特許第6863367号(P6863367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863367蛍光体シート、それを用いたLEDチップおよびLEDパッケージ、LEDパッケージの製造方法、ならびにLEDパッケージを含む発光装置、バックライトユニットおよびディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863367
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】蛍光体シート、それを用いたLEDチップおよびLEDパッケージ、LEDパッケージの製造方法、ならびにLEDパッケージを含む発光装置、バックライトユニットおよびディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20210412BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20210412BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20210412BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20210412BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20210412BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20210412BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20210412BHJP
【FI】
   G02B5/20
   H01L33/50
   C09K11/61
   C09K11/67
   C09K11/66
   C09K11/06 660
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K5/5415
   C08K5/3415
   C08K3/01
【請求項の数】18
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2018-508771(P2018-508771)
(86)(22)【出願日】2018年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2018004863
(87)【国際公開番号】WO2018155253
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2020年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-31751(P2017-31751)
(32)【優先日】2017年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 豊
(72)【発明者】
【氏名】神崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 亮
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/002584(WO,A1)
【文献】 特開2016−119448(JP,A)
【文献】 特開2016−072471(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/014068(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/190283(WO,A1)
【文献】 特開2014−116587(JP,A)
【文献】 特開2014−022704(JP,A)
【文献】 特開2013−001791(JP,A)
【文献】 特開2013−001792(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/093329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 33/50
C09K 11/00−11/89
C08L 83/04−83/08
C08K 5/5415
C08K 5/3415
C08K 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体およびシリコーン樹脂を含む蛍光体シートであって、角周波数1Hz、角速度6.2832rad/秒で測定を行った場合の、25℃における貯蔵弾性率G’が0.01MPa以上であり、100℃に加熱したときに貯蔵弾性率G’が0.01MPa未満になり、かつ、140℃に加熱したときに貯蔵弾性率G’が0.05MPa以上になり、前記シリコーン樹脂が、少なくとも下記の(A)〜(D)成分を含む架橋性シリコーン組成物の架橋物である蛍光体シート。
(A)平均単位式:
【化1】
(平均単位式(1)中、Rは炭素数1〜14の一価の炭化水素基であって、少なくとも1個はアリール基であり、かつ、少なくとも1個は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。a、b、c、d、およびeは、0≦a≦0.1、0.2≦b≦0.9、0.1≦c≦0.6、0≦d≦0.2、0≦e≦0.1、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。)
で表される分岐構造を有するオルガノポリシロキサン
(B)平均単位式:
【化2】
(平均単位式(2)中、Rは炭素数1〜14の1価の炭化水素基であって、少なくとも1個はアリール基であり、かつ、少なくとも1個は炭素数2〜6のアルケニル基である。f、gおよびhは0.1<f≦0.4、0.2≦g≦0.5、0.2≦h≦0.5、かつf+g+h=1を満たす数である。)
で表される分岐構造を有するオルガノポリシロキサン
(C)一分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有し、ケイ素原子に結合した有機基のうち12〜70モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100重量部に対して10重量部以上、95重量部以下である、請求項記載の蛍光体シート。
【請求項3】
(C)成分が平均単位式:
【化3】
(平均単位式(3)中、Rはアリール基、炭素原子数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基である。ただし、Rのうち12〜70モル%はアリール基である。)
で表されるオルガノポリシロキサンである、請求項1または2に記載の蛍光体シート。
【請求項4】
前記蛍光体の含有量が、40重量%以上90重量%以下である、請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項5】
前記蛍光体が、β型サイアロン蛍光体および一般式AMF:Mn(ここで、AはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種以上のアルカリ金属であり、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnからなる群より選ばれる1種以上の4価元素である。)で表されるMn賦活複フッ化物錯体蛍光体を含む、請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項6】
前記蛍光体が、ピロメテン化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項7】
前記蛍光体が、一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項に記載の蛍光体シート。
【化4】
(R、R、Ar〜ArおよびLは同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環基、ハロゲン、ハロアルカン、ハロアルケン、ハロアルキン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。Mはm価の金属を表し、ホウ素、ベリリウム、マグネシウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、白金から選ばれる少なくとも一種である。)
【請求項8】
一般式(4)のMがホウ素、Lがフッ素または含フッ素アリール基、m−1が2である請求項に記載の蛍光体シート。
【請求項9】
一般式(4)において、Arが一般式(5)で表される基である、請求項もしくはに記載の蛍光体シート。
【化5】
(rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1〜3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なっても良い。)
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シートまたはその硬化物を備えた、LEDチップ。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シートまたはその硬化物を備えた、LEDパッケージ。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シートを個片に切断する工程、および該個片に切断された蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける工程を含む、LEDパッケージの製造方法。
【請求項13】
前記蛍光体シートを、前記LEDチップの発光面の電極を避けた部分に貼り付ける、請求項12記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項14】
ウェハ上に形成された複数のLEDチップに、請求項1〜のいずれかに記載の蛍光体シートを一括して貼り付ける工程、および前記ウェハのダイシングと、前記蛍光体シートが貼り付けられたLEDチップの個片化とを、一括して行う工程を含む、LEDパッケージの製造方法。
【請求項15】
前記蛍光体シートを前記LEDチップに貼り付ける時の加熱温度が60℃以上250℃以下である、請求項1214のいずれかに記載のLEDパッケージの製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載のLEDパッケージを含む、発光装置。
【請求項17】
請求項11に記載のLEDパッケージを含む、バックライトユニット。
【請求項18】
請求項11に記載のLEDパッケージを含む、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体シート、それを用いたLEDチップおよびLEDパッケージ、LEDパッケージの製造方法、ならびにLEDパッケージを含む発光装置、バックライトユニットおよびディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)は、その発光効率の目覚ましい向上を背景とし、低い消費電力、長寿命、意匠性などを特長として、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)のバックライト向けや、車のヘッドライト等の車載分野ばかりではなく、一般照明向けでも急激に市場を拡大しつつある。LEDは、環境負荷も低いことから、今後、一般照明分野でも巨大な市場を形成すると期待されている。
【0003】
LEDの発光スペクトルは、LEDチップを形成する半導体材料に依存するため、その発光色は限られている。そのため、LEDを用いてLCDのバックライトや一般照明向けの白色光を得るためには、LEDチップ上にそれぞれのチップに適合した無機蛍光体を配置し、発光波長を変換する必要がある。具体的には、青色発光するLEDチップ上に黄色蛍光体を設置する方法、青色発光するLEDチップ上に赤色蛍光体および緑色蛍光体を設置する方法などが提案されている。
【0004】
LEDチップ上に蛍光体を設置する具体的な方法の1つとして、LEDチップ上に、蛍光体を含有したシート(以下、「蛍光体シート」という)を貼り付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この方法は、従来実用化されている、蛍光体を樹脂に分散した蛍光体組成物をLEDチップ上にディスペンスして硬化する方法と比較して、LEDチップ上に配置する蛍光体の量を一定量とすることが容易である。その結果として、得られる白色LEDの色や輝度を均一にできる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−235368号公報
【特許文献2】特開2010−123802号公報
【特許文献3】特許2011−102004号公報
【特許文献4】特許第5287935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体シートをLEDチップ上に貼り付ける方法を用いる場合、蛍光体シートをLEDチップの大きさに個片化する際の切断加工や、蛍光体シートにおいて、LEDチップ上の電極部などに相当する部分の孔開け加工などを施す必要がある。そのため、加工性に優れた蛍光体シートが求められる。
【0007】
一方で、蛍光体シートには、LEDチップ上に貼り付けるために接着性を有することが求められる。特許文献4には、ある特定のオルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物を用いることで、LEDチップへの貼り付け前の加工性に優れ、かつ、LEDチップへの貼り付け時の接着性にも優れた蛍光体シートが得られることが開示されている。しかし、この蛍光体シートは、LEDチップへの貼り付け後において、蛍光体シートの硬化性が不十分であるため、満足できる接着性が得られていなかった。そのことにより、その蛍光体シートを貼り付けたLEDチップは、接着性不良によって輝度が低下するといった課題を有していた。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するため、切断などの加工性とLEDチップへの接着性を両立する蛍光体シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、蛍光体およびシリコーン樹脂を含む蛍光体シートであって、25℃における貯蔵弾性率G’が0.01MPa以上であり、100℃における貯蔵弾性率G’が0.01MPa未満であり、かつ、140℃における貯蔵弾性率G’が0.05MPa以上である蛍光体シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切断などの加工性に優れ、LEDチップへの接着性も良好な蛍光体シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの一例。
図1B】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの一例。
図2】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法の一例。
図3】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの貼り付け方法の一例。
図4】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの貼り付け方法の一例。
図5】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの貼り付け方法の一例。
図6】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法の一例。
図7】本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法の一例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る蛍光体シート、それを用いたLEDチップおよびLEDパッケージ、LEDパッケージの製造方法、ならびにLEDパッケージを含む発光装置、バックライトユニットおよびディスプレイの好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0013】
<蛍光体シート>
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、蛍光体およびシリコーン樹脂を含み、25℃における貯蔵弾性率G’が0.01MPa以上であり、100℃における貯蔵弾性率G’が0.01MPa未満であり、かつ、140℃における貯蔵弾性率G’が0.05MPa以上である。
【0014】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、25℃での貯蔵弾性率G’が0.01MPa以上であることにより、室温(25℃)において十分弾性的である。そのため、刃体による切断加工などの早い剪断応力に対して、蛍光体シートが切断箇所周囲の変形無しに切断され、高い寸法精度での加工性が得られる。
【0015】
25℃での貯蔵弾性率G’の上限は、特に制限はないが、サンプルの取り扱いやすさの観点から、2.0MPa以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、100℃での貯蔵弾性率G’が0.01MPa未満であることにより、100℃においてシートが十分粘性的であり、流動性が高い。そのため、この物性を備えた蛍光体シートを100℃以上で加熱しながらLEDチップへ貼り付けることで、LEDチップの発光面の形状に応じて蛍光体シートが素早く流動、変形するので、蛍光体シートとLEDチップとの高い密着性が得られる。これによって、LEDチップからの光取出し性が向上し、輝度が向上する。
【0017】
100℃での貯蔵弾性率G’の下限は、特に制限はないが、LEDチップ上への加熱貼り付け時に蛍光体シートの流動性が高すぎると、貼り付け前に切断や孔開けで加工した形状が貼り付け時に保持できなくなるので、0.005MPa以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、140℃での貯蔵弾性率G’が0.05MPa以上であることにより、最終的にLEDチップを安定的に動作させることができる。この物性を備えた蛍光体シートを140℃以上で加熱すれば、速やかにシートの完全硬化が完了し、樹脂全体が一体化するので、蛍光体シートとLEDチップとの接着性が向上する。これによって、LEDパッケージの輝度も向上する。また、LEDチップと蛍光体シートの界面部分においては、LED点灯時の熱の影響を受けにくくなるため、LEDチップと蛍光体シートの剥がれが抑制される。そのため、LEDパッケージの信頼性が高くなる。
