【実施例】
【0024】
以下には、本明細書で開示する水溶液系二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1、6、7、10、11、13、15、16、17〜19、22、24が実施例に該当し、実験例2〜5、8、9、12、14、20、21、23、25が比較例に該当する。
【0025】
[実験例1]
正極は以下のように作製した。スピネル型のアルミニウム置換リチウムマンガン酸化物(三井住友金属鉱山製:Li
1.1Al
0.1Mn
1.9O
4)と、導電材(東海カーボン製TB5500)、結着材としてのPVdF(呉羽化学製♯1320)をN−メチルピロリドン(NMP)と共に湿式混合した。混合には、混練機(シンキー製泡とり錬太郎)を用いた。これを20μm厚のアルミニウム箔上に塗工し、150℃で真空乾燥した。その後、直径14mmに打ち抜き、これをプレスして正極とした。正極合材層の厚さは40μmであった。活物質:導電材:結着材の最終的な割合は、質量比で77:14:9であった。また、正極活物質の目付け量は、6.55mg/cm
2であった。負極は以下のように作製した。Nb
2O
5(アルドリッチ製)と導電材としての亜鉛ナノ粉末(アルドリッチ製、1μm以下(カタログ値))、結着材としての結着材としてのPVdF(呉羽化学製♯9305)をNMPと共に湿式混合し負極合材を得た。この負極合材を、アルミニウム箔上に塗工し、150℃で真空乾燥した。その後、直径14mmに打ち抜き、これをプレスして負極とした。負極合材層の厚さは40μmであった。活物質:金属粒子:結着材の最終的な割合は、質量比で39.9:54.3:5.8であった。また、正極活物質の目付け量は、6.55mg/cm
2であった。仕込み量から計算された負極活物質と正極活物質の容量比は2.11であった。
【0026】
上記正極と負極とをセパレータを挟んで対向させ、電解液を入れて加圧型コインセルを組んだ。電解液として、Li(CF
3SO
2)
2N(LiTFSA、キシダ化学製)を溶解した水溶液(22.2mol/L)に添加剤としてのMg(TFSA)
2をモル比で3.5%添加したものを用いた。 また、セパレータとして、濾紙(桐山製5C)を用いた。得られたものを実験例1のセルとした。このセルを用い、25℃で0.1mA/cm
2の電流密度で2.7Vまで充電し、その後0.04mA/cm
2の電流密度で1.2Vまで放電させた。1サイクル目における実験例1のセルの正極活物質あたりの放電容量は、100mAh/gであった。なお、実験例1〜14の正極及び負極の詳細と、負極容量/正極容量の容量比、電解液の詳細、及び1サイクル目の放電用をまとめて表1、2に示した。
【0027】
[実験例2〜5]
負極において、Nb
2O
5とカーボンブラック(CB:東海カーボン製TB5500)とPVdFとを質量比で80:12:8とし、負極/正極容量比を1.79とした以外は、実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例2のセルとした。実験例2のセルの正極活物質あたりの放電容量は、78mAh/gであった。また、電解液にMg(TFSA)
2を含まないものを用い、負極/正極容量比を3.18とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたものを実験例3のセルとした。この実験例3の正極活物質あたりの放電容量は、65mAh/gであった。また、負極/正極容量比を2.49とした以外は実験例3と同様の工程を経て得られたものを実験例4のセルとした。この実験例4の正極活物質あたりの放電容量は、50mAh/gであった。また、負極/正極容量比を1.61とした以外は実験例3と同様の工程を経て得られたものを実験例5のセルとした。この実験例5の正極活物質あたりの放電容量は、32mAh/gであった。
【0028】
[実験例6]
負極において、Nb
2O
5と亜鉛ナノ粉末とPVdFとを質量比で56:38:6とし、負極/正極容量比を2.05とした以外は、実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例6のセルとした。実験例6のセルの正極活物質あたりの放電容量は、102mAh/gであった。
【0029】
[実験例7]
正極活物質にスピネル型のリチウムマンガン酸化物(LiMn
2O
4:アルドリッチ)を用い、電解液にプロパンジスルホニルリチウム(PDSL)の水溶液(濃度3.79mol/L)を用い、正極の活物質と導電材と結着材との質量比を76:11:13とし、負極/正極容量比を2.08とした以外は実験例6と同様の工程を経て得られたものを実験例7のセルとした。実験例7の正極活物質あたりの放電容量は、102mAh/gであった。
【0030】
[実験例8、9]
