特許第6863196号(P6863196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6863196-気密性検査方法及び装置 図000002
  • 特許6863196-気密性検査方法及び装置 図000003
  • 特許6863196-気密性検査方法及び装置 図000004
  • 特許6863196-気密性検査方法及び装置 図000005
  • 特許6863196-気密性検査方法及び装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863196
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】気密性検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/06 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   G01M3/06 G
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-180789(P2017-180789)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-56612(P2019-56612A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 仁
(72)【発明者】
【氏名】益田 栄二
(72)【発明者】
【氏名】海老納 康生
(72)【発明者】
【氏名】高水間 謙
(72)【発明者】
【氏名】川村 深雪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 聡
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−5348(JP,A)
【文献】 特開2017−111077(JP,A)
【文献】 米国特許第5354999(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填し、該被検査物から漏れ出る気泡を検出することで、該被検査物の気密性を検査する気密性検査方法であって、
前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に光源を配置し、該光源から前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光照射工程と、
前記光照射工程によって照射したドット光パターンを構成する各ドット光の延びる方向をそれぞれ判定する方向判定工程と、
前記方向判定工程で判定した前記各ドット光の延びる方向のうち、所定数以上のドット光の延びる方向が、前記ドット光パターンを照射した前記液面の所定の領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する気泡検出工程と、
を含むことを特徴とする気密性検査方法。
【請求項2】
前記光照射工程によって照射した前記ドット光パターンを撮像する撮像工程を更に含み、
前記方向判定工程において、前記撮像工程で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、
前記気泡検出工程において、前記方向判定工程で判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の気密性検査方法。
【請求項3】
前記撮像工程において、前記ドット光パターンを複数回連続して撮像し、
前記方向判定工程において、前記複数回撮像した前記ドット光パターンの撮像画像をそれぞれ2値化して合成することで2値化合成画像を生成し、該生成した2値化合成画像における前記各ドット光画素領域の延びる方向を判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の気密性検査方法。
【請求項4】
前記方向判定工程において、前記2値化合成画像における前記各ドット光画素領域のうち、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上であるドット光画素領域を抽出し、該抽出した各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺の方向が該抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると判定し、
前記気泡検出工程において、前記抽出した各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記2値化合成画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の気密性検査方法。
【請求項5】
前記気泡検出工程において、
前記2値化合成画像において抽出した各ドット光画素領域を含み、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の短辺よりも短辺方向に長い判定画素領域を、前記抽出したドット光画素領域毎に特定し、
前記ドット光画素領域毎に特定した各判定画素領域のうち、所定数以上の判定画素領域が重複する画素領域を有する場合に、前記重複する画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の気密性検査方法。
【請求項6】
液槽と、
前記液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填する加圧気体充填手段と、
