特許第6863105号(P6863105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863105
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20210412BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20210412BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61F13/53 300
   A61F13/532 100
   A61F13/532 200
   A61F13/533 100
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-114579(P2017-114579)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-202101(P2018-202101A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 和泉
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−045703(JP,A)
【文献】 特開2010−284430(JP,A)
【文献】 特開2002−011047(JP,A)
【文献】 特開平02−074254(JP,A)
【文献】 特開2016−106992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨ておむつを製造する方法であって、
前身頃領域と後身頃領域と股下領域とを有する液不透過性のカバーシートに、液不透過性のバックシートを接合する工程と、
コアラップなし吸収体をシート状に圧縮成形して、前記圧縮成形時に前記コアラップなし吸収体に適度な水分を与える工程と、
トップシートを、前記圧縮成形時に適度な水分が与えられたコアラップなし吸収体と共に前記バックシートに重ね合わせて、前記トップシートの周縁部を前記カバーシートおよび前記バックシートの少なくとも一方に接合する工程と
を含み、
前記コアラップなし吸収体は、セルロース繊維およびSAPを少なくとも含み、前記トップシート側の前記コアラップなし吸収体の表面から、その厚み方向に沿った前記コアラップなし吸収体の厚みの5%以上かつ25%以下の領域におけるSAPの配合率が10重量%以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コアラップなし吸収体の厚みの5%以上かつ25%以下の領域における前記SAPの配合率が5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コアラップなし吸収体は、少なくとも前記コアラップなし吸収体の厚みの5%以上かつ25%以下の領域に少なくとも配される熱融着性繊維をさらに含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱融着性繊維の前記領域における配合率が1重量%以上かつ20重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱融着性繊維の前記領域における配合率が3重量%以上かつ15%以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
個々の前記熱融着性繊維の長さが15mm以上かつ70mm以下であることを特徴とする請求項3から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
個々の前記熱融着性繊維の長さが20mm以上かつ60mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
個々の前記熱融着性繊維の長さが25mm以上かつ50mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コアラップなし吸収体の表面に圧搾凹部を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記圧搾凹部を形成する工程は、前記圧搾凹部が前記トップシートにも一体的に形成されるように行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前身頃領域と後身頃領域と股下領域とを有する液不透過性のカバーシートと、液不透過性のバックシートと、吸収体と、液透過性のトップシートとを順に重ね合わせた使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
