特許第6863102号(P6863102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863102ガスセンサ、ガス警報器、制御装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863102
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ガスセンサ、ガス警報器、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20210412BHJP
   G08B 21/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01N27/12 D
   G08B21/16
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-112700(P2017-112700)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-205210(P2018-205210A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】古田 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】岡村 誠
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−134311(JP,A)
【文献】 特開平07−209234(JP,A)
【文献】 特開2012−167954(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0216227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G08B 19/00−21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス感知層と前記ガス感知層を加熱するためのヒータとを有し、前記ヒータにより加熱された前記ガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出するガスセンサであって、
前記ガス感知層の抵抗値を測定する測定部と、
前記ガス感知層を加熱するように前記ヒータを制御する加熱制御部と、
前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が第1温度に制御された状態で前記測定部によって測定された前記ガス感知層の第1抵抗値を取得する第1取得部と、
前記第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が前記第1温度より低い第2温度に制御された状態で前記測定部によって測定された前記ガス感知層の第2抵抗値を取得する第2取得部と、
前記第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が前記第2温度より高い第3温度に制御された状態で前記測定部によって測定された前記ガス感知層の第3抵抗値を取得する第3取得部と、
前記第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する判別部と、
を備える
ガスセンサ。
【請求項2】
前記判別部は、前記第3抵抗値と、予め定められた第3閾値とを比較する比較部を備えており、
前記判別部は、前記第3抵抗値と前記第3閾値との比較結果に基づいて、存在するガス種を判別する
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検出対象ガスは、LPガスであり、
前記判別部は、前記第3抵抗値が前記第3閾値以上である場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、前記第3抵抗値が前記第3閾値より小さい場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記検出対象ガスは、メタンガスであり、
前記判別部は、前記第3抵抗値が前記第3閾値以下である場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、前記第3抵抗値が前記第3閾値より大きい場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記検出対象ガス以外のガスは、アルコールを含む
請求項3または4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記判別部は、前記第3抵抗値の時間変化率を算出する変化率算出部を備えており、
前記判別部は、前記第3抵抗値の時間変化率によって、存在するガス種を判別する
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記検出対象ガスは、LPガスであり、
前記判別部は、前記第3抵抗値の前記時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上である場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、前記第3抵抗値の前記時間変化率が前記変化率閾値より小さい場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項6に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記検出対象ガスは、メタンガスであり、
前記判別部は、前記第3抵抗値の前記時間変化率が、予め定められた変化率閾値以下である場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、前記第3抵抗値の前記時間変化率が前記変化率閾値より大きい場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項6に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記判別部は、前記第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出するタイミング検出部を備えており、
前記判別部は、前記第3抵抗値が上がり始めるタイミングによって、存在するガス種を判別する
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記検出対象ガスは、LPガスであり、
前記判別部は、予め定められた時間内に、前記第3抵抗値が上がり始めた場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、予め定められた前記時間が経過しても前記第3抵抗値が停滞または低下している場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記検出対象ガスは、メタンガスであり、
前記判別部は、予め定められた時間が経過しても前記第3抵抗値が停滞または低下している場合には、前記検出対象ガスが存在すると判別する一方、予め定められた前記時間内に、前記第3抵抗値が上がり始めた場合には、前記検出対象ガス以外のガスが存在すると判別する
請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記加熱制御部は、前記第2抵抗値に応じて前記第3温度を変更する
請求項1から11の何れか1項に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記第3取得部は、前記第2抵抗値に応じて前記第3抵抗値を取得するタイミングを変更する
請求項1から11の何れか1項に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記判別部は、前記第2抵抗値に応じて前記第3閾値を変更する
請求項2から5の何れか1項に記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記加熱制御部は、前記検出対象ガスの種類に応じて前記第2温度および/または前記第3温度を変更する
請求項1から14の何れか1項に記載のガスセンサ。
【請求項16】
前記第3温度は、前記第1温度より高い
請求項1から15の何れか1項に記載のガスセンサ。
【請求項17】
請求項1から16の何れか1項に記載のガスセンサを備え、
前記検出対象ガスを検出したときに警報を発生する警報発生部をさらに備える
ガス警報器。
【請求項18】
ガス感知層と前記ガス感知層を加熱するためのヒータとを有し、前記ヒータにより加熱された前記ガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出するガスセンサを制御する制御装置であって、
前記ガス感知層を加熱するように前記ヒータを制御する加熱制御部と、
前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が第1温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第1抵抗値を取得する第1取得部と、
前記第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が前記第1温度より低い第2温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第2抵抗値を取得する第2取得部と、
