(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ステータとロータとが対向することにより構成され、モータまたは発電機として機能させることが可能な回転電機が知られている。このような回転電機において、特許文献1〜3に記載された構成のように、コンシクエントポール型ロータを備えるモータが知られている。このモータでは、ロータにおいて、鉄芯を主体とした極と、永久磁石とが周方向に交互に配置される。
【0003】
また、特許文献3に記載された構成では、ロータにおいて、主磁石が埋め込まれた磁石磁極部と、ロータコアの突極とが周方向に交互に配置され、突極と磁石磁極部との間に空隙が形成される。また、この空隙の外径側部分を塞ぐようにブリッジ形状をなす補助磁石が配置される。補助磁石から発生する磁束の一部は、ロータの半径方向外側、または空隙の半径方向内側を経由する。このとき、補助磁石から発生する磁束は、ロータコアのうち、主磁石の周方向端部に配置される連結部から所定の領域Rを磁気飽和させる。これにより主磁石から発生する漏れ磁束を低減させ、主磁石の磁束がモータトルクの発生に効果的に寄与することができるとされている。ここで、漏れ磁束は、主磁石から発生するが対向するステータに向かわない磁束であって、モータトルクに寄与しない磁束である。
【0004】
一方、コンシクエントポール型のロータと、界磁巻線を含むステータとを備えるモータにおいて、界磁巻線に直流電流を流すことでロータの突極部を磁化させる構成も知られている。この構成は、ハイブリッド界磁型モータと呼ばれる。
【0005】
例えば、特許文献4には、ステータが環状のコア部と、2つの界磁巻線と3相の電機子巻線とを含む回転電機が記載されている。2つの界磁巻線は、コア部の軸方向両端に固定される。3相の電機子巻線は、コア部の半径方向内側に突出する複数のラジアルティース間のスロット、及びコア部の軸方向両端において、軸方向外側に突出する複数のアキシャルティース間のスロットを通って、コア部にトロイダル巻きされる。ロータは、半径方向においてステータと対向配置されるラジアルロータ部と、回転軸と平行方向にステータと対向配置されるアキシャルロータ部とを含む。
【0006】
界磁巻線に直流電流が流れることで、ロータのラジアルロータ部及びアキシャルロータ部と、ステータのコア部とを通る界磁磁束を発生させる。電機子巻線に交流電流が流れることで界磁磁束と相互作用する磁界を発生させる。ラジアルロータ部は、界磁巻線に直流電流が流れることで磁化する突極部に相当するラジアル磁極部を含む。アキシャルロータ部は、ロータの回転軸周りの周方向に関してラジアル磁極部に対してずらして配置され、界磁巻線に直流電流が流れることでラジアル磁極部とは逆の極性に磁化するアキシャル磁極部を含む。
【0007】
また、特許文献5には、界磁磁束の制御を行うために、ステータコアを軸方向に二分割してN極側コア及びS極側コアを構成し、その外周側が環状のヨークによって磁気的かつ機械的に連結される回転電機が記載されている。N極側コア及びS極側コアの間には環状の界磁巻線が挟まれて軸方向に沿って設けられる。電機子巻線は、N極側コア及びS極側コアを跨ぐようにステータコアに設けられる。ロータコアには、N極側コアに対向して、N極磁石とN極突極部とが周方向に交互に配置される。また、ロータコアには、S極側コアに対向して、S極磁石とS極突極部とが周方向に交互に配置される。
【0008】
特許文献4及び特許文献5に記載された構成のように、ハイブリッド界磁型の回転電機では、磁石によって発生する磁石トルクに対し、界磁巻線に界磁電流を流すことでトルクを増加できる可能性がある。ここで、界磁巻線に界磁電流を流すことで増加するトルクを界磁電流トルクと定義する。このとき、ハイブリッド界磁型の回転電機の最大トルクは、磁石トルクと、界磁電流トルクとの和であり、コンシクエントポール型のロータを備えるがハイブリッド界磁型ではない回転電機の最大トルクより大きくできる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明に係る実施形態につき詳細に説明する。以下で述べる形状、材料、数値、数量等は、説明のための例示であって、回転電機の仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。なお、以下では、回転電機がモータの場合を説明するが、回転電機を発電機、またはモータ及び発電機の両方の機能を持つモータジェネレータとしてもよい。
