(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異種金属は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と銅、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と鉄、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と亜鉛、アルミニウムもしくはアルミニウム合金とニッケル、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と錫、銅と鉄、銅と亜鉛、銅とニッケル、又は、銅と錫である請求項4又は5記載の防錆塗料。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の防錆塗料は、含フッ素共重合体を含み、上記含フッ素共重合体が特性(a)〜(c)を有することを特徴とする。
特性(a):100μmあたりの水蒸気透過度が25g/m
2・day以下
特性(b):酸素透過係数が2.0E−13cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下
特性(c):吸水率が10質量%以下
【0027】
(サンプル(塗膜、フィルムなど)の調製方法)
上記水蒸気透過度、上記酸素透過係数及び上記吸水率を測定するためのサンプルは次の方法により調製する。
ジメチルアセトアミド(DMAC)又はイソプロピルアルコール(IPA)溶媒に15質量%になるように含フッ素共重合体を溶解させ、ポリプロピレン板上に、10ミルのドクターブレードを用いて製膜後、室温で30分から8時間風乾後、溶媒としてDMACを用いた場合は120℃で、IPAを用いた場合は60℃で、熱風式乾燥機にて12時間乾燥させた後に、ポリプロピレン板より剥離させることでフィルムを作製する。
塗膜評価の場合は、ガラス板もしくはアルミ板上に、同様に製膜、乾燥させて塗板を作製する。なお、上記ポリプロピレン板としては剥離性の高いポリプロピレン板を用いることが好ましい。
(膜厚の測定方法)
水蒸気透過度を100μmあたりの値に換算するため、酸素透過係数を算出するため、および、換算ヘイズ値を算出するためには膜厚の値が必要である。膜厚の測定方法には特に制限はないが、一般的なマイクロメーターや膜厚計を用いて測定することができる。本明細書では場所を変えて5か所測定し、その平均値をフィルムの膜厚とする。
【0028】
(水蒸気透過度の測定方法)
上記水蒸気透過度は、カップ法(JIS Z0208−1976)、条件B(温度40±0.5℃、相対湿度90±2%)に準じて測定する。測定した値をQ(g/m
2・day)、膜厚の値をT(μm)とした時に、100μmあたりの水蒸気透過度Q
Tは下式で計算できる。
Q
T=Q×T/100
【0029】
(酸素透過係数の測定方法)
上記酸素透過係数は、JIS K 7126−1に準じて測定を行う。具体的には、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置を用いて、JIS K 7126−1に準じて測定を行うことができる。JIS K 7126−1に準拠した差圧法にて、差圧1atm、試験温度23±2℃、乾燥条件、検知器はガスクロマトグラフ(熱伝導度検出器)にて測定する。差圧式ガス・蒸気透過率測定装置としては、例えば、GTRテック(株)GTR−30XAD2、ヤナコテクニカルサイエンス(株)G2700T・Fを用いることができる。
【0030】
(吸水率の測定方法)
上記吸水率は、次の方法により測定する。
フィルム片を室温23℃において水中に浸漬させ、数日間重量変化を測定し、吸水量が前日比で飽和したところで、吸水率(R)を下式にて求めた。
R(%)=(飽和吸水重量−初期重量)/初期重量×100
【0031】
上記100μmあたりの水蒸気透過度は、25g/m
2・day以下であり、22g/m
2・day以下が好ましく、20g/m
2・day以下がより好ましく、下限は特に限定されないが、0.1g/m
2・dayであってよい。
【0032】
上記酸素透過係数としては、2.0E−13cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下が好ましく、1.5E−13cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下がより好ましく、下限は特に限定されないが、1.0E−15cc・cm/cm
2・sec・cmHgであってよい。
【0033】
上記吸水率としては、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、下限は特に限定されないが、0.1質量%であってよい。
【0034】
上記含フッ素共重合体は、30μmあたりの換算ヘイズ値が3.0以下であることが好ましい。上記換算ヘイズ値は、2.5以下であることがより好ましい。
上記換算ヘイズ値は、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に準じて測定する。ヘイズメーターとしては、ヘイズメーター(日本電飾社製 HAZE MATER NDH7000SP)を用いることができる。
ヘイズメーターを用いて測定したヘイズ値をH、膜厚の値をT(μm)とした時に、30μmあたりの換算ヘイズ値H
Tは下式で計算できる。
H
T=H×30/T
上記換算ヘイズ値を測定するためのサンプルは、水蒸気透過度、酸素透過係数及び吸水率を測定するためのサンプルと同じ方法により調製する。
【0035】
上記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位(−CH
2−CH(OH)−)を有する。
【0036】
上記含フッ素オレフィン単位とは、含フッ素オレフィンに基づく重合単位を表している。該含フッ素オレフィンは、フッ素原子を有する単量体である。
【0037】
上記含フッ素オレフィンとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン、CH
2=CZ
1(CF
2)
n1Z
2(式中、Z
1はH、F又はCl、Z
2はH、F又はCl、n1は1〜10の整数である。)で示される単量体、CF
2=CF−ORf
1(式中、Rf
1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF
2=CF−OCH
2−Rf
2(式中、Rf
2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素オレフィンであることが好ましい。
【0038】
上記CH
2=CZ
1(CF
2)
n1Z
2で示される単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CHCF
