(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受圧部に圧力を受けることにより、前記受圧部の歪みを電気信号に変換する手段を有するセンサチップと、前記センサチップを一方の面に接合した台座部材と、を有するセンサユニットと、
接着剤層を介して前記台座部材の他方の平坦面を底面に接着して、前記センサユニットを内部に収納する樹脂ケースと、
前記樹脂ケースの底面に選択的に設けられ、前記台座部材の他方の平坦面に接して前記センサユニットを保持する、同じ高さの複数の第1突起部と、
を備え、
前記第1突起部は、前記台座部材を挟んで前記センサチップの前記受圧部以外の部分に対向し、
前記接着剤層は、前記第1突起部と離れて、前記第1突起部よりも前記センサユニットの中央部寄りで、前記台座部材との界面の面積が前記受圧部の表面積の200%以下となる範囲内に配置され、前記台座部材を挟んで少なくとも前記受圧部の中央部に対向する部分で、前記台座部材の他方の平坦面を前記樹脂ケースの底面に接着することを特徴とする半導体圧力センサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、ダイアフラム11a(
図6参照)は、周囲環境から圧力を受ける以外に、樹脂ケース1や接着剤層110から台座部材12を介して応力を受ける。この応力は半導体圧力センサ装置の組立て時に樹脂ケース1や接着剤層110に発生した応力である。半導体圧力センサ装置では、ダイアフラム11aの例えば20nm〜30nm程度の微小な高さ位置の変位が検出されるため、半導体圧力センサ装置の各部材にかかるほぼすべての応力がダイアフラム11aに伝達される。したがって、ダイアフラム11aに伝達されるすべての応力を考慮して、半導体圧力センサ装置の組立後に半導体圧力センサ装置の出力電圧が調整される。しかしながら、樹脂ケース1や接着剤層110に発生した応力には時間経過に伴って解放される応力(残留応力)があるため、半導体圧力センサ装置の出力電圧が時間経過に伴って調整時(初期)から変化してしまう。
【0008】
具体的には、半導体圧力センサ装置の経時的な出力特性変動が生じる原因は、次の通りである。上述したように台座部材12の他方の面12bには、突起部3と接触する部分を除く全面に接着剤層110が接触している。このため、台座部材12は、センサ搭載部2の底面2aの内側12cにおいて、接着剤層110から、台座部材12の他方の面12bに垂直な方向に第1応力111を受ける。かつ、台座部材12は、センサ搭載部2の底面2aの外側12dにおいて、突起部3との接触箇所を起点としてダイアフラム11aが撓み、接着剤層110から、台座部材12の他方の面12bとのなす角度αが内側で鈍角となる斜め方向に第2応力112を受ける。この第1,2応力111,112には、上述した残留応力が含まれている。センサユニット10の中央部側を内側12cとし、センサユニット10の外周部側(半導体圧力センサチップ11の端部側)を外側12dとする。
【0009】
この第1応力111は、ゲージ抵抗13をダイアフラム11aの表面(半導体圧力センサチップ11の表面)に垂直な方向に移動させる応力である。このため、この第1応力111が台座部材12を介してダイアフラム11aに伝達されても、ゲージ抵抗13の抵抗値は変化しない。したがって、時間経過に伴って第1応力111が解放されても、ゲージ抵抗13の抵抗値は変化しないため、半導体圧力センサ装置の出力電圧も変化しない。一方、第2応力112が台座部材12を介してダイアフラム11aに伝達されると、ゲージ抵抗13は伸び・縮みの変形(歪み)を起こしやすくなる。このため、時間経過に伴って第2応力112が解放されると、ゲージ抵抗13の変形度合が変化して、ゲージ抵抗13の抵抗値が変化する。これによって、半導体圧力センサ装置の出力電圧が調整時から変化してしまう。
【0010】
上記特許文献1に記載の技術は、シリコンチューブ台座の端面の外周部に生じる初期の応力を緩和するものであり、ダイアフラムにかかる応力が経時的に変化することについて考慮されていない。上記特許文献2に記載の技術では、
図6に示す従来の半導体圧力センサ装置と同様に、ガラス台座の他方の面の、突起部との接触箇所以外の全面が接着剤層を介してセンサ搭載部(凹所)の底面に接着されている。このため、
図6に示す従来の半導体圧力センサ装置と同様に、時間経過に伴ってダイアフラムの変形度合が変化して、半導体圧力センサ装置の出力特性が経時的に変動するという問題が生じる。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、経時的な出力特性変動を抑制することができる半導体圧力センサ装置および半導体圧力センサ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体
圧力センサ装置は、センサユニットおよび樹脂ケースを備え、次の特徴を有する。前記センサユニットは、前記センサチップと、前記センサチップを一方の面に接合した台座部材と、を有する。前記センサチップは、受圧部に圧力を受けることにより、前記受圧部の歪みを電気信号に変換する手段を有する。前記樹脂ケースは、接着剤層を介して前記台座部材の他方の
平坦面を底面に接着して、前記センサユニットを内部に収納する。
前記樹脂ケースの底面に選択的に、同じ高さの複数の第1突起部が設けられている。前記第1突起部は、前記台座部材の他方の平坦面に接して前記センサユニットを保持する。前記第1突起部は、前記台座部材を挟んで前記センサチップの前記受圧部以外の部分に対向する。前記接着剤層は、