【0016】
図1は、実施形態の回転電機10を示す断面図である。
図2は、回転電機10を構成するロータ12の透視斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面において一部を省略して周方向一部を示す図である。
図4は、
図3のロータ12に対応する部分の拡大図である。
【0017】
図1から
図4に示す回転電機10は、特許文献5に記載された構成と同様に、コンシクエントポール型のロータ12と、界磁巻線を含むステータ50とを備えるハイブリッド界磁型モータである。具体的には、回転電機10は、非磁性のシャフト100に固定されたロータ12と、ロータ12の半径方向外側に対向して配置されたステータ50とを備える。シャフト100は、ケーシング(図示せず)に対し軸受により回転可能に支持される。
【0018】
ロータ12は、環状の磁性材製のロータヨーク13と、ロータヨーク13の外周側に固定された磁性材製のロータコア14と、複数の同極のN極磁石部25n及び複数の同極のS極磁石部25sとを含む。ロータコア14は、外周面が円筒面である環状部15と、複数の第1突極部16及び複数の第2突極部18とを有する。複数の第1突極部16は、環状部15の軸方向一方側(
図1の左側)外周面の周方向複数位置において、等間隔で半径方向外側に突出するように形成される。複数の第2突極部は、環状部の軸方向他方側(
図1の右側)外周面の周方向複数位置において、等間隔で半径方向外側に突出するように形成される。例えば、ロータコア14は積層鋼板により形成される。また、
図2に示すように、ロータコア14の内周面において第1突極部16に対応する位置には半径方向に突出し軸方向に長い突部19が形成される。各突部19は、ロータヨーク13の外周面の複数位置に形成された軸方向に長い溝部13aに係合する。各溝部13aは軸方向両端がロータヨーク13の軸方向端面に達するので、ロータコア14をロータヨーク13に軸方向に向かって嵌合させて結合させることが可能である。
【0019】
さらに、複数のN極磁石部25nは、複数のN極磁石26nと、複数のN側ブリッジ部材27nとを有する。複数のN極磁石26nは、ロータコア14の軸方向一方側(
図2の左側)外周面において、隣り合う第1突極部16の間に1つずつ固定される。これにより、第1突極部16とN極磁石26nとは、ロータコア14の周方向に交互に配置される。N極磁石26nは、断面円弧形で軸方向に長い。N極磁石26nは外側面がN極で内側面がS極となるように磁化される。
【0020】
図4に示すように、複数のN側ブリッジ部材27nは、断面円弧形で軸方向に長い磁性材製である。N側ブリッジ部材27nは、周方向中央部でN極磁石26nを覆うようにN極磁石26nの半径方向外側面に固定される。
【0021】
複数のS極磁石部25sは、複数のS極磁石26sと、複数のS側ブリッジ部材27sとを有する。複数のS極磁石26sは、ロータコア14の軸方向他方側(
図2の右側)外周面において、隣り合う第2突極部18の間に1つずつが固定される。これにより、第2突極部18とS極磁石26sとは、ロータコア14の周方向に交互に配置される。S極磁石26sは、断面円弧形で軸方向に長い。S極磁石26sは外側面がS極で内側面がN極となるように磁化される。
【0022】
複数のS側ブリッジ部材27sは、断面円弧形で軸方向に長い磁性材製である。S側ブリッジ部材27sは、周方向中央部でS極磁石26sを覆うようにS極磁石26sの半径方向外側面に固定される。
【0023】
図2に示すように、N極磁石26nと第2突極部18とは、軸方向に隙間をあけて並んでいる。S極磁石26sと第1突極部16とは、軸方向に隙間をあけて並んでいる。N極磁石26n、S極磁石26s、第1突極部16、及び第2突極部18は、軸方向における長さが略同じである。
【0024】
各突極部16,18の先端面は、N極磁石26n及びS極磁石26sのそれぞれの半径方向外側面よりも、半径方向において外側に位置する。なお、半径方向とは、特に断らない限りロータ12の半径方向をいう。また、周方向とはロータ12の周方向をいい、軸方向とはロータ12の軸方向をいう。
【0025】
複数のブリッジ部材27n、27sの周方向両端は、対応する側の突極部16,18の先端近傍の周方向側面に突き当てた状態で突極部16,18に固定される。各突極部16,18の先端面、N側ブリッジ部材27nの外側面、及びS側ブリッジ部材27sの外側面は、それぞれロータ12の回転中心を中心とする円弧形の断面を有する曲面である。また、各ブリッジ部材27n、27sの外側面と、突極部16,17の先端面とは円筒面上に位置する。
