(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような燃料電池発電システムにおいては、燃料として、都市ガスやLPガス等の化石燃料を用いており、化石燃料を使用する分だけ二酸化炭素が大気へ排出される。この二酸化炭素の大気への排出量は、化石燃料の使用量から直接計算することが可能である。二酸化炭素の大気への排出は地球温暖化に繋がるため、化石燃料の使用を極力抑えることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる燃料電池発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する燃料電池発電システムは、化石燃料に含まれる水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池から排出される排出ガス中に含まれる二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、前記二酸化炭素分離手段により分離された二酸化炭素と水素とを反応させることにより炭化水素を生成する炭化水素生成手段と、前記炭化水素生成手段に水素を供給する水素供給手段と、を備え、前記炭化水素生成手段により生成された前記炭化水素を前記燃料電池に供給する。
【0007】
これによれば、燃料電池から排出される排出ガス中に含まれる二酸化炭素が二酸化炭素分離手段により分離され、二酸化炭素分離手段から分離された二酸化炭素が、炭化水素生成手段により水素供給手段から供給される水素と反応して炭化水素となる。よって、燃料電池から排出される排出ガスが大気へ排出されても、二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。そして、炭化水素生成手段により生成された炭化水素が燃料電池に供給されることにより、燃料電池は、炭化水素生成手段により生成された炭化水素を用いて発電を行うことができるため、化石燃料の使用を抑えることができる。したがって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。
【0008】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記水素供給手段は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を用いて水素を生成する水素生成手段と、を有しているとよい。
【0009】
これによれば、炭化水素生成手段へ供給される水素の生成に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。よって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量をさらに抑えることができる。
【0010】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記炭化水素生成手段により生成される炭化水素の量に基づいて、前記化石燃料における前記燃料電池への供給量を制御する制御手段をさらに備えているとよい。
【0011】
これによれば、化石燃料を燃料電池へ無駄に供給してしまうことを回避することができ、化石燃料の使用を抑え易くすることができる。したがって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量をさらに抑えることができる。
【0012】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記炭化水素はメタンであるとよい。メタンは、燃料電池の発電に用いられる炭化水素として好適である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃料電池発電システムを具体化した一実施形態を
図1にしたがって説明する。
図1に示すように、燃料電池発電システム10は、水素(H
2)と酸素(O
2)とを化学反応させて発電を行う燃料電池11を備えている。燃料電池11は、固体酸化物電解質形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)である。
【0016】
燃料電池11は、燃料供給流路12を介して燃料供給源13に接続されている。そして、燃料電池11には、燃料供給流路12を介して燃料供給源13から化石燃料である都市ガスが供給される。都市ガスは、メタン(CH
4)を主成分とする。都市ガスは、図示しない改質器によって水素リッチな改質ガスに改質された後、燃料電池11のアノード側に供給される。そして、燃料電池11は、燃料電池11のアノード側に供給される改質ガス中の水素と燃料電池11のカソード側に供給される空気中の酸素とを化学反応させて発電を行う。燃料電池11によって発電された電力は、例えば、工場内に存在する負荷W1に供給される。
【0017】
燃料電池11では、以下の式(1)に示した反応が起こる。
CH
4+2CO
2→CO
2+2H
2O・・・(1)
式(1)に示されるように、燃料電池11からは、水蒸気(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を主成分とし、水素及び酸素の他にメタン、一酸化炭素(CO)、及び窒素(N
2)を含んだ排出ガスが排出される。
【0018】
