特許第6863118号(P6863118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6863118-化粧シート 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863118
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20210412BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210412BHJP
   B44F 1/04 20060101ALI20210412BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B32B27/40
   B44F1/04
   B44C3/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-119649(P2017-119649)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-1120(P2019-1120A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 知弘
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−064628(JP,A)
【文献】 特開2017−042974(JP,A)
【文献】 特開2001−334625(JP,A)
【文献】 特開2017−087544(JP,A)
【文献】 特開2017−007156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B44B1/00−11/04
B44C1/00−1/14
1/18−7/08
B44D2/00−7/00
B44F1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に、絵柄模様層と、透明接着層と、透明熱可塑性樹脂層と、第1の表面保護層と、第2の表面保護層と、をこの順に備えている化粧シートにおいて、
第1の表面保護層には、凹凸模様が備えられており、
透明熱可塑性樹脂層の上には、第1の表面保護層が全面に備えられており、
第1の表面保護層の上には、部分的に第2の表面保護層が備えられており、
凹凸模様の凹部の底と凸部の頂部の高低差は、3μm以上150μm以下であり、
凹凸模様は、絵柄模様層の模様と相似形であり、絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は10mm以下、短軸方向は3mm以下であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第2の表面保護層の模様が、前記絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は6mm以下、短軸方向が1.5mm以下であり、
前記第1の表面保護層の光沢と前記第2の表面保護層の光沢の差が、JIS Z 8741に準拠した60度鏡面光沢で3〜15であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第1および第2の表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第1および第2の表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵柄パターンとシート表面の凹凸パターンと光沢パターンを同調させて、溶融押出しエンボス加工で製造する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅内外装・建具用の化粧シートとしては、意匠表現として基材シートへ印刷した絵柄に合わせてエンボス加工を行ったものが広く用いられている。また例えば、絵柄に合わせたパターンの光沢模様を最表層へ設け、明暗による視覚的な立体感を得ることが行われている。
【0003】
しかし、特に溶融押出しによるプラスチックシート成形においては、加熱によりシートの延伸が起こるため、エンボス加工による形状や光沢模様を絵柄のパターンへ一致させることが困難であった。そのため一般的には、絵柄層のパターンにおおよそ似た粗密・流れ方向を持つパターンを重ね、同調とするものであり、良好な立体感が得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−39068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、凹凸形状が絵柄と一致した同調パターンを有し、視覚的に良好な立体感を備えた化粧シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、基材シートの一方の面に、絵柄模様層と、透明接着層と、透明熱可塑性樹脂層と、第1の表面保護層と、第2の表面保護層と、をこの順に備えている化粧シートにおいて、
第1の表面保護層には、凹凸模様が備えられており、
透明熱可塑性樹脂層の上には、第1の表面保護層が全面に備えられており、
第1の表面保護層の上には、部分的に第2の表面保護層が備えられており、
