特許第6863021号(P6863021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863021
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20210412BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210412BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L9/00
   B60C1/00 A
   C08L71/02
   C08L91/06
   C08L23/00
   C08K3/36
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-75290(P2017-75290)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-177873(P2018-177873A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/145843(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/001935(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/001937(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/018386(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/084925(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/001934(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/001942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッドが、トレッド用ゴム組成物からなり、
前記トレッド用ゴム組成物が、ブタジエンゴムを含むゴム成分、パラフィンワックス、非イオン界面活性剤、シリカ、オイル、及び、レジンを含み、
前記パラフィンワックスが、ノルマルアルカンを含み、
前記ノルマルアルカンの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.3〜5.0質量部であり、
前記非イオン界面活性剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.8〜5.0質量部であり、
前記ノルマルアルカンと前記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)が、0.3〜3.0であり、
前記ブタジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量%中、5〜80質量%であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して60〜200質量部であり、
前記オイルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜80質量部であり、
前記レジンの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であり、
前記非イオン界面活性剤が、下記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに、ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ポリエーテル(A)中に含まれる2連鎖以上のポリエチレンオキシドの平均質量が、ポリエーテル(A)に含まれるポリエチレンオキシドの質量の85%以下である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【化1】
(式(1)中、a、b、cは自然数を表す。)
【化2】
(式(2)中、Rは、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。dは自然数を表す。)
【化3】
(式(3)中、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。eは自然数を表す。)
【請求項2】
前記レジンのSP値が11以下である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.8〜3.0質量部である請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤のHLBが、6.0〜12.0である請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ノルマルアルカンと前記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)が、0.5〜2.5である請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤは、天然ゴムやジエン系合成ゴムを原料としたゴム組成物を用いているため、タイヤを使用中に、高オゾン濃度、紫外線条件下で劣化が促進され、クラック、例えば、トレッドの主溝底部においてTread Groove Crack(TGC)が生じるおそれがある。そこで、オゾン存在下でのクラックの発生やその進行を抑制するために、例えば、老化防止剤(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−)ジヒドロキノリン(TMDQ)など)やワックスなどの添加剤がゴム組成物に配合されている。
【0003】
タイヤでは、配合されたワックス等がブルームすることにより、タイヤトレッド表面にワックス等の被膜が形成され、この形成された被膜がオゾンからゴムを守る働きをし、クラックの発生、進行を抑制することができる。この形成される被膜には、通常、直鎖アルカンや分岐鎖アルカンを含むワックスの他、オイルや、樹脂、老化防止剤、界面活性剤、ステアリン酸亜鉛等ゴム組成物の配合成分が複数種類含まれているが、例えば、このタイヤトレッド表面に形成される被膜において、直鎖アルカンの含有量が多かったり、アルカンの分子量が高かったり、ワックス以外の可塑化成分のブリード物が少なかったりする場合、被膜は硬くなり、その硬い被膜により初期のウェットグリップ性能が低下してしまうという問題があった。更には、クラックの発生、進行をより抑制すべくワックスの配合量を増やすと、被膜は厚くなり、かつ、被膜中の直鎖アルカンの比率が高くなって、被膜が硬くなってしまい、初期ウェットグリップ性能が更に低下してしまう。このように、オゾンクラック性能(特に溝底でのクラックの進行を抑制する性能、いわゆるTGC〔Tread Groove Crack〕性能)と、初期のウェットグリップ性能とは背反性能であり、初期ウェットグリップ性能を含めたウェットグリップ性能と、溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)とを両立させるのは困難であった。
【0004】
特許文献1には、ポリオキシエチレンのエーテル型非イオン性界面活性剤を配合することにより、タイヤの外観悪化を防止できることが記載されているが、TGC性能と初期ウェットグリップ性能とを高度に両立するという点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−194790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、優れた溝底でのオゾンクラック性能とウェットグリップ性能とが両立した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッドを有する空気入りタイヤであって、上記トレッドが、トレッド用ゴム組成物からなり、上記トレッド用ゴム組成物が、ゴム成分、パラフィンワックス、非イオン界面活性剤、及び、レジンを含み、上記パラフィンワックスが、ノルマルアルカンを含み、上記ノルマルアルカンの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.3〜5.0質量部であり、上記非イオン界面活性剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.8〜5.0質量部であり、上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)が、0.3〜3.0であり、上記非イオン界面活性剤が、下記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに、ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記ポリエーテル(A)中に含まれる2連鎖以上のポリエチレンオキシドの平均質量が、ポリエーテル(A)に含まれるポリエチレンオキシドの質量の85%以下であることを特徴とする空気入りタイヤに関する。
