(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム組成物からなる帯状のストリップにその長手方向に張力を付与し、上記ストリップを搬送し、上記張力が付与され搬送された上記ストリップの後端部を上記張力が取り除かれた状態でストリップ本体と上記ストリップ本体より短い切断片に切断する搬送工程と、
上記ストリップ本体を回転体に巻回する巻回工程と
を備えている、巻回体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストリップの長手方向に張力が付与されると、ストリップは伸長する。この伸長したストリップで張力が取り除かれると、縮み変形が生じる。この縮み変形をしたストリップが巻回されると、ストリップの巻回位置にずれを生じる。このストリップの巻回位置のずれは、巻回体の形状精度、即ちゴム部材の形状精度を損なう。このゴム部材の形状精度の低下は、タイヤの形状精度を低下させる。
【0005】
本発明の目的は、ストリップから形成される巻回体であって形状精度に優れる巻回体が得られる巻回体形成装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るストリップ巻回体形成装置は、
ゴム組成物からなる帯状のストリップを搬送する機能と、上記ストリップにその長手方向に張力を付与する機能とを有する搬送装置と、
上記搬送装置が搬送する上記ストリップの後端部を切断して上記ストリップをストリップ本体と上記ストリップ本体より短い切断片とに分割する機能を有する切断装置と、
上記ストリップ本体が巻回される回転体と
を備えている。
【0007】
好ましくは、上記搬送装置は、搬送ベルトを備えている。上記搬送ベルトは、上記ストリップを貼り付けられて搬送する機能を有している。上記切断装置は、上記搬送ベルトに貼り付けられた上記ストリップを切断する機能を有する。
【0008】
好ましくは、この巻回体形成装置は、上記ゴム組成物からなるゴム成形体を圧延して上記ストリップを成形する機能を有する圧延機を備えている。上記搬送装置が上記ストリップを搬送する速度は、上記圧延機が上記ストリップを送り出す速度より速くされている。
【0009】
好ましくは、この巻回体形成装置は、上記ゴム組成物を押し出して上記ゴム成形体を成形する機能を有する押出機と、上記切断片を押出機に投入する機能を有する回収装置とを備えている。
【0010】
好ましくは、この巻回体形成装置は、
上記ストリップの端を検知する機能を有する端検知センサーと、
上記端検知センサーから上記ストリップの端の位置情報を受信する機能と、上記ストリップの端の位置情報から上記ストリップの切断位置を決定する機能と、上記切断装置に上記ストリップを上記切断位置で切断させる機能とを有する制御装置と
を備えている。
【0011】
好ましくは、この巻回体形成装置は、
上記ストリップの幅方向位置を検知する機能を有する位置センサーと、
上記位置センサーから上記ストリップの幅方向位置情報を受信する機能と、上記ストリップの幅方向位置情報から上記ストリップの切断位置を決定する機能と、上記切断装置に上記ストリップを上記切断位置で切断させる機能とを有する制御装置と
を備えている。
【0012】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
巻回体が成形される巻回体形成工程と、
上記巻回体を含む複数のゴム部材を組み合わせてローカバーが成形される予備成形工程と、
上記ローカバーが加硫されてローカバーからタイヤが形成される加硫工程と
を備えている。
上記巻回体形成工程は、
ゴム組成物からなる帯状のストリップにその長手方向に張力を付与し、この張力が付与された状態で上記ストリップを搬送し、搬送される上記ストリップの後端部を切断してストリップ本体と上記ストリップ本体より短い切断片とに分割する搬送工程と、
上記ストリップ本体を回転体に巻回して巻回体を成形する巻回工程と
を備えている。
【0013】
好ましくは、上記巻回体形成工程は、
ゴム組成物を押出機で押し出し成形してゴム成形体を成形する押出工程と、
