【文献】
YAGI, Hideki et al.,26 Gbit/s Direct Modulation of AlGaInAs/InP Lasers with Ridge-Waveguide Structure Buried by Benzocyclobutene Polymer,2009 IEEE International Conference on Indium Phosphide & Related Materials,米国,IEEE,2009年 5月10日,ThB1.3,pp.371-374
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボンディングパッドから最近接の側面と、前記ボンディングパッドとの間において、前記基板上に、前記メサ状の光導波路と同じ半導体積層構造が設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体光素子。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明は、(1)基板上に設けられたメサ状の光導波路と、前記光導波路上に設けられた変調用電極と、前記光導波路の側面を埋め込む第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に設けられたボンディングパッドと、前記変調用電極と前記ボンディングパッドとを接続する接続配線と、を備え、前記ボンディングパッドは、前記第1樹脂層上に設けられた第2樹脂層に側面の一部を覆われ、前記接続配線は、前記第2樹脂層上を延在する、半導体光素子である。
(2)前記ボンディングパッドは、下部領域の上面に上部領域が積層された構造を有し、前記下部領域と前記上部領域との積層面において前記上部領域の幅が前記下部領域の幅よりも小さく、前記下部領域の上面において前記上部領域が設けられていない領域は、前記第2樹脂層によって覆われていてもよい。
(3)前記上部領域の厚みは、前記第2樹脂層の厚みよりも大きくてもよい。
(4)前記第1樹脂層と前記ボンディングパッドとの間に第1無機膜を備えていてもよい。
(5)前記第2樹脂層上に設けられた第2無機膜と、前記第2無機膜上に設けられた第3無機膜と、を備え、前記ボンディングパッドは、前記第2樹脂層上まで延在し、前記第2無機膜および前記第3無機膜は、前記第2樹脂層上まで延在した前記ボンディングパッドの部分の周縁部分の上下を挟んでいてもよい。
(6)前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層よりも固くてもよい。
(7)前記ボンディングパッドから最近接の側面と、前記ボンディングパッドとの間において、前記基板上に、前記メサ状の光導波路と同じ半導体積層構造が設けられていてもよい。
本願他の発明は、(8)基板上に設けられたメサ状の光導波路の側面を第1樹脂層で埋め込む工程と、前記光導波路上に変調用電極を形成する工程と、前記第1樹脂層上にボンディングパッドを形成する工程と、前記第1樹脂層上に第2樹脂層を形成する工程と、前記変調用電極と前記ボンディングパッドとを接続し、前記第2樹脂層上を延在する接続配線を形成する工程と、を含み、前記第2樹脂層を形成する際に、前記ボンディングパッドの側面の一部が前記第2樹脂層に覆われるようにする、半導体光素子の製造方法である。
(9)前記第1樹脂層で埋め込む工程において、前記第1樹脂層に熱硬化処理を行い、前記第2樹脂層を形成する工程において、前記第2樹脂層に熱硬化処理を行ってもよい。
【0011】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係る半導体光素子及び半導体光素子の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本願発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、本願発明の効果がある限りにおいて他の成分が含まれていてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体光素子である光変調器100の光導波路部分の平面図である。