【0008】
【化1】
【0009】
上記式(1)中、a、b、cは自然数を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
上記式(2)中、Rは、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。dは自然数を表す。
【0012】
【化3】
【0013】
上記式(3)中、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。eは自然数を表す。
【0014】
上記レジンのSP値は、11以下であることが好ましい。
【0015】
上記レジンの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
【0016】
上記非イオン界面活性剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.8〜3.0質量部であることが好ましい。
【0017】
上記非イオン界面活性剤のHLBは、6.0〜12.0であることが好ましい。
【0018】
上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)は、0.5〜2.5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トレッドを有する空気入りタイヤであって、上記トレッドが、トレッド用ゴム組成物からなり、上記トレッド用ゴム組成物が、ゴム成分と、ノルマルアルカンを含有するパラフィンワックスと、上記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、上記式(2)及び/又は上記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに上記ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種である所定の非イオン界面活性剤と、レジンとを含み、上記ノルマルアルカンの含有量、及び上記非イオン界面活性剤の含有量が所定量であり、上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率が所定値である空気入りタイヤであるので、優れた溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)とウェットグリップ性能とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の空気入りタイヤは、トレッドを有する空気入りタイヤであって、上記トレッドが、トレッド用ゴム組成物からなり、上記トレッド用ゴム組成物が、ゴム成分、パラフィンワックス、非イオン界面活性剤、及び、レジンを含み、上記パラフィンワックスが、ノルマルアルカンを含み、上記ノルマルアルカンの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.3〜5.0質量部であり、上記非イオン界面活性剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.8〜5.0質量部であり、上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)が、0.3〜3.0であり、上記非イオン界面活性剤が、上記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、上記式(2)及び/又は上記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに、ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記ポリエーテル(A)中に含まれる2連鎖以上のポリエチレンオキシドの平均質量が、ポリエーテル(A)に含まれるポリエチレンオキシドの質量の85%以下である。溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)と、初期のウェットグリップ性能とは背反性能であり、これらを両立させるのは困難であったにもかかわらず、驚くべきことには、上記構成とすることにより、良好な溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)が得られるだけでなく、初期ウェットグリップ性能を含めたウェットグリップ性能も良好なものとすることができる。このように、本発明の空気入りタイヤでは、優れた溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)とウェットグリップ性能とを両立することができる。
なお、本明細書では、単にウェットグリップ性能と記載した場合は、走行初期のウェットグリップ性能(初期ウェットグリップ性能)、及び、走行中の安定したウェットグリップ性能(走行中期のウェットグリップ性能)を合わせたものを意味するものとする。
【0021】
特に、パラフィンワックスに含まれるノルマルアルカン(直鎖アルカン)と上記所定の非イオン界面活性剤とを所定の配合比率でそれぞれ所定量配合し、更に、レジンと併用することによって、溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)及びウェットグリップ性能を相乗的にバランス良く改善できることは本発明者が初めて見出したことである。
【0022】
上記効果の発揮には、以下のようなメカニズムが働いていると推測される。
上記所定の非イオン界面活性剤は、パラフィンワックス等と共にタイヤトレッド表面にブルームし被膜を形成するが、ここで、パラフィンワックスに含まれるノルマルアルカンと上記所定の非イオン界面活性剤との配合比率を所定範囲とし、それぞれの配合量を所定量とすることにより、上記所定の非イオン界面活性剤がパラフィンワックスを溶解して、タイヤトレッド表面に形成される被膜が、厚みが均一で柔軟性のある膜となり、路面との接地により剥がれ易く、すなわち、初期走行でタイヤトレッド表面のブルーム被膜が容易に剥がれ、ゴムの真実接触面積(実際に路面と接触するゴムの面積)が大きくなり、ゴム内部のヒステリシスロスが有効に路面に伝達し、優れた初期ウェットグリップ性能が得られる。また、TGCが発生する溝底においては路面と接地せず、溝底での動的歪は十分小さいことから上記被膜は剥がれ難く、均一な厚みのブルーム層を保持できることから、溝底でのオゾンクラック性能、すなわちTGC性能を改善できる。
他方、レジンを配合することによって、走行中の安定したウェットグリップ性能(走行中期のウェットグリップ性能)が向上する。
このように、パラフィンワックスに含まれるノルマルアルカンと上記所定の非イオン界面活性剤との配合比率を所定範囲としてパラフィンワックスと上記所定の非イオン界面活性剤とを併用することにより、タイヤトレッド表面に形成される被膜が剥がれ易くなり、初期ウェットグリップ性能が向上する。また、タイヤトレッド表面に形成される被膜が平滑化、柔軟化して、結果、TGC性能が向上する。そして更にレジンを配合することにより、走行中の安定したウェットグリップ性能(走行中期のウェットグリップ性能)が向上する。これにより、TGC性能(溝底でのオゾンクラック性能)、走行初期のウェットグリップ性能(初期ウェットグリップ性能)、及び、走行中の安定したウェットグリップ性能(走行中期のウェットグリップ性能)をバランス良く改善できる。
【0023】
本発明の空気入りタイヤが有するトレッドは、トレッド用ゴム組成物からなる。以下において、該トレッド用ゴム組成物について説明する。
【0024】
トレッド用ゴム組成物に使用できるゴム成分としては、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等の非ジエン系ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、トレッド用途に好適に適用できるという理由から、ジエン系ゴムが好ましい。また、ジエン系ゴムのなかでも、良好な操縦安定性、低燃費性能、破断時伸び、耐久性、ウェットグリップ性能が得られるという理由から、BR、SBRが好ましく、BR及びSBRを併用することがより好ましい。
【0025】
上記ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。ジエン系ゴムの含有量を上記量とすることにより、本発明の効果を好適に享受できるとともに、トレッド用ゴム組成物として好適に使用できる。
【0026】
BRとしては特に限定されず、高シス含有量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
なお、本明細書において、BRのシス含量(シス1,4結合含有率)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0027】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ランクセス(株)等の製品を使用できる。
【0028】