上記ゴム成形体を圧延して上記ストリップを成形する圧延工程と、
上記搬送工程で切断された上記切断片を上記押出機に投入する回収工程と
を備えている。
【0014】
好ましくは、上記搬送工程における上記ストリップが搬送される速度は、上記圧延工程における上記ストリップが送り出される速度より速い。
【0015】
好ましくは、上記ストリップ本体の厚さは、0.6(mm)以下である。
【0016】
好ましくは、上記ストリップ本体のタックは6.0(N)以上である。
【0017】
好ましくは、上記巻回体は、タイヤのトレッドを形成するトレッド部材である。
【0018】
本発明に係る巻回体の製造方法は、
ゴム組成物からなる帯状のストリップにその長手方向に張力を付与し、上記ストリップを搬送し、搬送される上記ストリップの後端部をストリップ本体と上記ストリップ本体より短い切断片に切断する搬送工程と、
上記ストリップ本体を回転体に巻回する巻回工程と
を備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るストリップ巻回体形成装置では、長手方向に張力を付与されたストリップの後端部が切断されて、ストリップ本体と後端部の切断片とに分割される。この分割によって、縮み変形した後端部がストリップ本体から切り離される。このストリップ本体が回転体に巻回される。これにより、このストリップ巻回体形成装置では、巻回体は形状精度に優れている。巻回体として得られるゴム部材の形状精度が向上している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1には、本発明のストリップ巻回体形成装置2が示されている。この巻回体形成装置2は、押出機4、圧延機6、搬送装置8、切断装置10、貼付機12、回転体としてのドラム14、回収装置16及び端検知センサー18を備えている。この巻回体形成装置2は、更に、図示されない制御装置を備えている。
図1において、左右方向が巻回体形成装置2の前後方向であり、紙面に垂直な方向が巻回体形成装置2の左右方向である。
【0023】
図1には、ストリップSが、巻回体形成装置2と共に示されている。ストリップSは、長尺帯状の形状を備えている。ストリップSは未加硫のゴム組成物Rからなっている。特に限定されないが、このストリップSの厚さは例えば0.3(mm)以上5.0(mm)以下であり、幅は例えば5(mm)以上50(mm)以下である。
【0024】
押出機4は、押出機本体20、ギヤポンプ22及び押出ヘッド24を備えている。押出機本体20の前端にギヤポンプ22が取り付けられている。このギアポンプ22の前端に押出ヘッド24が取り付けられている。この押出機4は、ゴム組成物Rから所定の断面形状を備えるゴム成形体Eを形成する機能を備えている。
【0025】
圧延機6は、押出ヘッド24の前方に位置している。圧延機6は、支持体26と、支持体26に支持された一対のカレンダーロール28とを備えている。それぞれのカレンダーロール28は、左右方向を回転軸にして回転可能に支持されている。この圧延機6は、ゴム成形体Eを圧延して、ストリップSを形成する機能を備えている。
【0026】
搬送装置8は、ベルトコンベア30と複数のガイドローラ32を備えている。ベルトコンベア30は、ドラム14と圧延機6との間に位置している。ベルトコンベア30は、搬送ベルト33、駆動ローラ34及び従動ローラ35を備えている。搬送ベルト33は、駆動ローラ34と従動ローラ35とに架け渡されている。駆動ローラ34が駆動回転することで、架け渡された搬送ベルト33は周回しうる。搬送ベルト33の表面にストリップSが貼り付けられうる。ストリップSは、この搬送ベルト33に貼り付けられて搬送されうる。それぞれのガイドローラ32は、ベルトコンベア30と圧延機6との間に位置している。ガイドローラ32は、左右方向を回転軸に回転可能に支持されている。ガイドローラ32は、圧延機から送り出されたストリップSをベルトコンベア30に案内しうる。
【0027】
切断装置10は、ドラム14と圧延機6との間に位置している。この巻回体形成装置2では、切断装置10は、ベルトコンベア30の上方に位置している。切断装置10は、ストリップSを切断しうる。切断機10はストリップSを切断可能なものであればよく、切断機10として、周知の切断装置が用いられる。
