(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記会話支援処理において、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインよりも大きくなるように前記会話処理部を制御し、前記オーディオ支援処理において、前記所定の周波数帯域におけるゲインが前記他の周波数帯域におけるゲインよりも小さくなるように前記オーディオ処理部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車載用音処理装置。
前記制御部は、前記オーディオ支援処理を実行させ、且つ前記会話支援処理を実行させない場合、前記オーディオ支援処理において、前記車室内のノイズの大きさに対する前記入力音信号の大きさの比が大きくなるとゲインを単調に減少させるように前記オーディオ処理部を制御することを特徴とする請求項3に記載の車載用音処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施の形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0013】
<1.実施形態>
本実施形態に係る車載用音処理装置1は車両100に用いられる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車載用音処理装置1を搭載した車両100の平面図である。
車両100の車室Rには、車載用音処理装置1の他に、矩形に配置された4つの座席51〜54と、フロントライトドア71と、フロントレフトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74とが配置される。座席51は運転席であり、座席52は助手席であり、座席53は後部右座席であり、さらに、座席54は後部左座席である。座席51〜54の各々は、布又は革を素材とする材質であり吸音性を有する。座席51〜54は、同じ方向を向いている。
【0014】
車載用音処理装置1は、第1スピーカ21、第2スピーカ22、第3スピーカ23及び第4スピーカ24、並びに第1マイク11、第2マイク12及びノイズ検出マイク13を含む。
第1マイク11、第2マイク12及びノイズ検出マイク13の各々は、集音した音を電気信号に変換して出力する。第1マイク11は、リアレフトドア74に設けられ後部の座席54に座る発話者の声を集音する役割を担う。第2マイク12は、フロントライトドア71に設けられ、座席51に座る発話者の声を集音する役割を担う。ノイズ検出マイク13は車室Rの天井に配置され、例えばルームランプ近傍に設けられており、車室Rの中のノイズを集音する役割を担う。車室Rの中のノイズには、エンジンの回転に伴うエンジン音と走行中にタイヤが回転しながら地面と接触することによって生じる音、風切り音、車室内の空調機の音、及び車外からの環境音などが含まれる。
【0015】
図2は、車載用音処理装置1の電気的な構成を示すブロック図である。車載用音処理装置1は、第1マイク11、第2マイク12及びノイズ検出マイク13、利用者が指示を入力するために用いる操作部30、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ(以下、ADCと称する)41〜43、プロセッサ60、メモリM、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ(以下、DACと称する)81〜84、アンプ91〜94、並びに第1スピーカ21、第2スピーカ22、第3スピーカ23及び第4スピーカ24を備える。
【0016】
本実施形態の車載用音処理装置1は会話を聞き取り易くする会話支援処理と、オーディオを聴き取り易くするオーディオ新処理とを実行可能である。操作部30は、例えば、タッチパネルを有し、利用者はアイコンをタッチすると、車載用音処理装置1に対する指示が入力できるようになっている。より具体的には、操作部30を用いて、会話支援処理及びオーディオ支援処理の各々について有効とするか無効とするかを指定できる。操作部30は利用者の操作に応じた操作信号30aを出力する。
【0017】
プロセッサ60は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等で構成されており、メモリMに記憶されている制御プログラムを実行する。これにより、プロセッサ60は、会話処理部61、制御部62、オーディオ処理部63及び合成部64として機能する。メモリMは、制御プログラムの他に、会話支援処理に用いる第1の会話支援処理パラメーターSCP1及び第2の会話支援処理パラメーターSCP2、並びにオーディオ支援処理に用いる第1のオーディオ支援処理パラメーターACP1及び第2のオーディオ支援処理パラメーターACP2を記憶している。さらに、メモリMはプロセッサ60の作業領域として機能する。
【0018】
