(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記規制部が、前記第1カシメ部の内周と前記第2カシメ部の内周とに接するように配されていてもよい。
この構成によれば、圧着部を電線に圧着した直後に、規制部がスプリングバックによって電線の外周から径方向へ離間する方向へ変位しようとしても、規制部と第1係止部との係止及び規制部と第2係止部との係止が外れる虞はない。
【0011】
本発明は、前記第1係止部と前記第2係止部が、前記電線の軸線方向に並ぶように配され、前記規制部に対し前記規制部を前記周方向に挟むように係止されていてもよい。
この構成によれば、第1係止部と第2係止部が、電線の軸線方向において同じ位置に配されて、規制部に対し規制部を周方向に引っ張るように係止する場合に比べると、1つのカシメ部の周方向における延出長さが長くなる。したがって、第1カシメ部及び第2カシメ部による固着強度が向上する。
【0012】
本発明は、前記第1カシメ部が、前記基板部に連なり且つ前記基板部から前記周方向に延出した第1基部と、前記第1基部の延出端から前記周方向へ延出し且つ前記第1基部よりも幅狭の第1延出部とを備え、前記第2カシメ部が、前記基板部に連なり且つ前記基板部から前記周方向に延出した第2基部と、前記第2基部の延出端から前記周方向へ延出し且つ前記第2基部よりも幅狭の第2延出部とを備え、前記第1延出部と前記第2延出部が、前記電線の軸線方向に並ぶように配されていてもよい。
この構成によれば、第1カシメ部の形成範囲と第2カシメ部の形成範囲を電線の軸線方向に拡げなくても、第1カシメ部及び第2カシメ部の周方向における延出長さが長くなるので、固着強度が向上する。
【0013】
本発明は、前記第1カシメ部には、前記電線の軸線方向に間隔を空けた一対の前記第1係止部が形成され、前記一対の第1係止部と前記第2係止部が前記電線の軸線方向に交互に並ぶように配されていてもよい。
電線が軸線と交差する方向の外力を受けたときに、例えば、電線が第2カシメ部を拡開方向へ押圧すると、第2係止部の係止力によって、第2カシメ部が規制部を変形させながら拡開方向へ変形することが懸念される。しかし、上記構成によれば、一対の第1係止部のうち電線に対する外力付与位置に近い側の第1係止部が、規制部に係止して規制部の変形を規制するので、第2カシメ部は、電線からの押圧力を受けても拡開方向へ変形する虞はない。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図12を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図1,2,8,11における斜め右下方、及び
図4,7,9における左方を、前方と定義する。上下の方向については、
図1〜3,5〜8,10,11にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1,8,11における斜め左上方を右方と定義し、
図5,6,10にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。尚、本実施例1における周方向は、シールド電線11の軸線と平行に視たときの時計回り方向と半時計回り方向の両方向を含む。
【0015】
本実施例1の電線の圧着構造はシールド導電路10に適用したものである。シールド導電路10は、シールド電線11(請求項に記載の電線)の前端部にシールド端子20を固着した形態である。シールド電線11は、複数本の被覆電線12を円形断面の絶縁体15内に埋設し、絶縁体15の外周を編組線からなる筒状のシールド層16で包囲し、シールド層16を円筒形のシース17で包囲したものである。シールド電線11の前端部においては、シース17と絶縁体15が除去されて、複数本の被覆電線12が個別に屈曲可能な状態で露出している。各被覆電線12の前端部では、絶縁被覆13が除去されて芯線14の前端部が露出している。
【0016】
芯線14の露出領域より後方では、シールド層16の前端部が後方へ折り返されてシース17の外周を覆っている。シールド電線11のうちシース17をシールド層16で包囲した前端部領域の外周には、金属製のスリーブ18がカシメ付けにより固着され、これにより、シールド層16が、全周に亘ってシース17の外周とスリーブ18の内周との間に挟み付けられている。これにより、シールド層16を構成する金属細線のばらつきが防止されている。シールド電線11のうちスリーブ18が固着された領域を、シールド接続端部19と定義する。
【0017】
シールド端子20は、各被覆電線12の芯線14の前端部に個別に接続した内導体21と、複数の内導体21を収容した誘電体22と、誘電体22の外周を包囲した状態で誘電体22に取り付けられた外導体23とを備えて構成されている。誘電体22の後端面とシールド接続端部19の前端との間では、誘電体22の後端面から導出した被覆電線12の一部が露出している。