【0026】
各ブリッジ部材27n、27sは、外側磁性材部28(
図4)と、磁性材製のブリッジ部29とを有する。外側磁性材部28は、N極磁石26nまたはS極磁石26sの半径方向外側面に接触して、磁石26n、26sの半径方向外側を覆う部分である。ブリッジ部29は、ブリッジ部材27n、27sのうち、外側磁性材部28の周方向端及び第1及び第2突極部16,18を結ぶ部分である。
図4では、分かりやすくするためにブリッジ部29を砂地部で示している。これにより、磁石部25n、25sは、ロータ12の周方向複数位置に配置される。また、ロータ12には、軸方向一方側の外周においてN極磁石部25nと第1突極部16とが周方向に交互に並ぶように配置される。さらに、ロータ12には、軸方向他方側の外周においてS極磁石部25sと第2突極部18とが周方向に交互に並ぶように配置される。また、ブリッジ部29は、磁石側部分を含めて周方向の全体が、ロータ12の半径方向の最外端位置にあり、周方向に沿って配置される。ブリッジ部29の半径方向の厚みと外側磁性材部28の半径方向の厚みとは略同じである。ロータ12にブリッジ部29が形成されることで、ロータ12の外周部には、磁石26n、26sとブリッジ部29と第1及び第2突極部16,18とで囲まれて軸方向に貫通する空間40が形成される。
【0027】
このようにロータ12が、外側磁性材部28の周方向端と第1及び第2突極部16,18とを結ぶブリッジ部29を有するので、後述のように、補助磁石を追加することなく、回転電機10の最大トルクを増加させることができる。
【0028】
図1に示すように、ステータ50は、軸方向に分かれた磁性材製で環状の第1ステータコア51及び第2ステータコア52と、ステータヨーク60と、電機子巻線61及び界磁巻線62とを含む。例えば各ステータコア51,52は、積層鋼板により形成される。ステータヨーク60は、磁性材製で環状であり、第1ステータコア51及び第2ステータコア52の外径側に掛け渡すように固定される。これによりステータヨーク60は各ステータコア51,52に磁気的に結合される。
【0029】
図3に示すように、第1ステータコア51の内周面の周方向複数位置には、半径方向内側に突出するティース53が形成されるとともに、隣り合うティース53の間にはスロット54が形成される。第2ステータコア52にも、第1ステータコア51と同様に、ティース53(
図1)及びスロットが形成される。
【0030】
電機子巻線61は、U相巻線、V相巻線、及びW相巻線を含む。U相巻線、V相巻線、及びW相巻線のそれぞれは、分布巻または集中巻で、第1ステータコア51及び第2ステータコア52に跨るように、それぞれのステータコア51,52に形成されたティース53に巻回される。
【0031】
界磁巻線62は、ロータ12に界磁を作る直流電流を流すために用いられる。界磁巻線62は、第1ステータコア51及び第2ステータコア52の軸方向の間に、絶縁された状態で固定される。また、界磁巻線62は、半径方向についての1層または複数相で導線が巻回されることにより形成される。複数相で巻回される場合には、半径方向に複数回巻いたものが軸方向に連続する。このような界磁巻線62は全体でリング状となり、十分なターン数を持つ。界磁巻線62は、第1突極部16及びN極磁石26nと、第2突極部18及びS極磁石26sとの軸方向の隙間に対し、軸方向において略同位置に配置される。電機子巻線61は、ロータ12の界磁との相互作用によりトルクを発生させるための交流電流を流すために用いられる。
【0032】
図5は、回転電機10を含む回転電機制御システム110の回路図である。回転電機制御システム110は、直流電源112と、回転電機10と、第1駆動回路113と、第2駆動回路114と、制御装置115とを含んで構成される。回転電機10は、第1駆動回路113及び第2駆動回路114によって駆動される。制御装置115は、第1駆動回路113及び第2駆動回路114を制御する。
【0033】