また、BRとしては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRであればよく、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に下記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に下記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に下記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に下記官能基を有し、少なくとも一方の末端を下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
【0029】
上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0030】
BRとしては、なかでも、良好な操縦安定性、低燃費性能、破断時伸びを確保しつつ、良好な耐久性、耐摩耗性能が得られるという理由から、希土類系BRが好ましい。
【0031】
希土類系BRとしては、従来公知のものを使用でき、例えば、希土類元素系触媒(ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒)などを用いて合成したものが挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたネオジム系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(Nd系BR)が好ましい。
【0032】
BRのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは−160℃以上、より好ましくは−130℃以上である。また、好ましくは−60℃以下、より好ましくは−90℃以下である。
なお、本明細書において、ガラス転移温度は、JIS−K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0033】
BRの含有量は、0質量%であってもよいが、BRを含有する場合、上記ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。BRの含有量がこのような範囲であると、充分な機械的強度、耐摩耗性能が得られる。また、ウェットグリップ性能を重視する場合は、該含有量は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0034】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0036】
また、SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、上記変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0037】
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましい。
【0038】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上である。該スチレン含量は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。スチレン含量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
【0039】
SBRのビニル含量は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、更に好ましくは20mol%以上である。該ビニル含量は、好ましくは70mol%以下、より好ましくは65mol%以下、更に好ましくは50mol%以下である。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量とは、ブタジエン部のビニル含量(ブタジエン構造中のビニル基のユニット数量)のことを示し、H−NMR測定により算出される。
【0040】
SBRのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは−90℃以上、より好ましくは−50℃以上である。また、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下である。
【0041】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、100万以上が特に好ましい。また、該Mwは、200万以下が好ましく、180万以下がより好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0042】
SBRの含有量は、0質量%であってもよいが、SBRを含有する場合、上記ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上である。該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。SBRの含有量がこのような範囲であると、充分な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、リバージョン性能が得られる。また、ウェットグリップ性能を重視する場合は、該含有量は100質量%であってもよい。
ここで、SBRの含有量は、配合したゴムの固形分量を100質量%としたときの固形SBR分の量を意味する。
【0043】
また、本発明の効果が好適に得られるという理由から、スチレン含量の差が10質量%以上である2種類の異なるSBRを併用する形態も選択し得る。
【0044】
本発明では、トレッド用ゴム組成物に、下記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに、ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種が使用される。
【0045】
【化4】
【0046】
上記式(1)中、a、b、cは自然数を表す。
【0047】
【化5】
【0048】
上記式(2)中、Rは、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。dは自然数を表す。
【0049】
【化6】
【0050】
上記式(3)中、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。eは自然数を表す。
【0051】
まず、上記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤について説明する。
上記プルロニック型非イオン界面活性剤は、上記式(1)で表され、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物とも呼ばれる。上記式(1)で表されるように、当該プルロニック型非イオン界面活性剤は、両側にエチレンオキシド構造から構成される親水基を有し、この親水基に挟まれるように、プロピレンオキシド構造から構成される疎水基を有する。
【0052】
上記プルロニック型非イオン界面活性剤のポリプロピレンオキシドブロックの重合度(上記式(1)のb)、及びポリエチレンオキシドの付加量(上記式(1)のa+c)は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。ポリプロピレンオキシドブロックの割合が高くなる程ゴムとの親和性が高く、ゴム表面に移行する速度が遅くなる傾向がある。なかでも、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、ポリプロピレンオキシドブロックの重合度(上記式(1)のb)は、好ましくは100以下であり、より好ましくは10〜70、更に好ましくは15〜60、より更に好ましくは20〜55、特に好ましくは25〜45、最も好ましくは30〜35である。同様に、ポリエチレンオキシドの付加量(上記式(1)のa+c)は、好ましくは100以下であり、より好ましくは3〜65、更に好ましくは5〜55、特に好ましくは7〜40、最も好ましくは10〜30である。ポリプロピレンオキシドブロックの重合度、ポリエチレンオキシドの付加量が上記範囲内であると、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0053】
上記プルロニック型非イオン界面活性剤としては、BASFジャパン(株)、三洋化成工業(株)、旭電化工業(株)、第一工業製薬(株)、日油(株)等により製造・販売されている製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
なお、例えば、上記プルロニック型非イオン界面活性剤を非イオン界面活性剤として用いた場合、上記プルロニック型非イオン界面活性剤はワックス等を含む複合ブリード物が雨などで流出した場合にも、タイヤの黒色が数日で回復することから、タイヤトレッド表面の被膜を数日で再生できる。
【0055】
次に、上記式(2)及び/又は上記式(3)で表される非イオン界面活性剤について説明する。これらの界面活性剤の中では、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、上記式(2)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0056】
