特許第6863405号(P6863405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863405スクロール圧縮機およびそれを備えた冷凍装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863405
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機およびそれを備えた冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   F04C18/02 311P
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-94994(P2019-94994)
(22)【出願日】2019年5月21日
(65)【公開番号】特開2020-190217(P2020-190217A)
(43)【公開日】2020年11月26日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永原 顕治
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218934(JP,A)
【文献】 特開2010−265845(JP,A)
【文献】 特開平07−217554(JP,A)
【文献】 特開2014−029136(JP,A)
【文献】 特開2015−137574(JP,A)
【文献】 実開昭64−044389(JP,U)
【文献】 特開2009−097417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C2/00−2/077
F04C18/00−18/077
F04C23/00−29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)に収容され、固定スクロール(30)、可動スクロール(40)、およびハウジング(21)を有する圧縮機構(20)と、
上記可動スクロール(40)を回転駆動するための駆動軸(60)とを備え、
上記ハウジング(21)は、
上記駆動軸(60)を回転可能に支持する軸受部(22)と、
上記軸受部(22)に連続して径方向外側に延びる本体部(23)と、
上記本体部(23)の径方向外側に設けられ、上記ケーシング(10)に圧接する圧接部(24)と、
軸方向における上記本体部(23)の上記固定スクロール(30)側の面から該固定スクロール(30)に向けて延びる支持部(25)と
上記ケーシング(10)に溶接される溶接部(26)とを有し、
上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面は、該固定スクロール(30)が締結される締結面(25a)であり、
上記本体部(23)および上記支持部(25)の外周面と上記ケーシング(10)の内周面との間に、隙間(G1)が形成されており、
上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)以上であり、
上記圧接部(24)の少なくとも一部と、上記溶接部(26)の少なくとも一部とは、上記ケーシング(10)の周方向に並んで配置され、
上記溶接部(26)は、上記隙間(G1)を介して上記ケーシング(10)の内部空間(S1)に連通している
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)よりも長い
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機(1)を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクロール圧縮機およびそれを備えた冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーシングと、固定スクロールおよびハウジングを有する圧縮機構とを備えたスクロール圧縮機が知られている(例えば、特許文献1)。同文献のスクロール圧縮機では、ハウジングは、ケーシングに圧接する圧接部と、圧接部に繋がりかつ軸方向に延びる支持部とを有する。支持部の固定スクロール側の端面は、固定スクロールが締結される締結面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−25762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧接部がケーシングに圧接するために、この圧接部に繋がった支持部の位置は、ハウジングのケーシングに対する固定前と固定後とで変動し得る。この変動量が大きいと、固定スクロールと支持部の締結面との間のシール性が低下し、スクロール圧縮機の効率が下がってしまう。
【0005】