前記第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、前記加熱制御部によって前記ガス感知層の温度が前記第2温度より高い第3温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第3抵抗値を取得する第3取得部と、
前記第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する判別部と、を備える
制御装置。
【請求項19】
ガス感知層と前記ガス感知層を加熱するためのヒータとを有し、前記ヒータにより加熱された前記ガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出するガスセンサの制御方法であって、
前記ガス感知層の温度を第1温度に制御する第1温度制御段階と、
前記ガス感知層の温度が前記第1温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第1抵抗値を取得する第1取得段階と、
前記第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、前記ガス感知層の温度を前記第1温度より低い第2温度に制御する第2温度制御段階と、
前記ガス感知層の温度が前記第2温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第2抵抗値を取得する第2取得段階と、
前記第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、前記ガス感知層の温度を前記第2温度より高い第3温度に制御する第3温度制御段階と、
前記ガス感知層の温度が前記第3温度に制御された状態で測定された前記ガス感知層の第3抵抗値を取得する第3取得段階と、
第3取得段階において取得された第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する判別段階と、を備える
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ、ガス警報器、制御装置、及び制御方法に関する。
【0002】
従来、予備検知と、予備検知の結果に応じた本検知とを実行するガス検出方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において予備検知と本検知とは異なる温度で実行される。また、関連する技術として、ガスセンサを少なくとも3つの異なる温度に制御して、異なる温度においてガス検知を実行することによって、3種類以上のガスの検知を可能とする技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2010−54213号公報
[特許文献2] 特開2005−134311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガスセンサにおいては、検出対象ガスが存在しないにもかかわらず、検出対象ガス以外のアルコール等の物質に反応して、検出対象ガスが存在すると判別することを防止することが望ましい。したがって、ガスセンサにおいて、アルコール等の物質に対する検出対象ガスの選択性を高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、ガスセンサを提供する。ガスセンサは、ガス感知層とガス感知層を加熱するためのヒータとを有してよい。ガスセンサは、ヒータにより加熱されたガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出してよい。ガスセンサは、測定部、加熱制御部、第1取得部、第2取得部、第3取得部、及び判別部を備えてよい。測定部は、ガス感知層の抵抗値を測定してよい。加熱制御部は、ガス感知層を加熱するようにヒータを制御してよい。第1取得部は、ガス感知層の第1抵抗値を取得してよい。第1抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第1温度に制御された状態で測定部によって測定されてよい。第2取得部は、第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、ガス感知層の第2抵抗値を取得してよい。第2抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第1温度より低い第2温度に制御された状態で測定部によって測定されてよい。第3取得部は、第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、ガス感知層の第3抵抗値を取得してよい。第3抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第2温度より高い第3温度に制御された状態で測定部によって測定されてよい。判別部は、第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別してよい。
【0005】
判別部は、比較部を備えてよい。比較部は、第3抵抗値と、予め定められた第3閾値とを比較してよい。判別部は、第3抵抗値と第3閾値との比較結果に基づいて、存在するガス種を判別してよい。
【0006】
検出対象ガスは、LPガスであってよい。判別部は、第3抵抗値が第3閾値以上である場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。判別部は、第3抵抗値が第3閾値より小さい場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0007】
検出対象ガスは、メタンガスであってよい。判別部は、第3抵抗値が第3閾値以下である場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。判別部は、第3抵抗値が第3閾値より大きい場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0008】
検出対象ガス以外のガスは、アルコールを含んでよい。
【0009】
判別部は、変化率算出部を備えてよい。変化率算出部は、第3抵抗値の時間変化率を算出してよい。判別部は、第3抵抗値の時間変化率によって、存在するガス種を判別してよい。
【0010】
検出対象ガスは、LPガスであってよい。判別部は、第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上である場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。判別部は、第3抵抗値の時間変化率が変化率閾値より小さい場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0011】
検出対象ガスは、メタンガスであってよい。判別部は、第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値以下である場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。検出対象ガスは、第3抵抗値の時間変化率が変化率閾値より大きい場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0012】
判別部は、タイミング検出部を備えてよい。タイミング検出部は、第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出してよい。判別部は、第3抵抗値が上がり始めるタイミングによって、存在するガス種を判別してよい。
【0013】
検出対象ガスは、LPガスであってよい。判別部は、予め定められた時間内に、第3抵抗値が上がり始めた場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。判別部は、予め定められた時間が経過しても第3抵抗値が停滞または低下している場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0014】
検出対象ガスは、メタンガスであってよい。判別部は、予め定められた時間が経過しても第3抵抗値が停滞または低下している場合には、検出対象ガスが存在すると判別してよい。判別部は、予め定められた時間内に、第3抵抗値が上がり始めた場合には、検出対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。
【0015】
加熱制御部は、第2抵抗値に応じて第3温度を変更してよい。
【0016】
第3取得部は、第2抵抗値に応じて第3抵抗値を取得するタイミングを変更してよい。判別部は、第2抵抗値に応じて第3閾値を変更してよい。
【0017】
加熱制御部は、検出対象ガスの種類に応じて第2温度を変更してよい。
【0018】
加熱制御部は、検出対象ガスの種類に応じて第3温度を変更してよい。
【0019】
