特許第6863248号(P6863248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863248美爪料用水性樹脂分散体、その製造方法および美爪料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863248
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】美爪料用水性樹脂分散体、その製造方法および美爪料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20210412BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20210412BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/04
   A61Q3/02
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-227434(P2017-227434)
(22)【出願日】2017年11月28日
(62)【分割の表示】特願2017-86137(P2017-86137)の分割
【原出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-184384(P2018-184384A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 和也
(72)【発明者】
【氏名】北本 剛
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−327019(JP,A)
【文献】 特表平11−509869(JP,A)
【文献】 特開2008−195627(JP,A)
【文献】 特開平10−203928(JP,A)
【文献】 特開2016−065130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A45D 29/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子と水性媒体とを含み、
前記樹脂が、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、
前記単量体混合物100質量%中に前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを20質量%以上80質量%以下、およびアクリル酸を0.1質量%以上10質量%未満含み、
前記樹脂のガラス転移温度が35〜75℃であり、
前記樹脂粒子の平均粒子径が30〜300nmである、美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項2】
前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが、炭素数4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1記載の美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項3】
前記混合物が、さらに単量体として重合性シラン化合物を含む請求項1または2に記載の美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項4】
前記混合物が、さらに単量体として重合性界面活性剤(ただし、重合性シラン化合物を除く)を含む請求項1〜3いずれか1項に記載の美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項5】
前記混合物が、重合性界面活性剤以外の単量体100質量部に対して、重合性界面活性剤を1〜10質量部を含む請求項4記載の美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項6】
さらに、重合性シラン化合物以外のシラン化合物を含む請求項1〜5いずれか1項に記載の美爪料用水性樹脂分散体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の美爪料用水性樹脂分散体を含む美爪料。
【請求項8】
樹脂粒子と水性媒体とを含む美爪料用水性樹脂分散体の製造方法であって、
水性媒体の存在下、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸を含む単量体混合物を乳化重合する工程を備え、
前記単量体混合物100質量%中に前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを20質量%以上80質量%以下、およびアクリル酸を0.1質量%以上10質量%未満含み、
前記樹脂のガラス転移温度が35〜75℃であり、
前記樹脂粒子の平均粒子径が30〜300nmである、美爪料用水性樹脂分散体の製造
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美爪料用水性樹脂分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪化粧料、メークアップ化粧料、美爪料およびスキンケア化粧料などの化粧料には、環境面や衛生面を考慮し、被膜形成剤として主に水溶性高分子化合物が使われてきた。しかし、水溶性高分子は、耐湿性と耐水性に劣るため、近年では水性被膜形成剤として、水性樹脂分散体が幅広く使用されている。
【0003】
水性樹脂分散体の耐湿性、耐水性は、水溶性高分子に比べて良好だが、溶剤系の樹脂に比べるとやや劣る傾向にある。また、水性樹脂分散体は、樹脂微粒子の分散体のため、化粧料にした際の、経時安定性が必要となる。特許文献1では、アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体を10〜20質量%を含む水性樹脂分散体を含む化粧料が開示されている。また、特許文献2では、シランカップリング剤を用いた水性樹脂分散体を含有する化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−002207号公報
【特許文献2】特開2002−327019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の水性樹脂分散体は、耐水性が劣る問題があった。また、特許文献の水性樹脂分散体は、化粧料にした際の経時安定性が劣る問題があった。
