特許第6863430号(P6863430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6863430-多層容器の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863430
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】多層容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20210412BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20210412BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 38/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B29C49/22
   B29C49/06
   B65D1/00 111
   B32B1/02
   B32B27/36
   B32B27/34
   B32B38/00
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-184863(P2019-184863)
(22)【出願日】2019年10月8日
(65)【公開番号】特開2021-59363(P2021-59363A)
(43)【公開日】2021年4月15日
【審査請求日】2020年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山中 政貴
(72)【発明者】
【氏名】河野 憲治
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/198855(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/086331(WO,A1)
【文献】 特開2016−198911(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0154668(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/029571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/22
B29C 49/06
B65D 1/00
B32B 1/02
B32B 27/34
B32B 27/36
B32B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を主成分とする層とポリアミド樹脂を主成分とする層とを有するプリフォームを二軸延伸ブロー成形することを含み、
前記ポリアミド樹脂の、前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの温度、周波数1Hzにおける動的粘弾性測定に従った貯蔵弾性率G’が1MPa以上100MPa未満であり、
前記二軸延伸ブロー成形直前のプリフォームにおける前記ポリアミド樹脂を主成分とする層の水分率が0.5%以下であり、
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80〜97モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、20〜3モル%が芳香族ジカルボン酸に由来する(ただし、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計が100モル%を超えることはない)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む、多層容器の製造方法。
【請求項2】
前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの加熱温度が、前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度以上115℃以下である、請求項1に記載の多層容器の製造方法。
【請求項3】
前記貯蔵弾性率G’が5〜30MPaである、請求項1または2に記載の多層容器の製造方法。
【請求項4】
前記貯蔵弾性率G’が15〜30MPaである、請求項1または2に記載の多層容器の製造方法。
【請求項5】
前記水分率が0.1〜0.45%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項6】
前記水分率が0.1〜0.34%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂が、ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、ジオール由来の構成単位の70モル%以上がエチレングリコールに由来する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂の少なくとも1種が非晶性樹脂である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項9】
前記ポリアミド樹脂が、さらに、非晶性ポリアミド樹脂(前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)を含み、
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と前記非晶性ポリアミド樹脂(前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)の比率が、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂60〜95質量部に対し、非晶性ポリアミド樹脂40〜5質量部である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項10】
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂において、前記炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記芳香族ジカルボン酸がイソフタル酸である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記プリフォームを製造することを含み、前記製造したプリフォームの水分量を調整することを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【請求項12】
前記製造したプリフォームを、防湿した状態で保存することによって、水分量を調整する、請求項11に記載の多層容器の製造方法。
【請求項13】
前記プリフォームが、さらに、第二のポリエステル樹脂を主成分とする層を有し、
前記ポリエステル樹脂を主成分とする層と、前記ポリアミド樹脂を主成分とする層と、前記第二のポリエステル樹脂を主成分とする層とが、前記順に積層している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の多層容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外層と内層を構成する樹脂として、ポリエステル樹脂を用い、前記外層と内層の間に、ポリアミド樹脂から形成されるポリアミド樹脂層(バリア層)を有する多層体や多層容器が検討されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−198911号公報
【特許文献2】特開2007−210209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討したところ、ポリエステル樹脂から形成される層と、ポリアミド樹脂から形成されるポリアミド樹脂層を有する多層容器では、層間剥離が生じてしまう場合があることが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリエステル樹脂を主成分とする層とポリアミド樹脂を主成分とする層とを有する多層容器の製造方法であって、層間剥離が起きにくい多層容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、多層容器を製造するに際し、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することとし、前記二軸延伸ブロー成形時のポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’を特定の範囲とし、二軸延伸ブロー成形直前のプリフォームのポリアミド樹脂層の水分率を調整し、かつ、所定のポリアミド樹脂を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリエステル樹脂を主成分とする層とポリアミド樹脂を主成分とする層とを有するプリフォームを二軸延伸ブロー成形することを含み、前記ポリアミド樹脂の、前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの温度、周波数1Hzにおける動的粘弾性測定に従った貯蔵弾性率G’が1MPa以上100MPa未満であり、前記二軸延伸ブロー成形直前のプリフォームにおける前記ポリアミド樹脂を主成分とする層の水分率が0.5%以下であり、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80〜97モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、20〜3モル%が芳香族ジカルボン酸に由来する(ただし、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計が100モル%を超えることはない)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む、多層容器の製造方法。