第1マイク11が後部座席で集音した音を示すアナログ信号を出力すると、ADC41は、アナログ信号をデジタル信号である第1入力会話信号41aに変換して会話処理部61と制御部62とに出力する。また、第2マイク12が前部座席で集音した音を示すアナログ信号を出力すると、ADC42は、アナログ信号をデジタル信号である第2入力会話信号42aに変換して会話処理部61と制御部62とに出力する。
【0019】
会話処理部61は、後部座席で集音した音を示す第1入力会話信号41a及び前部座席で集音した音を示す第2入力会話信号42aに基づいて、制御部62の制御の下、会話支援処理を実行して会話を支援するための第1出力会話信号611a及び第2出力会話信号612aを生成する。
オーディオ処理部63は、CDプレーヤー等の外部機器からデジタル信号の形式で供給される入力音信号Dsに基づいて第1〜第4出力音信号631a〜634aを生成するオーディオ支援処理を、制御部62の制御の下、実行する。この場合、オーディオ処理部63は、車両100の走行に伴う車室Rの内のノイズの大きさに応じて、第1〜第4出力音信号631a〜634aの大きさを調整する。
【0020】
制御部62は、会話判定部621とノイズ測定部623とを備える。この例の会話判定部621は、第1入力会話信号41a及び第2入力会話信号42aに基づいて、会話の有無を判定する。
【0021】
図3は、会話判定部621の動作を示すフローチャートである。会話判定部621は、第1入力会話信号41aから音声帯域(例えば、300Hz〜3400Hz)の成分を抽出する(ST1)。また、会話判定部621は、第2入力会話信号42aから音声帯域の成分を抽出する(ST2)。次に、会話判定部621は、ステップST1及びST2において抽出した成分のいずれか一方が所定レベル以上であるか否かを判定する(ST3)。所定レベルは車室Rの内部における会話の有無を判定できるように定められている。2人が会話する場合、一方が喋っている時、他方は聞いている。このため、抽出した成分のいずれか一方が、所定レベルを以上であれば会話中となる。そこで、ステップST3の判定結果が肯定である場合、会話判定部621は会話有りと判定する(ST4)。
【0022】
一方、ステップST3の判定結果が否定である場合、会話判定部621は、ステップST1及びST2において抽出した成分の両方が所定レベル未満となってから所定時間が経過したか否かを判定する(ST5)。会話判定部621は、ステップST5の判定結果が肯定である場合、会話無しと判定する(ST6)一方、ステップST5の判定結果が否定である場合は、会話有りと判定する(ST4)。
【0023】
ステップST6に判定において、単に抽出した成分の両方のレベルが所定レベル未満となるだけで無く、所定時間の経過を判定条件としたのは、以下の理由による。例えば、前部座席の運転手と後部座席の乗客が行き先について話し合う場合、発話と発話の間に会話が途切れることがある。このような場合に、無言の期間を会話無しと判定すると、運転手と乗客が行き先について話している間に、判定結果が会話有りと会話無しとで頻繁に切り替わる可能性がある。会話判定部621の判定結果は、会話処理部61における会話支援処理の処理内容に影響を与えるので、一連の会話中に判定結果が頻繁に切り替わると、会話が却って聞き取りづらくなる。そこで、所定時間継続して発話が無い場合を、会話無しと判定したのである。
【0024】
説明を
図2に戻す。ノイズ測定部623は、ノイズ検出マイク13の出力信号をADC43においてデジタル信号に変換して得た信号43aに基づいて、車室Rの内部におけるノイズを測定して、ノイズの大きさを示す検出信号Nを生成する。
【0025】
制御部62は、会話処理部61及びオーディオ処理部63に対して、会話支援処理を実行するか否かを指示する会話制御信号C1、オーディオ支援処理を実行するか否かを示すオーディオ制御信号C2、及び検出信号Nを出力する。
会話制御信号C1は、操作信号30aが会話支援処理を有効にすることを示し、且つ、会話判定部621によって会話中と判定された場合に有効となり(会話支援処理を実行)、それ以外の場合に無効(会話支援処理を実行しない)となる。
一方、オーディオ制御信号C2は、操作信号30aがオーディオ支援処理を有効にすることを示す場合に有効となり(オーディオ支援処理を実行)、それ以外の場合に無効(オーディオ支援処理を実行しない)となる。
【0026】
この結果、会話支援処理とオーディオ支援処理との組み合わせは以下の4通りとなる。第1態様は、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時実行する態様である。第2態様は、会話支援処理を実行し、且つオーディオ支援処理を実行しない態様である。第3態様は、会話支援処理を実行せず、且つオーディオ支援処理を実行する態様である。第4態様は会話支援処理及びオーディオ支援処理を共に実行しない態様である。
【0027】
図4に会話処理部61、オーディオ処理部63及び合成部64の詳細な構成を示す。同図に示すように会話処理部61は、第1入力会話信号41aに会話支援処理を施して第1出力会話信号611aを生成する音処理部611と、第2入力会話信号42aに会話支援処理を施して第2出力会話信号612aを生成する音処理部612とを備える。
