(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862975
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】浴室
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20210412BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E03C1/20 E
E04H1/12 301
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-56443(P2017-56443)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159218(P2018-159218A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】小田切 裕典
【審査官】
伊藤 翔子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−063645(JP,A)
【文献】
特開2013−076244(JP,A)
【文献】
実開昭64−024177(JP,U)
【文献】
特開2000−297450(JP,A)
【文献】
特開平08−128091(JP,A)
【文献】
特開2005−344278(JP,A)
【文献】
特開2016−180309(JP,A)
【文献】
中国実用新案第205976356(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04H 1/12
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場床と、
前記洗い場床に連続し、排水口を有する排水凹部と、を備え、
前記洗い場床は、
基材と、
前記基材の上面に設けられた表面材と、を有し、
前記基材は、
前記排水凹部の周縁部に上方に突出する堰部を有し、
前記表面材は、
上面に前記排水凹部側の端部まで延び、前記上面の水を前記排水凹部側へ排水するための複数の排水溝を有し、
前記表面材の前記排水凹部側の端面を前記堰部と所定距離離間させることで前記表面材の端部と前記堰部との間に保水溝を形成し、前記排水溝から流入した水の流れが前記堰部に遮られることで水を前記保水溝に保水できるように構成され、
前記堰部は、前記保水溝に保水されている水を前記排水凹部に排出するための排出溝を有し、
前記堰部は、前記表面材の前記排水凹部側の前記端部の前記排水溝の底面よりも上方まで延びていることを特徴とする浴室。
【請求項2】
前記堰部の上端は、前記表面材の前記排水凹部側の前記端部の凸部の上面よりも下方となるよう形成されている請求項1記載の浴室。
【請求項3】
前記排出溝は、前記保水溝の底面よりも下方まで延びている請求項1または2に記載の浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1のように、洗い場床面に様々な柄を持たせやすくするよう、洗い場床面に表皮を被せた洗い場床が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−28265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、表皮は排水凹部の周縁部で切断されているため、表皮の排水溝の下流端には、表面張力の影響により残水が生じやすい。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、排水凹部周縁部の残水を抑制することができる浴室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、洗い場床と、前記洗い場床に連続し、排水口を有する排水凹部と、を備え、前記洗い場床は、基材と、前記基材の上面に設けられた表面材と、を有し、前記基材は、前記排水凹部の周縁部に上方に突出する堰部を有し、前記表面材は、上面に前記排水凹部側の端部まで延び、前記上面の水を前記排水凹部側へ排水するための複数の排水溝を有し、前記表面材の前記排水凹部側の端面を前記堰部と所定距離離間させることで前記表面材の端部と前記堰部との間に保水溝を形成し、前記排水溝から流入した水の流れが前記堰部に遮られることで水を前記保水溝に保水できるように構成され、前記堰部は、前記保水溝に保水されている水を前記排水凹部に排出するための排出溝を有し、前記堰部は、前記表面材の前記排水凹部側の前記端部の前記排水溝の底面よりも上方まで延びていることを特徴とする浴室である。
