特許第6862913号(P6862913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6862913-搬送用ロボットアーム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862913
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】搬送用ロボットアーム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20210412BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B25J19/00 Z
   F16F15/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-36101(P2017-36101)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-140464(P2018-140464A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】森田 健―
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−280935(JP,A)
【文献】 特開2003−266359(JP,A)
【文献】 実開平1−166087(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
F16F 15/00 − 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を介して繋がれた複数のリンクと、
前記複数のリンクのうち、最先端のリンクに設けられた把持部と、
前記複数のリンクの動作および前記把持部の動作を制御する制御部と、を備えた搬送用ロボットアームにおいて、
前記最先端のリンクには、該最先端のリンクの固有振動数と異なる固有振動数を有する負荷質量体と、該負荷質量体を前記最先端のリンクに対して水平方向および鉛直方向の二方向に移動自在に固定する弾性体と、からなる振動減衰部材が取り付けられている搬送用ロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをクランプもしくは吸着等して搬送する、搬送用ロボットアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークの搬送方法は、ロボットアームによる方法やベルトコンベア等による方法など多岐に亘るが、ワークを臨機に把持等して比較的近接したエリア内で搬送する方法としてはロボットアームによる方法が好適である。
【0003】
ここで、特許文献1には、制御対象の振動を抑制しながらモータを滑らかに動作させることを可能にしたモータ制御装置が開示されている。
【0004】
このモータ制御装置は、指令次数に関する変数kを調整することで振動を抑制できる時間関数を指令として用い、計算しやすいようにkを整数にし、移動時間tbとkから振動抑制可能な共振周波数ωsを求め、制御部と制御対象を合わせた全システムを2次遅れ系で近似した際の固有振動角周波数と減衰係数を分子の係数とした指令フィルタ演算を行った信号を新たな指令として制御部へ入力するようにしている。このことにより、制御演算部が外乱オブザーバを持っていない場合や慣性モーメントノミナル値に誤差があった場合、あるいは制御対象の振動が減衰を持つ場合や、制御系によって制御対象の極が大きく変化した場合でも、モータを滑らかに動作させつつ負荷の振動を抑制でき、指令のパラメータを演算する時間を少なくできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−207011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のモータ制御装置を適用したロボットアームをワークの搬送手段として適用した場合、振動を制御したい把持機構部に検出器を取り付ける必要があり、さらには、制御演算をおこなう制御演算部を設ける必要があることから装置製造コストが高価になるといった課題がある。
【0007】
また、検出器と制御演算部間で信号を送受信するためのハーネスを設ける必要があることから、ロボットハンドの動作をハーネスを破断させない動作に規制する必要があり、動作自由度の極めて低い搬送手段となってしまう。
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、シンプルな構成でワークを把持する最先端のリンクの振動を解消もしくは低減することのできる搬送用ロボットアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による搬送用ロボットアームは、関節を介して繋がれた複数のリンクと、前記複数のリンクのうち、最先端のリンクに設けられた把持部と、前記複数のリンクの動作および前記把持部の動作を制御する制御部と、を備えた搬送用ロボットアームにおいて、前記最先端のリンクには、該最先端のリンクの固有振動数と異なる固有振動数を有する負荷質量体と、該負荷質量体を移動自在に固定する弾性体と、からなる振動減衰部材が取り付けられているものである。