具体的には、第1駆動回路113及び第2駆動回路114は、直流電源112に対し並列に接続される。第1駆動回路113は、並列接続された第1アームA1及び第2アームA2を含むフルブリッジ回路で構成される。また、各アームA1,A2には2つのスイッチング素子S1,S2(またはS3,S4)が直列に接続され、各スイッチング素子の両端には、各スイッチング素子の電流方向とは逆方向の電流が流れるようにダイオードが並列接続される。界磁巻線62の一端は、第1アームA1のスイッチング素子S1,S2間の中点に接続され、界磁巻線62の他端は、第2アームA2のスイッチング素子S3,S4間の中点に接続される。また、第1アームA1の正側のスイッチング素子S1及び第2アームA2の負側のスイッチング素子S4のスイッチング制御により、正の界磁電流の大きさを制御できる。一方、第1アームA1の負側のスイッチング素子S2及び第2アームA2の正側のスイッチング素子S3のスイッチング制御により、負の界磁電流の大きさを制御できる。これにより、第1駆動回路113は、界磁巻線62の電流をスイッチングによって制御する。界磁巻線62に正の界磁電流が流れることにより、後述の強め界磁が行われ、負の界磁電流が流れることにより、後述の弱め界磁が行われる。
【0034】
一方、第2駆動回路114は、3相インバータである。具体的には、第2駆動回路114は、並列接続されたU相アームB1、V相アームB2及びW相アームB3を含む。また、各アームB1,B2,B3には2つのスイッチング素子Sa、Sbが直列に接続され、各スイッチング素子Sa、Sbの両端には、各スイッチング素子の電流方向とは逆方向の電流が流れるようにダイオードが並列接続される。
図1では、U相巻線、V相巻線、W相巻線にそれぞれu、v、wの符号を付している。第2駆動回路114は、3相の電機子巻線61の電流をスイッチングによって制御する。
図1では、各相の電機子巻線61を簡略化して示して、各相で1つのみとしているが、実際には、各相で複数の巻線が直列に接続される。
【0035】
U相巻線の一端は、U相アームB1のスイッチング素子Sa、Sb間の中点に接続される。V相巻線の一端は、V相アームB2のスイッチング素子Sa、Sb間の中点に接続される。W相巻線の一端は、W相アームB3のスイッチング素子Sa、Sb間の中点に接続される。U相巻線、V相巻線及びW相巻線の他端は、中性点Gで共通に接続される。
【0036】
制御装置115は、第1駆動回路113及び第2駆動回路114のスイッチングを制御する。制御装置115は、発生または入力されたトルク指令に基づいて、スイッチングの指令信号を生成し、その指令信号によって、第2駆動回路114のスイッチングを制御する。また、制御装置115は、予め設定された強め界磁制御条件及び弱め界磁制御条件の一方の成立に基づいて、対応する界磁制御を行うように第1駆動回路113のスイッチング制御を行う。
【0037】
回転電機10を強め界磁制御する場合には、特許文献5に記載された構成と同様に、界磁巻線62を流れる直流電流により発生する磁束である界磁電流磁束が、磁石により発生する磁束である磁石磁束と、ステータ及びロータを結ぶ磁気経路について逆方向となる。具体的には、磁石磁束は、N極磁石26nから発生する。このとき、N極磁石26nからの磁束は、ステータ及びロータの間のギャップ→第1ステータコア51→ステータヨーク60→第2ステータコア52→ギャップ→S極磁石26s→ロータコア14→ロータヨーク13→ロータコア14→N極磁石の順に流れる。一方、界磁電流磁束は、第1ステータコア51→ギャップ→第1突極部16→ロータコア14→ロータヨーク13→ロータコア14→第2突極部18→ギャップ→第2ステータコア52→ステータヨーク60の順に流れる。これにより、ロータ表面での合成磁束を考えると、N極磁石26nから出た磁束が周方向に隣り合う第1突極部16に入る。また、第2突極部18から出た磁束が周方向に隣り合うS極磁石26sに入る。これにより、等価的に界磁磁束を強めることができるので、回転電機10の最大トルクを向上できる。
【0038】
一方、回転電機10を弱め界磁制御する場合には、強め界磁制御を行う場合と逆方向に界磁巻線62に直流電流を流す。
【0039】
さらに、上記の回転電機10によれば、ロータ12が、外側磁性材部28の周方向端と第1及び第2突極部16,18とを結ぶブリッジ部29(
図4)を有するので、ブリッジ部29を介した磁石の磁束短絡を抑制できる。
図6は、実施形態において、n極磁石26nから発生する磁束(磁石磁束)と界磁電流で生じる磁束(界磁電流磁束)とを示している
図3の部分拡大相当図である。
図6では、実線矢印により磁石磁束を示し、破線矢印により界磁電流磁束を示している。また、
