(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の側面部(例えばリヤフェンダー面)に注水口を配置する構造を採用すると、レイアウト上の制約によってフィラネックの配索スペースが制限されることがある。特に、注水口がリヤフェンダー面に配置された場合、車輪やサスペンションが収容されるホイールハウスを避けてフィラネックを配索するためには、車室スペースを狭めなければならない。一方、ホイールハウスの内側には、車輪によって跳ね上げられる小石や泥水等から車体を保護するためのスプラッシュシールドが取り付けられることがあり、フィラネックを配索するのに十分なスペースの確保が困難なことが多い。
【0005】
本件の車体構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、車両の空間利用効率を高めることを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する車体構造は、排気浄化用の添加剤を貯留する車載のタンクと前記添加剤の注水口とを接続し、車両の
車輪の上面を覆うホイールハウスの内壁に沿って配置されたフィラネックと、前記フィラネックに装着され、前記フィラネックを車体に保持する保持部材と、を備える。前記ホイールハウスは、
平面視において車両前後方向
の面から車幅方向外側へ湾曲した湾曲部を有する。また、前記フィラネックは、前記湾曲部において前記ホイールハウスの前記内壁と前記保持部材とで挟持されている。
【0007】
(2)前記車体構造は、前記ホイールハウスよりも車幅方向内側において車両前後方向に延設されたサイドメンバを備えることが好ましい。この場合、前記保持部材は、前記ホイールハウスの下部に配置されるとともに、少なくとも一箇所で前記サイドメンバに車幅方向外側から内側へ締結固定されていることが好ましい。
【0008】
(3)前記保持部材は、前記一箇所以外の箇所において、前記車体に対して下方から上方に向かって締結固定されていることが好ましい。
(
4)前記保持部材は、前記フィラネックと前記ホイールハウス内に配置される
前記車輪との間に立設されて車幅方向に延在する第一面部と、前記第一面部の車幅方向外側の縁部から車両前後方向へ屈曲した第一角部とを有することが好ましい。この場合、前記フィラネックに含まれる複数の配管のうち最大径の配管は、前記第一角部に装着されるとともに前記ホイールハウスの前記湾曲部に沿って配置されていることが好ましい。
【0009】
(
5)前記車体構造は、前記注水口から溢れる前記添加剤を車外に排出するための排水管を備えていることが好ましい。この場合、前記最大径の配管は、前記タンクに前記添加剤を注入するための注水管であって、前記保持部材は、前記第一面部に対し車両前後方向で対向する第二面部と、前記第一面部および前記第二面部の車両外縁同士を接続する側面部と、前記第二面部および前記側面部で形成された第二角部と、を有し、前記排水管は、前記第二角部に装着されていることが好ましい。
(
6)前記フィラネックは、前記ホイールハウスにおいて前記車輪の後方かつ車幅方向内側に配置され、前記保持部材は、前記ホイールハウスの後部に配置されていることが好ましい。
【0010】
(
7)前記車体構造は、前記注水口から溢れる前記添加剤を車外に排出するための排水管を備えていることが好ましい。この場合、前記保持部材は、前記車体に固定された状態で上下方向に延びる筒部を有し、前記排水管は、その下端部が前記筒部に挿通されることで前記保持部材に固定されていることが好ましい
。
【0011】
(8)前記保持部材は、前記フィラネックに装着される爪部を有するとともに、前記爪部が前記車両のフロアパネルよりも下方に位置するように前記車体に固定されていることが好ましい。
(9)前記保持部材が、前記フィラネックに予め組み付けられるアッパ部材と、前記アッパ部材の下方に配置されるロア部材とが組み合わせて構成され、前記アッパ部材が、前記車体に対して車幅方向外側から内側へ締結固定される固定点を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示の車体構造によれば、フィラネックを車体側へと積極的に押し付けた(当接させた)状態で車体に取り付けることができるため、狭いスペース内にフィラネックを配置することができ、車両の空間利用効率(スペース効率)を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての車体構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