オーディオ処理部63は、入力音信号Dsにオーディオ支援処理等を施して、第1出力音信号631a、第2出力音信号632a、第3出力音信号633a、及び第4出力音信号634aを生成する。
【0028】
合成部64は、第1出力会話信号611aと第1出力音信号631aとを加算して第1信号D1を生成する加算器641と、第2出力会話信号612aと第2出力音信号632aとを加算して第4信号D4を生成する加算器642とを備える。また、合成部64は、第3出力音信号633aを第2信号D2として出力し、第4出力音信号634aを第4信号D4として出力する。
第1信号D1、第2信号D2、第3信号D3、及び第4信号D4は、
図2に示すDAC81〜84によってデジタル信号からアナログ信号に変換され、さらにアンプ91〜94によって増幅される。アンプ91〜94は第1音信号S1、第2音信号S2、第3音信号S3、及び第4音信号S4を第1〜第4スピーカ21〜24に供給する。
【0029】
図5は会話処理部61の動作を示すフローチャートである。まず、音処理部611及び612は、会話制御信号C1が会話支援処理の実行を示すか否かを判定する(ST10)。ステップST10の判定結果が否定である場合、音処理部611及び612は、会話支援処理を実行しない(ステップST16)。
一方、ステップST10の判定結果が肯定である場合、音処理部611及び612は、オーディオ制御信号C2がオーディオ支援処理の実行を示すか否かを判定する(ST11)。ステップST11の判定結果が否定である場合には、音処理部611及び612は、第2態様に対応する第1の会話支援処理パラメーターSCP1をメモリMから読み出す(ST12)。一方、ステップST11の判定結果が肯定である場合には、音処理部611及び612は、第1態様に対応する第2の会話支援処理パラメーターSCP2をメモリMから読み出す(ST13)。
【0030】
この後、音処理部611は、第1入力会話信号41aと検出信号Nとに基づいて第1のSN比を算出し、音処理部612は、第2入力会話信号42aと検出信号Nとに基づいて第2のSN比を算出する(ST14)。
【0031】
次に、音処理部611は、メモリMから読み出した第1の会話支援処理パラメーターSCP1又は第2の会話支援処理パラメーターSCP2と第1のSN比と基づいて、周波数特性を決定し、決定した周波数特性を第1入力会話信号41aに付与して第1出力会話信号611aを生成する(ST15)。会話支援処理で付与する周波数特性について
図6を参照して説明する。
【0032】
図6は、会話支援処理におけるアシスト量を示すグラフである。ここで、アシスト量とは、入力に対する出力のゲインの意味であり、単位は[dB]である。アシスト量が0[dB]の場合にゲインが「1」となる。同図において、点線は、第1のSN比と第2態様に対応する第1の会話支援処理パラメーターSCP1とを用いて生成した周波数特性である一方、実線は、第1のSN比と第1態様に対応する第2の会話支援処理パラメーターSCP2とを用いて生成した周波数特性である。アシスト量の周波数特性は、いずれの場合も周波数f1から周波数f2までの所定の周波数帯域で他の周波数帯域と比較して大きくなる。周波数f1は例えば300Hzであり。周波数f2は3400Hzである。300Hzから3400Hzまでの所定の周波数帯域は音声帯域に相当する。
【0033】
即ち、会話支援処理では、第1のSN比が高くなる程、アシスト量が小さくなるように設定される。例えば、
図6に示す例では、AS2>AS1となっている。これは、車室Rの内部のノイズが小さくなって第1のSN比が大きくなると、会話が聞き取り易くなるので、大きなアシストは不要となるからである。
【0034】
また、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する第1態様の周波数特性は、会話支援処理のみを実行する第2態様の周波数特性と比較して、アシスト量が小さくなるように設定される。このように会話支援処理を設定したのは、以下の理由による。即ち、会話支援処理のみを実行する場合には、オーディオ支援処理とは無関係に会話の聞き取り易さの観点からアシスト量を決定する。一方、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合には、オーディオ支援処理のアシスト量を考慮して、会話支援処理のアシスト量を会話支援処理のみを実行する場合と比較して小さくなるように設定している。
【0035】
図7は、オーディオ支援処理におけるアシスト量を示すグラフである。同図において、点線は、第2のSN比と第3態様に対応する第1のオーディオ支援処理パラメーターACP1とを用いて生成した周波数特性である。この例では、周波数特性は略一定である。具体的には、制御部62は、オーディオ支援処理を実行させ、且つ会話支援処理を実行させない場合、オーディオ支援処理において、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインと略同じになり、第2のSN比(車室内のノイズの大きさに対する入力音信号Dsの大きさの比)が大きくなるとゲインを単調に減少させるようにオーディオ処理部63を制御する。
