(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862942
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】シッピングブラケット
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
B62D25/20 L
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-45967(P2017-45967)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-149848(P2018-149848A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 英輔
(72)【発明者】
【氏名】秦 永恒
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−120524(JP,A)
【文献】
特開2010−83419(JP,A)
【文献】
特開平11−278305(JP,A)
【文献】
実開昭61−198105(JP,U)
【文献】
特開2014−91465(JP,A)
【文献】
特開2007−8212(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第4115812(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0035627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に延びるサイドメンバを含む車体フレームに固定される板金製のシッピングブラケットであって、
前記シッピングブラケットの上端部に形成され、前記サイドメンバの車幅方向の壁部の側面に接合される車体取付部と、
前記シッピングブラケットの下端部に形成され固定用フックを係止するフック穴を形成されたフッキング部と、前記車体取付部と前記フッキング部との間に形成された中間部と、
を備えたパネル部材を有し、
前記パネル部材には、前記フック穴の周囲から前記中間部を経て前記車体取付部の上端まで連続して延びるビード部が、前記パネル部材の基準面である主面部の一面側に突出して形成されている
ことを特徴とする、シッピングブラケット。
【請求項2】
前記車体フレームは、前記サイドメンバの長さ方向端部に結合され車幅方向に延びるクロスメンバをさらに有し、
前記シッピングブラケットは、前記サイドメンバの長さ方向端部の前記クロスメンバが結合された箇所に取り付けられ、
前記車体取付部および前記中間部には、車幅方向に屈曲形成されて前記クロスメンバの外面に接合されるフランジ部がそれぞれ形成され、
前記車体取付部の前記フランジ部は、前記クロスメンバの車長方向の壁部の前後面に接合され、
前記中間部の前記フランジ部は、前記クロスメンバの下方の壁部の下面に接合され、
前記ビードは、前記クロスメンバの下部において該クロスメンバの下面に沿って前後方向に延びている
ことを特徴とする、請求項1に記載のシッピングブラケット。
【請求項3】
前記ビード部の縁部は、
前記フック穴の周囲に前記フッキング部と前記中間部との境界部分を除いて形成された部分円弧状ビード縁部と、
前記部分円弧状ビード縁部の一端から前記中間部及び前記車体取付部の一縁側に沿って延びた一縁側線状ビード縁部と、
前記部分円弧状ビード縁部の他端から前記中間部及び前記車体取付部の他縁側に沿って延びた他縁側線状ビード縁部と、が連続して形成されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のシッピングブラケット。
【請求項4】
前記パネル部材として、互いに対称に形成された第1パネル部材と第2パネル部材とを有し、
前記第1パネル部材の前記フッキング部と前記第2パネル部材の前記フッキング部とが接合され、
前記第1パネル部材の前記車体取付部と前記第2パネル部材の前記車体取付部とで前記サイドメンバを挟持する状態で前記サイドメンバに固定される
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のシッピングブラケット。
【請求項5】
前記パネル部材の前記主面部は、前記車体取付部と、前記フッキング部と、前記中間部とで、それぞれ別の平面で構成され、
前記車体取付部の前記主面部と前記フッキング部の前記主面部とは、互いに平行に形成され、
前記中間部の前記主面部は、前記車体取付部の前記主面部とも前記フッキング部の前記主面部とも傾斜して形成され、
前記ビード部は、前記フッキング部の前記主面部と前記中間部の前記主面部との境界、及び、前記車体取付部の前記主面部と前記中間部の前記主面部との境界をいずれも貫通するように延びている
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のシッピングブラケット。
【請求項6】
前記第1パネル部材の前記車体取付部及び前記第2パネル部材の前記車体取付部の前記主面部は、前記サイドメンバの端部の車幅方向を向いた各面にそれぞれ接合され、