第3温度は、第1温度より高くてよい。ガス警報器は、ガスセンサを備えてよい。ガス警報器は、警報発生部を備えてよい。警報発生部は、検出対象ガスを検出したときに警報を発生してよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、制御装置を提供する。制御装置は、ガスセンサを制御してよい。ガスセンサは、ガス感知層とガス感知層を加熱するためのヒータとを有してよい。ガスセンサは、ヒータにより加熱されたガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出してよい。制御装置は、加熱制御部、第1取得部、第2取得部、第3取得部、及び判別部を備えてよい。加熱制御部は、ガス感知層を加熱するようにヒータを制御してよい。第1取得部は、ガス感知層の第1抵抗値を取得してよい。第1抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第1温度に制御された状態で測定されてよい。第2取得部は、第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、ガス感知層の第2抵抗値を取得してよい。第2抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第1温度より低い第2温度に制御された状態で測定されてよい。第3取得部は、第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、ガス感知層の第3抵抗値を取得してよい。第3抵抗値は、加熱制御部によってガス感知層の温度が第2温度より高い第3温度に制御された状態で測定されてよい。判別部は、第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別してよい。
【0021】
本発明の第3の態様においては、制御方法を提供する。制御方法は、ガスセンサの制御方法であってよい。ガスセンサは、ガス感知層とガス感知層を加熱するためのヒータとを有してよい。ガスセンサは、ヒータにより加熱されたガス感知層の抵抗値に基づいて検出対象ガスを検出してよい。制御方法は、第1温度制御段階、第1取得段階、第2温度制御段階、第2取得段階、第3温度制御段階、第3取得段階、及び判別段階を備えてよい。第1温度制御段階においては、ガス感知層の温度が第1温度に制御されてよい。第1取得段階においては、ガス感知層の第1抵抗値が取得されてよい。第1抵抗値は、ガス感知層の温度が第1温度に制御された状態で測定されてよい。第2温度制御段階においては、第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、ガス感知層の温度が第1温度より低い第2温度に制御されてよい。第2取得段階において、ガス感知層の第2抵抗値が取得されてよい。第2抵抗値は、ガス感知層の温度が第2温度に制御された状態で測定されてよい。第3温度制御段階においては、第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、ガス感知層の温度が第2温度より高い第3温度に制御されてよい。第3取得段階において、ガス感知層の第3抵抗値が取得されてよい。第3抵抗値は、ガス感知層の温度が第3温度に制御された状態で測定されてよい。判別段階においては、第3取得段階において取得された第3抵抗値に基づいて、存在するガス種が判別されてよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。
図2】検出部10の概略構成を示す断面図である。
図3】第1抵抗値が第1閾値より大きい場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。
図4】第2抵抗値が第2閾値より大きい場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。
図5】第2抵抗値が第2閾値以下の場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。
図6】第2抵抗値が第2閾値以下の場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。
図7】ヒータ14をHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層12の抵抗変化の一例を示す図である。
図8】ヒータ14をLow状態に駆動した場合におけるガス感知層12の抵抗変化の一例を示す図である。
図9】ヒータ14を200m秒間にわたってHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層12の抵抗変化の一例である。
図10】本発明の第1実施形態のガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。
図11】検出対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。
図12】検出対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示す図である。
図13】LPガスに対するガス感度とメタンガスに対するガス感度を示す図である。
図14】ガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。
図15】ガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。
図16】本発明の第2実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。
図17】ヒータ14をHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層12の抵抗における時間変化率の一例を示す図である。
図18】検出対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。
図19】検出対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。
図20】本発明の第3実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。
図21】検出対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。
図22】検出対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。本例のガスセンサ100は、検出対象ガスを検出する。検出対象ガス(「対象ガス」と略記する)は、可燃性ガスであってよい。対象ガスは、プロパン及びブタンを主成分とするLPガスであってよい。あるいは、対象ガスは、メタンガスを主成分とする都市ガスであってもよい。
【0026】
本例のガスセンサ100は、第1温度T1における検知と、第1温度T1より低い第2温度T2における検知とを実行するのみならず、第2温度T2における検知結果に応じて、さらに、第2温度T2より高い第3温度T3にヒータ14を駆動する。すなわち、本例のガスセンサ100は、検知結果に応じて、ヒータ14を第1温度T1(High)、第2温度T2(Low)、第3温度T3(High)の順に駆動してよい。これによって、対象ガスとアルコール等のガスとが区別される。
【0027】
ガスセンサ100は、検出部10と制御装置200とを備える。検出部10は、ガス感知層12及びヒータ14を備える。本例の検出部10は、ヒータ14の温度を測定する温度測定部16を備える。本例と異なり、検出部10は、温度測定部16を備えていなくてもよい。ガス感知層12は、ガスによって抵抗値が変化するセンサ抵抗である。ヒータ14は、ガス感知層12を加熱する。ガスセンサ100は、ヒータ14により加熱されたガス感知層12の抵抗値に基づいて対象ガスを検出する。
【0028】
制御装置200は、ガスセンサ100を制御する。本例では、検出部10及び制御装置200が共にガスセンサ100に内蔵されている。但し、制御装置200は、ガスセンサ100に外付けされる制御装置であってもよい。制御装置200は、測定部20、加熱制御部30、警報発生部40、第1取得部50、第2取得部60、第3取得部70、判別部80、及び記憶部90を備えてよい。但し、警報発生部40は、制御装置200には、必ずしも必須の構成ではない。ガスセンサ100がガス警報器である場合には、警報発生部40を備えてよい。
【0029】
加熱制御部30、警報発生部40、第1取得部50、第2取得部60、第3取得部70、及び判別部80の少なくとも一部は、マイクロコンピュータの機能として実現されてよい。測定部20は、ガス感知層12の電気抵抗値を測定する。例えば、測定部20は、ガス感知層12に電流を流してガス感知層12の両端の電圧を測定する。ガス感知層12の抵抗値を測定することには、ガス感知層12の抵抗値に対応づけられた電圧または電流などの電気的特性を測定することが含まれてよい。測定された抵抗値を取得することには、抵抗値に対応づけられた電圧または電流などの電気的特性を取得することが含まれてよい。抵抗値を閾値と比較することには、抵抗値に対応づけられた電圧または電流を閾値と比較することが含まれてよい。一例において、ガス感知層12の抵抗値が閾値より大きいことには、ガス感知層12の両端の電圧が閾値より大きいことが含まれてよく、ガス感知層12を流れる電流が閾値より小さいことが含まれてよい。ガス感知層12の抵抗値が閾値より小さいことには、ガス感知層12の両端の電圧が閾値より小さいことが含まれてよく、ガス感知層12を流れる電流が閾値より大きいことが含まれてよい。
【0030】
加熱制御部30は、ヒータ14に印加する電圧を制御する。特に、加熱制御部30は、第1検知処理において、ガス感知層12の温度が第1温度T1になるようにヒータ14を制御する。第1検知処理において、対象ガスが存在する可能性がある場合に、加熱制御部30は、第2検知処理において、ガス感知層12の温度が第1温度T1より低い第2温度T2となるようにヒータ14を制御する。さらに、第2検知処理の結果、対象ガスが存在する可能性がある場合に、加熱制御部30は、アルコール等のガスに対する対象ガスの選択性を高めるために、ガス感知層12の温度が第2温度T2より高い第3温度T3となるようにヒータ14を制御する。
