特許第6863341号(P6863341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863341フィールド機器、フィールド機器の診断方法および診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863341
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】フィールド機器、フィールド機器の診断方法および診断装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-123156(P2018-123156)
(22)【出願日】2018年6月28日
(65)【公開番号】特開2020-4093(P2020-4093A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩下 淳一
(72)【発明者】
【氏名】志村 徹
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−242271(JP,A)
【文献】 特開2015−042867(JP,A)
【文献】 特開平08−320726(JP,A)
【文献】 特開平04−009214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器であって、
複数の診断工程を階層的に実行することにより、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断部を備え、
前記診断部は、前記複数の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能であり、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、前記一の診断工程の後の診断工程では、前記一の診断工程の診断結果が正常であるとして診断を行うことを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
請求項1に記載のフィールド機器において、
前記診断部は、一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを示すパラメータを保持し、該パラメータに基づき、前記一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択することを特徴とするフィールド機器。
【請求項3】
請求項に記載のフィールド機器において、
前記診断部は、前記パラメータを不揮発的に保持することを特徴とするフィールド機器。
【請求項4】
フィールド機器の診断方法であって、
複数の診断工程を階層的に実行することにより、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断ステップを含み、
前記診断ステップでは、前記複数の診断工程のうち、一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能であり、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、前記一の診断工程の後の診断工程では、前記一の診断工程の診断結果が正常であるとして診断を行うことを特徴とする診断方法。
【請求項5】
フィールド機器の動作状態の診断を行う診断装置であって、
前記フィールド機器内で行われる、前記フィールド機器の動作状態を診断するための複数の第1の診断工程による診断結果を取得する取得部と、
前記複数の第1の診断工程の診断結果を用いて、1または複数の第2の診断工程により
、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断部と、を備え、
前記診断部は、前記複数の第1の診断工程および前記1または複数の第2の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能であり、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、前記一の診断工程の後の診断工程では、前記一の診断工程の診断結果が正常であるとして診断を行うことを特徴とする診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィールド機器、フィールド機器の診断方法および診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な設備を持つプラントには、プラント内に配置された種々の設備の内部の流体等の状態を測定および流体等に対する制御などを目的として、流量計、伝送器、科学機器(pH計等)およびバルブ等のアクチュエータなどのフィールド機器と呼ばれる複数の現場機器が設置されている。このようなフィールド機器の中には、フィールド機器自体が正常に動作しているか否かの診断を自己で行う自己診断機能を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フィールド機器の自己診断は、一の診断工程の診断結果を後の診断工程が用いて診断を行うというように、複数の診断工程により階層的に行われる場合、前の診断工程の診断結果が、後の診断結果に対して影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−6184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィールド機器は、様々な環境およびアプリケーションの下で使用される。ここで、特定の使用条件では、その条件が既知であるとしてフィールド機器の動作状態は正常であるとして扱ってよい場合がある。しかし、この場合において、特定の診断工程の診断結果が「NG(不良)」となり、この診断工程の後の診断工程の診断結果もNGとなって、フィールド機器の動作状態がNGとなってしまうことがある。例えば、フィールド機器が電磁流量計である場合、電極と流体との接液面の状態により発生するノイズがある条件のときに大きくなって流量信号に影響を与える。このノイズが既知であるとして、フィールド機器の動作状態が正常であるとして扱ってよい場合でも、このノイズによって特定の診断工程の診断結果が「NG」となり、フィールド機器の動作状態がNGとなってしまうことがある。そのため、特定の使用条件に対する、フィールド機器の動作状態の診断の適応性を改善する余地があった。
