【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)被検査物から漏れ出た気泡が液槽の液面に浮上した場合、浮上した液面の領域(位置)を中心にして放射状に広がる波紋が生じる。漏れ出た気泡がたとえ小さくても、比較的大きな波紋が生じることになる。したがい、浮上した気泡に起因して生じた波紋を検出することで、小さな気泡を間接的に検出できる可能性がある。
(2)予め液槽の液面に対してドット光を照射しておくと、上記(1)の波紋が生じた場合、液面に照射したドット光が波紋の進行方向(気泡が浮上した液面の領域を中心にした放射状の方向)に延びた形状に変化して観察される。波紋の波高が高い場合、照射したドット光の一部が観察方向に反射しなくなることに起因して、1つのドット光が波紋の進行方向に沿って複数の部位に分断された状態で観察されることもある。この場合にも、分断された部位の集合体を考えると、この集合体は、波紋が生じていない場合の1つのドット光の形状と比べて、波紋の進行方向に延びた形状になる。照射するドット光の形状を円形又は正多角形にすれば、ドット光の延びた方向を認識し易い。
(3)上記(2)のドット光を例えばマトリックス状に2次元配列して照射すると、複数のドット光の延びる方向に基づき、各ドット光が共通する液面の領域を中心として放射状に延びているか否かを判定することができる。所定数以上のドット光が共通する液面の領域を中心として放射状に延びている場合には、その共通する液面の領域に被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定可能である。
【0008】
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填し、該被検査物から漏れ出る気泡を検出することで、該被検査物の気密性を検査する気密性検査方法であって、前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に光源を配置し、該光源から前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光照射工程と、前記光照射工程によって照射したドット光パターンを構成する各ドット光の延びる方向をそれぞれ判定する方向判定工程と、前記方向判定工程で判定した前記各ドット光の延びる方向のうち、所定数以上のドット光の延びる方向が、前記ドット光パターンを照射した前記液面の所定の領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する気泡検出工程と、を含むことを特徴とする気密性検査方法を提供する。
【0009】
本発明に係る気密性検査方法によれば、光照射工程において、円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射することで、液槽の液面に被検査物から漏れ出た気泡に起因した波紋が生じた場合、各ドット光が放射状の波紋の進行方向に延びた形状に変化して観察されることになる。
このため、方向判定工程において、各ドット光の延びる方向を例えば目視でそれぞれ判定することが可能である。
次いで、気泡検出工程において、例えば目視で、所定数以上のドット光の延びる方向が、ドット光パターンを照射した液面の所定の領域を中心とする放射状であると確認できた場合には、その所定数以上のドット光が延びた要因が波紋によるものだと判定可能である。すなわち、放射状の中心となる液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定することができる。
本発明に係る気密性検査方法によれば、気泡そのものを直接検出するのではなく、気泡によって生じた波紋をドット光パターンを構成する各ドット光の変形に基づき検出するため、被検査物から漏れ出た気泡が小さくても、精度良く気泡を検出可能である。
なお、本発明において、「各ドット光の延びる方向」とは、1つのドット光が波紋の進行方向に沿って複数の部位に分断された状態で観察される場合には、分断された部位の集合体(分断された部位全体)の延びる方向を意味する。
【0010】
好ましくは、前記光照射工程によって照射した前記ドット光パターンを撮像する撮像工程を更に含み、前記方向判定工程において、前記撮像工程で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、前記気泡検出工程において、前記方向判定工程で判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0011】
上記の好ましい方法によれば、ドット光パターンを撮像する撮像工程を更に含み、方向判定工程において撮像画像を画像処理することで、各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ自動判定することが可能である。次いで、気泡検出工程において、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合には、その所定数以上のドット光画素領域の延びた要因が波紋によるものだと自動判定可能である。すなわち、放射状の中心となる画素領域に対応する液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと自動判定することができる。
【0012】
好ましくは、前記撮像工程において、前記ドット光パターンを複数回連続して撮像し、前記方向判定工程において、前記複数回撮像した前記ドット光パターンの撮像画像をそれぞれ2値化して合成することで2値化合成画像を生成し、該生成した2値化合成画像における前記各ドット光画素領域の延びる方向を判定する。
【0013】
上記の好ましい方法によれば、撮像工程において、ドット光パターンを複数回連続して撮像し、方向判定工程において、複数回撮像したドット光パターンの撮像画像をそれぞれ2値化する。ドット光が照射された液面の領域は、照射されていない液面の領域に比べて明るくなるため、撮像画像においてドット光に対応するドット光画素領域も明るくなり(濃度が大きくなり)、所定のしきい値(濃度)で2値化することで、ドット光画素領域を抽出可能である。
ただし、抽出した各ドット光画素領域は、撮像時の波紋の進行状況に応じて、延び方が異なる可能性がある。すなわち、撮像工程で用いる撮像手段の露光時間にも依存するが、撮像時にちょうど波紋が通過している液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)に比べて、撮像時には未だ波紋が到達していない液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)や、撮像時には既に波紋が通過し終わった液面の領域に照射されたドット光に対応するドット光画素領域の長さ(延びる方向の長さ)は小さい可能性がある。
したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、2値化した複数の撮像画像(2値化画像)を合成することで2値化合成画像を生成する。換言すれば、複数の2値化画像について、対応する各画素の論理和(OR)を算出し、算出結果を2値化合成画像における対応する各画素の濃度とする。この2値化合成画像におけるドット光画素領域は、単一の2値化画像におけるドット光画素領域に比べて、撮像時の波紋の進行状況の影響が緩和され、いずれのドット光画素領域についても、波紋に起因して延びた状態となっている可能性が高くなる。したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、2値化合成画像における各ドット光画素領域の延びる方向を精度良く判定することが可能である。