<2>前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの加熱温度が、前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度以上115℃以下である、<1>に記載の多層容器の製造方法。
<3>前記貯蔵弾性率G’が5〜30MPaである、<1>または<2>に記載の多層容器の製造方法。
<4>前記貯蔵弾性率G’が15〜30MPaである、<1>または<2>に記載の多層容器の製造方法。
<5>前記水分率が0.1〜0.45%である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<6>前記水分率が0.1〜0.34%である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<7>前記ポリエステル樹脂が、ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、ジオール由来の構成単位の70モル%以上がエチレングリコールに由来する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<8>前記ポリアミド樹脂の少なくとも1種が非晶性樹脂である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<9>前記ポリアミド樹脂が、さらに、非晶性ポリアミド樹脂(前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)を含み、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と前記非晶性ポリアミド樹脂(前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)の比率が、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂60〜95質量部に対し、非晶性ポリアミド樹脂40〜5質量部である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<10>前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂において、前記炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記芳香族ジカルボン酸がイソフタル酸である、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<11>さらに、前記プリフォームを製造することを含み、前記製造したプリフォームの水分量を調整することを含む、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
<12>前記製造したプリフォームを、防湿した状態で保存することによって、水分量を調整する、<11>に記載の多層容器の製造方法。
<13>前記プリフォームが、さらに、第二のポリエステル樹脂を主成分とする層を有し、前記ポリエステル樹脂を主成分とする層と、前記ポリアミド樹脂を主成分とする層と、記第二のポリエステル樹脂を主成分とする層とが、前記順に積層している、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
ポリエステル樹脂を主成分とする層とポリアミド樹脂を主成分とする層とを有する多層容器の製造方法であって、層間剥離が起きにくい多層容器の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の多層容器の製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0009】
本発明における多層容器の製造方法は、ポリエステル樹脂を主成分とする層(以下、「ポリエステル樹脂層」ということがある)と、ポリアミド樹脂を主成分とする層(以下、「ポリアミド樹脂層」ということがある)とを有するプリフォームを二軸延伸ブロー成形することを含み、前記ポリアミド樹脂の、前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの温度、周波数1Hzにおける動的粘弾性測定に従った貯蔵弾性率G’が1MPa以上100MPa未満であり、前記二軸延伸ブロー成形直前のプリフォームにおける前記ポリアミド樹脂を主成分とする層の水分率が0.5%以下であり、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80〜97モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、20〜3モル%が芳香族ジカルボン酸に由来する(ただし、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計が100モル%を超えることはない)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むことを特徴とする。
貯蔵弾性率G’を上記下限値以上とすることにより、二軸延伸ブロー成形時に生じる残留応力を大きくすることができる。これにより、得られる多層容器の外側に対する衝撃・荷重などの応力に対する耐性が高くなり、ポリアミド樹脂層とポリエステル樹脂層の間の層間剥離を抑制できる。また、貯蔵弾性率G’を上記上限値以下とすることにより、応力がかかりすぎ、ポリアミド層の収縮により層間剥離することを抑制できる。
さらに、本発明では、上記水分率とすることにより、二軸延伸ブロー時のポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’を低下させずに成形することができ、より効果的に層間剥離を抑制できたと推測される。
ここで、二軸延伸ブロー成形直前とは、射出成形機により作製し、必要により、保管していたプリフォームを、二軸延伸ブロー成形を行うために二軸延伸ブロー成形機にセットする段階をいう。また、二軸延伸ブロー成形時とは、プリフォームを所定温度まで加熱し、金型内にセットされ、二軸延伸ブローされる段階をいう。
【0010】
前記ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂は、二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの温度において、周波数1Hzにおける動的粘弾性測定に従った貯蔵弾性率G’が1MPa以上100MPa未満である。前記貯蔵弾性率G’の下限値は、5MPa以上であることが好ましく、8MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることがさらに好ましく、15MPa以上であることが一層好ましい。また、前記貯蔵弾性率G’の上限値は、70MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、30MPaであることがさらに好ましく、25MPa以下であってもよい。
ポリアミド樹脂層に2種以上のポリアミド樹脂が含まれる場合の貯蔵弾性率G’は、混合した状態で作製した試料を用いて測定したときの測定値とする。
貯蔵弾性率G’は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0011】
上記二軸延伸ブロー成形直前のプリフォームの前記ポリアミド樹脂を主成分とする層の水分率は、0.5%以下である。前記水分率の上限値は、0.45%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましく、0.34%以下であることがさらに好ましく、0.31%以下であることが一層好ましい。前記水分率の下限値は、0が理想であるが、0.1%以上、0.2%以上であっても十分実用的価値がある。