上記式(2)のRは、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。Rの炭化水素基の炭素数が5以下の場合、ゴムへの浸透性が低く、ゴム表面に移行する速度が速くなりすぎる為、ゴム表面の外観が悪くなる傾向がある。またRの炭化水素基の炭素数が27以上の場合、原料が入手困難または高価であり、不適である。Rの炭化水素基の炭素数が上記範囲内であると、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0057】
の炭化水素基の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは10〜22、更に好ましくは14〜20である。
【0058】
の炭素数6〜26の炭化水素基としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基、炭素数6〜26のアルキル基が挙げられる。
【0059】
炭素数6〜26のアルケニル基としては、例えば、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、トリコセニル基、ヘキサコセニル基等が挙げられる。
【0060】
炭素数6〜26のアルキニル基としては、例えば、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基、ペンタデシニル基、ヘプタデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基、トリコシニル基、ヘキサコシニル基等が挙げられる。
【0061】
炭素数6〜26のアルキル基としては、例えば、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、トリコシル基、ヘキサコシル基等が挙げられる。
【0062】
としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基が好ましく、炭素数6〜26のアルケニル基がより好ましい。
【0063】
上記式(2)のd(自然数)は、大きいほど親水親油バランスを表すHLB値が高くなり、ゴム表面に移行する速度が速くなる傾向がある。本発明において、dの値は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。なかでも、dとしては、好ましくは2〜25、より好ましくは4〜20、更に好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜14である。
【0064】
上記式(2)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールモノパルミエート、エチレングリコールモノパルミテート、エチレングリコールモノパクセネート、エチレングリコールモノリノレート、エチレングリコールモノリノレネート、エチレングリコールモノアラキドネート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノセチルエート、エチレングリコールモノラウレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、入手の容易性、コストの点から、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノパルミテートが好ましい。
【0065】
上記式(3)のR及びRは、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。R及びRの炭化水素基の炭素数が5以下の場合、ゴムへの浸透性が低く、ゴム表面に移行する速度が速くなりすぎる為、ゴム表面の外観が悪くなる傾向がある。またR及びRの炭化水素基の炭素数が27以上の場合、原料が入手困難または高価であり、不適である。R及びRの炭化水素基の炭素数が上記範囲内であると、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0066】
及びRの炭化水素基の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは10〜22、更に好ましくは14〜20である。
【0067】
及びRの炭素数6〜26の炭化水素基としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基、炭素数6〜26のアルキル基が挙げられる。
【0068】
炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基、炭素数6〜26のアルキル基としては、上述のRの場合と同様の基が挙げられる。
【0069】
及びRとしては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基が好ましく、炭素数6〜26のアルケニル基がより好ましい。
【0070】
上記式(3)のe(自然数)は、大きいほど親水親油バランスを表すHLB値が高くなり、ゴム表面に移行する速度が速くなる傾向がある。本発明において、eの値は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。なかでも、eとしては、好ましくは2〜25、より好ましくは4〜20、更に好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜14である。
【0071】
上記式(3)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジパルミエート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジパクセネート、エチレングリコールジリノレート、エチレングリコールジリノレネート、エチレングリコールジアラキドネート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジセチルエート、エチレングリコールジラウレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、入手の容易性、コストの点から、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテートが好ましい。
【0072】
次に、ポリエーテル(A)について説明する。
上記ポリエーテル(A)中に含まれる2連鎖以上のポリエチレンオキシドの平均質量が、ポリエーテル(A)に含まれるポリエチレンオキシドの質量の85%以下である。すなわち、ポリエーテル(A)中の連鎖エチレンオキシド含量は85%以下である。
【0073】
ここで、「連鎖エチレンオキシド含量」とは、ポリエーテルに含まれる全ポリエチレンオキシドに対する2連鎖以上のポリエチレンオキシドの割合を表し、下記式で計算される。
連鎖エチレンオキシド含量(%)=2連鎖以上のエチレンオキシドの平均個数/全エチレンオキシドの個数×100(%)
なお、2連鎖以上のポリエチレンオキシドとは、エチレンオキサイド(EO)単位が2単位以上連鎖したもので、−EO−EO−(2連鎖)、−EO−EO−EO−(3連鎖)、等で示されるものである。
【0074】
例えば、エチレンオキシド(EO)モノマーが4個、プロピレンオキシド(PO)モノマーが1つのポリエーテルの場合、連鎖エチレンオキシド含量は下記のとおり算出される。
【0075】
【表1】
【0076】
連鎖エチレンオキシド含量(%)
=2連鎖以上のEOの平均個数/全EOの個数×100(%)
=(1/5×4+1/5×3+1/5×4+1/5×3+1/5×4)/4×100(%)
=3.6/4×100=90(%)
【0077】
上記ポリエーテル(A)の連鎖エチレンオキシド含量は、85質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。ポリエーテルを構成するエチレンオキシド中の連鎖エチレンオキシドの割合が85質量%以下であることにより、本発明の効果を充分に発揮することができる。なお、連鎖エチレンオキシド含量の下限は、特に限定されない。
【0078】
上記ポリエーテル(A)の数平均分子量(スチレン換算値)は300以上が好ましく、1,500以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。また、50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。上記ポリエーテル(A)の数平均分子量がこのような範囲であると、ゴム表面にポリエーテル(A)が移行する速度(ブルーム速度)が好適な速さとなり、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0079】
