特許第6863078号(P6863078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863078連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法及び検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863078
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20210412BHJP
   B22D 11/128 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B22D11/16 104S
   B22D11/128 350Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-102781(P2017-102781)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-196893(P2018-196893A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕陽
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊太郎
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−225611(JP,A)
【文献】 特開2000−015409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00〜11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造鋳片の切断位置前に複数対のピンチロールを配置し、対をなすピンチロールの一方を鋳片幅方向のエッジ部に接触しないディスクロールとし、他方を鋳片の全幅に接触する通常ロールとし、前記ディスクロールにより鋳片の中央部を圧下しながら圧下量および/または圧下力を測定し、測定された圧下量と圧下力との関係によりクレータエンド位置を特定することを特徴とする連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法。
【請求項2】
前記ディスクロールの胴長は、以下の式(1)の範囲であるディスクロールを用いることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法。
W−L1>0.2×t (1)
ここでW:鋳造される鋳片の幅(mm)、L1:ディスクロールの胴長(mm)、t:鋳造される鋳片の厚み(mm)であり、かつL1>W/3
【請求項3】
ディスクロールの圧下量をディスクロールを圧下するシリンダーに設けた位置センサにより検出し、および/またはディスクロールの圧下力をシリンダーの圧力センサにより検出することを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法。
【請求項4】
連続鋳造鋳片の切断位置前に下流から順にロール胴長の異なる複数のディスクロールを配置し、鋳造される鋳片の幅に応じて当該複数のディスクロールの中から、1つもしくは複数を用いて圧下することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法。
【請求項5】
前記圧下量と圧下力と鋳片の固相率との関係を予め求めておき、測定された圧下量と圧下力から圧下位置における固相率を求め、クレータエンド位置を特定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法。
【請求項6】
連続鋳造鋳片の切断位置前に、鋳片を圧下可能な複数対のピンチロールが配置され、これらの対をなすピンチロールの一方が鋳片の幅方向のエッジ部に接触しないディスクロールであり、他方が鋳片の全幅に接触する通常ロールであり、前記ディスクロールを圧下するシリンダーには圧下量を検出する位置センサおよび/または圧力センサとが設けられていることを特徴とする連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置。
【請求項7】
前記ディスクロールには、そのロール胴長が、以下の範囲であるディスクロールが用いられていることを特徴とする請求項6に記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置。