プリフォームが2以上のポリアミド樹脂を主成分とする層を有する場合、少なくとも1つの層が上記水分率を満たしていればよく、すべてのポリアミド樹脂を主成分とする層が上記水分率を満たしていることが好ましい。
プリフォームの前記ポリアミド樹脂を主成分とする層の水分率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0012】
以下、本発明における多層容器の製造方法の実施形態の一例を図1に従って説明する。しかしながら、本発明における多層容器の製造方法が、図1に記載の構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明における多層容器は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって製造する。本発明における多層容器は、通常、コールドパリソン成形法によって成形される。
コールドパリソン(2ステージ成形)成形は、射出成形後のプリフォームを室温まで冷やして、保管されたのちに、別の装置で再加熱し、ブロー成形に供給される成形方法である。
図1では、まず、プリフォームが製造され、所望の水分量に調製される(図1(1))。プリフォームは、好ましくは、二軸延伸ブロー成形前の保管するタイミングで、あるいは、プリフォーム成形装置からブロー成形装置に移す間に、その水分率を上記所定の範囲となるように調整することが好ましい。すなわち、本発明における多層容器の製造方法は、前記プリフォームを製造することを含み、前記製造したプリフォームの水分量を調整することを含むことが好ましい。具体的には、前記製造したプリフォームを、防湿した状態で保存することによって、水分量を調整することが好ましい。具体的には、プリフォームを防湿包装して保存する、プリフォームを乾燥室に保存する、あるいは、プリフォームを乾燥させる等の手段を採用してもよい。また、原料樹脂の水分量を調整してもよい。
【0013】
次いで、プリフォーム1が加熱される(図1(2))。加熱は、赤外線ヒータ2等で行われる。
本発明では、二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの加熱温度が、ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)以上115℃以下であることが好ましい。上記範囲とすることにより、得られる多層容器の透明性がより向上し、また、層間剥離性もより向上する傾向にある。
プリフォームの加熱温度は、Tg+2℃以上であることが好ましく、Tg+5℃以上であることがより好ましい。より具体的には、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、99℃以上がさらに好ましく、100℃以上、102℃以上であってもよい。また、プリフォームの加熱温度の上限は、Tg+25℃以下であることが好ましく、Tg+20℃以下であることがより好ましい。より具体的には、112℃以下であることがより好ましく、110℃以下であってもよく、107℃以下であってもよい。
【0014】
次いで、加熱されたプリフォームは、二軸延伸ブロー成形がなされる。すなわち、金型3に設置され(図1の(3))、延伸ロッド4によって延伸されながら、二軸延伸ブロー成形される(図1の(4)および(5))。延伸は、例えば、プリフォームの表面を加熱した後にコアロッドインサートで押すといった機械的手段により軸方向に延伸し、次いで、通常2〜4MPaの高圧空気をブローして横方向に延伸させブロー成形する方法がある。また、容器の耐熱性を向上させるために、結晶化度を高めてもよい。例えば、多層プリフォームの表面を加熱した後にガラス転移点以上の温度の金型内でブロー成形する方法(シングルブロー成形)がある。さらに、プリフォームを最終形状より大きく二軸延伸ブロー成形する一次ブロー成形工程と、この一次ブロー成形品を加熱して熱収縮させて二次中間成形品に成形する工程と、最後にこの二次中間成形品を最終容器形状にブロー成形する二次ブロー成形工程とからなるいわゆるダブルブロー成形であってもよい。ブロー成形時の温度は、90〜120℃であることが好ましく、95〜115℃であることがより好ましい。また、ポリアミド樹脂のTgとの関係では、Tg以上〜Tg+20℃以下であることが好ましい。ブロー成形時の温度とは、ブロー成形機のプリフォーム加熱ゾーンを通過し、加熱が完了した段階の温度をいう。
ブロー成形された後、金型3が外され、多層容器5が得られる(図1の(6))。
【0015】
その他、本発明における多層容器の製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2016−198912号公報の段落0070〜0074、特開2016−169027号公報の段落0085〜0119および特開昭60−232952号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0016】
次に、本発明の製造方法で用いるプリフォームについて説明する。本発明で用いるプリフォームは、上述のとおり、ポリエステル樹脂を主成分とする層(ポリエステル樹脂層)とポリアミド樹脂を主成分とする層(ポリアミド樹脂層)とを有する。プリフォームは、さらに、第二のポリエステル樹脂を主成分とする層(第二のポリエステル樹脂層)を有し、ポリエステル樹脂層と、ポリアミド樹脂層と、第二のポリエステル樹脂層とが、前記順に積層していてもよい。ポリエステル樹脂層と第二のポリエステル樹脂層は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0017】
まず、ポリエステル樹脂を主成分とする層(ポリエステル樹脂層)について述べる。
ポリエステル樹脂層は、ポリエステル樹脂を主成分とする層である。ここで主成分とは、ポリエステル樹脂がポリエステル樹脂層に含まれる成分の内、含有量が最も多い成分であることをいい、80質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上がポリエステル樹脂であることがより好ましく、95質量%以上がポリエステル樹脂であることがさらに好ましく、98質量%以上がポリエステル樹脂であることが一層好ましい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.50〜0.90dL/gであることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂を2種以上含む場合のポリエステル樹脂の各種物性値については、特に述べない限り、混合物の物性値とする。この場合の混合物とは、溶融混練した後の混合物を意味する。
【0018】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の第一の実施形態は、融点を有するポリエステル樹脂である。
ポリエステル樹脂の第一の実施形態におけるポリエステル樹脂の融点は、100〜300℃であることが好ましく、200〜300℃であることがより好ましく、220〜295℃であることがさらに好ましい。融点は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。以下、融点について、同様である。
第一の実施形態のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が、90℃未満であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、前記ガラス転移温度の下限値は60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。このようなポリエステル樹脂を用いることにより、成形加工性により優れる傾向にある。ガラス転移温度は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。以下で説明するガラス転移温度についても同様である。
このようなポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、ジオール由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂である。ここで、第一の実施形態におけるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位とから構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位以外の構成単位や末端基等の他の部位を含みうる。本発明で用いるポリエステル樹脂は、通常、95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位で構成される。以下、他のポリエステル樹脂についても同様である。