【0019】
ここでいう貯蔵弾性率G’とは、レオメーターにより蛍光体シートの動的粘弾性測定(温度依存性)を行った場合の貯蔵弾性率G’である。動的粘弾性とは、材料にある正弦周波数で剪断歪みを加えたときに、定常状態に達した場合に現れる剪断応力を歪みと位相の一致する成分(弾性的成分)と、歪みと位相が90°遅れた成分(粘性的成分)に分解して、材料の動的な力学特性を解析する手法である。
【0020】
動的粘弾性測定(温度依存性)は、一般的な粘度・粘弾性測定装置を用いて動的粘弾性測定することができる。本発明においては、以下の条件にて測定を行った場合の値とする。
【0021】
測定装置 :粘度・粘弾性測定装置HAAKE MARSIII
(Thermo Fisher SCIENTIFIC 製)
測定条件 :OSC温度依存測定
ジオメトリー:平行円板型(20mm)
測定時間 :1980秒
角周波数 :1Hz
角速度 :6.2832rad/秒
温度範囲 :25〜200℃(低温温度制御機能あり)
昇温速度 :0.08333℃/秒
サンプル形状:円形(直径18mm)
サンプル厚さ:50μm以上。
【0022】
測定サンプルの厚さが50μm以上であれば、安定して動的粘弾性測定を行うことができる。サンプル厚さが50μm未満の場合、数枚重ね合わせて、100℃のホットプレート上で加熱圧着して一体化した膜(シート)を作製し、所望の厚さのサンプルを作製することができる。
【0023】
剪断歪みに位相が一致する応力成分を剪断歪みで除したものが、貯蔵弾性率G’である。貯蔵弾性率G’は、各温度における動的な歪みに対する材料の弾性を表すものであり、蛍光体シートの硬さに関連する。したがって、各測定温度における貯蔵弾性率G’は、蛍光体シートに関する以下のような特性に影響する。例えば、25℃においては、貯蔵弾性率G’は蛍光体シートの加工性に影響し、100℃においては、蛍光体シートの流動性と接着性に影響し、140℃においては、蛍光体シートの硬化性と接着性に影響する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの厚さは、特に制限はないが、10μm以上、1000μm以下であることが好ましい。下限としては、30μm以上であることがより好ましい。上限としては、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。蛍光体シートの厚みが1000μm以下であると耐クラック性に特に優れ、200μm以下であると耐熱性に特に優れる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、必要に応じて他の層を備えた積層体であってもよい。他の層としては、例えば基材、バリア層等が挙げられる。
【0026】
(シリコーン樹脂)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、主として透明性、耐熱性の面からシリコーン樹脂を含む。
【0027】
本発明で用いられるシリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂が好ましい。硬化型シリコーン樹脂は、一液型、二液型(三液型)のいずれの液構成のものであってもよい。硬化型シリコーン樹脂には、空気中の水分あるいは触媒によって縮合反応を起こすタイプとして、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱ヒドロキシルアミン型などがある。また、触媒によってヒドロシリル化反応を起こすタイプの付加反応型がある。これらのいずれのタイプの硬化型シリコーン樹脂が使用されてもよい。特に、付加反応型のシリコーン樹脂は、硬化反応に伴う副成物がなく、硬化収縮が小さい点と、加熱により硬化を早めることが容易な点とから、より好ましい。
【0028】
付加反応型のシリコーン樹脂は、一例として、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物とのヒドロシリル化反応により、形成される。
【0029】
「ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物」としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられる。「ケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物」としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−CO−メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−CO−メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。付加反応型のシリコーンゴムとしては、このような材料のヒドロシリル化反応によって形成されるものが挙げられる。また、シリコーン樹脂としては、他にも、例えば特開2010−159411号公報に記載されているような公知のものを利用することができる。
【0030】
本発明においては、シリコーン樹脂が、少なくとも下記の(A)〜(D)成分を含む架橋性シリコーン組成物(以下、「本組成物」という)の架橋物であることが好ましい。ここで、シリコーン樹脂のうち、本組成物の架橋物が20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
(A)平均単位式:
【0032】
【化1】
【0033】
(平均単位式(1)中、Rは炭素数1〜14の一価の炭化水素基であって、少なくとも1個はアリール基であり、かつ、少なくとも1個は炭素数2〜6のアルケニル基である。Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。a、b、c、d、およびeは、0≦a≦0.1、0.2≦b≦0.9、0.1≦c≦0.6、0≦d≦0.2、0≦e≦0.1、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。)
で表される分岐構造を有するオルガノポリシロキサン。
【0034】
(B)平均単位式:
【0035】
【化2】
【0036】
(平均単位式(2)中、Rは炭素数1〜14の1価の炭化水素基であって、少なくとも1個はアリール基であり、かつ、少なくとも1個は炭素数2〜6のアルケニル基である。f、gおよびhは0.1<f≦0.4、0.2≦g≦0.5、0.2≦h≦0.5、かつf+g+h=1を満たす数である。)
で表される分岐構造を有するオルガノポリシロキサン。
【0037】
(C)一分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有し、ケイ素原子に結合した有機基のうち12〜70モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン。
【0038】
(D)ヒドロシリル化反応用触媒。
【0039】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、アリール基を有することで、(B)成分〜(D)成分との相溶性を向上することができる。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、炭素数2〜6のアルケニル基を有することで、(A)成分〜(C)成分の架橋反応を生じさせる。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分岐構造を有することで、硬化性が向上し、LEDチップとの良好な接着性を得ることができる。
【0040】
分岐構造とは、平均単位式において、基本構成単位がT単位(RSiO3/2)やQ単位(SiO4/2)を有する構造を示す。ここで、平均単位式において、Rで表される有機置換基がケイ素原子に1個付いた3官能性の単位をT単位、Rで表される有機置換基がケイ素原子に付いていない4官能性の単位をQ単位と言う。
【0041】
(A)成分のオルガノポリシロキサンに分岐構造を取り入れることによって、架橋反応速度が向上し、蛍光体シートにおいて良好な硬化性が得られる。
【0042】
オルガノポリシロキサンにおける分岐構造の存在は、オルガノポリシロキサンに対しオルトギ酸メチル分解法などの処理を行った後、NMR分析やGPC−MALS分析を行うことによって、確認することができる。
【0043】
特に、GPC−MALS分析では、オルガノポリシロキサンの分子量分布と回転半径とを求めることができる。そこで、同一分子量成分のオルガノポリシロキサンのうち、回転半径が小さいものを特定することで、分岐構造の存在を確認することができる。
【0044】
平均単位式(1)において、a、b、c、dおよびeの各値は、得られる架橋物が、室温で十分な硬さが得られ、かつ高温での軟化が本発明を実施するに十分である範囲である。
【0045】
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、アリール基を有することで、(A)成分と相溶する。これにより、このシリコーン樹脂を含む蛍光体シートの硬化膜の機械的強度と、透明性とを維持することができる。また、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、炭素数2〜6のアルケニル基を有することで、(A)成分〜(C)成分の架橋反応を生じさせる。また、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、分岐構造を有することで、硬化性が向上し、LEDチップとの良好な接着性を得ることができる。
【0046】
また、サンプルの調合等における良好な取り扱い性の観点から、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が20Pa・s以下であることが好ましい。
【0047】
(B)成分の含有量は、(A)成分の100重量部に対して10重量部以上、95重量部以下の範囲であることが好ましい。これは、得られる架橋物が高温で十分に軟化するための範囲である。
【0048】
(C)成分のオルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のSi−H結合を有することで、(A)成分〜(C)成分の架橋反応を生じさせる。また、(C)成分のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した有機基のうち12〜70モル%がアリール基であることで、得られる架橋物が、高温で十分に軟化し、かつ、架橋物の透明性と機械的強度を維持する。
【0049】
特に本発明においては、(C)成分のオルガノポリシロキサンが、
平均単位式:
【0050】
【化3】
【0051】
(平均単位式(3)中、Rはアリール基、炭素原子数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基である。ただし、Rの12〜70モル%はアリール基である。)
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0052】
平均単位式(3)中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基またはシクロアルキル基であることが好ましい。Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基が例示される。Rのシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘプチル基が例示される。なお、Rの内、フェニル基の含有量は30〜70モル%の範囲であることが好ましい。これは、得られる架橋物が、高温で十分に軟化し、かつ、架橋物の透明性と機械的強度を保つことができる範囲である。
【0053】
(C)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のアルケニル基との合計量に対する、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が、0.5〜2の範囲となるような量であることが好ましい。これは、得られる架橋物が、室温で十分な硬さが得られるためである。
【0054】
(D)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基と、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子との、ヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。(D)成分としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示される。これらのうち、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。
【0055】
この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示される。特に、この白金系触媒は、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。
【0056】
このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンが好ましい。
【0057】
また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に対して、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましい。特に、この錯体に対してアルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0058】
(D)成分の含有量は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基と、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するために十分な量であれば、特に限定されない。好ましくは、(D)成分の含有量は、本組成物に対して、(D)成分中の金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量である。さらには、(D)成分の含有量は、この金属原子が0.01〜100ppmの範囲となる量であることが好ましく、この金属原子が0.01〜50ppmの範囲となる量であることが、特に好ましい。これは、本組成物が十分に架橋し、かつ着色等の問題が生じないようにする範囲である。
【0059】
本組成物は、その他任意の成分として、エチニルヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、本組成物の重量に対して1〜5,000ppmの範囲であることが好ましい。反応抑制剤の含有量を調整することにより、得られるシリコーン樹脂の貯蔵弾性率を調整することもできる。
【0060】
本発明実施の形態に係る蛍光体シートにおいて、シリコーン樹脂の含有量は、蛍光体シート全体の10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーン樹脂の含有量は、90重量%以下であることが好ましく、85重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0061】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、後に詳しく説明するように、LEDの表面被覆用途に特に好ましく用いられる。その際、蛍光体シート中のシリコーン樹脂の含有率が上記のような範囲であることで、優れた性能を示す発光装置を得ることができる。
【0062】
(蛍光体)
蛍光体は、LEDチップから放出される光を吸収してその光の波長を変換し、LEDチップの光と異なる波長の光を放出するものである。これにより、LEDチップから放出される光の一部と、蛍光体から放出される光の一部とが混合して、白色を含む多色系のLEDが得られる。具体的には、青色系LEDチップと、そのLEDチップから放出される光を吸収して黄色系の発光色を発光する蛍光体とを、光学的に組み合わせることによって、単一のLEDチップを用いて白色系の発光を得ることができる。
【0063】
上述のような蛍光体には、緑色に発光する蛍光体、青色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体等の種々の蛍光体がある。本発明に用いられる具体的な蛍光体としては、無機蛍光体、有機蛍光体、量子ドット等公知の蛍光体が挙げられる。蛍光体は、蛍光顔料、蛍光染料のいずれも用いることができる。
【0064】
無機蛍光体としては、最終的に所定の色を再現できるものであれば特に限定はなく、公知のものを用いることができる。
【0065】
有機蛍光体としては、発光スペクトルが波長500〜700nmの領域にピークを有することが好ましい。この様な蛍光体は、波長400〜500nmの範囲の励起光によって励起され、波長500〜700nmの領域で発光する。上述のような蛍光体には、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体が挙げられる。本発明に用いられる有機蛍光体の例としては、ピロメテン化合物、クマリン系色素、フタロシアニン系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、ポリフェニレン系色素、ローダミン系色素、ピリジン系色素、ピロメテン系色素、ポルフィリン色素、オキサジン系色素、ピラジン系色素、アリルスルホアミド・メラミンホルムアルデヒド共縮合染色物やペリレン系蛍光体等を挙げることができる。色再現性の観点から、ピロメテン化合物が好ましく用いられ、特に後述する一般式(4)で表される有機化合物が好ましく用いられる。
【0066】
量子ドットとは、励起光により励起されて蛍光を発光する半導体ナノ粒子である。