【0036】
次に、実線は、第2のSN比と第1態様に対応する第2のオーディオ支援処理パラメーターACP2とを用いて生成した周波数特性である。この場合、アシスト量の周波数特性は、周波数f1から周波数f2までの所定の周波数帯域で小さくなる。
【0037】
同図から明らかなように、オーディオ支援処理では、第2のSN比が高くなる程、アシスト量が小さくなるように設定される。例えば、
図7に示す例では、AS4>AS3となっている。これは、車室Rの内部のノイズが小さくなって第2のSN比が大きくなると、オーディオが聞き取り易くなるので、大きなアシストは不要となるからである。
【0038】
また、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する第1態様の周波数特性を、オーディオ支援処理のみを実行する第3態様の周波数特性と異ならせている。つまり、オーディオ支援処理のみを実行する場合の周波数特性が周波数によらず一定であるのに対し、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合の周波数特性は、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインよりも小さくなるように設定されている。
オーディオ支援処理のみを実行する場合には、会話支援処理との関係を考慮してアシスト量を決定する必要がないので、全帯域で一定のアシスト量としている。一方、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合には、会話支援処理においてアシスト量を大きくした所定の周波数帯域については、アシスト量を小さくしている。このように会話支援処理を考慮することによって、所定の周波数帯域において音の大きさが大きくなり過ぎないように制御することができる。
【0039】
また、制御部62は、上述したようにオーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行させる場合、会話支援処理において、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインよりも大きくなるように会話処理部61を制御し、オーディオ支援処理において、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインよりも小さくなるようにオーディオ処理部63を制御する。即ち、会話支援処理で強調される所定の周波数帯域は、オーディオ支援処理では減衰される。
このように周波数特性を調整することによって、ハウリングを抑圧することが可能となる。第4スピーカ24から放音された音は、第1マイク11によって集音され、会話支援処理が施されて第1スピーカ21から放音される。第1スピーカ21から放音された音は、第2マイク12によって集音され、会話支援処理が施されて第4スピーカ24から放音され、この音を第1マイク11が集音する。ここで、最初に第4スピーカ24から放音される音には、入力音信号Dsに対応する音信号成分が含まれている。しかしながら、放音される音は所定の周波数帯域のゲインが他の周波数帯域と比較してゲインが小さくなるように調整されている。当該音信号成分は、会話支援処理によって所定の周波数帯域が強調されて第1スピーカ21から放音されても正帰還が掛かるほど大きくならない。この結果、ハウリングを抑圧することができる。
【0040】
<2.変形例>
以上の実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0041】
<2−1:変形例1>
上述した実施形態では、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合の会話支援処理の内容は、会話支援処理を実行し且つオーディオ支援処理を不実行とする場合と異なるものにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、会話支援処理の処理内容は、同じであってもよい。この場合、メモリMには第1の会話支援処理パラメーターSCP1のみを記憶し、会話支援処理を実行する場合に、第1の会話支援処理パラメーターSCP1を用いて第1入力会話信号41a及び第2入力会話信号42aに周波数特性を付与すれば良い。
【0042】
この変形例によれば、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合に、会話支援処理の内容を会話支援処理のみを実行する場合と同じにするので、会話中にオーディオ支援処理が有効になっても、会話支援処理の内容に変化はないので、利用者に違和感を与えることがない。
この場合、制御部62は、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行させる場合、オーディオ支援処理の内容を、オーディオ支援処理を実行させ且つ会話支援処理を実行させない場合と異ならせるようにオーディオ処理部63を制御する。
【0043】
<2−2:変形例2>