【0018】
外導体23は、機能的には、シェル本体部24と、シェル本体部24の後端に連なる圧着部25とを備えて構成されている。圧着部25はシールド層16に圧着されている。外導体23は、部品構成的には、金属板材に曲げ加工等を施したアッパシェル26と、金属板材に曲げ加工等を施した製のロアシェル42を上下に合体して構成されている。
【0019】
図8〜10に示すように、アッパシェル26は、シェル本体部24を構成するアッパ側本体部27と、基板部30と、第1カシメ部31と、第2カシメ部36とを有する単一部品である。アッパ側本体部27は、上板部28と、上板部28の左右両側縁から下方へ略直角に延出した一対の側板部29とから構成されている。基板部30は、上板部28の後端縁から後方へ延出した形態であり、圧着部25を構成する。基板部30をシールド電線11の軸線方向(前後方向)と直角に切断したときの断面形状は、上方へ膨らむように湾曲したアーチ形をなしている。
【0020】
圧着部25(外導体23)がシールド電線11に圧着されていない状態において、第1カシメ部31は、基板部30の右側縁部から斜め右下方へ略平板状に延出した形態である。第1カシメ部31の延出方向は、圧着済みの状態ではシールド電線11を包囲する周方向となる。第1カシメ部31は、基板部30に連なる略方形の第1基部32と、第1基部32の延出端縁(基板部30とは反対側の端縁)から片持ち状に且つ第1基部32と面一状をなすように延出した前後一対の第1延出部33とから構成されている。1つの第1延出部33の幅寸法(シールド電線11の軸線方向の寸法)は、第1基部32の幅寸法よりも小さい。
【0021】
一対の第1延出部33は、第1基部32より幅狭なので、前後に間隔を空けて配されている。前側の第1延出部33は、第1基部32の延出端縁における前端部から延出している。後側の第1延出部33は、第1基部32の延出端縁における後端部から延出している。各第1延出部33は長方形をなしており、第1基部32からの延出寸法(シールド電線11の軸線と直交する周方向の寸法)が、幅寸法より十分に長い長方形をなしている。
【0022】
前後一対の第1延出部33の延出端部には、夫々、第1係止部34が形成されている。第1係止部34は、第1延出部33の延出端部をその内面(基板部30の凹面に連なる面であり、シールド電線11の外周面と対向する面)側へ折り返すように屈曲した形態である。第1係止部34は、第1延出部33の全幅に亘って形成されており、第1延出部33の内面から第1係止部34の板厚相当分だけ突出している。第1係止部34の延出端面は、基板部30(第1基部32)側に面した第1係止面35となっている。
【0023】
圧着部25(外導体23)がシールド電線11に圧着されていない状態において、第2カシメ部36は、基板部30の左側縁部から斜め左下方へ略平板状に延出した形態である。第2カシメ部36の延出方向は、圧着済みの状態ではシールド電線11を包囲する周方向となる。圧着済みの状態では、第2カシメ部36の延出方向と第1カシメ部31の延出方向は逆向きである。つまり、圧着部25を後方からシールド電線11の軸線方向と平行に視ると、第1カシメ部31が第1基部32から時計回り方向に延出するのに対し、第2カシメ部36は基板部30から反時計回り方向に延出した状態となる。
【0024】
第2カシメ部36は、基板部30に連なる略方形の第2基部37と、第2基部37の延出端縁(基板部30とは反対側の端縁)から片持ち状に且つ第1基部32と面一状をなすように延出した1つの第2延出部38とから構成されている。第2延出部38の幅寸法(シールド電線11の軸線方向の寸法)は、第2基部37の幅寸法よりも小さい。
【0025】
第2基部37より幅狭の第2延出部38は、第2基部37の延出端縁における前後方向中央位置から延出している。第2延出部38は長方形をなしており、第2基部37からの延出寸法が、幅寸法より十分に長い長方形をなしている。第2延出部38の幅寸法は、前後一対の第1延出部33の間隔と同じか、それよりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0026】
第2延出部38の延出端部には、第2係止部39が形成されている。第2係止部39は、第2延出部38の延出端部をその内面(基板部30の凹面に連なる面であり、シールド電線11の外周面と対向する面)側へ折り返すように屈曲した形態である。第2係止部39は、第2延出部38の全幅に亘って形成されており、第2延出部38の内面から第2係止部39の板厚相当分だけ突出している。第2係止部39の延出端面は、基板部30(第2基部37)側に面した第2係止面40となっている。