3、CH
2=CFCHF
2、CH
2=CClCF
3等が挙げられる。
【0039】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等が挙げられ、なかでも、PMVE、PEVE又はPPVEがより好ましい。
【0040】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf
2が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF
2=CF−OCH
2−CF
2CF
3がより好ましい。
【0041】
上記含フッ素オレフィンとしては、TFE、CTFE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEが更に好ましい。
【0042】
上記水蒸気透過度、上記酸素透過係数及び上記吸水率は、主に、含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位の含有量を調整することにより、調整できる。上記含フッ素共重合体において、上記含フッ素オレフィン単位が15〜45モル%であり、ビニルアルコール単位が55〜85モル%であることが好ましい。各モノマー単位の含有率としては、上記含フッ素オレフィン単位が20〜40モル%であり、ビニルアルコール単位が60〜80モル%であることがより好ましい。
【0043】
上記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位との交互率が50%以下であることが好ましい。交互率がこのような範囲であると、塗膜の透明性が高い、溶剤溶解性が高いという効果が得られる。より好ましくは45%以下であり、特に好ましくは35%以下である。また、好ましくは1%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上である。交互率が低すぎると耐熱性が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0044】
上記含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位との交互率は、水酸基化前の含フッ素共重合体で測定を実施する。水酸基化前の含フッ素共重合体とは含フッ素オレフィン単位とビニルエステル単位の重合体を表す。上記含フッ素共重合体は含フッ素オレフィン単位とビニルエステル単位の重合体を例えば加水分解することにより合成できる。そもそもビニルアルコール単位に相当するビニルモノマーは化学的に不安定で分解するため、重合に用いる事は難しい。そのため、本発明における含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位との交互率は、水酸基化前の含フッ素共重合体で測定を実施したものを採用する。重アセトン等の上記水酸基化前の含フッ素共重合体が溶解する溶媒を用いて、上記水酸基化前の含フッ素共重合体の
1H−NMR測定を行い、以下の式より3連鎖の交互率として算出できる。
交互率(%)=C/(A+B+C)×100
A:−V−V−V−のように2つのVと結合したVの個数
B:−V−V−T−のようにVとTとに結合したVの個数
C:−T−V−T−のように2つのTに結合したVの個数
(T:含フッ素オレフィン単位、V:ビニルアルコール単位)
A、B、CのV単位の数は、
1H−NMR測定のビニルエステル単位(−CH
2−CH(O(C=O)R)−)(ここでRは炭素数1以上のノルマルアルキル基を示す)の3級炭素に結合する主鎖のHの強度比より算出する。
【0045】
上記含フッ素共重合体は、更に、−CH
2−CH(O(C=O)R)−(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜17の炭化水素基を表す。)で表されるビニルエステルモノマー単位を有するものであってもよい。
【0046】
上記ビニルエステルモノマー単位は、−CH
2−CH(O(C=O)R)−(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜17の炭化水素基を表す。)で表されるモノマー単位であるが、上記式中のRとしては、炭素数1〜11のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。特に好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0047】
上記ビニルエステルモノマー単位としては、中でも、以下のビニルエステルに由来するモノマー単位などが例示される。
ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、イソバレリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、へプチル酸ビニル、カプリル酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ペラルゴン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ペンタデシル酸ビニル、パルチミン酸ビニル、マルガリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、ベオバ−9(昭和シェル石油(株)製)、ベオバ−10(昭和シェル石油(株)製)、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル。
これらの中でも、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルに由来するモノマー単位が好ましい。より好ましくは、酢酸ビニルモノマー単位、プロピオン酸ビニルモノマー単位であり、更に好ましくは、酢酸ビニルモノマー単位である。
【0048】
上記含フッ素共重合体が、含フッ素オレフィン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位を有する場合、ビニルエステルモノマー単位の含有率としては、含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位の合計の含有率に対して、ビニルエステルモノマー単位が1〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
【0049】
