(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスケットは、前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する第1接続部と、前記外側環状部と前記外周部とを接続する第2接続部と、をさらに有し、同一の金属薄板から一体的に形成されている、
請求項5に記載のベーン型圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2001−304158号公報(特許文献1)は、弾性材(ゴム製のOリング)を介して上記の嵌合構造を実現することもできると述べている。サイドプレートとハウジングの底部との間に吸入室および吐出室が形成されているが、弾性材が吸入室および吐出室を区画しているとの記載は同公報にはない。
【0006】
サイドプレートのシリンダ室側とは反対側の位置に吐出室を形成する場合、ガスケットを用いることができる。ガスケットは、軸方向においてサイドプレートとハウジングとの間に挟み込まれる。ガスケットにより、サイドプレートとハウジングとが軸方向において直接的に接触することは防止される。ガスケットは製作誤差を吸収することが可能であり、高い加工精度を有するように各部材が作製されるという必要性も軽減される。このようなガスケットは、サイドプレートのシリンダ室側とは反対側の位置に吐出室を区画するとともに、サイドプレートとハウジングとの間に挟まれることで面圧を発生する。
【0007】
サイドプレートのうちの径方向において外側に位置する部分は、シリンダの軸方向における一方側(後方側)の端面に支持される。サイドプレートのうちの径方向において内側に位置する部分(内側部)は、シリンダの上記一方側の開口を塞ぐように配置され、ロータに摺接する。サイドプレートの上記内側部は、ガスケットを介して面圧を受ける。サイドプレートの上記内側部が面圧を受けてシリンダ室側に向かって撓んでいる場合、サイドプレートの上記内側部がロータに圧接され、圧縮効率の低下や摩耗の進行を招く可能性がある。
【0008】
本発明は、吐出室を区画するガスケットをサイドプレートとハウジングとの間に配置した場合であっても、サイドプレートのうちの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室側に向かって撓むことを抑制可能な構成を備えたベーン型圧縮機、およびそのようなベーン型圧縮機に備えられるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づくベーン型圧縮機は、互いに結合される第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とを有し、上記第1ハウジング部材に筒状のシリンダ部が設けられたハウジングと、上記ハウジングにより回転可能に支持された回転軸と、上記回転軸が挿入される孔が形成され、上記シリンダ部の軸方向における一方側の端面に固定されるとともに上記シリンダ部の上記一方側の開口を塞ぐように配置されることで上記シリンダ部の内側にシリンダ室を形成するサイドプレートと、上記シリンダ室内に収容され、上記回転軸と一体的に回転可能であり、外周面に複数のベーン溝が形成されたロータと、上記複数のベーン溝の各々に出没可能に装着されたベーンと、上記シリンダ室内に、上記シリンダ部、上記ロータ、上記ベーンおよび上記サイドプレートによって形成される圧縮室と、上記軸方向において上記第2ハウジング部材と上記サイドプレートとの間に挟まれるように配置されるガスケットと、上記軸方向において上記サイドプレートの上記シリンダ室側とは反対側に位置し、上記第2ハウジング部材、上記サイドプレートおよび上記ガスケットによって区画されることで形成され、上記圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出室と、を備え、上記ガスケットは、上記回転軸が挿入される内側環状部と、上記内側環状部の径方向における外側に設けられた外側環状部と、を有し、上記内側環状部が上記第2ハウジング部材と上記サイドプレートとの間で上記軸方向に挟まれることによって上記サイドプレートに上記内側環状部が与える面圧を、上記外側環状部が上記第2ハウジング部材と上記サイドプレートとの間で上記軸方向に挟まれることによって上記サイドプレートに上記外側環状部が与える面圧に比べて小さくした。
【0010】
上記構成によれば、径方向外側の面圧よりも径方向内側の面圧の方が小さくなるため、サイドプレートの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室側に向かって撓むことを抑制可能となる。
【0011】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記内側環状部および上記外側環状部には、バネ定数が互いに異なるビードが形成されており、上記内側環状部に形成された上記ビードのバネ定数は、上記外側環状部に形成された上記ビードのバネ定数よりも小さい。
【0012】
上記構成によれば、サイドプレートに内側環状部が与える面圧を、サイドプレートに外側環状部が与える面圧に比べて容易に小さくすることが可能となる。
【0013】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記内側環状部に形成された上記ビードは、ハーフビードから構成されており、上記外側環状部に形成された上記ビードは、フルビードから構成されている。
【0014】