【0010】
本発明の搬送用ロボットアームは、複数のリンクを備えたロボットアームの最先端のリンクにおいて、この最先端のリンクの固有振動数と異なる固有振動数を有する負荷質量体と当該負荷質量体を移動自在に固定する弾性体とからなる振動減衰部材を備えている点に特徴を有するものである。
【0011】
振動減衰部材の具体的な構成は特に限定されるものではないが、把持対象のワークの重量に耐えうる剛性を備えた最小限の重量を有するものが好ましく、たとえば縦材と横材が組み合わされたフレーム架構から構成することで、フレーム架構内には自動的に複数の抜き孔が形成されて軽量化が実現できる。
【0012】
たとえば、搬送用ロボットアームの足元に位置する最下端の関節が工場内の床面に回転自在に固定される。そして、たとえば上記するフレーム架構が関節を介して隣接するリンクに回転自在に固定され、フレーム架構の任意箇所(たとえば先端)に把持部が設けられる。
【0013】
ここで、把持部には、クランプ機構や吸着機構など、ワークを把持する適宜の機構が適用される。
【0014】
そして、たとえば上記フレーム架構において、負荷質量体が弾性体を介して取り付けられる。
【0015】
ここで、負荷質量体の固有振動数は最先端のリンク(たとえば上記フレーム架構)の固有振動数と異なるようにその質量およびバネ定数(最先端のリンクに負荷質量体を接続する弾性材のバネ定数)が規定されており、最先端のリンクと異なる固有振動数の負荷質量体が所定の方向に振動することで最先端のリンクの振動を効果的に低減することができる。
【0016】
すなわち、本発明の搬送用ロボットアームでは、ワークを把持する最先端のリンクの振動低減に際し、特許文献1に記載の装置に必須の検出器は不要であり、かつ高精度で複雑な制御演算も不要であり、最先端のリンクと異なる固有振動数の負荷質量体の動きによって当該最先端のリンクの振動を低減するものである。
【0017】
ここで、弾性体には、バネの他、バネとダンパーのユニットが含まれる。たとえば、最先端のリンクが搬送用ロボットアームの足元関節が固定される床面に対して水平姿勢を保持する形態において、弾性体が、水平方向のバネおよびダンパーと、これに直交する鉛直方向のバネおよびダンパーから構成され、これら二方向の弾性体を介して負荷質量体が二方向に往復運動可能な形態が適用できる。この形態では、負荷質量体の水平方向および鉛直方向の往復運動により、最先端のリンクの水平方向および鉛直方向の振動を効果的に低減しながらワークを把持するとともに、把持されたワークを所定の搬送位置まで搬送することが可能になる。
【0018】
なお、本発明の搬送用ロボットアームでは、各関節の水平軸周りの回転や鉛直軸周りの回転等に起因する各アームの駆動や、把持部がワークを把持したり把持解除する際の把持部の駆動のみを制御部が制御するものであり、したがって、最先端のリンクの振動低減に際して制御部による制御はおこなわれない。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から理解できるように、本発明の搬送用ロボットアームによれば、複数のリンクを備えたロボットアームの最先端のリンクにおいて、この最先端のリンクの固有振動数と異なる固有振動数を有する負荷質量体と当該負荷質量体を移動自在に固定する弾性体とからなる振動減衰部材を備えていることにより、シンプルな構成でワークを把持する最先端のリンクの振動を解消もしくは低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の搬送用ロボットアームの実施の形態を説明した模式図である。
図2図1のII部の拡大図であって最先端のリンクを拡大した図である。
図3】(a)は振動減衰部材がない場合の垂直方向の加速度の時刻歴波形を示した図であり、(b)は本発明の搬送用ロボットアームによる垂直方向の加速度の時刻歴波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の搬送用ロボットアームの実施の形態を説明する。なお、図示する搬送用ロボットアームは、四つの関節と三つのリンクから構成されているが、関節数やリンク数は図示例に何ら限定されるものではない。さらに、関節の動作態様についても図示例の動作態様に何ら限定されるものではない。
【0022】
(搬送用ロボットアームの実施の形態)
図1は本発明の搬送用ロボットアームの実施の形態を説明した模式図であり、図2図1のII部の拡大図であって最先端のリンクを拡大した図である。
【0023】
図示する搬送用ロボットアーム10は、工場の床面Fに回転自在(X1方向)に固定される足元関節1Aを含む他の関節1B,1C,1Dと、各関節にて繋がれる四つのリンク2A,2B,2C,2Dと、不図示の制御部と、から大略構成されており、足元関節1Aによる回転駆動に加えて、関節1Bによる回転駆動(X2方向)、関節1Cによる回転駆動(X3方向)および関節1Dによる回転駆動(X4方向)により、各リンク2A,2B,2C,2Dの三次元的な動作が制御されている。