【0006】
上記のような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができるフィールド機器、フィールド機器の診断方法および診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係るフィールド機器は、複数の診断工程を階層的に実行することにより、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断部を備え、前記診断部は、前記複数の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。このように、少なくとも一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択可能とすることで、特定の診断工程については、その診断工程の診断結果を無効とすることができる。そのため、特定の使用条件が既知である場合、特定の診断工程の診断結果が「NG」となっても、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【0008】
一実施形態において、前記診断部は、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、前記一の診断工程の後の診断工程では、無効とした前記一の診断工程の診断結果を用いないで診断を行う。こうすることで、特定の使用条件が既知である場合、特定の診断工程の診断結果が「NG」となっても、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【0009】
一実施形態において、前記診断部は、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、前記一の診断工程の後の診断工程では、前記一の診断工程の診断結果が正常であるとして診断を行う。こうすることで、一の診断工程の診断結果を無効とする場合でも、後の診断工程では、一の診断工程の診断結果が有効である場合と同様の処理により診断を行うことができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
一実施形態において、前記診断部は、一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを示すパラメータを保持し、該パラメータに基づき、前記一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択する。こうすることで、パラメータに基づき容易に、一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択することができる。
【0011】
一実施形態において、前記診断部は、前記パラメータを不揮発的に保持する。こうすることで、フィールド機器の使用条件に変化が無ければ、パラメータを設定し直すことなく、診断を行うことができる。また、フィールド機器の電源がオフ及びオンした場合でも、パラメータを設定し直すことなく、診断を行うことができる。
【0012】
幾つかの実施形態に係るフィールド機器の診断方法は、複数の診断工程を階層的に実行することにより、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断ステップを含み、前記診断ステップでは、前記複数の診断工程のうち、一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。
このように、少なくとも一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするか選択可能とすることで、特定の診断工程については、その診断工程の診断結果を無効とすることができる。そのため、特定の使用条件が既知である場合、特定の診断工程の診断結果が「NG」となっても、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る診断装置は、前記フィールド機器内で行われる、前記フィールド機器の動作状態を診断するための複数の第1の診断工程による診断結果を取得する取得部と、前記複数の第1の診断工程の診断結果を用いて、1または複数の第2の診断工程により、前記フィールド機器の動作状態の診断を行う診断部と、を備え、前記診断部は、前記複数の第1の診断工程および前記1または複数の第2の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、該一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。このように、複数の第1の診断工程および1または複数の第2の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択可能とすることで、特定の診断工程については、その診断工程の診断結果を無効とすることができる。そのため、特定の使用条件が既知である場合、特定の診断工程の診断結果が「NG」となっても、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、フィールド機器の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができるフィールド機器、フィールド機器の診断方法および診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1の実施形態に係るフィールド機器の構成例を示すブロック図である。