第一の実施形態で用いうるポリエステル樹脂としては、特開2016−169027号公報の段落0064〜0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0019】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂の第二の実施形態は、非晶性ポリエステル樹脂である。非晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、透明性により優れた多層容器が得られる。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。前記ガラス転移温度の上限値は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。このようなポリエステル樹脂を用いることにより、より耐熱性に優れた多層容器が得られる。
非晶性ポリエステル樹脂の一例としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、前記ジオール由来の構成単位の5〜60モル%(好ましくは15〜60モル%)がスピログリコールに由来し、95〜40モル%(好ましくは85〜40モル%)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の他の一例としては、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジオール由来の構成単位とから構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上(好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上)がテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来し、前記ジオール由来の構成単位の90〜10モル%(好ましくは85〜40モル%)が1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来し、10〜90モル%(好ましくは15〜60モル%)がエチレングリコールに由来するポリエステル樹脂が挙げられる。
第二の実施形態で用いるポリエステル樹脂としては、特開2006−111718号公報の段落0010〜0021に記載のポリエステル樹脂、特開2017−105873号公報に記載のポリエステル樹脂、国際公開第2013/168804号に記載のポリエステル樹脂を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂層には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ポリエステル樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤を添加することもできる。その他の成分としては、特開2006−111718号公報の段落0026の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0021】
次に、ポリアミド樹脂を主成分とする層(ポリアミド樹脂層)について述べる。
ポリアミド樹脂層は、ポリアミド樹脂を主成分とする層である。ここで主成分とは、ポリアミド樹脂がポリアミド樹脂層に含まれる成分の内、含有量が最も多い成分であることをいい、80質量%以上がポリアミド樹脂であることが好ましく、90質量%以上がポリアミド樹脂であることがより好ましく、95質量%以上がポリアミド樹脂であることがさらに好ましく、98質量%以上がポリアミド樹脂であることが一層好ましい。
また、ポリアミド樹脂層は、ポリエステル樹脂(さらにはポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂)を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリエステル樹脂(さらにはポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂)の含有量がポリアミド樹脂層の2質量%以下であることをいい、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。
ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、ブロー成形時の温度範囲における二軸延伸ブロー時において、適切な貯蔵弾性率G’とすることができ、層間剥離をより効果的に抑制できる。また、ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、115℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、105℃以下であることがさらに好ましく、101℃以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、ポリエステル樹脂との多層形態において成形性に優れるという効果がより効果的に発揮される。
ポリアミド樹脂層が2種以上のポリアミド樹脂が2種以上である場合、ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、混合物の状態で測定した際に観測されるガラス転移温度とする。ただし、ガラス転移点が2つ以上観測される場合は、これらのうち最も高いガラス転移温度を、当該樹脂組成におけるガラス転移温度とする。この場合の混合物とは、溶融混練した後の混合物を意味する。
【0023】
本発明では、ポリアミド樹脂層は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の80〜97モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、20〜3モル%が芳香族ジカルボン酸に由来する(ただし、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計が100モル%を超えることはない)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する。
【0024】
メタキシリレンジアミン以外の原料ジアミン成分としては、パラキシリレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0025】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分は、その80〜97モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、20〜3モル%が芳香族ジカルボン酸に由来する。ただし、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計が100モル%を超えることはない。
炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できる。炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸が好ましい。
【0026】
炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸以外の原料ジカルボン酸成分としては、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等が例示され、これらの混合物であってもよい。
炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が例示される。
脂環式ジカルボン酸としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が例示される。
【0027】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、上述のとおり、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位等を含んでいてもよいことは言うまでもない。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましく、末端基を除く全構成単位の99%以上を占めることがさらに好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂は、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のみからなっていてもよいし、他のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。他のポリアミド樹脂の詳細については、後述する。
【0029】
上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、結晶性ポリアミド樹脂であっても、非晶性ポリアミド樹脂であってもよいが、通常、結晶性ポリアミド樹脂である。本発明では、ポリアミド樹脂層に結晶性ポリアミド樹脂を用いると、二軸延伸ブローにより配向結晶化が起こり、バリア性が向上するほか、ボトルのクリープを抑制することができる。