【0028】
貼付機12は、貼付ローラ36及びローラ支持部38を備えている。ローラ支持部38は貼付ローラ36をドラム14に向かって進退可能に支持している。ローラ支持部38は、貼付ローラ36をドラム14に向かって付勢する機能を備えている。貼付機12は、ベルトコンベア30とドラム14との間に位置している。
【0029】
ドラム14の形状は、円筒形状である。ドラム14は、ストリップSが巻回される外周面14aを備えている。このドラム14は、その軸線を回転軸にして回転可能に支持されている。図示されない駆動装置によって、ドラム14は回転しうる。
【0030】
回収装置16は、回収ローラ40、ローラ支持部42、ベルトコンベア44及びベルトコンベア46を備えている。ローラ支持部42は、回収ローラ40を搬送ベルト33に向かって進退可能に支持している。ローラ支持部42は、回収ローラ40を搬送ベルト33に向かって付勢する機能を備えている。回収ローラ40は、ベルトコンベア30の前端部の位置で、搬送ベルト33に付勢可能にされている。
【0031】
ベルトコンベア44は、搬送ベルト48、駆動ローラ49及び従動ローラ50を備えている。搬送ベルト48は、駆動ローラ49と従動ローラ50とに架け渡されている。駆動ローラ49が回転することで、搬送ベルト48は周回しうる。ベルトコンベア44は、回収ローラ40とベルトコンベア46との間に位置している。
【0032】
ベルトコンベア46は、搬送ベルト52、駆動ローラ53及び従動ローラ54を備えている。搬送ベルト52は、駆動ローラ53と従動ローラ54とに架け渡されている。駆動ローラ53が回転することで、搬送ベルト52は周回しうる。ベルトコンベア46は、ベルトコンベア44と押出機本体20との間に位置している。
【0033】
端検知センサー18は、ストリップSを検出する機能を備えている。この端検知センサー18は、ストリップSの端を検出する機能を備えている。この端検知センサー18で検出される端は、ストリップSの後端である。この検出される端は、ストリップSの前端であってもよい。端検知センサー18は、切断装置10と圧延機6との間に位置している。この端検知センサー18は、例えば光学式センサーである。
【0034】
図示されない制御装置は、端検知センサー18からストリップSの端検出信号を受信する機能と、端検出信号からストリップSの後端位置を特定する機能と、この後端位置から切断位置を決定する機能と、切断装置10に切断位置でストリップSを切断させる切断信号を出力する機能とを備えている。この制御装置は、端検出信号からストリップSの前端位置を特定する機能と、この前端位置から切断位置を決定する機能とを備えてもよい。
【0035】
図2に示される様に、押出機本体20は、シリンダ室56、投入口58、スクリュー60及び駆動装置62を備えている。シリンダ室56は、押出機本体20の内部に形成されている。投入口58は、押出機本体20の上部に取り付けられている。投入口58は、押出機本体20の外とシリンダ室56とを連通している。投入口58は、ゴム組成物Rをシリンダ室56に供給する開口である。
図1に示される様に、投入口58の上方に、ベルトコンベア46の搬送方向先端が位置している。
図2に示される様に、スクリュー60は、シリンダ室56に配置されている。このスクリュー60は、駆動装置62によって回転可能にされている。スクリュー60は、シリンダ室56内で、ゴム組成物Rを混練りする機能と、ゴム組成物Rを前方に押し出す機能とを備えている。
【0036】
ギヤポンプ22は、ケーシング64、一対の押出ギア66及び図示されない駆動装置を備えている。ギアポンプ22は、押出機本体20と押出ヘッド24との間に位置している。駆動装置によって、一対の押出ギア66が回転しうる。一対の押出ギア66の回転によって、ゴム組成物Rは、押出機本体20から押出ヘッド24に向かって定量的に圧送されうる。
【0037】
押出ヘッド24は、口金68を備えている。押出ヘッド24は、ギアポンプ22と圧延機6との間に位置している。口金68は、圧延機6に向かって開口している。ギアポンプ22が圧送したゴム組成物Rは、口金68によって、ゴム成形体Eとして、圧延機6に向かって押し出されうる。