上記含フッ素共重合体が、含フッ素オレフィン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位を有する場合、含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位との交互率は、50%以下であることが好ましい。交互率がこのような範囲であると、塗膜の透明性が高い、溶剤溶解性が高いという効果が得られる。より好ましくは45%以下であり、特に好ましくは35%以下である。また、好ましくは1%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上である。交互率が低すぎると耐熱性が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0050】
含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位との交互率は、フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位との交互率と同様に水酸基化前の含フッ素共重合体で実施する。すなわち、水酸基化前の構造単位がビニルエステルモノマー単位の場合、重アセトン等の含フッ素共重合体が溶解する溶媒を用いて、含フッ素共重合体の
1H−NMR測定を行い、以下の式より3連鎖の交互率として算出できる。
交互率(%)=C/(A+B+C)×100
A:−V−V−V−のように2つのVと結合したVの個数
B:−V−V−T−のようにVとTとに結合したVの個数
C:−T−V−T−のように2つのTに結合したVの個数
(T:含フッ素オレフィン単位、V:ビニルエステルモノマー単位)
A、B、CのV単位の数は、
1H−NMR測定のビニルエステルモノマー単位(−CH
2−CH(O(C=O)R)−)の3級炭素に結合する主鎖のHの強度比より算出する。
【0051】
国際公開第2015/137284号には、含フッ素共重合体のフッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位の交互率が高くなるほど、顔料の分散性の向上や、架橋の均一性が向上することが記載されている。
本発明において詳細に検討をすすめていくと、フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位の交互率が高くなると耐熱性が向上するが、結晶性も向上し、そのため、ポリマー中に多く生じた結晶部が光散乱するため、塗膜が不透明(ヘイズ値が高くなる)になりやすい事がわかった。顔料を添加せずにクリアな塗料として使用したい際には大きな問題となる。そのため、交互率は、例えば50%以下が好ましい。
また、共重合体中のフッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位が交互になっている部分においては−CF
2−CH(OH)−といった構造になる。この場合、−CF
2−が結合した炭素原子に直接結合した水酸基の酸性度は、フェノールと同程度の高さであり、金属が直接接触すると腐食するが、本発明者等が鋭意検討したところ、交互率が高いと腐食性が高く、交互率が低下するほど腐食性が低下し、交互率が50%以下になるとほぼ腐食性がなくなることがわかった。
このように防錆性が必要なクリア塗料の用途においては、フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位の交互率は50%以下が好ましい。
【0052】
上記含フッ素共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素オレフィン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位以外の他の単量体単位を有していてもよい。
【0053】
上記他の単量体としては、フッ素原子を含まない単量体(但し、ビニルアルコール及びビニルエステル単量体を除く)として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル単量体、及び、不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有エチレン性単量体が好ましい。
【0054】
上記他の単量体単位の合計含有率は、含フッ素共重合体の全単量体単位の0〜50モル%であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましく、0〜30モル%であることが更に好ましい。
【0055】
本明細書において、含フッ素共重合体を構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0056】
上記含フッ素共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、9,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。更に好ましくは、20,000〜2,000,000であり、特に好ましくは、30,000〜1,000,000である。上記重量平均分子量は、200,000以下であることも好ましく、150,000以下であってよく、100,000以下であってもよい。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0057】
上記含フッ素共重合体の水酸基価は、より一層すぐれた防錆効果が得られ、透明性、防汚性及び密着性にも一層優れた塗膜を形成できることから、200mgKOH/g以上であることが好ましい。上記水酸基価としては、400mgKOH/g以上がより好ましく、500mgKOH/g以上が更に好ましく、1000mgKOH/g以下が好ましく、800mgKOH/g以下がより好ましい。
【0058】
上記水酸基価は、JIS K 0070に準拠した方法や核磁気共鳴法からの計算により測定できる。
【0059】
本発明の防錆塗料は、異種金属接合部用の腐食の防止に好適である。異種金属接合部としては、
図2で示した電線の異種金属接合部、
図3で示した配管の異種金属接合部等が挙げられる。
ここで異種金属とは、2つの金属をそれぞれ(A)と(B)とし、その標準電極電位をEA、EBとする時に、EAとEBの差が0.1ボルト以上の組合せを異種金属とよぶ。標準電極電位が0.1ボルト以上離れている場合、その金属同士が接触した際に金属がそれぞれ単独で存在しているより腐食が進行しやすくなる。その差が大きい程、腐食されやすく、また、その際の腐食は標準電極電位が低い金属側に多く発生する。
具体的な例であげると、
銅(0.34V)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
鉄(−0.44V)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
亜鉛(−0.76V)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
ニッケル(−0.25V)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