上述した実施形態では、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合のオーディオ支援処理の処理内容は、オーディオ支援処理を実行し且つ会話支援処理を不実行とする場合と異なるものにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、オーディオ支援処理の内容は、同じであってもよい。即ち、制御部62は、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行させる場合、オーディオ支援処理の内容を、オーディオ支援処理を実行させ且つ会話支援処理を実行させない場合と同じにするようにオーディオ処理部63を制御する。
【0044】
この場合、メモリMには第1のオーディオ支援処理パラメーターACP1のみを記憶し、オーディオ支援処理を実行する場合に、第1のオーディオ支援処理パラメーターACP1を用いて入力音信号Dsに周波数特性を付与すれば良い。
この変形例によれば、会話支援処理とオーディオ支援処理とを同時に実行する場合に、オーディオ支援処理の内容をオーディオ支援処理のみを実行する場合と同じにするので、オーディオ支援処理中に会話支援処理が追加されても、オーディオ支援処理の内容に変化はないので、利用者に違和感を与えることがない。
この場合、制御部62は、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行させる場合、会話支援処理の内容を、会話支援処理を実行させ且つオーディオ支援処理を実行させない場合と異ならせるように会話処理部61を制御する。
【0045】
<2−3:変形例3>
上述した実施形態においては、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行したが、本発明はこれに限定されるものではない。オーディオ支援処理を実行するための必要条件を条件1、会話支援処理を実行するための必要条件を条件2としたとき、制御部62は、条件1及び条件2が充足される場合に、会話支援処理を実行するように会話処理部61を制御すると共に、オーディオ支援処理を実行しないようにオーディオ処理部63を制御する。また、制御部62は、条件1を充足し、条件2を充足しない場合に、会話支援処理を実行しないように会話処理部61を制御すると共に、オーディオ支援処理を実行するようにオーディオ処理部63を制御する。
【0046】
より具体的には、制御部62は、利用者の操作に応じて生成され、オーディオ支援処理及び会話支援処理の各々について有効にするか無効にするかを示す操作信号30aが、オーディオ支援処理及び会話支援処理を有効することを示す場合、会話支援処理を実行させるように会話処理部61を制御し、オーディオ支援処理を実行させないようにオーディオ処理部63を制御すればよい。この場合、条件1は、利用者によってオーディオ支援処理を有効にする操作がなされたことであり、条件2は、利用者によって会話支援処理を有効にする操作がなされたことである。
【0047】
なお、制御部62は、条件2として、利用者によって会話支援処理を有効にする操作がなされ、且つ会話判定部621の判定結果が会話有りであってもよい。この場合、制御部62は、利用者の操作に応じて生成され、オーディオ支援処理及び会話支援処理の各々について有効にするか無効にするかを示す操作信号30aが、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に有効にすることを示し且つ会話判定部621の判定結果が会話有りを示す場合、会話支援処理を実行させるように会話処理部61を制御し、オーディオ支援処理を実行させないようにオーディオ処理部63を制御してもよい。
【0048】
<2−4:変形例4>
上述した実施形態において、車室Rの内のノイズは、ノイズ測定部623において測定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ノイズの大きさはどのような手法によって取得されてもよい。例えば、車両を制御する機器か取得されるエンジンの回転数及びアクセル量の少なくとも一方から、ノイズの大きさを推定してもよい。より具体的には、エンジンの回転数及びアクセル量の少なくとも一方とノイズの大きさとを対応付けて記憶した記憶部を備え、これを参照してノイズの大きさを推定してもよい。
【0049】
<2−5:変形例5>
上述した実施形態において、会話判定部621は第1入力会話信号41a及び第2入力会話信号42aに基づいて会話の有無を安定したが、本発明はこれに限定されるものでな無く、会話判定部621はどのような方法で会話の有無を判定してもよい。例えば、会話判定部621は、シートベルトの装着の有無を検出するセンサの出力信号に基づいて、会話の有無を判定してもよい。
【0050】
<2−6:変形例6>
上述した実施形態では、オーディオ支援処理を実行する必要条件は、利用者がオーディオ支援処理を有効にする操作を行うことであったが、これに加えて、入力音信号Dsが供給されることを加えてもよい。
【0051】
<2−7:変形例7>
