(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体モジュールと前記放熱シートの間、及び、前記放熱シートと前記放熱シートの前記半導体モジュールと反対側の面に設けられた冷却装置の間のうち少なくとも一方に熱圧着型の接着剤を含む接合層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(半導体装置の構造)
本発明の実施の形態に係る半導体装置は、
図1に示すように、半導体モジュール(1,2,3,4)と、半導体モジュール(1,2,3,4)を内側に収納するケース7を備える。半導体モジュール(1,2,3,4)は、回路基板(1,2,4)と、回路基板(1,2,4)の上に設けられた半導体チップ3を有する。
【0013】
半導体モジュール(1,2,3,4)の回路基板(1,2,4)としては、絶縁基板1の上面及び下面のそれぞれに、銅箔等を表面金属箔2及び裏面金属箔4として設けた銅接合基板等の構造を採用できる。銅接合基板の代表例としてはDCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板が知られている。絶縁基板1としては、例えばアルミナ(Al
2O
3)セラミックス、窒化アルミ(AlN)セラミックス、窒化ケイ素(Si
3N
4)セラミックス等を用いることができる。半導体チップ3である半導体素子としては、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等を採用できる。半導体チップ3の内部の半導体領域の積層構造や配置状態の図示は省略する。
【0014】
半導体モジュール(1,2,3,4)の裏面金属箔4の下面には、半導体モジュール(1,2,3,4)を載置する放熱シート5が更に備えられる。半導体モジュール(1,2,3,4)の下には、放熱シート5を介して冷却装置6が更に設けられる。
【0015】
放熱シート5は、
図2(a)に示すように、平面パターンでほぼ矩形状である。放熱シート5は、半導体モジュール(1,2,3,4)の下面に接合する主面を上側に有するシート状の第1伝導部5a、及び第1伝導部5aの端部に第1伝導部5aと並んで設けられ、第1伝導部5aの上側の主面と連続する主面を上側に有するシート状の第2伝導部5bを有する。
【0016】
回路基板(1,2,4)の裏面金属箔4と冷却装置6の間には、接着剤10bを除き、実質的に放熱シート5が存在するのみで、放熱用の金属ベースが設けられていない。すなわち本発明の実施の形態に係る半導体装置の半導体モジュール(1,2,3,4)は、コストダウンと熱抵抗の低減を図るために冷却ベースを介さずに冷却装置6に直接固定される、いわゆる放熱用ベースレス構造である。放熱用ベースを有する半導体モジュールの場合、例えば裏面側に50μm程度の大きな反りが生じる場合がある。ベースレス構造であれば半導体モジュールの大きな反りの発生が回避されるため、放熱シート5との密着性が更に高まり、半導体装置の放熱性をより高めることができる。尚、回路基板(1,2,4)を冷却装置6とネジ止めする場合には、回路基板(1,2,4)を貫通するネジ止め用の孔部を所定数設けてもよい。
【0017】
ケース7は、樹脂等の絶縁性素材で構成でき、例えば直方体状で底面の一部が開口した箱型で実現できる。本発明の実施の形態に係る半導体装置のケース7の下面は、放熱シート5の第2伝導部5b上に設けられている。そのためケース7の側壁は、第2伝導部5bの外縁の位置から上方に立ち上がるように実現されている。
図1に示すように、半導体モジュール(1,2,3,4)は、ケース7の底面の開口位置から内部に向かって配置されケース7の内側に収納される。半導体モジュール(1,2,3,4)の裏面金属箔4の底面をケース7の底面と同一水平面とすることにより、半導体モジュール(1,2,3,4)はケース7の底部の一部をなす態様で配置されている。
【0018】
図1中のケース7の上部の左右両端に設けられた2個の外部接続端子9a,9bで例示したように、ケース7の天井壁や側壁には、半導体チップ3と電気的に接続される金属製の接続端子等が設けられている。外部接続端子9a,9b以外の接続端子等の接続部材の図示は省略する。
【0019】
また
図1中には、ケース7の内側で、半導体チップ3がケース7にボンディングワイヤー8で接続された状態が例示されている。ケース7の内側には、ボンディングワイヤー8以外にも、半導体チップ3と電気的に接続される他のボンディングワイヤーやリードフレーム等の接続部材を配置できる。