前記第1パネル部材の前記フッキング部及び前記第2パネル部材の前記フッキング部の主面部は、互いに接合される
ことを特徴とする、請求項4または5に記載のシッピングブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を輸送用機器で輸送する際に固定するシッピングブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両を船舶やトレーラー等の輸送用機器に載せて運搬する際に、車両を輸送用機器に固定するためにシッピングブラケット(シッピングフックとも呼ばれる)が用いられる。シッピングブラケットは、車体フレームに固定され、突出部には固定用フックを係止するフック穴が設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−315935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シッピングブラケットは、軽量化,低コスト化のために、一般に板金を加工して形成する。板金製シッピングブラケットの場合、板厚方向への入力荷重に対する剛性が低いため、応力が集中するフック穴の周囲や、周縁部分をフランジ状に折り曲げて剛性を高めることで、補強することができる。
【0005】
そこで、本発明者は、本発明の案出過程で、
図6に示すような補強構造を有し、
図7に示すように車体へ取り付けられる板金製シッピングブラケット110を開発した。
図6に示すように、このシッピングブラケット110は、板金製のパネル部材110A,110Bが組み合わされて構成される。
【0006】
図6,
図7に示すように、各パネル部材110A,110Bは、一端側(車体取付時の上端側)に形成され車体フレーム1の端部に固定される車体取付部111と、他端側(車体取付時の下端側)に形成され固定用フックを係止するフック穴114を備えたフッキング部112と、車体取付部111とフッキング部112との間に広がった中間部113とを有している。車体取付部111は、平板状に形成され、車体フレーム1に広い面積で接合しうるようになっている。
【0007】
以下、パネル部材110Aに着目して説明すると、パネル部材110A,110Bの周縁部分は、
図6中では斜め手前側に折り曲げられてフランジ部115が形成され、これによって剛性が高められている。また、フック穴114の外周を一周取り巻くように、
図6中では斜め手前側に突出するビード部116が形成されている。パネル部材110A,110Bの中でも広域に広がった平面状の中間部113にも、
図6中では斜め手前側に突出するビード部117が形成され、剛性が高められている。なお、2つのビード部116,117は互いに独立して形成されている。
【0008】
これらのパネル部材110A,110Bは、
図6,
図7に示すように、フッキング部112が互いに重なるように配置されて互いに接合されると共に、車体取付部111を車体1のフレーム2の端部を左右から挟み込むように配置されて、車体フレーム2に固定される。
【0009】
このように板金製シッピングブラケットを構成することにより、シッピングブラケットの板厚方向への剛性が向上するため、フック穴114にシッピングフック等を係止して車両を輸送用機器に固定して輸送する際、フック穴114やその周辺に局部的に大きな応力が加わっても、フック穴114の周辺の変形が抑えられ損傷の発生が抑制されるものと思われた。
【0010】
しかしながら、このように工夫した板金製シッピングブラケットであっても、フック穴114の周囲のビード部116と中間部113に形成されたビード部117との間や、中間部113のビード部117と平板状の車体取付部111との間に、応力が集中し、亀裂等の損傷が発生するおそれがあることが判明した。
【0011】
本発明は、このような課題に着目して創案されたもので、応力集中を抑制して損傷のおそれを低減することができるようにした、板金製のシッピングブラケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するために、本発明のシッピングブラケットは、
車長方向に延びるサイドメンバを含む車体フレームに固定される板金製のシッピングブラケットであって、
前記シッピングブラケットの上端部に形成され
、前記サイドメンバの車幅方向の壁部の側面に接合される車体取付部と、
前記シッピングブラケットの下端部に形成され固定用フックを係止するフック穴を形成されたフッキング部と、前記車体取付部と前記フッキング部との間に形成された中間部と、を備えたパネル部材を有し、前記パネル部材には、前記フック穴の周囲から前記中間部を経て前記車体取付部
の上端まで連続して延びるビード部が、前記パネル部材の基準面である主面部の一面側に突出して形成されていることを特徴としている。
【0013】
(2)前記車体フレームは、前記サイドメンバの長さ方向端部に結合され車幅方向に延びるクロスメンバをさらに有し、前記シッピングブラケットは、前記サイドメンバの長さ方向端部の前記クロスメンバが結合された箇所に取り付けられ、前記車体取付部および前記中間部には、車幅方向に屈曲形成されて前記クロスメンバの外面に接合されるフランジ部がそれぞれ形成され、前記車体取付部の前記フランジ部は、前記クロスメンバの車長方向の壁部の前後面に接合され、前記中間部の前記フランジ部は、前記クロスメンバの下方の壁部の下面に接合され、前記ビードは、前記クロスメンバの下部において該クロスメンバの下面に沿って前後方向に延びていることが好ましい。