上記構成によれば、サイドプレートに内側環状部が与える面圧を、サイドプレートに外側環状部が与える面圧に比べて容易に小さくすることが可能となる。
【0015】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記第2ハウジング部材は、上記内側環状部に当接するように配置され、上記サイドプレートとの間で上記内側環状部を挟み込む内側端面部と、上記外側環状部に当接するように配置され、上記サイドプレートとの間で上記外側環状部を挟み込む外側端面部と、を有し、上記軸方向において、上記内側端面部は上記外側端面部に比べて上記サイドプレートから遠い側に配置されている。
【0016】
上記構成によれば、サイドプレートに内側環状部が与える面圧を、サイドプレートに外側環状部が与える面圧に比べて容易に小さくすることが可能となる。
【0017】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記ガスケットは、上記外側環状部の上記径方向における外側に設けられた外周部をさらに有し、上記吐出室は、上記外側環状部と上記外周部との間に形成されている。
【0018】
上記構成によれば、外周部の存在により、サイドプレートと第2ハウジング部材とが軸方向において直接的に接触することをより抑制できる。
【0019】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記ガスケットは、上記内側環状部と上記外側環状部とを接続する第1接続部と、上記外側環状部と上記外周部とを接続する第2接続部と、をさらに有し、同一の金属薄板から一体的に形成されている。
【0020】
上記構成によれば、内側環状部と外側環状部とが互いに別々の部材から構成されたり、内側環状部と外側環状部と外周部とが互いに別々の部材から構成されたりする場合に比べて、ガスケットとしての部品点数を少なくすることが可能となる。
【0021】
上記ベーン型圧縮機において好ましくは、上記シリンダ部には、上記シリンダ部の上記端面に開口する吐出通路が形成され、上記サイドプレートは、上記シリンダ部の上記端面に重なるように配置された弁プレートを含み、上記弁プレートには、切欠が設けられることによって板ばね状の吐出リード弁が形成され、上記吐出リード弁は、上記吐出通路を開閉可能なように上記端面を弁座として配置され、上記圧縮室で圧縮された冷媒は、上記吐出通路を通過し、上記吐出リード弁を押し退けて上記吐出室に吐出される。
【0022】
上記構成によれば、シリンダ部の一方側の端面に吐出通路が開口しており、吐出通路を開閉可能なように吐出リード弁が上記端面を弁座として配置されているため、デッドボリュームを小さくすることが可能となる。
【0023】
本発明に基づくガスケットは、本発明に基づく上記のベーン型圧縮機に備えられるガスケットであって、上記第2ハウジング部材と上記サイドプレートとの間に挟まれていない無負荷状態において、上記内側環状部に形成された上記ビードの上記軸方向における高さは、上記外側環状部に形成された上記ビードの上記軸方向における高さに比べて高くされている。
【0024】
上記構成によっても、サイドプレートに内側環状部が与える面圧を、サイドプレートに外側環状部が与える面圧に比べて小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成によれば、サイドプレートのうちの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室側に向かって撓むことを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態におけるベーン型圧縮機10について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
図1は、ベーン型圧縮機10を示す断面図である。以下の説明においては便宜上のため、
図1に示すベーン型圧縮機10の図中左方向を前方と称し、同右方向を後方と称する。
【0028】
図2は、ベーン型圧縮機10の分解した状態を示す斜視図である。
図2に示すフロントハウジング13、サイドプレート15(弁プレート80およびリテーナプレート90)およびガスケット50については、後方側から前方側に向かってこれらを斜めに見た様子が図示されており、リヤハウジング12については、前方側から後方側に向かってリヤハウジング12を斜めに見た様子が図示されている。
【0029】
図3は、ベーン型圧縮機10の分解した状態を示す側面図である。
図3に示すフロントハウジング13、サイドプレート15(弁プレート80およびリテーナプレート90)およびガスケット50については、後方側から前方側に向かって回転軸16の軸方向に沿ってこれらを側面視した様子が図示されており、リヤハウジング12については、前方側から後方側に向かって回転軸16の軸方向に沿ってリヤハウジング12を側面視した様子が図示されている。
図3に示すリヤハウジング12の周壁12aには、便宜上のため斜線のハッチングを付している。
【0030】
[ベーン型圧縮機10]
ベーン型圧縮機10は、たとえば車両に搭載され、車両の空調装置に用いられる。
図1に示すように、ベーン型圧縮機10は、ハウジング11、サイドプレート15、回転軸16、ロータ18(
図1,
図3)、ベーン19(
図3)、およびガスケット50(
図2,
図3)等を備える。
【0031】
(ハウジング11)