上記ポリエーテル(A)は、R11−O−(R12−O)−R13、又はR14−{(O−R12−O)−R11で表されるものであることが好ましい。ここで、R11、R13は、水素又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルカノイル基であり、炭素に結合する水素を芳香族炭化水素基で置換したものでもよい。R12は、同一若しくは異なって、炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環族炭化水素基であり、炭素に結合する水素を芳香族炭化水素基で置換したものでもよい。R14は、3個以上の水酸基を有する化合物(a)から水酸基を除いた残基である。n及びmは整数を表し、連鎖エチレンオキシド含量が前述の範囲を満たす限り、任意に選択できる。
【0080】
上記R11、R13としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ステアリル基、オレイル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、ピリジル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキシノイル基、オクチノイル基、オクタデカノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、などが挙げられる。
【0081】
上記R12としては特に限定されず、例えば、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、(2−メチル)プロパン−1,2−ジイル基、ヘキサン−1,2−ジイル基、オクタン−1,2−ジイル基、(1−フェニル)エタン−1,2−ジイル基、(1−フェニル)プロパン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、などが挙げられる。
【0082】
上記3個以上の水酸基を有する化合物(a)としては特に限定されず、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、単糖類、多糖類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、などが挙げられる。
【0083】
上記ポリエーテル(A)としては、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、2−メチルプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、等のオキシラン化合物を単独重合又は共重合させて得られるポリアルキレングリコール;該ポリアルキレングリコールの水酸基の水素をアルキル基で置換した化合物(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等);該ポリアルキレングリコールの水酸基を有機酸と脱水反応させた化合物;多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物;などが挙げられる。
【0084】
上記ポリエーテル(A)としては、三洋化成工業(株)、(株)ADEKA、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)等により製造・販売されている製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
上記非イオン界面活性剤のHLBは、6.0〜12.0であることが好ましい。上記非イオン界面活性剤のHLBがこのような範囲であると、ゴムとの親和性とゴムからのブリードが適切な速度となり、本発明の効果がより好適に得られる。該HLBとしては、7.0以上がより好ましく、8.0以上が更に好ましい。また、11.5以下がより好ましく、11.2以下が更に好ましく、11.0以下がより更に好ましい。
【0086】
上記HLBは、ノニオン性界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度である。本発明におけるHLBは小田法による計算値であり、グリフィン法による計算値ではない。該小田法は、例えば「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕212頁に記載されている方法である。
なお、HLBの値は上記「界面活性剤入門」213頁に記載の表における有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
【0087】
上記ゴム成分100質量部に対して、上記非イオン界面活性剤の含有量は、0.8〜5.0質量部である。上記非イオン界面活性剤の含有量がこのような範囲であると本発明の効果が得られる。該含有量は、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上、また、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。
【0088】
本発明では、トレッド用ゴム組成物に、パラフィンワックスが使用される。ここで、パラフィンワックスとは、炭素数20以上のアルカンと定義できるが、広い温度域で優れた耐オゾン性(オゾンクラック性能)が得られるという理由から、パラフィンワックスとしては炭素数20以上のノルマルアルカン(直鎖アルカン)を主として含むものが使用される(本明細書においては、炭素数20以上のノルマルアルカンを単に「ノルマルアルカン」とも称する)。すなわち、本発明では、トレッド用ゴム組成物に、ノルマルアルカンを主として含むパラフィンワックスが使用される。なお、パラフィンワックスは単独で用いてもよく、炭素数分布やノルマル比率(全アルカン中のノルマルアルカンの比率)が異なる他品種のワックスと合わせ2種以上を併用してもよい。
【0089】
上記パラフィンワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精鑞(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0090】
上記ノルマルアルカンを含むパラフィンワックスとしては特に限定されず、例えば、炭素数20〜55の各ノルマルアルカンを含むパラフィンワックスなどを使用することができるが、なかでも、特に優れた耐オゾン性(オゾンクラック性能)が得られるという理由から、パラフィンワックス中ノルマルアルカンの含有量が70質量%以上のものを好適に使用でき、80質量%以上のものをより好適に使用できる。
【0091】
なお、上記ノルマルアルカンを含むパラフィンワックスのうち、タイヤ加硫後、高温状態では、炭素数40付近の高炭素数ノルマルアルカンがトレッド表面にブリードし、比較的硬い膜を形成するのに対して、室温状態では、炭素数25付近の低炭素数ノルマルアルカンが徐々にブリードする。
【0092】
上記パラフィンワックスに含有されるノルマルアルカンの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3〜5.0質量部である。上記ノルマルアルカンの含有量がこのような範囲であると本発明の効果が得られる。該含有量は、好ましくは0.35質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは0.8質量部以上、また、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。
【0093】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物においては、上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率(ノルマルアルカン/非イオン界面活性剤)は、0.3〜3.0である。上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率がこのような範囲であると、タイヤ表面にブルームしたパラフィンワックスを上記非イオン界面活性剤で充分に溶解させることができ、タイヤトレッド表面に形成される被膜を、厚みが均一で、柔軟性のある軟らかい膜とすることができるため、特に、優れた初期ウェットグリップ性能、耐オゾン性(オゾンクラック性能)が得られ、更には、レジンと併用することによる上記相乗効果が発揮される。該含有比率は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.75以上、特に好ましくは1.2以上、また、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、更に好ましくは2.2以下である。
【0094】
本発明では、トレッド用ゴム組成物にレジンが使用される。特に、トラック、バスなどの重荷重用タイヤやライトトラック用タイヤの場合、単位面積当たりの圧力が高く、レジンによる粘着グリップへの寄与よりも、ゴム本体のヒスロスグリップの寄与が圧倒的に大きく、また、レジンはゴム成分、充填剤以外の成分であるため通常耐摩耗性能にとって不利であることから、多くの場合、レジンは使用しないものである。これに対して、本発明は、パラフィンワックスに含まれるノルマルアルカンと上記所定の非イオン界面活性剤とを所定の配合比率でそれぞれ所定量配合し、更に、レジンと併用することによって、溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)及びウェットグリップ性能を相乗的にバランス良く改善できることを見出したものである。