本発明に用いられる量子ドットとしては、コアシェル型の半導体ナノ粒子が、耐久性を向上する観点から好ましい。コアとしては、II−VI族半導体ナノ粒子、III−V族半導体ナノ粒子、及び多元系半導体ナノ粒子等を用いることができる。具体的には、CdSe、CdTe、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InGaP等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、CdSe、CdTe、InP、InGaPが、高効率で可視光を発光する観点から、好ましい。シェルとしては、CdS、ZnS、ZnO、GaAs、およびこれらの複合体を用いることができるが、これらに限定されない。量子ドットの発光波長は、通常、粒子の組成およびサイズにより調整することができる。
【0067】
量子ドットの表面には、ルイス塩基性の配位性基を有する配位子が配位していても良い。また、ルイス塩基性の配位性基としては、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、ホスフィン基、およびホスフィンオキシド基、等を挙げることができる。具体的には、ヘキシルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン、オレイン酸、メルカプトプロピオン酸、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシド等を上げることができる。なかでも、ヘキサデシルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドが好ましく、トリオクチルホスフィンオキシドが特に好ましい。
【0068】
これらの配位子が配位した量子ドットは、公知の合成方法によって作製することができる。例えば、C.B.Murray,D.J.Norris、M.G.Bawendi,Journal Amarican Chemical Society,1993,115(19),pp8706−8715、またはThe Journal Physical Chemistry,101,pp9463−9475,1997に記載された方法によって合成することができる。また、配位子が配位した量子ドットは、市販のものを何ら制限無く用いることができる。例えば、Lumidot(シグマアルドリッチ社製)を挙げることができる。
【0069】
本発明に特に好ましく用いられる蛍光体としては、無機蛍光体とが挙げられる。以下に本発明に用いられる無機蛍光体、について記載する。
【0070】
(無機蛍光体)
本発明に用いられる無機蛍光体は、発光スペクトルが波長500〜700nmの領域にピークを有することが好ましい。この様な蛍光体は、波長400〜500nmの範囲の励起光によって励起され、波長500〜700nmの領域で発光する。上述のような蛍光体には、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体が挙げられる。
【0071】
無機蛍光体の形状には特に制限はなく、球状、柱状など様々なものを用いることができる。
【0072】
本発明に用いられる無機蛍光体の例としては、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、シリケート蛍光体、ナイトライド系蛍光体、オキシナイトライド系蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体等が挙げられる。酸窒化物蛍光体の好ましい例としては、βサイアロン型蛍光体が挙げられる。
【0073】
中でも、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体が好ましく用いられ、β型サイアロン蛍光体、Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体がより好ましく用いられる。これらの蛍光体を使用することで、高輝度な蛍光体シートが得られる。
【0074】
また、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、β型サイアロン蛍光体およびMn賦活複フッ化物錯体蛍光体を含むことが好ましい。
【0075】
(β型サイアロン蛍光体)
β型サイアロンは、β型窒化ケイ素の固溶体であり、β型窒化ケイ素結晶のSi位置にAlが、N位置にOが置換固溶したものである。β型サイアロンの単位胞(単位格子)に2式量の原子があるので、一般式として、Si6−zAl8−zが用いられる。ここで、zは、0〜4.2である。β型サイアロンの固溶範囲は非常に広く、また、(Si、Al)/(N、O)のモル比は、3/4を維持する必要がある。β型サイアロンの一般的な製法は、窒化ケイ素の他に、酸化ケイ素と窒化アルミニウムとを、あるいは酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとを加えて加熱する方法である。
【0076】
β型サイアロンは、結晶構造内に希土類などの発光元素(Eu、Sr、Mn、Ceなど)を取り込むことで、紫外から青色の光で励起して波長520〜550nmの緑色発光を示すβ型サイアロン蛍光体となる。
【0077】
本発明に用いられるβ型サイアロン蛍光体は、発光スペクトルが波長535〜550nmの領域にピークを有するものが好ましい。このような範囲であれば、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートをLEDパッケージに適用した場合、良好な発光特性が得られる。また、β型サイアロン蛍光体の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、16μm以上がさらに好ましい。また、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、19μm以下がさらに好ましい。このような範囲であれば、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートをLEDパッケージに適用した場合、良好な発光特性が得られる。
【0078】
(KSF蛍光体)
Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体は、Mnを賦活剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物錯体塩を母体結晶とする蛍光体である。このMn賦活複フッ化物錯体蛍光体において、母体結晶を形成するフッ化物錯体の配位中心は、4価金属(Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn)であることが好ましく、その周りに配位するフッ素原子の数は6であることが好ましい。
【0079】
Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体は、一般式AMF:Mn(ここで、AはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種以上のアルカリ金属であり、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnからなる群より選ばれる1種以上の4価元素である。)で表される。上記一般式においてKSiF:MnであるものがKSF蛍光体である。本発明に用いられるMn賦活複フッ化物錯体蛍光体としては、このKSF蛍光体が好ましい。
【0080】
Mn賦活複フッ化物錯体蛍光体の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が好ましい。また、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。このような範囲であれば、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートをLEDパッケージに適用した場合、良好な発光特性が得られる。
【0081】
本発明において、平均粒子径とはメジアン径(D50)のことである。平均粒子径は、蛍光体シートを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって測定することができる。蛍光体シートの断面を観察して得られる2次元画像から、蛍光体粒子の外縁と2点で交わる直線の当該2つの交点間の距離のうち、最大になる距離を算出し、それを蛍光体粒子の個別の粒子径と定義する。観測される蛍光体粒子のうち200個に対してこの方法で粒子径を算出し、そこから得られる粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径をD50とする。
【0082】
蛍光体シートを搭載したLED発光装置を対象とする場合は、機械研磨法、ミクロトーム法、CP法(Cross−sect(I)on Pol(I)sher)および集束イオンビーム(F(I)B)加工法のいずれかの方法で、蛍光体シートの断面が観測されるよう研磨を行った後、得られた断面をSEMで観察して得られる2次元画像から上述の平均粒子径を算出することができる。
【0083】
本発明では、蛍光体シートにおける無機蛍光体の含有量は、蛍光体シート全体の35重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。蛍光体シート中の蛍光体含有率をこのような範囲とすることで、蛍光体シートの輝度を高めることができる。なお、蛍光体含有率の上限は特に規定されないが、作業性に優れた蛍光体シートが作成しやすいという観点から、蛍光体シートにおける蛍光体の含有量が、蛍光体シート全体の90重量%以下であることが好ましく、85重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0084】
本発明に特に好ましく用いられる蛍光体としては、有機蛍光体として、一般式(4)で表される有機化合物も挙げられる。以下に本発明に用いられる一般式(4)で表される有機化合物について記載する。
【0085】
(一般式(4)で表される有機化合物)
【0086】
【化4】
【0087】
本実施の形態における有機化合物を表す一般式(4)において、R、R、Ar〜ArおよびLは、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環基、ハロゲン、ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。Mは、m価の金属を表し、ホウ素、ベリリウム、マグネシウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、白金から選ばれる少なくとも一種である。上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する有機化合物またはその部分構造においても同様である。
【0088】
また、以下の説明において、例えば炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6〜40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
【0089】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0090】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する有機化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0091】
また、上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示す。このアルキル基は、さらに置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上、20以下、より好ましくは1以上、8以下の範囲である。
【0092】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上、20以下の範囲である。
【0093】
アラルキル基とは、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示す。これらの脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素は、いずれも無置換であってもよいし、置換基を有していてもよい。
【0094】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上、20以下の範囲である。
【0095】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0096】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上、20以下の範囲である。
【0097】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上、20以下の範囲である。
【0098】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上、20以下の範囲である。
【0099】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介して芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上、40以下の範囲である。
【0100】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上、40以下の範囲である。
【0101】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ターフェニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上、40以下の範囲である。
【0102】
ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、ピラジニル基、ピリミニジニル基、トリアジニル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上、30以下の範囲である。
【0103】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上、20以下の範囲である。
【0104】
カルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0105】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。アミノ基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基などが挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基はさらに置換されてもよい。炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上、50以下、より好ましくは、6以上、40以下、特に好ましくは、6以上、30以下の範囲である。
【0106】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。ハロアルキル基、ハロアルケニル基、ハロアルキニル基とは、例えばトリフルオロメチル基などの、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の一部あるいは全部が、前述のハロゲンで置換されたものを示し、残りの部分は無置換でも置換されていてもよい。また、アルデヒド基、カルボニル基、エステル基、カルバモイル基には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換されたものも含まれ、さらに脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は、無置換でも置換されていてもよい。
【0107】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素原子への結合を有する官能基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上、20以下の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1以上、6以下である。
【0108】
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基などのエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。
【0109】
上述したような一般式(4)で表される有機化合物は、高い蛍光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルのピーク半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度の双方を達成することができる。
【0110】
一般式(4)で表される有機化合物における金属錯体の中でも、Mがホウ素である錯体は蛍光量子収率が高い点で特に好ましい。さらに、Lがフッ素または含フッ素アリール基であり、m−1が2であるフッ化ホウ素錯体が、材料の入手しやすさや、合成の容易さの点で特に好ましい。
【0111】
また、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(4)のRとAr)が互いに結合して、共役または非共役の縮合環を形成していてもよい。このような縮合環の構成元素としては、炭素以外にも窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、縮合環がさらに別の環と縮合してもよい。
【0112】
上述したような一般式(4)で表される有機化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性および分散性などのさまざまな特性および物性を調整することができる。
【0113】
例えば、一般式(4)で表される有機化合物の耐久性、すなわち、この有機化合物の発光強度の経時的な低下には、置換基Arが大きく影響する。具体的には、Arが水素である場合、この水素の反応性が高いため、この水素と空気中の水分や酸素とが容易に反応してしまう。このことは、Arの分解を引き起こす。また、Arが例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、シート中で有機化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、Arは、剛直であり、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
【0114】