ハウジング11は筒状のシリンダ部14を有する。本実施の形態では、ハウジング11がリヤハウジング12とフロントハウジング13とから構成される。フロントハウジング13(第1ハウジング部材)はリヤハウジング12(第2ハウジング部材)の前端に結合される。シリンダ部14は、フロントハウジング13に一体的に設けられる。リヤハウジング12は周壁12aを有し、シリンダ部14は周壁12aの内側に配置される。周壁12aには吸入ポート22(
図1)が形成され、吸入ポート22の内側には逆止弁26が設けられる。
【0032】
シリンダ部14の内周面14cは、楕円状の形状を有する(
図2,
図3)。シリンダ部14の外周面には凹部14aが設けられる。凹部14aはシリンダ部14の全周に亘って延在する。凹部14aおよびリヤハウジング12の内周面により吸入空間20が区画される。シリンダ部14には一対の吸入孔23(
図1,
図3)が設けられる。吸入行程の際、吸入空間20は吸入孔23を通じてシリンダ室14d(
図3)に連通する。
【0033】
フロントハウジング13は底壁部13p(
図1)を有する。底壁部13pには孔13hが設けられ、孔13hには回転軸16が挿入される。回転軸16とフロントハウジング13との間には軸封装置17aが設けられる。底壁部13pは、シリンダ室14d(
図3)を区画する端面13s(
図1)を有する。端面13s、内周面14c、および、後述する弁プレート80の前面80a(内側部87)により、シリンダ部14の内側にシリンダ室14dが形成される。
【0034】
シリンダ室14d(
図3)内にはロータ18が収容される。ロータ18は回転軸16と一体的に回転可能である。ロータ18の外周面18cには複数のベーン溝18aが形成される。複数のベーン溝18aの各々にはベーン19が出没可能に装着される。ロータ18の外周面18cと、シリンダ部14の内周面14cと、隣り合う一対のベーン19と、底壁部13pの端面13s(
図1)と、後述するサイドプレート15(具体的には、サイドプレート15を構成している弁プレート80の内側部87の前面80a)とにより、シリンダ室14d内に圧縮室21(
図3)が形成される。
【0035】
各々のベーン溝18aと各々のベーン19の底面との間は背圧室41(
図3)とされる。背圧室41は、ベーン19に背圧を付与し、ベーン19を外周側に押し出す。
図1および
図3に示すように、底壁部13pの端面13sには、周方向にて互いに離間した複数の(ここでは2つの)通油溝13aが形成されている。複数の通油溝13aの各々は、互いに隣り合う背圧室41同士の間を接続するように周方向に延在している。
【0036】
リヤハウジング12の底部12t(
図1)には、有底状のカバー部36が一体的に設けられる。カバー部36は、自身の前側に壁部36j(隔壁)を有している。カバー部36の内部(カバー部36自身の内部)には、壁部36jによって油分離室36sが区画される。油分離室36s内には油分離筒36wが設けられる。油分離筒36wの上方には吐出ポート34が形成される。
【0037】
カバー部36の壁部36jには連絡通路36k(
図1,
図3)と油通路36vとが形成される。圧縮室21で圧縮された冷媒は吐出通路37(後述する)を介して吐出室35aに吐出される。連絡通路36kは吐出室35aと油分離室36sとを連通させる。油通路36vは、油分離室36sと貯油室35b(後述する)とを連通させる。貯油室35bは油分離室36sで分離された潤滑油を貯留する。
【0038】
カバー部36の壁部36jには、第1突出部36a(
図1〜
図3)、第2突出部36b、段差部36d、垂下部36f、および連通孔36mが形成される。第1突出部36aおよび第2突出部36bはいずれも円環状に延びる形状を有し、第1突出部36aは、第2突出部36bの内径側に位置する。第1突出部36aの内側には、回転軸16(
図1)が挿入される凹部36uが設けられる。ハウジング11により、すなわちフロントハウジング13に設けられた孔13hとリヤハウジング12(第1突出部36a)の内周面36eとにより回転軸16が回転可能に支持される。
【0039】
リヤハウジング12は、内側端面部36atおよび外側端面部36btを有している。内側端面部36atは、第1突出部36aの軸方向における前端に位置する表面によって形成され、軸方向に対して直交している。詳細は後述するが、内側端面部36atとサイドプレート15(リテーナプレート90)との間で、ガスケット50の内側環状部51が挟み込まれる(
図4)。
【0040】
外側端面部36btは、第2突出部36bの軸方向における前端に位置する表面によって形成され、軸方向に対して直交している。詳細は後述するが、外側端面部36btとサイドプレート15(リテーナプレート90)との間で、ガスケット50の外側環状部52が挟み込まれる(
図4)。本実施の形態においては、軸方向において、内側端面部36atは外側端面部36btに比べて、サイドプレート15から遠い側、すなわち後方側に配置されている(
図4)。
【0041】
段差部36dは、第2突出部36bの外径側において円弧状に延在している。外側端面部36btと段差部36dの軸方向の前端に位置する表面とは、軸方向においてサイドプレート15から同じ距離となる位置に配置されている(
図1参照)。換言すると、外側端面部36btと段差部36dの軸方向の前端に位置する表面とは、軸方向に対して直交する同一の平面内に位置している。
【0042】
垂下部36fは、第1突出部36aの下部から下方に向かって延在している。内側端面部36atと垂下部36fの軸方向の前端に位置する表面とは、軸方向においてサイドプレート15から同じ距離となる位置に配置されている(