【0020】
冷却装置6は、半導体チップ3の通電動作により半導体チップ3から生じる熱を冷却装置6に流すことにより、半導体モジュール(1,2,3,4)内に熱が蓄積することを低減する。冷却装置6としては、
図1に示すように、突起状の構造物を複数設けて伝熱面積を広げ、熱交換の効率を上げる冷却フィン等を使用できる。他にも放熱・吸熱を目的とするヒートシンク等を使用できる。
【0021】
第1伝導部5a及び第2伝導部5bは一体的に放熱シート5を構成する。第1伝導部5aの上側の主面は本発明の「第1主面」に、第2伝導部5bの上側の主面は本発明の「第2主面」にそれぞれ相当する。
【0022】
第1伝導部5aは放熱シート5の中央に配置されたほぼ矩形状の領域である。第1伝導部5aの主面の矩形は、半導体モジュール(1,2,3,4)の下面すなわち裏面金属箔4の形状とほぼ等しい。そのため裏面金属箔4の下面からの熱を、第1伝導部5aの主面全体で受けることができる。
【0023】
第2伝導部5bは第1伝導部5aの周縁に、第1伝導部5aの周囲を取り囲むように配置された額縁状の領域である。第2伝導部5bは第1伝導部5aの矩形の4辺すべてに連続して設けられているので、第1伝導部5aからの熱全体を偏りなく4方に亘って均等に分散して受け取ることができる。
【0024】
第1伝導部5aは、第1主面に沿った方向である水平方向の熱伝導率と、厚み方向に沿った垂直方向の熱伝導率とが異なる第1の異方性材料からなる。第1の異方性材料は、厚み方向より第1主面に沿った方向の熱伝導率が優位に高い異方性を有する。
図2(b)中には、第1伝導部5aの熱伝導率の優位性が水平方向に延びる3本の双方向矢印で例示されている。
【0025】
第2伝導部5bも、第2主面に沿った方向である水平方向の熱伝導率と、厚み方向に沿った垂直方向の熱伝導率とが異なる第2の異方性材料からなる。第2の異方性材料は、第2主面に沿った方向より厚み方向の熱伝導率が高い異方性を有する。
図2(b)中には、第2伝導部5bの熱伝導率の優位性が、左右の第2伝導部5bの領域中にそれぞれ記載された、垂直方向に延びる3本の双方向矢印で例示されている。尚、説明の便宜のため、放熱シート5の内部のハッチングの図示を省略する。
【0026】
本発明の実施の形態に係る半導体装置では、第1及び第2の異方性材料として、例えばグラファイトシートを採用できる。グラファイトシートの熱伝導率は、例えば内部の一方向において800〜1600W/mK程度であれば、この一方向に直交する他方向の熱伝導率が例えば3〜20W/mK程度と、互いに直交する方向間で熱伝導率が非常に大きく異なる。一方、一般的な等方性部材の内部ではいずれの方向の熱伝導率も概ね等しく、例えばシリコン製の放熱シート5の場合、熱伝導率は1.0〜4.0W/mK程度である。
【0027】
(接着剤)
本発明の実施の形態に係る半導体装置の場合、
図1に示したように、放熱シート5と冷却装置6の間に接着剤10bの層が存在し、放熱シート5及び冷却装置6は、接着剤10bの層を介して接合している。接着剤10bとしては、温度に応じて軟化及び固化する熱可塑性樹脂、又は加熱すると化学反応により固化する熱硬化性樹脂を主成分とする熱圧着型樹脂系が好適である。
【0028】
熱可塑性樹脂系としては、酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系等の公知の材料から適宜選択できる。また熱硬化性樹脂系についても、エポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系、ウレタン樹脂系(ポリウレタン)、エステル樹脂系(ポリエステル)等の公知の材料から適宜選択できる。
【0029】
接着剤10bの層のみの厚みとしては、例えば数μm程度に抑えることが可能である。また放熱シート5としてのグラファイトシートの厚みは、25〜100μm程度である。そのため、本発明の実施の形態に係る半導体装置の場合、放熱シート5及び冷却装置6が接着剤10bの層のみを介して接合することにより、放熱シート5及び冷却装置6間の接合層の厚みを非常に小さく抑えることができる。
【0030】
また
図3に例示する比較例に係る半導体装置のように、放熱シート5及び冷却装置6は両面テープ11を介して互いに表面を対向させて接合する場合、製造コストを抑えるために放熱シート5の冷却装置6側の表面は粗く形成されているので、対向面の間に空隙が生じやすい。しかし接着剤10bによる接合であれば、対向面の間に形成される複数の空隙に漏れなく接着剤10bを充填でき、熱抵抗の低く接合強度の高い良好な接合層を設けることが可能になる。即ち、放熱シート5及び冷却装置6間に、断熱材となる不要な空気層が発生することを抑制して密着性を高め、放熱シート5の本来の性能を十分に引き出すことができる。例えば、放熱シート5及び冷却装置6間の熱伝導率を1.5〜10W/mK程度に実現できる。