図6では、電機子巻線の図示を省略している。以下では、n極磁石26nと、第1突極部16とについての磁束の流れを中心に説明する。以下ではn極磁石26nを磁石26nと記載し、第1突極部16を突極部16と記載する場合がある。
【0040】
図6に示すように強め界磁が行われる場合には、破線矢印で示すようにステータ50のティース53の先端から出た界磁電流磁束が突極部16に向かって流れる。一方、実線矢印で示すように、磁石磁束は、磁石26nから出てティース53に向かうが、磁石磁束の一部は、磁気抵抗の小さい経路として、外側磁性材部28からブリッジ部29、突極部16を経由して短絡する傾向となる。このとき、ブリッジ部29の突極部16側の付け根部(
図6に丸P1で囲った部分)では、ブリッジ部29の断面積が小さい部分に破線矢印で示す界磁電流磁束も流れようとするので、ブリッジ部29の磁気飽和が促進される。このため、磁石26nから発生し、ステータ50を介さずに短絡する漏れ磁束が減少する。この結果、磁石26nからステータ50に向かう磁束が多くなって最大トルクをさらに増加させることができる。また、本例の構成によれば、特許文献3に記載された構成と異なり、トルク増大のために磁石と突極部との間に補助磁石を追加する必要がないので、コスト低減を図りやすい。
【0041】
図7は、比較例の回転電機を構成するロータ12aの
図4に対応する図である。
図7に示す比較例のロータ12aは、
図1から
図6の実施形態と異なり、特許文献3に記載された構成で補助磁石を持たない構成を含むものである。具体的には、ロータ12aの外周部において、周方向に隣り合う突極部16の間には、軸方向に貫通した磁石孔117を有する磁性材製の磁石保持部116が形成される。磁石保持部116は、ロータコア14の環状部に一体的に連結され、周方向両端の2つの側壁部118と側壁部118の半径方向外端に連結された外周連結部119とを含む。磁石孔117は、2つの側壁部118及び外周連結部119で囲まれた部分により形成される。そして磁石孔117に磁石26nが挿入されて固定される。また、比較例では、外周連結部119と突極部16とを結ぶブリッジ部は形成されない。その他の構成は、
図1から
図6の構成と同様である。
【0042】
このような比較例では、磁石26nからの短絡磁束が多くなるので、トルク増大効果が低くなる。
図8を用いてこの比較例の不都合を説明する。
図8は、比較例において、磁石磁束と界磁電流磁束とを示している
図6に対応する図である。
図8において実線矢印及び破線矢印の意味は、
図6と同様である。
【0043】
図8に示すように、比較例では、実線矢印の磁石磁束が、磁石保持部116の側壁部118に沿って流れて短絡する。この場合には、破線矢印の界磁電流磁束が磁石保持部116の側壁部118にまで達しにくいので、磁石保持部116の磁束飽和が促進されない。このため、磁石26nの短絡磁束が多くなるのでトルク増大効果が低くなる。
【0044】
また、
図1から
図6の構成では、ブリッジ部29において、磁石側部分を含めた部分が、ロータ12の半径方向の最外端位置にある。これにより、ブリッジ部29の磁石側部分を含む部分に磁石26nからの漏れ磁束と界磁巻線62の通電による界磁電流磁束との両方が通過しやすくなり、ブリッジ部29での磁束飽和がより促進される。これにより、トルク増大効果をより高くできる。
【0045】
また、
図1から
図6の構成では、外側磁性材部28と突極部16とを結ぶブリッジ部29を設けたことにより、ロータ12の外周面の凹凸が少なくなるので、ロータの回転時における空気抵抗による損失を低減できる。特に、
図1から
図6の構成のように、ブリッジ部29の全体が周方向に沿う場合には、ロータ12の外周面の凹凸をなくすことができるので、空気抵抗による損失をより低減できる。
【0046】
図9は、
図1から
図6に示す実施形態(実施例1)と
図7に示す比較例とにおいて、計算で求めた最大トルクの関係を示す図である。
図9の縦軸は、回転電機の最大トルクを、無次元単位(p.u.)で相対値として示している。
図9から明らかなように、
図1から
図6に示す実施形態の場合には、比較例に比べて最大トルクを高くできる。
【0047】
図10は、実施形態の別例の回転電機を構成するロータ12bを示している
図7に対応する図である。
図10の構成では、
図1から
図6の構成と異なり、ブリッジ部29aは、外側磁性材部側端から突極部側端に向かって周方向に対し半径方向内側に傾斜している。そして、ブリッジ部29aの半径方向の最内端位置が、突極部16の周方向側面に結合される。これにより、