前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に配置され、前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光源と、
前記照射したドット光パターンを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を用いて、前記被検査物から漏れ出た気泡を検出する解析装置とを備え、
前記解析装置は、
前記撮像装置で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、
前記判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、
ことを特徴とする気密性検査装置。
【請求項7】
前記光源は、同一平面上に2次元配列され、該平面に垂直な方向に光軸を有する複数のLEDを具備し、
前記撮像装置は、前記平面に垂直な方向に視軸を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の気密性検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填し、被検査物から漏れ出た気泡を検出することで、被検査物の気密性を検査する方法及び装置に関する。特に、本発明は、被検査物から漏れ出た気泡が小さくても精度良く検出可能な気密性検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンタンクやラジエータ等の気密性を要する容器については、製品出荷前に、その気密性が保たれているかを検査する必要がある。
気密性の検査方法として、被検査物である容器を液槽中に浸漬して内部に加圧気体(例えば、圧縮空気)を充填し、気密性が不十分な場合に被検査物から漏れ出る気泡を検出することで、被検査物の気密性を検査する方法が知られている。
【0003】
従来、上記の気密性検査方法において、被検査物から漏れ出る気泡は、液槽の上方から作業者が液槽の液面に浮上した気泡を目視観察することで検出していた。しかしながら、このような作業者の目視観察による気泡の検出では、ヒューマンエラーが生じ易いことや、作業者の負担が大きいという問題があった。
【0004】
このため、光源と撮像装置とを用いて、漏れ出た気泡を光学的に検出する方法及び装置が種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
しかしながら、特許文献1〜5に記載の方法及び装置は、気泡からの散乱光を受光する等、気泡そのものを撮像して直接検出するものであるため、被検査物に生じたピンホールのような微細な穴から漏れ出た極めて小さな気泡については、検出できずに見逃すおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−2630号公報
【特許文献2】特開昭61−148338号公報
【特許文献3】特開平4−20831号公報
【特許文献4】特開平4−188036号公報
【特許文献5】特開平11−264781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填し、被検査物から漏れ出る気泡を検出することで、被検査物の気密性を検査する気密性検査方法及び装置であって、被検査物から漏れ出た気泡が小さくても精度良く検出可能な気密性検査方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)被検査物から漏れ出た気泡が液槽の液面に浮上した場合、浮上した液面の領域(位置)を中心にして放射状に広がる波紋が生じる。漏れ出た気泡がたとえ小さくても、比較的大きな波紋が生じることになる。したがい、浮上した気泡に起因して生じた波紋を検出することで、小さな気泡を間接的に検出できる可能性がある。
(2)予め液槽の液面に対してドット光を照射しておくと、上記(1)の波紋が生じた場合、液面に照射したドット光が波紋の進行方向(気泡が浮上した液面の領域を中心にした放射状の方向)に延びた形状に変化して観察される。波紋の波高が高い場合、照射したドット光の一部が観察方向に反射しなくなることに起因して、1つのドット光が波紋の進行方向に沿って複数の部位に分断された状態で観察されることもある。この場合にも、分断された部位の集合体を考えると、この集合体は、波紋が生じていない場合の1つのドット光の形状と比べて、波紋の進行方向に延びた形状になる。照射するドット光の形状を円形又は正多角形にすれば、ドット光の延びた方向を認識し易い。
(3)上記(2)のドット光を例えばマトリックス状に2次元配列して照射すると、複数のドット光の延びる方向に基づき、各ドット光が共通する液面の領域を中心として放射状に延びているか否かを判定することができる。所定数以上のドット光が共通する液面の領域を中心として放射状に延びている場合には、その共通する液面の領域に被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定可能である。
【0008】
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填し、該被検査物から漏れ出る気泡を検出することで、該被検査物の気密性を検査する気密性検査方法であって、前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に光源を配置し、該光源から前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光照射工程と、前記光照射工程によって照射したドット光パターンを構成する各ドット光の延びる方向をそれぞれ判定する方向判定工程と、前記方向判定工程で判定した前記各ドット光の延びる方向のうち、所定数以上のドット光の延びる方向が、前記ドット光パターンを照射した前記液面の所定の領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する気泡検出工程と、を含むことを特徴とする気密性検査方法を提供する。