図1のように、第1実施形態に係る光変調器100は、基板1上に、入力導波路31a、出力導波路31b、光カプラ32a,32b、及び複数のマッハツェンダ変調器30が設けられている。入力導波路31a、出力導波路31b、及び光カプラ32a,32bは、メサ状の光導波路からなる。光カプラ32a,32bは、MMI(Multimode Interferometer)型の光カプラである。複数のマッハツェンダ変調器30は、メサ状の光導波路の経路を組み合わせた構成をしている。入力導波路31aから入力された光は、光カプラ32aで分岐され、マッハツェンダ変調器30を経由した後、光カプラ32bで合波されて、出力導波路31bに出力される。光変調器100の大きさは、例えば10mm×4mmである。
【0013】
マッハツェンダ変調器30は、基板1上に、2つの光カプラ33a,33bと、2つの光カプラ33a,33bの間に接続された2本のアーム導波路34a,34bと、を備える。光カプラ33a,33b及びアーム導波路34a,34bは、メサ状の光導波路からなる。光カプラ33aは、入力導波路31aから入力された光を分岐する。2本のアーム導波路34a,34bは、光カプラ33aで分岐された光を伝搬する。光カプラ33bは、2本のアーム導波路34a,34bを伝搬した光を合波する。光カプラ33a,33bは、MMI型の光カプラである。
【0014】
図2は、第1実施形態に係る光変調器100の平面図である。
図2では、
図1で説明した光導波路部分を細点線で図示している。第1実施形態に係る光変調器100では、メサ状の光導波路が樹脂によって埋め込まれている。
【0015】
配線パターンは、変調用電極35、グランド電極36、及び位相調整用電極37を含む。変調用電極35は、マッハツェンダ変調器30のアーム導波路34a,34b上に設けられ、接続配線41を介してシグナル用のボンディングパッド38に接続されている。グランド電極36は、アーム導波路34aとアーム導波路34bとの間に設けられ、接続配線41を介してグランド用のボンディングパッド39に接続されている。位相調整用電極37は、マッハツェンダ変調器30のアーム導波路34a,34b上に変調用電極35とは異なる位置に設けられ、DC電極パッド40に接続されている。
【0016】
変調用電極35にボンディングパッド38から高周波の電気信号が供給されると、グランド電極36との間で高周波(例えば20GHz程度)の電気信号が流れる。これにより、アーム導波路34a,34bの屈折率が変化し、アーム導波路34a,34bを伝搬する光の位相が変化する。これにより、アーム導波路34a,34bを伝搬する光は位相変調を受けて、変調された光信号となって出力導波路31bに出力される。
【0017】
位相調整用電極37にDC電極パッド40から直流電圧が供給されると、アーム導波路34a,34bの屈折率が一定値だけシフトする。直流電圧の大きさは、変調用電極35に供給される電気信号によってアーム導波路34a,34bを伝搬する光の変調が良好に行われるような値(最適値)に設定される。すなわち、アーム導波路34a,34bを伝搬する光が良好に変調されるように、位相調整用電極37によってアーム導波路34a,34bを伝搬する光の位相が調整される。
【0018】
位相調整用電極37に供給される直流電圧の最適値は、アーム導波路34a,34b間の光路長差に依存する。アーム導波路34a,34b間の光路長差は、例えばアーム導波路34a,34bを伝搬する光の波長によって変化する。光変調器100は、例えば波長1530nm〜1570nmの範囲で、第1の瞬間には第1の波長の光が入射され、別の第2の瞬間には波長が切り替って第2の波長の光が入射される。このため、入射される光の波長と供給する直流電圧の値との関係表を予め作成しておき、動作時にはこの関係表に基づいて直流電圧の値が決定される。また、アーム導波路34a,34b間の光路長差は、アーム導波路34a,34b間の温度差によっても変化する。このため、光変調器100は、TEC(Thermo-electric Cooler)上に搭載されて一定の温度(例えば70℃)に保たれて使用される。
【0019】
図3は、
図2のA−A線断面図である。すなわち、
図3は、アーム導波路34a,34bを含む領域において、光導波方向と垂直を成す断面図である。