【0031】
一方、一般的な接合材料としての両面テープ11は、中心に位置しポリエチレンテレフタラート(PET)や樹脂等からなる絶縁基体11aと、絶縁基体11aの上面に設けられた第1の粘着層11bと、絶縁基体11aの下面に設けられた第2の粘着層11cとからなる3層構造を備えている。
【0032】
両面テープ11の厚みtdは、通常、5μm程度以上である。そのため、比較例に係る半導体装置の場合、放熱シート5及び冷却装置6が3層構造の両面テープ11を介して接合することにより、放熱シート5及び冷却装置6間の接合層の厚みが20〜60μm程度と大きくなり、熱抵抗も大きくなる。例えば、放熱シート5及び冷却装置6間の熱伝導率は0.2〜0.4W/mK程度に小さくなるため、放熱を十分に行うことができない。
【0033】
また
図3に示すように、両面テープ11による接合の場合、冷却装置6と第2の粘着層11cの間に複数の空隙が残り、断熱材となる不要な空気層が多く発生する。そのため密着性が低く、グラファイトシートのような放熱シート5の本来の性能を十分に引き出すことができない。また両面テープ11の絶縁基体11aのPETやアルミ箔等も断熱材として機能するため熱抵抗が大きくなり、放熱シート5の本来の性能を十分に発揮することができない。
【0034】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置では、半導体チップのジャンクション温度より高いガラス転移温度を持つ接着剤10bが選択されることが好ましい。接着剤10bのガラス転移温度の上限は特に限定されないが、例えば、ガラス転移温度250℃以下が望ましい。また半導体チップ3で生じた熱が接着剤10bに蓄えられた状態では半導体チップ3から回路基板(1,2,4)及び放熱シート5を介して接着剤10bに伝達することを考慮して、例えば半導体チップにシリコンを用いた場合、180℃以上のガラス転移温度特性を有する接着剤10bが好適に選択される。
【0035】
(熱の移動)
次に、
図1及び
図2で示した半導体装置の内部の熱の移動状態を具体的に説明する。半導体チップ3から生じた熱は、
図4に示すように、まず、回路基板(1,2,4)の裏面金属箔4から第1伝導部5aに伝達する。
【0036】
次に熱は、水平方向の熱伝導率が大きな第1伝導部5aの内部で、第1主面に沿って外側へ向かって、第1伝導部5aの端部まで拡散するように移動が促進される。第1伝導部5aの端部には第2伝導部5bが接合されているため、熱は第1伝導部5aの端部に過剰に蓄積されることなく、第1伝導部5a及び第2伝導部5bの端面を通過して、第2伝導部5bへ速やかに移動する。すなわち熱は、平面パターンで、放熱シート5の中央領域から外側の周縁領域へ拡散される。
【0037】
第1伝導部5aの端部における熱の蓄積が低減されるため、第1伝導部5aの内部では、直上に位置する半導体モジュール(1,2,3,4)側から次々と伝達される後続の熱を、効果的に水平方向に拡散することが可能になる。一方、第2伝導部5bの内部では厚み方向の熱伝導率が優位であるため、第1伝導部5aから第2伝導部5bへ移動した熱の、第2伝導部5bの厚み方向に沿った移動が促進される。熱は速やかに第2伝導部5bの下の冷却装置6へ送り出されるため、第2伝導部5bの内部にも過剰に蓄積されない。最終的に、第1伝導部5a及び第2伝導部5bから厚み方向に沿って冷却装置6に移動してきた熱は、冷却装置6によって効率的に放熱される。
【0038】
このように本発明の実施の形態に係る半導体装置の放熱シート5の内部では、周縁領域をなす第2伝導部5bにおいて、半導体チップ3から生じた熱の移動の方向性を約90度変化させる。そして放熱シート5の周縁領域から冷却装置6に送り込む単位時間あたりの熱を従来よりも遥かに大きくできる。
【0039】
図5に、半導体モジュール(1,2,3,4)の下面に放熱シート5としてグラファイトシートと貼り付けた場合と、放熱シート5を用いずに従来のサーマルコンパウンドとしてサーマルグリスを塗布した場合について、それぞれの半導体装置を一定の印加電力で動作させた条件で、それぞれの半導体チップ3の上面の温度を測定した結果を示す。
【0040】