凹凸模様の凹部の底と凸部の頂部の高低差は、3μm以上150μm以下であり、
凹凸模様は、絵柄模様層の模様と相似形であり、絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は10mm以下、短軸方向は3mm以下であることを特徴とする化粧シートである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記第2の表面保護層の模様が、前記絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は6mm以下、短軸方向が1.5mm以下であり、
前記第1の表面保護層の光沢と前記第2の表面保護層の光沢の差が、JIS Z 8741に準拠した60度鏡面光沢で3〜15であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1および第2の表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記第1および第2の表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の形態により、基材シート上に形成された絵柄と精度よく一致した凹凸形状パターン、および光沢値の異なる光沢模様のパターンを持ち、凹凸形状による立体感、および光沢値よる視覚的な立体感を有する、高い意匠を持つ化粧シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の化粧シートは、基材シートの一方の面に、絵柄模様層と、透明接着層と、透明熱可塑性樹脂層と、第1の表面保護層と、第2の表面保護層と、をこの順に備えており、もう一方の面に、裏面樹脂コート層を備えている化粧シートである。
本発明の化粧シートの透明熱可塑性樹脂層には、凹凸模様が備えられている。
また、透明熱可塑性樹脂層の上には、第1の表面保護層が全面に備えられている。
第1の表面保護層の上には、部分的に第2の表面保護層が備えられている。
凹凸模様の凹部の底と凸部の頂部の高低差は、3μm以上150μm以下である。
凹凸模様は、絵柄模様層の模様と相似形であり、絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は10mm以下、短軸方向は3mm以下である。
【0013】
また、第2の表面保護層の模様が、絵柄模様層の模様と同調したパターンで形成されており、絵柄模様層の模様とのずれが、絵柄模様層の模様の長軸方向は6mm以下、短軸方向が1.5mm以下であり、第1の表面保護層の光沢と前記第2の表面保護層の光沢の差が、JIS Z 8741に準拠した60度鏡面光沢で3〜15であっても良い。
【0014】
また、第1および第2の表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含んでいても良い。
【0015】
また、第1および第2の表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂であっても良い。
【0016】
以下に、本発明の化粧シートを、図面を使用して詳細に説明する。
本実施形態の化粧シート9は、図1に示すように、基材シート1の一方の面(表面)側に、絵柄模様層2、透明接着層3および透明熱可塑性樹脂層4が積層され、更に第1の表面保護層5、第2の表面保護層6が積層されている。
【0017】
また基材シート1における、絵柄模様層2とは反対側の面(裏面)には、樹脂層を構成する裏面樹脂コート層7が設けられている。熱可塑性樹脂層4へはエンボス加工により凹凸模様8が成形されている。
【0018】
(基材シート)
樹脂製の基材シート1は、例えば着色した熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択
することができる。
【0019】
基材シート1を着色する場合には、化粧シートを貼り合せる基材を隠蔽し、また絵柄模様層2の下地色として色相を適宜、選択することができる。例えば熱可塑性樹脂のシーティングに際して、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで着色ができる。あるいは絵柄模様層2を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄模様層2の下に着色層を設けることもできる。
【0020】
(絵柄模様層)
絵柄模様層2は、基材シート1上に既知の印刷手法により形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。絵柄としては、例えば、木目、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、化粧シート9を用いる箇所に適した絵柄を選ぶことができる。
【0021】
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに樹脂製の基材シート1に対する密着性や印刷適性また床材としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。