【0007】
この浴室によれば、保水溝に保水された水によって排水溝の水が引き込まれやすくなるため、排水溝の下流端に水が残留し続けることを防止できる。保水溝内の水は排出溝を通じて排水凹部に流れるため、保水溝に水が残留し続けることもないため、排水凹部周囲の残水を抑制することもできる。
【0008】
第2発明は、第1の発明において、前記堰部の上端は、前記表面材の前記排水凹部側の前記端部の凸部の上面よりも下方となるよう形成されている浴室である。
【0009】
この浴室によれば、大量の水の排水時に堰部が排水の妨げとなることを大幅に抑制できる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記排出溝は、前記保水溝の底面よりも下方まで延びている浴室である。
【0011】
この浴室によれば、保水溝から排出溝への水の排出性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、排水凹部周縁部の残水を抑制することができる浴室が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる浴室の洗い場床の模式的平面図である。
【
図2】本実施形態にかかる洗い場床の構造を表す模式的断面図である。
【
図5】(a)は
図4におけるA−A断面図であり、(b)は
図4におけるB−B断面図である。
【
図6】本実施形態にかかる洗い場床の作用を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態にかかる浴室の洗い場床1の模式的平面図である。
【0016】
実施形態に係る浴室は、洗い場床1と、洗い場床1に連続し、排水口5を有する排水凹部2とを備える。洗い場床1の側方には、図示しない浴槽が配置されている。洗い場床1は、全体としては浅底のパン形状に形成されている。
【0017】
洗い場床1の表面には排水凹部2が最も低くなるように排水勾配がつけられ、洗い場床1の表面上の水は排水勾配に沿って流れ、排水凹部2に集水される。具体的には、洗い場床1の表面には、それぞれ排水方向の異なる複数の勾配面が形成されている。各勾配面は、排水凹部2に向かって下り傾斜になっている。さらに、勾配面は、隣り合う勾配面と勾配面との間に谷として形成された稜線に向かっても下り傾斜となっている。各勾配面上の水は、排水凹部2及び稜線に向かって流れる。稜線自体も排水凹部2に向かって下り傾斜となっており、稜線に流れ込んだ水は稜線に沿って排水凹部2へと流れる。
【0018】
図2は、本実施形態にかかる洗い場床1の構造を表す模式的断面図である。
【0019】
洗い場床1は、支持体11と、基材13と、クッション層12と、表面材14と、を備える。基材13の周囲には、図示しない浴室ユニットの壁材を載置可能な壁載せ部材7が設けられている。支持体11は、長さ調整可能な支持脚112を有する。
【0020】
基材13は、支持体11の上に設けられている。クッション層12は、基材13の上に設けられ、基材13のクッション性(弾性)よりも高いクッション性を有する。表面材14は、クッション層12の上に設けられ、クッション層12の硬度よりも高い硬度を有する。
【0021】
図1に示すように、洗い場床1の概形は略矩形状に形成され、一対の長辺部4a、4bを有する。排水凹部2は、一方の長辺部4b側に寄って配置されている。洗い場床1の表面において、排水凹部2の周縁部のうちの他方の長辺部4a側に位置する縁部2a近傍の領域が最も低くなっている。
【0022】
図3は、
図1におけるA部の拡大図である。
図4は、
図3におけるB部の拡大図である。
図4は、洗い場床1の表面において最も低くなっている領域を表す。
【0023】
図5(a)は、
図4におけるA−A断面図であり、
図5(b)は、
図4におけるB−B断面図である。なお、
図5(a)及び(b)において、
図2に示すクッション層12の図示は省略している。
【0024】
表面材14は、洗い場床1の表面を構成する。その表面材14の上面には、
図3、4に示すように、複数の凸部21と複数の排水溝22が形成されている。凸部21及び排水溝22は表面材14の表面全体にわたって形成されている。
【0025】
複数の排水溝22は、凸部21の周囲を囲むように例えば格子状に形成されている。排水凹部2に向かう方向に延びた排水溝22は、表面材14における排水凹部2側の端部まで延びている。複数の排水溝22は途切れることなく連続している。これら排水溝22を通じて、凸部21の間に流れ込んだ水を排水凹部2まで途切れることなくゆっくりと排水することが可能となっている。
【0026】
図5(a)及び(b)に示すように、基材13は、基材本体15と排水ピット16とを有する。排水ピット16は排水凹部2に嵌め込まれている。