ここで、非晶性ポリアミド樹脂とは、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g以下のポリアミド樹脂をいう。結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0030】
一方、本発明ではポリアミド樹脂層に2種類以上のポリアミドが含まれる場合、含まれるポリアミド樹脂の少なくとも1種が非晶性樹脂であることが好ましい。ポリアミド樹脂層に非晶性ポリアミド樹脂を用いると、貯蔵弾性率G’が高くなる傾向にあり、層間剥離をより効果的に抑制できる。
本発明のポリアミド樹脂の一実施形態として、結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の混合物が挙げられる。混合物を用いると、上記結晶性ポリアミド樹脂の利点と非晶性ポリアミド樹脂の利点を併せ持つポリアミド樹脂とすることができる。
【0031】
結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の混合物を用いる場合、その混合比は、結晶性ポリアミド樹脂60〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂40〜5質量部であることが好ましく、結晶性ポリアミド樹脂70〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂30〜5質量部であることがより好ましく、結晶性ポリアミド樹脂80〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂20〜5質量部であることがさらに好ましく、結晶性ポリアミド樹脂85〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂15〜5質量部であることが一層好ましい。
【0032】
結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の混合物を用いる場合、結晶性キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の混合物であることが好ましい。
特に、ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂が、さらに、非晶性ポリアミド樹脂(前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)を含み、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)の比率が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂60〜95質量部に対し、非晶性ポリアミド樹脂40〜5質量部であることが好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)の混合比の好ましい範囲は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂70〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)30〜5質量部であることがより好ましく、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂80〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)20〜5質量部であることがさらに好ましく、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂85〜95質量部と非晶性ポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に該当するものを除く)15〜5質量部であることが一層好ましい。
【0033】
ここで、非晶性ポリアミド樹脂の好ましい実施形態について述べる。
非晶性ポリアミド樹脂の実施形態の一例は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜65モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)ポリアミド樹脂(以下、「第一の非晶性ポリアミド樹脂」と言うことがある)である。このような第一の非晶性ポリアミド樹脂を配合することにより、透明性および酸素バリア性をより向上させることができる。
【0034】
第一の非晶性ポリアミド樹脂におけるジアミン由来の構成単位の詳細は、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種)に由来する。キシリレンジアミンは、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、キシリレンジアミンの20モル%以上がメタキシリレンジアミンであることがより好ましく、キシリレンジアミンの50モル%以上がメタキシリレンジアミンであることがさらに好ましく、キシリレンジアミンの70モル%以上がメタキシリレンジアミンであることが一層好ましく、キシリレンジアミンの90モル%以上がメタキシリレンジアミンであることがより一層好ましい。
キシリレンジアミン以外の原料ジアミン成分としては、上述したキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミンのうち、キシリレンジアミン以外の原料ジアミン成分が挙げられる。
【0035】
第一の非晶性ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸由来の構成単位は、上述の通り、30〜65モル%が炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)に由来し、70〜35モル%がイソフタル酸に由来する。
第一の非晶性ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、35モル%以上であり、40モル%以上が好ましく、41モル%以上がより好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、70モル%以下であり、67モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、62モル%以下がさらに好ましく、60モル%以下が一層好ましく、58モル%以下であってもよい。このような範囲とすることにより、得られる多層容器の酸素バリア性がより向上する傾向にある。
【0036】
第一の非晶性ポリアミド樹脂におけるジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)の割合の下限値は、30モル%以上であり、33モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましく、38モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上が一層好ましく、42モル%以上であってもよい。前記炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の割合の上限値は、65モル%以下であり、60モル%以下が好ましく、59モル%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明における多層容器の酸素バリア性がより向上する傾向にある。
【0037】
第一の非晶性ポリアミド樹脂における、ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸と炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の合計の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。このような割合とすることにより、本発明における多層容器の透明性がより向上する傾向にある。
【0038】
第一の非晶性ポリアミド樹脂における、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸およびイソフタル酸以外のジカルボン酸成分については、上述のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分で述べたもののうち、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸およびイソフタル酸以外の成分が例示される。
第一の非晶性ポリアミド樹脂はテレフタル酸由来の構成単位を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、第一の非晶性ポリアミド樹脂に含まれるイソフタル酸のモル量の5モル%以下であり、3モル%以下が好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。このような構成とすることにより、適度な成形加工性が維持され、ガスバリア性が湿度によってより変化しにくくなる。