以下の説明では、車両の進行方向を前方(車両前方)、逆側を後方(車両後方)とし、前方を基準に左右を定める。また、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。さらに、車両の左右方向(車幅方向)において、車室側(車幅方向内側)を「内側」といい、その逆(車幅方向外側)を「外側」という。
【0016】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
本実施形態の車体構造は、
図1に示す車両10に適用される。車両10の後方側のフロア下では、車体に対してタンク9が固定される。タンク9は、排気浄化用の尿素SCRシステム(Urea Selective Catalytic Reduction System)で使用される添加剤(例えば、尿素水溶液,アンモニア水溶液など、以下「還元剤」という)を貯留する樹脂製の容器である。車両10の左リヤフェンダーには、燃料を補充(給油)するための給油口と還元剤を補充(注入)するための注水口7とが隣接して配置される。
【0017】
図2に示すように、タンク9は、ホイールハウス15よりも車幅方向内側において車両10の前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ13(車体)の間であって、リヤフロアパネル14(車体)の下方に配置される。また、注水口7は、左リヤフェンダーを形成するアウタパネル11(車体)に取り付けられた箱状のケーシングに対し、ブーツ8(取付部材)を介して固定される。ブーツ8は、注水口7を車体に対して取り付けるための部品であり、底面が開放されたほぼ円錐台形状に形成されている。タンク9及び注水口7は、複数のホース(配管)を含んで構成されるフィラネック1によって接続される。
【0018】
本実施形態のフィラネック1は、タンク9に還元剤を注入するためのフィラホース2(注水管)と、タンク9に還元剤を注入する際に上限液面を規定するレベリング管3と、レベリング管3の中途に介装されたチャンバ6とを有する。さらに、本実施形態のフィラネック1には、タンク9の内部圧力を大気圧近傍に維持するためのベントホース4(大気開放管)と、注水口7から溢れる還元剤を車外に排出するためのドレンホース5(排水管)とが組み付けられる。すなわち、本実施形態の車両10では、フィラネック1に対してベントホース4及びドレンホース5がアッセンブリ化された状態で車体に取り付けられる。以下、フィラネック1に対し、ベントホース4やドレンホース5といった配管をクリップや係合爪等で組み付けて一体化したものを「フィラネック組立品1′」と呼ぶ。
【0019】
ここで、本実施形態のタンク9及びフィラネック組立品1′の構成について、
図3を用いて説明する。フィラホース2は、四つの配管(ホース)の中で最も外径が大きく、その上端がフィラヘッド2aに接続され、その下端がタンク9の側面に接続される。フィラヘッド2aは、例えば有底円筒状の段付き部品であり、拡径された底部にフィラホース2が接続される貫通孔が形成される。なお、フィラヘッド2aにはレベリング管3の上端も接続されるため、その底部にはレベリング管3用の貫通孔も形成される。
【0020】
フィラホース2の上端側(すなわちフィラヘッド2a)は、円錐台形状のブーツ8の頂面を貫通し、開放された底面に向かって開口している。この開口には還元剤の補充作業の際に注水ガンが差し込まれる。なお、補充作業時以外は、キャップ2bによってフィラヘッド2aの開口が閉鎖される。上記のブーツ8は、フィラネック1に対し注水口7を覆うように装着されるとともに、車体の側面部に貫設された孔部(図示略)に対して装着される。
【0021】
レベリング管3は、その上端がフィラヘッド2aに接続され、その下端がタンク9の上部に対して接続され、少なくともフィラホース2とタンク9との接続箇所よりも高い位置でタンク9の内部に開放される。レベリング管3は、還元剤の補充作業時におけるタンク9の通気路(空気の抜け道)として機能する。レベリング管3がタンク9に接続される高さ位置(上下方向の位置)は、タンク9内に貯留される還元剤の上限液面となる。
【0022】
チャンバ6は、上限液面を越えて還元剤が注入された場合に、レベリング管3を逆流してきた還元剤を滞留させる「液だまり」として機能する中空状の容器である。すなわち、チャンバ6の内部空間は、還元剤の補充作業時に、液面が上限液面に達してもなお還元剤が補充され続けた場合に、余剰分の還元剤を貯留するための空間として機能する。
【0023】
ベントホース4は、その下端が大気開放弁4Vに接続され、その上端がホイールハウス15(
