特許第6862955号(P6862955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6862955-リクレーマ装置 図000002
  • 特許6862955-リクレーマ装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862955
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】リクレーマ装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/06 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   B65G65/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-52116(P2017-52116)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-154443(P2018-154443A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末永 匡史
(72)【発明者】
【氏名】村井 康夫
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−327133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/06 − 65/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山形に積み上げられた粉粒体の傾斜面に沿って移動可能なハローフレームと、前記ハローフレームの複数箇所から前記傾斜面に向かって突き出した掻き取り爪を備え、前記掻き取り爪を前記傾斜面に突き刺して前記ハローフレームを前記傾斜面に沿って移動させて、前記粉粒体を掻き取り山裾へ落下させるリクレーマ装置において、
前記ハローフレームの駆動油圧部の回避領域の油圧力を区分し、前記油圧力の大きさに比例して設定時間経過後に前記ハローフレームの持ち上げ量を大きくし、回避効果確認時間経過後に前記油圧力が小さくなった場合に回避動作の効果有りの判断を行い、前記油圧力が大きい又は変化なしの場合に前記回避領域の油圧力が一段上の設定時間に移行し、前記設定時間が維持されると前記一段上のハローフレームの持ち上げ量に決定する制御を行う制御部を備えたことを特徴とするリクレーマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山形に積み上げられた石炭や石膏などの粉粒体を傾斜面に沿って掻き崩して搬出するリクレーマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2はリクレーマ装置の説明図であり、(1)は平面図、(2)は(1)のA−A断面図、(3)は(1)のB−B断面図である。図示のようにリクレーマ装置10は、山形に積み上げられた石膏、鉱石、石炭等の粉粒体の稜線方向に移動する(ハロー動作する)台車12に、これと直交する方向に移動する走行装置14が設けられている。台車12には任意の傾斜角で起伏動作可能なハローフレーム20が配設されている。またハローフレーム20の下面(粉粒体と対向する面)に設置された掻き取り爪30によって掻き崩された粉粒体がハローフレーム20の根本側に落下していく。落下した粉粒体は、スクレーパコンベア装置40によって掻き寄せられコンベア等で外部へ搬出される。
【0003】
このような構成のリクレーマ装置10は、積み山の傾斜面に沿ってハローフレーム20を平行移動させると、ハローフレーム20に取り付けられた掻き取り爪30によって積み山の表面を掻き崩していく。一般に粉粒体の積み山の斜面が崩れ落ちないで安定している最大角を安息角という。山形に積み上げられた粉粒体の地面に対する傾斜角度がほぼこの安息角であれば、掻き取り爪30で掻き崩された粒状物群は山の傾斜面に沿って下方へと落下していく。しかし、粉粒体の安息角はその種類や性状、水分の含有量などによってバラツキがあり、安息角が均一でないケースが多い。このため、崩壊し難い粘性のある積み荷の場合は油圧駆動部を有するハローフレーム20の傾斜角度を調整して(下げて)掻き取り爪30を山肌に差し込み平行移動させる。通常の積み荷の場合は掻き取り爪30を差し込むことによって容易に崩壊するので、過剰に崩壊させないように傾斜角度を微調整するためオペレータの負担が大きい。ハローフレーム20の根本に集中して落下した粉粒体がスクレーパに急激な負担変動を与え最悪の場合はスクレーパの損傷原因となるので、慎重な運転操作が要求される。
【0004】
また、積み荷の粘性が高い場合や、積み荷の密度(硬く圧縮された箇所や柔らかい箇所)差によって、表面の粉粒体が崩れ落ちないこともある。この場合は、ハローフレーム20を油圧駆動部によって下げ、掻き取り爪30を積み荷に食い込ませ傾斜面を掻き崩している。しかし、積み荷の粘性が高い場合や固く圧縮された箇所にハローフレーム20の掻き取り爪30を差し込み平行移動させても、表面の粉粒体が容易に崩れ落ちないことがある。上述した大量崩落による積み荷の偏り、粘性や硬度の高い積み荷の分散分布による運転中の急激な負荷変動が、順調な運転装置の障害となっている。これらの対応は、経験を積んだオペレータの技量に頼るしかないのが実情であった。
【0005】