錫(−0.14V)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
鉄(−0.44V)と亜鉛(−0.76V)の場合、亜鉛側で腐食が発生する。
錫(−0.14V)と鉄(−0.44V)の場合、鉄側で腐食発生する。
ニッケル(−0.25V)と亜鉛(−0.76V)の場合、亜鉛側で腐食が発生する。
銅(0.34V)と鉄(−0.44V)の場合、鉄側で腐食が発生する。
銅(0.34V)とニッケル(−0.25V)の場合、ニッケル側で腐食が発生する。
銅(0.34V)と亜鉛(−0.76V)の場合、亜鉛側で腐食が発生する。
銅(0.34V)と錫(−0.14V)の場合、錫側で腐食が発生する。
SUSの場合は、複数金属種があり、標準電極電位の値としては銅とほぼ同じくらいの値とされている。
SUS(約0.34V、銅の値)とアルミニウム(−1.66V)の場合、アルミニウム側で腐食が発生する。
SUS(約0.34V、銅の値)と鉄(−0.44V)の場合、鉄側で腐食が発生する。
SUS(約0.34V、銅の値)と亜鉛(−0.76V)の場合、亜鉛側で腐食が発生する。
SUS(約0.34V、銅の値)と錫(−0.14V)の場合、錫側で腐食が発生する。
アルミニウム合金の場合も同様である。その組成によって−1.53V〜−0.40Vの範囲の値をもつ。
銅(0.34V)とアルミニウム合金(−1.53V〜−0.40V)の場合、アルミニウム合金側で腐食が発生する。
表1に代表的な金属の標準電極電位を示す。
【0061】
ここで例示した組み合わせが異種金属の具体的な例示になる。
異種金属としては、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と銅、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と鉄、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と亜鉛、アルミニウムもしくはアルミニウム合金とニッケル、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と錫、銅と鉄、銅と亜鉛、銅とニッケル、又は、銅と錫が好ましい。
この異種金属接合に伴う腐食の進行には酸素と水分が必要であり、本発明の防錆塗料は酸素、水蒸気に対して高いバリア性、および低吸水性を発現するため、効果的に錆の発生が抑制される。
また、異種金属とは、物品(A)と物品(B)を接合した際に生じる接合部における状態を示し、SUSのような合金において内部で生じている異種金属の状態を示すものではない。また、ブリキやトタンのように鉄板の最表面に錫や亜鉛の薄膜を形成した物品の場合、異種金属種としては鉄ではなく、最表面の錫や亜鉛が該当する。すなわち、物品(A)がブリキの場合、金属種として錫であり、物品(B)がトタンの場合、金属種としては亜鉛になる。
異種金属接合部位とは、電線の異種金属接合部、又は、配管の異種金属接合部、あるいは金属製のビスやボルトで金属板や金属製の部材を固定する場合の接合部、金属製のダクトと金属製の壁部の接合部位等があげられる。具体的な、異種金属接合部位としては、アルミの芯線と銅の芯線との接合部、アルミ製の配管とSUSの配管の接合部や、ブリキ(錫)やトタン(亜鉛)の金属板とSUS製のビスとの固定部位等があげられる。
また、近年、電線として軽量なアルミ配線が注目されているが、基板の銅との接合部における腐食が問題となっており、アルミの芯線とプリント基板等の銅との接合部にも本発明の防錆塗料を好適に採用できる。
本発明の防錆塗料は、以下の特性をもつ含フッ素共重合体からなることより、異種金属接合部に対して特に優れた防錆性を発現することが見出された。
特性(a):100μmあたりの水蒸気透過度が25g/m
2・day以下
特性(b):酸素透過係数が2.0E−13cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下
特性(c):吸水率が10質量%以下
【0062】
また、本発明の防錆塗料は、鋼板用、鋳鉄用、高温高圧用鋳鋼用、又は、アルミ亜鉛合金めっき鋼板用に対してすぐれた防錆性をしめし、透明性、防汚性及び密着性にも優れた塗膜を形成できることから、海洋構造物用、キッチン家電用、自動車用金属配管用、意匠性の高いエクステリア用、上下水処理施設内配管用、各種発電設備内配線若しくは配管用防錆塗料として、好適に使用できる。
【0063】
異種金属接合部としては、例えば、電線の異種金属接合部、配管の異種金属接合部等が挙げられる。上記異種金属接合部は、異種金属が接合されていればよく、機械的に接合されていてもよいし、化学的に接合されていてもよい。
【0064】
異種金属としては、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と銅、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と鉄、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と亜鉛、アルミニウムもしくはアルミニウム合金とニッケル、アルミニウムもしくはアルミニウム合金と錫、銅と鉄、銅と亜鉛、銅とニッケル、又は、銅と錫であることが好ましい。
ここで、アルミニウム合金としては、アルミニウム2000系(Al−Cu−Mg系:アルミ銅マグネシウム合金)アルミ合金、アルミニウム3000系(Al−Mn系:アルミマンガン合金)アルミ合金、アルミニウム4000系(Al−Si系:アルミシリコン合金)アルミ合金、アルミニウム5000系(Al−Mg系:アルミマグネシウム合金)アルミ合金、アルミニウム6000系(Al−Mg−Si系:アルミマグネシウムシリコン合金)アルミ合金、アルミニウム7000系(Al−Zn−Mg系:アルミ亜鉛マグネシウム合金)アルミ合金、又は、アルミニウム8000系(Li添加系:アルミリチウム合金)アルミ合金が好ましい。なお、ジュラルミンはアルミニウム7000系のアルミ合金である。
【0065】
異種金属接合部、海洋構造物、キッチン家電、自動車用金属配管、意匠性の高いエクステリア、上下水処理施設内配管、又は、各種発電設備内配線若しくは配管の腐食を防止するための、上述の防錆塗料の使用も、本発明の好適な態様の1つである。
【0066】
本発明の防錆塗料は、硬化剤を含むことが好ましい。上記含フッ素共重合体は水酸基を有しているため、本発明の防錆塗料から、硬化塗膜を形成することができる。本発明の防錆塗料から形成される硬化塗膜は、非硬化の塗膜と比較して、より一層優れた防錆効果を発揮し、透明性、防汚性及び密着性にも一層優れる。
【0067】
上記硬化剤としては、上記含フッ素共重合体中の水酸基を架橋させるものであれば種類を問わないが、イソシアネート系硬化剤、アミノ樹脂系硬化剤等が好適である。
【0068】