図2参照)の内部で大気開放される。大気開放弁4Vは、タンク9の内部に貯留される還元剤や外部の水分に対する液密性を保ちつつ、タンク9の内圧と外気圧とを均衡させるように機能する。大気開放弁4Vの位置は、車体姿勢が傾いた場合であっても液面下に没することがないように、例えばタンク9の最上部近傍に設定される。
【0024】
ドレンホース5は、その上端がブーツ8に接続され、その下端がホイールハウス15の内部で下方に向けて大気開放される。還元剤の補充作業時に還元剤がフィラホース2やレベリング管3から溢れ出た場合には、溢れた還元剤がブーツ8の内部に集められる。ドレンホース5には、ブーツ8の内部に集められた還元剤が流通する。
【0025】
なお、
図3に示すように、タンク9に貯留された還元剤は、車両10に搭載されるエンジンの作動状態に応じて、適宜のタイミングでポンプ41によって吸い上げられ、還元剤配管42を通じてインジェクタ43へと供給される。インジェクタ43は、排気通路上に介装されるNOx選択還元触媒(いずれも図示略)の上流側に配置される。
【0026】
次に、フィラネック1(フィラネック組立品1′)の配置及び車体に対する固定構造について説明する。
図2に示すように、注水口7はサイドメンバ13よりも外側に位置することから、フィラネック1は、サイドメンバ13の側方から内側に向かって屈曲され、サイドメンバ13の下方を通ってタンク9に接続される。以下、フィラネック1のうち、ホイールハウス15の下方かつサイドメンバ13の側方からサイドメンバ13の下方へと屈曲する部分を屈曲部1aと呼ぶ。本実施形態のフィラネック1は、
図4に示すように、注水口7から下方に向かって延設されるとともに、リヤ側のホイールハウス15の内部後方においてホイールハウス15の内壁15aに沿って配置される。
【0027】
なお、ホイールハウス15は、タイヤ19(車輪)の上面を覆うアーチ状に形成された部位であり、
図2に示すように、例えばホイールハウスインナ16(車体)とホイールハウスアウタ17(車体)とを組み合わせて形成される。ホイールハウス15は、
図4に示すように側面視で略アーチ形状とされるとともに、
図2に示すように車幅方向に沿う縦断面形状も略アーチ形状とされる。また、ホイールハウス15は、
図8(
図5のD−D矢視断面図)に示すように、車両前後方向から車幅方向外側へ湾曲した湾曲部15rを有する。湾曲部15rは、ホイールハウスインナ16に形成され、タイヤ19の前側及び後側のそれぞれに設けられる。なお、
図8は、左のリヤタイヤ19の後側に位置する湾曲部15rを示している。
【0028】
また、ホイールハウス15の内部には、ホイールハウス15の内面形状に沿ったスプラッシュシールド18が設けられる。スプラッシュシールド18は、高剛性,高強度の樹脂成形品であり、ボルトナット,ビス,クリップ部材などでホイールハウス15に固定される。スプラッシュシールド18は、ホイールハウスインナ16,ホイールハウスアウタ17よりもタイヤ19側に設けられ、タイヤ19によって跳ね上げられる小石や泥水から車体を保護するように機能する。
【0029】
図4に示すように、フィラネック1は、その上端部がブーツ8を介して車体に固定されるとともに、ブラケット2c,31を介して燃料フィラネック30に固定される。また、フィラネック1の中間部は、ホイールハウス15においてタイヤ19の後方かつ内側においてホイールハウスインナ16に沿うように配置され、ホイールハウスインナ16(車体)に対して固定されるとともに、保持部材20によって車体に保持される。なお、フィラネック1の下端部はタンク9に接続される。すなわち、本実施形態の保持部材20は、ホイールハウス15の下部かつ後部に配置される。
【0030】
本実施形態のフィラネック1は、フィラヘッド2a側のブラケット2cと燃料フィラネック30側のブラケット31とがボルト締結されることで、その上端部が燃料フィラネック30に対して固定される。また、本実施形態のフィラネック1は、チャンバ6と一体形成されたフランジ6aがホイールハウスインナ16に対しボルト締結されるとともに、フィラホース2及びレベリング管3のそれぞれが固定部品2d,3dによってホイールハウスインナ16に対し固定されることで、その中間部が車体に固定される。
【0031】
さらに本実施形態のフィラネック1には、
図2に示すように、屈曲部1aを覆うように保持部材20が装着され、保持部材20が車体に固定されることで、保持部材20を介して屈曲部1aの周辺が車体に保持される。なお、
図4に示すように、ベントホース4は、その上端部がチャンバ6と一体形成されたクリップ6cによって支持され、その中間部が固定部品3d及び保持部材20に保持され、その下端部がタンク9に接続される。また、ドレンホース5は、その上端部がブーツ8に固定され、その下端部が保持部材20に固定され、その中間部がフィラネック1のチャンバ6を介して車体に取り付けられる。