【0031】
警報発生部40は、対象ガスが検出された場合に警報を発する。第1取得部50は、ガス感知層12の第1抵抗値を取得する。第2取得部60は、ガス感知層12の第2抵抗値を取得する。第3取得部70は、ガス感知層12の第3抵抗値を取得する。
【0032】
第1抵抗値は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第1温度T1に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層12の電気抵抗値である。第2抵抗値は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第1温度T1より低い第2温度T2に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層の電気抵抗値である。第3抵抗値は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第2温度T2より高い第3温度T3に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層の電気抵抗値である。
【0033】
第1温度T1及び第3温度T3は、第2温度T2に比べて高い温度である。加熱制御部30は、ヒータ14をHigh状態に駆動して、ガス感知層12の温度が第1温度T1または第3温度T3となるように制御する。第1温度T1及び第3温度T3は、好ましくは、400℃以上500℃以下であってよく、より好ましくは、400℃以上450℃以下であってよい。一方、第2温度T2は、第1温度T1及び第3温度T3に比べて低い温度である。加熱制御部30は、ヒータ14をLow状態に駆動して、ガス感知層12の温度が第2温度T2となるように制御する。第2温度T2は、好ましくは、250℃以上350℃以下であってよい。
【0034】
判別部80は、第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する。本例における判別部80は、比較部82を備える。比較部82は、第3抵抗値と、予め定められた第3閾値とを比較する。判別部80は、第3抵抗値と第3閾値との比較結果に基づいて、存在するガス種を判別する。記憶部90は、加熱制御部30がヒータ14を制御するために必要な情報またはパラメータを記憶してよい。
【0035】
図2は、検出部10の概略構成を示す断面図である。本例の検出部10は、半導体式薄膜ガスセンサである。本例の検出部10は、シリコン基板2と、熱絶縁支持層3と、ヒータ14として機能するヒータ層と、電気絶縁層4と、ガス検知部5とを備える。シリコン基板2には、貫通孔6が設けられている。貫通孔6は、ダイアフラム構造を構成する。ガス検知部5は、接合層7と、ガス感知層電極8と、ガス感知層12と、選択燃焼層9とを備えている。ガス感知層12は、例えば、SnO、In、WO、ZnO、及びTiO等の金属酸化物を主成分とする感知層として形成される。
【0036】
選択燃焼層9は、例えば、Pd、PdO、及びPt等の少なくとも一種の触媒を担持した焼結体である。選択燃焼層9は、触媒層とも呼ばれる。一例において、選択燃焼層9は、触媒担持Al焼結体であり、Cr、Fe、Ni、ZrO、SiO、ゼオライト等の金属酸化物を主成分として形成されてもよい。シリコン基板2はシリコンウェハーから構成される。ヒータ14はガス検知部5を加熱する。検出部10は、ヒータ14によって、ガス感知層12を加熱したときのガス感知層12の抵抗値によって対象ガスを検出する。
【0037】
次に、加熱制御部30によるヒータ14の駆動について説明する。図3は、第1抵抗値が第1閾値より大きい場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。加熱制御部30は、ヒータ14を間欠駆動する。加熱制御部30は、ヒータ14に対してヒータ駆動電圧としてパルス状の電圧を周期的に印加する。加熱制御部30は、30秒以上60秒以下の周期Pでパルス状の電圧をヒータ14に印加してよい。
【0038】
加熱制御部30は、ガス感知層12の温度を第1温度T1(High)に制御する。ガス感知層12の温度を第1温度T1とするためにヒータ14に印加すべき電圧が予め設定されていてよい。加熱制御部30は、予め設定された電圧をヒータ14に印加してよい。加熱制御部30は、予め定められた加熱時間にわたって、ガス感知層12の温度を第1温度T1に保持してよい。一例において、第1検知処理における加熱時間は、30m秒から100m秒であり、より好ましくは、40m秒以上90m秒であってよい。
【0039】
第1取得部50は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第1温度T1に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層12の第1抵抗値を取得する。加熱開始されてから、例えば100m秒が経過するまでの何れかの時点で、ガス感知層12の抵抗値が取得される。特に、第1温度T1に加熱開始後40m秒以上90m秒経過した時点で第1抵抗値が取得されてよい。
【0040】
一例において、測定部20がガス感知層12の電気抵抗値を定常的に測定する。第1取得部50が、ガス感知層12の温度が第1温度T1に制御された状態となるタイミングで、測定部20による測定結果をサンプリング及びAD変換(アナログ−デジタル変換)することで、第1抵抗値を取得してよい。第2取得部60も、同様の構成であってよい。
【0041】
加熱制御部30は、第1判断を実行する。第1判断は、第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下であるかについての判断である。但し、第1判断は、加熱制御部30以外の制御部が実行してもよい。第1抵抗値が第1閾値より大きい場合には、対象ガスが検出されなかったとして、加熱制御部30は、図3に示されるとおり、ヒータ14への通電を停止する。したがって、加熱時間を短縮化することができ、省電力を実現することができる。
【0042】
図4は、第2抵抗値が第2閾値より大きい場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。第1抵抗値が第1閾値以下の場合には、加熱制御部30は、図4に示されるとおり、ガス感知層12の温度を第1温度T1より低い第2温度T2(Low)に制御する。加熱制御部30は、予め定められた加熱時間にわたって、ガス感知層12の温度を第2温度T2に保持してよい。一例において、第2検知処理における加熱時間は、160m秒以上200m秒以下であってよい。
【0043】
第2取得部60は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第2温度T2に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層12の第2抵抗値を取得する。加熱開始されてから、例えば200m秒までの何れかの時点で、ガス感知層12の抵抗値が取得される。特に、第2温度T2に加熱開始後160m秒以上200m秒経過した時点で第2抵抗値が取得されてよい。
【0044】
加熱制御部30は、第2判断を実行する。第2判断は、第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下であるかについての判断である。但し、第2判断は、加熱制御部30以外の制御部が実行してもよい。第2抵抗値が第2閾値より大きい場合には、対象ガスが検出されなかったとして、加熱制御部30は、図4に示されるとおり、ヒータ14への通電を停止する。したがって、加熱時間が短くなり、省電力を実現することができる。
【0045】
図5は、第2抵抗値が第2閾値以下の場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。一般的なHigh状態での予備検知とLow状態での本検知の制御の場合は、第2抵抗値が第2閾値以下であれば、対象ガスが検出されたと判断される。一方、本例のガスセンサ100は、この場合と異なり、対象ガス以外のアルコール等との選択性を向上するための制御を更に実行する。具体的には、加熱制御部30は、第2抵抗値が第2閾値以下の場合には、図5に示されるとおり、ガス感知層12の温度を第2温度T2より高い第3温度T3(High)に制御する。
【0046】
加熱制御部30は、予め定められた加熱時間にわたって、ガス感知層12の温度を第3温度T3に保持してよい。例えば、加熱時間は、160m秒以上200m秒である。第3取得部70は、加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第3温度T3に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層12の第3抵抗値を取得する。ヒータ14が、再度のHigh状態に駆動開始されて加熱開始されてから、例えば200m秒までの何れかの時点で、ガス感知層12の第3抵抗値が取得される。特に、第3温度T3に加熱開始後160m秒以上200m秒経過した時点で第3抵抗値が取得されてよい。
【0047】
判別部80は、第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する。本例における判別部80は、比較部82を備える。比較部82は、第3抵抗値と、予め定められた第3閾値とを比較する。判別部80は、第3抵抗値と第3閾値との比較結果に基づいて、存在するガス種を判別する。