【0009】
本発明に係る気密性検査方法によれば、光照射工程において、円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射することで、液槽の液面に被検査物から漏れ出た気泡に起因した波紋が生じた場合、各ドット光が放射状の波紋の進行方向に延びた形状に変化して観察されることになる。
このため、方向判定工程において、各ドット光の延びる方向を例えば目視でそれぞれ判定することが可能である。
次いで、気泡検出工程において、例えば目視で、所定数以上のドット光の延びる方向が、ドット光パターンを照射した液面の所定の領域を中心とする放射状であると確認できた場合には、その所定数以上のドット光が延びた要因が波紋によるものだと判定可能である。すなわち、放射状の中心となる液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定することができる。
本発明に係る気密性検査方法によれば、気泡そのものを直接検出するのではなく、気泡によって生じた波紋をドット光パターンを構成する各ドット光の変形に基づき検出するため、被検査物から漏れ出た気泡が小さくても、精度良く気泡を検出可能である。
なお、本発明において、「各ドット光の延びる方向」とは、1つのドット光が波紋の進行方向に沿って複数の部位に分断された状態で観察される場合には、分断された部位の集合体(分断された部位全体)の延びる方向を意味する。
【0010】
好ましくは、前記光照射工程によって照射した前記ドット光パターンを撮像する撮像工程を更に含み、前記方向判定工程において、前記撮像工程で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、前記気泡検出工程において、前記方向判定工程で判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0011】
上記の好ましい方法によれば、ドット光パターンを撮像する撮像工程を更に含み、方向判定工程において撮像画像を画像処理することで、各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ自動判定することが可能である。次いで、気泡検出工程において、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合には、その所定数以上のドット光画素領域の延びた要因が波紋によるものだと自動判定可能である。すなわち、放射状の中心となる画素領域に対応する液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと自動判定することができる。
【0012】
好ましくは、前記撮像工程において、前記ドット光パターンを複数回連続して撮像し、前記方向判定工程において、前記複数回撮像した前記ドット光パターンの撮像画像をそれぞれ2値化して合成することで2値化合成画像を生成し、該生成した2値化合成画像における前記各ドット光画素領域の延びる方向を判定する。
【0013】
上記の好ましい方法によれば、撮像工程において、ドット光パターンを複数回連続して撮像し、方向判定工程において、複数回撮像したドット光パターンの撮像画像をそれぞれ2値化する。ドット光が照射された液面の領域は、照射されていない液面の領域に比べて明るくなるため、撮像画像においてドット光に対応するドット光画素領域も明るくなり(濃度が大きくなり)、所定のしきい値(濃度)で2値化することで、ドット光画素領域を抽出可能である。
ただし、抽出した各ドット光画素領域は、撮像時の波紋の進行状況に応じて、延び方が異なる可能性がある。すなわち、撮像工程で用いる撮像手段の露光時間にも依存するが、撮像時にちょうど波紋が通過している液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)に比べて、撮像時には未だ波紋が到達していない液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)や、撮像時には既に波紋が通過し終わった液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)は小さい可能性がある。
したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、2値化した複数の撮像画像(2値化画像)を合成することで2値化合成画像を生成する。換言すれば、複数の2値化画像について、対応する各画素の論理和(OR)を算出し、算出結果を2値化合成画像における対応する各画素の濃度とする。この2値化合成画像におけるドット光画素領域は、単一の2値化画像におけるドット光画素領域に比べて、撮像時の波紋の進行状況の影響が緩和され、いずれのドット光画素領域についても、波紋に起因して延びた状態となっている可能性が高くなる。したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、2値化合成画像における各ドット光画素領域の延びる方向を精度良く判定することが可能である。
【0014】