図3のように、例えば半絶縁性のInPの基板1上に、n型InP(例えばSiが添加されたInP)の下部クラッド層2が設けられている。下部クラッド層2は、アーム導波路34aからアーム導波路34bにかけて設けられている。下部クラッド層2上のアーム導波路34a,34bに対応する位置において、AlGaInAs井戸層及びAlInAsバリア層を含む多重量子井戸構造をしたコア層3が設けられている。コア層3上に、p型InP(例えばZnを添加したInP)の上部クラッド層4が設けられている。上部クラッド層4上には、p型(Zn添加)GaInAsのコンタクト層5が設けられている。これにより、基板1上に、メサ状の光導波路からなり、下部クラッド層2を共通にして互いに電気的に接続されたアーム導波路34a,34bが設けられている。アーム導波路34aとアーム導波路34bとの間隔は50μm程度である。なお、アーム導波路34a,34bは、下部クラッド層2、コア層3、上部クラッド層4およびコンタクト層5を含む。メサ高さは、例えば、3μm程度である。また、メサ幅は、例えば、1.5μm程度である。
【0020】
アーム導波路34aとアーム導波路34bとの間において、下部クラッド層2の上面に接するn電極11と、n電極11の上面に接するTiWの下地層12と、Au層13とが、この順に積層されている。これらのn電極11、下地層12およびAu層13がグランド電極36として機能する。
【0021】
グランド電極36が設けられている領域以外において、基板1上、下部クラッド層2上およびアーム導波路34a,34bのメサ側面に、例えば厚さ0.3μmのSiO
2膜からなる保護膜14が設けられている。当該メサ側面は、保護膜14を介してBCB(ベンゾシクロブテン)の厚さ3μmの第1樹脂層15によって埋め込まれている。第1樹脂層15は、グランド電極36上には設けられていない。第1樹脂層15上には、SiONなどの厚さ0.3μmの第1無機膜16が設けられている。
【0022】
コンタクト層5上には、コンタクト層5と接触するオーミック層6(Ti/Pt/Au)が設けられている。オーミック層6上には、TiWの厚さ0.3μmの第1下地層7および厚さ1μmの第1Au層8がこの順に積層されている。オーミック層6、第1下地層7および第1Au層8の幅は、4μm程度である。この幅はアーム導波路34a,34bの幅よりも大きいため、オーミック層6は、第1無機膜16の上面にも接している。
【0023】
第1無機膜16上には、第1下地層7及び第1Au層8の側面から第1Au層8の周縁部の上面まで埋め込むBCBの厚さ2.3μmの第2樹脂層17が設けられている。第2樹脂層17は、アーム導波路34a,34bおよびグランド電極36に起因する凹凸を覆って、上面が平坦になるように形成されている。第2樹脂層17上には、SiO
2等の第2無機膜18が設けられている。第2樹脂層17および第2無機膜18には、第1Au層8の上面に開口が設けられることになる。当該開口を介して、第1Au層8の上面から、厚さ0.3μmのTiWの第2下地層9および厚さ4.5μの第2Au層10が第2無機膜18の上面まで延在している。オーミック層6、第1下地層7、第1Au層8、第2下地層9および第2Au層10が変調用電極35として機能する。第2無機膜18および第2Au層10を覆うように、SiON/SiN等の第3無機膜19が設けられている。これにより、第2無機膜18上まで延在した第2Au層10の上面および側面と、第2無機膜18の上面とが、連続する第3無機膜19によって覆われることになる。第2下地層9の側面の一部は、第2樹脂層17に覆われている。これらにより、変調用電極35が第2樹脂層17および第2無機膜18から剥がれにくくなっている。
【0024】
変調用電極35とボンディングパッド38とを接続する接続配線41(
図2)は、第2下地層9と第2Au層10とが積層された構造を有し、第2無機膜18上を延在する。グランド電極36は、所定の箇所において、ボンディングパッド39に接続された接続配線41(
図2)に接続される。グランド電極36とボンディングパッド39とを接続する接続配線41も、第2下地層9と第2Au層10とが積層された構造を有し、第2無機膜18上を延在する。
【0025】
図4は、
図2のB−B線断面図である。すなわち、
図4は、ボンディングパッド38が設けられている領域の断面図である。なお、ボンディングパッド39も同様の構造を有しているが、説明の簡略化のためにボンディングパッド38について説明する。
【0026】