子供用または大人用のおむつや軽中度失禁パッドまたはペット用排泄処理用品など、液透過性のトップシートとバックシートとの間に吸収体を介在させた各種吸収性物品が知られている。このような吸収性物品において、尿などの液体を吸収保持するための吸収体は、通常、吸収性本体とラップ材とから構成される。吸収性本体は、主にフラッフ状パルプ、すなわちセルロース繊維と、高吸液性樹脂、すなわちSAP(superabsorbent polymer)との混合体であり、ラップ材は、この吸収性本体を包む難水溶性のティッシュや熱可塑性不織布からなる。
【0003】
このような吸収性物品の一例として、例えば特許文献1などが知られている。これは、吸収性本体に熱可塑性樹脂繊維を加えることにより、吸収体に85%以上の折り曲げ後復元率を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−43197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたような従来の吸収性物品においては、吸収性本体の型崩れを防止するためのラップ材、すなわちコアラップが吸収性本体を包んだ状態となっている。このため、吸収性本体の液拡散性がコアラップの存在によって阻害されてしまい、吸収体の全域に亙って迅速に尿などの液体を拡散させることができず、尿漏れの一因となる可能性があった。このような不具合は、ラップ材として高密度または坪量の大きな不織布を用いた場合、特に顕著に現れる。
【0006】
本発明の目的は、液拡散性を阻害する可能性のあるコアラップを省略することにより、吸収性本体が本質的に有する液拡散性を最大限に活用すると同時に、コアラップなしでも吸収体の型崩れを抑制し得る使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前身頃領域と後身頃領域と股下領域とを有する液不透過性のカバーシートと、このカバーシートに接合される液不透過性のバックシートと、このバックシートに重ね合わされる圧縮成形されたシート状をなすコアラップなし吸収体と、このコアラップなし吸収体と共に前記バックシートに重ね合わされ、周縁部が前記カバーシートおよび前記バックシートの少なくとも一方に接合される液透過性のトップシートとを具えた使い捨ておむつであって、前記コアラップなし吸収体は、セルロース繊維およびSAPを少なくとも含み、前記トップシート側の前記コアラップなし吸収体の表面から、その厚み方向に沿った前記コアラップなし吸収体の厚みの5%以上かつ25%以下の領域におけるSAPの配合率が10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、吸収体がコアラップを有しておらず、尿などの液体はトップシートを通過してコアラップなし吸収体により吸収され、その全域に浸透拡散する。また、圧縮成形されたシート状をなすコアラップなし吸収体は、トップシート側の表面から、その厚み方向に沿ったその厚みの5%以上かつ25%以下の領域がセルロース繊維にて大部分を占められ、圧縮成形性が良好となる。この場合、個々のセルロース繊維を構成するセルロース分子の間での水素結合を促進させるため、吸収体の圧縮成形時に適度な水分を与えることが有効であり、これによって乾燥後の圧縮成形されたコアラップなし吸収体の型崩れが抑制される。
【0009】
トップシート側のコアラップなし吸収体の表面から、その厚み方向に沿ったその厚みの5%以上かつ25%以下の領域におけるSAPの配合率が10重量%を越えると、吸収体の圧縮成形性が低下すると同時に型崩れしやすく、吸収体の表層の液拡散性も低下する。また、トップシート側のコアラップなし吸収体の表面から、その厚み方向に沿ったその厚みの5%未満の領域におけるSAPの配合率を10重量%以下にしても、吸収体の圧縮成形性が改善されず、型崩れもしやすく、吸収体の表層の液拡散性も改善されない。
【0010】
本発明による使い捨ておむつにおいて、コアラップなし吸収体は、少なくともその厚みの5%以上かつ25%以下の領域に少なくとも配される熱融着性繊維をさらに含むことができる。この熱融着性繊維は、コアとなる第1のポリマーと、このコアを取り囲むクラッドとなる第2のポリマーとからなり、第2のポリマーは、第1のポリマーよりも低い融点を持つものが選択される。例えば、ポリプロピレン(コア)とポリエチレン(クラッド)との組み合わせ、ポリエステル(コア)とポリエチレン(クラッド)との組み合わせ、ポリエステル(コア)と低融点ポリエステル(クラッド)との組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限定されない。