【0032】
[1−2.保持部材]
図2に示すように、保持部材20は、フィラネック組立品1′を車体に対して保持する機能と、タイヤ19側から侵入しうる小石等の飛散物や泥水等からフィラネック組立品1′を保護する機能とを併せ持つ部品である。また、保持部材20は、タイヤ19自体が内側に侵入してきた場合にもフィラネック組立品1′を保護する。
【0033】
保持部材20は、正面視で(前方から見たときに)、上下方向に延びるとともに下端が内側に向かって屈曲した略L字型をなす。フィラホース2,レベリング管3及びベントホース4は、保持部材20の内側を向く面に沿って、上方から下方に延びたのち内側に向かうように配索される。一方、ドレンホース5は、保持部材20の内側を向く面に沿って上方から下方へと配索される。さらに、
図6及び
図7に示すように、その下端部の開口5dが保持部材20の下面よりも上方に位置し、かつ、鉛直下方を向くように配置される。これにより、ドレンホース5から排出される還元剤が車体に付着することが防止される。
【0034】
図5〜
図7に示すように、保持部材20は、少なくとも一箇所が車体に対して外側から内側に向かって締結固定される。また、保持部材20は、フィラネック1の屈曲部1aの前方に立設されて車幅方向に延在する前面部20a(第一面部)と、前面部20aに対し後方で対向する後面部20b(第二面部)と、前面部20a及び後面部20bの外縁同士を接続する側面部20cと、屈曲部1aの下方に配置される下面部20dとを有する。さらに、保持部材20は、前面部20aの外縁から後方へ屈曲した前方角部25(第一角部)と、後面部20bの外縁から前方へ屈曲した後方角部26(第二角部)とを有する。前方角部25は前面部20aと側面部20cとで形成され、後方角部26は後面部20bと側面部20cとで形成される。
【0035】
本実施形態では、前面部20aに設けられた前側フランジ20eがサイドメンバ13の側面に当接された状態で外側からボルト締結される。以下、サイドメンバ13の側面に対する固定箇所を第一固定点21と呼ぶ。なお、前側フランジ20eは、前面部20aの内端から前方へ直角に屈曲形成された面部である。また、本実施形態の保持部材20は、第一固定点21の後方に、車体に対して下方から上方に向かって締結固定される二つの固定点22,23を有する。
【0036】
本実施形態では、後面部20bに設けられた上側フランジ20fがリヤフロアパネル14に当接された状態で下方からボルト締結される。以下、この固定箇所を第二固定点22と呼ぶ。さらに、後面部20bに設けられた下側フランジ20gがサイドメンバ13の下面に当接された状態で下方からボルト締結される。以下、この固定箇所を第三固定点23と呼ぶ。なお、上側フランジ20fは、後面部20bの上部において後方へ屈曲形成された面部であり、下側フランジ20gは、後面部20bの下部において後方に屈曲形成された面部である。
【0037】
本実施形態の保持部材20は、アッパ部材20U及びロア部材20Lの二部品が組み合わされて構成される。アッパ部材20Uは、フィラネック1に予め組み付けられた状態で車体に固定される。一方、ロア部材20Lは、フィラネック組立品1′及びアッパ部材20Uが車体に固定された後で、アッパ部材20Uの下方に配置されて車体に固定される。
【0038】
上記の前側フランジ20e(第一固定点21)はアッパ部材20Uの前面部20aに設けられ、上側フランジ20f(第二固定点22)はアッパ部材20Uの後面部20bに設けられる。また、下側フランジ20g(第三固定点23)はロア部材20Lの後面部20bに設けられる。また、本実施形態の保持部材20は、アッパ部材20U及びロア部材20Lを締結するための固定点24(以下「第四固定点24」という)を有する。アッパ部材20U及びロア部材20Lは、アッパ部材20Uの下端部がロア部材20Lの上端部に対し、外側から重ねられた状態で、第四固定点24において固定される。
【0039】
保持部材20は、フィラネック1に装着される爪部27と、車体に固定された状態で上下方向に延びる筒部28と、ドレンホース5の開口端(開口5dが形成された端面)の近傍を保持する係止爪29とを有する。本実施形態では、爪部27,筒部28及び係止爪29がいずれもアッパ部材20Uに設けられる。本実施形態では、爪部27,筒部28及び掛止爪29がいずれも樹脂製であり、同じく樹脂成形品である保持部材20(アッパ部材20U)と一体に形成(一体成形)される。
【0040】