イソシアネート系硬化剤としては、中でも、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、並びに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0069】
硬化剤として、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネート(以下、イソシアネート(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(I)ともいう。)を用いた場合、本発明の防錆塗料から得られる硬化塗膜と金属基材との密着性が、より優れたものになる。
【0070】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネート(i)からなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、上記イソシアネート(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0071】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(3):
【化2】
(式中、R
6は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
7は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(3)中のR
6は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記R
7がフェニレン基である場合、1,2−フェニレン基(o−フェニレン基)、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)、及び、1,4−フェニレン基(p−フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのR
7が同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記R
7がシクロヘキシレン基である場合、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、及び、1,4−シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3−シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのR
7が同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0072】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【化3】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
【0073】
中でも、下記一般式(5):
【化4】
(式中、R
7は、一般式(3)中のR
7と同じである。)で表される三量体が好ましい。
すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0074】
上記ビウレットは、下記一般式(6):
【化5】
(式中、R
7は、一般式(3)中のR
7と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0075】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0076】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0077】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−キシリレンジイソシアネート)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−キシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、中でも、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)が好ましい。
【0078】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0079】
キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0080】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(7):
【化6】
(式中、R
8は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表される化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、トリメチロールプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
上記一般式(7)中のR
8で表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(3)におけるR
7について述べたとおりである。
【0081】
上記一般式(7)で表されるポリイソシアネート化合物の市販品としては、タケネートD110N(三井化学社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネートD120N(三井化学社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0082】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、イソシアヌレート構造体である場合の具体例としては、タケネートD121N(三井化学社製、H6XDIヌレート、NCO含有量14.0%)、タケネートD127N(三井化学社製、H6XDIヌレート、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0083】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート(以下、単にブロックイソシアネートともいう。)を用いることにより、本発明の防錆塗料がより長いポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0084】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(8):
【化7】
(式中、R
9は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(8)中のR