より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、Arは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
【0115】
さらに、上記有機化合物の光安定性を高めるためには、Arとピロメテン骨格の炭素−炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。何故ならば、過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まるなど、光安定性が低下するからである。このような観点から、Arとしては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0116】
また、Arは、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。Arが、ある程度のかさ高さを有することにより、分子の凝集を防ぐことができる。この結果、上記有機化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
【0117】
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(5)で表されるArの構造が挙げられる。
【0118】
【化5】
【0119】
すなわち、上記有機化合物を表す一般式(4)において、Arは、一般式(5)で表される基であることが好ましい。このArを表す一般式(5)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1〜3の整数である。kが2以上である場合、rは、それぞれ同じでも異なってもよい。
【0120】
これらの基のうち、例えば、オキシカルボニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。オキシカルボニル基の置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0121】
より高い蛍光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(5)のkは、1もしくは2であることが好ましく、分子の凝集をより防ぐという観点から、kは、2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、rの少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert−ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0122】
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましい。rがtert−ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについてより有効である。
【0123】
Ar〜Arが全て水素の場合に比べ、Ar〜Arの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
【0124】
Ar〜Arの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基である。特に好ましくは、フェニル基である。
【0125】
Ar〜Arの少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基、チオフェニル基が好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基、キノリニル基である。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0126】
また、上記有機化合物を表す一般式(4)において、Ar〜Arが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましい。これは、より良い熱的安定性および光安定性を示すからである。本実施の形態に係る蛍光体組成物などにおいて、上記有機化合物が、これと組み合わせられる無機蛍光体に比べて発光体からの発光光をより長波長の光へ変換する場合、一般式(5)に表されるAr〜Arは全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましく、フェニル基が特に好ましい。この場合、例えば、発光体からの発光光が青色光であれば、無機蛍光体は、この青色光を緑色光へ変換し、上記有機化合物は、この青色光を、この無機蛍光体の色変換よりも長波長の光、すなわち、赤色光へ変換する。
【0127】
さらに、上記有機化合物を表す一般式(4)において、Ar〜Arのうち少なくとも1つは、一般式(6)で表される置換基であることが好ましい。これにより、高色純度と耐久性の両立ができる。
【0128】
【化6】
【0129】
一般式(6)において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基からなる群より選ばれる。nは、1〜3の整数である。nが2以上の場合、各Rは、同じでも異なってもよい。
【0130】
一般式(6)で表されるアリール基において、Rが電子供与性基である場合、主に色純度に影響を与えることから、好ましい。電子供与性基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基などが挙げられる。特に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数1〜8のアルキルチオ基で置換されたアリール基が好ましい。Rが炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルコキシ基である場合は、より高い色純度を得られることから、より好ましい。また、主に発光効率に影響を与えるアリール基としては、t−ブチル基、アダマンチル基などのかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
【0131】
また、耐熱性と色純度の観点から、ArとAr、ArとArは、それぞれ同じ構造のアリール基であることが好ましい。さらに、分散性の観点から、Ar〜Arのうち少なくとも1つは、一般式(6)で表される基であってRが炭素数4以上のアルキル基またはアルコキシ基であることがより好ましい。中でも、t−ブチル基、メトキシ基またはt−ブトキシ基であることが、Ar〜Arのうち少なくとも1つの例として、特に好ましく挙げられる。
【0132】
一般式(6)において、nは、1〜3の整数であることが好ましく、原料入手と合成の容易さの観点から、1または2であることがより好ましい。
【0133】
一方、上記有機化合物を表す一般式(4)において、Ar≠ArまたはAr≠Arであることは、膜中での分散性が向上し、高効率発光が得られるので、特に好ましい。ここで、「≠」は、異なる構造の基であることを示す。例えば、Ar≠Arは、ArとArとが異なる構造の基であることを示す。Ar≠Arは、ArとArとが異なる構造の基であることを示す。Ar≠ArまたはAr≠Arであるとは、言い換えると、「Ar=ArかつAr=Ar」ではないということである。すなわち、Ar〜Arの任意の組合せのうち、(1)Ar=Ar=Ar=Arであるもの、および(2)Ar=ArかつAr=Arであって、Ar≠Arであるもの、が除かれることを表す。
【0134】
一般式(6)で表されるアリール基により、一般式(4)で表される有機化合物の発光効率、色純度、耐熱性および耐光性などのさまざまな特性および物性に影響を与える。複数の性質を向上させるアリール基もあるが、全てにおいて十分な性能を示すアリール基は皆無である。特に、高発光効率と高色純度の両立が難しい。そのため、一般式(4)で表される有機化合物に対し複数種類のアリール基を導入できれば、発光特性や色純度などにバランスの取れた有機化合物を得ることが期待される。
【0135】
Ar=Ar=Ar=Arである有機化合物は、一種類のアリール基しか有することができない。また、Ar=ArかつAr=Arであって、Ar≠Arである有機化合物は、特定の物性を有するアリール基が片方のピロール環に偏ることとなる。この場合、発光効率と色純度との関係で後述するように各々のアリール基が有する物性を最大限に引き出すことが難しい。
【0136】
これに対し、本発明の実施の形態に係る有機化合物は、ある物性を有する置換基を左右のピロール環にバランスよく配置することが可能となるため、片方のピロール環に偏らせた場合と比べて、最大限にその物性を発揮させることが可能となる。
【0137】
この効果は、発光効率と色純度とをバランスよく向上させる点において、特に優れている。色純度に影響を与えるアリール基は、両側のピロール環にそれぞれ1つ以上有していることが、共役系が拡張して高色純度の発光が得られる点で好ましい。しかし、Ar=ArかつAr=Arであって、Ar≠Arである有機化合物は、例えば一方のピロール環に色純度に影響を与えるアリール基を導入した場合に、他方のピロール環に発光効率に影響を与えるアリール基を導入すると、色純度に影響を与えるアリール基が片側のピロール環に偏るため、共役系が十分に拡張せず、色純度が十分に向上しない。また、他方のピロール環に、同様に色純度に影響を与えるアリール基であって別の構造のものを導入すると、発光効率を向上させることができない。
【0138】
これに対し、本発明の実施の形態に係る有機化合物は、色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に発光効率に影響を与えるアリール基を導入することができる。このため、本発明の実施の形態に係る有機化合物は、色純度および発光効率の両方の性質を最大限に向上させることができ、故に好ましい。なお、ArおよびArの位置に色純度に影響を与えるアリール基を導入した場合が、最も共役系が拡張されるため、好ましい。
【0139】
Ar〜Arの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。さらに、このアルキル基としては、熱的安定性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。また、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert−ブチル基がより好ましい。一方、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
【0140】
一方、上記有機化合物を表す一般式(4)において、Ar〜Arが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、バインダー樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。この場合、アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。例えば、本実施の形態に係る蛍光体組成物などにおいて、上記有機化合物が、これと組み合わせられる無機蛍光体に比べて発光体からの発光光をより短波長の光へ変換する場合、一般式(4)に表されるAr〜Arは全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。具体的には、発光体からの発光光が青色光であれば、無機蛍光体は、この青色光を赤色光へ変換し、上記有機化合物は、この青色光を、この無機蛍光体の色変換よりも短波長の光、すなわち、緑色光へ変換する。
【0141】
このような有機化合物を表す一般式(4)において、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素である。すなわち、RおよびRは、水素、アルキル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アリール基のうちの何れかであることが好ましいが、熱的安定性の観点から、水素またはアルキル基であることが好ましい。特に、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素であることがより好ましい。
【0142】
また、Lは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基であることが好ましい。特に、励起光に対して安定であって、より高い蛍光量子収率が得られることから、Lは、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。さらに、Lは、合成の容易さから、フッ素であることがより一層好ましい。
【0143】
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基であり、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基などが挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
【0144】
また、一般式(4)で表される有機化合物の別の態様として、R、R、Ar〜Arのうち少なくとも1つが電子吸引基であることが好ましい。特に、(1)R、R、Ar〜Arのうち少なくとも1つが電子吸引基であること、(2)Arが電子吸引基であること、または(3)R、R、Ar〜Arのうち少なくとも1つが電子吸引基であり、かつ、Arが電子吸引基であること、が好ましい。このように有機化合物のピロメテン骨格に電子吸引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、上記有機化合物の酸素に対する安定性がより向上し、この結果、上記有機化合物の耐久性をより向上させることができる。
【0145】
電子吸引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子吸引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子吸引基にフェニル基は含まれない。
【0146】
電子吸引基の例として、例えば、−F(σp:+0.06)、−Cl(σp:+0.23)、−Br(σp:+0.23)、−I(σp:+0.18)、−CO12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、−CONH(σp:+0.38)、−COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、−CF(σp:+0.50)、−SO12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、−NO(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0147】
好ましい電子吸引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
【0148】
より好ましい電子吸引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子吸引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
【0149】
上記有機化合物を表す一般式(4)において、RおよびRのうち少なくとも1つは、電子吸引基であることが好ましい。何故なら、発光効率および色純度を損なうことなく、一般式(4)で表される有機化合物の酸素に対する安定性を向上させることができ、この結果、上記有機化合物の耐久性を向上させることができるからである。
【0150】
また、上記有機化合物のArを表す一般式(5)において、rは、電子吸引基であることがより好ましい。何故なら、発光効率および色純度を損なうことなく、一般式(4)で表される有機化合物の酸素に対する安定性がさらに向上し、この結果、上記有機化合物の耐久性を大幅に向上させることができるからである。
【0151】
一般式(4)で表される有機化合物の好ましい例の一つとして、Ar〜Arが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、Arが一般式(5)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Arは、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(5)で表される基であることが特に好ましい。
【0152】
また、一般式(4)で表される有機化合物の好ましい例の別の一つとして、Ar〜Arが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述の一般式(6)から選ばれるものであり、さらに、Arが一般式(5)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Arは、rがtert−ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(5)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(5)で表される基であることが特に好ましい。
【0153】
以下に、一般式(4)で表される有機化合物の一例を示すが、本実施の形態に係る有機化合物は、これらに限定されるものではない。
【0154】
【化7】
【0155】
【化8】
【0156】
【化9】
【0157】
【化10】
【0158】
【化11】
【0159】
【化12】
【0160】
【化13】
【0161】
【化14】
【0162】
【化15】
【0163】
【化16】
【0164】
【化17】
【0165】
【化18】
【0166】
【化19】
【0167】
【化20】
【0168】
【化21】
【0169】
【化22】
【0170】
【化23】
【0171】
【化24】
【0172】
【化25】
【0173】
【化26】
【0174】
【化27】
【0175】
【化28】
【0176】
【化29】
【0177】
【化30】
【0178】
【化31】
【0179】
一般式(4)で表される有機化合物は、例えば特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で製造することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応することにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0180】