しかしながら、クラッドとして融点が低く、かつ柔軟な手触り感を得られるポリエチレンを使用したものが好ましいと言えよう。この場合、熱融着繊維の配合率を1重量%以上かつ20重量%以下、より好ましくは3重量%以上かつ15%以下にすることが有効である。熱融着繊維の配合率が1重量%未満の場合、熱融着繊維を配合したことによる効果を明確に得ることができない。逆に、熱融着繊維の配合率が20重量%を越えると、吸収体としての液拡散性が低下すると共に尿などの液体の保持量が低下してしまう。また、個々の熱融着繊維の長さは、15mm以上かつ70mm以下、より好ましくは20mm以上かつ60mm以下、最も好ましくは25mm以上かつ50mm以下である。個々の熱融着繊維の長さが15mm未満の場合、熱融着繊維が相互に絡みにくくなって、これらを相互に熱融着させることが困難となってしまう。逆に、個々の熱融着繊維の長さが70mmを越えると、熱融着繊維とセルロース繊維とが均一に混ざりにくくなってしまい、熱融着繊維を配合したことによる効果を得られなくなってしまう。
【0011】
吸収体の表面に圧搾凹部を形成することができ、この圧搾凹部を直上のトップシートにも併せて一体的に形成することが有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の使い捨ておむつによると、吸収体がコアラップを有していないため、吸収体の液拡散性を最大限に生かすことができる。また、吸収体の表層の大部分がセルロース樹脂にて構成されているため、圧縮成形された吸収体の表層部分の型崩れを従来のものよりも少なくすることができる。特に、吸収体の圧縮成形時に吸収体に適度な水分を与えることにより、セルロース分子の水素結合を促進させることができ、圧縮成形後の吸収体の型崩れをさらに抑制することが可能である。
【0013】
コアラップなし吸収体の厚みの5%以上かつ25%以下の領域におけるSAPの配合率を5重量%以下にした場合、吸収体の圧縮成形性をさらに向上させることができ、同時に圧縮成形された吸収体の型崩れをさらに抑制することが可能である。
【0014】
コアラップなし吸収体がその厚みの5%以上かつ25%以下の領域に少なくとも配される熱融着性繊維を含む場合、吸収体の圧縮成型後にドライヤーなどを用いて加熱することにより、熱融着繊維を相互に融着接合させることができる。このため、これら熱融着繊維の間に介在するセルロース繊維の相対的な位置ずれが阻止され、結果として吸収体の型崩れをさらに抑制することが可能となる。特に、熱融着繊維の配合率が1重量%以上、より好ましくは3重量%以上かつ20重量%以下の場合、吸収体の型崩れを抑制する効果を高めることができる。また、個々の熱融着繊維の長さが15mm以上かつ70mm以下、より好ましくは20mm以上かつ60mm以下、最も好ましくは25mm以上かつ50mm以下の場合も同様に、吸収体の型崩れを抑制する効果を向上させることが可能である。
【0015】
吸収体の表面に圧搾凹部を形成した場合、特に圧搾凹部をトップシートにも一体的に形成した場合、吸収体の型崩れをさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による使い捨ておむつをテープ型使い捨ておむつに適用した一実施形態の外観を示す立体投影図である。
図2図1に示したテープ型使い捨ておむつの展開状態をその肌当接面側から見た一部破断平面図である。
図3図2に示したテープ型使い捨ておむつを分解状態で表す立体投影図である。
図4図2中のIV−IV矢視に沿った断面図である。
図5図4中の矢視V部を抽出拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による使い捨ておむつをテープ型使い捨ておむつに適用した一実施形態について、図1図4を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明による使い捨ておむつは、このようなテープ型使い捨ておむつに限らず、パンツ型使い捨ておむつや吸収パッドなどの他の吸収性物品にも適用可能である。
【0018】
本実施形態によるテープ型使いすておむつの使用状態における外観を図1に示し、その内側の肌当接面側を表にして展開した状態の外観を図2に示し、これをさらに分解した状態の外観を図3に示す。また、図2中のIV−IV矢視に沿った断面構造を模式的に図4に示し、その矢視V部を抽出拡大して図5に示す。
【0019】