【0006】
本発明は、経時安定性に優れ、化粧持ち、耐水性および除去性という3つの特性を併せ持つ美爪料用水性樹脂分散体およびその製造方法ならびに美爪料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の美爪料用水性樹脂分散体は、樹脂粒子と水性媒体とを含み、
前記樹脂が、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、
前記単量体混合物100質量%中に前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを20質量%以上80質量%以下、およびアクリル酸を0.1質量%以上10質量%未満含み、
前記樹脂のガラス転移温度が−20〜100℃である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により経時安定性に優れ、化粧持ち、耐水性および除去性という3つの特性を併せ持つ美爪料用水性樹脂分散体およびその製造方法ならびに美爪料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の美爪料用水性樹脂分散体は、樹脂粒子と水性媒体とを含み、
前記樹脂が、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、
前記単量体混合物100質量%中に前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを20質量%以上80質量%以下含み、
前記樹脂のガラス転移温度は、−20〜100℃であり、−10〜90℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。樹脂粒子の平均粒子径は、30nm〜500nmが好ましく、40〜400nmがより好ましく、50〜300nmがさらに好ましい。なお、単量体とは、エチレン性不飽和基含有モノマーである。
【0010】
本発明の化粧料用水性樹脂分散体は、特定量の炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を併用し、樹脂のガラス転移温度が0〜100℃にすることで化粧持ち、耐水性および除去性という3つの特性を併せ持つことができる。これにより化粧料用水性樹脂分散体を使用した化粧料は、汗や皮脂で落ちにくいにも関わらず、使用後には容易に除去できる。
【0011】
本発明の化粧料は、前記化粧料用水性樹脂分散体を含むことを特徴とする。本発明の化粧料は、例えば、ヘアトリートメント剤、ヘアスタイリング剤、水系美爪料、アイライナー、マスカラ、スキンクリーム、サンスクリーン剤等が好ましい。化粧料は、前記以外の他の化粧料に適用できることはいうまでも無い。なお、本発明の化粧料は、洗顔料ではない。
【0012】
<炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル>
本発明で用いる炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸の炭素数2〜4のアルキルエステルである。
炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルは、例えば、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、セカンダリーブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレートが挙げられる。これらの中でも化粧持ちの面で炭素数4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上を使用できる。
【0013】
炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルは、単量体混合物100質量%中、10質量%を超え80質量%以下含むことが好ましく、20〜75質量%がより好ましい。炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを適量使用すると化粧持ちがより向上する。
【0014】
本発明で用いるカルボキシル基含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクルリル酸等が挙げられるところ、重合安定性がより向上する面でアクリル酸が好ましい。 カルボキシル基含有単量体は、単量体混合物中に0.1〜10質量%を含むことが好ましく、0.3〜8質量%がより好ましく、0.5〜6質量%がさらに好ましい。
【0015】
<重合性シラン化合物>
重合性シラン化合物は、エチレン性不飽和二重結合を有するシラン化合物である。重合性シラン化合物は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、パラスチリルトリメトキシシラン、及びパラスチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも除去性の面でエトキシ基を有する重合性シラン化合物が好ましい。
重合性シラン化合物は、単独または2種類以上を使用できる。
【0016】
重合性シラン化合物は、単量体混合物100質量%中に0.1〜10質量%含むことが好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。重合性シラン化合物を適量使用すると化粧もち、および樹脂粒子の保存安定性がより向上する。
【0017】
<その他単量体>
その他単量体とは、炭素数2〜4のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、重合性シラン化合物以外の単量体である。その他単量体は、例えば、炭素数1または5以上のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環または芳香族環を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有単量体、グリシジル基含有単量体、ポリオキシアルキレン基含有単量体、架橋性単量体、ならびにその他ビニル基含有単量体等が好ましい。なお、重合性界面活性剤は、単量体には含まない。
【0018】
炭素数1もしくは5以上のメタクリル酸アルキルエステルは、例えば、メチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、3−ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、イコシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等が挙げられる。