【0024】
四つのリンクのうち、最先端のリンク2Dは、相互に平行な二条の縦材3と、これら二条の縦材3を繋ぐ複数の横材4から構成されたフレーム架構から形成されており、したがって複数の抜き孔が自動的に開設されることでその軽量化が図られている。
【0025】
最先端のリンク2Dは、縦材3と横材4から構成されたフレーム架構の一端に関節1Dが取り付けられ、他端に把持部6が取り付けられている。
【0026】
把持部6は横材4に平行な方向にスライドする(Y方向)一組のクランプ6aから構成され、一組のクランプ6aが相互に近接することで不図示のワークを把持し、ワーク搬送場所では一組のクランプ6aが相互に離間することで不図示のワークの把持解除をおこなう。
【0027】
なお、各関節1A〜1Dの回転駆動や把持部6によるワークの把持および把持解除は、不図示の制御部にて実行制御される。
【0028】
最先端のリンク2Dにはさらに、振動減衰部材5が取り付けられている。具体的には、図2で示すように、平板状で所定重量を有する負荷質量体7と弾性体8とから振動減衰部材5が構成されており、弾性体8は、フレーム架構を構成する縦材3に負荷質量体7を繋ぐ、鉛直方向バネ8aと水平方向バネ8c、さらに、鉛直方向ダンパー8bと水平方向ダンパー8dから構成されている。
【0029】
ここで、負荷質量体7の質量と鉛直方向バネ8a、水平方向バネ8cで決定される固有振動数(より具体的には、負荷質量体7の質量と鉛直方向バネ8aのバネ定数で鉛直方向の固有振動数が決定され、負荷質量体7の質量と水平方向バネ8cのバネ定数で水平方向の固有振動数が決定される)は、最先端のリンク2Dの質量およびそのバネ定数(剛性から換算)にて決定される固有振動数と異なるように双方の固有振動数が設定されている。
【0030】
このように、最先端のリンク2Dと異なる固有振動数の負荷質量体7が所定の方向に振動することで、最先端のリンク2Dの振動を効果的に低減することができる。
【0031】
たとえば、最先端のリンク2Dが搬送用ロボットアーム10の足元関節1Aが固定される床面Fに対して水平姿勢を保持するように移動制御される場合において、図示する二方向の負荷質量体7の動きを規制する弾性体8の作用により、弾性体8を介して負荷質量体7が二方向に往復運動可能となる。このような負荷質量体7の水平方向および鉛直方向の往復運動により、最先端のリンク2Dの水平方向および鉛直方向の振動を効果的に低減しながらワークの把持が実行されるとともに、把持されたワークを所定の搬送位置まで搬送することが可能になる。
【0032】
たとえば、負荷質量体7は最先端のリンク2Dの質量の5〜20%程度の質量を有し、垂直方向バネ8aや水平方向バネ8cは負荷質量体7の振動停止時に負荷質量体7が初期位置に戻ることができる復元力を発揮できるバネ定数を有しており、鉛直方向ダンパー8bと水平方向ダンパー8dは過減衰となるようなダンパー係数を有しているのが望ましい。
【0033】
図示する搬送用ロボットアーム10では、ワークを把持する最先端のリンク2Dの振動低減に際し、検出器の設置等が不要であり、かつ高精度で複雑な制御演算も不要であり、最先端のリンク2Dと異なる固有振動数の負荷質量体7の動きによって当該最先端のリンク2Dの振動を効果的に低減することができ、もって、安価なロボットアーム製作コストにて高精度かつ安定したワークの把持および搬送を実現できる。
【0034】
(最先端のリンクの振動低減性能を検証した実験とその結果)
本発明者等は、本発明の搬送用ロボットアームによる最先端のリンクの振動低減性能を検証する実験をおこなった。本実験では、図1,2で示す搬送用ロボットアーム(実施例)を試作するとともに、比較例として搬送用ロボットアームから振動減衰部材を排除し、双方のロボットアームを使用した際の最先端のリンクの鉛直方向の振動を加速度計で計測した。ここで、図3(a)は比較例の加速度の時刻歴波形を示した図であり、図3(b)は実施例の加速度の時刻歴波形を示した図である。
【0035】
比較例と実施例の各加速度の時刻歴波形を比較すると明らかなように、比較例に比して実施例の加速度は各時刻にて大きく低減しており、最大加速度を示す時刻以外では加速度はゼロに限りなく近くなっている。
【0036】
また、最大加速度を比較すると、比較例の最大加速度18m/s2に対して実施例の最大加速度は9m/s2と、およそ半分の加速度低減効果が得られることが実証されている。
【0037】
本実験結果より、最先端のリンクと負荷質量体の固有振動数を異ならせ、振動位相をずらして最先端のリンクの振動を打ち消すことにより、最先端のリンクの効果的な振動低減が実現されることが実証されている。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1A…足元関節(関節)、1B,1C,1D…関節、2A,2B,2C…リンク、2D…最先端のリンク(リンク)、3…縦材、4…横材、5…振動減衰部材、6…把持部、6a…クランプ、7…負荷質量体、8…弾性体、10…搬送用ロボットアーム
図1
図2
図3