すなわち、本実施形態におけるテープ型使い捨ておむつ(以下、単におむつと記述する)10は、カバーシート11および液不透過性のバックシート12と、コアラップなし吸収体13と、液透過性のトップシート14と、左右一対のサイドシート15とを有する。トップシート14が重ね合わされるバックシート12は、トップシート14とほぼ同じ寸法形状を有し、良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されたカバーシート11に接合される。コアラップなし吸収体13は、バックシート12と、このバックシート12に重ね合わされるトップシート14との間に配され、バックシート12とトップシート14とが直接接するこれらの外周縁部は相互に一体的に接合されている。液不透過性のサイドシート15の長手方向両端部(図2中、上下両端部)は、カバーシート11の上下両端部に重ね合わされ、バックシート12およびトップシート14の左右両側縁部と、カバーシート11とに対してそれぞれ一体的に接合されている。カバーシート11およびサイドシート15は、バックシート12およびトップシート14の前後両側の左右、すなわち幅方向両側縁から外側へ延出する前後一対のサイドフラップ部10f,10rを有する。これら前後のサイドフラップ部10f,10rの間の股下領域10Gには、着用者に脚周り開口部10tとなる一対の円弧状凹部10cが形成されている。
【0020】
本実施形態においては、トップシート14の左右両側に覆い重なる左右一対のサイドシート15の内側部分(図2中、中央側)がトップシート14に対して非接合状態となっている。この内側部分に立体ギャザー15aを形成するため、サイドシート15の内側端縁部に糸ゴム16が伸張状態で接合されている。
【0021】
このおむつ10の後身頃領域10R側のカバーシート11には、ウエスト周り開口部10wに沿って配設される横に細長いウエスト周り弾性シート17が伸長状態で接合されている。本実施形態におけるウエスト周り弾性シート17は、ベースシート18と、このベースシート18に伸長状態で相互に平行に接合される複数本の糸ゴム19と、これら糸ゴム19を覆うようにベースシート18に接合されるアッパーシート20とで構成される。このウエスト周り弾性シート17は、ウエストギャザー17aを形成して着用者のウエスト周りのフィット性を良好にする機能を有する。
【0022】
後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rの幅方向両側縁部には、左右一対のファスニングテープ21の基端部がウエスト周り弾性シート17の両端部に重ね合わせて接合されている。これらファスニングテープ21を介して後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rを前身頃領域10F側のサイドフラップ部10fに重ね合わせることにより、ウエスト周り開口部10wと脚周り開口部10tとが形成される。ファスニングテープ21は、その幅方向(図2中、左右方向)に沿って伸縮性を持たせた伸縮シートで構成され、その先端部分に面ファスナー22が取り付けられている。面ファスナー22は、前身頃領域10F側のカバーシート11に接合された面ファスナーシート23に対して繰り返し剥離可能に接合可能である。従って、弾性力を伴ってファスニングテープ21を引き延ばしてその面ファスナー22の部分を前身頃領域10Fの面ファスナーシート23に接合することにより、着用者のウエスト周りに対して常に適切な締め付け力を与えることができる。
【0023】
コアラップなし吸収体13の両側縁の外側の長手方向に沿った股下領域10Gから前身頃領域10F側および後身頃領域10R側にかけて脚周り弾性部材24が配されている。本実施形態では糸ゴムにて形成した脚周り弾性部材24は、カバーシート11とサイドシート15との間に伸長状態で固定され、レッグギャザー24aを形成して着用者の脚周りのフィット性を良好にする機能を有する。
【0024】
コアラップなし吸収体13は、おむつ10の前身頃領域10Fから股下領域10Gを通って後身頃領域10Rまで達するように、これらに対応した前身頃部分と股下部分と後身頃部分とを有する。コアラップなし吸収体13の股下部分には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10tに合わせて、円弧状をなす一対の円弧状凹部13cが形成され、股下部分の幅が前身頃部分および後身頃部分の幅に比べて狭くなっている。なお、この円弧状凹部13cをコアラップなし吸収体13に形成することは必須ではない。また、コアラップなし吸収体13の輪郭形状も本実施形態のような細長い形状以外に、楕円形やT字型または正方形など、様々な形状を採用することが可能である。
【0025】