また必要な場合には、絵柄模様層2と透明接着層3および透明接着層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着性向上を目的として、絵柄模様層2の上に接着層(不図示)を設けても良い。この接着層(不図示)に用いる樹脂は特に限定するものではないが、例えば2液硬化型ウレタン樹脂などを用いることができ、例えばコーティング装置やグラビア印刷装置などを用いて設けることができる。
【0022】
(透明接着層)
透明接着層3は、基材シート1および絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4の接着を強固にする目的で設けられる。この接着が強固であることによって、化粧シート9に対し曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。
【0023】
(透明熱可塑性樹脂層)
透明熱可塑性樹脂層4は、例えば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる

樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。特に曲げ加工性においては曲げ部の白化や割れが発生しないことを考慮して選択することが重要である。
【0024】
透明熱可塑性樹脂層4の形成は、溶融押出し成形により形成することができる。
透明熱可塑性樹脂層4によって、化粧シートは意匠的に厚みや深みが出る効果を有するほか、化粧シートの耐候性、耐磨耗性能を向上させることができる。
【0025】
(第1および2の表面保護層)
第1の表面保護層5は、透明熱可塑性樹脂層4上に形成され、透明熱可塑性樹脂層4の全体を被覆するシート状の層である。第2の表面保護層6は、第1の表面保護層5と透明熱可塑性樹脂層4を通して、絵柄模様層2の模様を透視できる程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。第1の表面保護層5は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層5としても良い。
【0026】
表面保護層5の厚みは、凹凸模様8を完全に埋めて意匠感を損なうことなく透明熱可塑
性樹層4の表面を保護するに足る強度を得る点から、3μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
表面保護層5、6の材料としては、接着性、化粧シート9の変形追従性、耐擦傷性等を考慮する場合は、熱硬化型樹脂が好ましい。さらには、コスト、汎用性から2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー)を用いるのが好ましい。熱硬化型樹脂には、シリカ粒子等の艶消剤の添加を行ってもよい。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0028】
また、耐擦傷性を重視する場合は、硬度の観点から電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。これにより、表面保護層5、6、つまり化粧シート9の最表面層の硬度を向上でき、化粧シート9の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。また、例えば、バインダーとして、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物を用いる構成としてもよい。
【0029】
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
【0030】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
【0031】
第2の表面保護層6は、第1の表面保護層5上に部分的に形成され、第1の表面保護層5の一部(例えば絵柄模様層2の印刷インキと対向する部分)を被覆する層である。これにより、化粧シート9の意匠を絵柄模様層2に由来する視覚と表面保護層6へエンボス賦形されたに由来する触感との両方で表現できる。第2の表面保護層6は、例えば、第1の表面保護層5上の0.1%以上の面積に形成すればよい。
【0032】
第2の表面保護層6へは艶消剤を適宜添加することにより、第1の表面保護層5の光沢(艶)と第2の表面保護層6の光沢に差をつけることができる。光沢値は化粧シートの使用条件下における意匠上の要請から任意に選択され、おおよそJIS Z 8741に準拠した60度鏡面光沢で、4〜60の範囲で用いられるが、値の差は低光沢においても目視での差を感ずることができるよう3以上であることが好ましく、また、高光沢においては光沢の差が少ない場合は変化を感じ難いため、地の光沢値の50%程度のコントラストがあることが好ましい。実用上は15程度までの差があれば意匠的に優れた効果を得られる。したがって光沢の差は0〜30の範囲、好ましくは3〜15である。
【0033】
このように、第2の表面保護層6を第1の表面保護層5と異なる光沢で形成することにより、第2の表面保護層6と第1の表面保護層5で、視覚的な立体感を適切に表現できる。
【0034】
第2の表面保護層6に含まれる艶消剤は、シリカ粒子が好ましく熱硬化性樹脂の全質量に対し、5質量%以上含むのが好ましい。これにより、第2の表面保護層6の光沢を十分に低下でき、第2の表面保護層6と第1の表面保護層5との光沢差を調整することができる。それゆえ、第1の表面保護層5の全面積に対し、第2の表面保護層6の面積が小さくても、視覚的な立体感を適切に感じさせることができる。なお、艶消剤は表面保護層6の樹脂の全質量に対し、35質量%以下とする。これを超えると表面保護層6の凝集力が低下し耐擦傷性が低下すると共に、透明性が損なわれて絵柄層2の視認性が悪化する。