【0038】
圧延機6は、口金68と搬送装置8との間に位置している。圧延機6は、一対のカレンダーロール28によって、ゴム成形体EをストリップSとして圧延成形しうる。このストリップSは、搬送装置8へ送られる。圧延機6は、速度VrでストリップSを送りうる。この速度Vrは、カレンダーロール28の外周長とカレンダーロール28の回転数とから計算される。
【0039】
ストリップSは、ガイドローラ32に案内されて、ベルトコンベア30に送られうる。ストリップSは、ベルトコンベア30の搬送ベルト33の表面33aに貼り付けられうる。ベルトコンベア30は、搬送ベルト33を周回させることで、ストリップSをドラム14に向かって搬送しうる。
【0040】
この巻回体形成装置2を用いたタイヤの製造方法が説明される。このタイヤの製造方法は、巻回体形成工程、予備成形工程及び加硫工程を備えている。巻回体形成工程では、巻回体としてのゴム部材が成形される。ここでは、トレッド部材を例に説明がされる。予備成形工程では、このトレッド部材を含む複数のゴム部材が組み合わされてローカバーが形成される。加硫工程では、このローカバーが加硫されて、ローカバーからタイヤが形成される。
【0041】
この巻回体形成工程は、押出工程、圧延工程、搬送工程、巻回工程及び回収工程を備えている。
【0042】
押出工程において、ゴム組成物Rが準備される。このゴム組成物Rは、押出機本体20の投入口58に投入される。このゴム組成物Rは、スクリュー60によって、混練りされながら、ギヤポンプ22に向かって押し出される。ギアポンプ22は、ゴム組成物Rを定量的に圧送する。一対の押出ギア66によって、ゴム組成物Rは押出ヘッド24に向かって送られる。このゴム組成物Rは、押出ヘッド24の口金68によって、所定の断面形状のゴム成形体Eとして押し出される。このゴム成形体Eは、圧延機6に送られる。この押出工程では、1個のトレッド部材の形成に必要な量のゴム成形体Eが押し出される。この押出機4は、ゴム成形体Eをトレッド部材の1個毎に断続的に押し出す。
【0043】
圧延工程において、一対のカレンダーロール28が、ゴム成形体Eを圧延成形する。この圧延成形によって、ゴム成形体EからストリップSが成形される。ストリップSは、長尺帯状の形状を備えている。このストリップSは、搬送装置8に送られる。この圧延工程では、1個のトレッド部材の形成に必要な量のストリップSが成形される。この圧延機6は、ストリップSをトレッド部材の1個毎に断続的に搬送装置8に送る。
【0044】
搬送工程において、ストリップSは、ガイドローラ32に案内されて、ベルトコンベア30に送られる。このストリップSは、ベルトコンベア30の搬送ベルト33の表面33aに貼り付けられる。ストリップSは、ベルトコンベア30に貼り付けられた状態で、ドラム14に向かって送られる。
【0045】
このベルトコンベア30は、搬送速度VbでストリップSを搬送する。この搬送速度Vbは、搬送ベルト33の周回速度として求められる。この巻回体形成装装置2では、この速度Vbは、圧延機6の速度Vrより速い。
【0046】
図2の符号Peは、一対のカレンダーロール28によって圧延される、ストリップSの圧延位置を表している。符号Pbは、搬送ベルト33の表面33aに、ストリップSが貼付される貼付位置を表している。このストリップSは、速度Vbと速度Vrとの差によって、長手方向に張力が付与されている。圧延位置Peと貼付位置Pbとの間で、ストリップSは引き伸ばされている。ストリップSの断面積は、圧延位置Peにおける断面積より貼付位置Pbにおける断面積が小さくされている。ストリップSの厚さは、圧延位置Peにおける厚さより貼付位置Pbにおける厚さが小さくされている。ストリップSは、この様に引き伸ばされた状態で、搬送ベルト33に貼り付けられる。
【0047】
このストリップSの後端Sが圧延機6から送り出された後、ストリップSの後端部には張力が作用しない。この張力が取り除かれると、ストリップSの後端部は縮む。縮んだストリップSの後端部は、幅及び厚みが変化する。このストリップSの後端部は、その幅方向及び厚さ方向に凹凸が形成される。