印加電力が20Wの場合、本発明の実施の形態に係るグラファイトシートを用いた半導体装置の方がサーマルグリスを塗布した半導体装置より、温度が低下していることが分かる。また出力が35Wの場合、本発明の実施の形態に係る半導体装置の方がサーマルグリスを塗布した従来の半導体装置より更に大きく温度が低下していることが分かる。
【0041】
本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、水平方向の熱伝導率が優位な第1伝導部5aが中央に設けられ、垂直方向の熱伝導率が優位な第2伝導部5bが第1伝導部5aの周縁領域に設けられた放熱シート5を介して半導体モジュール(1,2,3,4)が冷却装置6に接合される。そのため半導体装置の放熱性を、従来に比べ格段に向上することができる。
【0042】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置によれば、半導体モジュール(1,2,3,4)及び放熱シート5の間及び放熱シート5及び冷却装置6の間に、熱圧着型の接着剤10bを含む接合層が設けられる。そのため接合層の厚みを、従来のような両面テープを用いる場合より薄く抑えることができる。また熱圧着型の接着剤10bを用いることにより、接合層にPET等の不要な部材が存在しないと共に、接合界面における空隙が低減されるので、熱伝導率を高める(言い換えれば、熱抵抗を低くする)ことができる。
【0043】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図1、
図2及び
図4に示した本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を、
図6及び
図7を参照して例示的に説明する。まず印刷技術等により表面上の所定の領域にはんだメッキ処理等が施された回路基板(1,2,4)を用意し、この回路基板(1,2,4)上に、
図6に示すように、半導体チップ3及びその他の所定の部品を搭載し、半導体モジュール(1,2,3,4)を作製する。
【0044】
次に、半導体モジュール(1,2,3,4)をケース7の内側の下部に取り付けてケース7と一体化する。そして半導体チップ3の出力用電極やゲート電極等の電極の表面と、ケース7に設けられた所定の接続端子とを連結する。連結にはボンディングワイヤー8やリードフレーム等の連結部材を用いることができる。リードフレーム等を使用する場合、例えば印刷技術等による電極等の表面へのはんだメッキ処理や、窒素ガス等を用いたはんだ付け、及び所定の洗浄処理等が適宜施される。そしてケース7の内側にシリコンゲルやエポキシ樹脂等の保護用の充填剤を流し込み、所定の硬度に硬化してケース7の内側の半導体モジュール(1,2,3,4)を封止する。
【0045】
次に、ほぼ矩形状で上側に第1主面を有する第1伝導部5aと、第1伝導部5aの周縁に、第1伝導部5aの周囲を取り囲むように配置された額縁状の領域であって、上側に第1主面を有する第2伝導部5bとで構成された放熱シート5を用意する。そして、
図6に示すように、印刷技術等により、放熱シート5の上面に熱圧着型の接着剤10aを塗布する。更に、
図7に示すように、この放熱シート5を半導体モジュール(1,2,3,4)の放熱側となるケース7の下部に貼り付ける。貼り付け時には、接着剤10aを40℃程度以上〜200℃程度以下に熱した状態で、0.5N程度以上〜5N程度以下の圧力で保持する。
【0046】
保持時間は、加熱温度及び保持時の圧力の大きさによって変動する。また、冷却装置を含む半導体装置の形状や大きさによっても条件が変動する。例として、加熱温度が40℃程度、圧力が0.5N程度の場合、保持時間は10分程度である。また加熱温度が200℃程度、圧力が5N程度の場合、保持時間は0.5分程度である。加熱温度が40℃未満の場合、十分な圧着が実現できない。また温度が200℃を超える場合、半導体装置への影響が大きくなるため、加熱温度は200℃程度以下であることが好ましい。
【0047】
次に
図7に示すように、印刷技術等により放熱シート5の下面に熱圧着型の接着剤10bを塗布し、この放熱シート5を冷却装置6の上面に貼り付ける。半導体モジュール(1,2,3,4)と冷却装置6を、例えばネジ止め等で結合する。その際に冷却装置6を30℃程度以上で加熱しながら半導体モジュール(1,2,3,4)と結合することにより接着剤10bが加熱され、半導体モジュール(1,2,3,4)及び冷却装置6の対向面間に接着剤10bが広く行き渡り、対向面間の空隙が充填される。その後、冷却装置6と一体化された半導体モジュール(1,2,3,4)を、加熱装置12から分離すれば、本発明の実施の形態に係る半導体装置を得られる。