9は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0085】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【化8】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
【0086】
中でも、下記一般式(9):
【化9】
で表される三量体が好ましい。
【0087】
上記ビウレットは、下記一般式(10):
【化10】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0088】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0089】
このように、上記ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0090】
上記ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0091】
上記ポリイソシアネート化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;−カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等のピラゾール化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0092】
上記ブロックイソシアネートの市販品としては、デュラネートK6000(旭化成ケミカルズ社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネート)、デュラネートTPA−B80E(旭化成ケミカルズ社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ社製)、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ社製)、コロネート2507(日本ポリウレタン社製)、コロネート2513(日本ポリウレタン社製)、コロネート2515(日本ポリウレタン社製)、スミジュールBL−3175(住化バイエルウレタン社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0093】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネート化合物(III)としては、ポリイソシアネート化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0094】
ポリイソシアネート化合物(III)の具体例としては、コロネートHX(日本ポリウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュールN3300(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、タケネートD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、スミジュールN3800(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体プレポリマータタイプ)等が挙げられる。
【0095】
硬化剤として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(IV)ともいう。)を用いることもできる。
【0096】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、イソホロンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0097】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(11):
【化11】
(式中、R
10は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
11は、下記一般式(12):
【化12】
で表される基である。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
【0098】
上記一般式(11)中のR
10は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0099】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【化13】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、イソホロンジイソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
【0100】
中でも、下記一般式(13):
【化14】
(式中、R
11は、一般式(11)中のR
11と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、イソホロンジイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0101】
上記ビウレットは、下記一般式(14):
【化15】
(式中、R
11は、一般式(11)中のR
11と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0102】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0103】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0104】
イソホロンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0105】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(15):
【化16】
(式中、R
12は、下記一般式(12):
【化17】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0106】
上記一般式(12)で表されるポリイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネートD140N(三井化学社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0107】
イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体の市販品としては、デスモジュールZ4470(住化バイエルウレタン社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0108】