【0048】
図3(a)には、搬送工程において、ストリップSが、切断装置10によって切断される様子が示されている。
図3(a)では、ストリップSは、搬送ベルトSに貼り付けられている。端検知センサー18が、搬送されるストリップSの後端を検出している。制御装置は、端検知センサー18からストリップSの後端位置の検出信号を受信する。制御装置は、ストリップSの後端位置を特定する。制御装置は、この後端位置から切断位置を決定する。制御装置は、この切断位置で、切断装置10にストリップSを切断させる。この切断によって、ストリップSは、ストリップ本体Sbと切断片Spとに分割される。
【0049】
図3(a)に示される様に、巻回工程において、ストリップ本体Sbが、ドラム14の外周面14aに巻回される。ストリップSは、巻回されて、トレッド部材の形状にされる。この様にして、ストリップSからトレッド部材が形成される。
【0050】
回収工程において、搬送ベルト33に搬送される切断片Spに、回収ローラ40が押し付けられる。切断片Spが回収ローラ40に圧着される。切断片Spは、回収ローラ40からベルトコンベア44に送られる。更に、切断片Spは、ベルトコンベア44からベルトコンベア46に送られる。ベルトコンベア46は、切断片Sを押出機本体20の投入口58に投入する。切断片Sは、スクリュー60によって、混練りされる。この切断片Sは、ゴム組成物Rの一部として再利用される。
【0051】
この巻回体形成装置2では、ゴム成形体Eが圧延機6で圧延されてストリップSが形成されている。ストリップSは押出工程及び圧延工程を経て得られる。ストリップSは、この押出工程及び圧延工程によって、高温にされている。高温のストリップSは、カレンダーロール28に密着し易く、ちぎれ易い。この密着やちぎれを抑制する観点から、ストリップSは厚くされることが好ましい。この巻回体形成装置2では、搬送装置8の搬送速度Vbは、圧延機6の速度Vrより速く設定されている。この速度Vbと速度Vrとの差によって、ストリップSに張力が付与される。この張力によって、圧延位置Peと貼付位置Pbとの間で、ストリップSは引き伸ばされる。このストリップSは、引き伸ばされた状態で搬送ベルト33に貼り付けられるので、圧延機6ではストリップSを厚く圧延することができる。この巻回体形成装置2は、ストリップSを厚く圧延できる分、ストリップSとカレンダーロール28との密着や、ストリップSのちぎれの発生が抑制されている。
【0052】
一方で、長手方向に張力が付与されたストリップSは、長手方向に引き伸ばされている。この張力が取り除かれると、ストリップSは縮む。縮んだストリップSは、幅及び厚みが変化する。張力が付与されたストリップSでは、その端部にその縮み変形を生じ易い。この巻回体形成装置2では、ストリップSの後端部が切断片Spとして切り離されている。切断片Spが切り離された後に、ストリップ本体Sbが巻回されている。これにより、この巻回体で形成されるトレッド部材は、形状精度に優れている。また、縮み変形した部分を切り離すことで、このトレッド部材はエアーの巻き込みが抑制される。この巻回体形成装置2は、トレッド部材に空隙残りが生じることを抑制している。
【0053】
張力が付与されたストリップSでその張力が取り除かれたときに、縮み変形し易い端部の範囲は、その端から0.6m程度である。従って、形状精度の向上及びエアーの巻き込みの抑制の観点から、切断片Spの長さは好ましくは0.6m以上であり、更に好ましくは0.8m以上であり、特に好ましくは1m以上である。一方で、生産性の向上の観点から、この切断片Spの長さは短いことが好ましい。この観点から、この切断片Spの長さは好ましくは2m以下である。本発明において、切断片Spの長さは、その長手方向に沿って測定される。測定時に、切断片Spに外力は負荷されず、水平な平面板上に置かれて測定される。
【0054】