図2】従来のフィールド機器の動作状態の診断方法について説明するための図である。
図3図1に示す診断部による、フィールド機器の動作状態の診断方法について説明するための図である。
図4】本開示の第2の実施形態に係る診断装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るフィールド機器10の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るフィールド機器10は、プラントに設置され、プラント内に配置された設備の内部の流体等の状態を測定および流体等に対する制御などを行う。また、本実施形態に係るフィールド機器10は、フィールド機器10自体が正常に動作しているか否かの診断を自己で行う自己診断機能を備える。フィールド機器10は、例えば、圧力計、流量計および温度センサなどのセンサ機器、流量制御弁および開閉弁などのバルブ機器、ファンおよびモータなどのアクチュエータ機器、プラント内の状況および対象物などを撮影するカメラおよびビデオなどの撮像機器、プラント内の異音などの収集および警報音の出力などを行うマイクおよびスピーカなどの音響機器、各機器の位置情報を出力する位置検出機器、および、その他の機器である。フィールド機器が設置されるプラントは、化学プランなどの工業プラント、ガス田および油田などの井戸元あるいはその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力などの発電を管理制御するプラント、太陽光あるいは風力などの環境発電を管理制御するプラント、および、上下水、ダムなどを管理制御するプラントなどである。
【0018】
図1に示すフィールド機器10は、センサ11と、A/D変換回路12と、表示器13と、メモリ14と、出力回路15と、演算回路16とを備える。
【0019】
センサ11は、フィールド機器10が設置されている設備の内部の流体等の状態(例えば、流量、圧力、温度、レベルなど)を測定し、計測結果(アナログ計測信号)をA/D変換回路12に出力する。センサ11の構成は、センサ11の計測対象によって異なる。上述した各種の計測対象を計測するためのセンサ11の構成は本開示とは直接関係しないため、説明を省略する。
【0020】
A/D変換回路12は、センサ11から出力された計測結果(アナログ計測信号)をアナログ/デジタル変換により、センサ11が計測した計測信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値に変換して、演算回路16に出力する。
【0021】
表示器13は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである。表示器13は、演算回路16の制御に従い、例えば、フィールド機器10が設置されている設備の内部の流体等の状態、フィールド機器10の動作状態の診断結果など、種々の情報を表示する。表示器13は、表示器13とタッチセンサとを一体的に形成し、表示器13の表示面上にタッチセンサのタッチ面を配置したいわゆるタッチパネルであってもよい。表示器13がタッチパネルである場合、タッチパネルへのタッチ操作により、フィールド機器10への操作入力などが可能となる。
【0022】
メモリ14は、演算回路16が実行するアプリケーションプログラム、実行途中のデータなどを記憶する。メモリ14は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの種々のメモリで構成される。メモリ14は、演算回路16の制御に従い、データの記憶(書き込み)およびデータの出力(読み出し)が行われる。
【0023】
出力回路15は、演算回路16の制御に従い、センサ11の測定結果を、例えば、プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置などの、フィールド機器10の外部装置に出力する。具体的には、出力回路15は、演算回路16から出力された、センサ11の計測信号の大きさに対応するデジタル値を、例えば、4mAから20mAの範囲の直流アナログ信号に変換して外部に出力する。出力回路15は、例えば、HART(登録商標)、BRAIN、ファウンデーションフィールドバス(登録商標)、ISA100.11aなどで規定される通信プロトコルを用いて、外部と通信が可能である。
【0024】
演算回路16は、フィールド機器10が備える各構成要素を制御する。演算回路16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などにより構成され、フィールド機器10の機能を実現するためのアプリケーションプログラムおよびデータに応じて、フィールド機器10が備える各構成要素を制御する。例えば、演算回路16は、出力回路15に、センサ11の計測信号の大きさに対応するデジタル値を、4mAから20mAの範囲の直流アナログ信号に変換して外部に出力させる。また、演算回路16は、例えば、フィールド機器10が設置されている設備の内部の流体等の状態などを表示器13に表示させる。
【0025】
演算回路16は、診断部17を備える。診断部17は、フィールド機器10の動作状態の診断(フィールド機器10が正常に動作しているか否かの診断)を行う。ここで、診断部17は、複数の診断工程を階層的に実行することにより、フィールド機器10の動作状態の診断を行う。演算回路16は、診断部17の診断結果を、例えば、表示器13に表示させたり、出力回路15に外部に出力させたりする。