【0027】
第2カシメ部36の幅寸法は第1カシメ部31の幅寸法と同じであり、第1カシメ部31と第2カシメ部36は、前後方向において同じ領域に配されている。基板部30の後端縁と第1基部32の後端縁と第2基部37の後端縁は、前後方向において同じ位置に配されて段差無く連なっている。
【0028】
圧着部25の後端縁には、複数(本実施例1では4つ)の食込み突起41が形成されている。食込み突起41は、圧着部25の後端縁部の一部を内側(シールド電線11の外周面に向かう方向)へ曲げた形態である。基板部30の後端縁には左右一対の食込み突起41が形成され、第1基部32の後端縁と第2基部37の後端縁には、夫々、1つずつの食込み突起41が形成されている。
【0029】
ロアシェル42は、シェル本体部24を構成するロア側本体部43と、規制部46とを有する単一部品である。ロア側本体部43は、板状の下面部44と、下面部44の左右両側縁から上方へ略直角に延出した一対の板状をなす側面部45とから構成されている。規制部46は、上面部の後端縁から後方へ片持ち状に延出した形態であり、圧着部25を構成する。規制部46の平面視形状は、前後方向に長い略長方形である。
【0030】
次に、シールド導電路10の組付けについて説明する。アッパシェル26とロアシェル42を組み付けると、アッパ側本体部27とロア側本体部43が誘電体22を挟むように上下に合体され、角筒状のシェル本体部24が構成される。シェル本体部24内には、誘電体22の全体と被覆電線12の露出領域とが収容されている。外導体23とシールド電線11が圧着されていない状態において、シェル本体部24の後端に連なる圧着部25では、基板部30と規制部46が上下に対向するように位置し、基板部30と規制部46との間には、シールド接続端部19が配されている。
【0031】
この状態で、圧着部25とシールド接続端部19をアプリケータ(図示省略)にセットして圧着を行う。圧着工程では、クリンパとアンビルが圧着部25とシールド接続端部19を上下に挟み、圧着部25が縮径しながらシールド接続端部19を包囲するように塑性変形させられる。詳細には、基板部30がシールド接続端部19の上面部に押し付けられ、第1基部32がシールド接続端部19の右側面部に押し付けられ、第2基部37がシールド接続端部19の左側面部に押し付けられる。
【0032】
また、前後両第1延出部33と第2延出部38が塑性変形しながら規制部46の外面(下面)に押し付けられる。このとき、第2延出部38が前後両第1延出部33の間に嵌合し、前後一対の第1係止部34が、接近するように塑性変形する。クリンパとアンビルの挟圧力を受けた圧着部25の変形量が最大になった状態を後方から視ると、前後一対の第1係止部34が規制部46よりも時計回り方向前方に位置し、第1係止面35と規制部46の左側面との間には隙間(図示省略)が空く。第2係止部39は規制部46よりも反時計回り方向前方に位置し、第2係止面40と規制部46の右側面との間には隙間(図示省略)が空く。
【0033】
この後、圧着部25に対するクリンパとアンビルの挟圧が解除されるが、圧着部25がシールド接続端部19の外周にカシメ付けられて固着される状態は、下記のメカニズムにより維持される。圧着部25に対するクリンパとアンビルの挟圧が解除されると、第1カシメ部31と第2カシメ部36がスプリングバックによって拡径方向へ弾性復帰するとともに、規制部46がスプリングバックによって径方向外方(下方)へ弾性復帰する。
【0034】
第1カシメ部31が拡径変形する際には、第1係止部34が反時計回り方向(
図5における右方)へ変位すると同時に径方向外方(下方)へ変位する。このとき、規制部46は、第1延出部33の内面に当接した状態を保ったままスプリングバックによって径方向外方へ変位するので、第1係止部34は、規制部46に係止して反時計回り方向への変位を規制される。
【0035】
圧着済みの圧着部25とシールド接続端部19を後方から視ると、
図5に示すように、前後一対の第1係止部34が規制部46よりも時計回り方向前方(
図5における左方)に位置する状態は維持されるが、第1係止面35は規制部46の左側面に対し反時計回り方向に当接させた状態で規制部46に係止する。これにより、第1カシメ部31の過度の拡開変形が規制される。
【0036】
第2カシメ部36が拡径変形する際には、第2係止部39が時計回り方向(
図6における左方)へ変位すると同時に径方向外方(下方)へ変位する。このとき、規制部46は、第2延出部38の内面に当接した状態を保ったままスプリングバックによって径方向外方へ変位するので、第2係止部39は、規制部46に係止して時計回り方向への変位を規制される。
【0037】
圧着済み状態を後方から視ると、
図6に示すように、第2係止部39が規制部46よりも反時計回り方向前方(