(
3)前記ビード部の縁部は、前記フック穴の周囲に前記フッキング部と前記中間部との境界部分を除いて形成された部分円弧状ビード縁部と、前記部分円弧状ビード縁部の一端から前記中間部及び前記車体取付部の一縁側に沿って延びた一縁側線状ビード縁部と、前記部分円弧状ビード縁部の他端から前記中間部及び前記車体取付部の他縁側に沿って延びた他縁側線状ビード縁部とが、連続して形成されていることが好ましい。
【0015】
(4)前記パネル部材として、互いに対称に形成された第1パネル部材と第2パネル部材とを有し、前記第1パネル部材の前記フッキング部と前記第2パネル部材の前記フッキング部とが接合され、前記第1パネル部材の前記車体取付部と前記第2パネル部材の前記車体取付部とで前記
サイドメンバを挟持する状態で前記
サイドメンバに固定されることが好ましい。
【0016】
(5)前記パネル部材の前記主面部は、前記車体取付部と、前記フッキング部と、前記中間部とで、それぞれ別の平面で構成され、前記車体取付部の前記主面部と前記フッキング部の前記主面部とは、互いに平行に形成され、前記中間部の前記主面部は、前記車体取付部の前記主面部とも前記フッキング部の前記主面部とも傾斜して形成され、前記ビード部は、前記フッキング部の前記主面部と前記中間部の前記主面部との境界、及び、前記車体取付部の前記主面部と前記中間部の前記主面部との境界をいずれも貫通するように延びていることが好ましい。
【0017】
(6
)前記第1パネル部材の前記車体取付部及び前記第2パネル部材の前記車体取付部の前記主面部は、前記
サイドメンバの端部の車幅方向を向いた各面にそれぞれ接合され、前記第1パネル部材の前記フッキング部及び前記第2パネル部材の前記フッキング部の主面部は、互いに接合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、板金製のシッピングブラケットを構成するパネル部材に、フック穴の周囲から中間部を経て車体取付部まで連続して延びるビード部が形成されているので、フック穴に入力された応力が、フック穴の周囲と中間部との間や、中間部と車体取付部との間に集中することが抑制され、亀裂等の損傷のおそれを低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるシッピングブラケットの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるシッピングブラケットの車体取付状態を示すもので、車両後端下部の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるシッピングブラケットの車体取付状態を示すもので、車両後端下部の拡大側面図(
図2のA部拡大図)である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかるシッピングブラケットの車体取付状態を示すもので、車両後端下面を斜め側方且つ斜め上方に見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかるシッピングブラケットの車体取付状態を示すもので、車両後端下面を真後ろ且つ斜め上方に見た斜視図である。
【
図6】本発明の案出過程で創案されたシッピングブラケットの斜視図である。
【
図7】本発明の案出過程で創案されたシッピングブラケットの車体取付状態を示すもので、車両後端下部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の2ステージターボチャージャの潤滑油供給装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0022】
〔構成の概要〕
図1に示すように、本シッピングブラケット10は、板金製の第1パネル部材10Aと第2パネル部材10Bとの2枚のパネル部材を有して構成される、
本実施形態では、第1パネル部材10Aと第2パネル部材10Bとは、完全に面対称に形成されているので、
図1中手前側の第1パネル部材10Aに着目しながら両パネル部材10A,10Bを説明する。なお、シッピングブラケットをこのように2枚のパネル部材で構成する場合、第1パネル部材10Aと第2パネル部材10Bとを、必ずしも本実施形態のように完全に面対称に形成しなくてもよい。
【0023】
パネル部材10A,10Bは、車体1への取付時に上方になる一端側に、車体フレーム2に接合される車体取付部11を有し、車体1への取付時に下方になる他端側に、固定用フック19(
図5参照)を係止するフック穴14を形成されたフッキング部12を有している。車体取付部11とフッキング部12との間には両者11,12を隔てる中間部13を有し、シッピングブラケット10の車体1への取付時に、フッキング部12が車体フレーム2(
図2参照)の下方に突出した位置をとるようになっている。
【0024】