図10の構成では、後述の基準線D1を基準とした、ブリッジ部29aの突極部側部分においてロータ12bの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29aにおける半径方向の最内端に位置する。ここで、基準線D1は、磁石26nの周方向中心を通る半径方向の第1直線C1と、突極部16の周方向中心を通る半径方向の第2直線C2とがなす角度を二等分して半径方向に伸びる線である。このため、ブリッジ部29aの突極部側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29aの磁石側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分より半径方向内側に位置する。
図10では、ロータ12bの半径方向最外端を通り、ロータの回転中心Oをその中心とする円Sも示している。
図10に示す構成では、ブリッジ部29aが上記のように形成されるので、ブリッジ部29aは、半径方向の内側に落ち込んだ落ち込み部を有する。
【0048】
上記の構成によれば、基準線D1を基準として、ブリッジ部29aの突極部側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29aの磁石側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分より半径方向内側に位置する。この構成によれば、ロータ12bの回転時に磁石26nに遠心力が作用する場合において、ブリッジ部29aがブリッジ部29aとの付け根部(
図10の丸P2で囲った部分)を支点として変形させる力が作用する。これにより、
図1から
図6の構成のように支点がロータ12の半径方向の最外端位置にある場合と異なり、ブリッジ部29aが変形しにくくなり、ロータ12bの機械的強度を高くできる。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成と同様である。
【0049】
図11は、実施形態の別例の回転電機を構成するロータ12cを示している
図7に対応する図である。
図11の構成では、
図10の構成と異なり、ブリッジ部29bは、基準線D1を基準とした磁石側部分の全部を含む部分に形成され周方向に沿って伸びた周方向部30と、周方向部30に連結された傾斜部31とを有する。傾斜部31は、周方向部30において、基準線D1の近傍に位置する一端から折れ曲がって、突極部側に向かって周方向に対し半径方向内側に傾斜している。傾斜部31は、ブリッジ部29bの半径方向内側に落ち込んだ落ち込み部32を形成する。これにより、
図11の構成の場合も、
図10の構成と同様に、基準線D1を基準とした、ブリッジ部29bの突極部側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29bの半径方向の最内端に位置する。このため、ブリッジ部29bの突極部側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29bの磁石側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分より半径方向内側に位置する。また、ブリッジ部29bのうち、基準線D1を基準とした磁石側部分の全部が周方向に沿って伸びており、その磁石側部分の全部は、ロータ12cの半径方向の最外端位置にある。
【0050】
上記の構成では、
図1から
図6の構成に比べて、
図10の構成と同様の理由によりロータ12cの機械的強度を高くできる。これに加えて、上記の構成では、
図10の構成と異なり、ブリッジ部29bの磁石側部分の全部が、ロータ12cの半径方向の最外端位置にあるので、その磁石側部分の全部と、ステータ50(
図3)のティース53(
図3)先端との半径方向の隙間は最小となる。このため、
図11の構成では、
図10の構成に比べてトルク増大効果を高くできる。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成、または
図10の構成と同様である。なお、
図11の構成において、ブリッジ部29の周方向に伸びる部分は、ロータの半径方向の最外端位置でなくても、その最外端位置より少し半径方向内側に位置させてもよく、その場合も
図10の構成に比べてトルク増大効果を高くできる。
【0051】
図12は、
図1、
図10、
図11に示す実施形態(実施例1,2,3)と