また、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp7813−7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp1333−1335(1997)などに記載されている方法を参考にして、一般式(4)で表される有機化合物を製造することができる。
【0181】
本発明の実施の形態に係る蛍光体組成物は、一般式(4)で表される有機化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から一般式(4)で表される有機化合物へのエネルギー移動効率を更に高めるために、ルブレンなどのアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(4)で表される有機化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、所望の有機発光材料、例えば、クマリン系色素、ペリレン系色素、フタロシアニン系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、ポリフェニレン系色素、ローダミン系色素、ピリジン系色素、ピロメテン系色素、ポルフィリン色素、オキサジン系色素、ピラジン系色素などの化合物を添加することができる。その他、これらの有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドットなどの公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。
【0182】
以下に、一般式(4)で表される有機化合物以外の有機発光材料の一例を示すが、本発明は、特にこれらに限定されるものではない。
【0183】
【化32】
【0184】
本発明の実施の形態に係る蛍光体組成物における一般式(4)で表される有機化合物の含有量は、有機化合物のモル吸光係数、蛍光量子収率および励起波長における吸収強度、並びに作製するフィルムの厚みや透過率にもよるが、通常は蛍光体組成物全体の重量に対して、10-5重量パーセント〜10重量パーセントであり、10-4重量パーセント〜5重量パーセントであることがさらに好ましく、10-3重量パーセント〜2重量パーセントであることが特に好ましい。
【0185】
(溶媒)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、流動状態の樹脂の粘度を調整できるものであれば、特に限定されない。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン、テルピネオール、テキサノール、メチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0186】
(その他の成分)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、塗布膜安定化のための分散剤やレベリング剤、蛍光体シートの表面の改質剤としてシランカップリング剤等の接着補助剤等を含有していてもよい。
【0187】
また、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、微粒子を含有していてもよい。微粒子の例としては、シリコーン微粒子やチタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン、ジルコニア、セリア、窒化アルミ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウムなどが挙げられる。また、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、100℃における貯蔵弾性率G’を低下させるため、加熱粘着剤として、シラノール基含有メチルフェニル系シリコーンレジンを含有してもよい。入手しやすいという観点からシリコーン微粒子、シリカ微粒子、アルミナ微粒子が好ましく用いられ、特にシリコーン微粒子が好ましく用いられる。
【0188】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、シリコーン微粒子を含有することで、接着性や加工性だけでなく、膜厚均一性も良好となる。特に、平均粒子径(メジアン系:D50)が0.1μm以上、2.0μm以下であるシリコーン微粒子を用いることで、スリットダイコーターを用いた場合の吐出性に優れ、膜厚均一性に優れた蛍光体シートを得ることができる。
【0189】
シリコーン微粒子の平均粒子径は、蛍光体の平均粒子径と同様、上述の方法で測定することができる。シリコーン微粒子の平均粒子径は、下限としては0.5μm以上であることがより好ましい。また、上限としては1.0μm以下であることがより好ましい。
【0190】
シリコーン微粒子は、シリコーン樹脂および/またはシリコーンゴムからなる微粒子が好ましい。特に、オルガノトリアルコキシシランやオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシランなどのオルガノシランを加水分解し、次いで縮合させる方法により得られるシリコーン微粒子が好ましい。これらの中で、オルガノシランおよび/またはその部分加水分解物を加水分解・縮合させ、球状オルガノポリシルセスキオキサン微粒子を製造するにあたり、特開2003−342370号公報で報告されているような反応溶液内に高分子分散剤を添加する方法により得られたシリコーン微粒子を用いることが好ましい。
【0191】
また、シリコーン微粒子を製造するに当たり、オルガノシランおよび/またはその部分加水分解物を加水分解・縮合させ、酸性水溶液に溶媒中で保護コロイドとして作用する高分子分散剤及び塩を存在させた状態で、オルガノシランおよび/またはその加水分解物を添加し加水分解物を得た後、アルカリを添加し縮合反応を進行させることにより製造したシリコーン微粒子を用いることもできる。
【0192】
蛍光体シートにおけるシリコーン微粒子の含有量は、蛍光体シート全体の0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。蛍光体シートにおけるシリコーン微粒子の含有量の上限は特に規定されないが、良好な機械物性の観点から、蛍光体シート全体の20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0193】
(基材)
基材は、本発明における蛍光体シートの支持体の一例である。基材としては、特に制限なく、例えば、公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を使用することができる。具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄などの金属の板や箔;セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのプラスチックのフィルム;α−ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム;上記プラスチックがラミネートされた紙、上記プラスチックによりコーティングされた紙、上記金属がラミネートまたは蒸着された紙、上記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基材が金属板の場合、金属板表面にクロム系やニッケル系などのメッキ処理やセラミック処理されていてもよい。
【0194】
これらの中でも、蛍光体シートの作製のし易さや蛍光体シートの個片化のし易さから、ガラスやプラスチックフィルムが好ましく用いられる。特に、蛍光体シートをLEDチップに貼りつける際の密着性から、基材は柔軟なフィルム状であることが好ましい。また、フィルム状の基材を取り扱う際に破断などの恐れがないように、強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で、プラスチックフィルムが好ましい。プラスチックフィルムの中でも、経済性、取り扱い性の面で、PET、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、蛍光体シートを乾燥させる場合や蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける際に200℃以上の高温を必要とする場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。基材からの蛍光体シートの剥離のし易さから、基材は、あらかじめ表面が離型処理されていてもよい。
【0195】
基材の厚さは特に制限はないが、下限としては25μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
【0196】
(その他の層)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、バリア層を備えていてもよい。バリア層は、蛍光体シートに対してガスバリア性を向上する場合などにおいて適宜用いられる。
【0197】
酸素に対してバリア機能を有するバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなど、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物からなる膜;あるいはナイロン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンとビニルアルコールの共重合物などの各種樹脂からなる膜などを挙げることができる。
【0198】
また、水分に対してバリア機能を有するバリア層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂などの各種樹脂からなる膜を挙げることができる。
【0199】
また、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、蛍光体シートに要求される機能に応じて、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、光拡散機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能を有した補助層をさらに備えていてもよい。
【0200】
<蛍光体シートの作製方法>
以下に、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの作製方法の一例を説明する。なお、以下に説明する作製方法は一例であり、蛍光体シートの作製方法はこれに限定されない。
【0201】
まず、蛍光体シート形成用の塗布液として、蛍光体をシリコーン樹脂に分散した組成物(以下「蛍光体組成物」という)を作製する。前述した、シリコーン樹脂、蛍光体、並びに必要に応じシリコーン微粒子等の添加材および溶剤等を所定量混合する。上記の成分を所定の組成になるよう混合した後、その混合物を、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで、蛍光体組成物が得られる。
【0202】
混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合してもよいし、でき上がった蛍光体組成物に対しエージング等の処理をしても構わない。エバポレーターによって、混合分散後の混合物から溶剤を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。
【0203】
上述した方法で作製した蛍光体組成物を基材上に塗布し、乾燥させ、蛍光体シートを作製する。塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター等により行うことができる。蛍光体シートの膜厚均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。
【0204】
蛍光体シートの乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。この場合、乾燥条件は、通常、40〜250℃で1分〜5時間、好ましくは60℃〜200℃で2分〜4時間である。また、ステップキュア等の段階的に乾燥することも可能である。
【0205】
蛍光体シートを作製した後、必要に応じて基材を変更することも可能である。この場合、簡易的な方法としてはホットプレートを用いて基材の貼り替えを行なう方法や、真空ラミネーターやドライフィルムラミネーターを用いて基材の貼り替えを行なう方法などが挙げられる。
【0206】
<蛍光体シートの適用例>
本発明の実施の形態に係る蛍光体シート、またはその硬化物を、LEDチップの発光面に貼り付けることで、LEDチップの表面に蛍光体シートが積層された、蛍光体シート付きLEDチップを形成できる。本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを適用できるLEDチップには、特に制限はなく、ラテラル、バーティカル、フィリップチップなどの、一般的な構造のLEDチップが挙げられる。そのようなLEDチップとしては、特に、発光面積が大きいバーティカルタイプおよびフリップチップタイプのLEDチップが好ましい。なお、LEDチップの発光面とは、LEDチップからの光が取り出される面をいう。
【0207】
ここで、LEDチップの発光面が単一平面の場合と、単一平面ではない場合がある。単一平面の場合としては、主に上部発光面のみを有するLEDチップが挙げられる。具体的には、バーティカルタイプのLEDチップや、LEDチップの側面を反射層で覆い、上面からのみ光が取り出されるようにしたLEDチップなどが例示される。一方、単一平面ではない場合としては、上部発光面および側部発光面を有するLEDチップや、曲面発光面を持つLEDチップなどが挙げられる。
【0208】
これらのLEDチップのうち、側部からの発光を利用して明るくすることができることから、発光面が単一平面でないLEDチップが好ましい。特に、発光面積を大きくできること、およびLEDチップの製造プロセスが容易なことから、上部発光面と側部発光面を有するフリップチップタイプのLEDチップが好ましい。また、LEDチップの発光効率を向上させるための光学的な設計に基づいて、発光面の表面をテクスチャー加工しても良い。
【0209】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、直接、LEDチップに貼り付けてもよいし、透明樹脂などの接着剤を介して貼り付けてもよい。LEDチップからの光を反射などによってロスすることなく、直接、蛍光体シートへ入射させることができるという観点から、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを、直接、LEDチップに貼り付ける方が、より好ましい。これにより、色バラツキが少なく高効率で均一な白色光を得ることができる。
【0210】
これらの方法で得られた蛍光体シート付きLEDチップを、金属配線等を備えた配線基板に実装してパッケージ化することで、LEDパッケージを作製できる。その後、モジュールに組み込むことで、各種照明や液晶バックライト、ヘッドランプをはじめとする様々な発光装置に好適に使用することができる。
【0211】
図1に、本発明の実施の形態に係るLEDパッケージの好適な例を示す。図1(a)は、蛍光体シート2が貼り付けられたLEDチップ1が、リフレクター4を備えた実装基板5に設置され、透明封止材3によってLEDチップ1の上面部分を封止されたものである。
【0212】
図1(b)は、蛍光体シート2が貼り付けられたLEDチップ1が、リフレクター4を備えた実装基板5に設置され、透明封止材3によってLEDチップ1の上面部分および側面部分を封止されたものである。
【0213】
図1(c)は、図1(b)に示す構成において、LEDチップ1の上面だけでなく側面にも蛍光体シート2が貼り付けられたものである。この実施形態では、LEDチップの側面からの発光に対しても蛍光体シート2により発光波長を変換できるため、好ましい。さらに、透明封止材3の上面をレンズ状に形成している。
【0214】
図1(d)は、蛍光体シート2が貼り付けられたLEDチップ1が、リフレクターを備えていない実装基板5に設置され、レンズ状に成型された透明封止材3によって封止されたものである。
【0215】
図1(e)は、図1(d)に示す構成において、LEDチップ1の上面だけでなく側面にも蛍光体シート2が貼り付けられたものである。
【0216】
図1(f)は、図1(c)に示す構成において、LEDチップとしてフリップチップタイプのLEDチップ1を用い、蛍光体シート2が、LEDチップ1の発光面である上面および側面だけでなく、実装基板5の上面まで及ぶように貼り付けられたものである。なお、この構成において、蛍光体シート2が、LEDチップ1の発光面である上面および側面だけに貼り付けられていてもよい。
【0217】
図1(g)は、図1(d)に示す構成において、LEDチップ1および蛍光体シート2の構成を、図1(f)に示す構成と同様にしたものである。
【0218】
図1(h)は、LEDチップ1が、リフレクター4を備えた実装基板5の、リフレクター4を有しない部分にぴったり合うように設置され、LEDチップ1の上部に、リフレクター4の間隔と同一幅の蛍光体シート2が接着剤8を介して貼り付けられ、さらに透明封止材3によって封止されたものである。
【0219】
図1(i)は、図1(h)に示す構成において、蛍光体シート2として、基材9付きの蛍光体シート2を用いられ、基材9を蛍光体シート2から剥離せずに、蛍光体シート2が接着剤8を介して貼り付けられたものである。
【0220】
本発明の実施の形態に係るLEDパッケージはこれらの構成に限られない。例えば、図1(a)〜図1(i)に例示された各パーツの構造を適宜組み合わせた構成であってもよい。また、図1(a)〜図1(i)に例示された各パーツの構造を、これら以外の公知のパーツに置き換えた構成や、図1(a)〜図1(i)に例示された構成と公知のパーツとを組み合わせた構成であってもよい。
【0221】
透明封止材3は、成形加工性、透明性、耐熱性、接着性等に優れる材料であればいかなるものであってもよい。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂などの公知のものを用いることができる。
【0222】
接着剤8としては、上述した透明封止材として用いられる材料を用いることができる。
【0223】