好ましくは、前記方向判定工程において、前記2値化合成画像における前記各ドット光画素領域のうち、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上であるドット光画素領域を抽出し、該抽出した各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺の方向が該抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると判定し、前記気泡検出工程において、前記抽出した各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記2値化合成画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0015】
上記の好ましい方法によれば、方向判定工程において、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上であるドット光画素領域を抽出する。換言すれば、2値化合成画像における各ドット光画素領域のうち、波紋に起因して延びた状態となっている可能性が高い(延びた状態となっているため、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上である)ドット光画素領域のみを、延びる方向を算出するために用いることになる。
したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、抽出した各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺の方向が抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると精度良く判定することが可能である。
【0016】
上記の好ましい方法において、ドット光画素領域の延びる方向が2値化合成画像における所定の画素領域を中心とする放射状であるか否かを判定する方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、以下のような方法を例示できる。
すなわち、好ましくは、前記気泡検出工程において、前記2値化合成画像において抽出した各ドット光画素領域を含み、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の短辺よりも短辺方向に長い判定画素領域を、前記抽出したドット光画素領域毎に特定し、前記ドット光画素領域毎に特定した各判定画素領域のうち、所定数以上の判定画素領域が重複する画素領域を有する場合に、前記重複する画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0017】
上記の好ましい方法によれば、気泡検出工程において、抽出したドット光画素領域毎にドット光画素領域よりも広い(輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の短辺よりも短辺方向に長い)判定画素領域を特定する。このドット光画素領域毎に特定した判定画素領域は、各ドット光画素領域が波紋に起因して放射状に延びた状態である場合には、この放射状の中心で交差する、すなわち、重複する画素領域を有する可能性が高い。
このため、上記の好ましい方法によれば、気泡検出工程において、各判定画素領域のうち、所定数以上の判定画素領域が重複する画素領域を有する場合に、重複する画素領域に対応する液面の領域に被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと精度良く判定することが可能である。
【0018】
また、前記課題を解決するため、本発明は、液槽と、前記液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填する加圧気体充填手段と、前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に配置され、前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光源と、前記照射したドット光パターンを撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を用いて、前記被検査物から漏れ出た気泡を検出する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像装置で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、前記判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、ことを特徴とする気密性検査装置としても提供される。
【0019】
本発明に係る気密性検査装置によれば、撮像装置によってドット光パターンを撮像し、解析装置においてドット光パターンの撮像画像を画像処理することで、各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ自動判定することが可能である。また、解析装置によって、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合には、その所定数以上のドット光画素領域の延びた要因が波紋によるものだと自動判定可能である。すなわち、放射状の中心となる画素領域に対応する液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと自動判定することができる。
【0020】
好ましくは、前記光源は、同一平面上に2次元配列され、該平面に垂直な方向に光軸を有する複数のLEDを具備し、前記撮像装置は、前記平面に垂直な方向に視軸を有する。
【0021】