なかでも、上記硬化剤としては、タケネートD120N(三井化学社製、NCO含有量11%)、スミジュールN3300(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)がより好ましい。
【0109】
上記イソシアネート系硬化剤は1種でも、2種以上を併用してもよい。
【0110】
上記アミノ樹脂系硬化剤としては、例えばポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂が挙げられる。
【0111】
上記ポリアミン化合物としては、例えば1,2−エタンジアミン、1,3−及び1,2プロパンジアミン、1,4―ブタンジアミン等の低分子量ジアミン;例えば1,2,5−ペンタントリアミン等のテトラアミン;例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン等のテトラアミン等が挙げられる。
【0112】
上記メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物及びそれらの混合物を好ましく挙げることができる。
【0113】
上記メチロールメラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等を挙げることができる。
【0114】
メラミン樹脂の分類として、アルコキシ化される割合によって、完全アルキル型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール/イミノ基型に分けられるが、いずれも本発明に使用できる。
【0115】
上記硬化剤の中でポリイソシアネート化合物やポリアミン化合物やメラミン樹脂を用いると、硬化剤の分子量が比較的大きいため、硬化後の弾性率が抑えられる事で、塗膜としての曲げ強度や靱性を上げることができ好ましい。また、塗膜の表面の傷つき性も抑えられ、自己修復性も発現される。
【0116】
上記硬化剤は含フッ素共重合体の水酸基部位に対する当量比で0.5〜1.5となるように配合することが好ましく、0.8〜1.2となるように配合することがより好ましい。
【0117】
本発明の防錆塗料は、必要に応じて硬化触媒を含んでいてもよい。硬化触媒は、硬化反応を促進し、硬化膜に優れた化学性能および物理性能を付与するために用いられる。特に、低温において短時間で硬化させる場合には、硬化触媒を含有させることが好ましい。
硬化触媒としては、公知のものを用いることができ、硬化剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。
例えば、硬化剤がイソシアネート系硬化剤またはブロック化イソシアネート系の硬化剤である場合、硬化触媒としては、錫触媒、ジルコニウム触媒等が好ましい。
錫触媒としては、例えば、オクチル酸錫、トリブチル錫ジラウレート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
ジルコニウム触媒としては、例えば、ジルコニウムキレート等が挙げられる。ジルコニウム触媒の市販品としては、例えば、「K−KAT XC−4205」(商品名、楠本化成社製)等が挙げられる。
硬化剤がアミン系硬化剤である場合、硬化触媒としては、ブロック化した酸触媒が好ましい。
ブロック化した酸触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等の各種酸のアミン塩が挙げられる。中でも、p−トルエンスルホン酸のジエタノールアミン塩またはトリエチルアミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩またはトリエチルアミン塩等の高級アルキル置換スルホン酸アミン塩が好ましい。
硬化触媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記硬化触媒は含フッ素共重合体と硬化剤の合計に対して0.00001〜10質量%が好ましく、0.0001〜5質量%となるように配合することがより好ましい。
【0118】
上記含フッ素共重合体は、取り扱い性に優れることから、アルコール系溶剤への溶解性を有することが好ましい。本明細書において、溶解性を有するとは、アルコール系溶剤に対して5質量%の上記含フッ素共重合体を溶解させた場合に、上記含フッ素共重合体が視認できなくなることを意味する。また、アルコール系溶剤への溶解性を有するとは、少なくとも1種のアルコール系溶剤に溶解すればよく、全てのアルコール系溶剤に溶解することを要しない。
【0119】
上記アルコール系溶剤としては、炭素数1〜10のアルコールが好ましく、例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブチルアルコール、ターシャルブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。上記含フッ素共重合体は、特にメタノールへの溶解性を有することが好ましい。
【0120】
本発明の防錆塗料は、溶剤型塗料、水性型塗料、粉体型塗料等の形態に、常法により調製することができる。なかでも成膜の容易さ、乾燥性の良好さ等の点からは溶剤型塗料の形態が好ましい。すなわち、本発明の防錆塗料は、更に、溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことにより、薄膜コーティングが一層容易になり、得られる塗膜を一層薄膜化することができる。
【0121】
上記溶剤としては、有機溶剤が好ましく、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合溶剤等が挙げられる。
中でも、エステル類やアミド類が好ましく、酢酸ブチルやN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0122】
本発明の防錆塗料を溶剤型塗料とする場合、塗料の総量100質量%に対する含フッ素共重合体の濃度を5〜95質量%とすることが好ましく、10〜70質量%とすることがより好ましい。
本発明の防錆塗料には、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を加えても良い。他の重合体は、上記含フッ素共重合体に該当しない重合体である。
他の重合体は、硬化性基を有するものでもよく、有しないものでもよい。硬化性基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、アルコキシシリル基、イソシアナート基等が挙げられる。
他の重合体としては、例えば、上記含フッ素共重合体以外の含フッ素重合体;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂等の非含フッ素樹脂等が挙げられる。