前記第1突起部と離れて、前記第1突起部よりも前記センサユニットの中央部寄りで、前記台座部材との界面の面積が前記受圧部の表面積の200%以下となる範囲内に配置され
、前記台座部材を挟んで少なくとも前記受圧部の中央部に対向する部分で、前記台座部材の他方の平坦面を前記樹脂ケースの底面に接着する。
【0013】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体圧力センサ装置は、センサユニットおよび樹脂ケースを備え、次の特徴を有する。前記センサユニットは、前記センサチップと、前記センサチップを一方の面に接合した台座部材と、を有する。前記センサチップは、受圧部に圧力を受けることにより、前記受圧部の歪みを電気信号に変換する手段を有する。前記樹脂ケースは、接着剤層を介して前記台座部材の他方の平坦面を底面に接着して、前記センサユニットを内部に収納する。前記樹脂ケースの底面に選択的に、同じ高さの複数の第1突起部が設けられている。前記第1突起部は、前記台座部材の他方の平坦面に接して前記センサユニットを保持する。前記第1突起部は、前記台座部材を挟んで前記センサチップの前記受圧部以外の部分に対向する。前記接着剤層は、前記台座部材との界面の面積が前記受圧部の表面積の200%以下となる範囲内に配置され、前記台座部材を挟んで少なくとも前記受圧部の中央部に対向する部分で、前記台座部材の他方の平坦面を前記樹脂ケースの底面に接着する。前記樹脂ケースの底面に選択的に、前記接着剤層の厚さよりも低い高さで設けられ、前記接着剤層の内部に埋め込まれた第2突起部をさらに備える。
【0014】
また、この発明にかかる半導体圧力センサ装置は、上述した発明において、前記接着剤層は、前記第1突起部と離して配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体
圧力センサ装置は、上述した発明において、前記第1突起部の高さは、60μm以上300μm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体
圧力センサ装置は、上述した発明において、前記樹脂ケースの底面に選択的に、前記接着剤層の厚さよりも低い高さで設けられ、前記接着剤層の内部に埋め込まれた第2突起部をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体
圧力センサ装置は、上述した発明において、前記樹脂ケースの底面に選択的に設けられ、前記接着剤層が充填された溝をさらに備える。前記樹脂ケースは、前記溝の内部から前記センサユニット側に突出した前記接着剤層を介して前記台座部材の他方の
平坦面を前記溝の内壁に接着して、前記センサユニットを内部に収納することを特徴とする。
【0020】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体
圧力センサ装置の製造方法は、センサチップ、センサユニットおよび樹脂ケースを備えた半導体圧力センサ装置の製造方法であって、次の特徴を有する。前記センサチップは、受圧部に圧力を受けることにより、前記受圧部の歪みを電気信号に変換する手段を有する。前記センサユニットは、前記センサチップと、前記センサチップを一方の面に接合した台座部材と、を有する。前記樹脂ケースは、接着剤層を介して前記台座部材の他方の
平坦面を底面に接着して、前記センサユニットを内部に収納する。まず、前記樹脂ケースの底面に、所定の分量の接着剤を塗布する第1工程を行う。次に、前記樹脂ケースの底面との間に前記接着剤を挟み込むように、前記接着剤に前記台座部材の他方の
平坦面を接触させて所定時間内に前記樹脂ケースの内部に前記センサユニットを収納する第2工程を行う。次に、前記接着剤を固化して前記接着剤層を形成し、当該前記接着剤層を介して前記台座部材の他方の
平坦面を前記樹脂ケースの底面に接着する第3工程を行う。
前記樹脂ケースの底面に、前記台座部材の他方の平坦面に接して前記センサユニットを保持する、同じ高さの複数の第1突起部が選択的に設けられている。前記第1突起部は、前記台座部材を挟んで前記センサチップの前記受圧部以外の部分に対向する。前記第1工程では、
前記第1突起部と離れて、前記第1突起部よりも前記センサユニットの中央部寄りで、前記台座部材との界面の面積が前記受圧部の表面積の200%以下となる範囲内に前記接着剤層が配置され
、前記台座部材を挟んで少なくとも前記受圧部の中央部に対向する部分で、当該接着剤層を介して前記台座部材の他方の平坦面が前記樹脂ケースの底面に接着されるように、前記接着剤の分量および塗布位置を設定する。
【0021】
上述した発明によれば、センサユニットの外周部において、台座部材の他方の面に接着剤層が接触しないため、樹脂ケースや接着剤層から台座部材を介して受圧部にかかる、台座部材の他方の面に対して斜め方向の応力(
図6の第2応力)を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる半導体圧力センサ装置および半導体圧力センサ装置の製造方法によれば、経時的な出力特性変動を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体圧力センサ装置および半導体圧力センサ装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置の構造を示す断面図である。