W−L1>0.2×t (1)
ここでW:鋳造される鋳片の幅(mm)、L1:ディスクロールの胴長(mm)、t:鋳造される鋳片の厚み(mm)
【請求項8】
前記ディスクロールを圧下するシリンダーには位置センサおよび/または圧力センサは配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置。
【請求項9】
連続鋳造鋳片の切断位置前に、下流から順に、ロール胴長の異なる複数のディスクロールが配置され、当該複数のディスクロールの中から、1つもしくは複数により鋳片を圧下でき、測定された圧下量および/または圧下力からクレータエンド位置を特定することが可能な請求項6乃至8の何れか1項記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置。
【請求項10】
予め求めておいた前記圧下量と圧下力と鋳片の固相率との関係を保管する工程と、当該関係に基づいて測定された圧下量と圧下力から圧下位置における固相率を求める工程と、求めた固相率からクレータエンド位置を特定する工程とを備えることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項記載の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造鋳片が完全凝固するクレータエンド位置を検出するための、連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法及び検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造においては、図1のように鋳造用モールドにより外郭部を凝固させた鋳片を下方に移動させ、多数のガイドロールや多数のピンチロール間を通過させながらスプレー冷却等により更に冷却し、完全凝固させた後に所定長さに切断している。
【0003】
この連続鋳造においては、最後に凝固する鋳片厚中心部にセンターポロシティや中心偏析と呼ばれる欠陥が発生するため、完全凝固前に軽圧下を行なうことによって欠陥を抑制している。この軽圧下を最適位置で行うためには、連続鋳造鋳片が完全凝固するクレータエンド位置を正確に検出することが必要である。しかし鋼組成、鋳造速度、冷却温度、鋳造温度などの様々な要因によってクレータエンド位置は絶えず変動するため、連続鋳造鋳片のクレータエンド位置を正確に検出することは容易ではない。
【0004】
このため特許文献1には、ピンチロールのロールチョックに歪ゲージを貼付してロール負荷を検出し、鋳片の完全凝固の前後におけるロール負荷の変動によりクレータエンド位置を検出する技術が記載されている。
【0005】
しかしこの特許文献1では高温の鋳片と接触するワークロールのロールチョックに歪ゲージを貼付しているため、短期間のうちに歪ゲージが劣化してしまい耐久性に乏しいという問題があった。またロールチョックは剛性が大きくなるように設計されているため、歪量はごく僅かであって検出精度は良好ではない。さらに一対のピンチロールは凝固が進んだ鋳片幅方向のエッジ部をも加圧しているので、鋳片中央部の凝固状態によるロール負荷を精度よく検出することができないという問題があった。
【0006】
また特許文献2には、鋳片を挟んで超音波送信子と超音波受信子とを配置し、鋳片を透過する横波超音波の強度から中心固相率を算出し、クレータエンド位置を検出する技術が記載されている。しかし、クレータエンド位置は絶えず変動しているため、多数の超音波送信子と超音波受信子とを鋳片の移動方向に配置しなければならず、多額のコストがかかるという問題があった。また、検出精度を上げるためには超音波送信子と超音波受信子を高温の鋳片表面に近接配置する必要があり、耐久性に問題があった。
【0007】
また特許文献3には、鋳片を圧下するゾーン内のロール昇降用シリンダの昇降位置と圧力を検出し、これらの検出値からクレータエンド位置を検出する技術が記載されている。しかしロールは鋳片の全幅を圧下するため、凝固が進んだ鋳片幅方向のエッジ部をも加圧することとなり、鋳片中央部の凝固状態によるロール負荷を精度よく検出することができないという特許文献1と同様の問題があった。
【0008】
さらに特許文献4には、ピンチロールを圧下するシリンダのリリーフ圧力、圧力変動、ストローク変位量、変位量変動のうち少なくとも一つからクレータエンド位置を検出する技術が記載されている。しかしこの方法も特許文献1、3と同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−225611号公報