【0048】
図5に示される例では、第1温度T1と第3温度T3は同じである。但し、本例のガスセンサ100は、この場合に限られない。図6は、第2抵抗値が第2閾値以下の場合のヒータ駆動パターンの一例を示す図である。図6に示されるとおり、第3温度T3は、第1温度T1より高くてよい。第3温度T3を第1温度T1より高くすることによって、対象ガスとアルコールとの選択性を更に高めることができる。
【0049】
本例のガスセンサ100は、第1抵抗値及び第2抵抗値の値に応じて、図3図4、及び図5に示されるようにヒータ駆動パターンを切り替える。したがって、常に、第1温度T1、第2温度T2、及び第3温度T3という温度に制御する場合に比べて、全体の加熱時間を短くすることができる。
【0050】
図7は、ヒータ14をHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層の抵抗変化の一例を示す図である。図7は、ガス感知層12の温度を第1温度T1に保持した場合の測定結果を示している。具体的には、図7は、ガス感知層12の温度を430℃とした場合の測定結果を示す。図7には、ガスセンサ100の検出部10が置かれている雰囲気が、大気(Airと表示)、LPガス(LPと表示。イソブタン等)、水素ガス(H2と表示)、エタノール(ETOHと表示)、及びメタンガス(CH4と表示)の場合が示されている。
【0051】
図7に示されるとおり、大気中の場合と比べて、大気以外の何れかのガスが存在する場合には、ガス感知層12の抵抗値が低くなる。大気中では、加熱開始後40m秒程度経過した時点でガス感知層12の抵抗値が安定する。一方、LPガス中及び水素ガス中では、ガス感知層12の抵抗値が大気中の場合と比べて大きく減少した後、40m秒あたりで上昇をはじめて徐々に大気中におけるガス感知層12の抵抗値に近づいていく。エタノール等のアルコール中ではガス感知層12の抵抗値が徐々に減少する。メタンガス中の場合もガス感知層12の抵抗値が徐々に減少する。
【0052】
したがって、例えば、加熱開始してから30m秒から100m秒の時間範囲においては、大気中におけるガス感知層12の抵抗値と、各ガス中におけるガス感知層12の抵抗値との間に差がある。それゆえ、ガス感知層12の抵抗値に基づいて、ガスの存在の有無を判断することができる。具体的には、大気中の場合と、大気以外の何れかのガスが存在する場合とを区別できる値になるように第1閾値L1が設定される。本例では、40kΩと100kΩとの間に第1閾値L1が設定される。但し、閾値は、検出部10によって異なるので、この場合に限定されない。
【0053】
加熱制御部30によってガス感知層12の温度が第1温度T1に制御された状態で測定部20によって測定されたガス感知層12の第1抵抗値が第1閾値L1と比較される。第1抵抗値が第1閾値L1より大きい場合には、加熱制御部30は、大気以外の何れかのガスが検出されなかったとして、ヒータ14への通電を停止する。一方、第1抵抗値が第1閾値L1以下である場合には、対象ガスが検出される可能性がある。したがって、対象ガスの濃度によってガス感知層12の抵抗が変化しやすい温度領域になるように加熱制御部30は、ガス感知層12の温度を第1温度T1より低い第2温度T2に制御する。
【0054】
図8は、ヒータをLow状態に駆動した場合におけるガス感知層の抵抗変化の一例を示す図である。図8は、ガス感知層12の温度を第2温度T2に保持した場合の測定結果を示している。具体的には、図8は、ガス感知層12の温度を330℃とした場合の測定結果を示す。図8に示されているガス種は、図7に示されているガス種と同じである。
【0055】
大気中では、加熱開始後60m秒程度経過した時点でガス感知層12の抵抗値が安定する。また、水素ガス中では、ガス感知層12の抵抗値が大気中の場合と比べて大きく減少した後、徐々に大気中の抵抗値に近づいていく。LPガス中の場合、エタノール等のアルコール中の場合、及びメタンガス中の場合では、それぞれガス感知層12の抵抗値が徐々に減少していく。
【0056】
したがって、例えば、Low状態に加熱開始してから160m秒から200m秒の時間範囲においては、LPガス中の場合及びアルコール中の場合におけるガス感知層12の抵抗値と、水素ガス中におけるガス感知層の抵抗値との間に差がある。したがって、ガス感知層の抵抗値に基づいて、存在するガスが、水素ガスであるかを区別することができる。
【0057】
メタンガス中の場合におけるガス感知層12の抵抗値と水素ガス中の場合におけるガス感知層12の抵抗値との差は、加熱時間が長くなるにつれて大きくなる。したがって、対象ガスがメタンガスである場合は、対象ガスがLPガスである場合と比べて、第2抵抗値を取得するタイミングを遅らせてよい。本例では、30kΩと300kΩとの間に第2閾値L2(L2´)が設定される。図8に示される温度領域では、メタンガス中におけるガス感知層12の抵抗値が、LPガス中におけるガス感知層12の抵抗値より高い。したがって、対象ガスがメタンガスである場合の第2閾値L2´は、対象ガスがLPガスである場合の第2閾値L2より高い値に設定されてよい。
【0058】
ガス感知層12の第2抵抗値が第2閾値L2と比較される。第2抵抗値が第2閾値L2より大きい場合には、存在するガスは水素ガス等の雑ガスであり、対象ガスではない。したがって、加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止する。一方、第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合には、対象ガスが存在する可能性がある。本例の加熱制御部30は、対象ガスをメタノール等のアルコールに対して選択して検出するために、ガス感知層12の温度が第2温度T2より高い第3温度T3となるように制御する。
【0059】
図9は、ヒータを200m秒間にわたってHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層の抵抗変化の一例である。図9は、ガス感知層12の温度を第3温度T3に保持した場合の測定結果を示している。具体的には、図9は、ガス感知層12の温度を430℃とした場合の測定結果を示す。
【0060】
図7においても説明したとおり、大気中では、加熱開始後40m秒程度経過した時点でガス感知層12の抵抗値が安定する。一方、LPガス(イソブタン等)中の場合及び水素ガス中の場合では、ガス感知層12の抵抗値が大気中の場合と比べて大きく減少した後、40m秒あたりで増加し始めて、徐々に大気中におけるガス感知層12の抵抗値に近づいていく。エタノール等のアルコール中ではガス感知層12の抵抗値が徐々に減少し、加熱開始後100m秒程度から、ガス感知層12の抵抗値が徐々に大きくなる。
【0061】
LPガス中の場合は、アルコール中の場合に比べて、加熱時間の経過に伴うガス感知層12の抵抗値の増加率が大きい。増加率の違いに起因して、例えば、加熱開始してから160m秒以上200m秒の時間範囲においては、LPガス中におけるガス感知層12の抵抗値と、アルコール中におけるガス感知層12の抵抗値との間に差が生じる。具体的には、LPガス中のガス感知層12の抵抗値は、アルコール中のガス感知層12の抵抗値より高くなる。LPガス中のガス感知層12の抵抗値と、アルコール中のガス感知層12の抵抗値との間に、第3閾値L3を設定してよい。
【0062】
判別部80は、ガス感知層12の抵抗値に基づいて、存在するガスが、LPガスであるかアルコールであるかを判別することができる。比較部82は、ガス感知層12の第3抵抗値と第3閾値L3とを比較してよい。対象ガスがLPガスである場合、判別部80は、第3抵抗値が第3閾値以上である場合に、対象ガスであるLPガスが存在すると判別してよい。一方、判別部80は、第3抵抗値が第3閾値より小さい場合に、対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。具体的には、判別部80は、第3抵抗値が第3閾値より小さい場合には、アルコールを含むガスが存在すると判別してよい。したがって、対象ガスがLPガスである場合において、対象ガスをアルコール等の雑ガスに対して区別して検出することができる。
【0063】
メタンガス中の場合は、ガス感知層12の抵抗値は、加熱開始後40m秒まで減少した後、40m秒から200m秒までの時間範囲において変化しにくい。一方、エタノール等のアルコール中の場合には、加熱開始後100m秒経過時点付近から、ガス感知層12の抵抗値が徐々に大きくなる。したがって、例えば、加熱開始後160m秒経過後の時間範囲では、メタンガス中におけるガス感知層12の抵抗値と、アルコール中におけるガス感知層12の抵抗値との間に差が生じる。具体的には、メタンガス中のガス感知層12の抵抗値は、アルコール中のガス感知層12の抵抗値よりも低くなる。したがって、メタンガスが対象ガスである場合には、メタンガス中におけるガス感知層12の抵抗値と、アルコール中におけるガス感知層12の抵抗値との間に、第3閾値L3´を設定してよい。
【0064】
判別部80は、ガス感知層12の抵抗値に基づいて、存在するガスが、メタンガスであるかアルコールであるかを判別することができる。比較部82は、ガス感知層12の第3抵抗値と第3閾値L3とを比較してよい。判別部80は、第3抵抗値が第3閾値以下である場合には、対象ガスであるメタンガスが存在すると判別してよい。一方、判別部80は、第3抵抗値が第3閾値より大きい場合には、対象ガス以外のガスが存在すると判別してよい。具体的には、判別部80は、第3抵抗値が第3閾値より大きい場合には、アルコールを含むガスが存在すると判別してよい。したがって、対象ガスがメタンガスである場合において、対象ガスをアルコール等の雑ガスに対して区別して検出することができる。