【0026】
次に、診断部17によるフィールド機器10の動作状態の診断方法について説明する。まず、比較例として、従来のフィールド機器の動作状態の診断方法について説明する。
【0027】
一般に、自己診断機能を有するフィールド機器においては、複数の診断工程によりフィールド機器の動作状態の診断が行われる。そして、複雑な構成を持つフィールド機器では、複数の診断工程を総合的、また段階的に実施し、フィールド機器の動作状態が正常であるか、異常であるかを判定する。図2に示すように、例えば、上位層、中位層、下位層の三階層に分けて、診断が行われる。
【0028】
図2の例では、上位層には、診断工程A〜Eが含まれる。診断工程A〜Eではそれぞれ、所定の診断対象の動作状態が診断され、診断対象の動作状態が正常(「OK」)であるか、不良(「NG」)であるかが判定される。診断工程A〜Eの診断対象は、例えば、フィールド機器10が備える構成要素である。例えば、構成要素には、センサ11を駆動する励磁回路、センサ11に備えられた電極に発生する信号を検出する信号検出回路、A/D変換回路12などがあり、診断工程A〜Eの診断対象は、同一の構成要素内部で扱われる異なる値(変数)を診断対象としてもよい。
【0029】
中位層には、診断工程F,Gが含まれる。診断工程Fでは、診断工程A,B,Cの診断結果に基づき、診断が行われる。具体的には、診断工程A,B,Cの診断結果が全て「OK」であれば、診断工程Fの診断結果は「OK」となる。また、診断工程A,B,Cの診断結果の少なくとも1つが「NG」であれば、診断工程Fの診断結果は「NG」となる。図2の例では、診断工程Bの診断結果が「NG」であるので、診断工程Fの診断結果は「NG」となる。
【0030】
また、診断工程Gでは、診断工程D,Eの診断結果に基づき、診断が行われる。具体的には、診断工程D,Eの診断結果が全て「OK」であれば、診断工程Gの診断結果は「OK」となる。また、診断工程D,Eの診断結果の少なくとも1つが「NG」であれば、診断工程Gの診断結果は「NG」となる。図2の例では、診断工程D,Eの診断結果が「OK」であるので、診断工程Gの診断結果は「OK」となる。
【0031】
下位層には、診断工程Hが含まれる。診断工程Hでは、診断工程F,Gの診断結果に基づき、診断が行われる。具体的には、診断工程F,Gの診断結果が全て「OK」であれば、診断工程Hの診断結果は「OK」となる。また、診断工程F,Gの診断結果の少なくとも1つが「NG」であれば、診断工程Hの診断結果は「NG」となる。図2の例では、診断工程Fの診断結果が「NG」であるので、診断工程Hの診断結果は「NG」となる。
【0032】
図2に示す各診断工程の診断結果は以下の表1のようになる。
【表1】
【0033】
図2および表1に示すように、診断工程Bの診断結果が「NG」となることで、診断工程Bの後の診断工程Fおよび診断工程Hの診断結果も「NG」となる。すなわち、従来の診断方法では、一の診断工程の診断結果が、その一の診断工程の後の診断工程の診断結果に対して影響を与える。
【0034】
ここで、フィールド機器の使用条件によっては、その条件が既知であるとしてフィールド機器の動作状態は正常であるとして扱ってよい場合がある。しかし、この場合において、特定の診断工程の診断結果が「NG(不良)」となり、この診断工程の後の診断工程の診断結果もNGとなって、フィールド機器の動作状態が「NG」となってしまうことがある。すなわち、従来の診断方法では、一の診断工程の診断結果が、その一の診断工程の後の診断工程の診断結果に対して影響を与えるため、特定の条件では、その条件に適応せず、フィールド機器の動作状態の診断を正確に行うことができない。
【0035】
次に、第1の実施形態の診断部17によるフィールド機器10の動作状態の診断方法について図3を参照して説明する。診断部17は、図2と同様に、複数の診断工程(診断工程A〜H)を階層的に実行することにより、フィールド機器10の動作状態の診断を行う。
【0036】
本実施形態に係る診断方法は、診断部17が、複数の診断工程を階層的に実行することにより、フィールド機器10の動作状態の診断を行う診断ステップを含む。ここで、診断部17は、診断ステップでは、フィールド機器10の動作状態を診断するための複数の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、その一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。具体的には、診断部17は、複数の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程Xの診断結果を有効とするか、無効とするかを示すパラメータXを保持している。そして、診断部17は、そのパラメータに基づき、一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択する。例えば、診断部17は、診断工程Xに対応するパラメータXが「Enable」である場合、診断工程Xの診断結果を、診断工程Xの後の診断工程での診断において有効とする。また、診断部17は、診断工程Xに対応するパラメータXが「Disable」である場合、診断工程Xの診断結果を、診断工程Xの後の診断工程での診断において無効とする。
【0037】
診断部17は、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、例えば、その一の診断工程の後の診断工程では、無効とされた一の診断工程の診断結果を用いず、有効とされた他の診断工程の診断結果を用いて診断を行う。この場合、無効とされた一の診断工程の診断結果を用いず、有効とされた他の診断工程の診断結果だけを用いて後の診断を行うための処理が必要となる。そこで、診断部17は、一の診断工程の診断結果を無効とする場合、例えば、その一の診断工程の診断結果に関わらず、その一の診断工程の後の診断工程では、その一の診断工程の診断結果は正常(「OK」)であるとして診断を行ってもよい。こうすることで、一の診断工程の診断結果を無効とする場合でも、後の診断工程では、一の診断工程の診断結果が有効である場合と同様の処理により診断を行うことができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0038】