【特許文献2】特開平11−83814号公報
【特許文献3】特開2000−15409号公報
【特許文献4】特開2014−18838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、クレータエンド位置を精度良く検出することができ、しかも耐久性と経済性に優れた連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法及び検出装置を提供し、中心偏析の改善に貢献することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法は、連続鋳造鋳片の切断位置前に複数対のピンチロールを配置し、対をなすピンチロールの一方を鋳片幅方向のエッジ部に接触しないディスクロールとし、他方を鋳片の全幅に接触する通常ロールとし、前記ディスクロールにより鋳片の中央部を圧下しながら圧下量および/または圧下力を測定し、測定された圧下量と圧下力との関係によりクレータエンド位置を特定することを特徴とするものである。
【0012】
なお請求項2のように、ディスクロールのロール胴長を所定の範囲とすることが好ましく、また請求項3のように、ディスクロールの圧下量をディスクロールを圧下するシリンダーに設けた位置センサにより検出し、および/またはディスクロールの圧下力をシリンダーの圧力センサにより検出することが好ましい。また請求項4のように、連続鋳造鋳片の切断位置前に下流から順にロール胴長の異なる複数のディスクロールを配置し、鋳造される鋳片の幅に応じて当該複数のディスクロールの中から、1つもしくは複数を用いて圧下し、測定された圧下量と圧下力との関係によりクレータエンド位置を特定することが好ましく、請求項5のように、前記圧下量と圧下力と鋳片の固相率との関係を予め求めておき、測定された圧下量と圧下力から圧下位置における固相率を求め、クレータエンド位置を特定することが好ましい。
【0013】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出装置は、連続鋳造鋳片の切断位置前に、鋳片を圧下可能な複数対のピンチロールが配置され、これらの対をなすピンチロールの一方が鋳片幅方向のエッジ部に接触しないディスクロールであり、他方が鋳片の全幅に接触する通常ロールであり、前記ディスクロールを圧下するシリンダーには圧下量を検出する位置センサおよび/または圧力センサとが設けられていることを特徴とするものである。なお請求項7のように、ディスクロールのロール胴長は所定の範囲であることが好ましく、また請求項8のように、前記ディスクロールを圧下するシリンダーには位置センサおよび/または圧力センサは配置されていることが好ましい。また請求項9のように、連続鋳造鋳片の切断位置前に、下流から順に、ロール胴長の異なる複数のディスクロールが配置され、当該複数のディスクロールの中から、1つもしくは複数により鋳片を圧下でき、測定された圧下量および/または圧下力からクレータエンド位置を特定することが可能であることが好ましく、請求項10のように、予め求めておいた前記圧下量と圧下力と鋳片の固相率との関係を保管する工程と、当該関係に基づいて測定された圧下量と圧下力から圧下位置における固相率を求める工程と、求めた固相率からクレータエンド位置を特定する工程とを備えテイルことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連続鋳造鋳片のクレータエンド位置検出方法によれば、鋳片幅方向のエッジ部に接触しないディスクロールにより鋳片の中央部を圧下しながら圧下量と圧下力を測定し、測定された圧下量と圧下力との関係によりクレータエンド位置を特定するので、凝固した鋳片幅方向のエッジ部の影響を除外して鋳片中央部の凝固状態を精度よく検知することができる。
【0015】
また、圧下量および/または圧下力の測定はディスクロールを圧下するシリンダーに設けた位置センサや圧力センサにより行なうことができるので、高温の鋳片からの輻射熱による劣化がなく、長い使用寿命を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】連続鋳造設備の全体説明図である。
図2】ロールセグメントの縦断面図である。
図3】圧下量と圧下力と鋳片の固相率との関係を示すグラフである。
図4】連続鋳造鋳片の切断位置前の複数のディスクロール配置の例を示す説明図である。