図2は、
図1の半導体圧力センサ装置を上方から見たレイアウトを示す平面図である。
図3は、
図1のセンサユニット付近を拡大して示す断面図である。
図1に示す半導体圧力センサ装置は、樹脂ケース1、センサ搭載部2、外部導出用のリード端子(リードフレーム)4、ボンディングワイヤ5、ゲル状保護材6およびセンサユニット10を備える。
【0026】
樹脂ケース1は、センサユニット10を収納する収納容器本体であり、内部にセンサユニット10を収納する凹状のセンサ搭載部2を有する。樹脂ケース1は、例えば、所定の型枠を用いて、複数のリード端子4を一体的にインサート成形してなる。リード端子4の一方の端部は樹脂ケース1の内部に露出され、他方の端部は樹脂ケース1の外側に露出されている。
図1には、リード端子4の他方の端部を樹脂ケース1の側面から外部に突出させた場合を示すが、リード端子4の配置は種々変更可能である。
【0027】
センサ搭載部2は、例えば樹脂ケース1と一体成形される。センサ搭載部2は、センサユニット10を収納可能な大きさであればよく、その平面形状は種々変更可能である。
図2には、センサ搭載部2の平面形状が略矩形状である場合を示すが、センサ搭載部2の平面形状は例えば略円形状や略楕円形状であってもよい。センサ搭載部2の平面形状が例えば略円形状や略楕円形状である場合、樹脂ケース1の成形時に樹脂が流れ込みにくい角部がないため、樹脂ケース1の成形不良を抑制することができる。
【0028】
センサ搭載部2の底面2aには、例えば4つ以上の突起部(メサ)3が所定の間隔で設けられている。突起部3は、樹脂材料で構成され、例えば樹脂ケース1と一体成形される。突起部3は、センサユニット10に対向する位置(センサユニット10の面内)に配置され、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに接着する際に、接着剤層14の所定厚さt1を確保する機能を有する。すなわち、突起部3の高さh1は、接着剤層14の厚さt1に等しい(h1=t1)。
【0029】
また、突起部3は、半導体圧力センサ装置の出力電圧を調整しやすく、かつ半導体圧力センサ装置の出力特性に悪影響を与えにくい位置に配置される。具体的には、突起部3は、例えば後述するダイアフラム11aに深さ方向に対向しない位置に配置される。深さ方向とは、半導体圧力センサチップ11のおもて面から裏面に向かう方向である。より具体的には、突起部3は、ダイアフラム11aよりも外側12dに、例えばダイアフラム11aの外周に沿って略等間隔に配置される(
図2参照)。
【0030】
半導体圧力センサ装置の出力電圧を調整可能であれば、突起部3はダイアフラム11aに深さ方向に対向する位置に配置されていてもよい。また、各突起部3は、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aにダイボンディングする際に、センサユニット10の後述する台座部材12の他方の面12aに接触し、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに対して水平に保持する機能を有する。すなわち、各突起部3の高さは略同じである。突起部3の高さh1は、例えば10μm以上300μm以下程度であってもよい。さらに好ましくは、突起部3の高さh1は、例えば60μm以上程度であってもよい。より好ましくは、突起部3の高さh1は、例えば120μm以上程度であってもよい。
【0031】
なお、センサユニット10は、センサ搭載部2の底面2aに対して水平に保持され、かつセンサ搭載部2の側壁2bに接しない状態で、センサ搭載部2の底面2aに接着されていればよい。このため、センサ搭載部2の底面2aに突起部3を配置することに代えて、センサ搭載部2の底面2aに対して水平に保持され、かつセンサ搭載部2の側壁2bに接しないようにセンサユニット10を支持可能な治具を用いて、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに接着してもよい。
【0032】
センサユニット10は、半導体圧力センサチップ11および台座部材12を備える。センサユニット10は、半導体圧力センサチップ11を台座部材12の一方の面12aに接合した構造を備え、台座部材12の他方の面12bの内側12cの部分が接着剤層14を介してセンサ搭載部2の底面2aにダイボンディング(固着)されている。また、センサユニット10は、センサ搭載部2の側壁2bから離して配置される。なお、センサユニット10の中央部側(半導体圧力センサチップ11および台座部材12の中央側)を内側12cとし、外周部側(半導体圧力センサチップ11および台座部材12の端部側)を外側12dとする。
【0033】
半導体圧力センサチップ11は、圧力によって撓むダイアフラム(受圧部)11aと、ゲージ抵抗13(
図3参照)で構成された抵抗ブリッジと、抵抗ブリッジの出力を増幅および補正するための演算回路部(不図示)と、を備え、ダイアフラム11aの歪みを電気信号に変換するシリコン(Si)チップである。
図1,2には、ゲージ抵抗13を図示省略する。半導体圧力センサチップ11は、ダイアフラム11aを配置した部分に形成された凹部11bを台座部材12で塞ぐように、台座部材12の一方の面12aに例えば静電接合(陽極接合)されている。
図2には、ダイアフラム11aを破線で示す。
【0034】