図3においては、診断部17は、診断工程A〜Gそれぞれに対応して、パラメータX(X:A〜G)を保持している例を示している。また、図3においてはパラメータA,C,D,E,Fとして「Enable」が設定され、パラメータB,Gとして「Disable」が設定されている例を示している。すなわち、診断工程B,Gは、フィールド機器10の特定の使用条件などから、診断結果が「NG」となるが、「OK」として扱ってよいものとする。また、図3においては、上位層に含まれる、診断工程A,C,Eの診断結果は「OK」であり、診断工程B,Dの診断結果は「NG」である例を示している。
【0039】
診断部17は、中位層の診断工程Fでは、診断工程A,B,Cの診断結果に基づき診断を行う。ここで、診断部17は、パラメータBとして「Disable」が設定されているため、診断工程Bの実際の診断結果は「NG」であるが、その診断結果に関わらず、すなわち実際の診断結果を用いることなく、診断工程Bの診断結果は「OK」であるとして診断を行う。診断部17は、パラメータA,Cとして「Enable」が設定されており、診断工程A,Cの診断結果は「OK」であるため、診断工程Fの診断結果を「OK」とする。
【0040】
診断部17は、中位層の診断工程Gでは、診断工程D,Eの診断結果に基づき診断を行う。ここで、診断部17は、パラメータD,Eとして「Enable」が設定されており、診断工程Dの診断結果が「NG」、診断工程Eの診断結果が「OK」であるため、診断工程Gの診断結果を「NG」とする。
【0041】
診断部17は、下位層の診断工程Hでは、診断工程F,Gの診断結果に基づき診断を行う。ここで、診断部17は、パラメータGとして「Disable」が設定されているため、診断工程Gの実際の診断結果は「NG」であるが、その診断結果に関わらず、すなわち実際の診断結果を用いることなく、診断工程Gの診断結果は「OK」であるとして診断を行う。診断部17は、パラメータFとして「Enable」が設定されており、診断工程Fの診断結果は「OK」であるため、診断工程Hの診断結果を「OK」とする。
【0042】
図3に示す各診断工程の診断結果は以下の表2のようになる。
【表2】
【0043】
図3および表2に示すように、診断工程Bの診断結果が「NG」であっても、パラメータBとして「Disable」が設定されているために、後の診断工程Fでは、診断工程Bの診断結果を無効として(診断工程Bの実際の診断結果を用いないで、あるいは診断工程Bの診断結果を「OK」として)、診断が行われる。また、診断工程Gの診断結果が「NG」であっても、パラメータGとして「Disable」が設定されているために、後の診断工程Hでは、診断工程Gの診断結果を無効として(診断工程Gの実際の診断結果を用いないで、あるいは診断工程Gの診断結果を「OK」として)、診断が行われる。そのため、診断部17は、フィールド機器10の既知である特定の使用条件などにより、診断結果を正常であるとして扱ってよいにも関わらず、診断結果が「NG」となることによって、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器10の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。また、パラメータXに基づき容易に、一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択することができる。
【0044】
パラメータXは、例えば、フィールド機器10の各種パラメータなどを設定するための携帯情報端末であるハンドヘルドターミナルを用いて、作業者により設定される。作業者は、例えば、フィールド機器10の設置時などに、フィールド機器10の設置現場で各診断工程の診断結果をモニタして、特定の条件等を考慮することで、各診断工程に対応するパラメータXを設定することができる。また、フィールド機器10の表示器13に押下式スイッチボタン、赤外線式スイッチボタンが備わっている、あるいはタッチパネルである場合、スイッチボタンあるいはタッチパネルを介してフィールド機器10の各種パラメータを設定することができる場合には、タッチパネルを介した操作入力により、各診断工程に対応するパラメータXが設定されてもよい。
【0045】
通常、フィールド機器10は、一度設置されると、ほとんど設置場所が変更されることはない。そのため、診断部17は、各診断工程に対応するパラメータXを、不揮発的に保持する、すなわち、フィールド機器10が備える不揮発性メモリに保持しておくことが望ましい。こうすることで、フィールド機器10の設置環境および使用状況などに応じて一度、パラメータXを設定すれば、フィールド機器10の設置以降、使用条件に変化が無ければ、パラメータXを設定し直す必要はないので継続して診断を行うことができる。また、パラメータXを設定した後、フィールド機器10の電源がオフ及びオンしても、パラメータXは保持されているので、再度パラメータXを設定する必要はなく、継続して診断を行うことができる。
【0046】
本実施形態においては、上位層および中位層の全ての診断工程(診断工程A〜G)それぞれに対応してパラメータX(パラメータA〜G)が設定される例を用いて説明したが、パラメータXの設定はこれに限られるものではない。例えば、上位層及び中位層の全ての診断工程に対応するパラメータXのデフォルト値を「Enable」としておき、複数の診断工程のうち、後の診断工程において診断結果が必要となる診断工程を除く診断工程についてのみ(図3において、パラメータBとGのみ)、パラメータXに「Disable」を設定してもよい。こうすることで、パラメータXの設定の手間を減らすことができるとともに、フィールド機器10の動作状態の診断に必要な診断工程の診断結果については常に有効とすることができ、デフォルト値のままなので設定間違いを引き起こさない。