リフレクター4を構成する材料としては、特に制限はないが、透明封止材3に用いられる材料に微粒子を添加したものなどが挙げられる。微粒子としては、チタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン、ジルコニア、セリア、窒化アルミ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウムなどが挙げられる。これらの微粒子の中でも、入手しやすいという観点から、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。
【0224】
<蛍光体シートの貼り付け方法、蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法>
次に、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートの、LEDチップへの貼り付け方法、および本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法を説明する。
【0225】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの代表的な製造方法は、後述するように、(1)蛍光体シートを個片に切断してから、個別のLEDチップに貼り付ける方法(例えば、図2参照)、(2)ウェハ上に形成された多数のLEDチップ(以下、「ウェハレベルのLEDチップ」)に蛍光体シートを一括して貼り付けてから、ウェハのダイシングと蛍光体シートの切断を一括して行う方法(例えば、図3参照)、があるが、これらに限定されない。以下、適宜図2および図3を参照しながら、これらの工程を説明する。
【0226】
(蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける工程)
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、所望の温度で加熱しながら加圧することで、LEDチップに貼り付けられる。これは、加熱圧着による貼り付けである。
【0227】
加熱温度は、60℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上160℃以下がより好ましい。加熱温度を60℃以上にすることで、室温での蛍光体シートの貯蔵弾性率G’と、貼り付け温度での蛍光体シートの弾性率G’との差を大きくするための樹脂設計が容易となる。また、加熱温度を250℃以下にすることで、蛍光体シートの熱膨張または熱収縮を小さくすることができるので、貼り付けの位置精度を高めることができる。
【0228】
特に、蛍光体シートに予め孔開け加工を施して、LEDチップ上の所定部分と位置合わせを行う場合などには、貼り付けの位置精度は重要である。貼り付けの位置精度を高める観点から、加熱温度は、160℃以下であることがより好ましい。
【0229】
蛍光体シートを加熱圧着するための装置としては、所望の温度で圧着できる装置であれば既存の任意の装置が利用できる。図2(c)〜(d)に示すように、個片化された蛍光体シートを加熱圧着する場合には、例えば、マウンターやフリップチップボンダーなどの加熱圧着ツールが利用できる。
【0230】
また、図3(a)〜(b)に示すように、ウェハレベルのLEDチップに一括して蛍光体シートを貼り付ける場合には、真空ラミネーターや、100〜200mm角程度の加熱部分を有する加熱圧着ツールが利用できる。
【0231】
いずれの場合も、所望の温度で基材付き蛍光体シートをLEDチップに圧着して、蛍光体シートを熱融着させてから、室温まで放冷し、蛍光体シートから基材を剥離する。本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、25℃および100℃における貯蔵弾性率G’が前述のような関係にあるので、熱融着後に室温まで放冷却した後の蛍光体シートは、LEDチップに強固に密着しつつ、基材から容易に剥離することが可能となる。
【0232】
(蛍光体シートを切断する工程)
蛍光体シートを切断する方法には、LEDチップへの貼り付け前に予め個片に切断する方法と、ウェハレベルのLEDチップに蛍光体シートを貼り付けてからウェハのダイシングと同時に蛍光体シートを切断する方法がある。
【0233】
図2に示すように、LEDチップへの貼り付け前に蛍光体シートを切断する場合には、均一に形成された蛍光体シートを、レーザーによる加工、あるいは刃物による切削によって所定の形状に加工し、分割する。レーザーによる加工は、蛍光体シートに高エネルギーが付与されるので、加工条件によっては、蛍光体シート中の樹脂の焼け焦げや蛍光体の劣化を引き起こす可能性がある。したがって、蛍光体シートの切断の方法としては、刃物による切削が望ましい。
【0234】
刃物での切削方法としては、例えば、単純な刃物を押し込んで切る方法と、回転刃によって切る方法があり、いずれも好適に使用できる。回転刃によって切断する装置としては、ダイサーと呼ばれる、半導体基板を個別のチップに切断(ダイシング)するのに用いる装置が好適に利用できる。ダイサーを用いれば、回転刃の厚みや条件設定により、蛍光体シートの分割ラインの幅を精密に制御できるため、単純な刃物の押し込みにより蛍光体シートを切断する場合よりも高い加工精度が得られる。
【0235】
基材と積層された状態の蛍光体シートを切断する場合には、基材ごと個片化しても良いし、蛍光体シートは個片化しつつ、基材は切断しなくても構わない。あるいは、蛍光体シートは個片化しつつ、基材は貫通しない切り込みラインが入る状態(所謂ハーフカットの状態)でも良い。
【0236】
蛍光体シートを基材ごと個片化した場合は、各個片の蛍光体シートを上述の方法でLEDチップに貼り付けることができる。その際、蛍光体シートからの基材の剥離は、LEDチップへの貼り付け前に行ってもよいし、LEDチップへの貼り付け後に行ってもよい。また、基材を蛍光体シートから剥離せずそのまま残してもよい。
【0237】
蛍光体シートは個片化しつつ、基材は切断されないか、または所謂ハーフカットの状態である場合は、各個片の蛍光体シートを基材から剥離してから、上述の方法で個別のLEDチップに貼り付けることができる。
【0238】
図3に示すように、ウェハレベルのLEDチップに蛍光体シートを貼り付けてから、ウェハのダイシングと同時に蛍光体シートを切断する場合には、レーザーによる加工、あるいは刃物による切削によって所定の形状に加工し、個片化された、蛍光体シート付きのLEDチップに分割することができる。これらの切削方法のうち、刃物による切削が好ましい。
【0239】
(蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法の具体例)
図2は、蛍光体シートを基材ごと個片化して、LEDチップに貼り付ける場合の、一連の工程の一例である。図2の工程には、蛍光体シートを個片に切断する工程、および該個片に切断された蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける工程が含まれる。
【0240】
図2(a)は、基材9と積層された状態の蛍光体シート2を仮固定シート11に固定したところである。図2に示した工程では、蛍光体シート2と基材9はいずれも個片化するので、取り扱いが容易なように仮固定シート11に固定しておく。次に、図2(b)に示すように、蛍光体シート2と基材9を切断して個片化する。
【0241】
続いて、図2(c)に示すように、実装基板5に実装されたLEDチップ1の上に、個片化された蛍光体シート2と基材9を位置合わせする。そして、図2(d)に示すように、加熱圧着ツール12を用いて、所望の温度で蛍光体シート2をLEDチップ1に圧着する。このとき、蛍光体シート2とLEDチップ1の間に空気を噛み込まないように、圧着工程は真空下あるいは減圧下で行うことが好ましい。圧着後に室温まで放冷する。
【0242】
次に、図2(e)に示すように、蛍光体シート2から基材9を剥離する。ここで、基材9がガラス等の場合、図2(f)に示すように、基材9を剥離せずにそのまま残しても良い。
【0243】
図3は、ウェハレベルのLEDチップに蛍光体シートを一括して貼り付けてから、ウェハのダイシングと蛍光体シートの切断を一括して行う場合の、一連の工程の一例である。図3の工程には、ウェハ上に形成された複数のLEDチップに、蛍光体シートを一括して貼り付ける工程、およびウェハのダイシングと、蛍光体シートが貼り付けられたLEDチップの個片化とを一括して行う工程が含まれる。
【0244】
図3(a)に示すように、基材9と積層された状態の蛍光体シート2には、予め切断加工は施されない。その蛍光体シート2の側を、複数のLEDチップ(図示せず)を表面に形成したウェハ13に対向させて、位置合わせする。
【0245】
次に、図3(b)に示すように、加熱圧着ツール12により、所望の温度で蛍光体シート2を複数のLEDチップに一括して加熱圧着する。このとき、蛍光体シート2とLEDチップとの間に空気を噛み込まないように、加熱圧着工程は真空下あるいは減圧下で行うことが好ましい。加熱圧着後に室温まで放冷する。
【0246】
次に、図3(c)に示すように、蛍光体シート2から基材9を剥離した後、ウェハ13をダイシングすると同時に、蛍光体シート2を切断して個片化する。そして、図3(d)に示すように、個片化された、蛍光体シート付きのLEDチップ25を得る。
【0247】
また、図3(c)〜(d)の工程に代えて、図3(e)に示すように、蛍光体シート2から基材9を剥離せず、図3(f)に示すように、基材9も蛍光体シートと一緒に切断して個片化してもよい。こうして、個片化された、基材および蛍光体シート付きのLEDチップ26を得る。この場合、基材9がガラス等の場合は、蛍光体シート2から剥離せずそのまま用いても良い。基材9がプラスチックフィルムの場合は、LEDチップ26を基板に実装した後、基材9を蛍光体シート2から剥離しても良い。
【0248】
図2および図3のいずれの工程においても、上面に電極を備えたLEDチップに蛍光体シートを貼り付ける場合には、電極に対応する部分の蛍光体シートを除去する必要がある。そのため、蛍光体シートをLEDチップへ貼り付ける前に、蛍光体シートにおいて、その電極に対応する部分に、予め孔開け加工をしておくことが好ましい。本発明の実施の形態に係る蛍光体シートには、高精度の孔開け加工が可能である。
【0249】
すなわち、本発明の実施の形態に係るLEDパッケージの製造方法では、蛍光体シートを、LEDチップの発光面の電極を避けた部分に貼り付けることが好ましい。
【0250】
孔開け加工の方法は、特に制限されないが、例えば、レーザー加工、金型パンチングなどの公知の方法が好適に使用できる。レーザー加工は、加工条件によっては、蛍光体シート中の樹脂の焼け焦げや蛍光体の劣化を引き起こす可能性がある。したがって、金型によるパンチング加工がより望ましい。パンチング加工を実施する場合、蛍光体シートをLEDチップに貼り付けた後ではパンチング加工は不可能であるので、蛍光体シートをLEDチップに貼り付ける前にパンチング加工を施すことが必須となる。
【0251】
金型によるパンチング加工では、LEDチップに備わる電極の形状や大きさなどに応じて、金型を設計することで、任意の形状や大きさの孔を開けることができる。1mm角程の大きさのLEDチップにおいて、上面の電極の大きさは、発光面の面積を小さくしないために、500μm角以下であることが好ましい。したがって、蛍光体シートに施される孔は、その大きさに合わせて500μm角以下の大きさであることが好ましい。また、LEDチップの上面の電極と、LEDチップを実装する実装基板との間でワイヤーボンディングなどを行う場合、その上面電極はある程度の大きさが必要であり、例えば、少なくとも50μm角程度の大きさとなる。したがって、蛍光体シートに施される孔は、その大きさに合わせて50μm角程度の大きさであることが好ましい。
【0252】
蛍光体シートに施される孔の大きさは、電極の大きさより大きすぎると、発光面が露出して光漏れが発生し、LEDパッケージの色特性が低下するおそれがある。また、電極の大きさより小さすぎると、ワイヤーボンディング時にワイヤが蛍光体シートに触れて、接合不良を起こすおそれがある。従って、蛍光体シートでの孔開け加工においては、50μm角以上500μm角以下という小さい孔を、±10%以内の高精度で加工することが好ましい。
【0253】
切断加工や、必要に応じ孔開け加工を施した蛍光体シートを、LEDチップの所定部分に位置合わせして貼り付ける場合には、光学的な位置合わせ(アラインメント)機構を持つ、貼り付け装置が必要となる。このとき、蛍光体シートとLEDチップを近接させて位置合わせすることは作業的に難しい。そこで、実用的には蛍光体シートとLEDチップを軽く接触させた状態で位置合わせを行うことが良く行われる。
【0254】
このとき、蛍光体シートが粘着性を持っていると、蛍光体シートをLEDチップに接触させてから動かすことは非常に困難である。これに対し、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートであれば、室温では粘着性がないので、蛍光体シートとLEDチップを軽く接触した状態で、位置合わせを行うことが容易である。
【0255】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートは、LEDチップに貼り付けた後、必要に応じて、オーブン等により更に加熱処理を行うことが可能である。加熱処理を行うことで、蛍光体シートとLEDチップとの接着をより強固にすることができる。
【0256】
また、蛍光体シートを貼り付けたLEDチップは、実装基板に一括して接合させる場合に加熱圧着での接合を行うことや、実装基板に半田リフローでハンダ付けを行うことも可能である。
【0257】
本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法の別の実施形態として、LEDパッケージの量産的な製造方法を説明する。まず、蛍光体シート付きLEDチップの製造方法を説明する。LEDチップへの蛍光体シートの貼り付け方法としては、例えば、図4に示すように、個々のLEDチップ1毎に、個片化した蛍光体シート積層体14を一つずつ貼り付ける方法が挙げられる。また、図5に示すように、複数のLEDチップ1に一括で蛍光体シート2を貼り付け、これらを被覆した後、パッケージ基板15をカットしてLEDチップ1を個別化する方法が挙げられる。
【0258】
次に、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートを用いたLEDパッケージの製造方法のさらに別の実施形態として、2つの方法を例示する。
【0259】
一つめの製造例を図6に示す。これは、蛍光体シートに備えられた基材が流動性を有する場合の好ましい例である。
【0260】
図6(a)に示すように、台座18上に両面粘着テープ17を介してLEDチップ1を仮固定する。図6(b)に示すように、蛍光体シート積層体14を、蛍光体シート2がLEDチップ1に接するようにして積層する。
【0261】
図6(c)に示すように、図6(b)の積層物を真空ダイアフラムラミネーター22の下部チャンバー20に入れた後、加熱しながら上部チャンバー19および下部チャンバー20を減圧する。基材9が流動するまで減圧加熱を行った後、上部チャンバー19に、吸気口23を通じて大気を吸入することで、ダイアフラム21を膨張させる。そして、基材9を通じて蛍光体シート2を押圧し、LEDチップ1の発光面に追従するように貼り付ける。
【0262】
図6(d)に示すように、上下チャンバーを大気圧に戻したのち、積層物を真空ダイアフラムラミネーター22から取り出し、放冷後に基材9を蛍光体シート2から剥離する。続いて、LEDチップの間の切断箇所24をダイシングカッターなどで切断し、個片化した蛍光体シート付きLEDチップ25を作製する。
【0263】
図6(e)に示すように、蛍光体シート付きLEDチップ25を、実装基板15上のパッケージ電極16に、金バンプ7を介して接合する。以上の工程により、図6(f)に示すような、LEDパッケージ10が製造される。
【0264】
二つ目の製造例を図7に示す。これは、蛍光体シートに備えられた基材が流動性を有する場合の、別の好ましい例である。
【0265】
図7(a)に示すように、LEDチップ1を、実装基板15上のパッケージ電極16に、金バンプ7を介して接合する。
【0266】
図7(b)に示すように、蛍光体シート積層体14を、蛍光体シート2がLEDチップ1に接するようにして積層する。
【0267】
図7(c)に示すように、図7(b)の積層物を真空ダイアフラムラミネーター22の下部チャンバー20に入れた後、図6の製造例と同様の方法により、蛍光体シート2をLEDチップ1の発光面に貼り付ける。
【0268】
図7(d)に示すように、上下チャンバーを大気圧に戻したのち、積層物を真空ダイアフラムラミネーター22から取り出し、放冷後に基材9を蛍光体シート2から剥離する。続いて、LEDパッケージの間の切断箇所24を切断し個片化する。以上の工程により、図7(e)に示すような、LEDパッケージ10が製造される。
【0269】
<発光装置、バックライトユニット、ディスプレイ>
本発明の実施の形態に係る発光装置は、上述した蛍光体シートを備える。例えば、この発光装置は、上述した蛍光体シートまたはその硬化物をLEDチップの発光面に備えたLEDパッケージ、を備える。
【0270】
本発明の実施の形態に係るバックライトユニットは、この発光装置の一応用例である。例えば、このバックライトユニットは、上述した蛍光体シートまたはその硬化物を有するLEDパッケージを備える。このように構成されるバックライトユニットは、ディスプレイ、照明、インテリア、標識、看板、などの用途に使用できるが、特にディスプレイや照明用途に好適に用いられる。
【0271】
本発明の実施の形態に係るディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)は、このバックライトユニットの一適用例である。例えば、このディスプレイは、上述した蛍光体シートまたはその硬化物を有するLEDパッケージを備える。
【実施例】
【0272】
以下に、本発明を実施例により、具体的に説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0273】
<基材>
BX9:離型処理済みポリエチレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレートフィルム)“セラピール”BX9(東レフィルム加工(株)製、平均膜厚50μm)
<無機蛍光体>
・蛍光体1(YAG1):
(株)ネモト・ルミマテリアル社製“YAG81003”(YAG蛍光体)
・蛍光体2(β1):
デンカ(株)社製“GR−SW532D”(β型サイアロン蛍光体)
ピーク波長:538nm 平均粒径(D50):16μm
・蛍光体3(KSF1):
(株)ネモト・ルミマテリアル社製 KSF蛍光体サンプルA