図6における右方)に位置し、第2係止面40を規制部46の右側面に対し時計回り方向に当接させた状態で規制部46に係止する。これにより、第2カシメ部36の過度の拡開変形が規制される。
【0038】
また、圧着済み状態では、食込み突起41が、絶縁体15の外周のうちスリーブ18の後方直近の位置に食い込む。この食込み突起41の食い込みにより、基板部30と第1基部32と第2基部37は、シールド電線11に対する周方向への相対変位及び軸線方向への相対変位を規制される。
【0039】
以上により、圧着部25がシールド接続端部19の外周に圧着された状態を維持し、圧着が完了する。圧着が完了すると、外導体23とシールド層16が導通可能に接続され、外導体23(シールド端子20)とシールド電線11が相対変位規制状態に固着された状態に接続され、外導体23の組付けとシールド導電路10の組付けが完了する。
【0040】
また、圧着済みの状態では、規制部46のほぼ全領域が第1カシメ部31(第1延出部33)と第2カシメ部36(第2延出部38)によって覆われている。また、規制部46の外面(下面)は、第1カシメ部31(第1延出部33)の内周と第2カシメ部36(第2延出部38)の内周に接するように配されている。前後一対の第1係止部34と1つの第2係止部39は、シールド電線11の軸線方向(前後方向)に交互に並ぶように配されている。また、周方向における第1延出部33の延出方向と第2延出部38の延出方向は、互いに逆方向となっており、第1係止部34と第2係止部39は、規制部46に対し規制部46を周方向に挟むように係止している。
【0041】
シールド電線11のうちシールド端子20より後方の領域が、軸線と交差する方向(例えば、右方)へ引っ張られると、その引張力は圧着部25の後端部、即ち、前後一対の
第1延出部33のうちの後側の
第1延出部33に作用する。そのため、この
第1延出部33は、右方(第2カシメ部36から遠ざかる方向)へ押圧されるのであるが、
第1延出部33に形成されている第1係止部34が規制部46に対し左側から当接しているので、
第1延出部33が右方へ変位することはない。
【0042】
また、シールド電線11に作用する右向きの引張力が規制部46の剛性(強度)を上回る大きさである場合、規制部46が全体的に右方へ湾曲するように変形し、後側の
第1延出部33が右方へ変形してしまうことが懸念される。しかし、後側の第1係止部34の前方では、第2係止部39が規制部46に対して右方から係止しているので、規制部46が引張力に負けて右方へ湾曲するように変形する虞はない。
【0043】
また、圧着部25の後方でシールド電線11に左向きの引張力が作用した場合には、第2カシメ部36に左方への押圧力が作用するが、第2係止部39が規制部46に係止しているので、第2カシメ部36が左方へ変位することはない。また、左向きの引張力が大きくても、第1延出部33の前後両方近傍に位置する前後一対の第1係止部34が、規制部46に対し左側から係止しているので、規制部46が湾曲変形する虞はない。
【0044】
上述のように本実施例1の電線の圧着構造は、シールド導電路10に適用され、シールド電線11と圧着部25との固着強度の向上を実現するものである。
この圧着構造は、シールド電線11と、シールド電線11の外周に固着されたオープンバレル状の圧着部25とを備えている。圧着部25は、基板部30と第1カシメ部31と第2カシメ部36と規制部46とを備えている。
【0045】
基板部30は、シールド電線11を構成する絶縁体15の外周のうちシールド層16で包囲されたシールド接続端部19に沿うように配されている。第1カシメ部31は、基板部30の右側縁部からシールド電線11の周方向へ片持ち状に延出した形態であり、シールド電線11のシールド接続端部19に対しその外周を包囲するようにカシメ付けられている。第2カシメ部36は、基板部30の左側縁部から周方向において第1カシメ部31とは逆方向へ片持ち状に延出した形態であり、シールド接続端部19に対しその外周を包囲するようにカシメ付けられている。
【0046】
第1カシメ部31は第1係止部34が形成され、第2カシメ部36には第2係止部39が形成されている。規制部46は、シールド電線11のシールド接続端部19の外周に沿うように配されており、規制部46には、第1係止部34と第2係止部39が周方向において互いに逆向きに係止されている。第1係止部34と第2係止部39が、規制部46に対しシールド電線11の周方向において互いに逆向きとなるように係止しているので、第1カシメ部31と第2カシメ部36は拡径方向へ変位することを規制される。
【0047】
第1係止部34と第2係止部39は、互いに直接的に係止するのではなく、規制部46に対し個別に係止する。これにより、シールド電線11の軸線方向(前後方向)における第1係止部34の形成範囲が、