ダイアフラム11aは、半導体圧力センサチップ11の裏面の例えば中央部に設けた略円柱状の凹部11bにより薄板化された部分である。ダイアフラム11aは、例えば円形状の平面形状を有する。ダイアフラム11aの厚さは、測定する圧力範囲によって異なるが、例えば数μm程度である。台座部材12は、例えば耐熱ガラスでできている。台座部材12の他方の面12aの内側12cの部分は、センサ搭載部2の底面2aに接着剤層14を介してダイボンディングされている。
【0035】
接着剤層14は、台座部材12を挟んで、深さ方向にダイアフラム11aに対向し、半導体圧力センサチップ11のダイアフラム11a以外の部分には対向しない。具体的には、接着剤層14は例えば円形状の平面形状を有し、接着剤層14の表面積はダイアフラム11aの表面積とほぼ同じである。接着剤層14の表面積とは、接着剤層14と台座部材12の他方の面12aとの界面の面積である。ダイアフラム11aの表面積とは、半導体圧力センサチップ11の、凹部11bにより薄くなった部分におけるチップ表面積である。
【0036】
接着剤層14の表面積は、台座部材12とセンサ搭載部2との接着力を確保することができればよく、ダイアフラム11aの表面積よりも小さくてもよい。また、接着剤層14の表面積は、ダイアフラム11aの表面積の200%以下程度の範囲内であれば、深さ方向にダイアフラム11aに対向する部分よりも外側12dにはみ出していてもよい(不図示)。接着剤層14の表面積がダイアフラム11aの表面積の200%以下程度となる範囲内であれば、後述するように半導体圧力センサ装置の出力特性変動を抑制する効果が得られる。
【0037】
接着剤層14は、突起部3から離して配置されることが好ましい。その理由は、接着剤層14が突起部3に接触している場合、台座部材12と突起部3との接触箇所を起点として、台座部材12の他方の面12bに対して斜め方向に接着剤層14から台座部材12に応力が生じるからである。また、突起部3がダイアフラム11aに深さ方向に対向する位置に配置される場合、接着剤層14は、突起部3よりもセンサユニット10の中央部(内側12c)寄りで台座部材12の他方の面12bに接する。
図2には、突起部3および接着剤層14を破線で示す。
【0038】
接着剤層14は、例えばフリーオイルを含まない高分子材料で形成される。フリーオイルとは、弾性率、針入度および硬度などの物性を調整するための添加剤である。フリーオイルを含まない接着剤を用いて接着剤層14を形成することで、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aにダイボンディングする際に、接着剤層14の濡れ広がりが抑制され、接着剤層14を所定範囲内に配置することができる。
【0039】
具体的には、接着剤層14を形成するための接着剤は、センサ搭載部2の底面2aとセンサユニット10との間に挟み込まれた状態においては、表面張力により濡れ広がりが抑制される。このため、接着剤層14の粘度は、センサ搭載部2の底面2aの略中央部に接着剤を塗布してから、当該接着剤上にセンサユニット10を載置してセンサ搭載部2の底面2aとの間に当該接着剤を挟み込むまでの所定時間内(例えば20秒間程度)に、接着剤の濡れ広がりを抑制可能な程度に高ければよい。より具体的には、接着剤層14の粘度は、例えば5Pa・s(パスカル秒)以上程度であってもよい。接着剤層14は、例えば、安価なシリコーン系接着剤であってもよいし、耐薬品性の高いフッ素系接着剤であってもよい。
【0040】
センサ搭載部2の底面2aとの間に接着剤を挟み込むように、接着剤に台座部材12の他方の面12bを接触させて所定時間内に樹脂ケース1の内部にセンサユニット10を収納する。そして、センサユニット10とセンサ搭載部2の底面2aとの間に挟まれた接着剤を硬化することで、接着剤層14を介してセンサユニット10とセンサ搭載部2の底面2aとがダイボンディングされる。上述した粘度の接着剤を用いることで、接着剤層14の側面14aは、例えば、台座部材12の他方の面12bに略垂直となる、または、内側12cへまたは外側12dへ突出するように湾曲した状態となる。接着剤層14の形成に必要な接着剤の分量は、例えば、接着剤層14の幅(直径)および高さ等から取得する。具体的には、接着剤層14の形成に必要な接着剤の分量は、従来構造(
図6参照)の接着剤層110の形成に必要な接着剤の分量の30%程度である。
【0041】
抵抗ブリッジは、ピエゾ抵抗効果を有する材料(例えばイオン注入等によりダイアフラム11aに形成した拡散領域)で形成された複数のゲージ抵抗(半導体歪ゲージ)13をブリッジ接続したブリッジ回路である。ゲージ抵抗13は、半導体圧力センサチップ11のおもて面側に配置されている。演算回路部は、例えば半導体圧力センサチップ11の、ダイアフラム11a以外の部分(すなわち半導体圧力センサチップ11のうち、ダイアフラム11aの周囲を囲む外周部)に配置される。
【0042】
演算回路部は、半導体圧力センサチップ11に集積しなくてもよい。この場合、演算回路部は、半導体圧力センサチップ11以外の他の半導体チップ(不図示)に形成される。演算回路部を配置した他の半導体チップは、半導体圧力センサチップ11とともにセンサ搭載部2に収納されてもよいし、半導体圧力センサ装置の外に配置されてもよい。いずれの場合も、演算回路部を配置した他の半導体チップは半導体圧力センサチップ11と電気的に接続される。演算回路部を配置した他の半導体チップの電極パッドは、複数のリード端子4により、半導体圧力センサチップ11のおもて面上の電極パッド7(