この搬送装置8のベルトコンベア30では、搬送ベルト33の表面33aに、ストリップSが貼り付けられている。ストリップSは、搬送ベルト33に貼り付けられることで、その変形が抑制される。張力が付与されたストリップSにおいても、その変形が抑制されている。このベルトコンベア30は、搬送するストリップSの形状の安定化に寄与する。このベルトコンベア30は、トレッド部材の形状精度の向上に寄与する。
【0055】
搬送ベルト33の材質は、ストリップSの形状の安定化の観点から、ストリップSとの密着性に優れることが好ましい。この密着性の観点から、搬送ベルト33の材質は、例えば熱可塑性ポリウレタンが例示される。
【0056】
このベルトコンベア30では、張力が付与された状態でストリップSを搬送している。切断装置10は、搬送ベルト33に貼り付けられたストリップSをストリップ本体Sbと切断片Spとに切断している。搬送ベルト33に貼り付けられているので、ストリップ本体Sbの切断端の変形が抑制されている。ベルトコンベア30は、ストリップ本体Sbから得られる巻回体、即ちトレッド部材の形状精度の向上に寄与する。
【0057】
この巻回体形成装置2では、切断片Spを押出機本体20に戻す回収装置16を備えている。この切断片Spは再利用されている。この巻回体形成装置2では、ストリップSから切断片Spを分割することによって、ゴム組成物Rが無駄に使用されることが抑制されている。
【0058】
この巻回体形成装置2では、端検知センサー18がストリップSの後端を検知している。制御装置は、ストリップSの後端位置を特定している。制御装置は、この後端位置から切断位置を決定している。切断装置10は、この切断位置でストリップSを切断している。この巻回体形成装置2は、ストリップSの後端位置を基準にストリップSを切断することで、縮み変形する後端部を適切に取り除くことができる。
【0059】
巻回体形成装置2では、縮み変形する後端部を適切に取り除ければよい。この端検知センサー18に代えて、ストリップSの幅方向位置を検知する位置センサーが用いられてもよい。ストリップSの幅方向位置を検知することで、ストリップSの幅方向の凹凸が検知される。例えば、巻回体形成装置2は、この位置センサーと切断装置10とを備えていてもよい。制御装置は、位置センサーからストリップSの幅方向位置情報を受信する機能と、この幅方向位置情報からストリップSの後端部の位置を特定する機能と、この特定された後端部の位置からストリップSの切断位置を決定する機能を備えていてもよい。
【0060】
また、この端検知センサー18に代えて、ストリップSの表面の平坦度を検知する機能を有する表面センサーが用いられてもよい。ストリップSの表面の平坦度を検知することで、ストリップSの厚さ方向の凹凸が検知される。例えば、巻回体形成装置2は、この位置センサーと切断装置10とを備えていてもよい。制御装置は、表面センサーからストリップSの表面の平坦度情報を受信する機能と、この平坦度情報からストリップSの後端部の位置を特定する機能と、この特定された後端部の位置からストリップSの切断位置を決定する機能を備えていてもよい。
【0061】
この巻回体形成装置2は、圧延機6において、ストリップSを巻回される厚さより厚く圧延できる。この巻回体形成装置2は、薄いストリップSの密着やちぎれの発生が抑制できる。また、薄いストリップSは、その長手方向の張力を取り除くと縮れ変形し易い。この巻回体形成装置2では、縮れ変形し易い後端部の切断片Spをストリップ本体Sbから切り離している。これにより、薄いストリップ本体Sbで形成される巻回体であっても、形状精度に優れるゴム部材を形成できる。この観点から、この巻回体形成装置2を用いた製造方法は、厚さが薄いストリップ本体Sbの巻回に適している。この観点から、このストリップ本体Sbの厚さは、好ましくは0.6(mm)以下であり、更に好ましくは0.5(mm)以下である。また、ストリップ本体Sbの破断等を抑制する観点から、このストリップ本体Sbの厚さは、好ましくは0.3(mm)以上である。本発明において、ストリップ本体Sbの厚さは、搬送ベルト33に貼り付けられた状態で、測定される。この厚さは、長手方向に位置を変えて10箇所測定し、その平均値として求められる。
【0062】