燃料電池発電システム10は、燃料電池11から排出される排出ガス中に含まれる二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段としての二酸化炭素分離器14を備えている。二酸化炭素分離器14と燃料電池11とは、ガス排出路15を介して接続されている。そして、燃料電池11から排出される排出ガスは、ガス排出路15を介して二酸化炭素分離器14に排出される。燃料電池11からガス排出路15を介して二酸化炭素分離器14に排出ガスが排出されると、二酸化炭素分離器14により排出ガス中に含まれる二酸化炭素のみが分離されて回収される。二酸化炭素分離器14による二酸化炭素の分離/回収の具体的な方法としては、例えば、二酸化炭素を選択的に溶解できるアルカリ性溶液を利用する化学吸収法、メタノール等の吸収液を使用して、高圧・低温下で物理的に二酸化炭素を吸収させる物理吸収法、膜による各気体の透過速度の違いを利用して混合ガスから各気体を分離する膜分離法などが挙げられる。
【0019】
燃料電池発電システム10は、二酸化炭素分離器14により分離された二酸化炭素と水素とを反応させることにより炭化水素であるメタンを生成する炭化水素生成手段としてのメタネーション反応器16を備えている。メタネーション反応器16と二酸化炭素分離器14とは二酸化炭素供給路17を介して接続されている。そして、二酸化炭素分離器14により分離された二酸化炭素は、二酸化炭素供給路17を介してメタネーション反応器16に供給される。
【0020】
さらに、燃料電池発電システム10は、太陽光を利用して発電を行う太陽光発電機18と、太陽光発電機18によって発電された電力を用いて水素を生成する水電気分解装置19と、を備えている。
【0021】
太陽光発電機18により発電された電力は、水電気分解装置19に供給される。水電気分解装置19は、太陽光発電機18により発電された電力が供給されることにより駆動する。
【0022】
水電気分解装置19には、例えば、燃料電池11で発生した水が、図示しない管路を介して供給される。また、水電気分解装置19とメタネーション反応器16とは、水素供給路20を介して接続されている。そして、水電気分解装置19により水が電気分解されることにより水素が発生し、水電気分解装置19で発生した水素が水素供給路20を介してメタネーション反応器16に供給される。
【0023】
よって、太陽光発電機18、水電気分解装置19、及び水素供給路20は、メタネーション反応器16に水素を供給する水素供給手段を構成する。そして、水素供給手段は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電機としての太陽光発電機18と、太陽光発電機18によって発電された電力を用いて水素を生成する水素生成手段としての水電気分解装置19と、を有している。
【0024】
メタネーション反応器16には、図示しない触媒が充填されている。触媒としては、例えば、ニッケル系触媒が用いられる。そして、この触媒の働きにより、以下の式(2)に示した発熱反応であるメタネーション反応が起こる。
【0025】
4H
2+CO
2→CH
4+2H
2O・・・(2)
式(2)に示されるように、メタネーション反応器16では、二酸化炭素分離器14により分離されて二酸化炭素供給路17を介してメタネーション反応器16に供給された二酸化炭素と、水電気分解装置19から水素供給路20を介してメタネーション反応器16に供給された水素とが反応してメタンが生成される。なお、メタネーション反応器16におけるメタネーション反応の円滑な進行には、メタネーション反応器の温度、具体的には、触媒の温度が重要であり、この触媒の温度は、図示しない熱交換器との熱交換が行われることにより調整されている。
【0026】
メタネーション反応器16と燃料電池11とはメタン供給路21を介して接続されている。そして、メタネーション反応器16により生成されたメタンは、メタン供給路21を介して燃料電池11に供給される。よって、燃料電池発電システム10は、メタネーション反応器16により生成されたメタンを燃料電池11に供給する。
【0027】
メタン供給路21には、流量センサ22が設けられている。流量センサ22は、メタン供給路21を流れるメタンの流量を検出する。メタン供給路21を流れるメタンの流量は、メタネーション反応器16により生成されるメタンの量と等しい。流量センサ22は、制御装置23に電気的に接続されている。そして、流量センサ22の検出信号が制御装置23に送られる。
【0028】
また、燃料供給流路12には、流量調整弁24が設けられている。流量調整弁24は、燃料供給源13から燃料供給流路12を介した燃料電池11への都市ガスの供給量を調整する。流量調整弁24は、制御装置23に電気的に接続されている。制御装置23は、流量センサ22から送られる検出信号に基づいて、流量調整弁24の弁開度を制御する。つまり、流量センサ22、制御装置23、及び流量調整弁24は、メタネーション反応器16により生成されるメタンの量に基づいて、都市ガスにおける燃料電池11への供給量を制御する制御手段を構成する。
【0029】
制御装置23は、流量センサ22から検出されたメタンの流量が、予め定められた流量よりも小さいほど、流量調整弁24の弁開度が大きくなるように流量調整弁24の弁開度を制御する。また、制御装置23は、流量センサ22から検出されたメタンの流量が、予め定められた流量に近づくほど、流量調整弁24の弁開度が小さくなるように流量調整弁24の弁開度を制御する。そして、制御装置23は、流量センサ22から検出されたメタンの流量が、予め定められた流量以上になると、流量調整弁24が閉弁状態となるように流量調整弁24を制御する。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。
