【実施例】
【0022】
表1,2に示す配合からなる26種類のゴム組成物(基準例1〜2、比較例1〜14、実施例1〜10)を、それぞれ加硫促進剤及び硫黄を除く配合成分を秤量し、1.8Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却し、その後、このマスターバッチを1.8Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合することで調製した。
【0023】
尚、表1,2の「SBR」の欄には、油展オイルを除いたスチレンブタジエンゴムの正味の配合量(質量部)を併記し、「シランカップリング剤」の欄には、シランカップリング剤の配合量のシリカの質量に対する割合(質量%)を併記し、「ロジンアミン」の欄には、ロジンアミン中のデヒドロアビエチルアミンの量(質量部)を併記した。
【0024】
得られた26種類のゴム組成物のムーニー粘度を下記に示す方法で測定し加工性の指標とした。
【0025】
ムーニー粘度(ML
1+4 )
得られたゴム組成物のムーニー粘度を、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数、表2では基準例2の値を100とする指数として表1,2にそれぞれ示した。この指数値が小さいほどゴム組成物のムーニー粘度が小さく、加工性が優れることを意味する。
【0026】
得られた26種類のゴム組成物を、所定形状の金型中で、160℃、25分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを作製し、下記に示す方法で300%モジュラスと60℃におけるtanδを測定した。
【0027】
300%モジュラス
得られた加硫ゴムサンプルから、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃で500mm/分の引張り速度で試験を行い、300%モジュラス(300%変形応力)を測定した。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数、表2では基準例2の値を100とする指数として表1,2にそれぞれ示した。この指数値が大きいほど、300%モジュラスが大きく、補強性に優れることを意味する。尚、指数値が「97」以上であれば従来レベルを維持しており、良好な補強性が得られている。
【0028】
60℃におけるtanδ
得られた加硫ゴムサンプルの60℃におけるtanδを、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の条件で測定した。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数、表2では基準例2の値を100とする指数として表1,2にそれぞれ示した。この指数値が小さいほどゴム組成物の60℃におけるtanδが小さく、粘弾性特性に優れることを意味する。尚、指数値が「103」以下であれば従来レベルを維持しており、良好な粘弾性特性が得られている。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE580(オイルを37.5phr含有)
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
・シリカ1:Solvay社製ZEOSIL 165GR(CTAB比表面積が155m
2 /g)
・シリカ2:Solvay社製ZEOSIL Premium 200MP(CTAB比表面積が200m
2 /g)
・CB:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN339
・ステアリン酸:日油社製ステアリン酸YR
・亜鉛華:正同化学社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:大内新興化学社製ノクラック6C
・シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・ステアリルアミン:花王社製ファーミン80
・ガムロジン:荒川化学工業社製中国ロジンWW
・スチレン変性ガムロジン:アイレック社製MY‐60
・ロジンエステル:荒川化学工業社製パインクリスタルD‐6011
・ロジンアミン:丸善油化社製ロジンアミン(デヒドロアビエチルアミンを50質量%含有)
・硫黄:軽井沢精錬所社製油処理イオウ
・加硫促進剤1:大内新興化学社製ノクセラーCZ‐G
・加硫促進剤2:住友化学社製ソクシノールD‐G
【0032】
表1から明らかなように、実施例1〜5のゴム組成物は、基準例1と同等の良好な補強性(300%モジュラス)および粘弾性特性(60℃におけるtanδ)を維持しながら、基準例1に対して加工性(ムーニー粘度)を向上し、これら性能を高度にバランスよく両立した。同様に、表2から明らかなように、実施例6〜10のゴム組成物は、基準例2と同等の良好な補強性(300%モジュラス)および粘弾性特性(60℃におけるtanδ)を維持しながら、基準例2に対して加工性(ムーニー粘度)を向上し、これら性能を高度にバランスよく両立した。
【0033】
一方、プロセスオイルが配合された比較例1および比較例8、ステアリルアミンが配合された比較例2および比較例9、ガムロジンが配合された比較例3および比較例10、スチレン変性ガムロジンが配合された比較例4および比較例11、ロジンエステルが配合された比較例5および比較例12はいずれも、それぞれの対応する基準例に対して補強性(300%モジュラス)および粘弾性特性(60℃におけるtanδ)のいずれかまたは両方が悪化した。ステアリルアミンとガムロジンを共に含有する比較例6および比較例13であっても、補強性(300%モジュラス)が悪化し、補強性と粘弾性特性と加工性のすべてをバランスよく良好に発揮することはできなかった。比較例7および比較例14は、ロジンアミン(デヒドロアビエチルアミン)の配合量が過多であるため、加工性(ムーニー粘度)が大幅に改善する一方で補強性(300%モジュラス)および粘弾性特性(60℃におけるtanδ)を維持することができなかった。