本開示の目的は、スクロール圧縮機の効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、スクロール圧縮機(1)を対象とする。スクロール圧縮機(1)は、筒状のケーシング(10)と、上記ケーシング(10)に収容され、固定スクロール(30)、可動スクロール(40)、およびハウジング(21)を有する圧縮機構(20)と、上記可動スクロール(40)を回転駆動するための駆動軸(60)とを備え、上記ハウジング(21)は、上記駆動軸(60)を回転可能に支持する軸受部(22)と、上記軸受部(22)に連続して径方向外側に延びる本体部(23)と、上記本体部(23)の径方向外側に設けられ、上記ケーシング(10)に圧接する圧接部(24)と、軸方向における上記本体部(23)の上記固定スクロール(30)側の面から該固定スクロール(30)に向けて延びる支持部(25)と、上記ケーシング(10)に溶接される溶接部(26)とを有し、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面は、該固定スクロール(30)が締結される締結面(25a)であり、上記本体部(23)および上記支持部(25)の外周面と上記ケーシング(10)の内周面との間に、隙間(G1)が形成されており、上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)以上であり、上記圧接部(24)の少なくとも一部と、上記溶接部(26)の少なくとも一部とは、上記ケーシング(10)の周方向に並んで配置され、上記溶接部(26)は、上記隙間(G1)を介して上記ケーシング(10)の内部空間(S1)に連通している
【0007】
第1の態様では、ケーシング(10)から圧接部(24)に作用する径方向の圧力が、径方向に延びる本体部(23)によってしっかりと受けられる。支持部(25)の位置変動が抑制され、締結面(25a)と固定スクロール(30)との間のシール性が高くなる。それにより、スクロール圧縮機(1)の効率を向上させることができる。
【0008】
また、圧接部(24)と溶接部(26)とが軸方向に並んで配置される場合に比べて、ハウジング(21)を当該軸方向において小型化することができ、ひいてはスクロール圧縮機(1)を小型化することができる。
【0009】
また、ハウジング(21)をケーシング(10)に溶接する際に、溶接ガスが隙間(G1)を介してケーシング(10)の内部空間に逃げ、よって溶接不良が生じるのを抑止することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)よりも長いことを特徴とする。
【0011】
第2の態様では、支持部(25)の位置変動がより一層抑制され、締結面(25a)と固定スクロール(30)との間のシール性がより高くなる。それにより、スクロール圧縮機(1)の効率をより一層向上させることができる
【0012】
開示の第の態様は、冷凍装置(100)を対象とする。冷凍装置(100)は、上記第1又は第2の態様のスクロール圧縮機(1)を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の冷凍装置の概略構成を示す冷媒回路図である。
図2図2は、実施形態のスクロール圧縮機の縦断面図である。
図3図3は、実施形態のスクロール圧縮機の要部を示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態のハウジングの要部を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態のスクロール圧縮機の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について説明する。本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、冷凍装置(100)に適用される。冷凍装置(100)は、空気の温度や湿度を調節する空気調和装置、庫内を冷却する冷却装置、および温水を生成する給湯装置などを含む。
【0015】
図1に示すように、冷凍装置(100)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(101)を備える。冷媒回路(101)は、スクロール圧縮機(1)と、凝縮器(102)と、膨張機構(103)と、蒸発器(104)とを有する。冷媒回路(101)では、スクロール圧縮機(1)で圧縮された冷媒が凝縮器(102)で放熱し、膨張機構(103)で減圧される。減圧された冷媒は、蒸発器(104)で蒸発し、スクロール圧縮機(1)に吸入される。
【0016】
図2および図3に示すように、スクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、電動機(50)と、駆動軸(60)とを備える。
【0017】
ケーシング(10)は、両端が閉塞された縦長の円筒状に形成される。ケーシング(10)内には、上側から順に圧縮機構(20)と電動機(50)とが収容される。ケーシング(10)内を軸方向(上下方向)に延びる駆動軸(60)によって圧縮機構(20)と電動機(50)とが連結される。
【0018】
ケーシング(10)には、吸入管(11)と、吐出管(12)とが設けられる。吸入管(11)は、ケーシング(10)の上部を軸方向に貫通して圧縮機構(20)に接続される。吸入管(11)は、圧縮機構(20)に低圧の流体(例えば、ガス冷媒)を導入する。吐出管(12)は、ケーシング(10)の胴部を径方向に貫通してケーシング(10)の内部空間と連通する。吐出管(12)は、ケーシング(10)内の高圧の流体をケーシング(10)外に導出する。
【0019】