爪部27には、フィラホース2,レベリング管3及びベントホース4の各外周面に面接触しうる半筒面状のへこみが三箇所に形成されており、これらの配管2〜4は各へこみに挟み込まれた姿勢で爪部27に弾性的に支持される。これにより、各配管2〜4の中間部が、保持部材20を介して車体に対し保持される。保持部材20は、
図5に示すように、爪部27がリヤフロアパネル14よりも下方に位置するように車体に固定される。また、保持部材20の筒部28には、ドレンホース5の下端部が挿通される。さらにドレンホース5の開口端の近傍が係止爪29によって保持される。これにより、ドレンホース5が保持部材20に固定される。
【0041】
本実施形態では、
図8に示すように、四つの配管2〜5のうち最も外径の大きいフィラホース2(最大径の配管)が前方角部25に装着され、ドレンホース5が後方角部26に装着される。保持部材20は、その上端部がホイールハウス15の湾曲部15rを覆うように車体に対し締結固定される。なお、湾曲部15rは、ホイールハウス15の内壁15aの一部分であって、タイヤ19の内側で前後方向に立設された面部とタイヤ19の後方で車幅方向に立設された面部との間に湾曲形成された部分である。タイヤ19の後側に設けられた湾曲部15rは、内側から外側に向かって後方へ傾斜するように立設されるとともに、内側かつ後方に凸状とされる。フィラネック1(フィラネック組立品1′)は、この湾曲部15rにおいてホイールハウス15の内壁15aと保持部材20とで挟持される。なお、フィラネック1が、図示しない緩衝材(例えばスポンジ)を介して内壁15aと保持部材20とで挟持されていてもよい。
【0042】
本実施形態では、前方角部25に装着されたフィラホース2がホイールハウス15の湾曲部15rに沿って配置される。なお、ホイールハウス15は、前後方向に延在する面部から湾曲部15rに至る部分に境界部15dを有する。境界部15dもホイールハウスインナ16に形成される。本実施形態のフィラホース2は、この境界部15dに配置される。保持部材20は、第一固定点21において車両外側から内側に向かって締結固定されることから、フィラホース2は、境界部15d周辺に押し付けられた状態で湾曲部15rに沿って車体に保持される。各配管2〜5は、屈曲部1aの上方において爪部27及び筒部28によって保持され、保持部材20とともにホイールハウスインナ16とスプラッシュシールド18との間の空間に配置される。
【0043】
[2.効果]
(1)上述した車体構造では、フィラネック1が湾曲部15rにおいてホイールハウス15の内壁15aと保持部材20とで挟持されることからフィラネック1を車体側へと押し付けた(当接させた)状態で車体に取り付けることができる。これにより、例えばホイールハウスインナ16とスプラッシュシールド18との間といった狭いスペース内にフィラネック1を配置することができ、車両10の空間利用効率(スペース効率)を高めることができる。
【0044】
また、仮にフィラネックと車体との間に空間を設けてフィラネックを保護する構造の場合には、その空間を十分に広くしなければ、フィラネックと車体とが車体振動により衝突することがあり、フィラネックの摩耗を促進させてしまう。また、フィラネックの摩耗を防ぐために空間を十分に広くしたのではスペース効率が悪化し、ホイールハウス15の内部にフィラネックを配索することが困難となり得る。上述した車体構造であれば、このような課題も解決することができる。すなわち、保持部材20によってフィラネック1を車体側へ積極的に押し付けることができるため、フィラネック1の摩耗を防止することができるうえ、フィラネック1と車体との間に空間を確保する必要がないため、スペース効率を向上させることができる。
【0045】
(2)上述した車体構造では、保持部材20が、少なくとも一箇所でサイドメンバ13に締結固定されるため、フィラネック1をホイールハウス15に積極的に押し付けて配索することができ、車両10の空間利用効率(スペース効率)をより高めることができる。
【0046】
(3)上述した車体構造では、保持部材20が有する前面部20aによってフィラネック1の前方を保護することができ、泥水や雪の浸入を抑制することができる。さらに、保持部材20の前方角部25に最大径の配管であるフィラホース2が装着されるとともにフィラホース2がホイールハウス15の湾曲部15rに沿って配置される(より具体的には境界部15dに配置される)ため、省スペース化を図りながらフィラネック1をホイールハウス15の内壁15aとの間に挟持することができる。つまり、車両10の空間利用効率(スペース効率)をより向上させることができる。また、フィラネック1とタイヤ19との間隔を広げることができるため、フィラネック1の保護性を高めることもできる。
【0047】