図4のように、ボンディングパッド38が設けられている領域においては、基板1上に、保護膜14を介して第1樹脂層15が設けられている。また、第1樹脂層15上には、第1無機膜16が設けられている。ボンディングパッド38は、第1無機膜16上において、第1下地層7、第1Au層8、第2下地層9および第2Au層10がこの順に積層された構造を有する。第1下地層7および第1Au層8を下部領域と称する。第2下地層9および第2Au層10を上部領域と称する。下部領域と上部領域との積層箇所において、上部領域の幅は例えば150μmであり、下部領域の幅は例えば140μmである。すなわち、下部領域と上部領域との積層箇所において、上部領域の面積は下部領域の面積よりも小さくなっている。
【0027】
第2樹脂層17は、第1無機膜16上に設けられ、下部領域の側面と、下部領域の上面において上部領域が設けられていない領域とを覆っている。第2樹脂層17及び第2無機膜18は、第1Au層8上に開口を有する。当該開口を介して、第1Au層8の上面から第2下地層9及び第2Au層10が第2無機膜18の上面まで延在している。第2下地層9は、中央部の位置が低く周縁部の位置が高い凹型(お椀型)の形状を有している。第2Au層10は、当該凹部の内側に充填されている。第2下地層9及び第2Au層10は、金属同士であるため、接触している界面での密着が良い。したがって、ボンディングパッド38の積層の内部での剥がれは起こりにくい。
【0028】
第3無機膜19は、第2Au層10の上面の周縁部及び第2無機膜18の上面を覆い、第1樹脂層15及び第2樹脂層17の側面も覆って、基板1の表面の一部を覆う。第3無機膜19は、ボンディングパッド38の第2Au層10の端部から第2無機膜18の上面にかけて連続して覆う。ボンディングパッド38の第2Au層10と第2下地層9は、周縁部を第2無機膜18と第3無機膜19とで上下から挟まれる。第2Au層10の中央は、ボンディングワイヤが接続可能なように、第3無機膜19から露出している。
【0029】
第1実施形態においては、接続配線41は第2樹脂層17上を延在し、ボンディングパッド38は、第1樹脂層15上に形成されている。したがって、ボンディングパッド38を基板1上において樹脂層を介さずに設ける場合と比較して段差を小さくすることができる。それにより、接続配線41とボンディングパッド38とを容易に接続することができる。また、ボンディングパッド38の下部領域の側面が第2樹脂層17によって覆われている。第1樹脂層15と第2樹脂層17とは第1無機膜16によって接続されているため、第1樹脂層15と第2樹脂層17との間には高い密着性が得られている。これは、樹脂と金属とは化学的に結合しづらい一方で、樹脂と無機膜(特に酸素がある場合)とは化学的に結合するためである。それにより、ボンディングパッド38と第1樹脂層15との高い密着性が得られる。以上のことから、第1樹脂層15とボンディングパッド38との密着強度を高めつつ接続配線41とボンディングパッド38との接続を容易とすることができる。
【0030】
また、第2樹脂層17がボンディングパッド38の下部領域の上面の周縁部を覆っていることから、ボンディングパッド38と第2樹脂層17との密着性が高くなる。
【0031】
また、第1下地層7が第1樹脂層15上に直接設けられているわけではなく、第1無機膜16を介して設けられているため、第1下地層7と第1樹脂層15との間に高い密着性が得られる。これは、樹脂と無機膜との密着性が高く、無機膜と下地層(無機膜の酸素と下地層のTiが結合するため)との密着性も高いからである。
【0032】
また、第2樹脂層17と第2無機膜18との間には高い密着性が得られている。さらに、第2無機膜18と第3無機膜との間には、同じ無機膜であることから、高い密着性が得られている。したがって、第2無機膜18と第3無機膜19とで、ボンディングパッド38の上部領域の周縁部を上下から挟むことで、第2樹脂層17とボンディングパッド38との密着性が高くなる。
【0033】
第2樹脂層17の厚さは2.3μm程度であるので、接続配線41とボンディングパッド38とは、第2樹脂層17の厚さ分の段差を介して接続されることになる。ボンディングパッド38及び接続配線41の厚さ(第2下地層9及び第2Au層10の厚さ)が4.5μm程度であり、第2樹脂層17の厚さ、すなわち接続される箇所の段差よりも厚い。これにより、接続配線41とボンディングパッド38とは断線することなく接続される。したがって、第2樹脂層17の厚さは、第2下地層9及び第2Au層10の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0034】