上述した実施形態では、会話支援処理に用いる第1の会話支援処理パラメーターSCP1及び第2の会話支援処理パラメーターSCP2、並びにオーディオ支援処理に用いる第1のオーディオ支援処理パラメーターACP1及び第2のオーディオ支援処理パラメーターACP2をメモリMから読み出して、会話処理部61及びオーディオ処理部63で演算することによって、会話支援処理に用いる周波数特性と、オーディオ支援処理に用いる周波数特性とを決定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メモリMに、会話支援処理に用いる周波数特性として、オーディオ支援処理の有無及び第1のSN比とアシスト量とを対応付けて記憶したテーブルを格納し、会話処理部61は、当該テーブルを参照して、会話支援処理に用いる周波数特性を特定してもよい。同様に、メモリMに、オーディオ支援処理に用いる周波数特性として、会話支援処理の有無及び第2のSN比とアシスト量とを対応付けて記憶したテーブルを格納し、オーディオ処理部63は、当該テーブルを参照して、オーディオ支援処理に用いる周波数特性を特定してもよい。
【0052】
<2−8:変形例8>
上述した実施形態では、会話を集音するために、座席54の近くに第1マイク11を配置し、第2マイク12を座席51の近くに配置したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各座席51〜54に対応するように4個のマイクを設け、これらも用いて会話支援処理を実行してもよい。この場合、4個のマイクは、座席51〜54に各々対応する天井に設けてもよい。
また、本発明が適用される車両は、実施形態で説明した矩形に配置された4つの座席51〜54を持つ車両100に限られず、例えば、3列以上の座席を持つ車両であってもよい。この場合、全ての座席の各々に対応するマイクを設けてもよいし、一部の座席の各々に対応するマイクを設けてもよい。
さらに、上述した実施形態では、ノイズ検出マイク13を用いたが、4個のマイクのうち少なくなくとも一つを用いてノイズを検出してもよい。この場合は、構成を簡素化できる。
【0053】
<3.各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様>
上述した各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
車載用音処理装置の一態様は、車両の車室内のノイズの大きさに応じて、入力音信号に基づいて出力音信号を生成するオーディオ支援処理を実行可能なオーディオ処理部と、
前記車両のいずれかの座席で集音した音を示す入力会話信号に基づいて出力会話信号を生成する会話支援処理を実行可能な会話処理部と、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記オーディオ支援処理の内容を、前記オーディオ支援処理を実行させ且つ前記会話支援処理を実行させない場合と異ならせるように前記オーディオ処理部を制御する制御部と、を備える。
この態様によれば、オーディオ支援処理及び会話支援処理が同時に実行される場合、オーディオ支援処理の内容が、オーディオ支援処理を実行させ且つ会話支援処理を実行させない場合と異なるので、同時処理時に音が大きくなり過ぎて却って聞き取りに難くなるといった不都合を軽減することができる。
【0054】
上述した車載用音処理装置の一態様において、前記制御部は、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記会話支援処理の内容を、前記会話支援処理を実行させ且つ前記オーディオ支援処理を実行させない場合と異ならせるように前記会話処理部を制御することが好ましい。
この態様によれば、オーディオ支援処理及び会話支援処理が同時に実行される場合、会話支援処理の内容を、会話支援処理のみを実行させる場合と異ならせるので、同時処理時に音が大きくなり過ぎて却って聞き取りに難くなるといった不都合を軽減することができる。
【0055】
上述した車載用音処理装置の一態様において、前記制御部は、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記会話支援処理の内容を、前記会話支援処理を実行させ且つ前記オーディオ支援処理を実行させない場合と同じにすることが好ましい。
この態様によれば、オーディオ支援処理及び会話支援処理が同時に実行される場合、会話支援処理の内容を、会話支援処理のみを実行させる場合と同じにするので、会話が聞き取り易くなる。
【0056】
車載用音処理装置の他の態様は、車両の車室内のノイズの大きさに応じて入力音信号に基づいて出力音信号を生成するオーディオ支援処理を実行可能なオーディオ処理部と、前記車両のいずれかの座席で集音した音を示す入力会話信号に基づいて出力会話信号を生成する会話支援処理を実行可能な会話処理部と、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記会話支援処理の内容を、前記会話支援処理を実行させ且つ前記オーディオ支援処理を実行させない場合と異ならせるように前記会話処理部を制御する制御部と、を備える。