図5】本発明による偏析指数の低減効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は連続鋳造設備の全体説明図であり、1は水冷構造の鋳造用モールド、2はタンディッシュ、3は浸漬ノズルである。溶鋼はタンディッシュ2から浸漬ノズル3を介して鋳造用モールド1の内部に注湯され、外郭部から凝固が開始する。鋳片は鋳造用モールド1の下方に配置された対をなす多数のガイドロール4を通過する間にスプレー冷却等により冷却されて凝固が進行して行く。連続鋳造鋳片の切断位置前、即ち凝固の完了位置付近には複数対のピンチロール5を備えたロールセグメント6が配置されており、鋳片が完全凝固する前に軽圧下を行なっている。鋳片の完全凝固位置(クレータエンド位置)はほぼ一定になるように冷却制御が行われているが、前記したようにクレータエンド位置は様々な要因によって絶えず変動しているために、その位置を精度よく検出することが望まれる。
【0018】
図2はピンチロール5を備えたロールセグメント6の縦断面図である。図2に示すように、ロールセグメント6は鋳片を挟むように上下に配置された複数対のピンチロール5を備えている。ピンチロール5は、鋳片幅方向のエッジ部に接触しないディスクロール5aと、鋳片の全幅に接触する通常ロール5bの対で構成されている。すなわちディスクロール5aの大径部の長さは鋳片の幅よりも短く、凝固が完了している鋳片幅方向のエッジ部には接触しないように構成されている。このため、ディスクロール5aによって鋳片に加えられる圧下力は鋳片の両端部には作用せず、中央部分のみを圧下することとなる。
【0019】
通常ロール5bは下フレーム7により回転自在に支持され、上側のディスクロール5aは上フレーム8により回転自在に支持されている。下フレーム7は左右一対のシリンダー9を備え、また上フレーム8は左右一対のシリンダー10を備えている。両フレームはこれらのシリンダー9、10により鋳片を軽圧下する。シリンダー9、10は好ましくは油圧シリンダーである。なお下フレーム7はベースに固定された固定フレームとすることも可能である。
【0020】
これらのシリンダー9、10のうち、少なくともディスクロール5aを圧下するシリンダー10には、圧下量を検出する位置センサ11および/または圧力センサ12とが設けられている。この実施形態では位置センサ11はインロッドセンサと呼ばれるもので、シリンダロッドに一定ピッチで磁性体と非磁性体を交互に取付け、シリンダロッドの動きを内蔵させた高周波コイルによって検出するセンサである。
【0021】
このインロッドセンサはシリンダロッドの動きを精度よく検出することができるので、圧下量を検出するに適したものである。しかし圧下量を検出する位置センサ11はこれに限定されるものではなく、その他の変位センサを用いても差し支えない。また位置センサ11は通常ロール5bのシリンダー9にも設けることができ、図2に示す実施形態では上下のシリンダー9、10をインロッドセンサ内蔵型とした。なおインロッドセンサは市販品を利用することができる。
【0022】
圧力センサ12はシリンダー10の作動流体の圧力から圧下力を検出するもので、既存の各種の圧力センサを用いることができる。この圧力センサ12はシリンダー10に直接取り付ける必要はなく、作動流体の供給径路に取付けることもできる。これらの位置センサ11や圧力センサ12は高温の鋳片からの輻射熱を受けない場所にあるため、熱による劣化のおそれがなく、耐久性に優れる。また超音波センサよりも測定精度が高く、かつ安価である。
【0023】
上記した構造は鋳片の移動方向に配置されている各ピンチロール5に組み込み、鋳片の移動方向における圧下量や圧下圧の変化から、クレータエンド位置を精度よく検出することが可能となる。以下にその詳細を説明する。
【0024】
図3は横軸を圧下量(mm)、縦軸を圧下力(MPa)としたグラフである。鋳片内部が完全凝固すると、圧下力を大きくしても鋳片の圧下量は小さくなる。逆に鋳片内部が未凝固である場合には、圧下力を大きくすると鋳片の内部流動が生じるため鋳片の圧下量も大きくなる。図3のグラフ中には、fs(固相率)が1.0、0.8、0.3の各場合における圧下量と圧下圧との関係を示す線を示した。
【0025】
ここでfs=1.0の線は、前段のセグメントに設置した歪みゲージ方式のクレータエンド検出法により特定した。またfs=0.8の線は、鋳片圧下時の組織観察結果より、鋳片内部の流動発生の有無から特定した。またfs=0.3の線は、鋳片圧下時の組織観察結果より、負偏析の発生有無により特定した。
【0026】