図7に示す比較例とにおいて、計算で求めた最大トルクの関係を示す図である。
図12の縦軸の意味は、
図9の場合と同様である。実施例2は、
図10に示す実施形態に相当し、実施例3は、
図11に示す実施形態に相当する。
図12の最大トルクの関係から分かるように、最大トルクは、
図1の実施形態(実施例1)、
図11の実施形態(実施例3)、
図10の実施形態(実施例2)の順に高くなっており、
図7の比較例で最小となった。一方、ロータの機械的強度は、実施例2、実施例3、実施例1の順に高くなる。
【0052】
図13は、実施形態の別例の回転電機を構成するロータ12dを示している
図7に対応する図である。
図13の構成では、
図10の構成と異なり、磁石26nの断面が略矩形である。また、外側磁性材部28aはこれに合わせて半径方向に直交する方向に伸びた略矩形の断面形状を有する。外側磁性材部28aの周方向両端には、ブリッジ部29cの磁石側端部33が連結され、その磁石側端部33の厚みは、外側磁性材部28aの周方向両端の厚みとほぼ同じである。ブリッジ部29cは、磁石側端部33と、第1周方向部34、第2周方向部35、及び傾斜部36を有する。第1周方向部34は、磁石側端部33の周方向端の最外周位置に連結され半径方向の厚みが小さくなって周方向に伸びる。第2周方向部35は、ブリッジ部29cの突極側部分に形成され周方向に伸びる。第1周方向部34と、第2周方向部35とは、周方向に対し傾斜した傾斜部36で連結される。第1周方向部34は、ロータの半径方向の最外端位置にあり、第2周方向部35は、第1周方向部34よりロータの半径方向の内側に位置する。傾斜部36と第2周方向部35とは、ブリッジ部29cの半径方向の内側に落ち込んだ落ち込み部37を形成する。第1周方向部34、第2周方向部35、傾斜部36の厚みはほぼ同じである。これにより、基準線D1を基準とした、ブリッジ部29cの突極部側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分は、ブリッジ部29cの磁石側部分においてロータの半径方向の最内端に位置する部分より半径方向内側に位置する。また、ブリッジ部29cのうち、基準線D1を基準とした磁石側部分の少なくとも一部は、ロータの半径方向の最外端位置にある。また、外側磁性材部28aの半径方向の最小厚みは、ブリッジ部29cの磁石側端から突極部側端に向かう方向に対し直交する方向の厚みの最小値である最小厚みより大きい。
【0053】
さらに本例の構成では、ロータ12dは、ブリッジ部29cの磁石側端部33と、突極部16とを結ぶように形成された梁部41を含む。梁部41は、突極部側に向かって周方向に対し半径方向内側に傾斜している。梁部41は、ブリッジ部29c、突極部16、及び磁石26nに囲まれて軸方向に貫通する空間の中間部を仕切って2つの空間40a、40bに分ける。さらに、梁部41の磁石側接合点は、突極部側接合点よりも半径方向外側に位置する。
【0054】
上記の構成の場合も、
図11の構成と同様に、ブリッジ部29cの磁石側部分の少なくとも一部は、ロータの半径方向の最外端位置にある。これにより、トルク増大効果を高くできる。また、ロータが梁部41を含み、梁部41の磁石側接合点が、突極部側接合点よりも半径方向外側に位置する。これにより、ブリッジ部29c、突極部16及び磁石26nによって囲まれた空間に梁部41が設けられ、外側磁性材部28aと突極部16との結合強度を高くできるので、ロータ全体の機械的強度をより高くできる。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成、または
図11の構成と同様である。
【0055】
また、
図13の構成において、梁部41は、ブリッジ部29cの磁石側端部と、ロータコア14の突極部16とは異なる位置の外周面、または突極部16とを結ぶように形成される構成であればよい。例えば、
図11の構成において、ブリッジ部29bの磁石側端部と、ロータコア14の突極部16とは異なる位置(例えば
図11の点Qで示す位置)の外周面とを結ぶように梁部が形成されてもよい。この場合でも、ロータの機械的強度を高くできる。
【0056】
図14は、実施形態の別例の回転電機の3例と、その3例における最大トルクとを示す図である。
図14(a)(b)(c)に示す3例の構成の基本的構成は、
図13と同様である。
図14(a)、
図14(b)、
図14(c)の順に、ブリッジ部29cのうち、傾斜部の半径方向最外端の位置が、磁石側から突極部側に変化している。