本発明に係る気密性検査装置において、撮像装置の視軸を光源の光軸に対して傾けた状態で撮像する場合には、液槽の液面に気泡に起因した波紋が生じていない場合(液面が完全に平坦面である場合)であっても、光源から照射された円形又は正多角形のドット光が撮像装置の視軸の傾きに応じて変形して撮像されるため、ドット光画素領域の延びる方向を判定する際に所定の補正が必要になるおそれがある。
これに対し、上記の好ましい構成によれば、光源の光軸と撮像装置の視軸とが平行(双方共にLEDが2次元配列されている平面に垂直)であるため、液槽の液面に波紋が生じていない場合、光源から照射された円形又は正多角形のドット光が、撮像装置によってほぼそのままの形状で撮像されることになる。したがい、上記の補正が不要であり、容易にドット光画素領域の延びる方向を判定可能である。
また、上記の好ましい構成によれば、光源が複数のLEDを具備するため、各LEDの印加電流を調整することで、液面に照射される各ドット光の明るさを容易に調整可能である。この際、必要に応じて、各LEDの印加電流を個別に調整することで、各ドット光の明るさを個別に調整することも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る気密性検査方法及び装置によれば、被検査物から漏れ出た気泡が小さくても精度良く検出可能であるため、精度の良い気密性検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る気密性検査装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る気密性検査方法の概略工程を示すフロー図である。
図3図2に示す方向判定工程を説明するための説明図である。
図4図2に示す気泡検出工程を説明するための説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る気密検査方法を用いた検査の結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る気密性検査方法及び装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る気密性検査装置の概略構成を示す図である。図1(a)は、全体構成図を示す。図1(b)は、光源の下面と制御盤の内部構成を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る気密性検査装置100は、液槽1と、加圧気体充填手段2と、光源3と、撮像装置4と、解析装置5とを備えている。本実施形態の液槽1は、送吸液手段6に接続されている。本実施形態の解析装置5は、制御盤7内に収容されている。
【0025】
液槽1は、被検査物Tを液(例えば、水)Wに浸漬するためのものであり、必要に応じて、送吸液手段6から液Wが送液されると共に、送吸液手段6に液Wが吸液される。
送吸液手段6は、リザーブ液槽61と、送液ポンプ62と、吸液ポンプ63とを具備する。液槽1内の液Wの体積が一定であれば、浸漬する被検査物Tの体積に応じて液槽1の液面(液槽1内の液Wの上面)の位置が変化するため、液面の位置を調整する等の必要に応じて、送液ポンプ62を駆動し、リザーブ液槽61内の液Wを液槽1に向けて送液することが可能である。同様に、必要に応じて、吸液ポンプ63を駆動し、液槽1内の液Wをリザーブ液槽61に吸液することが可能である。
【0026】
加圧気体充填手段2は、液槽1中に浸漬された被検査物Tの内部に加圧気体(例えば、圧縮空気)を充填するものである。本実施形態の加圧気体充填手段2は、コンプレッサー21と、タンク22と、圧力調整バルブ23と、圧力メータ24とを具備する。コンプレッサー21によって生成された加圧気体は、タンク22内に貯蔵され、圧力メータ24の指示値が所望する値となるように圧力調整バルブ23で圧力が調整された後、被検査物Tの内部に充填される。
【0027】
光源3は、液槽1の液面の上方で且つ被検査物Tの上方に配置され、液槽1の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射するものである。本実施形態の光源3は、被検査物Tの何れの部位から気泡が漏れ出ても検出できるようにするため、複数(図1(a)に示す例では6つ)設けられており、複数の光源3によって、液槽1の液面全体にドット光パターンが照射される。
【0028】
本実施形態の光源3は、同一平面上に2次元配列され、該平面に垂直な方向に光軸を有する複数のLED32を具備する。具体的には、光源3は、板状の基台31と、基台31の法線方向に光軸が沿うように、基台31上にマトリックス状に2次元配列された複数のLED32とを具備する。各LED32は、制御盤7内に収容された電源33に接続されており、電源33から印加される印加電流によって発光する。LED32の2次元配列の寸法は、必要とするドット光パターンの照射領域の大きさに応じて、適切な値に設定すればよい。LED32の配列ピッチは、照射される各ドット光が変形しても互いに重ならない限りにおいて、できるだけ小さい方が気泡の検出精度が高まると考えられる。しかしながら、LED32の配列ピッチを過度に小さくした状態で、ドット光パターンの照射領域を大きくすると、LED32の個数が増大するため、コストやメンテナンスの手間が増大するという問題がある。このため、気泡の検出精度に影響が生じない程度に大きな配列ピッチに設定することが好ましい。LED32の配列ピッチは、例えば、10mm〜100mm程度とされ、本実施形態では75mmに設定している。
【0029】
各LED32は、出射面の外形が円形又は正多角形とされることにより、又は、各LED32の出射面に円形又は正多角形の開口を有するフィルタを取り付けることにより、円形又は正多角形のドット光を出射することができる。本実施形態では、出射面の外形が円形のLED32を用いている。