【0065】
アルコールと対象ガスとの判別のためには、第3温度T3において測定された第3抵抗値を用いる一方、対象ガスの濃度を決定するためには、ガス感度を高くするために第2温度T2において測定された第2抵抗値を用いてもよい。例えば、対象ガスがLPガスである場合に、アルコールと対象ガスとの判別には、400℃以上の第3温度において測定された抵抗値を用いることが有利であるが、温度が400℃以上になると対象ガスに対する感度(ガス濃度に対する抵抗値の変化量)は低くなるため、対象ガスの濃度を決定するには不利である。したがって、対象ガスがアルコールではなくLPガスであると判別された場合において、対象ガスの濃度の決定には、ガス感度の高い330℃前後の第2温度において測定された第2抵抗値を用いてよい。これにより、ガスの検出感度を維持しつつ、アルコールに対する選択性を高めることができる。一方、対象ガスがメタンガスである場合には、温度が第2温度の場合より第3温度の場合の方が、ガス感度が高いので、第3温度における測定された第3抵抗値を用いて、アルコールと対象ガスとの判別のみならず、対象ガスの濃度を決定してよい。
【0066】
図10は、本発明の第1実施形態のガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。図10は、ガスセンサ100の制御方法の一例を示す。加熱制御部30は、ヒータ14に電圧を印加して、ガス感知層12の温度が第1温度T1になるようにヒータ14を制御する(ステップS101)。ステップS101の処理は、ガス感知層12の温度を第1温度T1に制御する第1温度制御段階に対応する。ステップS101の処理は、ガス感知層12をクリーニングする処理を兼ねてよい。
【0067】
第1取得部50は、ガス感知層12の第1抵抗値を取得する(ステップS102)。ステップS102の処理は、ガス感知層12の温度が第1温度T1に制御された状態で測定されたガス感知層12の第1抵抗値を取得する第1取得段階に対応する。
【0068】
加熱制御部30は、第1抵抗値が第1閾値L1以下であるかを判断する(ステップS103)。第1抵抗値が第1閾値L1より大きい場合には(ステップS103:NO)、対象ガスが存在しないと考えられるので、加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止して、ヒータ14をオフする(ステップS110)。したがって、第1抵抗値が第1閾値L1より大きく、大気以外のガスが存在しない場合には、直ちに加熱を停止することができる。これにより、消費電力を低減することができる。
【0069】
第1抵抗値が第1閾値L1以下である場合には(ステップS103:YES)、何らかのガスが存在する蓋然性がある。したがって、加熱制御部30は、ガス感知層12の温度が第2温度T2になるようにヒータ14を制御する(ステップS104)。第2温度T2は、第1温度T1より低い。特に、第2温度T2は、250℃以上350℃以下であってよい。第2温度T2は、対象ガスのガス感度が第1温度T1の場合より高い温度領域に設定してよい。例えば、対象ガスがLPガスである場合、400℃以上500℃以下である第1温度T1の場合よりも250℃以上350℃以下である第2温度T2の方がガス感度が高い。したがって、第2温度T2において抵抗値を測定することによって、対象ガスの濃度を正確に判別することができる。これにより、所定の濃度範囲において確実に対象ガスを検出することができる。また、加熱制御部30は、後述するように、対象ガスの種類に応じて、第2温度T2を変更してもよい。ステップS104の処理は、第1抵抗値が予め定められた第1閾値以下の場合に、ガス感知層12の温度を第1温度T1より低い第2温度T2に制御する第2温度制御段階に対応する。
【0070】
第2取得部60は、ガス感知層12の第2抵抗値を取得する(ステップS105)。第2取得部60は、例えば、加熱開始後160m秒以上200m秒以下の時間領域において測定されたガス感知層12の抵抗値を第2抵抗値として取得する。ステップS105の処理は、ガス感知層12の温度が第2温度T2に制御された状態で測定されたガス感知層12の第2抵抗値を取得する第2取得段階に対応する。
【0071】
加熱制御部30は、第2抵抗値が第2閾値L2以下であるかを判断する(ステップS106)。第2抵抗値が第2閾値L2より大きい場合には(ステップS106:NO)、対象ガスが存在しないと考えられる。したがって、加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止して、ヒータ14をオフする(ステップS110)。これにより、第2抵抗値が第2閾値L2より大きく、大気以外のガスが存在しない場合には、加熱が直ちに停止されて、消費電力が低減される。
【0072】
第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合には(ステップS106:YES)、対象ガスが存在する可能性がある。対象ガスは、LPガスまたはメタンガスであってよい。しかしながら、例えば、LPガスの濃度及びアルコール等の濃度によっては、LPガス中のガス感知層12の抵抗値と、アルコール中のガス感知層12の抵抗値とが近似する。そのため、第2抵抗値に基づいてガス種を判断することが難しい場合がある。
【0073】
したがって、本例では、第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合には(ステップS106:YES)、加熱制御部30は、ガス感知層12の温度が第3温度T3になるようにヒータ14を制御する(ステップS107)。ステップS107の処理は、第2抵抗値が予め定められた第2閾値以下の場合に、ガス感知層12の温度を第2温度T2より高い第3温度T3に制御する第3温度制御段階に対応する。
【0074】
第3温度T3は、400℃以上500℃以下であってよく、より好ましくは、400℃以上450℃以下であってよい。対象ガスがLPガスである場合、第3温度T3が400℃より低く設定されると、LPガスが脱離しきれずにガス感知層12等にLPガスが残ってしまう。したがって、加熱時間に伴うガス感知層12の抵抗値が低下したままとなり、LPガスとアルコールとの区別が難しくなる。対象ガスがメタンガスである場合、第3温度T3が400℃より低く設定されると、エタノール等のアルコール中における抵抗値が低下したままとなり、メタンガスとアルコールとの区別が困難になる場合がある。一方、第3温度T3を500℃より高くすると、検出部10を劣化させる可能性がある。
【0075】
第3取得部70は、ガス感知層12の第3抵抗値を取得する(ステップS108)。第3取得部70は、例えば、加熱開始後160m秒以上200m秒以下の時間領域において測定されたガス感知層12の抵抗値を第3抵抗値として取得する。ステップS108の処理は、ガス感知層12の温度が第3温度T3に制御された状態で測定されたガス感知層12の第3抵抗値を取得する第3取得段階に対応する。
【0076】
判別部80は、第3抵抗値に基づいてガス種を判別するガス種判別処理を実行する(ステップS109)。ステップS109の処理は、第3取得段階(ステップS108)において取得された第3抵抗値に基づいて、存在するガス種を判別する判別段階に対応する。加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止して、ヒータ14をオフする(ステップS110)。加熱制御部30は、例えば、30秒以上60秒以下のヒータ駆動周期Pが経過するのを待って(ステップS111:YES)、再び、ガス感知層12の温度が第1温度T1になるようにヒータ14を制御する(ステップS101)。
【0077】
図11は、対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図11は、図10のステップS109の処理の一例である。比較部82は、第3抵抗値と、予め定められた第3閾値L3とを比較する(ステップS201)。第3抵抗値が第3閾値L3以上である場合には(ステップS201:YES)、図9において説明したとおり、アルコールを含む雑ガスによる影響ではなく、実際に、対象ガスが存在すると考えられる。したがって、判別部80は、LPガスが存在すると判別する(ステップS202)。
【0078】
一方、第3抵抗値が第3閾値L3より小さい場合には(ステップS201:NO)、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップS203)。LPガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報する(ステップS204)。一方、アルコールを含むガスが存在すると判断された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報せずに、リターンしてよい。
【0079】
図12は、対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図12は、図10のステップS109の処理の一例である。比較部82は、第3抵抗値と、予め定められた第3閾値L3´とを比較する(ステップS301)。第3抵抗値が第3閾値L3´以下である場合には(ステップS301:YES)、図9において説明したとおり、アルコールを含む雑ガスによる影響ではなく、実際に、対象ガスが存在すると考えられる。したがって、判別部80は、メタンガスが存在すると判別する(ステップS302)。
【0080】
