【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
上下方向と交差する横方向に沿って配された上横材と、前記上横材の下方に位置しつつ、前記横方向に沿って配された下横材と、互いの間に前記横方向の間隔をあけて前記横方向の両側にそれぞれ位置しつつ、前記上下方向に沿ってそれぞれ配された二つの縦材と、前記上横材と前記下横材と前記二つの縦材とで囲まれた空間に配されつつ、法線方向が前記上下方向及び前記横方向と交差する見込み方向を向いた面材と、を有した木造構造体を補強する構造であって、
前記見込み方向において前記面材よりも一方側の位置に配されて、第1貫入材で前記上横材の下面に固定された木製の上受け材と、
前記面材よりも前記一方側の位置に配されて、第2貫入材で前記下横材の上面に固定された木製の下受け材と、
前記面材よりも前記一方側の位置に配されて、第3貫入材で上部を前記上受け材に固定されつつ第4貫入材で下部を前記下受け材に固定された木製の補強用面材と、を有し、
前記上受け材と前記下受け材と前記補強用面材とは、前記二つの縦材に固定されていないことを特徴とする。
【0012】
上記請求項1に示す発明によれば、当該補強構造が有する上受け材、下受け材、及び補強用面材の三者の何れの部材も、上記面材よりも見込み方向の一方側の位置に配されている。よって、当該補強構造を、見込み方向の一方側から木造構造体に問題無く配置することができる。
また、これら上受け材、下受け材、及び補強用面材の三者の何れの部材も、二つの縦材には、固定されていない。よって、これら二つの縦材の動きを当該補強構造が規制しないようにすることができる。
【0013】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の木造構造体の補強構造であって、
前記上受け材と前記下受け材とは、互いの間に前記上下方向の隙間をあけて対向しており、
前記上受け材は、前記見込み方向の前記一方側の面における下側部分に、前記見込み方向の他方側にへこんだへこみ部を有し、
前記下受け材は、前記見込み方向の前記一方側の面における上側部分に、前記見込み方向の他方側にへこんだへこみ部を有し、
前記補強用面材における前記上下方向の中央部は、前記上部及び前記下部よりも前記見込み方向の他方側に突出した部分を有し、
前記補強用面材の前記上部及び前記下部が、それぞれ、前記上受け材の前記へこみ部の底面及び前記下受け材の前記へこみ部の底面に当接しており、
前記補強用面材の前記中央部の前記突出した部分は、前記上受け材と前記下受け材との間の前記隙間に介挿されつつ、前記上受け材の下面及び前記下受け材の上面に当接していることを特徴とする。
【0014】
上記請求項2に示す発明によれば、補強用面材の上部及び下部が、それぞれ、上受け材のへこみ部の底面及び下受け材のへこみ部の底面に当接している。よって、補強用面材の上部及び下部にそれぞれ第3貫入材及び第4貫入材を上記見込み方向の一方側から貫入させることで、補強用面材を上受け材及び下受け材に容易に固定可能となる。
また、補強用面材の上記突出した部分は、上受け材の下面及び下受け材の上面と当接している。よって、仮に、地震時に、下横材が上横材に対して相対的に横方向に水平変位することに起因して、上記見込み方向に沿った軸回りの回転モーメントが補強用面材に作用した場合にも、上記の当接に基づいて、当該回転モーメントに有効に対抗することができる。そして、これにより、当該補強構造は、高い耐震性を奏することができる。
【0015】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載の木造構造体の補強構造であって、
前記上受け材の前記へこみ部の前記底面における上端縁の入り隅部に、前記第1貫入材の頭部が位置しており、
前記下受け材の前記へこみ部の前記底面における下端縁の入り隅部に、前記第2貫入材の頭部が位置しており、
前記第1貫入材の前記頭部及び前記第2貫入材の前記頭部は、それぞれ、前記一方側から前記補強用面材の前記上部及び前記下部で覆われていることを特徴とする。
【0016】
上記請求項3に示す発明によれば、上述の各入り隅部に位置する第1貫入材の頭部及び第2貫入材の頭部は、それぞれ、見込み方向の一方側から補強用面材の上部及び下部で覆われている。よって、上記見込み方向の一方側から当該頭部を視認不能にして補強の痕跡を隠すことができて、これにより、補強後の木造構造体の見栄えの悪化を抑制可能となる。
【0017】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の木造構造体の補強構造であって、
前記第1貫入材は、上方、又は、上方且つ前記見込み方向の他方側を向いた斜め方向に貫入されており、
前記第2貫入材は、下方、又は、下方且つ前記見込み方向の他方側を向いた斜め方向に貫入されていることを特徴とする。
【0018】
上記請求項4に示す発明によれば、第1貫入材及び第2貫入材は、それぞれ上記のような方向に貫入されている。よって、これら第1貫入材及び第2貫入材を、それぞれ上受け材及び下受け材に対して見込み方向の一方側から問題無く貫入することができる。
【0019】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の木造構造体の補強構造であって、
前記見込み方向に貫入された複数の前記第3貫入材が、前記横方向に並んで配されているとともに、少なくとも1つの前記第3貫入材の前記上下方向の位置が、前記横方向に隣り合う別の前記第3貫入材の前記上下方向の位置とずれており、
前記見込み方向に貫入された複数の前記第4貫入材が、前記横方向に並んで配されているとともに、少なくとも1つの前記第4貫入材の前記上下方向の位置が、前記横方向に隣り合う別の前記第4貫入材の前記上下方向の位置とずれていることを特徴とする。
【0020】