【0019】
アクリル酸アルキルエステルは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、セカンダリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノナデシルアクリレート、イコシルアクリレート、ベヘニルアクリレート等が挙げられる。
【0020】
脂肪族環または芳香族環を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、等が挙げられる。
【0021】
水酸基含有単量体は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、及びアリルアルコール等が挙げられる。
【0022】
グリシジル基含有単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン基含有単量体は、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
架橋性単量体は、エチレン性不飽和基に加え、ビニル基または(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。架橋性単量体は、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、及びマレイン酸ジアリル等が挙げられる。
その他ビニル基含有単量体は、例えば、スチレン、αメチルスチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
その他単量体は、単独または2種類以上を用できる。
【0024】
化粧料用水性樹脂分散体の合成は、乳化重合、溶液重合、塊状重合等が挙げられるところ、乳化重合が好ましい。
本発明の化粧料用水性樹脂分散体の製造方法は、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物を乳化重合してガラス転移温度が−20〜100℃の樹脂粒子を含むことが好ましい。前記単量体混合物100質量%中に前記炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを10質量%を超え80質量%以下含むことが好ましい。なお、単量体混合物は、重合性界面活性剤を含まない。
【0025】
乳化重合は、界面活性剤および保護コロイドの少なくともいずれかの存在下で行うことが好ましい。界面活性剤は、イオン種としてアニオン、カチオン、ノニオンが好ましく、アニオンおよびノニオンがよりましい。また、界面活性剤は、耐水性の面でエチレン性不飽和二重結合を有する重合性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0026】
<重合性界面活性剤>
重合性界面活性剤は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有するアニオン性またはノニオン性の界面活性剤であり、上述の重合性シラン化合物以外のものである。
前記重合性アニオン性界面活性剤は、主骨格がスルホコハク酸エステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル、(メタ)アクリレート硫酸エステル、およびリン酸エステルが好ましい。
前記重合性ノニオン性界面活性剤は、主骨格がアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステルが好ましい。
【0027】
<非重合性界面活性剤>
非重合性アニオン性界面活性剤は、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
非重合性ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
界面活性剤は、単量体混合物100質量部に対して、1〜10質量部を含むことが好ましい。界面活性剤を適量使用すると樹脂粒子の機械安定性がより向上し、重合性界面活性剤を適量使用すると機械安定性がさらに向上する。
【0029】
乳化重合には、ラジカル重合開始剤(以下、重合開始剤という)を使用することが好ましい。前記重合開始剤は、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性開始剤は、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルオキシベンゾエート、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5,トリメチルヘキサノエート、ジターシャリーブチルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、及びp−メンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾビス化合物が挙げられる。
水溶性重合開始剤は、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等が挙げられる。
【0030】
合成に際し、重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより重合反応を促進することができる。このような還元剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)、次亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット等が挙げられる。
本発明において乳化重合には、水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤は、単量体混合物100質量部に対して、0.03〜5質量部を使用することが好ましい。還元剤は、単量体混合物100質量部に対して、0.01〜2.5質量部を使用することが好ましい。
【0031】
化粧料用水性樹脂分散体は、乳化重合の際、必要に応じて、緩衝剤、連鎖移動剤、塩基性化合物等を使用できる。緩衝剤は、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。連鎖移動剤は、例えばオクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、メルカプト酢酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられる。