【0014】
好ましくは、前記方向判定工程において、前記2値化合成画像における前記各ドット光画素領域のうち、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上であるドット光画素領域を抽出し、該抽出した各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺の方向が該抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると判定し、前記気泡検出工程において、前記抽出した各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記2値化合成画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0015】
上記の好ましい方法によれば、方向判定工程において、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上であるドット光画素領域を抽出する。換言すれば、2値化合成画像における各ドット光画素領域のうち、波紋に起因して延びた状態となっている可能性が高い(延びた状態となっているため、輪郭の長さが所定値以上であり、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺/短辺が所定値以上である)ドット光画素領域のみを、延びる方向を算出するために用いることになる。
したがい、上記の好ましい方法では、方向判定工程において、抽出した各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺の方向が抽出した各ドット光画素領域の延びる方向であると精度良く判定することが可能である。
【0016】
上記の好ましい方法において、ドット光画素領域の延びる方向が2値化合成画像における所定の画素領域を中心とする放射状であるか否かを判定する方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、以下のような方法を例示できる。
すなわち、好ましくは、前記気泡検出工程において、前記2値化合成画像において抽出した各ドット光画素領域を含み、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、該各ドット光画素領域の輪郭の近似楕円又は外接矩形の短辺よりも短辺方向に長い判定画素領域を、前記抽出したドット光画素領域毎に特定し、前記ドット光画素領域毎に特定した各判定画素領域のうち、所定数以上の判定画素領域が重複する画素領域を有する場合に、前記重複する画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する。
【0017】
上記の好ましい方法によれば、気泡検出工程において、抽出したドット光画素領域毎にドット光画素領域よりも広い(輪郭の近似楕円又は外接矩形の長辺よりも長辺方向に長く、なお且つ、輪郭の近似楕円又は外接矩形の短辺よりも短辺方向に長い)判定画素領域を特定する。このドット光画素領域毎に特定した判定画素領域は、各ドット光画素領域が波紋に起因して放射状に延びた状態である場合には、この放射状の中心で交差する、すなわち、重複する画素領域を有する可能性が高い。
このため、上記の好ましい方法によれば、気泡検出工程において、各判定画素領域のうち、所定数以上の判定画素領域が重複する画素領域を有する場合に、重複する画素領域に対応する液面の領域に被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと精度良く判定することが可能である。
【0018】
また、前記課題を解決するため、本発明は、液槽と、前記液槽中に浸漬された被検査物の内部に加圧気体を充填する加圧気体充填手段と、前記液槽の液面の上方で且つ前記被検査物の上方に配置され、前記液槽の液面に対して円形又は正多角形のドット光が2次元配列されたパターンであるドット光パターンを照射する光源と、前記照射したドット光パターンを撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を用いて、前記被検査物から漏れ出た気泡を検出する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像装置で撮像した前記ドット光パターンの撮像画像を画像処理することにより、前記ドット光パターンを構成する各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ判定し、前記判定した前記各ドット光画素領域の延びる方向のうち、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、前記撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合に、前記中心とする画素領域に対応する前記液面の領域に前記被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと判定する、ことを特徴とする気密性検査装置としても提供される。
【0019】
本発明に係る気密性検査装置によれば、撮像装置によってドット光パターンを撮像し、解析装置においてドット光パターンの撮像画像を画像処理することで、各ドット光に対応する画素領域であるドット光画素領域の延びる方向をそれぞれ自動判定することが可能である。また、解析装置によって、所定数以上のドット光画素領域の延びる方向が、撮像画像における所定の画素領域を中心とする放射状である場合には、その所定数以上のドット光画素領域の延びた要因が波紋によるものだと自動判定可能である。すなわち、放射状の中心となる画素領域に対応する液面の領域に、被検査物から漏れ出た気泡が浮上したと自動判定することができる。
【0020】
好ましくは、前記光源は、同一平面上に2次元配列され、該平面に垂直な方向に光軸を有する複数のLEDを具備し、前記撮像装置は、前記平面に垂直な方向に視軸を有する。
【0021】
本発明に係る気密性検査装置において、撮像装置の視軸を光源の光軸に対して傾けた状態で撮像する場合には、液槽の液面に気泡に起因した波紋が生じていない場合(液面が完全に平坦面である場合)であっても、光源から照射された円形又は正多角形のドット光が撮像装置の視軸の傾きに応じて変形して撮像されるため、ドット光画素領域の延びる方向を判定する際に所定の補正が必要になるおそれがある。
これに対し、上記の好ましい構成によれば、光源の光軸と撮像装置の視軸とが平行(双方共にLEDが2次元配列されている平面に垂直)であるため、液槽の液面に波紋が生じていない場合、光源から照射された円形又は正多角形のドット光が、撮像装置によってほぼそのままの形状で撮像されることになる。したがい、上記の補正が不要であり、容易にドット光画素領域の延びる方向を判定可能である。
また、上記の好ましい構成によれば、光源が複数のLEDを具備するため、各LEDの印加電流を調整することで、液面に照射される各ドット光の明るさを容易に調整可能である。この際、必要に応じて、各LEDの印加電流を個別に調整することで、各ドット光の明るさを個別に調整することも可能である。