【0039】
非晶性ポリアミド樹脂の実施形態の他の一例は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がヘキサメチレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の55モル%以上がイソフタル酸に由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の15モル%以上がテレフタル酸に由来する(ただし、イソフタル酸とテレフタル酸の合計が100モル%を超えることはない)ポリアミド樹脂(以下、「第二の非晶性ポリアミド樹脂」と言うことがある)である。第二の非晶性ポリアミド樹脂を配合することにより、得られる多層容器の耐層間剥離性をより向上させることができる。
【0040】
第二の非晶性ポリアミド樹脂においては、ジアミン由来の構成単位の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上がヘキサメチレンジアミンに由来する。第二の非晶性ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるヘキサメチレンジアミン以外のジアミンとしては、上述のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の第一の実施形態の原料ジアミン成分で述べたもののうちヘキサメチレンジアミン以外の成分が例示される。
第二の非晶性ポリアミド樹脂においては、ジカルボン酸由来の構成単位の55モル%以上がイソフタル酸に由来し、その割合は60モル%以上であることが好ましい。イソフタル酸由来の構成単位は、また、85モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、75モル%以下であることがさらに好ましい。
また、第二の非晶性ポリアミド樹脂においては、ジカルボン酸由来の構成単位の15モル%以上がテレフタル酸に由来し、その割合は20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがさらに好ましい。テレフタル酸由来の構成単位は、また、より好ましくは45モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下である。第二の非晶性ポリアミド樹脂において、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上がイソフタル酸とテレフタル酸で構成されていることが好ましい。第二の非晶性ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましいイソフタル酸およびテレフタル酸以外のジカルボン酸としては、上述のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の第一の実施形態の原料ジカルボン酸成分で述べたもののうち、イソフタル酸およびテレフタル酸のジカルボン酸以外のものが例示される。
【0041】
また、本発明で用いるポリアミド樹脂層には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の他のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。具板的には、ポリアミド6、11、12、46、66、610、612、6I、6/66、6/6T、66/6T、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド、詳細を後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂等が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。また、本発明で用いることができるポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落番号0011〜0013の記載、国際公開第2012/014772号に記載のポリアミド樹脂、国際公開第2016/208272号に記載のポリアミド樹脂、国際公開第2017/134946号に記載のポリアミド樹脂、国際公開第2017/090556号に記載のポリアミド樹脂、国際公開第2018/074234号に記載のポリアミド樹脂、国際公開第2018/155171号に記載のポリアミド樹脂を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明の多層容器がバリア性を求める場合、ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂はバリア性を有するポリアミド樹脂であることが好ましい。例えば、酸素透過率の値が低いポリアミド樹脂が好ましい。具体的には、相対湿度が60%、温度23℃におけるASTM D3985に従って測定した酸素透過係数が5.0cc・mm/(m2・day・atm)以下(より好ましくは1.0cc・mm/(m2・day・atm)以下)であるポリアミド樹脂が好ましい。
【0043】
本発明で用いるポリアミド樹脂の数平均分子量は、5000〜200000であることが好ましく、10000〜50000であることがより好ましい。数平均分子量は、国際公開第2019/026499号の段落0057の記載に従って測定される。
【0044】
また、本発明におけるポリアミド樹脂層には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物、高級脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム)等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤;展着剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の添加剤;酸化反応促進剤、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合物等の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
次に、プリフォームおよびプリフォームから得られる多層容器の層構成について述べる。
本発明で用いるプリフォームおよび多層容器は、ポリエステル樹脂を主成分とする層(ポリエステル樹脂層)とポリアミド樹脂を主成分とする層(ポリアミド樹脂層)をそれぞれ、少なくとも、1層ずつ有する多層容器である。ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層は、通常、接している。
多層容器を構成する層の数は、少なくとも3層からなることが好ましい。本発明では、少なくとも2層のポリエステル樹脂層と、少なくとも、1層のポリアミド樹脂層を含む形態が例示される。この場合、ポリエステル樹脂層、ポリアミド樹脂層、ポリエステル樹脂層の順に積層していることが好ましい。
多層容器を構成する層の数は、より具体的には、3〜10層がより好ましく、3〜5層がさらに好ましい。
多層容器における、ポリエステル樹脂層の数は、1〜5層が好ましく、2層〜4層がより好ましい。多層容器における、ポリアミド樹脂層の数は、1層〜3層が好ましく、1層または2層がより好ましい。
例えば、多層容器が、1層のポリエステル樹脂層および1層のポリアミド樹脂層からなるポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層構成(ポリエステル樹脂層が内層である)またはポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層構成(ポリアミド樹脂層が内層である)であってもよく、2層のポリエステル樹脂層および1層のポリアミド樹脂層からなるポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層の3層構成であってもよく、ポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層の5層構成であってもよい。
【0046】
より優れた耐層間剥離性の観点から、ポリアミド樹脂層は中心配置もしくは内側配置が好ましく、内側配置がより好ましい。「ポリアミド樹脂層が中心配置である」とは、多層容器の厚さ方向の断面において、ポリアミド樹脂層が厚さ方向の中央付近に存在することをいう。「ポリアミド樹脂層が内側配置である」とは、多層容器の厚さ方向の断面において、ポリアミド樹脂層が厚さ方向の内表面側に近い位置に存在することをいう。本発明のポリアミド樹脂層の位置として、例えば、特開平02−229023号公報における中間層がポリアミド樹脂層である態様が例示され、同公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明における多層容器は、前記ポリエステル樹脂層およびポリアミド樹脂層に加えて、所望する性能等に応じて任意の層を含んでいてもよい。