第1樹脂層15は、第2樹脂層17よりも固く形成してあることが好ましい。この場合、第1無機膜16と第1下地層7との熱膨張・収縮の差が小さくなる。第1樹脂層15と、基板1及び保護膜14との熱膨張・収縮の差も小さくなる。したがって、基板1、保護膜14、第1樹脂層15、第1無機膜16、第1下地層7の間での剥がれが起こりにくくなる。また、第1Au層8の端部および第2下地層9の側面が比較的柔らかい第2樹脂層17で覆われるため、第1Au層8及び第2Au層10の熱膨張・収縮による体積変化や、それによる応力を第2樹脂層17が吸収することができる。ボンディングパッド38がこのように第2樹脂層17に囲まれる構造により、ボンディングパッド38は、第2樹脂層17から剥がれにくくなる。
【0035】
また、変調用電極35、接続配線41およびボンディングパッド38において、第2Au層10及び第2下地層9が共通に備わり、連続して一体として形成されている。これにより、接続配線41の剥がれにくさと、変調用電極35の剥がれにくさとが、ボンディングパッド38を剥がれにくくすることに寄与している。
【0036】
なお、スクライブラインSLの領域は、基板1上に保護膜や樹脂層が設けられておらず、基板1が露出する箇所に設けられている。したがって、スクライブラインSLにおける基板1に部分的にスクライブ(傷を入れる)することで、基板1をスクライブの箇所を起点として基板1をへき開することができ、チップを直線的に簡便に分割することができる。
【0037】
次に、第1実施形態に係る半導体光素子である光変調器100の製造方法について説明する。
図5(a)から
図13(b)は、第1実施形態に係る光変調器100の製造方法を示す断面図である。各図において、(a)は
図2のA−A線断面に相当し、(b)は
図2のB−B線断面に相当する。なお、以下の説明では、ボンディングパッド38について説明するが、ボンディングパッド39についても同様の製造工程により製造することができる。
【0038】
まず、
図5(a)で例示するように、基板1上に、有機金属気相成長法(MOVPE法)を用いて、下部クラッド層2、コア層3、上部クラッド層4およびコンタクト層5を形成する材料の結晶成長を行う。フォトリソグラフィおよびドライエッチングにより、メサ状の光導波路を形成する。さらにフォトリソグラフィおよびドライエッチングにより、アーム導波路34a,34b間の下部クラッド層2を残して他の部分の下部クラッド層2を除去する加工を行う。熱CVDにより、基板1、アーム導波路34a,34b及び下部クラッド層2を覆う保護膜14を形成する。
図5(b)で例示するように、B−B線断面においては、基板1上に保護膜14が形成される。
【0039】
次に、
図6(a)で例示するように、n電極11を形成する領域に開口を有するレジストマスクを保護膜14上に形成し、バッファードフッ酸BHFを用いたウェットエッチングにより、開口に露出した保護膜14を除去する。金属蒸着とレジストマスク用いたリフトオフにより、AuGeNi合金とAuの金属とからなるn電極11を下部クラッド層2上に形成する。
【0040】
次に、
図7(a)および
図7(b)で例示するように、第1樹脂層15となるBCB樹脂の前駆体をスピン塗布する。スピン塗布の回転数を調整して、塗布した時点でアーム導波路34a,34bのメサ上部の保護膜14が露出するようにする。スピン塗布後、BCB樹脂の前駆体を350℃程度の高温で熱硬化させて第1樹脂層15とする。あるいは、メサの高さよりも厚く第1樹脂層15を形成した後、ドライエッチングでBCBをエッチバックして、メサの上部の保護膜14を露出させてもよい。
図7(b)で例示するように、
図7(a)と同じ厚さの第1樹脂層15が形成される。
【0041】
次に、
図8(a)で例示するように、アーム導波路34a,34b上の保護膜14に開口を形成して、蒸着とリフトオフにより、アーム導波路34a,34b上にオーミック層6を構成する金属(Ti/Pt/Au)を形成する。第1樹脂層15及びオーミック層6上に第1無機膜16を形成する。第1無機膜16上にレジストマスクを形成する。レジストマスクを用いて第1無機膜16及び第1樹脂層15をドライエッチングすることで第1無機膜16及び第1樹脂層15に開口を形成し、オーミック層6およびn電極11を露出させる。なお、
図8(b)で例示するように、スクライブラインSLに位置する箇所においても、第1無機膜16に開口を形成する。