第1延出部33の全領域に拡げられている。同様に、軸線方向における第2係止部39の形成範囲も、
第2延出部38の全領域に拡げられている。このようにすれば、第1係止部34と規制部46との係止代及び第2係止部39と規制部46との係止代が軸線方向において大きく確保されるので、シールド電線11と圧着部25との固着強度が高められている。
【0048】
また、規制部46は、その外面(下面)が第1カシメ部31の内周と第2カシメ部36の内周とに接するように配されている。この構成によれば、圧着部25をシールド電線11に圧着した直後に、規制部46がスプリングバックによってシールド電線11の外周から径方向へ離間する方向へ変位しようとしても、規制部46と第1係止部34との係止及び規制部46と第2係止部39との係止が外れる虞はない。
【0049】
また、スプリングバックによって第1カシメ部31と第2カシメ部36が拡径方向へ変位しても、規制部46はそれ自身のスプリングバックによって第1カシメ部31及び第2カシメ部36に追従して変位するので、規制部46と第1係止部34との係止及び規制部46と第2係止部39との係止が外れる虞はない。
【0050】
また、第1カシメ部31は、基板部30に連なり且つ基板部30から周方向に延出した第1基部32と、第1基部32の延出端から周方向へ延出し且つ第1基部32よりも幅狭の第1延出部33とを備えている。第2カシメ部36は、基板部30に連なり且つ基板部30から周方向に延出した第2基部37と、第2基部37の延出端から周方向へ延出し且つ第2基部37よりも幅狭の第2延出部38とを備えている。
【0051】
その上で、第1延出部33と第2延出部38が、シールド電線11の軸線方向に並ぶように配されている。この構成によれば、第1カシメ部31の形成範囲と第2カシメ部36の形成範囲をシールド電線11の軸線方向に拡げなくても、第1カシメ部31及び第2カシメ部36の周方向における延出長さを長く確保できるので、固着強度が向上する。
【0052】
また、第1カシメ部31には、一対の第1係止部34がシールド電線11の軸線方向に間隔を空けて形成され、一対の第1係止部34と第2係止部39がシールド電線11の軸線方向に交互に並ぶように配されている。圧着部25の後方においてシールド電線11がその軸線と交差する方向の外力を受けたときに、例えば、シールド電線11が第2カシメ部36を拡開方向へ押圧すると、第2係止部39の係止力によって、第2カシメ部36が規制部46を変形させながら拡開方向へ変形することが懸念される。
【0053】
これに対し、上記構成によれば、一対の第1係止部34のうちシールド電線11に対する外力付与位置に近い後側の第1係止部34が、規制部46に係止して規制部46の変形を規制するので、第2カシメ部36は、シールド電線11からの押圧力を受けても拡開方向へ変形する虞はない。
【0054】
また、第1係止部34と第2係止部39が、シールド電線11の軸線方向において同じ位置に配され、規制部46に対し規制部46を周方向に引っ張るように係止する場合は、第1カシメ部31と第2カシメ部36の周方向における延出長さが短くなり、その分、第1カシメ部31及び第2カシメ部36による固着強度が低下することが懸念される。
【0055】
これに対し、本実施例1では、第1係止部34と第2係止部39が、シールド電線11の軸線方向に並ぶように配され、規制部46に対し規制部46を周方向に挟むように係止されているので、第1カシメ部31及び第2カシメ部36の周方向における延出長さが長く確保されている。これにより、第1カシメ部31及び第2カシメ部36による固着強度が高められている。
【0056】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図13〜
図14を参照して説明する。本実施例2の圧着構造を適用したシールド導電路50は、第1カシメ部51と第2カシメ部55を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0057】
本実施例2の第1カシメ部51は、実施例1と同様、第1基部52の延出端から第1基部52より幅狭の前後一対の第1延出部53を形成し、各第1延出部53の延出端部に第1係止部54を形成したものである。第1係止部54は、第1延出部53の一部を内周側(シールド電線11の外周に接近する方向)へ切り起こした形態であり、シールド電線11を後方から視たときに反時計回り方向へ片持ち状に延出している。圧着済みの状態において、第1係止部54の延出端側の領域は第1延出部53及びスリーブ18と同様に円弧状をなしている。尚、第2カシメ部55と第2係止部(図示省略)も、第1カシメ部51と同様の形状である。