高粘着性のゴム組成物RからなるストリップSでは、圧延機6のカレンダーロール28に密着し易い。この様なストリップSの粘着性は、高温状態では更に高い。この巻回体形成装置2は、ストリップSを厚く圧延することで、圧延機6でのストリップSの過度の密着が抑制できる。この観点から、この巻回体形成装置2を用いた製造方法は、タックが6.0(N)以上であるストリップ本体Sbの巻回に、適している。
【0063】
本発明のタックは、粘着性試験機として、東洋精機製作所製「PICMAタックテスター」を用いて測定された粘着力(N)を表している。12.7(mm)×152(mm)の未加硫ゴムからなる試験片を準備する。この試験片が、JIS T9233に準拠して、温度23℃、圧着荷重4.9(N)、圧着時間10秒の条件で、アルミニウム製の接着部円盤に圧着される。その後、速度10(mm/min)の条件で、接着部円盤から引きはがされる。この引きはがすときの力の最大値が求められる。この最大値が、本発明のタックの値である。このタックの値は、5回の測定の平均値として求められる。このタックの値が大きいほど、粘着性が高い。
【0064】
この巻回体形成装置2を用いたゴム部材の製造方法は、トレッド部材に限らず、タイヤの各部のゴム部材の形成に用いられる。タイヤの各部のなかで、トレッドは、高いグリップ力が要求される。このため、トレッドを形成するトレッド部材には、粘着力の高いゴム組成物Rが用いられる。この観点から、この製造方法は、巻回体としてのトレッド部材の形成に特に適している。
【0065】
レース用タイヤのトレッドでは、一般的なタイヤに比べて更に高いグリップ力が要求される。このため、レース用タイヤでは、更に粘着性の高いゴム組成物Rが用いられる。また、レース用タイヤでは、トレッドのゴムの厚さが薄い。薄いトレッドの形状をストリップSで形成するためには、薄いストリップSを用いる必要がある。レース用タイヤでは、一般のタイヤに比べて、粘着性の高いゴム組成物Rからなり、かつ薄いストリップSでトレッド部材が形成される。この観点から、この製造方法は、レース用タイヤのトレッド部材の形成に特に適している。
【0066】
この巻回体形成装置2では、回転体としてドラム14を例に説明がされたが、これに限られない。回転体として、巻回体と共に金型に投入される中子が用いられてもよい。この巻回体形成装置2では、速度Vbと速度Vrとの差によって、ストリップSに張力が付与されたが、これに限られない。例えば、圧延機6とベルトコンベア30との間で、ストリップSにテンションローラが押し付けられて、ストリップSに張力が付与されてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0068】
[実施例1]
図1に示された巻回体形成装置を用いて、ストリップが巻回されて、トレッド部材が形成された。このトレッド部材を用いてローカバーが形成され、このローカバーからタイヤが製造された。このタイヤが30本製造された。このタイヤは、四輪自動車のレース用タイヤであった。タイヤサイズは、「300/680R18 SLICK」であった。このストリップの幅は20(mm)であり、厚さは0.5(mm)であった。このストリップのタックは、7.0(N)であった。
【0069】
[比較例1]
ストリップの後端部が切断されなかった他は、実施例1と同様にして、トレッド部材が形成された。このトレッド部材を用いてローカバーが形成され、このローカバーからタイヤが製造された。このタイヤが30本製造された。
【0070】
[ストリップの位置ずれ評価]
巻回体形成工程において、トレッド部材が目視検査された。ストリップが2(mm)以上ずれた箇所があるか否かが検査された。その結果が、表1に示されている。
【0071】
[A/T発生率評価]
製造されたタイヤのA/T(エアートレッド)の発生の有無が検査された。その結果が実施例1を100とする指数として表1に示されている。この指数は大きいほどA/Tの発生率が低い。この指数は、大きいほど、好ましい。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示されるように、実施例では、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。