一方、第3抵抗値が第3閾値L3´より大きい場合には(ステップS301:NO)、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップS303)。メタンガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報する(ステップS304)。一方、アルコールを含むガスが存在すると判断された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報せずに、リターンしてよい。
【0081】
以上のように、本例の制御方法によれば、第1抵抗値が第1閾値L1以下であり(図10のステップS103:YES)、かつ第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合(図10のステップS105:YES)に限って、ガス感知層12の温度を第3温度T3に保持する処理(ステップS107及びステップS108)を実行する。したがって、各周期Pにおいて、ガス感知層12の温度を第3温度T3に比較的長く保持する処理を実行する場合に比べて、消費電力を低減することができる。
【0082】
本例の制御方法によれば、第1抵抗値および第2抵抗値の値に応じて、図3図4、及び図5に示されるようにヒータ駆動パターンを切り替える。したがって、各周期Pにおいて、常に、第1温度T1、第2温度T2、及び第3温度T3という温度に制御する場合に比べて、全体の加熱時間を短くすることができる。したがって、消費電力を低減することができる。
【0083】
本例のガスセンサ100は、第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合において、直ちに、対象ガスが存在すると結論せずに、さらに、ガスの判別処理を実行する。したがって、アルコール等のガスに対する対象ガスの選択性を高める。それゆえ、対象ガスが存在しないにもかかわらず、警報発生部40が警報を発報する可能性を低減することができる。
【0084】
本例のガスセンサ100において、加熱制御部30は、対象ガスの種類に応じて、第2温度T2を変更してよい。また、加熱制御部30は、対象ガスの種類に応じて、第3温度T3を変更してよい。図13は、LPガスに対するガス感度とメタンガスに対するガス感度を示す図である。第2温度T2は、対象ガスのガス感度(検出感度)が第1温度T1の場合に比べて高い温度領域に設定してよい。但し、ガス種によっては、第2温度T2における対象ガスのガス温度が第1温度T1の場合に比べて低くてもよい。メタンガスに対するガス感度のピークは、LPガスの対するガス感度のピークより高温側に位置している。したがって、加熱制御部30は、対象ガスがメタンガスの場合における第2温度T2を、対象ガスがLPガスの場合における第2温度T2より高く設定してよい。例えば、対象ガスがメタンガスの場合における第2温度T2は350℃であってよく、対象ガスがLPガスの場合における第2温度T2は330℃であってよい。
【0085】
また、図9に示されるとおり、LPガス中のガス感知層12の抵抗値とエタノール等のアルコール中のガス感知層12の抵抗値との差は、第3温度T3に保持する加熱時間が長くなるほど小さくなる。一方、メタンガス中のガス感知層12の抵抗値とアルコール中のガス感知層12の抵抗値との差は、第3温度T3に保持する加熱時間が長くなるほど大きくなる。そして、第3温度T3が高くなると、このような傾向が強まる。したがって、対象ガスがメタンガスの場合には、対象ガスがLPガスの場合に比べて高い値に第3温度T3に設定することによって、アルコールとの選択性を高くしてよい。
【0086】
図14は、ガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。図14のステップS401〜ステップS406は、図10のステップS101〜ステップS106と同じであり、図14のステップSS408〜ステップS412は、図10のステップS107〜ステップS111と同様である。図14に示される処理は、ステップS407が加えられている点で、図10に示される処理と異なる。したがって、図10の処理と同様のステップについては、繰返しの説明を省略する。
【0087】
ステップS407において、加熱制御部30は、第2抵抗値に応じて第3温度T3を変更してよい。具体的には、第2抵抗値が低くなるほど、ガス感知層12に付着しているガス成分の量が多くなると推定される。ガス感知層12に付着しているガス成分が多い場合には、High駆動してガス感知層12を第3温度T3に加熱してガス成分を脱離させるのに時間がかかる。したがって、第2抵抗値が低いほど、第3温度T3を高くしてよい。
【0088】
第2抵抗値が低い場合に加熱制御部30が第3温度T3を高くすることによって、ガス感知層12に付着しているLPガスの脱離が促進される。したがって、LPガス中のガス感知層12の抵抗値とアルコール中でのガス感知層12の抵抗値の差を確保しやすくなる。また、第2抵抗値が低い場合に加熱制御部30が第3温度T3を高くすることによって、ガス感知層12に付着しているアルコールの脱離が促進される。したがって、メタンガス中のガス感知層12の抵抗値とアルコール中でのガス感知層12の抵抗値の差を確保しやすくなる。
【0089】
図15は、ガスセンサ100の処理内容の一例を示すフローチャートである。図15のステップS501〜ステップS507は、図10のステップS101〜ステップS107と同じであり、図15のステップSS509〜ステップS512は、図10のステップS108〜ステップS111と同様である。図15に示される処理は、ステップS508が加えられている点で、図10に示される処理と異なる。したがって、図10の処理と同様のステップについては、繰返しの説明を省略する。
【0090】
ステップS508において、第3取得部70は、第2抵抗値に応じて第3抵抗値を取得するタイミングを変更する。これにともなって、加熱制御部30は、ガス感知層12を第3温度T3に加熱する加熱時間を長くしてよい。加熱時間を長くすることによって、ガス感知層12に付着しているLPガスの脱離が促進される。したがって、LPガス中のガス感知層12の抵抗値とアルコール中でのガス感知層12の抵抗値の差を確保することができる。また、ガス感知層12に付着しているアルコールの脱離が促進される。したがって、メタンガス中のガス感知層12の抵抗値とアルコール中でのガス感知層12の抵抗値の差を確保することができる。また、判別部80は、第2抵抗値に応じて第3温度T3を変更してよい。例えば、判別部80は、第2閾値L2と第2抵抗値との比をみて、第3閾値を決める。例えば、第2抵抗値が低いほど第3閾値も小さくしてよい。
【0091】
図16は、本発明の第2実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。第2実施形態のガスセンサ100は、判別部80が変化率算出部84を備えることを除いて、第1実施形態のガスセンサ100の構造と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
【0092】
変化率算出部84は、加熱開始からの加熱時間経過に伴う第3抵抗値の時間変化率を算出する。本実施形態においては、複数の時刻において、第3抵抗値が取得されてよい。複数の時刻において取得された複数の第3抵抗値から第3抵抗値の時間変化率が算出される。変化率算出部84は、特定の時刻における第3抵抗値を基準にして第3抵抗値の最大時間変化率(最大比)を算出してよい。
【0093】
図17は、ヒータ14をHigh状態に駆動した場合におけるガス感知層12の抵抗の時間変化率の一例を示す図である。図17は、ガス感知層12の温度を第3温度T3に保持した場合におけるガス感知層12の抵抗の時間変化率を示している。図17において、縦軸は、所定の時刻におけるガス感知層12の抵抗値を基準とした比率を示す。本例では、加熱開始後200m秒経過時のガス感知層12の抵抗値を基準として比率を示している。具体的には、加熱開始後200m秒経過時のガス感知層12の第3抵抗値をR200とし、任意の時刻Xにおけるガス感知層12の第3抵抗値をRとすると、図17の縦軸に示される変化率はR200/Rの式により算出される。
【0094】
図17に示されるとおり、LPガス中のガス感知層12の抵抗値の時間変化率は、最大で3.2程度である。具体的には、LPガス中においては、加熱開始後40秒経過時におけるガス感知層12の第3抵抗値は、加熱開始後200秒経過時におけるガス感知層12の第3抵抗値の3.2倍となる。一方、エタノール等のアルコール中のガス感知層12の抵抗値の時間変化率は、最大で2.3程度である。具体的には、エタノール中においては、加熱開始後100秒経過時におけるガス感知層12の第3抵抗値は、加熱開始後200秒経過時におけるガス感知層12の第3抵抗値の2.3倍となる。したがって、対象ガスがLPガスの場合は、2.3倍と3.2倍の間に変化率閾値L4が設定されてよい。
【0095】
また、メタンガス中のガス感知層12の抵抗値の時間変化率は、最大で1程度である。したがって、対象ガスがメタンガスの場合は、2.3倍と1倍の間に変化率閾値L4´が設定されてよい。以上のように、判別部80は、第3抵抗値の時間変化率によって、存在するガス種を判別する。特に、対象ガスがメタンガスである場合に、対象ガスのアルコール等の物質に対する選択性を高める上で効果的である。以上のような第2実施形態のガスセンサ100の処理内容は、ガス種の判別の処理を除いて、図10図14、及び図15に示される各処理内容と同様である。
【0096】