そこで特許文献1に開示のリクレーマ制御装置は、負荷が設定値を超えた場合、ハローフレームの傾斜角度を調整するか又は傾斜速度を調整することにより、ハローフレームに対する負荷を低減させて、機器の損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−327133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、機器の保護と、安全面での効果が期待できる。しかしながら粉粒体の払い出し量の低下やばらつき、稼働停止による払い出し不能となるおそれがある。特に、大量に堆積された粉粒体の密度、粘土、硬度のばらつきがあり、設定稼働範囲の上限値付近で運転する際には常に負荷変動を生じるので、回避動作によって稼働運転が安定しない問題があった。
【0008】
またリクレーマ装置の運転時において負荷が急に大きく変化して各種の検知センサーによる設定した負荷を超えたときに、リクレーマ装置を巻き上げたりするなどして負荷を減少させる制御が提案されている。前述のように粉粒体の積み山は粉粒体の形状、種類、含水量、積み上げ高さによる圧密度の差がある。ハローフレームの掻き取り爪を積み山に差し込み掻き崩したとき、いつも同じように崩落するとは限らずリクレーマの負荷は常に大きく変化している。特に急激に大量の崩壊を生じた場合には、油圧駆動部の所要油圧力が急激に上昇する。このようにリクレーマ装置は常に負荷が変動しており、各種負荷検知センサーが検知する負荷も運転中は常時変化している。負荷の変動に敏感に反応して、負荷を低減させる回避操作、例えば、ハローフレームの持ち上げ、運転速度の低減などを行うと安定した払い出しができない。
【0009】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、山形に積み上げられた粉粒体を定量払出し可能なリクレーマ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、山形に積み上げられた粉粒体の傾斜面に沿って移動可能なハローフレームと、前記ハローフレームの複数箇所から前記傾斜面に向かって突き出した掻き取り爪を備え、前記掻き取り爪を前記傾斜面に突き刺して前記ハローフレームを前記傾斜面に沿って移動させて、前記粉粒体を掻き取り山裾へ落下させるリクレーマ装置において、
前記ハローフレームの駆動部の単位時間当たりの負荷変化に応じて設定時間経過後に前記ハローフレームの傾斜角度を変える制御を行う制御部を備えたことを特徴とするリクレーマ装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、ハローフレームの駆動部の負荷変化とその継続時間の両方から異常と判断してハローフレームの払い出し量を制御して山形に積み上げられた粉粒体を定量払出しすることができる。
【0011】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、山形に積み上げられた粉粒体の傾斜面に沿って移動可能なハローフレームと、前記ハローフレームの複数箇所から前記傾斜面に向かって突き出した掻き取り爪を備え、前記掻き取り爪を前記傾斜面に突き刺して前記ハローフレームを前記傾斜面に沿って移動させて、前記粉粒体を掻き取り山裾へ落下させるリクレーマ装置において、
前記ハローフレームの駆動油圧部の回避領域の油圧力を区分し、前記油圧力の大きさに比例して設定時間経過後に前記ハローフレームの持ち上げ量を大きくし、設定効果確認時間経過後に前記油圧力が小さくなった場合に回避動作の効果有りの判断を行い、前記油圧力が大きい又は変化なしの場合、前記回避領域の油圧力が一段上の設定時間に移行し、前記設定時間が維持されると前記一段上のハローフレームの持ち上げ量に決定する制御を行う制御部を備えたことを特徴とするリクレーマ装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、ハローフレームの駆動部の圧力変化とその継続時間の両方から異常と判断してハローフレームの払い出し量を制御して山形に積み上げられた粉粒体を定量払出しすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハローフレームの駆動部の負荷変化とその継続時間の両方から異常と判断してハローフレームの払い出し量を制御して山形に積み上げられた粉粒体を定量払出しすることができ、払出しのばらつきが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のリクレーマ装置の処理フロー図である。
図2】リクレーマ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリクレーマ装置の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0015】
[リクレーマ装置]
本発明のリクレーマ装置は、図2に示す装置と基本構成が同一であり、さらに制御部を備えている。
制御部は、ハローフレームの駆動部と電気的に接続している。なおハローフレームの駆動部は、ハローフレームを任意の傾斜角で起伏動作可能であれば良く、油圧式、電動式、圧縮空気式など種々の方式の駆動源を採用することができる。本実施形態では一例として油圧式の駆動部(以下、油圧駆動部という)について、以下説明する。
【0016】
制御部は、ハローフレーム20の油圧駆動部と電気的に接続した電子機器などであり、油圧駆動部から作動時の油圧力の値が入力されている。また制御部は、油圧駆動部へハローフレームの巻き上げ量又は傾斜角度を変える制御信号を出力している。さらに制御部はタイマー、警報出力部を備えている。タイマーは所定の時間を計測するものである。警報出力部は光、音声などにより作業者へ情報を知らせるものである。
【0017】