図1参照)。換言すると、内側端面部36atと垂下部36fの軸方向の前端に位置する表面とは、軸方向に対して直交する同一の平面内に位置している。
【0043】
垂下部36fを貫通するように連通孔36mが設けられる。連通孔36mの前端部分は垂下部36fの前端面に開口しており、連通孔36mの後端部分36n(
図1)は第1突出部36aの内周面36eに開口している。
【0044】
シリンダ部14は端面14tを有する。端面14tは、シリンダ部14のうちの回転軸16の軸方向における一方側(後方側)に位置する。端面14tは、回転軸16の軸方向に対して直交する平面形状を有する。シリンダ部14には、吐出通路37が設けられる。端面14tには、吐出通路37の後端部分と複数のネジ穴14m,14n(
図2,
図3)とが開口している。吐出通路37の前端部分はシリンダ部14の内周面14cに開口している(
図1,
図2)。
【0045】
吐出通路37は、シリンダ室14d(圧縮室21)で圧縮された冷媒が吐出される通路である。吐出通路37は、シリンダ部14の端面14t上に設けられた吐出リード弁81(
図2,
図3)により開閉する。圧縮室21で圧縮された冷媒は、吐出通路37を通過し、吐出リード弁81を押し退けて吐出室35a(後述する)へ吐出される。
【0046】
(サイドプレート15)
サイドプレート15は、シリンダ部14の端面14tに固定されるとともにシリンダ部14の一方側(端面14t側)の開口を塞ぐように配置されることで、シリンダ部14の内側にシリンダ室14dを形成する。本実施の形態のサイドプレート15は、弁プレート80とリテーナプレート90との2枚を含む。弁プレート80は前面80aおよび後面80bを有する。リテーナプレート90は前面90aおよび後面90bを有する。弁プレート80およびリテーナプレート90はいずれも、全体として回転軸16を環状に囲む板状(円盤状)の形状を有し、リヤハウジング12の周壁12aの内側に配置される。
【0047】
弁プレート80は、内側部87と外側部83とを有する。内側部87には、回転軸16が挿入される孔87hが形成されている。外側部83は、内側部87の周囲を環状に囲んでおり、内側部87と一体に形成されている。リテーナプレート90は、内側部97と外側部93とを有する。内側部97には、回転軸16が挿入される孔97hが形成されている。外側部93は、内側部97の周囲を環状に囲んでおり、内側部97と一体に形成されている。
【0048】
弁プレート80およびリテーナプレート90は、シリンダ部14の端面14tに、複数のボルト78,79(
図2)を用いて固定される。弁プレート80は、前面80aがシリンダ部14の端面14tに重なるように配置される。リテーナプレート90は、弁プレート80に対してシリンダ室14dの側とは反対側に設けられ、前面90aが弁プレート80の後面80bに重なるように配置される。弁プレート80の内側部87は、シリンダ部14の一方側(端面14t側)の開口を塞ぐように配置されることで、シリンダ部14の内側にシリンダ室14dを形成する。リテーナプレート90の内側部97は、弁プレート80の内側部87を後側から支持する。
【0049】
弁プレート80の外側部83には複数の挿通孔88,89が形成されており、リテーナプレート90の外側部93には複数の挿通孔98,99が形成されている。ボルト78は、挿通孔98,88に挿通されてネジ穴14mに螺合し、外側部83,93をシリンダ部14の端面14tに固定する。後述する吐出リード弁81およびリテーナ91は、ボルト78により端面14tに固定される。ボルト79は、挿通孔99,89に挿通されてネジ穴14nに螺合する。外側部83のうちの周方向において吐出リード弁81,81の間に位置する部分と、外側部93のうちの周方向においてリテーナ91,91の間に位置する部分とは、ボルト79により端面14tに固定される。
【0050】
弁プレート80には連通孔87v(
図2,
図3)が設けられる。リテーナプレート90には連通溝97g(
図3)が設けられる。連通溝97gは、リテーナプレート90の前面90a側に設けられ、孔97hの位置から径方向の外側に向かって直線状に延びている。連通孔87vと連通溝97gとは相互に対向する。複数の背圧室41の各々は、回転に伴って、連通孔87vに対向している状態と、連通孔87vに対向していない状態とを繰り返す。
【0051】
背圧室41が連通孔87vと対向しているときに、連通溝97gおよび連通孔87vを通して背圧室41に潤滑油が供給される。
図2,
図3に示すように、弁プレート80の内側部87には、ロータ18の回転方向に沿って延在する貫通孔87wが形成されている。ここでは同方向において互いに離間した複数の(ここでは2つの)貫通孔87wが形成されている。貫通孔87wとリテーナプレート90の内側部97の前面90aとによって、互いに隣り合う背圧室41同士を連通させる通油溝が形成されている。
【0052】
(吐出リード弁81)
弁プレート80の外側部83には、略J字形状の切欠82が設けられることにより板ばね状の吐出リード弁81が形成されている。弁プレート80には、一対の切欠82が設けられている。内側部87は、切欠82,82の間に位置しており、シリンダ部14とともにシリンダ部14の内側にシリンダ室14dを形成する。吐出リード弁81は、切欠82から見て内側部87の反対側、すなわち、切欠82の径方向外側に位置する。
【0053】