塩基性化合物は、中和に使用し、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンなどのアルキルアミン;2−ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルコールアミン;モルホリン、アンモニア等が挙げられる。
【0032】
乳化重合の方法は、例えば、反応槽に単量体、界面活性剤、水を全て仕込み、反応させるバッチ反応、単量体を徐々に反応槽に滴下して反応させる滴下反応等が挙げられる。これの中でも、重合反応での発熱を制御し易い面で滴下反応が好ましい。また、重合安定性をより向上させるため、滴下反応は、単量体、水、および界面活性剤を混合、撹拌し、乳化状態にしたモノマープレエマルジョンを形成してから滴下することが好ましい。
【0033】
<樹脂粒子>
樹脂粒子の平均粒子径は、30〜500nmが好ましく、50〜400nmがより好ましい。平均粒子径を30〜500nmにすることで、耐水性や経時安定性がより向上する。
【0034】
<シラン化合物>
シラン化合物は、重合性シラン化合物以外の化合物である。シラン化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトメチルジメトキシシラン、3−メルカプトメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらの中でも除去性の面でエトキシ基を有するシラン化合物が好ましい。
【0035】
本発明の化粧料は、化粧料用水性樹脂分散体を必須とし、化粧料の用途に応じて、例えば、増粘剤、成膜助剤、可塑剤、保潤剤、紫外線吸収剤、防腐剤、色材等の公知の素材を含むことができる。
【0036】
増粘剤は、例えば、アルカリ膨潤型増粘剤、会合性ポリウレタン、カルボキシビニルポリマー、増粘性多糖類、及び粘土鉱物等が挙げられる。
【0037】
成膜助剤および可塑剤は、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ジメチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール等のカルビトール;エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、スクロースアセテート等のアセテート;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノールアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール等のジオール;フタル酸ジエステル、アジピン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、セバシン酸ジエステル、アビエチクエン酸エステル等のエステル;スクロースベンゾエート等の安息香酸エステル、ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0038】
保潤剤は、例えば、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩、及びDL−ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0039】
紫外線吸収剤は、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、ジヒドロメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、及びパラジメチルアミノ安息香酸オクチル等の安息香酸誘導体;パラメトキシケイ皮酸エチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸ナトリウム、パラメトキシケイ皮酸カリウム、及びパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリン等のメトキシケイ皮酸誘導体;サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ミリスチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸誘導体;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ウロカニン酸エチルエステル、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、2−(2’−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、アントラニル酸メチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0040】
防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、およびデヒドロ酢酸、ならびにその塩等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、部は質量部、%は質量%をそれぞれ意味する。
なお、本明細書において、実施例1、3、5、7、9、および11〜15、および20〜30は参考例である。
【0042】
<実施例1>化粧料用水性樹脂分散体の合成
炭素数2〜4のメタクリル酸アルキルエステルとして、エチルメタクリレート20部、ブチルメタクリレート40部、アクリル酸3部、重合性シラン化合物としてKBE−503 1部、その他単量体としてブチルアクリレート36部、重合性界面活性剤としてPD−104 1.8部、水55部を混合してモノマープレエマルジョンを調製し、滴下槽に仕込んだ。
別途、還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を具備する4つ口フラスコを反応容器とし、該反応容器に水90部を仕込んだ。次いで、窒素を導入し、攪拌しながら、液温を70℃に加熱した。そして、反応容器中に、PD−104を0.2部添加し、滴下槽から上記モノマープレエマルジョンを3時間かけて連続的に滴下し、過硫酸アンモニウム0.3部使用することで液温を約80℃に保ちつつ乳化重合を行った。滴下終了後、更に2時間、乳化重合を継続した。その後、50℃まで冷却し、得られた溶液を180メッシュのポリエステル製の濾布で濾過することで化粧料用水性樹脂分散体を得た。濾布に残った凝集物はなく、重合安定性は良好であった。得られた水性樹脂分散体の不揮発分は40%、その酸価は23mgKOH/gであった。