この態様によれば、オーディオ支援処理及び会話支援処理が同時に実行される場合、会話支援処理の内容が、会話支援処理を実行させ且つオーディオ支援処理を実行させない場合と異なるので、同時処理時に音が大きくなり過ぎて却って聞き取りに難くなるといった不都合を軽減することができる。
【0057】
上述した車載用音処理装置の態様において、前記制御部は、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記会話支援処理において、所定の周波数帯域におけるゲインが他の周波数帯域におけるゲインよりも大きくなるように前記会話処理部を制御し、前記オーディオ支援処理において、前記所定の周波数帯域におけるゲインが前記他の周波数帯域におけるゲインよりも小さくなるように前記オーディオ処理部を制御することが好ましい。
この態様によれば、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行する場合、オーディオ支援処理では、会話支援処理で強調する所定の周波数帯域のゲインを他の周波数帯域にゲインと比較して小さくするので、ハウリングを抑圧することができる。
【0058】
上述した車載用音処理装置の態様において、前記制御部は、前記オーディオ支援処理を実行させ、且つ前記会話支援処理を実行させない場合、前記オーディオ支援処理において、前記車室内のノイズの大きさに対する前記入力音信号の大きさの比が大きくなるとゲインを単調に減少させるように前記オーディオ処理部を制御することが好ましい。
この態様によれば、オーディオ支援処理のみを実行する場合は、周波数特性を略一定にして、SN比が大きくなるとゲインを単調に増加させるので、過剰に入力音信号を大きくすることなく、音を聞き易くできる。一方、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行する場合には、オーディオ支援処理において会話支援処理において強調する周波数帯域のゲインを下げるので、ハウリングを抑制できる。
【0059】
上述した車載用音処理装置の態様において、前記制御部は、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に実行させる場合、前記オーディオ支援処理の内容を、前記オーディオ支援処理を実行させ且つ前記会話支援処理を実行させない場合と同じにするように前記オーディオ処理部を制御する。
この態様によれば、オーディオ支援処理のみを実行する場合は、周波数特性を略一定にして、SN比が大きくなるとゲインを単調に増加させるので、過剰に入力音信号を大きくすることなく、音を聞き易くできる。一方、オーディオ支援処理及び会話支援処理を同時に実行する場合には、オーディオ支援処理において会話支援処理において強調する周波数帯域のゲインを下げるので、ハウリングを抑制できる。
【0060】
車載用音処理装置の他の態様は、車両の車室内のノイズの大きさに応じて入力音信号に基づいて出力音信号を生成するオーディオ支援処理を実行可能なオーディオ処理部と、前記車両のいずれかの座席で集音した音を示す入力会話信号に基づいて出力会話信号を生成する会話支援処理を実行可能な会話処理部と、会話の有無を判定する会話判定部と、利用者の操作に応じて生成され、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理の各々について有効にするか無効にするかを示す操作信号が、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に有効にすることを示し且つ前記会話判定部の判定結果が会話有りを示す場合、前記会話支援処理を実行させるように前記会話処理部を制御し、前記オーディオ支援処理を実行させないように前記オーディオ処理部を制御する制御部と、を備える。
この態様によれば、利用者がオーディオ支援処理及び前記会話支援処理を有効する操作をし、且つ会話有りとの判定がなされた場合、会話支援処理をオーディオ支援処理に優先して実行するので、2つの処理が同時に実行され音が大きくなり過ぎることを防止でき、さらに、会話支援を優先させるので、車室内のコミュニケーションを向上させることができる。
【0061】
車載用音処理装置の他の態様は、車両の車室内のノイズの大きさに応じて入力音信号に基づいて出力音信号を生成するオーディオ支援処理を実行可能なオーディオ処理部と、前記後部座席で集音した音を示す入力会話信号に基づいて出力会話信号を生成する会話支援処理を実行可能な会話処理部と、利用者の操作に応じて生成され、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理の各々について有効にするか無効にするかを示す操作信号が、前記オーディオ支援処理及び前記会話支援処理を同時に有効にすることを示す場合、前記会話支援処理を実行させるように前記会話処理部を制御し、前記オーディオ支援処理を実行させないように前記オーディオ処理部を制御する制御部と、を備える。
この態様によれば、利用者によってオーディオ支援処理及び会話支援処理を有効とする操作がなされた場合でも、会話支援処理を優先させることができる。