吐出リード弁81の根元に対応する位置に挿通孔88が設けられる。吐出リード弁81はシリンダ部14の端面14tに重なるように配置され、ボルト78によって端面14tに締結される。吐出リード弁81は吐出通路37を開閉可能なようにシリンダ部14の端面14tを弁座として配置されており、吐出通路37の後端部分は吐出リード弁81により塞がれる。
【0054】
(リテーナ91)
リテーナプレート90の外側部93には、略J字形状の切欠92が設けられることによってリテーナ91が形成されている。リテーナプレート90には、一対の切欠92が設けられている。内側部97は、弁プレート80の内側部87を後側から支持する部分であり、切欠92,92の間に位置する。リテーナ91は、切欠92から見て内側部97の反対側、すなわち切欠92の径方向外側に位置する。
【0055】
リテーナ91の根元に対応する位置に挿通孔98が設けられる。リテーナ91はボルト78によって、弁プレート80を介してシリンダ部14の端面14tに締結される。リテーナ91は吐出リード弁81に後側から重ね合わさるように配置され、吐出リード弁81の開度を規制する。
【0056】
(ガスケット50)
図1〜
図3に示すように、ガスケット50はサイドプレート15とリヤハウジング12との間(具体的にはリテーナプレート90とリヤハウジング12のカバー部36との間)に挟まれるように配置される。ガスケット50は、リテーナプレート90とカバー部36とにより軸方向に挟み込まれて、吐出室35a、貯油室35bおよび供給室70を区画する。ガスケット50は、たとえば金属製の薄板から構成され、表面はゴム等の樹脂で覆われている。
【0057】
ガスケット50は、内側環状部51、外側環状部52、外周部53、接続部54,55、垂下部56、および連通孔57を有する。内側環状部51および外側環状部52はいずれも円環状に延びる形状を有し、外側環状部52は内側環状部51の径方向における外側に設けられる。内側環状部51には孔51hが設けられており、内側環状部51の内側(孔51h)に回転軸16(
図1)が挿入される。接続部54は、径方向に延在し、内側環状部51と外側環状部52とを接続する。
【0058】
外周部53は、外側環状部52の外径側において円弧状に延在する。接続部55は、径方向に延在し、外側環状部52と外周部53とを接続する。垂下部56は内側環状部51の下部から下方に向かって延在しており、垂下部56を貫通するように連通孔57が設けられる。
【0059】
図3を参照して、ガスケット50がリテーナプレート90の後面90bに重ね合わされた状態では、孔51hと孔97hとが相互に一致する。ガスケット50の外周部53は、外側部93の後面90bのうちの挿通孔99,98の間に位置する部分に重ね合わされる。ガスケット50の垂下部56および連通孔57は、内側部97の後面90bのうちの孔97hの下方に位置する部分に重ね合わされる(
図1参照)。
【0060】
ガスケット50の内側環状部51、外側環状部52、外周部53、および垂下部56の各々の外形形状は、カバー部36に設けられた第1突出部36a、第2突出部36b、段差部36d、および垂下部36fの各々の外形形状とそれぞれ略同一の形状を有する。ガスケット50の内側環状部51は、第1突出部36aの内側端面部36atとリテーナプレート90の内側部97との間で挟み込まれる。ガスケット50の外側環状部52は、第2突出部36bの外側端面部36btとリテーナプレート90の内側部97との間で挟み込まれる。
【0061】
ガスケット50の外周部53は、段差部36dの軸方向における前端に位置する表面とリテーナプレート90の外側部93(挿通孔99,98の間に位置する部分)とによって挟み込まれる。ガスケット50の垂下部56は、垂下部36fの軸方向における前端に位置する表面とリテーナプレート90の内側部97とによって挟み込まれる。
【0062】
弁プレート80の外側部83(挿通孔88,89の間に位置する部分)は、シリンダ部14の端面14tのうちのネジ穴14m,14nの間に位置する部分と、リヤハウジング12(カバー部36)の段差部36dとの間に、リテーナプレート90の外側部93(挿通孔98,99の間に位置する部分)およびガスケット50(外周部53)を介して挟み込まれることにより支持されることとなる。
【0063】
(ガスケット50による面圧P1,P2,P3)
図4は、サイドプレート15がガスケット50を介して受ける面圧を模式的に示す断面図である。
【0064】
ガスケット50の内側環状部51がリヤハウジング12(内側端面部36at)とサイドプレート15(リテーナプレート90の内側部97)との間で軸方向に挟まれることによって、サイドプレート15はガスケット50の内側環状部51から面圧P1を受ける。換言すると、内側環状部51はサイドプレート15に面圧P1を与える。
【0065】
ガスケット50の外側環状部52がリヤハウジング12(外側端面部36bt)とサイドプレート15(リテーナプレート90の内側部97)との間で軸方向に挟まれることによって、サイドプレート15はガスケット50の外側環状部52から面圧P2を受ける。換言すると、外側環状部52はサイドプレート15に面圧P2を与える。
【0066】
ガスケット50の外周部53がリヤハウジング12(段差部36dの軸方向の前端に位置する表面)とサイドプレート15(リテーナプレート90の外側部93)との間で軸方向に挟まれることによって、サイドプレート15はガスケット50の外周部53から面圧P3を受ける。換言すると、外周部53はサイドプレート15に面圧P3を与える。
【0067】