【0043】
なお、水性樹脂分散体を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計 TAインスツルメント社製)を使用して測定した。具体的には上記エマルジョン2mgをアルミニウムパン上で秤量し、分散媒を蒸発させたアルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて測定して得られた吸熱ピークをTgとした。また、水性樹脂分散体を構成する樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定法を使用したD50平均粒子径である。測定は、上記水性樹脂分散体を水で500倍(容量比)に希釈した希釈液を作成し、該希釈液約5mLをナノトラック(日機装社製)で測定した。
【0044】
<耐水性>
水性樹脂分散体の耐水性は、以下に示す方法によって評価した。水性樹脂分散体を乾燥後の厚みが40μmになるようにアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、80℃で1時間乾燥させて、樹脂被膜を作製した。得られた樹脂被膜を40℃の温水中に入れ、1時間後の被膜の状態を目視にて確認した。評価基準を下記に示す。
◎:被膜に全く変化が見られない(極めて良好
○:被膜が若干白化(良好)
△:被膜が白化(やや不良)
×:ガラス板から被膜が剥離(不良)
【0045】
<機械安定性>
水性樹脂分散体の機械安定性は、以下に示す方法によって評価した。テスター産業社製マロン式機械的安定度試験機AB−802を用い、下記の条件にて測定した。
樹脂分 :20%
使用量 :50g
回転数 :1000rpm(±20rpm)
時間 :20分
過重 :30kgf
測定後の水性樹脂分散体を100メッシュ金網で濾過し、金網上の凝集物の乾燥質量(Wg)を測定して、次式により、発生凝集物量(%)を求めて下記のように評価した。
発生凝集物量(%)=W(g)/[50(g)×エマルジョンの樹脂分(20%)]×100
評価基準を下記に示す。
◎:発生凝集物量<0.1%(極めて良好)
〇:0.1%≦発生凝集物量<0.3%(良好)
△:0.3%≦発生凝集物量<1%(やや不良)
×:1%≦発生凝集物量(不良)
【0046】
<経時安定性>
水性樹脂分散体の経時安定性は、以下に示す方法によって評価した。得られた水性樹脂分散体の製造直後に粘度を測定した後、密閉した容器に入れ、60℃で1ヶ月後、再度粘度を測定した。粘度測定には、B型粘度計を使用し、25℃、30rpmの条件で測定を行った。
粘度変化率(%)=|初期の粘度−経時後の粘度|×100
評価基準を下記に示す。
◎:粘度変化率<10%(極めて良好)
〇:10%≦粘度変化率<20%(良好)
△:20%≦粘度変化率<50%(やや不良)
×:50%≦粘度変化率(不良)
【0047】
<実施例2〜10及び比較例1〜6>化粧料用水性樹脂分散体の合成
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜10及び比較例1〜6の化粧料用水性樹脂分散体をそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載がない項目は「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0048】
【表1】
【0049】
表中の略号は以下の通りである。
<炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸>
EMA:エチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
iBMA:イソブチルメタクリレート
tBMA:ターシャリーブチルメタクリレート
AA:アクリル酸
【0050】
<その他単量体>
MMA:メチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート(ドデシルメタクリレート)
EA:エチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
【0051】
<重合性シラン化合物>
KBE−503:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
【0052】
<重合性界面活性剤>
PD−104:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(ラテムルPD−104、花王社製)
【0053】
<非重合性界面活性剤>
E−O:ラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王社製)
【0054】
<重合性シラン化合物以外のシラン化合物>
HTS−E:ヘキシルトリエトキシシラン
【0055】
表1の結果から、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸を含む単量体混合物の重合物で、樹脂のガラス転移温度−20〜100℃の水性樹脂分散体は、耐水性、機械安定性、経時安定性に優れていた。
【0056】
<実施例11>マスカラの配合
ステアリン酸5部及び流動パラフィン3部を配合し、80℃で溶解して油相とした。次に、プロピレングリコール5部、ベンゲルFW2部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部および水64.5部を配合し、80℃で溶解した後、BLACK PEARLS 4350
10部を分散して水相とした。油相に水相を投入し、ホモミキサーを用いて乳化した後、実施例1で得た分散体10部を徐々に添加し、ホモミキサーで撹拌した。その後、常温になるまで冷却して、マスカラを得た。マスカラの性能評価は15名の被験者による使用テストで行った。評価項目は、耐水性、化粧持ち、除去性について4段階で評価した。評価基準を下記に示す。
◎:13名以上の被験者が良好と回答(極めて良好)
〇:10〜12名の被験者が良好と回答(良好)
△:5〜9名の被験者が良好と回答(やや不良)
×:0〜4名の被験者が良好と回答(不良)
【0057】
<実施例12〜15及び比較例7〜9>マスカラの配合