【0048】
[多層容器]
本発明における多層容器の形状は特に限定されず、例えば、ボトル、カップ等の成形容器が挙げられ、ボトルが好ましい。
また、ボトルの全ての部分に、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とが含まれている必要はない。例えば、ボトルの胴部にポリアミド樹脂層が含まれており、開口部(口栓部)付近にはポリアミド樹脂層が含まれていない態様などが例示される。但し、ポリアミド樹脂層がボトルの開口部付近まで存在している方がバリア性能はさらに高くなるため好ましい。
本発明の多層容器(好ましくはボトル)は、酸素透過率が0.02cc/(bottle・day・0.21atm)以下であることが好ましい。下限値については、特に定めるものではないが、0.0001cc/(bottle・day・0.21atm)以上が実際的である。酸素透過率は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0049】
本発明における多層容器の容量は、内容物の保存性から0.1〜2.0Lであることが好ましく、0.2〜1.5Lであることがより好ましく、0.3〜1.0Lであることがさらに好ましい。
本発明における多層容器は、内層(例えば、ポリエステル樹脂層)の厚みが、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、外層(例えば、ポリエステル樹脂層)の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、ポリアミド樹脂層の厚みは、好ましく0.005mm以上、より好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.02mm以上であり、また、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.15mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。ポリアミド樹脂層を二層以上有している場合、各ポリアミド樹脂層の厚みの合計が上記の厚みを有していることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂層を二層以上有しており、ポリアミド樹脂層とポリアミド樹脂層の間に中間層を有している場合、前記中間層の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
【0050】
本発明における多層容器(特に、ボトル)においてポリアミド樹脂層の質量は、多層容器の総質量に対して1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。ポリアミド樹脂層の質量を上記範囲とすることにより、ガスバリア性が良好な多層容器が得られる。
【0051】
本発明における多層容器に保存される対象は、特に制限されるものではなく、食品、化粧品、医薬品、トイレタリー、機械・電気・電子部品、オイル、樹脂類などが挙げられるが、特に食品を保存するための容器として好適に使用できる。
食品としては、水産加工品、畜産加工品、飯類、液体食品が挙げられる。特に、酸素の影響を受けやすい食品の保存に適している。これらの詳細は、特開2011−037199号公報の段落0032〜0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。食品の具体例を示すならば、例えば、野菜汁、果汁、お茶類、コーヒー・コーヒー飲料類、乳・乳飲料類、ミネラルウォーター、イオン性飲料、酒類、乳酸菌飲料、豆乳等の飲料;豆腐類、卵豆腐類、ゼリー類、プリン、水羊羹、ムース、ヨーグルト類、杏仁豆腐などのゲル状食品;ソース、醤油、ケチャップ、麺つゆ、たれ、食酢、味醂、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、味噌、漬物の素、すり下ろし香辛料等の調味料;サラミ、ハム、ソーセージ、焼鳥、ミートボール、ハンバーグ、焼豚、ビーフジャーキー等の食肉加工品;蒲鉾、貝水煮、煮魚、竹輪等の水産加工品;粥、炊飯米、五目飯、赤飯等の米加工品;ミートソース、マーボーソース、パスタソース、カレー、シチュー、ハヤシソース等のソース類;チーズ、バター、クリーム、コンデンスミルク等の乳加工品;ゆで卵、温泉卵等の卵加工品;煮野菜・煮豆;揚げ物、蒸し物、炒め物、煮物、焼き物等の惣菜類;漬物;うどん、そば、スパゲッティ等の麺類・パスタ類;果物シラップ漬け等が挙げられる。
保存対象によっては、多層容器を、紫外線や電子線、γ線、X線等を用いて殺菌あるいは滅菌してもよい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0053】
[原材料]
MXD6I(PIA6モル%):
メタキシリレンジアミンとジカルボン酸(アジピン酸94モル%とイソフタル酸6モル%)から合成されたポリアミド樹脂、MXナイロン K7007C、三菱ガス化学社製、数平均分子量:22,000、結晶性樹脂
MXD6I(PIA15モル%):
後述する合成例に従って合成したポリアミド樹脂、結晶性樹脂
MXD6I(PIA50モル%):
後述する合成例に従って合成したポリアミド樹脂、非晶性樹脂
6I/6T:
ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とテレフタル酸から合成されたポリアミド樹脂、G21、EMS社製、数平均分子量:15,000、非晶性樹脂
PA6:
宇部興産社製、UBEナイロン1022B、数平均分子量:22,000
MXD10:
メタキシリレンジアミンとセバシン酸から合成されたポリアミド樹脂、LEXTER 8000、三菱ガス化学社製、数平均分子量:15,000、結晶性樹脂
MXD6:
メタキシリレンジアミンとアジピン酸から合成されたポリアミド樹脂、MXナイロン S6007、三菱ガス化学社製、数平均分子量:22,000、結晶性樹脂
【0054】
<MXD6I(PIA15モル%)の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸10,201g(69.80mol)、イソフタル酸2,047g(12.32mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)1.73g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として30質量ppm)、酢酸ナトリウム1.11gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸カルシウムのモル比は1.33とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約20kgのポリアミド樹脂ペレット(MXD6I(PIA15モル%))を得た。得られたポリアミド樹脂(MXD6I(PIA15モル%))は、90℃、24時間の条件で真空乾燥した。
得られたポリアミド樹脂(MXD6I(PIA15モル%))は、数平均分子量は13,000であった。
【0055】
<MXD6I(PIA50モル%)の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸6,001g(41.06mol)、イソフタル酸6,822g(41.06mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2)7.23g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として100質量ppm)、酢酸ナトリウム7.44gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウムのモル比は1.33とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約20kgのポリアミド樹脂ペレット(MXD6I(PIA50モル%))を得た。得られたポリアミド樹脂(MXD6I(PIA50モル%))は、90℃、24時間の条件で真空乾燥した。
得られたポリアミド樹脂(MXD6I(PIA50モル%))は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,000であった。
【0056】
<ガラス転移温度、融点および結晶融解エンタルピー>
示差走査熱量の測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。示差走査熱量計を用い、樹脂ペレットを砕いて示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)および結晶融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