【0035】
このように、本実施形態では、第1の表面保護層5と第2の表面保護層6を異なる光沢で設けることにより、第1の表面保護層5と第2の表面保護層6で視覚的に立体感を感じさせることができる。また、絵柄模様層2のパターンと表面保護層6のパターンのずれは、長軸方向は6mm以下、短軸方向が1.5mm以下であれば、化粧シートの用途である建材内外装・建具等の視認距離内では意匠に違和感を感じない。また、艶の差が顕著に現れるのは斜光の反射を目視した場合であり、多くは全反射角に近い角度となるため、絵柄模様層2の視認性が低下してパターンのずれを意識しにくい。
【0036】
(凹凸模様)
凹凸模様8は、凹部と凸部の高さの差が3μm〜150μmの範囲であり、意匠の要請により選択される。また、絵柄層2と互いに同調したパターンで形成され、絵柄模様層2とのずれが長軸方向は10mm以下、短軸方向が3mm以下である。凹凸パターンは透明熱可塑性樹脂層4が透明であるため、斜光の反射によりはじめて強く視認されるが、ずれが範囲内であれば反射光と同時に絵柄層2の透過光を視認することが困難で違和感を感じない。
【0037】
以下に本発明の4つの実施形態について説明する。
【0038】
<第一の実施形態>
第一の実施形態に係る化粧シート9は、基材シート1上に形成された絵柄模様層2と、絵柄模様層2上に形成された透明熱可塑性樹脂層4、第1と2の表面保護層5、6と、凹凸模様8を備えている。絵柄模様層2と凹凸模様8は相似のパターンを形成し、ずれは、長軸方向は10mm以下、短軸方向は3mm以下である。長軸方向に12mm、短軸方向に5mmずれると凹凸模様と絵柄の不一致から意匠が低下した。保護層5の厚み100μmにおいては、凹凸模様の高低差が150μmを超えると凹部へ保護層5が形成されず、耐汚染・耐傷性が低下した。
このように、凹凸模様8の凹部と凸部の高さの差が3〜150μmの範囲であり、かつ絵柄模様層2と同調したパターンで形成され、絵柄模様層とのずれが長軸方向は10mm以下、短軸方向が3mm以下であるシートを形成することにより、絵柄を立体的に補助した意匠性に優れた化粧シートを提供することができる。
【0039】
<第二の実施形態>
第二の実施形態に係る化粧シート9では、基材シート1上に形成された絵柄模様層2と、絵柄模様層2上に形成された表面保護層5と、表面保護層5上に部分的に形成された第2の表面保護層6とを備えている。そして、表面保護層5の光沢は、第2の表面保護層6の光沢と3〜15の差がある。表面保護層6は絵柄模様層2と相似のパターンで形成され、絵柄模様層2とのずれが長軸方向は6mm以下、短軸方向が1.5mm以下である。この範囲においては、ずれが意匠の違和感として認識されにくい。斜光で観察するところでは、保護層6の光沢パターンにより立体感が強調され、優れた意匠が得られた。長軸方向に8mm、短軸方向に2mmずれると、絵柄パターンと表面保護層6の光沢パターンが干渉し、ステレオ印刷のように2重に見えるため意匠が著しく低下した。
このように、第2の表面保護層6を、表面保護層5と異なる光沢で絵柄模様層に同調したパターンで形成し、視覚的な立体感を有する化粧シートを提供できる。
【0040】
<第三の実施形態>
第三の実施形態に係る化粧シート9では、第1および第2の表面保護層5、6を熱硬化性のポリエステルポリウレタン樹脂で形成し、MDF(Midium Density Fiberboad、中質繊維板)基材へ貼り合せた鉛筆硬度試験(JIS K 5600−5−4「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」で評価4Bを得た。シートをJIS K 7074−1988の炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法に準拠して、2mmRで折り曲げたところでは、表面保護層5、6への不具合は発生しなかった。
このように、第1および第2の表面保護層5、6を熱硬化性樹脂で形成することにより、耐傷性および変形追従性に優れた化粧シートを提供することができる。
【0041】
<第四の実施形態>
第四の実施形態に係る化粧シート9では、第1および第2の表面保護層5、6をUV硬化型樹脂で形成し、MDF基材へ貼り合せた鉛筆硬度試験JIS K 5600−5−4「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)では評価Fを得た。ただし、シートをJIS K 7074−1988の炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法に準拠して、2mmRで折り曲げた際に保護層にクラックが発生した。
このように第1および第2の表面保護層5、6を電離放射線樹脂で形成することにより、耐傷性に優れた化粧シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 基材シート
2 絵柄模様層
3 透明接着層
4 透明熱可塑性樹脂層
5 第1の表面保護層
6 第2の表面保護層
7 裏面樹脂コート層
8 凹凸模様
9 化粧シート
図1