【0095】
上記レジンとしては、SP値が11以下であることが好ましい。上記レジンのSP値が11以下であると、上記ゴム成分との相溶性が充分良好なものとなり、本発明の効果がより好適に得られる。該SP値としては、10.5以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましく、9.5以下が特に好ましい。また、下限は特に限定されないが、例えば、6.5以上が好ましく、7.5以上がより好ましく、8.0以上が更に好ましい。
なお、本明細書において、SP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出される溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”,Solvent and Coatings Materials Reserch and Development Department,Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0096】
上記レジンは、軟化点が、−10〜170℃であることが好ましい。上記レジンの軟化点がこのような範囲であると、上記ゴム成分との相溶性が充分良好なものとなり、本発明の効果がより好適に得られる。該軟化点は、0℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。また、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、140℃以下がより更に好ましい。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K6220:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0097】
上記レジンは、ガラス転移温度(Tg)が、−30〜100℃であることが好ましい。上記レジンのガラス転移温度がこのような範囲であると、上記ゴム成分との相溶性が充分良好なものとなり、本発明の効果がより好適に得られる。該ガラス転移温度は、−20℃以上がより好ましく、−10℃以上が更に好ましい。
【0098】
上記レジンとしては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、ロジン樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂がより好ましい。
【0099】
上記芳香族ビニル重合体とは、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体、α−メチルスチレンの単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましい。
上記クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
上記ロジン樹脂とは、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、またはこれらのエステル化合物、または、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂である。
【0100】
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
【0101】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
【0102】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα−ピネン及びβ−ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β−ピネンを主成分とするβ−ピネン樹脂と、α−ピネンを主成分とするα−ピネン樹脂とに分類される。
【0103】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0104】
上記アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0105】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0106】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0107】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0108】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0109】
上記レジンとしては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。
【0110】
上記レジンの含有量は、市販用タイヤでは、上記ゴム成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。上記レジンの含有量がこのような範囲であると、上記レジンを上記ノルマルアルカンと上記所定の非イオン界面活性剤と共に併用する効果がより顕著に発揮され、本発明の効果がより好適に得られる。該含有量は、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは22質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、また、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。
【0111】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、補強効果、紫外線防止効果が得られ、本発明の効果がより良好に得られる。使用できるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、5m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、300m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0113】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0114】
上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、好ましくは120質量部下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0115】
上記トレッド用ゴム組成物には、シリカを含むことが好ましい。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などを用いることができるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。
【0116】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは115m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる。また、好ましくは400m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0117】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0118】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上である。下限以上にすることで、充分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは130質量部以下である。上限以下にすることで、シリカの良好な分散が得られやすく、良好な低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
【0119】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0120】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0121】
上記ゴム組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上限以下にすることで、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0122】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、オイルを配合してもよい。オイルを配合することにより、加工性が改善され、タイヤに柔軟性を与える事ができ、本発明の効果がより良好に得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、アロマ系プロセスオイルが好ましい。
【0123】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0124】