平均粒径(D50):50μm。
【0274】
<有機蛍光体>
有機蛍光体の合成例を以下に示す。H−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。HPLCは、高速液体クロマトグラフ LC−10((株)島津製作所製)を用い、0.1g/Lのクロロホルム溶液にて測定した。カラムの展開溶媒としては、0.1%リン酸水溶液とアセトニトリルとの混合溶液を用いた。吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルは、それぞれ、U−3200形分光光度計、F−2500形蛍光分光光度計(ともに日立製作所(株)製)を用い、4×10-6mol/Lのジクロロメタン溶液中にて測定を行った。
【0275】
(合成例1)
以下に、合成例1の有機蛍光体(T21)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T21)の合成方法では、4−t−ブチルベンズアルデヒド12.2g、4−メトキシアセトフェノン11.3g、3M水酸化カリウム水溶液32mlとエタノール20mlの混合溶液を窒素気流下、室温で12時間撹拌した。析出した固体をろ取し、冷エタノール50mlで2回洗浄した。真空乾燥した後、3−(4−t−ブチルフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)プロペノン17gを得た。
【0276】
つぎに、3−(4−t−ブチルフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)プロペノン17g、ジエチルアミン21.2g、ニトロメタン17.7gとメタノール580mlの混合溶液を窒素気流下、14時間、加熱還流した。得られた溶液を、室温に冷却後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、3−(4−t−ブチルフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−4−ニトロブタン−1−オン16gを得た。
【0277】
つぎに、メタノール230mlと濃硫酸46mlの混合溶液を窒素気流下、0℃で撹拌した。あらかじめ調整した3−(4−t−ブチルフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−4−ニトロブタン−1−オン1.42g、メタノール40mlとテトラヒドロフラン80mlの混合溶液を窒素気流下、水酸化カリウム粉末1.12gを加え、室温で1時間撹拌したものをゆっくり滴下し、室温でさらに1時間撹拌した。ついで、0℃まで冷却後、水50mlを加え、4M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン50mlで抽出した。有機層を水30mlで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレートし、粘調体を得た。
【0278】
つぎに、得られた粘調体、酢酸アンモニウム1.54gと酢酸20mlの混合溶液を窒素気流下、100℃で1時間、加熱還流した。ついで、室温に冷却後、氷水を加え、4M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン50mlで抽出した。有機層を水30mlで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレートした。エタノール20mlで洗浄し、真空乾燥した後、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール555mgを得た。
【0279】
つぎに、2−ベンゾイル−3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピロール357mg、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール250mg、オキシ塩化リン138mgと1,2−ジクロロエタン10mlの混合溶液を窒素気流下、9時間、加熱還流した。ついで、室温に冷却後、ジイソプロピルエチルアミン847mg、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体931mgを加え、3時間攪拌した。水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、下記に示す有機蛍光体(T21)を合成した。
【0280】
H−NMR(CDCl(d=ppm)):1.18(s,18H)、1.35(s,9H)、3.85(s,3H)、6.37−6.99(m,17H)、7.45(d,2H)、7.87(d,4H)。
【0281】
【化33】
【0282】
(合成例2)
以下に、合成例2の有機蛍光体(T22)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T22)の合成方法では、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール300mg、2−メトキシベンゾイルクロリド201mgとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱した。ついで、室温に冷却後、エバポレートした。エタノール20mlで洗浄し、真空乾燥した後、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mgを得た。
【0283】
つぎに、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mg、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール180mg、メタンスルホン酸無水物206mgと脱気したトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、125℃で7時間加熱した。ついで、室温に冷却後、水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥した。
【0284】
つぎに、得られたピロメテン体とトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン305mg、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体670mgを加え、室温で3時間攪拌した。ついで、水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記に示す有機蛍光体(T22)を合成した。
【0285】
H−NMR(CDCl(d=ppm)):1.19(s,18H)、3.42(s,3H)、3.85(s,6H)、5.72(d,1H)、6.20(t,1H)、6.42−6.97(m,16H)、7.89(d,4H)。
【0286】
【化34】
【0287】
(合成例3)
以下に、合成例3の有機蛍光体(T23)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T23)の合成方法では、1,2−ジクロロエタン30ml中に、2−(2−メトキシベンゾイル)−3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピロール5.0g、2,4−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピロール3.3g、オキシ塩化リン1.5gを入れ、加熱環流下、12時間反応させた。ついで、室温に冷却した後、ジイソプロピルエチルアミン5.2g、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体5.6gを加え、6時間撹拌した。50mlの水を加え、ジクロロメタンを投入後、有機層を抽出し、濃縮して、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製をした後、さらに昇華精製を行い、下記に示す有機蛍光体(T23)を合成した。
【0288】
H−NMR(CDCl(d=ppm)):1.07(s,9H)、2.13(s,6H)、2.39(s,6H)、6.47(t,4H)、6.63(s,8H)、6.75(d,2H)、7.23(d,4H)、7.80(d,4H)。
【0289】
【化35】
【0290】
(合成例4)
以下に、合成例4の有機蛍光体(T24)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T24)の合成方法では、3,5−ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。ここに、脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
【0291】
つぎに、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4−ジメチルピロール(0.7g)を反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。ついで、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記に示す有機蛍光体(T24)を合成した。
【0292】
H−NMR(CDCl(d=ppm)):7.95(s,1H)、7.63−7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)。
【0293】
【化36】
【0294】
(合成例5)
以下に、合成例5の有機蛍光体(T25)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T25)の合成方法では、ピロール原料として、2,4−ジメチルピロールの代わりに2,4−ジメチルピロール−3−カルボン酸エチルを用いた以外は、合成例4と同様にして、有機蛍光体(T25)を合成した。
【0295】
【化37】
【0296】
(合成例6)
以下に、合成例6の有機蛍光体(T26)の合成方法について説明する。有機蛍光体(T26)の合成方法では、ボロン酸原料として、4−t−ブチルフェニルボロン酸の代わりに4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸を用いた以外は、合成例5と同様にして、有機蛍光体(T26)を合成した。
【0297】
【化38】
【0298】
<シリコーン樹脂>
シリコーン樹脂として以下のものを使用した。
【0299】
・シリコーン樹脂1(Si1):
(A)成分:28.5重量部、(B)成分:5.7重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (MeViSiO2/2)0.35(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.32(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 ゲレスト社製“HPM−502”(フェニルメチルシロキサンコポリマー)
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0300】
・シリコーン樹脂2(Si2):
(A)成分:28.5重量部、(B)成分:5.7重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.34(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.32(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0301】
・シリコーン樹脂3(Si3):
(A)成分:28.5重量部、(B)成分:5.7重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.3(Ph2SiO2/2)0.33(PhSiO3/2)0.33(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0302】
・シリコーン樹脂4(Si4):
(A)成分:28.5重量部、(B)成分:5.7重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.2(Ph2SiO2/2)0.38(PhSiO3/2)0.38(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0303】
・シリコーン樹脂5(Si5):
(A)成分:28.5重量部、(B)成分:5.7重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.34(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.32(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.5(PhSiO3/2)0.2
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0304】
・シリコーン樹脂6(Si6):
(A)成分:31.4重量部、(B)成分:2.8重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.34(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.32(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0305】
・シリコーン樹脂7(Si7):
(A)成分:17.4重量部、(B)成分:16.8重量部(C)成分:66.0重量部、(D)成分:0.03重量部、反応抑制剤:0.025重量部
(A)成分 (Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO2/2)0.34(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.32(SiO4/2)0.03
(B)成分 (Me3SiO1/2)0.3(PhViSiO2/2)0.4(PhSiO3/2)0.3
(C)成分 (HMe2SiO)2SiPh2
(D)成分 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液)白金含有量5重量%
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基。
【0306】
・シリコーン樹脂8(Si8):OE6630(東レ・ダウコーニングシリコーン)。
【0307】
・シリコーン樹脂9(Si9):
樹脂主成分16.7重量部、硬度調整剤16.7重量部、架橋剤66.7重量部、反応抑制剤0.025重量部、白金触媒0.03重量部
シリコーン樹脂を配合するための成分
樹脂主成分 (MeViSiO2/2)0.25(Ph2SiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.03 ((A)成分に相当する)
硬度調整剤 ViMe2SiO(MePhSiO)17.5SiMe2Vi ((B)成分に相当する)
架橋剤 (HMe2SiO)2SiPh2 ((C)成分に相当する)
※ただしMe:メチル基、Vi:ビニル基、Ph:フェニル基
反応抑制剤 1−エチニルヘキサノール
白金触媒 白金錯体 (1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液) 白金含有量5重量% ((D)成分に相当する)。
【0308】
<シリコーン微粒子>
2Lの四つ口丸底フラスコに、攪拌機、温度計、環流管、滴下ロートを取り付けた。そのフラスコに、界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン“BYK333”を1ppm含む2.5%のアンモニア水2Lを入れ、300rpmで攪拌しつつ、オイルバスにて昇温した。内温が50℃に到達したところで、滴下ロートから、メチルトリメトキシシラン(MTM)とフェニルトリメトキシシラン(PhTM)の混合物(MTM/PhTM=23/77mol%)200gを、30分かけて滴下した。そのままの温度で、さらに60分間撹拌を続けた後、酢酸(試薬特級)約5gを添加した。混合物を撹拌した後、濾過を行い、濾過器上に粒子を得た。その粒子を、600mLの水で2回と、200mLのメタノールで1回、洗浄し、それぞれ濾過した。濾過器上のケークを取り出し、解砕後、10時間かけて凍結乾燥することにより、白色粉末60gを得た。得られた白色粉末は、SEMで観察したところ、単分散球状の微粒子であった。この微粒子の屈折率を液浸法により測定した結果、1.54であった。この微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面TEMで観察した結果、粒子内が単一構造の微粒子であることが確認できた。
【0309】
<動的弾性率測定>
得られた蛍光体シートについて、直径20mmの円形に切り取り、基材を剥離した後、以下の装置を使用し貯蔵弾性率を測定した。
【0310】
測定装置 :粘度・粘弾性測定装置HAAKE MARSIII
(Thermo Fisher SCIENTIFIC 製)
測定条件 :OSC温度依存測定
ジオメトリー:平行円板型(20mm)
測定時間 :1980秒
角周波数 :1Hz
角速度 :6.2832rad/秒
温度範囲 :25〜200℃(低温温度制御機能あり)
昇温速度 :0.08333℃/秒
サンプル形状:円形(直径18mm)。
【0311】
<切断加工性評価>
得られた蛍光体シートについて、カッティング装置“GCUT”(UHT社製)を用いて、1mm×0.3mm角にカットし、個片の蛍光体シート100個を作製した。光学顕微鏡で個片の蛍光体シートを観察し、周縁部に割れや欠けのあるサンプルの個数を数えた。周縁部が割れ、または欠けているサンプルの数が少ないほど、切断加工性に優れていることを示す。評価B以上であれば、実用上優れている。
S:0個 切断加工性が非常に良好
A:1個以上3個以下 切断加工性が良好
B:4個以上10個以下 切断加工性が実用上問題ない
C:11個以上30個以下 切断加工性が悪い
D:31個以上 切断加工性が非常に悪い。
【0312】
<LEDパッケージの製造方法>