実験例2の負極を用い、負極/正極容量比を3.32とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例8のセルとした。実験例8の正極活物質あたりの放電容量は、46mAh/gであった。負極/正極容量比を4.43とした以外は実験例8と同様の工程を経て得られたものを実験例9のセルとした。実験例9の正極活物質あたりの放電容量は、66mAh/gであった。
【0031】
[実験例10]
PDSLの水溶液(濃度3.79mol/L)に4.5mol%のセシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(CsTFSA)を加えたものを電解液に用い、負極/正極容量比を1.87とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例10のセルとした。実験例10の正極活物質あたりの放電容量は、93mAh/gであった。
【0032】
[実験例11、12]
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12:LTO,石原産業製)を用い、負極の活物質と導電材と結着材との質量比を54:40:6とし、負極/正極容量比を1.69とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例11のセルとした。実験例11の正極活物質あたりの放電容量は、97mAh/gであった。導電材としてCBを用い、負極の活物質と導電材と結着材との質量比を80:15:5とし、負極/正極容量比を3.43とした以外は実験例11と同様の工程を経て得られたものを実験例12のセルとした。実験例12の正極活物質あたりの放電容量は、22mAh/gであった。
【0033】
[実験例13、14]
下記の正極を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例10とした。正極活物質としてのスピネル型のニッケル置換リチウムマンガン酸化物(LiNi
0.5Mn
1.5O
4 :アルドリッチ社製)と導電材としてのCB(東海カーボン製TB5500)と、結着材としてのPVdF(クレハ化学製♯1320)とをN−メチルピロリドン(NMP)とともに湿式混合し正極合材を得た。この正極合材ペーストをAl箔上に塗工し、150℃で真空乾燥した。その後、直径14mmに打ち抜き、これをプレスして正極に用いた。正極合材の厚さは40μmであった。活物質と導電材と結着材との最終的な割合は質量比で75:12:13であった。また、負極/正極容量比が2.39であり、正極活物質の目付け量は、6.55mg/cm
2であった。実験例13の正極活物質あたりの放電容量は、71mAh/gであった。また、実験例2の負極を用い、負極/正極容量比を3.65とした以外は実験例13と同様の工程を経て得られたものを実験例14のセルとした。実験例14の正極活物質あたりの放電容量は、56mAh/gであった。
【0034】
[実験例15〜19]
導電材の微粉末としてMg粉末(高純度化学製、180μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で50:44:6とし、負極/正極容量比を2.09とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例15のセルとした。また、導電材の微粉末としてAl粉末(高純度化学製、3μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で48:47:5とし、負極/正極容量比を1.79とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例16のセルとした。また、導電材の微粉末としてSi粉末(高純度化学製、45μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で51:44:5とし、負極/正極容量比を2.29とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例17のセルとした。また、導電材の微粉末としてSn粉末(アルドリッチ製、10μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で48:47:5とし、負極/正極容量比を2.23とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例18のセルとした。また、導電材の微粉末としてTaB粉末(アルドリッチ製、10μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で42:53:5とし、負極/正極容量比を1.69とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例19のセルとした。
【0035】
[実験例20、21]