本実施の形態においては、サイドプレート15にガスケット50の内側環状部51が与える面圧P1が、サイドプレート15にガスケット50の外側環状部52が与える面圧P2に比べて小さくなるように構成される。サイドプレート15にガスケット50の内側環状部51が与える面圧P1は、サイドプレート15にガスケット50の外周部53が与える面圧P3に比べて小さくなるように構成される。
【0068】
(貯油室35b、吐出室35a、供給室70)
リテーナプレート90(後面90b)と、ガスケット50の内側環状部51の外周部分と、ガスケット50の外側環状部52の内周部分と、カバー部36の第1突出部36aの外周面と、カバー部36の第2突出部36bの内周面と、第2突出部36bの内側に形成されている凹部36tとによって区画されることで、貯油室35b(
図1)が形成される。
【0069】
リテーナプレート90(後面90b)と、ガスケット50の外側環状部52の外周部分と、カバー部36の第2突出部36bの外周面と、第2突出部36bの外側に形成されている凹部(カバー部36の壁部36jの表面)とによって区画されることで、吐出室35a(
図1)が形成される。吐出室35aは、軸方向においてサイドプレート15(リテーナプレート90)のシリンダ室14d側とは反対側に位置しており、圧縮室21(
図3)で圧縮された冷媒が吐出される。
【0070】
回転軸16の後端側の部分(孔51hよりも後方側に位置する部分)と、ガスケット50の内側環状部51の内周部分と、カバー部36の第1突出部36aの内周面36eと、第1突出部36aの内側に形成されている凹部36uとによって区画されることで、供給室70が形成される。供給室70は、貯油室35b内の潤滑油を一時的に貯留し、回転軸16の後端部周りの摺動部へ潤滑油を供給する。
【0071】
サイドプレート15(弁プレート80およびリテーナプレート90)とカバー部36の前側の壁部36jとの間に、吐出室35a、貯油室35bおよび供給室70が区画されており、これらはいずれも互いに離れた位置(ガスケット50によって分離された位置)に形成される。供給室70は貯油室35bから見て内径側に位置し、貯油室35bは吐出室35aから見て内径側に位置する。カバー部36の前側の壁部36jは、油分離室36sを、吐出室35a、貯油室35bおよび供給室70から区画する隔壁をなしている。
【0072】
リテーナプレート90の後面90bとガスケット50の垂下部56との間には、隙間S(
図1)が設けられる。貯油室35bと供給室70とは、隙間Sと、ガスケット50の連通孔57と、垂下部36fの連通孔36mとを介して連通する。供給室70は、複数の背圧室41の各々に連通してベーン19に背圧を付与する。すなわち、隙間S、連通孔57、連通孔36m、供給室70、第1突出部36aの内周面36eと回転軸16との間の隙間(第1突出部36aの内周面36eと回転軸16との間の摺動部分)、孔51hと回転軸16との間の隙間、孔97hと回転軸16との間の隙間、連通溝97g(
図3)、および、連通孔87v(
図2,
図3)は、貯油室35bに貯留された潤滑油を背圧室41に導く背圧供給路を構成する。
【0073】
(ベーン型圧縮機10の動作)
回転軸16が回転すると、矢印R(
図3)に示す方向にロータ18が回転し、ベーン型圧縮機10の外部から吸入ポート22(
図1)を通過して吸入空間20に冷媒が吸入される。吸入空間20に吸入された冷媒は、吸入孔23(
図3)を通過して、吸入行程中のシリンダ室14d(圧縮室21)に吸入される。冷媒は、ロータ18の回転に伴う圧縮室21の容積減少により圧縮される。
【0074】
図5は、ベーン型圧縮機10に備えられた吐出リード弁81およびその周辺構成を示す断面図である。圧縮室21で圧縮された冷媒は、圧縮室21から吐出通路37に吐出され、吐出通路37を通過し、吐出リード弁81を押し退けて吐出室35aへ吐出される。
【0075】
冷媒はその後、連絡通路36k(
図1)を通過して油分離室36s内に送出される。冷媒は油分離筒36wの外周面に吹き付けられ、油分離筒36wの周囲を旋回しながら油分離室36s内の下方へ導かれる。遠心分離により冷媒から潤滑油が分離される。冷媒から分離された潤滑油は、油分離室36sの底部側へ移動するとともに、油通路36vを通過して貯油室35bに送出される。
【0076】
油分離室36s内の圧力は貯油室35b内の圧力より高く、貯油室35bに送出された潤滑油の一部は、上記の背圧供給路および背圧室41を通してベーン19に供給される。外周側に押し出されたベーン19により圧縮室21が区画される。ベーン型圧縮機10内の各種の部材を潤滑させるために、潤滑油は、供給室70、背圧室41、貫通孔87w(通油溝)および通油溝13aなどの各所に案内され、ベーン型圧縮機10内で循環する。
【0077】
油分離室36s内の上側(吐出ポート34側)に位置する空間と、油分離室36sの下方に位置する空間(すなわち貯油室35b)とは直接的には連通していない。油分離室36s内で潤滑油が分離された冷媒は、吐出室35aおよび貯油室35bを通過することなく、吐出ポート34を介してベーン型圧縮機10の外部へ吐出される。
【0078】
油分離室36s内で潤滑油と分離されて吐出ポート34に向かって流れる冷媒が、貯油室35b内の潤滑油に流入することはほとんどない。油分離室36s内で潤滑油と分離されて吐出ポート34に向かって流れる冷媒が貯油室35b内に貯留されている潤滑油の油面を乱すといったこともほとんどない。
【0079】
(作用および効果)