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に収容される。圧縮機構(20)は、吸入管(11)を経由して導入された流体を圧縮してケーシング(10)内に吐出するように構成される。圧縮機構(20)の構成について、詳しくは後述する。
【0020】
電動機(50)は、ケーシング(10)内に収容され、圧縮機構(20)の下方に配置される。電動機(50)は、固定子(51)と、回転子(52)とを有する。固定子(51)は、実質的に円筒状に形成されてケーシング(10)に固定される。回転子(52)は、固定子(51)の内周に回転可能に挿通される。回転子(52)の内周には、駆動軸(60)が挿通されて固定される。
【0021】
駆動軸(60)は、主軸部(61)と、偏心軸部(62)とを有する。主軸部(61)は、ケーシング(10)の軸方向(上下方向)に延びる。偏心軸部(62)は、主軸部(61)の上端に設けられる。偏心軸部(62)の外径は、主軸部(61)の外径よりも小さい。偏心軸部(62)の軸心は、主軸部(61)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。
【0022】
次に、図2図5を参照して、圧縮機構(20)の構成について説明する。
【0023】
図2および図3に示すように、圧縮機構(20)は、ハウジング(21)と、固定スクロール(30)と、可動スクロール(40)とを備える。ハウジング(21)は、ケーシング(10)内に設けられる。固定スクロール(30)は、ハウジング(21)に固定される。可動スクロール(40)は、ハウジング(21)と固定スクロール(30)との間に配置される。可動スクロール(40)は、固定スクロール(30)に噛み合わされて固定スクロール(30)に対して偏心回転運動を行うように構成される。
【0024】
ハウジング(21)は、ケーシング(10)内に固定され、ケーシング(10)の内部空間を軸方向に2つの空間に区画する。ハウジング(21)の上側の空間が第1空間(S1)を構成する。ハウジング(21)の下側の空間が第2空間(S2)を構成する。第1空間(S1)は、内部空間を構成している。
【0025】
ハウジング(21)は、ケーシング(10)の内周面に固定される。図3および図4に示すように、ハウジング(21)は、軸受部(22)と、本体部(23)と、圧接部(24)と、支持部(25)と、溶接部(26)とを含む。
【0026】
軸受部(22)は、実質的に円筒状に形成された部分である。軸受部(22)は、駆動軸(60)を回転可能に支持する。軸受部(22)の上面には、軸受部(22)の弾性変形を可能とする弾性溝(22a)が形成される。
【0027】
本体部(23)は、軸受部(22)に連続して径方向外側に延びる部分である。本体部(23)は、肉厚の円筒状に形成される。本体部(23)の径方向厚みは、支持部(25)の径方向厚みよりも分厚い。
【0028】
圧接部(24)は、本体部(23)の径方向外側に設けられる部分である。圧接部(24)の外周面は、ハウジング(21)の外周面の一部を構成する。圧接部(24)の軸方向長さ(上下方向長さ)は、ハウジング(21)の軸方向長さよりも短い。圧接部(24)は、ケーシング(10)の胴部に圧接して固定される。
【0029】
支持部(25)は、本体部(23)の上面(換言すると、ケーシング(10)の軸方向における本体部(23)の固定スクロール(30)側の面)から固定スクロール(30)に向けて延びる部分である。支持部(25)は、やや薄肉の円筒状に形成される。支持部(25)の上端面(換言すると、支持部(25)の固定スクロール(30)側の端面)は、固定スクロール(30)が締結される締結面(25a)である。
【0030】
溶接部(26)は、ハウジング(21)の外周面に形成された凹部(27)によって構成される。凹部(27)には、溶接ピン(28)が設けられる。溶接ピン(28)は、ケーシング(10)に形成された溶接用の貫通孔(13)を介した溶接により溶け、ハウジング(21)とケーシング(10)とを互いに固定する。
【0031】
溶接部(26)は、ケーシング(10)の軸方向において複数(この例では、2つ)設けられる(図3)。溶接部(26)は、ケーシング(10)の周方向において複数(この例では、4つ)設けられる(図5)。
【0032】
圧接部(24)よりも上側において、ハウジング(21)(具体的には、本体部(23)および支持部(25))の外周面とケーシング(10)の内周面との間には、第1隙間(G1)が形成される。固定スクロール(30)の外周面とケーシング(10)の内周面との間には、第2隙間(G2)が形成される。固定スクロール(30)の外周面は、支持部(25)の外周面と略面一になっている。第1隙間(G1)および第2隙間(G2)は、上側の溶接部(26)と、第1空間(S1)とを連通させる。第1隙間(G1)は、隙間を構成している。
【0033】
第1隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、支持部(25)の内周面の軸方向長さ(L2)よりも長い。換言すると、支持部(25)の上端面(締結面(25a))と圧接部(24)の上端との間の軸方向距離は、支持部(25)の上端面と、本体部(23)の上面との間の軸方向距離よりも長い。あるいは、圧接部(24)の上端は、本体部(23)の上面よりも下側に位置する。さらには、圧接部(24)の下端は、本体部(23)の下面よりも上側に位置する。したがって、ケーシング(10)の径方向において、圧接部(24)の全体が、本体部(23)と並んで配置される。