上記ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームするオイルの含有量を上記範囲内とすることにより、上記他の成分のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0125】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、老化防止剤を含有することが好ましい。老化防止剤もブルームしてタイヤトレッド表面に移行していくが、本発明において用いられる上記所定の非イオン界面活性剤は、ゴム内部からブリードしてきた老化防止剤を溶解し、老化防止剤をタイヤ表面で均一に、薄膜状に分布させることができることから、本発明では、老化防止剤を配合しても、ウェットグリップ性能に優れたものとすることができ、よって、優れた溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)とウェットグリップ性能とを両立することができる。
【0126】
上記老化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐オゾン性(オゾンクラック性能)が良好であり、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、p−フェニレンジアミン系老化防止剤(より好ましくは、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン)が好ましい。また、p−フェニレンジアミン系老化防止剤(より好ましくは、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン)及びキノリン系老化防止剤(より好ましくは、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物)を併用することも好ましい。
【0127】
上記老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0128】
なお、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンを老化防止剤として用いた場合、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンは極めてゆっくりとブリードする。このことは、タイヤ製造後すぐはタイヤは黒いのに対して、製造後時間が経過すると茶変することからうかがえる。
【0129】
上記ゴム組成物が老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上である。また、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。老化防止剤の含有量が上記範囲内であれば、外観上の極端な変色や、低燃費性能の悪化を犠牲にせず、本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0130】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0131】
上記ゴム組成物がステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0132】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0133】
上記ゴム組成物が酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。上記数値範囲内であると、加工性や耐摩耗性能を犠牲にせず、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0134】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0136】
上記ゴム組成物が硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、加硫速度、経時劣化、耐摩耗性能を犠牲にせず、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0137】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0138】
上記ゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0139】
本発明におけるトレッド用ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;可塑剤、滑剤などの加工助剤;上記非イオン界面活性剤以外の界面活性剤;オイル以外の軟化剤;硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。
【0140】
上記トレッド用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0141】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100〜180℃、好ましくは120〜170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85〜110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140〜190℃、好ましくは150〜185℃である。
【0142】
本発明の空気入りタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物からなるトレッドを有するものであって、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、上記ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0143】
ここで、上記トレッドは単層であってもよいし、2層以上の複数層からなっていてもよいが、複数層である場合には、少なくともトレッド最表面の層(キャップトレッド)が上記トレッド用ゴム組成物からなっていることが好ましい。例えば、トレッドが2層構造〔表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)〕からなる場合には、本発明の空気入りタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物からなるキャップトレッド(表面層)を有するものであることが好ましい。
【0144】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤなどの市販用タイヤに好適に使用可能である。
【実施例】
【0145】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0146】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:E−SBR、スチレン含量:35重量%、ビニル含量:18mol%、ガラス転移温度(Tg):−40℃、重量平均分子量(Mw):109万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有
SBR2:S−SBR、スチレン含量:15重量%、ビニル含量:30mol%、Tg:−65℃、Mw:78万、非油展
BR:Nd系BR、シス含量:97質量%、Tg:−110℃
【0147】
CB:カーボンブラック(N220、NSA:114m/g)
シリカ:シリカ(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
【0148】
レジン1:テルペンフェノール樹脂(軟化点:160℃、Tg:100℃、SP値:8.81)
レジン2:芳香族変性テルペン樹脂(軟化点:125℃、Tg:64℃、SP値:8.73)
レジン3:ポリテルペン樹脂(軟化点:115℃、Tg:60℃、SP値:8.26)
レジン4:α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体(軟化点:85℃、Tg:43℃、SP値:9.1)
レジン5:スチレンアクリル樹脂(軟化点:120℃、Tg:65℃、SP値:11.3)
レジン6:クマロンインデン樹脂(軟化点:10℃、Tg:−30℃、SP値:8.8)
【0149】
非イオン界面活性剤1:上記式(1)(a+c:25、b:30)で表される非イオン界面活性剤(HLB:10.9)
非イオン界面活性剤2:上記式(1)(a+c:30、b:35)で表される非イオン界面活性剤(HLB:9.7)
非イオン界面活性剤3:上記式(1)(a+c:10、b:30)で表される非イオン界面活性剤(HLB:8.5)
非イオン界面活性剤4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(EO平均付加モル数:5、PO平均付加モル数:5、エチレンオキシド含有率:43.2%、連鎖エチレンオキシド含量:66.7%、数平均分子量:510、HLB:11.2)