【0042】
次に、
図9(a)で例示するように、オーミック層6上に第1下地層7を形成し、n電極11上に下地層12を形成する。第1下地層7及び下地層12は、同一のスパッタ工程により同時に形成することができる。なお、第1下地層7は、第1無機膜16上まで延在させてもよい。第1下地層7上にめっきにより第1Au層8を形成し、下地層12上にめっきによりAu層13を形成する。第1Au層8及びAu層13は、同一のめっき工程により同時に形成することができる。また、
図9(b)で例示するように、ボンディングパッド38を設ける領域においても、保護膜14上に第1下地層7を形成し、第1下地層7上にめっきにより第1Au層8を形成する。
【0043】
次に、
図10(a)及び
図10(b)で例示するように、第1樹脂層15の開口と、第1無機膜16とを埋め込むように、第2樹脂層17となるBCB樹脂の前駆体をスピン塗布する。BCB樹脂の前駆体は、第1樹脂層15の開口が埋まり、かつ、塗布後の樹脂上面が平坦になるような粘度のものを用いる。また、スピン塗布の回転数を調整して、オーミック層6の上面から第2樹脂層17の上面までの厚さが1.3μmとなるようにする。オーミック層6上の第2樹脂層17の厚さは、2μm以下程度(後に形成する第2下地層9および第2Au層10の厚さよりも薄くなるように)することが好ましい。BCB樹脂の前駆体を300℃程度で熱硬化させて第2樹脂層17とする。第2樹脂層17の上面に、CVD法等で第2無機膜18を形成する。このとき、第1樹脂層15も300℃の高温に晒される。第1樹脂層15は、350℃程度の高温と、300℃程度の高温と、2回の熱硬化の工程を経ることになる。それにより、第1樹脂層15は、第2樹脂層17よりも固くなり、ボンディングパッド38の下地として、より好適になる。
【0044】
次に、
図11(a)で例示するように、第2無機膜18上にレジストマスクを形成し、第2無機膜18及び第2樹脂層17をドライエッチングして、アーム導波路34a,34b上の第2Au層10、およびボンディングパッド38を形成する領域の第2Au層10を露出させるための開口を形成する。当該開口の形成において第2樹脂層17がエッチングされる量は、アーム導波路34a,34b上もボンディングパッド38の形成予定領域上においても同じであり、本実施形態では1.3μmである。ボンディングパッド38を基板1上に形成する場合に比べて、ボンディングパッド形成箇所を露出させるために除去すべき樹脂層の厚さが少なくて済む。
【0045】
続いて別のレジストマスクを第2無機膜18上、露出したオーミック層6上及び露出したn電極11上に形成する。このレジストマスクを用いて、
図11(b)で例示するように、スクライブラインSLを形成する領域の第1樹脂層15、第2樹脂層17、第1無機膜16及び保護膜14をドライエッチングし、開口を形成する。当該開口において、基板1が露出する。当該開口は、エッチングするべき樹脂層の厚さが、アーム導波路34a,34b上もボンディングパッド38の形成予定領域上においてエッチングするべき樹脂層の厚さの2倍以上大きいので、当該開口形成のためのレジストマスクとは別のレジストマスクを用いて、ドライエッチングの工程を分けて形成する。この工程により、スクライブラインSLが形成される。
【0046】
次に、
図12(a)及び
図12(b)で例示するように、第2無機膜18上の接続配線41を形成する領域、アーム導波路34a,34b上の第2無機膜18及び第2樹脂層17の開口、及びボンディングパッド38の形成予定領域上の第2無機膜18及び第2樹脂層17の開口に、第2下地層9を形成する。第2下地層9は、スパッタによって形成する。第2下地層9の上に、めっきにより第2Au層10を形成する。めっきの時間等を調整して、第2Au層10の厚さが、第2樹脂層17の厚さよりも大きくなるようにする。本実施形態では、第2Au層10の厚さは、第2無機膜18上において4.5μmである。これにより、接続配線41とボンディングパッド38と変調用電極35とは、第2樹脂層17と開口に起因する段差に影響されることなく、確実に電気的に接続される。
【0047】
次に、