そして、パネル部材10A,10Bには、フッキング部12のフック穴14の周囲から中間部13を経て車体取付部11まで連続して延びるビード部15が形成されている。詳細は後述するが、パネル部材10A,10Bは、その基準面となる主面部10mがあり、ビード部15は、この主面部10mの一面側(外面側)に突出して形成されている。
【0025】
本実施形態の場合、シッピングブラケット10は、車体1の後部のフレーム2に取り付けられる。ここで例示する車体1は、
図2〜
図5に示すような後部構造を有している。なお、
図2〜
図5において示すX,Y,Zの3軸は、車両が水平面上に位置しているものとして、Xが車幅方向(車体左側を正とする)を、Yが前後方向(車体後方を正とする)を、Zが鉛直方向(鉛直上方を正とする)を、それぞれ示す。
【0026】
図2〜
図5に示すように、車体1の後部の床面(リヤフロアパネル)3の下方には、車体フレーム2として、車長方向に延びるリヤフロアサイドメンバ(縦方向骨格部材)21と、このリヤフロアサイドメンバ21の後端部に結合され車幅方向に延びるリヤエンドクロスメンバ(端部骨格部材)22とを有している。シッピングブラケット10は、リヤフロアサイドメンバ21の後端部のリヤエンドクロスメンバ22が結合された箇所に取り付けられる。
【0027】
リヤフロアサイドメンバ21は、横断面がハット型を上下反転させた逆ハット型に構成され、両フランジ部21a,21aがリヤフロアパネル3の裏面31とスポット溶接等で結合され、ハット凸部21bがリヤフロアパネル3の下方に突出している。リヤエンドクロスメンバ22も横断面が逆ハット型に構成され、ハット凸部22bの車体前方側を向いた面22cがリヤフロアサイドメンバ21の先端にスポット溶接等で結合され、両フランジ部22a,22aがリヤフロアパネル3の裏面31とスポット溶接等で結合されている。
【0028】
パネル部材10A,10Bの各車体取付部11の平面状の主面部11mは、互いに離隔して、リヤフロアサイドメンバ21の左右の両壁部21c,21dを挟むように対向して配置され、両壁部21c,21dの外面にスポット溶接等で接合される。また、この取付状態で、パネル部材10A,10Bの各フッキング部12の平面状の主面部12mは、互いに接近して、ボルト締結或いはスポット溶接等で互いに接合される。
【0029】
このように、各パネル部材10A,10Bの車体取付部11の主面部11mはいずれも鉛直方向を向いて互いに対向するように離隔しているのに対して、各パネル部材10A,10Bのフッキング部12の主面部12mは、いずれも鉛直方向で車長方向を向いて互いに接近しているので、中間部13の平面状の主面部13mは、車体取付部11の主面部11mに対してもフッキング部12の主面部12mに対しても傾斜している(すなわち、鉛直方向に対して傾斜している)。
【0030】
このため、車体取付部11の主面部11mと中間部13の主面部13mとの境界部分、及び、フッキング部12の主面部12mと中間部13の主面部13mとの境界部分には、いずれも屈曲部が形成されている。ビード部15は、フッキング部12の主面部12mと中間部13の主面部13mとの境界、及び、車体取付部11の主面部11mと中間部13の主面部13mとの境界を、いずれも貫通するように延設されている。
【0031】
〔シッピングブラケットの詳細構成〕
図1に示すように、ビード部15は、パネル部材10A,10Bの主面部10m(即ち、車体取付部11の主面部11m,フッキング部12の主面部12m及び中間部13の主面部13m)から、この主面部10mの外面側に曲面上に盛り上がるように、滑らかに突出形成されている。
【0032】
ビード部15の縁部15Eは、フック穴14の周囲にフッキング部12と中間部13との境界部分を除いて形成された部分円弧状ビード縁部15aと、この部分円弧状ビード縁部15aの一端(取付時に車体の前側に位置する端部)から中間部13及び車体取付部11の一縁側(前縁側)に沿って延びた一縁側線状ビード縁部15bと、部分円弧状ビード縁部15aの他端(取付時に車体の後側に位置する端部)から中間部13及び車体取付部11の他縁側(後縁側)に沿って延びた他縁側線状ビード縁部15cとが、滑らかに連続して形成されている。
【0033】
このようなビード部15の縁部15Eは、パネル部材10A,10Bの前縁部,下縁部及び後縁部に沿って、これら縁部の内側に形成されており、パネル部材10A,10Bの主面部10mに対して起立しておりパネル部材10A,10Bの剛性を高める。このため、パネル部材10A,10Bの補強構造(補強用ビード)として機能する。なお、ビード部15の縁部15Eで囲まれた内部(ビード部15の主面部15m)は、主面部10mよりも外面側にシフトした位置に、平面形状又は滑らかな曲面形状に形成されている。
【0034】
また、ビード部15の外周(パネル部材10A,10Bの上記縁部)には、ビード部15に対して外面側に屈曲形成されたフランジ部16が形成されている。フランジ部16も、パネル部材10A,10B主面部10mに対して起立しておりパネル部材10A,10Bの剛性を高める。このため、パネル部材10A,10Bの補強構造(補強用フランジ)として機能する。
【0035】