【0030】
撮像装置4は、光源3によって照射したドット光パターンを撮像するものである。撮像装置4は、LED32が2次元配列されている平面に垂直な方向に視軸を有する。具体的には、撮像装置4は、基台31の法線方向に視軸が沿うように、基台31上で且つLED32の2次元配列の略中心に配置されている。撮像装置4の視野は、1つの光源3から照射されたドット光パターンの全体が撮像可能なように設定されている。
撮像装置4としては、例えば、2次元CCDカメラを用いることが可能である。本実施形態の撮像装置4は、フレームレートが30fpsで、露光時間が5msecに設定された2次元CCDカメラである。
【0031】
解析装置5は、撮像装置4で撮像したドット光パターンの撮像画像を用いて、被検査物Tから漏れ出た気泡を検出するものである。具体的には、本実施形態の解析装置5は、後述の画像処理等を実行するためのプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータから構成されている。また、本実施形態の解析装置5は、光源3の電源33を駆動したり、撮像装置4を駆動する制御装置としての機能も奏する。
【0032】
以下、上記の構成を有する気密性検査装置100を用いた気密性検査方法について説明する。
本発明の一実施形態に係る気密性検査方法は、液槽1中に浸漬された被検査物Tの内部に加圧気体を充填し、被検査物Tから漏れ出る気泡を検出することで、被検査物Tの気密性を検査する方法である。
図2は、本発明の一実施形態に係る気密性検査方法の概略工程を示すフロー図である。
図2に示すように、本実施形態に係る気密性検査方法は、浸漬工程S1と、充填工程S2と、光照射工程S3と、撮像工程S4と、方向判定工程S5と、気泡検出工程S6とを含む。以下、各工程S1〜S6について順に説明する。
【0033】
<浸漬工程S1>
浸漬工程S1では、液Wで満たされた液槽1中に被検査物Tを浸漬する。この際、前述のように、必要に応じて、送吸液手段6の送液ポンプ62を駆動し、リザーブ液槽61内の液Wを液槽1に向けて送液する。また、必要に応じて、送吸液手段6の吸液ポンプ63を駆動し、液槽1内の液Wをリザーブ液槽61に吸液する。
【0034】
<充填工程S2>
充填工程S2では、加圧気体充填手段2により、液槽1中に浸漬された被検査物Tの内部に加圧気体を充填する。この際、前述のように、加圧気体充填手段2のコンプレッサー21によって生成され、タンク22内に貯蔵された加圧気体は、圧力メータ24の指示値が所望する値となるように圧力調整バルブ23で圧力が調整(例えば、20〜30MPa)された後、被検査物Tの内部に充填される。
【0035】
<光照射工程S3>
光照射工程S3では、液槽1の液面の上方で且つ被検査物Tの上方に配置した光源3から液槽1の液面に対して円形又は正多角形のドット光(本実施形態では円形のドット光)が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する。ドット光パターンは、浸漬工程S1及び充填工程S2が終了した後に照射を開始する他、浸漬工程S1を開始する前や、充填工程S2を開始する前又は充填工程S2を実行中に、予め照射しておく(浸漬工程S1及び充填工程S2が終了した後も継続して照射する)ことも可能である。
【0036】
<撮像工程S4>
撮像工程S4では、撮像装置4により、光照射工程S3によって照射したドット光パターンを撮像する。この際、本実施形態では、フレームレート30fps、露光時間5msecで、複数回連続して撮像する。
【0037】
<方向判定工程S5>
方向判定工程S5では、解析装置5により、撮像工程S4で撮像したドット光パターンの撮像画像を画像処理して、ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定する。以下、図3を参照しつつ、方向判定工程S5について、より具体的に説明する。
【0038】
図3は、方向判定工程S5を説明するための説明図である。
方向判定工程S5では、まず、解析装置5により、複数回撮像したドット光パターンの撮像画像をそれぞれ所定のしきい値で2値化して2値化画像を生成する。図3(a)は、複数回連続して撮像した撮像画像を2値化することで生成される2値化画像41を模式的に示す図である。図3(a)に示すように、各2値化画像41では、ドット光パターンを構成する各ドット光に対応するドット光画素領域34が抽出されている(ドット光画素領域34が濃度255で、その他の領域が濃度0である)。
【0039】
次いで、方向判定工程S5では、解析装置5により、複数の2値化画像41を合成して2値化合成画像を生成する。本実施形態では、2枚の連続する2値化画像41を合成して2値化合成画像を生成する。図3(b)は、図3(a)に示す2枚の連続する2値化画像41を合成することで生成される2値化合成画像42を模式的に示す図である。すなわち、図3(a)に示す各2値化画像41について、対応する各画素の論理和(OR)が算出され、算出結果が図3(b)に示す2値化合成画像42における対応する各画素の濃度とされている。
【0040】
次いで、方向判定工程S5では、解析装置5により、2値化合成画像42におけるドット光画素領域34の輪郭を抽出する。輪郭の抽出には、例えば、公知の画像処理アルゴリズムである輪郭追跡処理が用いられる。
【0041】