得られた蛍光体シートについて、カッティング装置“GCUT”(UHT社製)を用いて、1mm×0.3mm角にカットし、個片の蛍光体シート100個を作製した。フリップチップボンディング装置(東レエンジニアリング製)を用いて、個片の蛍光体シートをコレットで真空吸着して基材から剥離した。剥離した個片の蛍光体シートを、以下の貼り付け条件で、フリップチップ型LEDチップが実装されたLEDパッケージのLEDチップ表面に貼り付けた。得られたパッケージを直流電源につないで点灯させ、点灯するか否かを確認した。
【0313】
(貼り付け条件)
加熱条件:140℃
加圧条件:80N
加圧時間:20秒。
【0314】
<接着性評価>
得られたLEDパッケージを用いて、LEDチップと蛍光体シートとの界面にピンセットを入れた後、ピンセットで蛍光体シートを持ち上げて、LEDチップと蛍光体シートとの接着性を確認した。接着性の良好なサンプルは、ピンセットで持ち上げても蛍光体シートは剥離しない。接着性の悪いサンプルは、蛍光体シートがLEDチップから剥がれてしまう。光学顕微鏡での観察を行い、剥がれのあるサンプルの個数を数えた。剥がれているサンプルの数が少ないほど、接着性に優れていることを示す。評価B以上であれば、実用上優れている。
S:0個 接着性が非常に良好
A:1個以上5個以下 接着性が良好
B:6個以上10個以下 接着性が実用上問題ない
C:11個以上30個以下 接着性が悪い
D:31個以上 接着性が非常に悪い。
【0315】
<全光束測定>
作製したLEDパッケージに1Wの電力を投入してLEDチップを点灯させ、全光束測定システム(HM−3000、大塚電子社製)を用いて、全光束(lm)を測定した。比較例1における全光束を100としたときの相対的な輝度を算出した。
【0316】
(実施例1)(シリコーン組成物の効果)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂1(Si1)を18.0g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を42.0g、ブチルカルビトールを2.5g添加して、混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物1を作製した。
【0317】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物1を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表1に示す。切断加工性が良好で、接着性も向上する結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0318】
(実施例2)(シリコーン樹脂の変更)
シリコーン樹脂をSi2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表1に示す。表1に示されるように、実施例2の評価結果から、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートであれば、切断加工性と接着性が良好であることがわかった。また、相対輝度も向上することがわかった。
【0319】
(比較例1)
シリコーン樹脂をSi8に変更した以外は、実施例1と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表1に示す。表1に示されるように、比較例1では切断加工性は実用上問題ないが接着性は改善されなかった。
【0320】
(実施例3)(シリコーン樹脂の変更、シリコーン微粒子添加)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を17.0g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を42.0g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して、混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物3を作製した。
【0321】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物3を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表1に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0322】
(実施例4〜8)(シリコーン組成物の変更)
表1に示すように、シリコーン樹脂をSi3〜Si7にそれぞれ変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表1に示す。表1に示されるように、実施例4〜8の評価結果から、本発明の実施の形態に係る蛍光体シートであれば、切断加工性が良好で、接着性も向上することがわかった。また、相対輝度も向上することがわかった。
【0323】
(比較例2)
表1に示すように、シリコーン樹脂をSi9に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表1に示す。比較例2では、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。また、輝度も向上しなかった。
【0324】
(実施例9)(樹脂含有量を10.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を5.96g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を53.6g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物11を作製した。
【0325】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物11を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0326】
(実施例10)(樹脂含有量を70.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を42.4g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を17.5g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物12を作製した。
【0327】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物12を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0328】
(実施例11)(樹脂含有量を85.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を52.5g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を8.6g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物13を作製した。
【0329】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物13を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0330】
(実施例12)(シリコーン微粒子含有量を0.5重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を17.0g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を42.0g、シリコーン微粒子を0.3g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物14を作製した。
【0331】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物14を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0332】
(実施例13)(シリコーン微粒子含有量を10.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を11.0g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を42.0g、シリコーン微粒子を6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物15を作製した。
【0333】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物15を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0334】
(実施例14)(シリコーン微粒子含有量を20.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を6g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を42.0g、シリコーン微粒子を12g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物16を作製した。
【0335】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物16を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表2に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0336】
(実施例15)(蛍光体含有量を38.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を36.4g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を22.7g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物17を作製した。
【0337】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物17を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表3に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0338】
(実施例16)(蛍光体含有量を40.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を35.2g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を23.8g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物18を作製した。
【0339】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物18を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表3に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0340】
(実施例17)(蛍光体含有量を63.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を21.5g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を37.6g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物19を作製した。
【0341】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物19を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表3に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0342】
(実施例18)(蛍光体含有量を80.0重量%に変更)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を11.3g、無機蛍光体として蛍光体1(YAG1)を47.7g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物20を作製した。
【0343】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物20を塗布し、120℃で40分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表3に示す。切断加工性、接着性ともに良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0344】
(比較例3)
シリコーン樹脂をSi9に変更した以外は、実施例15と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。表3に示されるように、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。
【0345】
(比較例4)
シリコーン樹脂をSi9に変更した以外は、実施例16と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。表3に示されるように、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。
【0346】
(比較例5)
シリコーン樹脂をSi9に変更した以外は、実施例17と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。表3に示されるように、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。
【0347】
(比較例6)
シリコーン樹脂をSi9に変更した以外は、実施例18と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表3に示す。表3に示されるように、切断加工性は低下し、接着性も改善されなかった。
【0348】
(実施例19)(蛍光体の変更−1)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を17.0g、無機蛍光体として蛍光体2(β1)を16.8g、蛍光体3(KSF1)を25.2g、シリコーン微粒子を0.6g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡した後、3本ロールにて6回混合分散し、蛍光体組成物25を作製した。
【0349】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物25を塗布し、120℃で30分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表4に示す。切断加工性、接着性ともに非常に良好な結果が得られ、相対輝度も大きく向上した。
【0350】
(比較例7)
シリコーン樹脂をSi9に変更した以外は、実施例19と同様の操作で蛍光体シートを作製し、その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表4に示す。表4に示されるように、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。
【0351】
(実施例20)(蛍光体の変更−2)
容積100mlのポリエチレン製容器を用いて、シリコーン樹脂2(Si2)を60.0g、有機蛍光体として蛍光体4(タイプ21)を1.24×10-3g、蛍光体5(タイプ24)を1.24×10-3g、シリコーン微粒子を1.0g、ブチルカルビトールを2.5g添加して混合した。その後、遊星式撹拌・脱泡装置を用い、1000rpmで5分間撹拌・脱泡し、蛍光体組成物27を作製した。
【0352】
スリットダイコーターを用いて、基材である“セラピール”BX9の離型処理面上に、蛍光体組成物27を塗布し、120℃で30分間加熱、乾燥し、厚さ80μm、100mm角の蛍光体シートを得た。前述した方法で、動的弾性率測定、切断加工性評価を実施した。また、前述した方法でLEDパッケージを作製し、接着性評価、全光束測定を実施した。結果を表5に示す。切断加工性、接着性ともに非常に良好な結果が得られ、相対輝度も向上した。
【0353】
(実施例21〜24)(蛍光体の変更−3)
実施例21〜24では、表5に示すように有機蛍光体を適宜変更したこと以外は、実施例20と同様の操作で蛍光体組成物(28〜32)を作製し、各々用いて実施例20と同様の操作で蛍光体シートを作製した。その後、各々用いてLEDパッケージを作製し、評価を行った。その結果を表5に示す。これら実施例21〜24の評価結果から、切断加工性、接着性ともに非常に良好な結果が得られ、相対輝度が向上することがわかった。
【0354】
(比較例8)
シリコーン樹脂をSi9に変更し、蛍光体を蛍光体4(タイプ27)と蛍光体5(タイプ28)に変更した以外は、実施例20と同様の操作で蛍光体組成物33を作製、蛍光体シートを作製した。その後、LEDパッケージを作製して、各測定および評価を行った。結果を表5に示す。表5に示されるように、切断加工性は実用上問題ないが、接着性は改善されなかった。
【0355】
【化39】
【0356】
【化40】
【0357】
【表1】
【0358】
【表2】
【0359】
【表3】
【0360】
【表4】
【0361】
【表5】
【符号の説明】
【0362】
1 LEDチップ
2 蛍光体シート
3 透明封止材
4 リフレクター
5 実装基板
6 電極
7 金バンプ
8 透明接着剤
9 基材
10 LEDパッケージ
11 仮固定シート
12 加熱圧着ツール
13 LEDチップを表面に形成したウェハ
14 蛍光体シート積層体
15 パッケージ基板
16 パッケージ電極
17 両面粘着テープ
18 台座
19 上部チャンバー
20 下部チャンバー
21 ダイアフラム
22 真空ダイアフラムラミネーター
23 吸気/排気口
24 切断部分
25 蛍光体シート付きLEDチップ
26 基材付き蛍光体シート付きLEDチップ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7