上記請求項5に示す発明によれば、横方向に隣り合う少なくとも一組の第3貫入材同士は、互いの上下方向の位置がずれており、同様に、横方向に隣り合う少なくとも一組の第4貫入材同士は、互いの上下方向の位置がずれている。よって、地震時に、これら第3貫入材又は第4貫入材を介して補強用面材、上受け材、及び下受け材に作用し得る水平力を上下方向に分散させることができる。そして、これにより、上下方向の同じ位置に水平力が過度に集中して作用することで生じ得る不具合、例えば、補強用面材、上受け材、及び下受け材の割れ等の破損を防ぐことができて、その結果、補強構造の耐力を高めることができる。
【0021】
請求項6に示す発明は、請求項5に記載の木造構造体の補強構造であって、
前記補強用面材、前記上受け材、及び前記下受け材のうちの少なくとも1つの部材の木目が、前記横方向に沿っていることを特徴とする。
【0022】
上記請求項6に示す発明によれば、補強用面材、上受け材、及び下受け材のうちの少なくとも1つの部材の木目が、横方向に沿っているので、当該部材を見込み方向の一方側から見た場合の見栄えを良くできる。但し、木目が水平方向に沿っていると、水平力の作用時に第3貫入材及び第4貫入材の位置で割れ等の破損を助長し得るが、この点につき、請求項5に記載のように、第3貫入材の上下方向の位置は上下方向に分散されており、また、第4貫入材の上下方向の位置も上下方向に分散されている。そのため、上記の如く見栄えの良化を図りながらも、補強用面材、上受け材、及び下受け材の割れ等の破損を防ぐことができる。
【0023】
請求項7に示す発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の木造構造体の補強構造であって、
前記上受け材の前記一方側の面は、前記上横材の前記一方側の面との境界位置において、前記上横材の前記一方側の面よりも
前記見込み方向の他方側に位置しており、
前記下受け材の前記一方側の面は、前記下横材の前記一方側の面との境界位置において、前記下横材の前記一方側の面よりも前記他方側に位置していることを特徴とする。
【0024】
上記請求項7に示す発明によれば、当該補強構造を見込み方向の一方側から見た人に、上記面材の場合と同様の奥行き感を感じさせることができる。すなわち、補強構造に係る上受け材及び下受け材についても、上横材及び下横材よりも上記見込み方向の他方側に引っ込んだように見せることができる。そして、これにより、当該見た人に、これら上受け材及び下受け材を上記面材の如く視認させることができて、その結果、同補強構造が与え得る見た目の違和感を軽減可能となる。
【0025】
請求項8に示す発明は、請求項7に記載の木造構造体の補強構造であって、
前記上受け材の下面に前記補強用面材の上面が当接しているとともに、前記下受け材の上面に前記補強用面材の下面が当接しており、
前記補強用面材の前記一方側の面は、前記上受け材の前記一方側の面との境界位置において、前記上受け材の前記一方側の面よりも前記一方側に位置しているか、又は前記見込み方向において同じ位置に位置しており、
前記補強用面材の前記一方側の面は、前記下受け材の前記一方側の面との境界位置において、前記下受け材の前記一方側の面よりも前記一方側に位置しているか、又は前記見込み方向において同じ位置に位置していることを特徴とする。
【0026】
上記請求項8に示す発明によれば、上記請求項7のように上受け材を上横材よりも上記見込み方向の他方側に引っ込めて設けるという制約がある場合に、当該上受け材の下面を、可能な限り大きな面積で補強用面材の上面に当接させることができる。同様に、上記請求項7のように下受け材を下横材よりも見込み方向の他方側に引っ込めて設けるという制約がある場合に、当該下受け材の上面を、可能な限り大きな面積で補強用面材の下面に当接させることができる。よって、仮に、地震時に、下横材が上横材に対して相対的に横方向に水平変位することに起因して、上記見込み方向に沿った軸回りの回転モーメントが補強用面材に作用した場合にも、上記の当接に基づいて、当該回転モーメントに有効に対抗することができる。そして、これにより、当該補強構造は高い耐震性を奏することができる。
【0027】
請求項9に示す発明は、
上下方向と交差する横方向に沿って配された上横材と、前記上横材の下方に位置しつつ、前記横方向に沿って配された下横材と、互いの間に前記横方向の間隔をあけて前記横方向の両側にそれぞれ位置しつつ、前記上下方向に沿ってそれぞれ配された二つの縦材と、を有した木造構造体を補強する方法であって、
前記上下方向及び前記横方向と交差する見込み方向の一方側から前記上横材の下面に木製の上受け材の上面を当接しつつ第1貫入材で固定する上受け材固定工程と、
前記見込み方向の前記一方側から前記下横材の上面に木製の下受け材の下面を当接しつつ第2貫入材で固定する下受け材固定工程と、
前記見込み方向の前記一方側から前記上受け材及び前記下受け材に木製の補強用面材を当接しつつ、第3貫入材で前記補強用面材の上部を前記上受け材に固定し、第4貫通材で前記補強用面材の下部を前記下受け材に固定する補強用面材固定工程と、を有し、
前記上受け材固定工程、前記下受け材固定工程、及び前記補強用面材固定工程では、前記上受け材、前記下受け材、及び前記補強用面材を前記二つの縦材に固定しないことを特徴とする。
【0028】
上記請求項9に示す発明によれば、上記の上受け材及び下受け材を、木造構造体において対応する上記の上横材及び下横材に対して、それぞれ、見込み方向の一方側から当接して固定し、そして、これら上受け材及び下受け材に、見込み方向の一方側から木製の補強用面材を当接しつつ固定する。よって、木造構造体の補強を、上記一方側から速やかに行うことができる。
また、かかる補強においては、これら上受け材、下受け材、及び補強用面材の何れの部材も、二つの縦材には固定しない。よって、これら二つの縦材の動きを当該補強構造が規制しないようにすることができる。