表2に示す配合に変更した以外は、実施例11と同様の方法で、実施例12〜15及び比較例7〜9のマスカラをそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載がない項目は「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0058】
【表2】
【0059】
表中の略号は以下の通りである。
ベンゲルFW:天然ベントナイト(ホージュン社製)
BLACK PEARLS 4350:カーボンブラック(キャボット社製)
【0060】
表2からわかるように、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、樹脂のガラス転移温度が−20〜100℃である実施例1、3、5、7、9の水性樹脂分散体を配合した実施例11〜15のマスカラは、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含まない単量体重合物である比較例1の水性樹脂分散体を配合した比較例7、樹脂のガラス転移温度が−20℃以下である比較例5の水性樹脂分散体を配合した比較例8、水性樹脂分散体を配合していない比較例9のマスカラと比べて、耐水性、化粧持ち、除去性が優れていた。
【0061】
<実施例16>美爪料の配合
エチレングリコールモノエチルエーテル10部、クエン酸アセチルトリブチル3部および水7部を混合した溶液を、実施例2で得た分散体80部に徐々に配合し、ディスパーで均一になるまで撹拌して、美爪料を得た。美爪料の性能評価は15名の被験者による使用テストで行った。評価項目は、耐水性、化粧持ち、除去性について4段階で評価した。評価基準はマスカラの場合と同じである。
【0062】
<実施例17〜20及び比較例10、11>美爪料の配合
表3に示す配合組成に変更した以外は、実施例16と同様の方法で、実施例17〜20及び比較例10、11の美爪料をそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載がない項目は「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3からわかるように、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、樹脂のガラス転移温度が−20〜100℃である実施例2、4、6、8、10の水性樹脂分散体を配合した実施例16〜20の美爪料は、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを10質量%以下しか含まない単量体重合物である比較例2の水性樹脂分散体を配合した比較例10、樹脂のガラス転移温度が100℃以上である比較例6の水性樹脂分散体を配合した比較例11の美爪料と比べて、耐水性、化粧もち、除去性が優れていた。
【0065】
<実施例21>アイライナーの配合
レオドール TW−S120V 1部、エコーガム0.5部、BLACK PEARLS 4350 10部および水72.5部を配合し、コロイドミルを使用して、均一に分散させた。この分散液に、グリセリン5部、クエン酸アセチルトリブチル1部を配合し、さらに、実施例1で得た分散体10部を徐々に配合し、均一になるまで撹拌して、アイライナーを得た。アイライナーの性能評価は15名の被験者による使用テストで行った。評価項目は、耐水性、化粧持ち、除去性について4段階で評価した。評価基準はアイライナーの場合と同じである。
【0066】
<実施例22〜25及び比較例12>アイライナーの配合
表4に示す配合組成に変更した以外は、実施例21と同様の方法で、実施例22〜25及び比較例12のアイライナーをそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載がない項目は「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0067】
【表4】
【0068】
表中の略号は以下の通りである。
レオドール TW−S120V:ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王社製)
エコーガム:キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル社製)
BLACK PEARLS 4350:カーボンブラック(キャボット社製)
【0069】
表4からわかるように、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、樹脂のガラス転移温度が−20〜100℃である実施例1、3、5、7、9の水性樹脂分散体を配合した実施例21〜25のアイライナーは、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを80質量%を超える量含む単量体重合物である比較例3の水性樹脂分散体を配合した比較例12のアイライナーと比べて、耐水性、化粧持ちが優れていた。
【0070】
<実施例26>ヘアスタイリング剤の配合
ジプロピレングリコール5部、エタノール1部、BELSIL DM3102E 1部および水78部を混合した溶液に、実施例2で得た分散体15部を徐々に配合し、ディスパーで均一になるまで撹拌して、ヘアスタイリング剤を得た。ヘアスタイリング剤の性能評価は15名の被験者による使用テストで行った。評価項目は、耐水性、化粧持ち、除去性について4段階で評価した。評価基準はアイライナーの場合と同じである。
【0071】
<実施例27〜30及び比較例13>ヘアスタイリング剤の配合
表4に示す配合組成に変更した以外は、実施例26と同様の方法で、実施例27〜30及び比較例13のヘアスタイリング剤をそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載がない項目は「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0072】
【表5】
【0073】
表中の略号は以下の通りである。
BELSIL DM 3102E :ポリジメチルシロキサン(旭化成ワッカーシリコーン社製)
【0074】
表5からわかるように、樹脂が炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸を含む単量体混合物の重合物であり、樹脂のガラス転移温度が−20〜100℃である実施例2、4、6、8、10の水性樹脂分散体を配合した実施例26〜30のヘアスタイリング剤は、樹脂がアクリル酸を含まない単量体混合物の重合物である比較例4の水性樹脂分散体を配合した比較例13のヘアスタイリング剤と比べて、耐水性、セット力、除去性が優れていた。