次いで、方向判定工程S5では、解析装置5により、2値化合成画像42における各ドット光画素領域34のうち、輪郭の長さが所定値(本実施形態では20)以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値R(本実施形態では1.8)以上であるドット光画素領域34を抽出する。図3(c)は、抽出されたドット光画素領域34のみが含まれている2値化合成画像42を模式的に示す図である。図3(b)に示すドット光画素領域34のうち、ドット光画素領域34a〜34eは、上記の条件(輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値R以上である)を満足しないため、図3(c)に示す2値化合成画像42では抽出されずに削除されている。
なお、ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円は、例えば、輪郭を構成する点の座標を用いて最小二乗法で楕円にフィッティングすることで算出可能である。なお、近似楕円の場合の長辺及び短辺とは、それぞれ長軸及び短軸を意味する。
本実施形態では、輪郭の近似楕円を用いるため、以下では近似楕円についてのみ説明するが、輪郭の外接矩形を用いる場合も同様である。
【0042】
最後に、方向判定工程S5では、解析装置5により、抽出した各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円の長辺の方向が抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると判定する。
【0043】
<気泡検出工程S6>
気泡検出工程S6では、解析装置5により、方向判定工程S5で判定した各ドット光画素領域34の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、撮像画像(2値化合成画像42)における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、中心とする画素領域に対応する液面の領域に被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと判定する。以下、図4を参照しつつ、気泡検出工程S6について、より具体的に説明する。
【0044】
図4は、気泡検出工程S6を説明するための説明図である。図4では、便宜上、ドット光画素領域34に代えて、ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pを図示している。
気泡検出工程S6では、まず解析装置5により、2値化合成画像42において抽出した各ドット光画素領域34を含み、各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの短辺よりも短辺方向に長い判定画素領域44を、抽出したドット光画素領域34毎に特定する。
具体的には、まず解析装置5により、図4(a)に示すように、2値化合成画像42を横方向にG個、縦方向にG個の複数の画素領域Aに分割する。すなわち、2値化合成画像42の横方向の画素数をW、画素領域Aの横方向の画素数をAとすると、W=A×Gが成立する。同様に、2値化合成画像42の縦方向の画素数をH、画素領域Aの縦方向の画素数をAとすると、H=A×Gが成立する。なお、W、H、G、Gとしては、以下の値を例示できる。
W=400画素、H=360画素、G=G=40画素
【0045】
次いで、解析装置5により、図4(b)に示すように、各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの中心を通り、近似楕円34Pの長辺方向に延びる線分43(図4(b)において太破線で示す線分)を作成する。この線分43は、近似楕円34Pの中心から両側に同じ長さだけ延び、片側の長さが(1+r−R)×Lである。ここで、上記の式において、rは各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの長辺/短辺を意味し、Rは前述の方向判定工程S5でドット光画素領域34を抽出するためのしきい値を意味し、Lは所定の固定値(例えば100画素)を意味する。ただし、線分43の長さはこれに限るものではなく、単純に固定値のLとすることも可能である。
図4(b)では、図4(a)に示す近似楕円34Paを例に挙げて図示しているが、図4(a)に示す他の近似楕円34Pについても同様に線分43を作成する。換言すれば、抽出したドット光画素領域34毎に線分43を作成する。
【0046】
最後に、解析装置5により、画素領域Aの中心から線分43までの距離が(A+A)/2未満である画素領域Aの集合体を判定画素領域44(図4(b)において太実線で囲んだ画素領域)として特定する。前述のように、線分43は抽出したドット光画素領域34毎に作成されるため、判定画素領域44も抽出したドット光画素領域34毎に特定されることになる。以上のようにして特定される判定画素領域44は、図4(b)からも分かるように、抽出した各ドット光画素領域34を含み、各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、各ドット光画素領域34の輪郭の近似楕円34Pの短辺よりも短辺方向に長い画素領域となる。
【0047】
次いで、気泡検出工程S6では、解析装置5により、ドット光画素領域34毎に特定した各判定画素領域44のうち、所定数以上(本実施形態では4以上)の判定画素領域44が重複する画素領域を有する場合に、重複する画素領域に対応する液面の領域に被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