示差走査熱量計としては、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用いた。
尚、樹脂として2種以上の混合物を用いる場合、溶融混練した後の樹脂の値とする。
【0057】
<貯蔵弾性率G’の測定>
ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’は、以下の方法に従って測定した。
表1に示すポリアミド樹脂層の組成となるように、1種のポリアミド樹脂を用いる場合は、ペレットをそのまま、2種以上のポリアミド樹脂を用いる態様については、ペレットをドライブレンドして、Tダイ付き単軸押出機に供給し、混練した。押出温度260℃にてダイから溶融押出することにより、150mm幅、500μmの厚みのフィルムを得た。得られたフィルムを表1に記載のプリフォーム水分率と同じになるように調湿した後、5mm幅、40mm長の短冊状にカットし、動的粘弾性測定装置により、以下の条件でサンプルを動的粘弾性試験し、表1に示すプリフォームの温度における貯蔵弾性率G’を測定した。ここでのプリフォームの温度とは、二軸延伸ブロー成形時のプリフォームの温度であり、具体的には、ブロー成形機のプリフォーム加熱ゾーンを通過し、加熱が完了した段階で非接触式温度計により測定した際の温度をいう。
測定モード: 引張モード
振幅: 10μm
周波数: 1Hz
昇温速度: 2℃/分
尚、本実施例では、Tダイ付き単軸押出機は、プラスチック工学研究所社製、PTM−30を、動的粘弾性測定装置は、SII社製、EXSTAR DMA6100を用いた。しかしながら、前記押出機および/または装置が、廃番等により入手困難な場合は、同等の性能を有する他の押出機等を用いることができる。
【0058】
PET:テレフタル酸とエチレングリコールから合成された熱可塑性ポリエステル樹脂、三菱ケミカル社製、ユニペットBK2180、融点248℃、ガラス転移温度75℃、固有粘度=0.83dL/g。使用に際しては、除湿乾燥機にて、150℃、8時間乾燥したものを用いた。固有粘度は、ポリエステル樹脂を、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、25℃に保持して、ウベローデ型粘度計を使用して固有粘度を測定した。
【0059】
[実施例1、2、比較例1〜4]
<プリフォームの製造>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機(住友重機械工業製、型式SE−DU130CI)および2個取りの多層ホットランナー金型(Kortec社製)を使用して、以下に示した条件で(Y)/(X)/(Y)からなる3層構造を一部に有するプリフォームを製造した。
具体的には、まず、層(Y)を構成する材料として、熱可塑性ポリエステル樹脂(PET)を射出シリンダーから射出し、層(Y)の射出状態を維持しながら、ポリアミド樹脂層となる層(X)を構成する材料として、表1に示すポリアミド樹脂層の組成のポリアミド樹脂を、別の射出シリンダーから、層(Y)を構成するPETと共に射出し、最後に層(Y)を構成するPETを必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(Y)/(X)/(Y)の3層構造を一部に有するプリフォーム(25g)を得た。プリフォームの形状は、全長92mm、外径22mm、肉厚3.9mmであった。プリフォームは製造直後に防湿包装し、後述する二軸延伸ブローを開始する直前までこの状態のまま保存した。
<<成形条件>>
スキン側(Y)射出シリンダー温度: 285℃
コア側(X)射出シリンダー温度: 265℃
金型内樹脂流路温度 : 290℃
金型冷却水温度: 15℃
サイクルタイム: 33s
【0060】
<水分率の測定>
プリフォームの水分率は、以下の方法に従って測定した。
防湿包装したプリフォームを取り出し、層(X)と層(Y)を分離した後、層(X)についてカールフィッシャー型水分計を用いて、窒素雰囲気下、230℃、30分の条件で測定を行った。
カールフィッシャー型水分計は、三菱ケミカルアナリテック社製、GT−200を用いた。
プリフォームを防湿包装していない場合は、二軸延伸ブローを開始する直前に測定した水分率とする。
【0061】
<多層容器の製造>
上記プリフォームを二軸延伸ブロー成形装置(フロンティア製、型式EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形してペタロイド型ボトル(多層容器)を得た。ボトル(多層容器)の全長は223mm、外径は65mm、内容積は500mL(表面積:0.04m2、胴部平均厚み:0.33mm)であり、底部はペタロイド形状である。胴部にディンプルは設けなかった。二軸延伸ブロー成形条件は以下に示したとおりである。得られたボトル(多層容器)の総質量に対する層(X)の割合は5質量%であった。
プリフォームの温度: 表1に記載した温度(℃)
一次ブロー圧力: 0.9MPa
二次ブロー圧力: 2.5MPa
一次ブロー遅延時間: 0.30sec
一次ブロー時間: 0.30sec
二次ブロー時間: 2.0sec
ブロー排気時間: 0.6sec
金型温度: 30℃
【0062】
<層間剥離性>
得られた多層容器について、層間剥離性を以下の通り評価した。
まず、上記で得られた多層容器を500mLの着色炭酸水(4.2ガスボリューム)で満たし、キャップをした後、23℃で7日間静置した。その後、打撃荷重(2825g)のおもりを備えた振り子により、ボトル側部(底部より123mm上の位置)へ打撃を与えることにより、サイドインパクト試験を実施した。層間剥離した箇所は白濁様になり目視で区別することができるため、多層容器の層間剥離の有無を目視で判定した。なお、一部でも層間剥離した多層容器は層間剥離が起こったものとした。テストした多層容器の数は5本とし、層間剥離が起きたときの衝撃回数を平均した値を基に層間剥離性を評価した。
結果を表1に示す。
【0063】
<酸素透過率(OTR)>
得られた多層容器について、酸素透過率を以下の通り評価した。
具体的には、実施例および比較例で作製した多層容器に、水を100mL充填し、酸素分圧0.21atmの条件下で、多層容器内部湿度100%RH(相対湿度)、外湿度50%RH、温度23℃の条件にて、多層容器内部に1atmの窒素を20mL/分で流通させ、200時間後のクーロメトリックセンサーにて多層容器の内部を流通後の窒素中に含まれる酸素量を検出することで、酸素透過率を測定した。単位は、cc/(bottle・day・0.21atm)で示した。
酸素透過率測定装置は、MOCON社製、商品名「OX−TRAN 2/61」を使用した。
結果を表1に示す。
【0064】
[実施例3、4]
<プリフォームの製造>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機(住友重機械工業製、型式SE−DU130CI)および2個取りの多層ホットランナー金型(Kortec社製)を使用して、以下に示した条件で(Y)/(X)/(Y)からなる3層構造を一部に有するプリフォームを製造した。
具体的には、まず、層(Y)を構成する材料として、熱可塑性ポリエステル樹脂(PET)を射出シリンダーから射出し、層(Y)の射出状態を維持しながら、ポリアミド樹脂層となる層(X)を構成する材料として、表1に示すポリアミド樹脂層の組成となるように、2種以上のポリアミド樹脂ペレットをドライブレンドして、別の射出シリンダーから、層(Y)を構成するPETと共に射出し、最後に層(Y)を構成するPETを必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(Y)/(X)/(Y)の3層構造を一部に有するプリフォーム(25g)を得た。プリフォームの形状は、全長92mm、外径22mm、肉厚3.9mmであった。プリフォームは製造直後に防湿包装し、後述する二軸延伸ブローを開始する直前までこの状態のまま保存した。
<<成形条件>>
スキン側(Y)射出シリンダー温度: 285℃
コア側(X)射出シリンダー温度: 265℃
金型内樹脂流路温度 : 290℃
金型冷却水温度: 15℃
サイクルタイム: 33s
実施例1と同様に、水分率の測定、多層容器の製造、層間剥離性の評価、酸素透過率(OTR)の評価を行った。結果を表1に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
上記結果から明らかなとおり、本発明の製造方法で得られた多層容器は、層間剥離性に優れていた。さらに、酸素透過率の値も低かった(実施例1〜4)。
これに対し、貯蔵弾性率G’が高い場合(比較例1、2)、層間剥離性が劣っていた。また、プリフォームの水分率が高く、貯蔵弾性率G’が低い場合(比較例3)も、層間剥離性が劣っていた。また、ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸として、芳香族ジカルボン酸を含まない場合(比較例1〜4)、貯蔵弾性率G’に関係なく、層間剥離性が劣ってしまった。
【符号の説明】
【0067】
1 プリフォーム
2 ヒータ
3 金型
4 延伸ロッド
5 多層容器
図1