【0047】
また、本実施形態においては、パラメータXとして「Disable」が設定された診断工程の診断結果は、後の診断工程では「OK」として取り扱う例を用いて説明したが、これに限られるものではない。例えば、前の複数の診断工程の診断結果を用いて診断を行う後の診断工程では、複数の前の診断工程に対応するパラメータXが「Enable」である診断工程の診断結果のみを用いて(「Disable」である診断工程の診断結果は用いない)、診断を行うようにしてもよい。
【0048】
このように本実施形態に係るフィールド機器10は、複数の診断工程を階層的に実行することにより、フィールド機器10の動作状態の診断を行う診断部17を備える。診断部17は、複数の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、その一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。
【0049】
このように少なくとも一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択可能とすることで、既知である特定の条件などで診断結果を「OK」として扱ってよい診断工程については、その診断工程の診断結果を無効とすることができる。そのため、既知である特定の使用条件などにより、診断結果を正常であるとして扱ってよいにも関わらず、診断結果が「NG」となることによって、後の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器10の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、フィールド機器10自体が動作状態の診断を行う例を用いて説明した。本開示の第2の実施形態においては、ハンドヘルドターミナルのような、フィールド機器10の外部装置である診断装置が、フィールド機器10の動作状態の診断を行う例を説明する。
【0051】
図4は、本実施形態に係る診断装置20の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る診断装置20は、ハンドヘルドターミナルのような、フィールド機器10の外部装置である。
【0052】
図4に示す診断装置20は、取得部21と、診断部22とを備える。
【0053】
取得部21は、フィールド機器10と有線または無線を介してデータの送受信を行う。取得部21は、フィールド機器10内で行われる、フィールド機器10の動作状態を診断するための複数の診断工程(第1の診断工程)の診断結果を取得する。なお、本実施形態では、フィールド機器10(診断部17)においては、フィールド機器10の動作状態を診断するための複数の診断工程(例えば、図3の例では、診断工程A〜H)のうち、一部の診断工程(例えば、上位層の診断工程A〜E)だけを行うものとする。取得部21は、フィールド機器10から取得した複数の第1の診断工程の診断結果を診断部22に出力する。
【0054】
診断部22は、取得部21から出力された、複数の第1の診断工程の診断結果を用いて、1または複数の第2の診断工程(例えば、図3の例では、診断工程F、G、H)により、フィールド機器の動作状態の診断を行う。ここで、診断部22は、複数の第1の診断工程および1または複数の第2の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、その一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。なお、診断部22による診断工程の診断結果の有効・無効の選択、複数の診断結果を用いた診断工程での診断などの処理は、診断部17の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
このように、本実施形態においては、診断装置20は、フィールド機器10内で行われる、フィールド機器10の動作状態を診断するための複数の第1の診断工程による診断結果を取得する取得部21と、複数の第1の診断工程の診断結果を用いて、1または複数の第2の診断工程により、フィールド機器10の動作状態の診断を行う診断部22と、を備える。診断部22は、複数の第1の診断工程および1または複数の第2の診断工程のうち、少なくとも一の診断工程の診断結果を、その一の診断工程の後の診断工程での診断において有効とするか、無効とするかを選択可能である。
【0056】
このように少なくとも一の診断工程の診断結果を有効とするか、無効とするかを選択可能とすることで、既知である特定の条件などで診断結果を「OK」として扱ってよい診断工程については、その診断工程の診断結果を無効とすることができる。そのため、既知である特定の使用条件などにより、診断結果を正常であるとして扱ってよいにも関わらず、診断結果が「NG」となることによって、後段の診断工程の診断結果も「NG」となることを防ぐことができるので、フィールド機器10の動作状態の診断の適応性の向上を図ることができる。
【0057】
本開示は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再構成可能であり、複数の構成部またはステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 フィールド機器
11 センサ
12 A/D変換回路
13 表示器
14 メモリ
15 出力回路
16 演算回路
17,22 診断部
20 診断装置
21 取得部
図1
図2
図3
図4