サイドプレート15のうちの径方向において外側に位置する部分(ここでは外側部83,93)は、シリンダ部14の軸方向における一方側(後方側)に位置する端面14tに支持される。サイドプレート15のうちの径方向において内側に位置する部分(ここでは内側部87)は、シリンダ部14の上記一方側の開口を塞ぐように配置され、シリンダ室14dを形成するとともに、ロータ18に摺接する。このように構成されたサイドプレート15においては、外側部83,93が環状の固定端を形成し、内側部87,97が孔87h,97hの位置を先端とする自由端を形成し、サイドプレート15は全体として片持ち梁の構造を呈している。
【0080】
サイドプレート15の内側部87,97は、ガスケット50を介して面圧を受ける。サイドプレート15にガスケット50の内側環状部51が与える面圧P1は、サイドプレート15にガスケット50の外側環状部52が与える面圧P2に比べて小さくなるように構成されている。仮に、面圧P1と面圧P2とが同一の値であったり、面圧P1が面圧P2に比べて大きい値であったりする場合には、サイドプレート15のうちの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室14d側に向かって撓みやすくなる。この場合、サイドプレート15の内側部87(特に、内側部87のうちの孔87hの周辺に位置する部分)がロータ18に圧接されることで、圧縮効率の低下や摩耗の進行を招く可能性がある。これに対して本実施の形態においては、面圧P1が面圧P2に比べて小さいため、サイドプレート15のうちの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室14d側に向かって撓むことは、上記のような場合に比べて抑制でき、圧縮効率の低下や摩耗の進行を招くことも効果的に抑制することが可能となる。
【0081】
ガスケット50の外周部53がリヤハウジング12(段差部36dの軸方向の前端に位置する表面)とサイドプレート15(リテーナプレート90の外側部93)との間で軸方向に挟まれることによって、サイドプレート15にガスケット50の外周部53が面圧P3を与える。シール性を向上させるために面圧P3を増加させようとした場合、それに伴って面圧P1,P2も増加しやすい。このような場合であっても、面圧P1が面圧P2に比べて小さくなるように構成されることにより、サイドプレート15のうちの径方向において内側寄りに位置する部分がシリンダ室14d側に向かって撓むことを抑制でき、圧縮効率の低下や摩耗の進行を招くことも効果的に抑制することが可能となる。
【0082】
(その他の構成1)
ベーン型圧縮機10においては、シリンダ部14の端面14tに吐出通路37が開口しており、サイドプレート15は、端面14tに重なるように配置された弁プレート80を含んでいる。吐出リード弁81は、吐出通路37の後端部分を直接塞ぐように端面14tを弁座として配置されている。ベーン型圧縮機10によれば、吐出通路37の後端部分を直接塞ぐように吐出リード弁81が端面14tを弁座として配置されているため、デッドボリュームを小さくすることが可能となる。なお当該構成は必須ではなく、たとえば厚みを有するリアサイドプレートをシリンダ部14の端面14tに固定し、リアサイドプレートに設けられた吐出孔を後側から塞ぐように、吐出リード弁をリアサイドプレートの後面側に配置してもよい。この場合であっても、面圧P1が面圧P2に比べて小さくなるように構成されることで、上記同様の効果が得られる。
【0083】
ベーン型圧縮機10においてはさらに、弁プレート80に切欠82が設けられることによって板ばね状の吐出リード弁81が形成される。1枚の弁プレート80が、シリンダ室14dを形成するという機能(内側部87)と、吐出通路37を開閉するという機能(吐出リード弁81)との両方を兼ね備えている。シリンダ室を形成するという機能と吐出通路を開閉するという機能とが互いに別の部材から構成される場合に比べて、ベーン型圧縮機10によればこれら2つの機能を担う構成の部品点数を少なくすることが可能となる。なお当該構成も必須ではなく、シリンダ室を形成するという機能と吐出通路を開閉するという機能とを互いに別の部材から構成しても構わない。この場合であっても、面圧P1が面圧P2に比べて小さくなるように構成されることで、上記同様の効果が得られる。
【0084】
(その他の構成2)
吐出通路37の前端部分は、シリンダ部14の内周面14cに開口しており(
図1,
図2)、吐出通路37の後端部分は、シリンダ部14の端面14tに開口している。
図1に示すように、吐出通路37は、回転軸16の軸方向に対して交差する方向に沿って、斜めに延在している。径方向における位置を比較すると、吐出通路37の後端部分は吐出通路37の前端部分よりも外側に位置している。
【0085】
吐出通路37は、L字状に屈曲または湾曲して形成することも可能である。すなわち、吐出通路37は、回転軸16に対して直交する方向(すなわち径方向)に延びるように形成された部分と、当該部分から後方に向かって軸方向に延びるように形成された部分とから構成することも可能である。これに対して、吐出通路37が回転軸16の軸方向に対して交差する方向に沿って斜めに延在している場合には、L字状の吐出通路37の場合に比べてデッドボリュームを小さくすることが可能となる。
【0086】
(その他の構成3)
図6は、
図3中のVI−VI線に沿った矢視断面図であり、ガスケット50の断面構造を示している。ガスケット50の内側環状部51および外側環状部52には、バネ定数が互いに異なるビード51b,52bが形成されており、内側環状部51に形成されたビード51bのバネ定数は、外側環状部52に形成されたビード52bのバネ定数よりも小さくなるように構成されるとよい。当該構成が採用されることにより、サイドプレート15にガスケット50の内側環状部51が与える面圧P1を、サイドプレート15にガスケット50の外側環状部52が与える面圧P2に比べて容易に小さくすることが可能となる。