図2参照)と電気的に接続される。
【0043】
半導体圧力センサチップ11のおもて面上の電極パッド7は、ボンディングワイヤ5を介してリード端子4に電気的に接続されている。センサユニット10(半導体圧力センサチップ11)、リード端子4の樹脂ケース1の内部に露出された部分、および、ボンディングワイヤ5は、センサ搭載部2に充填されたゲル状保護材6に埋設され、ゲル状保護材6により被測定圧力媒体に含まれる汚染物質などの付着から保護されている。
【0044】
ゲル状保護材6は、センサユニット10に圧力を伝達する圧力媒体である。ゲル状保護材6にかかる大気圧(1気圧)や応力が通常時(ダイアフラム11aの変位量がゼロ)よりも高くなると、ダイアフラム11aが台座部材12側に押し込まれることで、ゲージ抵抗13が圧縮され、ゲージ抵抗13の抵抗値が高くなる。一方、ゲル状保護材6にかかる大気圧や応力が通常時よりも低くなると、ダイアフラム11aとともにゲージ抵抗13も台座部材12から離れる方向に引っ張られ、ゲージ抵抗13の抵抗値が低くなる。
【0045】
圧力を受けたダイアフラム11aの高さ位置の変位量の絶対値は、例えば20nm〜30nm程度である。演算回路部は、ダイアフラム11aの高さ位置が変位したときに、ダイアフラム11aの高さ位置の変位に応じたゲージ抵抗13の抵抗値を取得する。かつ、演算回路部は、取得したゲージ抵抗13の抵抗値に応じた電圧を予め取得した半導体圧力センサチップ11の例えば温度補正済みの出力特性に基づいて算出し、当該算出結果を電気信号として外部に出力する。
【0046】
ダイアフラム11aは、圧力媒体を介して周囲環境から圧力が伝達される以外に、台座部材12を介して、半導体圧力センサ装置の組立て時に樹脂ケース1や接着剤層14に発生した応力を受ける。この応力には、半導体圧力センサ装置の組み立て時に発生する残留応力が含まれている。この残留応力は、主に、台座部材12の他方の面12bに垂直な方向の第1応力111である(
図3参照)。台座部材12の他方の面12bに対して斜め方向の応力(
図6の第2応力)は生じにくい。その理由は、上述したように、センサユニット10の外側12dにおいて、台座部材12の他方の面12bに接着剤層14が接触していないからである。
【0047】
第1応力111は、ゲージ抵抗13をダイアフラム11aの表面(半導体圧力センサチップ11の表面)に垂直な方向に移動させる応力であり、ダイアフラム11aが第1応力111を受けても、ゲージ抵抗13の抵抗値は変化しない。このため、時間経過に伴って第1応力111が解放されても、ゲージ抵抗13の抵抗値は変化せず、半導体圧力センサ装置の出力電圧も調整時(初期)から変化しない。また、ダイアフラム11aにかかる、台座部材12の他方の面12bに対して斜め方向の応力(第2応力)を低減させることができるため、ゲージ抵抗13に伸び・縮みの変形は起こりにくい。
【0048】
特に限定しないが、実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置において、各部の物性は、実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置を例えば25℃の温度環境に配置した場合、次の値をとる。樹脂ケース1および台座部材12の弾性率は、17800MPaである。接着剤層14の弾性率は、2MPaである。樹脂ケース1および接着剤層14の弾性率の温度依存性については後述する。
【0049】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、センサユニットとセンサ搭載部の底面とを接着する接着剤層を、深さ方向にダイアフラムに対向する位置(内側)に配置し、センサユニットの外周部側(外側)には配置しない。これによって、センサユニットの外周部において、台座部材12の他方の面に接着剤層が接触しないため、樹脂ケースや接着剤層から台座部材を介してダイアフラムにかかる、台座部材の他方の面に対して斜め方向の応力(
図6の第2応力)を低減させることができる。したがって、半導体圧力センサ装置の組立て時に樹脂ケースや接着剤層に発生した残留応力が時間経過に伴って解放された際に生じる半導体圧力センサ装置の出力特性変動を抑制することができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体圧力センサ装置の構造について説明する。
図4は、実施の形態2にかかる半導体圧力センサ装置の構造を示す断面図である。
図4には、センサユニット10付近を拡大して示す。実施の形態2にかかる半導体圧力センサ装置が実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置と異なる点は、センサユニット10が載置される突起部(以下、第1突起部とする)3とは別に、接着剤層14の内部に突起部(以下、第2突起部とする)21が配置されている点である。実施の形態2にかかる半導体圧力センサ装置の、第2突起部21以外の構成は、実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置と同様である(
図1,2)。
【0051】
第2突起部21は、樹脂材料で構成され、例えば樹脂ケース1と一体成形されている。
