により、エッジ終端領域30において、n
-型炭化珪素層2の表面層にp型半導体領域36を選択的に形成する。異なる不純物濃度の複数のp型半導体領域36は、フォトリソグラフィおよびエッチングによるイオン注入用マスクの形成と、このイオン注入用マスクを用いたイオン注入と、イオン注入用マスクの除去と、を1組とする工程を異なるイオン注入条件で繰り返し行うことで形成できる。
【0063】
その後、実施の形態1と同様に、p型炭化珪素層6をエピタキシャル成長させる工程以降の工程を順に行うことで、
図4に示したMOSFETが完成する。
【0064】
以上、説明したように、実施の形態2にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、実施の形態1にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、実施の形態2では、JTE構造とn
-型炭化珪素層の表面に設けられたFLR構造により、空乏層が、p
+型ベース領域とp型ベース領域とn型ドリフト層のpn接合からJTE構造とFLR構造の外側まで広がるため、pn接合への電界が緩和され、耐圧を確保できる。
【0066】
また、p型炭化珪素層に設けられたJTE構造は、熱処理(アニール)による活性化やイオン注入のわずかな条件のばらつきにより活性化率が大きく変化し、p型炭化珪素層の不純物濃度が大きくばらつき、耐圧が意図したものと異なる低い値になってしまうことがしばしば生じる場合がある。実施の形態2では、JTE構造に加え、n
-型炭化珪素層の表面にFLR構造を設けることで、上記のような場合でも耐圧が確保することができる。
【0067】
また、以上の実施の形態では、p型炭化珪素層における段差をフォトリソグラフィおよびエッチングにより、形成したが、フォトリソグラフィおよびイオン注入により、形成することもできる。例えば、p型炭化珪素層をエピタキシャル成長させた後、注入エネルギー変更したイオン注入を複数回行うことで、p型炭化珪素層の一部の導電型を反転させて、段差を形成することもできる。
【0068】
また、以上の実施の形態では、
図1および
図4に示すトレンチ構造を有する縦型MOSFETについて記載してきたが、本発明は、プレーナー構造を有する縦型MOSFETおよび横型MOSFET等にも適用可能である。ただし、トレンチ構造を有する縦型MOSFETでは、トレンチを形成するため、p型炭化珪素層が厚く、段差を形成することが容易であるため、本発明は、トレンチ構造を有する縦型MOSFETにおいて、特に効果的である。
【0069】
以上において本発明では、炭化珪素でできた炭化珪素基板の第1主面を(0001)面とし当該(0001)面上にMOSゲート構造を構成した場合を例に説明したが、これに限らず、ワイドバンドギャップ半導体の種類(例えば窒化ガリウム(GaN)など)、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明では、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。