非イオン界面活性剤5:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル(EO平均付加モル数:35、PO平均付加モル数:28、エチレンオキシド含有率:48.2%、連鎖エチレンオキシド含量:79.2%、数平均分子量:3200、HLB:11.5)
【0150】
界面活性剤1:ポリエチレングリコール(エチレンオキシド含有率:100%、連鎖エチレンオキシド含量:100%、数平均分子量:3100、HLB:19.5)
界面活性剤2:ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(三洋化成工業社製「プロファンAB−20」、RCONHCHCHOH(R=ヤシ油脂肪酸)、HLB:10)
【0151】
ワックス:パラフィンワックス(融点:70℃、ノルマルアルカン含有量:85質量%)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
加工助剤1:脂肪酸亜鉛
加工助剤2:オレイン酸アミド
加工助剤3:脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム)と脂肪酸アミドとの混合物
オイル:アロマ系プロセスオイル
老化防止剤1:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
老化防止剤2:ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:細井化学工業(株)製の5%オイル含有粉末硫黄
加硫促進剤1:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン
【0152】
なお、SBR1〜2の分析は、以下の方法で行った。
(構造同定)
SBRの構造同定(スチレン含量、ビニル含量)は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定は、ポリマー0.1gを15mlのトルエンに溶解させ、30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで再沈殿させたものを、減圧乾燥後に測定した。
【0153】
(重量平均分子量Mwの測定)
ポリマーの重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0154】
また、非イオン界面活性剤4〜5、界面活性剤1の分析は、以下の方法で行った。
(数平均分子量Mnの測定)
非イオン界面活性剤、界面活性剤の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0155】
また、上記「エチレンオキシド含有率」は、ポリエーテルに含まれるエチレンオキシドの含有率(%)を表し、下記式で算出した。
エチレンオキシド含有率(%)=全エチレンオキシド質量/ポリエーテル質量×100(%)
また、上記「連鎖エチレンオキシド含量」は、ポリエーテルに含まれる全ポリエチレンオキシドに対する2連鎖以上のポリエチレンオキシドの割合(%)を表し、下記式で算出した。
連鎖エチレンオキシド含量(%)=2連鎖以上のエチレンオキシドの平均質量/全エチレンオキシド質量×100(%)
【0156】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。なお、ゴム試験片評価については、試験用タイヤのトレッド部からゴムを切り出して行った。
【0157】
得られた試験用タイヤを下記により評価した。結果を表2に示す。
【0158】
(初期ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に2周目おける操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、基準比較例を100として指数表示をした(初期ウェットグリップ性能指数)。数値が大きいほど初期ウェットグリップ性能が高いことを示す。表2においては比較例1を基準比較例とした。また、表2においては指数値が106以上の場合に良好であると判断した。
【0159】
(走行中期のウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、ベストラップの操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、基準比較例を100として指数表示をした(中期ウェットグリップ性能指数)。数値が大きいほどウェット路面において、走行中期のウェットグリップ性能の低下が小さく、走行中の安定したウェットグリップ性能が良好に得られることを示す。表2においては比較例1を基準比較例とした。また、表2においては指数値が100以上の場合に良好であると判断した。
【0160】
<耐オゾン性評価>
JIS K 6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、得られた試験用タイヤから所定のサイズの試験片を切り出し作製し、動的オゾン劣化試験を行った。往復運動の周波数0.5±0.025Hz、オゾン濃度50±5pphm、試験温度40℃、引張歪み20±2%の条件下で、48時間試験した後の亀裂(クラックの発生の有無)の状態を観察することで、耐オゾン性を評価した。評価は、基準比較例を100として指数表示をした(耐オゾン性指数)。なお、指数が大きいほど亀裂の数が少なく、亀裂の大きさが小さく、耐オゾン性(オゾンクラック性能)に優れることを示す。表2においては比較例1を基準比較例とした。また、表2においては指数値が100以上の場合に良好であると判断した。
【0161】
<総合性能>
上記で得られた初期ウェットグリップ性能指数、中期ウェットグリップ性能指数、耐オゾン性指数の平均を総合性能として評価した。表2においては総合性能が106以上の場合に良好であると判断した。
【0162】
【表2】
【0163】
表2より、ゴム成分と、ノルマルアルカンを含有するパラフィンワックスと、上記式(1)で表されるプルロニック型非イオン界面活性剤、上記式(2)及び/又は上記式(3)で表される非イオン界面活性剤、並びに、上記ポリエーテル(A)からなる群より選択される少なくとも1種である所定の非イオン界面活性剤と、レジンとを含み、上記ノルマルアルカンの含有量、及び上記非イオン界面活性剤の含有量が所定量であり、上記ノルマルアルカンと上記非イオン界面活性剤との含有比率が所定値であるゴム組成物をトレッドに適用した実施例の空気入りタイヤは、走行初期のウェットグリップ性能(初期ウェットグリップ性能)、走行中の安定したウェットグリップ性能(走行中期のウェットグリップ性能)、及びオゾンクラック性能(耐オゾン性、TGC性能)をバランス良く改善できており、優れた溝底でのオゾンクラック性能(TGC性能)とウェットグリップ性能とを両立することができることが明らかとなった。
【0164】
また、以下に参考として、本発明における所定の非イオン界面活性剤がパラフィンワックスに対して軟化効果を有していることを示す。
【0165】
以下、参考例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ワックス:パラフィンワックス(融点:70℃、ノルマルアルカン含有量:85質量%)
非イオン界面活性剤1:上記式(1)(a+c:25、b:30)で表される非イオン界面活性剤(HLB:10.9)
界面活性剤1:ポリエチレングリコール(エチレンオキシド含有率:100%、連鎖エチレンオキシド含量:100%、数平均分子量:3100、HLB:19.5)
【0166】
(参考例)
表3に示す配合処方にしたがい、所定量の薬品をサンプル管に入れ、90℃で1時間、スターラーで撹拌しながら90℃に加熱し、その後放冷、固化したサンプルを試験片とし、マルタニ試工製の針入度測定器(機種:EX−210E、測定時間:5秒)を用いて、室温(20℃)で押し込み深さを測定した。針入度が大きいほどサンプルが柔らかいことを示しており、針入度が1000μm以上であれば、充分に柔らかいサンプルといえる。結果を表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
表3より、パラフィンワックスだけでは針入度360μmであったのに対して(参考例1)、パラフィンワックスと本発明における所定の非イオン界面活性剤である非イオン界面活性剤1とを混合した場合には(参考例4)、針入度1350μmと針入度が大きくなり、柔らかくなることが分かる。一方、パラフィンワックスと本発明における所定の非イオン界面活性剤ではない界面活性剤1とを混合しても(参考例5)、針入度は800μmであり、参考例4に比べ柔らかさで劣っていた。
これらの結果から、パラフィンワックスは本発明における所定の非イオン界面活性剤と共に被膜を形成すると、柔軟性のある柔らかい膜となることが分かる。そして、このような柔らかい膜がタイヤトレッド表面に形成されると、路面との接地により剥がれ易く、すなわち、初期走行でタイヤトレッド表面のブルーム被膜が容易に剥がれることから、これにより、ゴムの真実接触面積(実際に路面と接触するゴムの面積)が大きくなり、ゴム内部のヒステリシスロスが有効に路面に伝達し、優れた初期ウェットグリップ性能が得られると考えられる。