図4には、ダイアフラム11aの中心に対向する位置に第2突起部21を設けた状態を示す。第2突起部21の高さh2は第1突起部3の高さh1よりも低く(h2<h1)、第2突起部21は台座部材12に接触していない。すなわち、第2突起部21の高さh2は、接着剤層14の厚さt1よりも低い。第2突起部21は、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに接着する際に接着剤層14の体積を増やす機能を有する。
【0052】
センサ搭載部2の底面2aに第2突起部21を設けることで、センサ搭載部2の底面2a上に接着剤層14を形成するために塗布する接着剤の分量が少なくても、台座部材12の他方の面12bに確実に接触させることができる。また、センサ搭載部2の底面2a上に接着剤層14を形成するために塗布する接着剤の分量を低減させることができるため、コスト低減が可能である。第2突起部21は、接着剤層14の内部に埋め込まれるように配置されればよく、そのレイアウトは種々変更可能である。
【0053】
センサ搭載部2の底面2aに、第1突起部3を設けずに、第2突起部21のみを設けてもよい。この場合、上述したように、センサ搭載部2の底面2aに対して水平に保持され、かつセンサ搭載部2の側壁2bに接しないようにセンサユニット10を支持可能な治具を用いて、第2突起部21が台座部材12に接しないように、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに接着すればよい。
【0054】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、接着剤層の内部に第2突起部を配置することで、接着剤層を形成するための接着剤の分量を低減させても、台座部材の他方の面とセンサ搭載部の底面とを接触させることができる。
【0055】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体圧力センサ装置の構造について説明する。
図5は、実施の形態3にかかる半導体圧力センサ装置の構造を示す断面図である。
図5には、センサユニット10付近を拡大して示す。実施の形態3にかかる半導体圧力センサ装置が実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置と異なる点は、センサ搭載部2の底面2aの、ダイアフラム11aに深さ方向に対向する部分に溝22を設けた点である。
【0056】
センサ搭載部2の底面2aの溝22の内部には、センサユニット10とセンサ搭載部2の底面2aとを接着する接着剤層23が充填される。すなわち、センサユニット10(台座部材の他方の面12b)が接着剤層23を介して溝22の内壁22aに接着されることで、センサ搭載部2にセンサユニット10が収納されている。センサ搭載部2の底面2aの溝22は、樹脂ケース1と一体成形される。
【0057】
センサ搭載部2の底面2aの溝22は、センサ搭載部2の底面2aの所定箇所を型抜きで成形しやすい、例えば略半球状に繰り抜いた形状を有していてもよい。また、センサ搭載部2の底面2aの溝22は、略直方体状に繰り抜いた形状や、センサユニット10を上方から見て円形状の平面形状となるように円柱状に繰り抜いた形状を有していてもよい。また、センサ搭載部2の底面2aの溝22は、略楕円状の平面形状を有していてもよい。
【0058】
センサ搭載部2の底面2aに溝22を形成することで、センサ搭載部2の底面2a上に接着剤層23を形成するために塗布した接着剤が溝22内に充填される。このため、例えば従来構造の接着剤層110(
図6参照)と同じ分量の接着剤を用いたとしても、接着剤層23の形成範囲を従来構造よりも狭くすることができる。例えば、接着剤層23を形成するための接着剤の分量を変更せずに従来と同じ分量で半導体圧力センサ装置を作製(製造)することができる。このため、製造装置の設定等を変更する必要がなく、センサ搭載部2の底面2aに塗布する接着剤の管理が容易となる。
【0059】
センサ搭載部2の底面2aに溝22を形成することに代えて、実施の形態1,2よりも突起部3の高さh1を高くすることで、センサユニット10とセンサ搭載部2の底面2aとを接着する接着剤層の表面積を所定範囲内(ダイアフラム11aの表面積の200%以下程度)に収めてもよい。
【0060】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、センサ搭載部の底面上に接着剤層を形成するために塗布した接着剤を、センサ搭載部の底面に形成された溝内に充填することができる。例えばセンサユニットとセンサ搭載部の底面とを接着する接着剤層の表面積が小さいほど接着剤の分量を管理することが困難になるが、実施の形態3によれば、余分な接着剤がセンサ搭載部の底面の溝に充填されるため、センサ搭載部の底面上に塗布する接着剤の分量の管理が容易となる。したがって、実施の形態3によれば、センサユニットとセンサ搭載部の底面とを接着する接着剤層の表面積が小さいほど有用である。
【0061】
(樹脂ケースの弾性率の温度依存性)
樹脂ケース1の弾性率の温度依存性について検証した結果を
図7に示す。
図7は、樹脂ケースの弾性率の温度依存性を示す特性図である。
図7には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を材料とした場合の樹脂ケース1の曲げ弾性率と温度との関係を示す。
図7に示すように、樹脂ケース1の曲げ弾性率は、周囲環境の温度が高くなるほど低くなることが確認された。特に80℃以上の温度環境下において温度環境が高くなるほど、樹脂ケース1の曲げ弾性率の低減率が大きくなる。