(4)上述した車体構造では、四つの配管2〜5のうち、タンク9に接続されないドレンホース5が保持部材20の後方角部26に装着されるため、ドレンホース5と他の三つの配管2〜4とを異なる方向に配索しやすくすることができる。
(5)上述した車体構造では、フィラネック1がタイヤ19の後方かつ内側に配置され、保持部材20がホイールハウス15の後部に配置される。タイヤ19の後方かつ内側にはタイヤ19の回転で巻き上げられた泥水や雪が浸入しやすいが、これらがフィラネック1に付着することを抑制できる。
【0048】
(6)また、上述した保持部材20には、ドレンホース5の下端部が挿通される筒部28が設けられるため、ドレンホース5の姿勢を安定させることができ、ドレンホース5から排出される還元剤が車体に付着することを防止することができる。特に上述した実施形態では、保持部材20に係止爪29が設けられているため、開口端の直上方部分が係止爪29により保持されることから、開口端を車体に対し非接触なまま維持することができる。また、保持部材20によって、チッピングや飛散物からドレンホース5の下端部を保護することもできる。
【0049】
(7)上述した保持部材20は、車体に対して外側から内側に向かって締結固定される箇所(第一固定点21)と、車体に対して下方から上方に向かって締結固定される箇所(第二固定点22及び第三固定点23)とを有する。つまり、保持部材20の車体に対する二箇所の締結方向が互いに異なる方向とされている。このため、例えばタイヤ19が内側に侵入して保持部材20に当たったとしても、保持部材20に作用する応力を分散(緩和)することができ、保持部材20の破損を抑制することができる。
【0050】
(8)上述した車体構造では、保持部材20に設けられた爪部27が、車両10のリヤフロアパネル14よりも下方に位置するように車体に固定される。このため、例えばタイヤ19が内側に侵入して保持部材20が内側へ押されたとしても、爪部27がリヤフロアパネル14の下方に入り込むことから、爪部27の破損と車体側の破損とを抑制することができる。
【0051】
(9)上述した保持部材20は、アッパ部材20U及びロア部材20Lの二部品が組み合わされて構成されるため、車体に対するフィラネック1(フィラネック組立品1′)の組付作業性を向上させることができる。また、フィラネック1に予め組み付けられるアッパ部材20Uが車体に対して外側から内側に向かって締結固定されるため、フィラネック1を車体側へ押し付けやすくすることができ、空間利用効率を高めることができる。
【0052】
[3.その他]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述したフィラネック1の具体的な構成は一例である。例えば、フィラネック1の車体に対する固定箇所が上述した部分でなくてもよいし、各配管2〜5の配索が上述した配索と異なるものであってもよい。また、フィラネック組立品1′にする代わりに、フィラネック1を車体に固定してからベントホース4及びドレンホース5をフィラネック1や車体に対して固定してもよい。
【0053】
また、上述した保持部材20の構成や固定位置等は一例であって、上述したものに限られない。例えば、保持部材20が一部品から構成されていてもよいし、その材質は特に限られない。また、保持部材20は、少なくとも一箇所が車体に対して外側から内側に向かって締結固定されていればよく、その固定箇所が上記の第一固定点21でなくてもよい。また、上記の固定点22,23も一例であって、これら以外の箇所において保持部材20を固定してもよいし、車体に対する締結方向も上述したものに限られない。
【0054】
また、上述した保持部材20は爪部27,筒部28及び係止爪29を有しているが、例えば筒部28及び係止爪29を省略し、爪部27にドレンホース5を保持するためのへこみを追加してもよい。また、上述した配管2〜5の配置は一例であって、ホイールハウスインナ16に対するフィラホース2の位置や、保持部材20に対する配管2〜5の位置が上述したものでなくてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、排気中のNOxを浄化する還元システムについて詳述したが、添加剤の種類は尿素水に限定されない。NOx選択還元触媒を利用した排気浄化システムにおいては、尿素水の代わりにアンモニア水を使用することがある。また、ディーゼル・パティキュレート・フィルタを利用した排気浄化システムにおいては、PM(パティキュレート・マター)の燃焼を促進するために、排気管内に炭化水素(HC,未燃燃料)を噴射することがある。したがって、尿素水の代わりにアンモニア水や炭化水素を供給する排気浄化システムに対して、上述の車体構造を適用することも可能である。