【0087】
図6に示すように、外周部53にもビード53bを形成してよい。ビード51bのバネ定数は、ビード53bのバネ定数よりも小さくなるように構成されるとよい。ビード52bのバネ定数は、ビード53bのバネ定数よりも大きくてもよく、小さくてもよく、同じであってもよい。
【0088】
(その他の構成4)
一般的に、フルビードの方が、ハーフビードよりも大きなバネ定数を有する。ビードの種類、幅、高さ、厚み、および形状等に応じてビードのバネ定数が変わる。
図6に示すように、内側環状部51に形成されたビード51bはハーフビードから構成され、外側環状部52に形成されたビード52bはフルビードから構成されているとよい。当該構成が採用されることによって、サイドプレート15にガスケット50の内側環状部51が与える面圧P1を、サイドプレート15にガスケット50の外側環状部52が与える面圧P2に比べて容易に小さくすることが可能となる。本実施の形態では、外周部53に形成されたビード53bはフルビードから構成される。ビード53bは、ハーフビードから構成されていてもよい。
【0089】
(その他の構成5)
図4に示すように、第1突出部36aの内側端面部36atは、第2突出部36bの外側端面部36btに比べて、軸方向においてサイドプレート15から遠い側、すなわち後方側に配置されている。内側端面部36atとサイドプレート15との間の軸方向における間隔は、外側端面部36btとサイドプレート15との間の軸方向における間隔よりも狭い。間隔を大きく設定するほど面圧P1,P2,P3は小さくなり、間隔を狭く設定するほど面圧P1,P2,P3は大きくなる。
【0090】
間隔が上記のような大小関係を有するように構成することにより、面圧P1が面圧P2に比べて小さくなるようにしてもよい。間隔が上記のような大小関係を有していれば、たとえば、均一の厚みを有する平らなガスケット50を用いた場合であっても、面圧P1を面圧P2に比べて小さくなるように構成することが可能である。
【0091】
(その他の構成6)
図6に示すように、ガスケット50がリヤハウジング12とサイドプレート15との間に挟まれていない無負荷状態において、ガスケット50の内側環状部51に形成されたビード51bの軸方向における高さH1は、外側環状部52に形成されたビード52bの軸方向における高さH2に比べて高くなるように構成してもよい。ビード51bの高さH1は、ビード53bの高さH3よりも高くなるように構成してもよい。ビード52bの高さH2は、ビード53bの高さH3よりも大きくてもよく、小さくてもよく、同じであってもよい。
【0092】
高さH1,H2,H3に応じて、サイドプレート15にガスケット50が与える面圧P1,P2,P3(
図4)が変わる。面圧だけでなくシール性なども考慮した上で、高さH1が高さH2に比べて最適な程度で高くなるように構成し、面圧P1が面圧P2に比べて最適な程度で小さくなるように構成するとよい。高さH1,H2,H3を設定する際には、内側端面部36atとサイドプレート15との間の軸方向における間隔や、外側端面部36btとサイドプレート15との間の軸方向における間隔も併せて考慮するとよい。
【0093】
(その他の構成7)
図4に示すように、ベーン型圧縮機10においては、ガスケット50が内側環状部51および外側環状部52に加えて外周部53をさらに有しており、吐出室35aは外側環状部52と外周部53との間に形成されている。当該構成によれば、1枚のガスケット50によって吐出室35a、貯油室35bおよび供給室70を区画することができるとともに、サイドプレート15とリヤハウジング12とが軸方向において直接的に接触することを防止できる。ガスケット50は製作誤差を吸収することも可能であり、高い加工精度を有するように各部材が作製されるという必要性も軽減することが可能となる。
【0094】
(その他の構成8)
図2,
図3に示すように、ガスケット50は、内側環状部51と外側環状部52とを接続する接続部54(第1接続部)と、外側環状部52と外周部53とを接続する接続部55(第2接続部)とを有しており、同一の金属薄板から一体的に形成されている。当該構成によれば、内側環状部51と外側環状部52とが互いに別々の部材から構成されたり、内側環状部51と外側環状部52と外周部53とが互いに別々の部材から構成されたりする場合に比べて、ガスケット50としての部品点数を少なくすることが可能となる。
【0095】
(その他の構成9)
ベーン型圧縮機10においては、サイドプレート15は、吐出リード弁が形成された弁プレートを備え、軸方向に冷媒ガスが吐出されるが、これに限られず、シリンダ室から径方向に吐出する形態であってもよい。ベーン型圧縮機10においては、底壁部13pとシリンダ部14とが一体に形成されているが、フロントサイドプレートとして底壁部13pをシリンダ部14とは別体に形成し、軸方向において間隔を空けて配置されたフロントサイドプレートとサイドプレート15(リヤサイドプレート)との間にシリンダ部14が配置されている構成であってもよい。油分離室36sは、鉛直方向に延在するように図示されているが、油分離室36sは、鉛直方向に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0096】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。