図5(a)及び(b)では、基材本体15と排水ピット16が別体の例を表すが、基材本体15と排水ピット16は一体に形成されていてもよい。
【0027】
排水ピット16における排水凹部2の周縁部には、上方に突出する堰部17が設けられている。排水凹部2の周縁部における少なくとも
図1に示す縁部2a側に、堰部17が設けられている。
【0028】
堰部17は、表面材14の排水凹部2側の端部における排水溝22の底面22aよりも上方まで延びている。堰部17の上端17aは、表面材14の排水凹部2側の端部における凸部21の上面21aよりも下方となるよう形成されている。
【0029】
表面材14の排水凹部2側の端面14aを堰部17と所定距離離間させることで、表面材14の端部と堰部17との間に保水溝18を形成している。表面材14の排水溝22から流入した水の流れが堰部17に遮られることで水を保水溝18に保水できるように構成される。
【0030】
堰部17は、
図3、
図4、および
図5(b)に示すように、保水溝18に保水されている水を排水凹部2に排出するための排出溝19を有する。排出溝19は、保水溝18の底面よりも下方まで延びている。排出溝19は保水溝18とつながっている。
【0031】
堰部17および保水溝18は、排水凹部2の前述した
図1に示す縁部2aに沿って連続している。排出溝19は、堰部17および保水溝18の延在方向に対して直交している。
図3に示すように、例えば2つの排出溝19が、堰部17および保水溝18の延在方向に離間して配置されている。
【0032】
図6は、本実施形態にかかる洗い場床1の作用を説明するための模式的断面図である。
【0033】
本実施形態にかかる洗い場床1によれば、表面材14の上面上の水は、排水溝22に流れ込み、その排水溝22内で連続した一時保水状態とされ、その状態を維持しつつ、前述した排水勾配により排水凹部2に向かって流れる。
【0034】
そして、水の流れが堰部17に遮られることで水100を保水溝18に保水できる。これにより、排水速度(排水性)が抑えられ、排水溝22の下流側を流れる水が早期に途切れてしまうことを抑制できる。この結果、排水溝22内で連続した水の一時保水状態を作り出すことができ、排水溝22内の水を排出溝19を通じて排水凹部2まで途切れることなくゆっくりと少しずつ流下させることができる。
【0035】
また、保水溝18に保水された水によって排水溝22の水が引き込まれやすくなるため、排水溝22の下流端に水が残留し続けることを防止できる。保水溝18内の水は排出溝19を通じて排水凹部2に流れるため、保水溝18に水が残留し続けることもないため、排水凹部2周囲の残水を抑制することもできる。
【0036】
表面材14の上面上から排水凹部2へと水が連続してつながる一時保水状態が確実に維持されるようにし(排水凹部2まで通じる連続流水網が途中で途切れず)、表面材14の上面や排水凹部2の周辺に取り残されてしまう残水の発生を抑制できる。この残水が少量であれば自然乾燥で翌日までには十分乾く。
【0037】
堰部17の上端17aは、表面材14の排水凹部2側の端部の凸部21の上面21aよりも下方となるよう、堰部17の高さを制限している。そのため、浴室使用中における大量の水の排水時には、堰部17は排水の妨げとならない。
【0038】
排出溝19の下端が、保水溝18の底面と同じ高さであれば、保水溝18に保水された水は排出溝19を通じて排水凹部2に流れることができる。本実施形態のように、排出溝19が保水溝18の底面よりも下方まで延びる構成とすると、保水溝18に保水されている水が排出溝19へ流れやすくすることができ、保水溝18から排出溝19への水の排出性能を高めることができる。
【0039】
図3、
図4に示すように、排出溝19は、排水凹部2に向かって(
図3、
図4において横方向に)延びる排水溝22の延長線上から外れた位置に位置する。排出溝19は、凸部21に対向する位置に形成されている。
【0040】
このため、排水溝22から排出溝19に直接向かう水の流れを抑制でき、保水溝18での水の一時保水を妨げない。
【0041】
保水溝18内の水が最後に残水しづらくするために、
図5及び
図6に示すように、保水溝18の底面は排出凹部2に向かって下り傾斜している。
【0042】
また、排出溝19内の水が排出されやすくなるように、
図5(b)に示すように、排出溝19の底面も排出凹部2に向かって下り傾斜している。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0044】
1 洗い場床、 2 排水凹部、 5 排水口、 13 基材、 14 表面材、 17 堰部、 18 保水溝、 19 排出溝、 22 排水溝