導電材の微粉末としてCo粉末(高純度化学製、平均粒径5μm)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で50:45:5とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例20のセルとした。また、導電材の微粉末としてTe粉末(高純度化学製、45μm以下)を負極に用い、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で49:46:5とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例21のセルとした。
【0036】
[実験例22、23]
負極活物質としてルテニウム酸化物(RuO
2、アルドリッチ製、50μm以下)、導電材の微粉末としてZn粉末とAl粉末とを用い、負極の活物質とZn粉末とAl粉末と結着材との割合を質量比で51:33:11:5とし、負極/正極容量比を2.22とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例22のセルとした。また、導電材をCBとし、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で76:16:8とし、負極/正極容量比を3.89とした以外は実験例22と同様の工程を経て得られたものを実験例23のセルとした。
【0037】
[実験例24、25]
負極活物質としてLTO、導電材の微粉末としてMg粉末とAl粉末とを用い、負極の活物質とMg粉末とAl粉末と結着材との割合を質量比で52:29:19:5とし、負極/正極容量比を1.39とした以外は実験例7と同様の工程を経て得られたものを実験例24のセルとした。導電材をCBとし、負極の活物質と導電材と結着材との割合を質量比で81:12:7とした以外は実験例24と同様の工程を経て得られたものを実験例25のセルとした。
【0038】
(結果と考察)
図4は、実験例1〜3の充放電曲線である。
図5は、実験例6の3サイクルまでの充放電曲線である。
図6は、実験例7、8の充放電曲線である。
図7は、実験例11、12の充放電曲線である。
図8は、実験例15の充放電曲線である。
図9は、実験例17の充放電曲線である。
図10は、実験例18の充放電曲線である。
図11は、実験例24、25の充放電曲線である。表1、2に実験例1〜25の正極、負極、電解液の構成及び1サイクル目の放電容量をまとめて示した。
図4に示すように、実験例1〜3は、ほぼ同程度の充電容量を示した一方、Zn粉末を用いた実験例1では、大きく放電容量が向上した。これは、おそらくカーボンブラックを負極の導電材として用いると水の電気分解によりLiが消費されて放電容量が低下する一方、Zn粉末ではそのようなLiの消費をより低減することができるためであると推察された。また、
図5に示すように、実験例6では、サイクル特性が好適であることがわかった。
【0039】
図6に示すように、スピネル型のリチウムマンガン酸化物を負極活物質とし、導電材をCBとし、電解液にPDSLの水溶液を用いた実験例8においても、充電容量と放電容量との差が大きかった。一方、Zn粉末を負極に用いた実験例7では、充電容量及び放電容量の向上が認められた。また、
図7に示すように、LTOを負極活物質とする場合においても、Zn粉末を用いることによって、充放電容量をより向上することができることがわかった。
【0040】
図8〜10、表2に示すように、Mg粉末、Al粉末、Si粉末、Sn粉末、TaB粉末においても、Zn粉末と同様に、充放電容量をより向上することができることがわかった。また、
図8に示すように、Mg粉末においては、放電曲線の電位が2V以上を示し、且つ分極も少ないため、エネルギー密度やエネルギー効率をより高めることができ、特に好ましいことがわかった。一方、Co粉末やTe粉末においては、そのような効果は認められなかった。このため、導電性を有する特定の金属及び化合物において、水溶液系二次電池の負極に添加すると、水の電気分解などにより生じうるロスをより抑制することができることがわかった。
【0041】
以上より、Zn、Al、Mg、Si、Sn及びTaBのうち1以上の粉体を導電材として負極に含む水溶液系二次電池では、放電容量をより向上することができることがわかった。また、その導電材は、200μm以下の粒径、より好ましくは、50μm以下の粒径であることが好ましいことがわかった。また、導電材の粉体は、30質量%以上60質量%以下の範囲で含まれることが好ましいことがわかった。また、この水溶液系二次電池では、負極/正極容量比が1.2以上2.4以下の範囲においても、高い放電容量を示すことができることがわかった。特に、Al集電体と、負極活物質としてのLTOと、導電材としてMg粉末とを含む負極が好ましいことがわかった。なお、導電材は、特に電解液の分解抑制に寄与するものと推察され、放電容量の向上は、正極活物質ではなく、負極や電解液の組成に依拠するものと推察された。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。