【0058】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を
図15〜
図16を参照して説明する。本実施例3の圧着構造を適用したシールド導電路60は、第1カシメ部61と第2カシメ部65を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0059】
本実施例3の第1カシメ部61は、実施例1と同様、第1基部62の延出端から第1基部62より幅狭の前後一対の第1延出部63を形成し、各第1延出部63の延出端部に第1係止部64を形成したものである。第1係止部64は、第1延出部63の一部を内周側(シールド電線11の外周に接近する方向)へ切り起こした形態であり、シールド電線11を後方から視たときに反時計回り方向へ片持ち状に延出している。尚、第2カシメ部65と第2係止部(図示省略)も、第1カシメ部61と同様の形状である。
【0060】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4を
図17〜
図19を参照して説明する。本実施例4の圧着構造を適用したシールド導電路70は、第1カシメ部71と第2カシメ部75を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0061】
本実施例4の第1カシメ部71は、実施例1と同様、第1基部72の延出端から第1基部72より幅狭の前後一対の第1延出部73を形成し、各第1延出部73の延出端部に前後一対の第1係止部74を形成したものである。前側の第1係止部74は、第1延出部73の延出端部における前縁部を内周側(シールド電線11の外周に接近する方向)へ切り起こした形態である。後側の第1係止部74は、第1延出部73の延出端部における後縁部を内周側(シールド電線11の外周に接近する方向)へ切り起こした形態である。尚、第2カシメ部75と第2係止部(図示省略)も、
第1カシメ部71と同様の形状である。
【0062】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1〜4では、シールド電線の軸線方向における第1係止部の形成範囲を、第1カシメ部の第1延出部の全幅領域に拡げたが、軸線方向における第1係止部の形成範囲は、第1延出部の一部のみであってもよい。
(2)上記実施例1〜4では、シールド電線の軸線方向における第2係止部の形成範囲を、第2カシメ部の第2延出部の全幅領域に拡げたが、軸線方向における第2係止部の形成範囲は、第2延出部の一部のみであってもよい。
(3)上記実施例1〜4では、第1カシメ部に第1基部より幅狭の第1延出部を形成し、第2カシメ部に第2基部より幅狭の第2延出部を形成し、第1延出部と第2延出部をシールド電線の軸線方向に並べたが、第1カシメ部の幅寸法(軸線方向の寸法)を基端から延出端に亘って一定にするともに、第2カシメ部の幅寸法(軸線方向の寸法)を基端から延出端に亘って一定とした上で、第1カシメ部と第2カシメ部を軸線方向に並ぶように配してもよい。
(4)上記実施例1〜4では、規制部のほぼ全領域が第1カシメ部と第2カシメ部で覆われているが、規制部の一部が第1カシメ部や第2カシメ部で覆われずに露出したままであってもよい。
(5)上記実施例1〜4では、規制部が第1カシメ部の内周と第2カシメ部の内周に接するように配されているが、規制部は、第1カシメ部の外周と第2カシメ部の外周に接するように配されていてもよく、第1カシメ部の外周と第2カシメ部の内周に接するように配されていてもよく、第1カシメ部の内周と第2カシメ部の外周に接するように配されていてもよい。
(6)上記実施例1〜4では、第1係止部と第2係止部が、規制部に対し規制部を周方向に挟むように係止するが、第1係止部と第2係止部は、規制部に対し規制部を周方向に引っ張るように係止してもよい。
(7)上記実施例1〜4では、一対の第1係止部と1つの第2係止部を、シールド電線の軸線方向に交互に並ぶように配したが、軸線方向に交互に並べる第1係止部と第2係止部の数は、上記実施例1〜4以外の組合せ(例えば、一対の第1係止部と一対の第2係止部の組合せ)でもよい。
(8)上記実施例1〜4では、電線がシールド機能を有するシールド電線であり、圧着部が外導体に形成されたシールド導電路に適用した場合について説明したが、本発明は、電線がシールド機能を有しない被覆電線であり、圧着部が非シールドタイプの端子金具に形成されている場合にも適用できる。この場合、規制部と第1係止部及び第2係止部の係止構造は、ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部の両方に適用してもよく、ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部のうちいずれか一方のみに適用してもよい。