図13(a)で例示するように、第2Au層10、第2無機膜18、及びスクライブラインSLの開口を覆うように、第3無機膜19を形成する。フォトリソグラフィとドライエッチングにより、第2Au層10の上面中央部、および、スクライブラインSLの開口内の第3無機膜19を除去する。第2Au層10上面の周辺部の第3無機膜19は、除去しないで残す。以上の工程により、第1実施形態に係る光変調器100を製造することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態について説明するための図である。
図14は、
図2のB−B線断面に相当する。本実施形態においては、スクライブラインSLの領域に、アーム導波路34a,34bのメサ状の導波路と同じ半導体構造が設けられている。すなわち、スクライブラインSLにおいて、基板1上に、下部クラッド層2、コア層3、上部クラッド層4及びコンタクト層5が積層されている。このコンタクト層5の上面が露出している。
【0049】
本実施形態においては、スクライブラインSLのコンタクト層5に部分的にスクライブ(傷を入れる)することで、コンタクト層5のスクライブの箇所を起点として、コンタクト層5、上部クラッド層4、コア層3、下部クラッド層2、及び基板1をへき開することができ、チップを直線的に簡便に分割することができる。
【0050】
図14の構造を得るためには、第1実施形態のメサ状の導波路の形成工程において、スクライブラインSLとなる領域にもメサ状の半導体積層構造を形成しておく。スクライブラインSLの領域に形成するメサの幅は、例えば約60μmである。
【0051】
例えば、
図11(a)の工程のように第2無機膜18及び第2樹脂層17をドライエッチングする工程において、スクライブラインSLの領域のコンタクト層5を露出させればよい。これは、コンタクト層5を露出させるために除去する樹脂層厚さと、第2Au層10を露出させるために除去する樹脂厚さとの差が小さいために可能となる。これにより、別のレジストマスクを形成してエッチングを行う必要がなくなる。
【実施例】
【0052】
上記実施形態に従ってボンディングパッド38を作成した。
【0053】
(実施例1)
実施例1では、
図15(a)に示すように、
図4で説明したボンディングパッドを作成した。基板1には、厚さ600μmの反絶縁性のInPを用いた。保護膜14には、厚さ200nmのSiONまたはSiO
2を用いた。第1樹脂層15には、厚さ4μmのBCBを用いた。第1無機膜16には、厚さ200nmのSiONを用いた。第1下地層7には、厚さ50nmのTiWを用いた。第1Au層8には、厚さ4μmのAuを用いた。第2下地層9には、厚さ50nmのTiWを用いた。第2Au層10には、厚さ4μmのAuを用いた。第2樹脂層17には、厚さ2.5μmのBCBを用いた。第2無機膜18には、厚さ300nmのSiO
2を用いた。第3無機膜19には、厚さ500nmのSiON/SiNを用いた。
【0054】
(比較例1)
図15(b)に示すように、比較例1では、第1樹脂層15上に、第2下地層9を形成し、第2下地層9上に第2Au層10を形成した。厚さについては、実施例1と同様である。
【0055】
(比較例2)
図15(c)に示すように、比較例2では、基板1上に保護膜14を形成し、保護膜14上に第2下地層9を形成し、第2下地層9上に第2Au層10を形成した。厚さについては、実施例1と同様である。
【0056】
図15(a)〜
図15(c)の各ボンディングパッドにボールボンダ装置でAuワイヤをボンディングし、ワイヤプル試験を行った。比較例1では、5gfの強さの引っ張りで第2下地層9が第1樹脂層15から剥がれた。これは、樹脂層上に金属層を形成したからであると考えられる。比較例2では、12gfの強さの引っ張りまで第2下地層9が第1樹脂層15から剥がれなかった。これは、半導体と絶縁膜との密着性が良好なためだからである。しかしながら、比較例2では、樹脂層上を延在する接続配線との段差が大きくなるため、接続配線とボンディングパッドとの接続が困難である。
【0057】
これに対して、実施例1では、ボンディングパッドが第1樹脂層15上に設けられているにも関わらず、12gfの強さの引っ張りまで第2下地層9が第1樹脂層15から剥がれなかった。これは、第2樹脂層17でボンディングパッドの側面の一部を覆うことで第1樹脂層15とボンディングパッドとの密着性が向上したからであると考えられる。なお、実施例1の構造では、第2樹脂層17上を延在する接続配線とボンディングパッドとの段差を小さくすることができ、接続配線とボンディングパッドとの接続を容易とすることができる。