【0062】
(接着剤層の弾性率の温度依存性)
接着剤層14の弾性率の温度依存性について検証した結果を
図8A,8Bに示す。
図8A,8Bは、接着剤層の弾性率の温度依存性を示す特性図である。
図8Aには、シリコーン系接着剤を材料とした接着剤層14の引っ張り弾性率と温度との関係を示す。
図8Bには、フッ素系接着剤を材料とした接着剤層14の引っ張り弾性率と温度との関係を示す。
図8A,8Bともに、ほぼ同様の条件の複数の検証結果を異なる線種で示す。
【0063】
図8Aに示す接着剤層14の弾性率の温度依存性の検証には、シリコーン系接着剤に、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(商標登録)の液状シリコーンゴム(型式:TSE3251H)を用いた。
図8Bに示す接着剤層14の弾性率の温度依存性の検証には、フッ素系接着剤に、信越化学工業株式会社(商標登録)の液状フッ素エラストマー(SHIN−ETSU SIFEL(登録商標)(型式:SIFEL2661))を用いた。
【0064】
図8A,8Bに示すように、シリコーン系接着剤およびフッ素系接着剤のいずれの材料を用いた場合においても、接着剤層14の引っ張り弾性率は周囲環境の温度が高くなるほど低くなることが確認された。また、
図8Bに示すように、フッ素系接着剤を材料とした場合には、0℃以下の温度環境下において、0℃を超える温度環境下の場合よりも、温度環境が高くなるほど接着剤層14の引っ張り弾性率の低減率が大きくなることが確認された。
【0065】
(実施例1)
次に、上述した実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置(
図1〜3参照)について、出力電圧の調整時(初期)からの時間経過に伴う出力特性変動を検証した。具体的には、ダイアフラム11aの表面積に対する接着剤層14の表面積比(以下、接着剤層14のダイアフラム表面積比(=接着剤層14の表面積/ダイアフラム11aの表面積)とする)と、半導体圧力センサ装置の出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動値(=応力変化)と、の関係について検証した。
【0066】
まず、上述した実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置の構造を備えた2つの試料(以下、試料1,2とする)を作製した(以下、実施例1とする)。これら試料1,2は、接着剤層14のダイアフラム表面積比が異なる。比較として、試料1,2よりも接着剤層14のダイアフラム表面積比の大きい2つの試料(以下、試料3,4とする)を作製した。試料3,4の、接着剤層14のダイアフラム表面積比以外の構成は試料1,2と同様である。なお、試料4は、従来の半導体圧力センサ装置(
図6参照)に相当する(従来例)。試料1〜4の接着剤層14のダイアフラム表面積比を
図9に示す。
図9は、接着剤層のダイアフラム表面積比を示す図表である。
【0067】
試料1〜4の接着剤層14のダイアフラム表面積比以外の条件は次の通りである。接着剤層14は、材料としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(商標登録)の液状シリコーンゴム(型式:TSE3251H)を用い、180℃の温度での熱処理により硬化(キュア)させた。3.0mm四方の半導体圧力センサチップ11を用い(
図2,3には半導体圧力センサチップ11の1辺を符号x1で図示)、ダイアフラム11aの直径r1を1.3mmとした。センサ搭載部2の内寸x2は1辺が3.22mmである。突起部(第1突起部)3は、センサ搭載部2の中心を中心とする1辺の長さx3が1.6mmの正方形(二点鎖線で図示)の頂点にそれぞれ配置した。すなわち、突起部3は計4つ配置されている。突起部3の高さh1を60μmとし、突起部3のピッチ(突起部3間の距離)を1.6mmとした(
図2,3参照)。
【0068】
これら試料1〜4について、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動値を測定した結果を
図10に示す。
図10は、実施例1の経時的な出力特性変動を示す特性図である。
図10の横軸は経過時間[H:Hour]であり、縦軸は出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動値[mV]である。
【0069】
図10に示す結果から、接着剤層14のダイアフラム表面積比を200%以下とすることで(すなわち試料1,2)、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動を抑制することができることが確認された。
【0070】
(実施例2)
次に、突起部3の高さh1について検証した。まず、上述した実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置(
図1〜3参照)の構造を備えた4つの試料を作製した(以下、実施例2とする)。これら実施例2の4つの試料は、突起部3の高さh1が異なる。
【0071】