図2および図4に示すように、本実施形態のコアラップなし吸収体13は、トップシート14と共にその表面からバックシート12に向かってエンボス加工を規則的に施したエンボスパターン形成領域、すなわち凹部形成領域ZRを有する。この凹部形成領域ZRには、エンボス加工による圧搾凹部25の配列構成によって、全体として、いわゆる斜め格子状のエンボスパターンが形成される。このエンボスパターンの具体的構成などに関しては、本発明の特徴ではなく、周知のものを適宜採用することが可能である。
【0026】
本実施形態における圧搾凹部25は、トップシート14と、コアラップなし吸収体13とを共に一体的に圧縮して形成される。本実施形態では、ラップ材を用いていないため、圧搾凹部25を形成する際にラップ材の破れなどの問題を回避することができる。加えて、圧搾凹部25は、トップシート14と、コアラップなし吸収体13とを共に圧縮接合して形成されており、圧搾凹部25に流れ込む液体は、圧搾凹部の底面を通って拡散しながらこれらの周囲に吸収される。
【0027】
各圧搾凹部25を適切な寸法形状および密度に成形することにより、着用者の体重が加わっても、その溝構造を維持することができると共に、おむつ10の股下領域10Gにおけるコアラップなし吸収体13の肌当接面において、柔らかな肌触りを維持することができる。従って、斜め格子状のエンボスパターンにより、脚の様々な動きに対しておむつ10がよれるなど変形を抑制できるとともに、その肌触りを柔らかいものとして、肌への刺激を極力抑えることが可能である。
【0028】
本実施形態におけるコアラップなし吸収体13は、フラッフ状パルプ、すなわちセルロース繊維と、SAPと、熱融着性繊維とからなる。そして、その厚み方向に沿って、その表層部分tFとそれ以外の部分(以下、この部分を表層以外の部分と記述する)とでこれらの配合率を異ならせている。表層部分tFは、トップシート14側のコアラップなし吸収体13の表面から、その厚み方向に沿ったその最大厚みtの8%の領域であるが、コアラップなし吸収体13の最大厚みtに応じて5%〜25%の範囲で変更可能である。一般的には、コアラップなし吸収体13の最大厚みtが薄いほど、表層部分tFの厚みを相対的に大きくすることが望ましい。
【0029】
上述した表層部分tFにおけるSAPの配合率は、本実施形態では3重量%に設定されているが、10重量%以下であればよく、これに限定されない。また、表層以外の部分におけるSAPの配合率は、吸収体として一般的な50重量%〜95重量%程度に設定されているが、これに限定されない。
【0030】
また、本実施形態における熱融着繊維は、ポリプロピレン(コア)とポリエチレン(クラッド)とを組み合わせたそれぞれ40mmの長さのものであるが、これに限定されない。先の表層部分tFにおける熱融着繊維の配合率は、本実施形態では10重量%の配合率となるように混合されているが、20重量%以下であればよく、これに限定されない。また、表層以外の部分における熱融着繊維の配合率は、20重量%以下であればよく、0%であってもかまわない。
【0031】
従って、コアラップなし吸収体13は、吸収体自体の液拡散性を阻害する可能性があるラップ材を有しておらず、尿などの液体はトップシート14を通過してコアラップなし吸収体13の表層部分tFから吸収され、その全域に浸透拡散することとなる。また、圧縮成形されたシート状をなすコアラップなし吸収体13の表層部分tFがセルロース繊維にて大部分を占められ、その圧縮成形性が良好となり、コアラップなし吸収体13自体および圧搾凹部25を型崩れしにくくさせることが可能である。また、コアラップなし吸収体13の表層部分tFに熱融着性繊維が配合されているため、圧縮成形後にドライヤーなどを用いて加熱することにより、熱融着性繊維の相互に接する部分が熱融着し、三次元の網目構造が熱融着繊維によって形成される。これにより、熱融着繊維の間に介在するセルロース繊維の移動が抑制され、コアラップなし吸収体13の型崩れをさらに抑制することができる。
【0032】
なお、セルロース繊維の水素結合力のみでコアラップなし吸収体13の型崩れを阻止することができる場合、コアラップなし吸収体13に上述した熱融着性繊維を用いず、セルロース繊維およびSAPのみでコアラップなし吸収体13を構成することも可能である。
【0033】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のない構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0034】
10 テープ型使い捨ておむつ(おむつ)
10F 前身頃領域
10G 股下領域
10R 後身頃領域
11 カバーシート
12 バックシート
13 コアラップなし吸収体
14 トップシート
25 圧搾凹部
t コアラップなし吸収体の最大厚み
F 表層部分の厚み
図1
図2
図3
図4
図5