このような構成の制御部は、油圧駆動部の油圧力の単位時間当たりの圧力変化から、粉粒体の積み山の状態を推測して、装置の運転操作を制御している。より具体的には装置稼働中の最大負荷(閾値)として、閾値と無負荷の間の油圧力を3つの運転領域(ゾーン)に区分して、それぞれの領域に適した負荷回避操作を行っている。一例としてハローフレームの駆動油圧力を「正常運転領域」、「監視領域」、「回避領域」に設定し、それぞれの油圧力に対する回避動作であるハローフレームの巻き上げ量又は傾斜角度を設定している。また制御部は、タイマー機能を用いて、生じた負荷の油圧力の上昇値と閾値とからどの程度超えて、さらにその経過時間から、その負荷に対する対応を前述の区分した運転領域に当てはめて領域毎の対応を行っている。そして回避動作の効果が所定時間継続していることを確認して回避動作を終了させて回避前の状態に戻す制御も行う構成を採用している。
【0018】
[作用]
上記構成による本発明のリクレーマ装置の作用について以下説明する。
図1は本発明のリクレーマ装置の処理フロー図である。
まずハローフレームの油圧駆動部の作動時の油圧力をP(以下単位はMPaとする)とし、P≦1を正常運転領域、1<P≦5を監視領域、5<Pを回避領域と設定する。
T1は作動時の油圧力の継続時間である。このT1は作動時の油圧力が大きいほど時間を短く設定しており、本実施形態では一例として監視領域では90秒〜120秒、回避領域では30秒〜90秒の範囲に設定している。
Lは作動時の油圧力Pとその継続時間T1の条件によって行う回避領域における回避行動である。より具体的なLは、ハローフレームの持ち上げ量、例えばL=100mm〜300mm、又はハローフレームの傾斜角度である。
T2は回避行動Lの効果の確認時間である。このT2は一例として90秒〜120秒の範囲に設定している。
【0019】
リクレーマ装置を稼働させると、ハローフレームの油圧駆動部から作動時の油圧力Pが制御部に入力される。
油圧力PがP≦1の場合、正常運転領域であり、その運転状態が維持される(ステップ1)。
油圧力Pが1<P≦3の場合、監視領域であり、継続時間T1が120秒維持されると、警報出力部より作業者に対して黄色の発色ランプが点滅、又は/及び警告音が発生する(ステップ2)。
油圧力Pが3<P≦5の場合も、監視領域であり、継続時間T1が90秒維持されると、警報出力部より作業者に対して赤色の発色ランプが点滅、又は/及び警告音が発生する(ステップ3)。
【0020】
油圧力Pが5よりも大きい場合、回避領域であり、次のような回避動作に設定している。
油圧力Pが5<P≦6の場合、かつ継続時間T1が90秒維持されると、回避動作として制御部からハローフレームの油圧駆動部へ、ハローフレームの持ち上げ量Lを100mm上げる制御信号が出力される(ステップ4)。
90秒以内の確認時間T2で油圧力Pの効果確認が行われる(ステップ5)。油圧力Pが小さくなった場合には、回避動作の効果がありと判断する。一方、油圧力Pが大きい又は変化なしの場合、油圧力Pが6<P≦8の回避領域の継続時間T1に移行する。
油圧力Pが6<P≦8の場合、かつ継続時間T1が90秒維持されると、回避動作として制御部からハローフレームの油圧駆動部へ、ハローフレームの持ち上げ量Lを140mm上げる制御信号が出力される(ステップ6)。
90秒以内の確認時間T2で油圧力Pの効果確認が行われる(ステップ7)。油圧力Pが小さくなった場合には、回避動作の効果がありと判断する。一方、油圧力Pが大きい又は変化なしの場合、油圧力Pが8<P≦10の回避領域の継続時間T1に移行する。
油圧力Pが8<P≦10の場合、かつ継続時間T1が60秒維持されると、回避動作として制御部からハローフレームの油圧駆動部へ、ハローフレームの持ち上げ量Lを220mm上げる制御信号が出力される(ステップ8)。
120秒以内の確認時間T2で油圧力Pの効果確認が行われる(ステップ9)。油圧力Pが小さくなった場合には、回避動作の効果がありと判断する。一方、油圧力Pが大きい又は変化なしの場合、油圧力Pが10<P≦15の回避領域の継続時間T1に移行する。
油圧力Pが10<P≦15の場合、かつ継続時間T1が30秒維持されると、回避動作として制御部からハローフレームの油圧駆動部へ、ハローフレームの持ち上げ量Lを300mm上げる制御信号が出力される(ステップ10)。
120秒以内の確認時間T2で油圧力Pの効果確認が行われる(ステップ11)。油圧力Pが小さくなった場合には、回避動作の効果がありと判断する。一方、油圧力Pが大きい又は変化なしの場合、油圧力Pが15<Pの回避領域に移行する。
油圧力Pが15<Pの場合、回避動作として制御部からハローフレームの油圧駆動部へ、装置停止の制御信号が出力される(ステップ12)。
【0021】
このような本発明のリクレーマ装置によれば、油圧力の上昇値が閾値からどのくらい超えて、その時間がどのくらい経過しているかの実測値からその負荷に対する回避行動を区分した負荷領域毎に行っている。このため、粉粒体の崩落、密度差によって常に負荷が変動するリクレーマ装置において、瞬時に反応することなく、油圧力と経過時間の両方から異常と判断して回避行動を行うことができる。また回避行動の効果の確認時間を設けることによってバラツキのない粉粒体の定量払出し作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、山形に積み上げられた石膏、鉱石、石炭等の粉粒体を扱う各種製造業の分野において、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0023】
10………リクレーマ装置、12………台車、14………走行装置、20………ハローフレーム、30………掻き取り爪、40………スクレーパコンベア装置。
図1
図2