実施例2の4つの試料の突起部3の高さh1以外の条件は次の通りである。接着剤層14は、材料としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(商標登録)の液状シリコーンゴム(型式:TSE3251H)を用い、180℃の温度での熱処理により硬化させた。接着剤層14の接着材量を1.0mgとした。3.0mm四方の半導体圧力センサチップ11を用い、ダイアフラム11aの直径r1を1.3mmとした。センサ搭載部2の内寸x2は1辺が3.22mmである。突起部(第1突起部)3は、センサ搭載部2の中心を中心とする1辺の長さx3が1.13mmの正方形(二点鎖線で図示)の頂点にそれぞれ配置した。すなわち、突起部3は計4つ配置されている(
図2,3参照)。突起部3のピッチを1.13mmとした。
【0072】
これら実施例2の4つの試料について、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量を測定した結果を
図11に示す。
図11は、実施例2の突起部の高さと経時的な出力特性変動との関係を示す特性図である。
図11の横軸は突起部3の厚さ[μm]であり、縦軸は出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量(出力電圧変動量)[%]である。出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量は、突起部3の高さh1を30μmとした場合の出力電圧を基準(=100%)とし、当該基準となる出力電圧に対する比率(=突起部3の高さh1が30μm超の場合の出力電圧/基準となる出力電圧)で示す。
【0073】
図11に示す結果から、突起部3の高さh1を60μmとすることで、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量を低減させることができることが確認された。また、突起部3の高さh1を120μmとすることで、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量をさらに低減させることができることが確認された。
【0074】
また、図示省略するが、突起部3の高さh1は、上述したように10μm以上300μm以下程度であってもよい。その理由は、次の通りである。樹脂ケース1自身の応力が小さければ出力電圧変動量自身が小さくなるため、突起部3の高さh1が10μm以上60μm未満でもよい。樹脂ケース1自身の応力を小さくするには、具体的には樹脂ケース1の底面の厚さを一部もしくは全面で薄くする方法がある。
図11にあるように突起部3の高さh1が180μm以上では出力電圧変動量を低減する効果が同等になると予想される。このため、センサユニット10をセンサ搭載部2の底面2aに接着する際に接着剤層14を確保できるなら、突起部3の高さh1は300μm以下程度であってもよい。
【0075】
(実施例3)
次に、上述した実施の形態3にかかる半導体圧力センサ装置(
図5参照)について、出力電圧の初期からの時間経過に伴う出力特性変動を検証した。まず、上述した実施の形態1にかかる半導体圧力センサ装置の構造を備えた試料を作製した(以下、実施例3とする)。すなわち、実施例3は、センサ搭載部2の底面2aの、ダイアフラム11aに深さ方向に対向する部分に溝22を備える。
【0076】
実施例3の条件は、次の通りである。接着剤層14は、材料としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(商標登録)の液状シリコーンゴム(型式:TSE3251H)を用い、180℃の温度での熱処理により硬化させた。接着剤層14の接着材量を1.0mgとした。3.0mm四方の半導体圧力センサチップ11を用い、ダイアフラム11aの直径r1を1.3mmとした。センサ搭載部2の内寸x2は1辺が3.22mmである。突起部(第1突起部)3は、センサ搭載部2の中心を中心とする1辺の長さx3が1.6mmの正方形(二点鎖線で図示)の頂点にそれぞれ配置した。すなわち、突起部3は計4つ配置されている。突起部3の高さh1を60μmとし、突起部3のピッチを1.6mmとした。センサ搭載部2の底面2aの溝22は、略半球状とした。当該溝22の深さdを0.4mmとし、溝22の、センサ搭載部2の底面2aと同じ高さ位置における幅(直径)r2を1.7mmとした(
図2,5参照)。
【0077】
この実施例3について、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動値を測定した結果を
図12に示す。
図12は、実施例3の経時的な出力特性変動を示す特性図である。
図12の横軸は経過時間[H:Hour]であり、縦軸は出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動値[mV]である。また、
図12には、比較として、上述した従来例(
図6参照)の経時的な出力特性変動を示す。すなわち、従来例は、センサ搭載部2の底面2aに溝22を備えていない。従来例の、センサ搭載部2の底面2aに溝22を備えていない以外の構成は、実施例3と同様である。
【0078】
図12に示す結果から、実施例3は、接着剤層14の接着材量を、センサ搭載部2の底面2aに溝22を備えていない従来例と同じにしたとしても、出力電圧の初期からの時間経過に伴う変動量を低減させることができることが確認された。
【0079】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態では、半導体圧力センサ装置を25℃の温度環境に配置する場合を例に説明しているが、これに限らず、半導体圧力センサ装置を配置する温度環境は種々変更可能である。