【0048】
(半導体装置の製造方法の変形例)
尚、半導体モジュール(1,2,3,4)がベースレス構造であったとしても、半導体モジュール(1,2,3,4)は、作製によって絶縁基板1に生じる内部応力のため、
図8(a)に示すように、冷却装置6側に突出するように反る場合がある。しかし変形例に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体モジュール(1,2,3,4)が反っても放熱シート5を取り付けて、本発明の実施の形態に係る半導体装置を製造できる。
【0049】
まず
図8(b)に示すように、放熱シート5を反った半導体モジュール(1,2,3,4)に接合すると、半導体モジュール(1,2,3,4)の反った下面に応じて、放熱シート5も冷却装置6側に突出する。そこで
図8(b)中で放熱シート5中を第1伝導部5a及び第2伝導部5bに亘って横断する最下段の水平な破線で例示したように、放熱側に位置する放熱シート5の裏面を研磨して平坦化する。そして
図8(c)に示すように、放熱シート5の平坦な裏面と冷却装置6の上面を接合すれば、半導体モジュール(1,2,3,4)と冷却装置6との接合力を高めた半導体装置を得ることができる。
【0050】
尚、
図8(b)中に例示したように、第2伝導部5bの厚さが第1伝導部5aより厚い放熱シート5を用意することが好ましい。第2伝導部5bを第1伝導部5aより一定量厚く設定することにより、反った状態の放熱シート5の下面を平坦化する場合でも、第1伝導部5aの中央部分が所望の放熱作用を実現できるように、第1伝導部5aに必要な厚みを確実に形成することができる。
図8(b)の第1伝導部5aの厚さtgは、裏面金属箔4の中央から裏面金属箔4の端部の間の高低差(反り量)hよりも厚い。また
図8(c)の第1伝導部5aの厚さについては、第1伝導部5aの中央部分が第1伝導部5aの端部よりも薄い。厚さの薄い第1伝導部5aの中央部分が半導体チップ3の中央の下方の近傍に配置されていることがより望ましい。
【0051】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、水平方向の熱伝導率が優位な第1伝導部5aが中央に設けられ、垂直方向の熱伝導率が優位な第2伝導部5bが第1伝導部5aの周縁領域に設けられた放熱シート5を介して半導体モジュール(1,2,3,4)及び冷却装置6を接合する。そのため放熱性を従来に比べ格段に向上した半導体装置を得ることができる。また変形例に係る半導体装置の製造方法の場合、第1伝導部5aの中央部分の厚さが、第1伝導部5aの端部よりも薄いので、中央部分の熱抵抗を低くすることができ、放熱性を向上できる。さらに、厚さの薄い第1伝導部5aの中央部分が半導体チップの中央の下方に配置されているので、半導体チップの中央付近の熱抵抗を低くすることができ、放熱性を一層向上できる。
【0052】
また本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、冷却装置6を加熱しながら半導体モジュール(1,2,3,4)と結合するため接着剤10bが加熱され、半導体モジュール(1,2,3,4)及び冷却装置6の密着性が高まる。そのため、半導体装置の放熱性を向上できる。
【0053】
(連結棒)
次に本発明の実施の形態に係る半導体装置で使用する連結棒(13,15)を、
図9及び
図10を用いて説明する。連結棒(13,15)は、例えばバスバーのように、半導体装置の内部に配置され、半導体モジュール同士、或いは半導体モジュールとケースの間のように、部材間の電気的な接続を実現する。従来のバスバー等の連結部材は半導体装置の高周波動作によって発熱する。
【0054】
本発明の実施の形態に係る半導体装置で使用する連結棒(13,15)は、
図9に示すように、一方向に延びる平板状の連結棒本体13と、連結棒本体13の上面に積層して設けられた放熱シート15とを備える。連結棒本体13と放熱シート15を熱圧着型の接着剤で接着してもよい。連結棒本体13は、公知のバスバー等の部材を使用できるが、放熱シート15としては、グラファイトシート等、互いに直交する方向間の熱伝導率が大きく異なる異方性材料を採用する。
【0055】
図10(a)に示すように、連結棒(13,15)は、例えば半導体モジュール16の外部端子17及びケース18に設けられた所定の接続部の間に架け渡して設けることができる。