図14では、傾斜部の半径方向最外端E1,E2,E3を通る半径方向の線を、破線C3、C4、C5で示している。
図14(b)の破線C4と基準線D1とは一致する。
【0057】
図14に示すように、ブリッジ部29の傾斜部の半径方向最外端E1,E2,E3が突極部側に変化するほど、ブリッジ部29cの半径方向最外端の周方向長さが大きくなる。そして、ブリッジ部29cの半径方向最外端の周方向長さが大きくなるほど、回転電機の最大トルクが高くなった。一方、
図14(b)に示している傾斜部の半径方向最外端E2が基準線D1上に位置する構成と、
図14(c)に示している傾斜部の半径方向最外端E2が
図14(b)より突極部側に位置する構成とでは、最大トルクが略同じとなった。これにより、
図14(b)の構成では、最大トルクを高くすることと、機械的強度を高くすることとを高度に両立させやすい。
【0058】
図15は、
図1に示す回転電機において、ステータ50の電機子巻線61(
図3)の通電により発生した磁束である電機子電流磁束が短絡する可能性について説明するための
図3の部分拡大相当図である。
図1の構成のように、ブリッジ部29が外側磁性材部28と突極部16とを周方向に沿って結ぶように形成される場合には、ロータ12のうち、外側磁性材部28及び突極部16から離れた位置のティース53がブリッジ部29に接近する場合がある。このため、
図15にT1で示すティース53から出た電機子電流磁束がブリッジ部29を介して、T2で示す隣り合うティース53に向かって短絡する可能性がある。この場合には、ブリッジ部29とティース53とにおける鉄損が増大する原因となる。次に説明する
図16に示す構成は、このような鉄損の増大を抑制するために考えられたものである。
【0059】
図16は、実施形態の別例の回転電機を構成するロータ12eを示している
図3の部分拡大相当図である。
図16の構成では、ブリッジ部29cは、ロータ12eの半径方向の内側に落ち込んだ落ち込み部37を有する。そして、落ち込み部37についての第1角度α1と、ステータ50のスロット54の幅についての第2角度βとの関係が規定される。具体的には、第1角度α1は、突極部16の先端のうち、周方向におけるブリッジ部29側端F1と落ち込み部37の磁石側端F2との周方向長さのロータの回転中心Oについての中心角である。また、第2角度βは、ステータ50の周方向におけるスロット54の幅のステータ50の中心Oについての中心角である。そして、第1角度α1が第2角度β以上であるように規制される。
【0060】
上記の構成によれば、ブリッジ部29cの一部がステータ50のティース53の先端から遠ざけられ、隣り合うティース53の幅との関係で、隣り合うティース53間でのブリッジ部29cを介した電機子電流磁束の短絡が生じにくくなる。このため、ブリッジ部29cとティース53とにおける鉄損の低減を図れる。その他の構成及び作用は、
図13の構成と同様である。
【0061】
図17は、実施形態の別例の回転電機を構成するロータ12fを示している
図3の部分拡大相当図である。
図17の構成では、
図16の構成と異なり、ブリッジ部29dの突極部側端が半径方向において突極部16の先端近傍に位置する。本例においても、
図16の構成と同様に、落ち込み部37についての第1角度α2は、ステータ50のスロット54の幅についての第2角度β以上であるように規制される。その他の構成及び作用は、
図16の構成と同様である。
【0062】
なお、上記の実施形態の各例では、N極磁石の外径側を覆う部分と突極部とを結ぶブリッジ部を形成する場合について説明したが、S極磁石の外径側を覆う部分と突極部とを結ぶブリッジ部を形成することもできる。また、上記の実施形態の各例の構成は、
図1、
図2に示したハイブリッド界磁型の回転電機と組み合わせる場合に限定せず、他の構造のハイブリッド界磁型の回転電機と組み合わされてもよい。例えば、上記の実施形態の各例は、特許文献4に記載された構成のように、ステータが環状のコア部と2つの界磁巻線と3相の電機子巻線とを含み、2つの界磁巻線がコア部の軸方向両端に固定されるハイブリッド界磁型の回転電機と組み合わされてもよい。また、ハイブリッド界磁型の回転電機は、ロータが複数ずつのN極磁石とS極磁石とを含む構成に限定しない。例えば、ロータが磁石として複数のN極磁石のみを持ち、ロータの外周部にN極磁石と突極部とが交互に配置される構成に上記の実施形態の各例の構成を適用してもよい。