【0034】
圧接部(24)よりも下側において、ハウジング(21)(具体的には、本体部(23))の外周面とケーシング(10)の内周面との間には、第3隙間(G3)が形成される。第3隙間(G3)は、下側の溶接部(26)と、第2空間(S2)とを連通させる。
【0035】
図3および図4に示すように、圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向において互いに並んで配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向において互いに近接して配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向において互いに実質的に接して配置される。
【0036】
また、圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の軸方向において互いに並んで配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の軸方向において互いに近接して配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の軸方向において互いに実質的に接して配置される。
【0037】
したがって、圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向および軸方向において互いに並んで配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向および軸方向において互いに近接して配置される。圧接部(24)の少なくとも一部と、溶接部(26)(凹部(27))の少なくとも一部とは、ケーシング(10)の周方向および軸方向において互いに実質的に接して配置される。これにより、ケーシング(10)とハウジング(21)とがより一層強固に互いに固定される。
【0038】
固定スクロール(30)は、ハウジング(21)の軸方向における一方側(この例では、上側)に配置される。固定スクロール(30)は、固定側鏡板(31)と、固定側ラップ(32)と、外周壁部(33)とを有する。
【0039】
固定側鏡板(31)は、概ね円形の板状に形成される。固定側ラップ(32)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板(31)の前面(この例では、下面)から突出している。外周壁部(33)は、固定側ラップ(32)の外周側を囲むように形成され、固定側鏡板(31)の前面から突出している。外周壁部(33)の下面は、支持部(25)の締結面(25a)に締結される。固定側ラップ(32)の先端面(この例では、下端面)と、外周壁部(33)の先端面とは略面一になっている。
【0040】
固定スクロール(30)の外周壁部(33)には、吸入ポート(図示せず)が形成される。吸入ポートには、吸入管(11)の下流端が接続される。固定スクロール(30)の固定側鏡板(31)の中央部には、固定側鏡板(31)を厚さ方向に貫通する吐出口(34)が形成される。
【0041】
可動スクロール(40)は、可動側鏡板(41)と、可動側ラップ(42)と、ボス部(43)とを有する。
【0042】
可動側鏡板(41)は、概ね円形の板状に形成される。可動側ラップ(42)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、可動側鏡板(41)の前面(この例では、上面)から突出している。ボス部(43)は、円筒状に形成され、可動側鏡板(41)の背面(この例では、下面)の中央部に配置される。可動スクロール(40)の可動側ラップ(42)は、固定スクロール(30)の固定側ラップ(32)と噛み合わされている。
【0043】
このような構成により、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)との間には、圧縮室(S20)が形成される。圧縮室(S20)は、流体を圧縮するための空間である。圧縮室(S20)は、吸入管(11)から吸入ポートを通じて吸入された流体を圧縮し、圧縮された流体を吐出口(34)を通じて吐出するように構成される。
【0044】
−実施形態の効果−
本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、筒状のケーシング(10)と、上記ケーシング(10)に収容され、固定スクロール(30)、可動スクロール(40)、およびハウジング(21)を有する圧縮機構(20)と、上記可動スクロール(40)を回転駆動するための駆動軸(60)とを備え、上記ハウジング(21)は、上記駆動軸(60)を回転可能に支持する軸受部(22)と、上記軸受部(22)に連続して径方向外側に延びる本体部(23)と、上記本体部(23)の径方向外側に設けられ、上記ケーシング(10)に圧接する圧接部(24)と、軸方向における上記本体部(23)の上記固定スクロール(30)側の面から該固定スクロール(30)に向けて延びる支持部(25)とを有し、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面は、該固定スクロール(30)が締結される締結面(25a)であり、上記本体部(23)および上記支持部(25)の外周面と上記ケーシング(10)の内周面との間に、隙間(G1)が形成されており、上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)は、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)以上である。