燃料電池11から排出される排出ガス中に含まれる二酸化炭素は、二酸化炭素分離器14により分離される。よって、燃料電池11から排出される排出ガスが大気へ排出されても、二酸化炭素の大気への排出量が抑えられている。
【0031】
そして、二酸化炭素分離器14から分離されて二酸化炭素供給路17を介してメタネーション反応器16に供給された二酸化炭素と、水電気分解装置19から水素供給路20を介してメタネーション反応器16に供給される水素とが、メタネーション反応器16においてメタネーション反応してメタンとなる。
【0032】
また、水電気分解装置19は、太陽光発電機18によって発電された電力を用いて駆動するため、メタネーション反応器16へ供給される水素の生成に起因する二酸化炭素の大気への排出量が抑えられている。
【0033】
そして、メタネーション反応器16により生成されたメタンが燃料電池11に供給されることにより、燃料電池11では、都市ガス、及びメタネーション反応器16により生成されたメタンを燃料として発電が行われる。
【0034】
制御装置23は、流量センサ22から検出されたメタンの流量が、予め定められた流量に近づくほど、流量調整弁24の弁開度が小さくなるように流量調整弁24の弁開度を制御する。よって、燃料供給源13から燃料供給流路12を介した燃料電池11への都市ガスの供給量が少なくなり、都市ガスの使用が抑えられる。
【0035】
そして、制御装置23は、流量センサ22から検出されたメタンの流量が、予め定められた流量以上になると、流量調整弁24が閉弁状態となるように流量調整弁24を制御する。これにより、燃料供給源13から燃料供給流路12を介した燃料電池11への都市ガスの供給が停止される。その後、燃料電池11では、メタネーション反応器16からメタン供給路21を介して燃料電池11に供給されるメタンのみを燃料として発電が行われる。
【0036】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)燃料電池11から排出される排出ガス中に含まれる二酸化炭素が二酸化炭素分離器14により分離され、二酸化炭素分離器14から分離された二酸化炭素が、メタネーション反応器16において、水電気分解装置19から供給される水素と反応してメタンとなる。よって、燃料電池11から排出される排出ガスが大気へ排出されても、二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。そして、メタネーション反応器16により生成されたメタンが燃料電池11に供給されることにより、燃料電池11は、メタネーション反応器16により生成されたメタンを用いて発電を行うことができるため、都市ガスの使用を抑えることができる。したがって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。
【0037】
(2)燃料電池発電システム10は、再生可能エネルギーである太陽光を利用して発電を行う太陽光発電機18と、太陽光発電機18によって発電された電力を用いて水素を生成する水電気分解装置19と、を備えている。これによれば、メタネーション反応器16へ供給される水素の生成に起因する二酸化炭素の大気への排出量を抑えることができる。よって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量をさらに抑えることができる。
【0038】
(3)流量センサ22、制御装置23、及び流量調整弁24は、メタネーション反応器16により生成されるメタンの量に基づいて、都市ガスにおける燃料電池11への供給量を制御する制御手段を構成する。これによれば、都市ガスを燃料電池11へ無駄に供給してしまうことを回避することができ、都市ガスの使用を抑え易くすることができる。したがって、発電に起因する二酸化炭素の大気への排出量をさらに抑えることができる。
【0039】
(4)メタネーション反応器16は、炭化水素であるメタンを生成する。メタンは、燃料電池11の発電に用いられる炭化水素として好適であり、燃料電池発電システム10の発電効率の向上に寄与する。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、燃料電池発電システム10は、メタネーション反応器16により生成されるメタンの量に基づいて、都市ガスにおける燃料電池11への供給量を制御する構成でなくてもよい。例えば、メタネーション反応器16によりメタンが生成されてから所定の時間経過後に、燃料供給源13から燃料供給流路12を介した燃料電池11への都市ガスの供給を停止するようにしてもよい。
【0041】
○ 実施形態において、水素生成手段は、水を電気分解することにより水素を生成する水電気分解装置19に限らず、水素を生成可能な装置であれば、特に限定されるものではない。
【0042】
○ 実施形態において、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電機として、太陽光発電機18の代わりに、例えば、風力を利用して発電を行う風力発電機や、波力を利用して発電を行う波力発電機などを使用してもよい。
【0043】
○ 実施形態において、水電気分解装置19を駆動させる電力として、商用電源からの電力を用いてもよい。
○ 実施形態において、水電気分解装置19に供給される水は、燃料電池11で発生した水以外の水であってもよい。
【0044】
○ 実施形態において、化石燃料は、都市ガス以外の炭化水素ガスであってもよく、例えば、LPガスであってもよい。
○ 実施形態において、炭化水素生成手段により生成される炭化水素は、例えば、ブタン(C
4H
10)であってもよい。