また、フランジ部16の一部、即ち、パネル部材10A,10Bの後縁側上部のリヤエンドクロスメンバ22のハット凸部22bの外面に当接する部分に形成されたフランジ部16a,16bは、ハット凸部22bの外面にスポット溶接等で接合される取付構造(取付用フランジ)としても機能する。
【0036】
なお、
図1に示すように、ビード部15の主面部15mには、パネル部材10A,10B同士をボルト締結するための取付穴(ボルト穴)17a,17bが形成されており、各取付穴17a,17bに図示しないボルトを挿し込んで、パネル部材10A,10B同士
を締結する。フック穴14に近い取付穴17bは、ビード部15とは逆に内面側に突出して形成された逆向きビード部18に形成されている。逆向きビード部18はフック穴14から遠ざかるほど内面側に突出する局面または平面を有し、逆向きビード部18を形成する縁部18Eによってフック穴14mや取付穴17bの周りが補強されている。
【0037】
〔作用及び効果〕
本実施形態にかかるシッピングブラケット10は、上述のように構成されているので、以下のような作用効果を得ることができる。
【0038】
(1)パネル部材10A,10Bには、フッキング部12のフック穴14の周囲から中間部13を経て車体取付部11まで連続して延びるビード部15が、パネル部材10A,10Bの主面部10mの外面側に突出して形成されているので、フック穴14に入力された応力が、フック穴14の周囲と中間部13との間や、中間部13と車体取付部11との間に集中することが抑制され、亀裂等の損傷のおそれを低減することができ、シッピングブラケット10の耐久性を向上させることができる。
【0039】
(2)また、ビード部15の縁部15Eは、フック穴15の周囲に形成された部分円弧状ビード縁部15aと、部分円弧状ビード縁部15aの一端から車体取付部11の一縁側に沿って延びた一縁側線状ビード縁部15bと、部分円弧状ビード縁部15aの他端から車体取付部の他縁側に沿って延びた他縁側線状ビード縁部15cと、が連続して形成されているので、フック穴15の周囲は部分円弧状ビード縁部15aによって、フック穴15から車体取付部11にかけては線状ビード縁部15b,15cによって確実に剛性が高められ、シッピングブラケット10の耐久性が向上する。
【0040】
(3)パネル部材10A,10Bのビード部15よりも外周には、主面部10mに対して外面側に屈曲形成されたフランジ部16が形成されているので、これらによってもパネル部材10A,10Bの剛性が高められ、シッピングブラケット10の耐久性が向上する。
【0041】
(4)また、本実施形態では、互いに対称に形成された第1パネル部材10Aと第2パネル部材10Bとが、それぞれのフッキング部12を接合され、それぞれの車体取付部11で前記車体フレームを挟持する状態でリヤフロアサイドメンバ21に固定されるので、シッピングブラケット10が三次元的な構造に形成されるため、剛性が高められ、シッピングブラケット10の耐久性が向上する。
【0042】
(5)車体取付部11の主面部11mと中間部13の主面部13mとの境界部分、及び、フッキング部12の主面部12mと中間部13の主面部13mとの境界部分には、いずれも屈曲部が形成されているが、ビード部15は、これらの境界をいずれも貫通するように延設されているため、屈曲部も含めて剛性が高められ、シッピングブラケット10の耐久性が向上する。
【0043】
(6)シッピングブラケット10は、リヤフロアサイドメンバ21とリヤエンドクロスメンバ22との結合部分に取り付けられるので、シッピングブラケット10を車体フレーム2に強固に固定することができる。
【0044】
(7)シッピングブラケット10のフランジ部16の一部16a,16bは、リヤエンドクロスメンバ22の外面に接合され、補強部材と取付部材とに形容されるので、構造が効率的なものになる。
【0045】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、中間部13の主面部13mを平面状に形成しているが、滑らかな曲面状に形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、2枚のパネル部材10A,10Bを組み合わせてシッピングブラケット10を構成しているが、車両が軽量であったり、パネル部材の板厚が十分に確保されていたりすれば、パネル部材を1枚のみ用いてシッピングブラケットを構成してもよい。
さらに、パネル部材に、フック穴の周囲から中間部を経て車体取付部まで連続して延びるビード部が、突出して形成されていればよく、ビード部の具体的形状は限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1 車体
2 車体フレーム
3 リヤフロアパネル
10 シッピングブラケット
10A 第1パネル部材
10B 第2パネル部材
10m パネル部材10A,10Bの主面部
11 車体取付部
12 フッキング部
13 中間部
14 フック穴
15 ビード部
15E ビード部15の縁部
15a 部分円弧状ビード縁部
15b 一縁側線状ビード縁部
15c 他縁側線状ビード縁部
16 フランジ部
17a,17b 取付穴
18 逆向きビード
19 固定用フック
21 リヤフロアサイドメンバ(縦方向骨格部材)
22 リヤエンドクロスメンバ(端部骨格部材)