具体的には、例えば、解析装置5により、ドット光画素領域34毎に特定した各判定画素領域44を構成する全ての画素領域A(例えば、図4(b)においてハッチングを施した画素領域A)に1点のスコアを付す。ある画素領域Aが一の判定画素領域44を構成すると同時に、他の一の判定画素領域44を構成する場合には、この画素領域Aには合計で2点のスコアが付されることになる。このようなスコア付けを行った場合に、合計で4点以上のスコアが付された画素領域Aは、4以上の判定画素領域44が重複する画素領域Aであることを意味する。以上のようにして、解析装置5により、所定数以上の判定画素領域44が重複する画素領域を有するか否かを判定可能である。図4(c)は、図4(a)に示す2値化合成画像42におけるドット光画素領域34毎に特定した各判定画素領域44のうち、所定数以上(4以上)の判定画素領域44が重複する画素領域(図4(c)においてハッチングを施した画素領域。以下、この重複する画素領域を重複画素領域という)45を有することを模式的に示す図である。重複画素領域44を有する場合、前述の通り、解析装置5により、重複画素領域44に対応する液面の領域に被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0048】
以上に説明した本実施形態に係る気密性検査方法によれば、光照射工程S3において、円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射することで、液槽1の液面に被検査物Tから漏れ出た気泡に起因した波紋が生じた場合、各ドット光が放射状の波紋の進行方向に延びた形状に変化した状態で撮像されることになる。
このため、方向判定工程S5において、各ドット光(ドット光画素領域)の延びる方向をそれぞれ判定することが可能である。
次いで、気泡検出工程S5において、所定数以上のドット光(ドット光画素領域)の延びる方向が、ドット光パターンを照射した液面の所定の領域を中心とする放射状である場合には、その所定数以上のドット光(ドット光画素領域)が延びた要因が波紋によるものだと判定可能である。すなわち、放射状の中心となる液面の領域に、被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと判定することができる。
本実施形態に係る気密性検査方法によれば、気泡そのものを直接検出するのではなく、気泡によって生じた波紋をドット光パターンを構成する各ドット光の変形に基づき検出するため、被検査物Tから漏れ出た気泡が小さくても、精度良く気泡を検出可能である。
【0049】
なお、本実施形態では、解析装置5により、各ドット光画素領域の延びる方向を自動判定し、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、重複画素領域45を中心とする放射状である場合には、重複画素領域45に対応する液面の領域に、被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと自動判定する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、撮像装置4を用いた撮像工程S4を実行せずに、照射されたドット光パターンを直接目視して各ドット光の延びる方向を判定し、所定数以上のドット光の延びる方向が、所定の領域を中心とする放射状であると確認できた場合には、放射状の中心となる液面の領域に、被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したと判定することも可能である。
また、例えば、撮像装置4を用いた撮像工程S4は実行するものの、解析装置5による気泡浮上の自動判定は行わず、撮像画像、2値化画像及び2値化合成画像のうちの何れかの画像を解析装置5が具備するモニタに表示して、このモニタを作業者が目視することで、被検査物Tから漏れ出た気泡が浮上したことを判定することも可能である。
【0050】
図5は、本実施形態に係る気密検査方法を用いた検査の結果の一例を示す図である。図5(a)は、被検査物Tから気泡が漏れ出た状況を模擬するために、内径0.3mmのテフロン(登録商標)ニードルを用いて液槽1に気泡を発生させた場合の結果を示す。液槽1の液面における気泡の寸法(外径)は約3.9mmであった。図5(b)は、液槽1の上方をクレーンが移動した場合の結果を示す。図5(c)は、被検査物Tから気泡が漏れ出た状況を模擬するために、内径0.21mmの金属ニードルを用いて液槽1に気泡を発生させると共に、風が液槽1の液面を揺らした場合の結果を示す。液槽1の液面における気泡の寸法(外径)は約2.3mmであった。図5(a)〜(c)の左側に示す図は、撮像工程S4で撮像したドット光パターンの撮像画像(2値化前の撮像画像)であり、図5(a)〜(c)の右側に示す図は、左側の撮像画像に対応する2値化合成画像42における判定画素領域44及び重複画素領域45である。
【0051】
図5(a)に示すように、外径約3.9mmの気泡を発生させた場合、2次元合成画像42に重複画素領域45が生じており、本実施形態に係る気密検査方法によって気泡を精度良く検出可能であることを確認できた。
また、図5(b)に示すように、クレーンの移動による振動では、液槽1の液面に波紋が殆ど生じず、2次元合成画像42に重複画素領域45が生じなかったため、誤検出が発生しなかった。
さらに、図5(c)の2次元合成画像42の上部に示すように、風に起因した液面の揺れで波紋は生じているものの、波紋の方向が一方向(ほぼ横方向)であり、重複画素領域45が生じなかったため、誤検出が発生しなかった。一方、図5(c)の2次元合成画像42の下部に示すように、外径約2.3mmの気泡を発生させた箇所には、重複画素領域45が生じており、本実施形態に係る気密検査方法によって気泡を精度良く検出可能であることを確認できた。
【符号の説明】
【0052】
1・・・液槽
2・・・加圧気体充填手段
3・・・光源
4・・・撮像装置
5・・・解析装置
32・・・LED
100・・・気密性検査装置
T・・・被検査物
W・・・液
図1
図2
図3
図4
図5