したがって、ハウジング(21)は、圧接部(24)によりケーシング(10)に固定される。支持部(25)の固定スクロール(30)側の端面は、固定スクロール(30)が固定される締結面(25a)である。圧接部(24)と支持部(25)とは、本体部(23)を介して繋がっている。圧接部(24)には、ケーシング(10)から圧力が径方向に作用する。一方、支持部(25)には、支持部(25)とケーシング(10)との間に隙間(G1)があるため、ケーシング(10)から直接には圧力が作用しない。しかし、支持部(25)は圧接部(24)と繋がっているため、ハウジング(21)のケーシング(10)に対する固定前と固定後とで、支持部(25)の位置が圧接部(24)に作用する圧力によって変動し得る。そのような位置変動が大きいと、締結面(25a)と固定スクロール(30)との間のシール性が低下してしまう。これに対し、本実施形態では、上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)が支持部(25)の内周面の軸方向長さ(L2)以上である。換言すると、本体部(23)の固定スクロール(30)側の面(この例では、上面)と固定スクロール(30)との間の軸方向距離は、圧接部(24)の固定スクロール(30)側の端部(この例では、上端部)と固定スクロール(30)との間の軸方向距離以下である。このため、ケーシング(10)から圧接部(24)に作用する径方向の圧力は、径方向に延びる本体部(23)によってしっかりと受けられる。支持部(25)の位置変動が抑制され、締結面(25a)と固定スクロール(30)との間のシール性が高くなる。それにより、スクロール圧縮機(1)の効率を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、上記隙間(G1)の軸方向長さ(L1)が、上記支持部(25)の上記固定スクロール(30)側の端面から上記本体部(23)の該固定スクロール(30)側の面までの軸方向長さ(L2)よりも長い。したがって、支持部(25)の位置変動がより一層抑制され、締結面(25a)と固定スクロール(30)との間のシール性がより高くなる。それにより、スクロール圧縮機(1)の効率をより一層向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、上記本体部(23)の径方向厚みが、支持部(25)の径方向厚みよりも分厚い。このため、ケーシング(10)から圧接部(24)に作用する径方向の圧力は、径方向厚みが大きい本体部(23)によってしっかりと受けられる。
【0047】
また、本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、上記ハウジング(21)が、上記ケーシング(10)に溶接される溶接部(26)を有し、上記圧接部(24)の少なくとも一部と、上記溶接部(26)の少なくとも一部とが、上記ケーシング(10)の周方向に並んで配置されている。したがって、圧接部(24)と溶接部(26)とがケーシング(10)の軸方向に並んで配置される場合に比べて、ハウジング(21)を当該軸方向において小型化することができ、ひいてはスクロール圧縮機(1)を小型化することができる。
【0048】
また、本実施形態のスクロール圧縮機(1)は、上記溶接部(26)が、上記隙間(G1)を介して上記ケーシング(10)の内部空間に連通している。したがって、ハウジング(21)をケーシング(10)に溶接する際に、溶接ガスが隙間(G1)を介してケーシング(10)の内部空間に逃げ、よって溶接不良が生じるのを抑止することができる。
【0049】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0050】
例えば、第1隙間(G1)の軸方向長さ(L1)と、支持部(25)の内周面の軸方向長さ(L2)とが互いに等しくてもよい。
【0051】
また、例えば、溶接部(26)の数および配置は、上記実施形態のものに限られず、任意に設定可能である。
【0052】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本開示は、スクロール圧縮機およびそれを備えた冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 スクロール圧縮機
10 ケーシング
20 圧縮機構
21 ハウジング
22 軸受部
23 本体部
24 圧接部
25 支持部
25a 締結面
26 溶接部
30 固定スクロール
40 可動スクロール
60 駆動軸
100 冷凍装置
G1 第1隙間(隙間)
L1,L2 軸方向長さ
S1 第1空間(内部空間)
図1
図2
図3
図4
図5