fs=1.0の線よりも左側は完全固相領域である。fs=1.0の線とfs=0.8の線との間は高固相率の領域である。fs=0.8の線とfs=0.3の線との間は低固相率の領域であり、さらにその右側は未凝固の領域である。
【0027】
この図3に示すように、圧下量および/または圧下力と鋳片の固相率との関係を予め求めておけば、本発明の検出装置により測定された圧下量と圧下力から、検出位置における固相率を求めることができる。またこのような圧下量と圧下力の測定は、鋳片の長手方向に一定ピッチで配置された複数対のピンチロール5においてそれぞれ行われるから、鋳片の長手方向の各位置において検出された固相率の変化から、クレータエンド位置を正確に特定することができる。特に本発明においては、ピンチロール5bは鋳片の幅方向の中央部分のみを圧下することとなるので、完全凝固した鋳片幅方向のエッジ部の影響を受けることなく、中央部の凝固状態を正確に検出することができる。
【0028】
ディスクロール5aの胴長L1は、下記式(1)で規定される範囲の長さであることが好ましい。
W−L1>0.2×t (1)
ここでW:鋳造される鋳片の幅(mm)、L1:ディスクロールの胴長(mm)、t:鋳造される鋳片の厚み(mm)
式(1)を規定した理由は、鋳片幅方向両端部から鋳片の厚みの1割程度ずつ内側であれば、先に冷却し、硬くなった鋳片幅方向のエッジ部の影響を受けにくくなるからである。尚、ディスクロール5aの胴長L1は、鋳片の搬送の安定化から、少なくとも鋳片の幅Wの1/3超は必要である。
【0029】
尚、鋳造される鋳片は、その幅が同一とは限らず、幅狭、幅広、複数の幅が存在する。このため、前記ディスクロール5aの胴長が、特定幅のみを考慮し、可変でない場合、鋳片の幅がそれより狭い場合、あるいは逆に広い場合、適正な圧下が出来なくなり、凝固状態を正確に検出することが困難となる。また鋳片の幅に合わせてディスクロールを交換しようとすると鋳造休止が頻繁に発生、生産性が著しく低下する虞がある。
【0030】
さらに本発明によるクレータエンド検出装置を一つだけ設置した場合、必ずしも凝固上適正な位置に配置できるとは限らず、圧下が凝固未完状態で通過してしまったり、凝固済み状態を圧下してしまうと、やはり凝固状態を正確に検出することが難しくなる。
【0031】
このため、連続鋳造鋳片の切断位置前に下流から順にロール胴長の異なる複数のディスクロールを配置し、鋳造される鋳片の幅に応じて当該複数のディスクロールの中から、1つもしくは複数を用いて圧下し、測定された圧下量と圧下力との関係によりクレータエンド位置を特定することが好ましい。
【0032】
図4は連続鋳造鋳片の切断位置前の複数のディスクロール配置の例である。図4(a)では、上流から下流に向けて、徐々にディスクロール5aのロール胴長を短くして配置している。図4(a)ならば、鋳造される鋳片の幅に合わせて適切なディスクロールを選択して使用でき、好ましい。
【0033】
また図4(b)のように、上流から下流に向けて、徐々にディスクロール5aのロール胴長を短くすべく、順序よく配置しなくても、それらの配置を工夫すれば、図4(a)と同様な効果をえられるだけでなく、あるロール胴長のディスクロールと、その下流でその次に短いロール胴長のディスクロールを組み合わせ、それぞれで圧下力、圧下量の変化を測定すれば、より確実にクレータエンドの検出が可能となる。尚、上流から下流に向けて、徐々にディスクロールのロール胴長を短くした配置のグループを複数配列しても、同様な効果を上げることが可能である。
【0034】
さらに図4(c)のように、同じロール胴長のディスクロールを、上流から下流に向けて複数配置し、それぞれで圧下力、圧下量の変化を測定すれば、図4(b)と同様に、より確実にクレータエンドの検出が可能となる。
【0035】
このように、本発明のクレータエンド位置検出技術によれば、変動するクレータエンド位置をオンラインで特定することができるので、鋳片が完全凝固する直前位置で鋳片を軽圧下してセンターポロシティや中心偏析と呼ばれる欠陥を減少させることができる。そのため、本発明を適用した連続鋳造設備においては、図5に示すように、偏析指数が15%も改善され、中心偏析の改善に貢献することができた。
【符号の説明】
【0036】
1 鋳造用モールド
2 タンディッシュ
3 浸漬ノズル
4 ガイドロール
5 ピンチロール
5a ディスクロール
5b 通常ロール
6 ロールセグメント
7 下フレーム
8 上フレーム
9 シリンダ
10 シリンダ
11 位置センサ
12 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5