図10(a)中に示した放熱シート15は、全体に亘って、主面に平行な方向の熱伝導率が、厚み方向の熱伝導率よりも大きなグラファイトシートである。
【0056】
本発明の実施の形態に係る半導体装置で使用する連結棒(13,15)によれば、連結棒(13,15)の両端間の温度上昇の均一化が促進され、熱分布の偏りを抑制することができる。一方、
図10(b)に示すように、放熱シート15が設けられておらず、連結棒本体13のみからなる連結棒13の場合、特に中央領域の温度上昇が著しくなる。
【0057】
図10(c)中に、本発明の実施の形態に係る半導体装置で使用する連結棒(13,15)の場合の連結棒内部の両端間の温度分布を(a)の曲線で、連結棒本体13のみからなる連結棒13の場合の内部の温度分布を(b)の曲線でそれぞれ示す。本発明の実施の形態に係る半導体装置で使用する連結棒(13,15)の場合、連結棒本体13のみからなる連結棒13の場合より、両端間の温度上昇の均一化が促進され、熱分布の偏りが抑制、特に中央領域の温度上昇が抑制されていることが分かる。
【0058】
図9及び
図10で示した放熱シート15を備える連結棒(13,15)を用いて半導体装置を構成すれば、従来の連結部材を用いた場合より、放熱性を大きく高めた半導体装置を得ることができる。連結棒(13,15)が樹脂等で封止された半導体モジュールの外部に配置される場合、発熱が大きい連結棒(13,15)の中央の周囲に配置された部材への熱の影響を抑制できる。また連結棒(13,15)が半導体モジュールの内部に配置される場合、充填剤であるゲルや樹脂等への高熱の伝達を抑制し、ゲル中の気泡や樹脂の溶融の発生等を防止できる。
【0059】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0060】
例えば
図1、
図2及び
図4に示した半導体装置では、放熱シート5の第2伝導部5bの形状は額縁状であったが、本発明に係る半導体装置では額縁状に限定されない。その他の実施の形態としては、放熱シート5の第2伝導部5bが複数の矩形の放熱シート断片を組み合わせて形成されてもよい。半導体チップ3の配置等を含む半導体装置の仕様や、動作時に生じる熱の分布の偏り具合に応じて、第2伝導部5bを第1伝導部5aの周囲の端部の一部の領域に選択的に設けることができる。また接着剤10bとしては熱圧着型が好適であるが、本発明に係る半導体装置では熱圧着型の接着剤10bに限定されるものではない。
【0061】
また裏面金属箔4を設けないで絶縁基板1の下面を放熱シート5に、接着剤10aを介して直接接合することもできる。直接接合する場合にははんだ等を用いないので、例えば絶縁基板1、表面金属箔2及び半導体チップ3で、半導体モジュール(1,2,3)を構成できる。裏面金属箔4を設けないことにより、余分な部材を削減し、半導体装置のコスト低減を図ることができる。
【0062】
また例えば高出力のパワー半導体装置の場合、絶縁基板としてセラミック系の材料を主成分として用いる場合が多い。しかし裏面金属箔4を設けず、接着剤10aで絶縁基板1と放熱シート5を直接接合する場合、絶縁基板1の材料はセラミック系に限定されないため、材料選択の幅を広げることができる。
【0063】
更に裏面金属箔4を設けない場合、接着剤10aに含まれる樹脂成分と、半導体モジュールの回路基板の絶縁基板1の樹脂成分とを同じに設定できる。例えば接着剤10aがエポキシ樹脂系を含み、絶縁基板1がエポキシ樹脂系を含めば、同じ素材どうしであることから接合部の接合性を高め、半導体装置の強度を高めることができる。
【0064】
また本発明に係る半導体装置は、冷却装置6を必須の構成とすることなく、顧客等に提供できる。例えば
図6に示したような半導体モジュール(1,2,3,4)に放熱シート5を取り付けた状態で顧客等へ納品し、顧客側で放熱シート5付きの半導体モジュール(1,2,3,4)を自ら用意したヒートシンク等の任意の冷却装置6に固定できる。放熱シート5のみを取り付けた状態で半導体装置を提供すれば、顧客側で任意の冷却装置を選択でき、顧客側の利便性を高めることができる。
【0065】
また
図1〜
図10では、半導体チップ3である半導体素子としてIGBTを例として説明したが、本発明はIGBTに限定されない。例えばMOSFET、ダイオード等でもよく、半導体モジュールに用いられ発熱する半導体素子であれば、種々の半導体素子が採用可能である。
【0066】
以上のとおり本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。