図18は、対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図18は、図10のステップS109、図14のステップS410、図15のステップS510の処理の一例である。
【0097】
変化率算出部84は、加熱開始からの時間経過に伴う第3抵抗値の時間変化率を算出する(ステップS601)。時間変化率は、図17において説明したような第3抵抗値の最大時間変化率(最大比)であってよい。但し、時間変化率は、第3抵抗値の時間的な変化の度合いを示すものであればよく、最大時間変化率に限られない。
【0098】
判別部80は、算出された時間変化率によって、存在するガス種を判別する。具体的には、判別部80は、第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値L4以上であるか否かを判断する(ステップS602)。第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値L4以上である場合には(ステップS602:YES)、判別部80は、LPガスが存在すると判別する(ステップS603)。一方。第3抵抗値の時間変化率が、変化率閾値L4より小さい場合には(ステップS602:NO)、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップS604)。LPガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報してよい(ステップS605)。
【0099】
図19は、対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図19は、図10のステップS109、図14のステップS410、図15のステップS510の処理の一例である。変化率算出部84は、加熱開始からの時間経過に伴う第3抵抗値の時間変化率を算出する(ステップS701)。
【0100】
判別部80は、第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値L4´以下であるか否かを判断する(ステップS702)。判別部80は、第3抵抗値の時間変化率が、予め定められた変化率閾値L4´以下である場合には(ステップS702:YES)、判別部80は、メタンガスが存在すると判別する(ステップS703)。一方。第3抵抗値の時間変化率が、変化率閾値L4´より大きい場合には(ステップ702:NO)、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップ704)。メタンガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報してよい(ステップS705)。
【0101】
図20は、本発明の第3実施形態のガスセンサ100の概略を示す図である。第3実施形態のガスセンサ100は、判別部80がタイミング検出部86を備えることを除いて、第1または第2実施形態のガスセンサ100の構造と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
【0102】
タイミング検出部86は、加熱開始からの加熱時間経過に伴って第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出する。本実施形態においては、複数の時刻において、第3抵抗値が取得される。複数の時刻において取得された複数の第3抵抗値から、第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出してよい。具体的には、加熱開始から、第3抵抗値が上がり始める時までの時間を検出してよい。
【0103】
上述した図9を参照すれば、LPガス中の場合では、ガス感知層12の抵抗値が、加熱開始後40m秒程度経過した時点で極小値を示し、その後にガス感知層12の抵抗値が増加する。したがって、LPガス中では、第3抵抗値が上がり始めるタイミングは、加熱開始後40m秒程度経過時点であってよい。一方、アルコール中では、第3抵抗値が上がり始めるタイミングは、加熱開始後100m秒程度経過時点であってよい。メタンガス中では、加熱開始後200m秒程度経過しても、第3抵抗値が停滞または低下している。したがって、メタンガス中では、第3抵抗値が上がり始めるタイミングは、加熱開始後200m秒程度経過時点以降であってよい。ここで、「停滞」とは、予め定められた数値範囲を維持していることを意味してよい。
【0104】
以上のような第3実施形態のガスセンサ100の処理内容は、ガス種の判別の処理を除いて、図10図14、及び図15に示される各処理内容と同様である。図21は、対象ガスがLPガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図21は、図10のステップS109、図14のステップS410、図15のステップS510の処理の一例である。
【0105】
タイミング検出部86は、加熱開始からの加熱時間経過に伴って第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出する(ステップS801)。第3抵抗値が上がり始めるタイミングは、加熱開始からの加熱時間経過に伴って第3抵抗値が減少から増加に転ずる極小値のタイミングであってよい。あるいは、第3抵抗値が上がり始めるタイミングは、加熱開始からの加熱時間経過に伴って第3抵抗値が極小値から所定値だけ増加したタイミングであってもよい。
【0106】
判別部80は、第3抵抗値が上がり始めるタイミングによって、存在するガス種を判別する。具体的には、判別部80は、所定時間内に第3抵抗値が上がり始めたか否かを判断する(ステップS802)。所定時間は、LPガス中での第3抵抗値が上がり始める時間より長く、アルコール中での第3抵抗値が上がり始める時間より短い時間に設定されてよい。図9に示される例では、所定時間は、40m秒より長く100m秒より短い時間に設定されてよい。
【0107】
所定時間内に第3抵抗値が上がり始めた場合には(ステップS802:YES)、判別部80は、LPガスが存在すると判別する(ステップS803)。一方、所定時間が経過しても第3抵抗値が停滞または低下している場合には(ステップS802:NO)、判別部80は、対象ガス以外のガスが存在すると判別する。具体的には、判別部80は、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップS804)。LPガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報してよい(ステップS805)。なお、所定時間内に第3抵抗値が上がり始めた場合には(ステップS802:YES)、加熱制御部30は、ヒータ14への通電を停止してもよい。
【0108】
図22は、対象ガスがメタンガスである場合におけるガス種判別処理の一例を示すフローチャートである。図22は、図10のステップS109、図14のステップS410、図15のステップS510の処理の一例である。タイミング検出部86は、加熱開始からの加熱時間経過に伴って第3抵抗値が上がり始めるタイミングを検出する(ステップS901)。
【0109】
判別部80は、所定時間内に第3抵抗値が上がり始めたか否かを判断する(ステップS902)。所定時間は、アルコール中での第3抵抗値が上がり始める時間より長く、メタノール中での第3抵抗値が上がり始める時間より短い時間に設定されてよい。図9に示される例では、所定時間は、100m秒より長く200m秒より短くてよい。
【0110】
所定時間が経過しても第3抵抗値が停滞または低下している場合には(ステップS902:NO)、判別部80は、メタンガスが存在すると判別する(ステップS903)。一方、所定時間内に第3抵抗値が上がり始めた場合には(ステップS902:YES)、判別部80は、対象ガス以外のガスが存在すると判別する。具体的には、判別部80は、アルコールを含むガスが存在すると判断する(ステップS904)。メタンガスが存在すると判別された場合には、警報発生部40は、ガス漏れ警報を発報してよい(ステップS905)。
【0111】
本例においても、第2抵抗値が第2閾値L2以下である場合において、直ちに、対象ガスが存在すると結論せずに、さらに、ガスの判別処理を実行する。したがって、アルコール等のガスに対する対象ガスの選択性を高める。それゆえ、対象ガスが存在しないにもかかわらず、警報発生部40が警報を発報する可能性を低減することができる。
【0112】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本明細書における各実施形態は、適宜組み合わせることができる。本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0113】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0114】
2・・シリコン基板、3・・熱絶縁支持層、4・・電気絶縁層、5・・ガス検知部、6・・貫通孔、7・・接合層、8・・ガス感知層電極、9・・選択燃焼層、10・・検出部、12・・ガス感知層、14・・ヒータ、16・・温度測定部、20・・測定部、30・・加熱制御部、40・・警報発生部、50・・第1取得部、60・・第2取得部、70・・第3取得部、80・・判別部、82・・比較部、84・・変化率算出部、86・・タイミング検出部、90・・記憶部、100・・ガスセンサ、200・・制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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