他の重合体は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
他の重合体としては、硬化膜に光沢が出やすいことから、上記含フッ素共重合体と相溶し、均一な硬化膜が得られるものが好ましい。この場合、他の重合体は、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。
熱硬化性樹脂を他の重合体として含む場合、他の重合体は、硬化剤により、含フッ素共重合体と連結し得ることが好ましい。具体的には、水酸基、エポキシ基、カルボニル基等を末端または側鎖に含有するポリエステル樹脂又はアクリル樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂を他の重合体として含む場合、他の重合体は、含フッ素共重合体の水酸基と相互作用するような極性基、例えば、エステル基を含むことが好ましい。具体的には、硬化性基を有しないポリエステル樹脂又はアクリル樹脂が好ましい。
上記の他の重合体の含有量は、含フッ素共重合体100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、5〜75質量%となるように配合することがより好ましい。
【0123】
本発明の防錆塗料には、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、顔料、カップリング剤、シリカ、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等が挙げられる。
【0124】
本発明の防錆塗料は透明性が高いため、内部の腐食状況が肉眼で確認できる。そのため、耐久性が必要とされる分野、例えば自動車内部の金属配管、金属配線、橋梁のような海洋構造物、において非常に有効である。また、意匠性が必要な金属表面の防錆コーティングとして好適である。
【0125】
本発明は、上述の防錆塗料から形成されることを特徴とする塗膜でもある。上記塗膜は、非硬化塗膜であっても、硬化塗膜であってよい。
【0126】
上記非硬化塗膜は、上記硬化剤を含まない上述の防錆塗料(但し、硬化剤を含まない)から得られる。上記非硬化塗膜は、例えば、任意の基材に上述の防錆塗料を塗布し、乾燥させることにより製造できる。
【0127】
上記硬化塗膜は、上記硬化剤を含む上述の防錆塗料から得られる。上記硬化塗膜は、例えば、任意の基材に上述の防錆塗料を塗布し、硬化させることにより製造できる。上記硬化は、溶剤型塗料の場合、10〜300℃、好ましくは100〜200℃で、30秒から3日間行うことが好ましい。溶剤型塗料又は水性型塗料の場合は、塗膜の乾燥を行うことが好ましい。乾燥は、上記硬化と同時に行っても、別に行ってもよい。塗膜を硬化(及び乾燥)させた後、養生してもよい。養生は、20〜300℃にて1分間〜3日間行うことが好ましい。
【0128】
上記塗膜の厚さは、5〜1000μmであることが防錆の観点から好ましい。より好ましくは、7〜500μmであり、更に好ましくは、10〜100μmである。
【0129】
本発明の塗膜は、金属や異種金属接合部の腐食を充分に防ぐことができるとともに、透明性、防汚性及び密着性にも優れることから、異種金属接合部用、海洋構造物用、キッチン家電用、自動車用金属配管用、意匠性の高いエクステリア用、上下水処理施設内配管用、各種発電設備内配線若しくは配管用の塗膜として、好適に使用できる。
【0130】
すなわち、異種金属接合部、海洋構造物、キッチン家電、自動車用金属配管、意匠性の高いエクステリア、上下水処理施設内配管、又は、各種発電設備内配線若しくは配管の腐食を防止するための、上述の塗膜の使用も、本発明の好適な態様の1つである。
【0131】
本発明の防錆塗料及び本発明の塗膜は、ガラス基材、樹脂基材、セラミック基材、窯業系基材、コンクリート基材、金属基材等に適用できるが、いずれも防錆効果を有することから、上記金属基材に適用することが好ましい。本発明は、上記金属基材と、上述の塗膜と、を含むことを特徴とする積層体でもある。
【0132】
上記金属基材の形成材料は、鋼板用、鋳鉄用、高温高圧用鋳鋼用、又は、アルミ亜鉛合金めっき鋼板があげられる。鋳鉄としてはFC200があげられる。高温高圧用鋳鋼としてはSCPH2があげられる。また、アルミニウム、ニッケル、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、銅、銀、鉛、スズ、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルトなど金属や金属化合物およびこれらの2種以上からなる合金類などがあげられ、目的や用途により選択できる。
金属基材は異種金属が接合された異種金属接合部を有するものでもよい。金属基材が異種金属接合部を有する場合、特に腐食を抑制することができる。
【0133】
合金類の具体例としてはステンレス鋼、パーマロイなどの合金鋼、Al−Cu、Al−Mg、Al−Si、Al−Cu−Ni−Mg、Al−Si−Cu−Ni−Mgなどのアルミニウム合金、黄銅、青銅(ブロンズ)、珪素青銅、珪素黄銅、洋白、ニッケル青銅などの銅合金、ニッケルマンガン(Dニッケル)、ニッケル−アルミニウム(Zニッケル)、ニッケル−珪素、モネルメタル、コンスタンタン、ニクロムインコネル、ハステロイなどのニッケル合金などがあげられる。
【0134】
また、金属の腐食防止などを目的として、金属表面に電気メッキ、溶融メッキ、クロマイジンク、シリコナイジング、カロライジング、シェラダイジグ、溶射などを施して他の金属を被膜したり、リン酸塩処理によりリン酸塩皮膜を形成させたり、陽極酸化や加熱酸化により金属酸化物を形成させたり、電気化学的防食を施してもよい。溶融メッキを施した金属基材としては、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板等が挙げられる。
【0135】
さらに、接着性をさらに向上させることを目的として、金属表面をリン酸塩、硫酸、クロム酸、シュウ酸などによる化成処理を施したり、サンドブラスト、ショットブラスト、グリットブラスト、ホーニンク、ペーパースクラッチ、ワイヤースクラッチ、ヘアーライン処理などの表面粗面化処理を施してもよく、意匠性を目的として、金属表面に、着色、印刷、エッチングなどを施してもよい。
【0136】
上記積層体は、プライマー層を有していてもよい。上記プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行う。プライマー用の塗料としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が代表例として挙げられる。
【0137】
上記積層体は、上記金属基材と上述の塗膜とが直接密着していることも好ましく、直接密着させても優れた密着性が得られる。特に上述の塗膜が硬化塗膜であると、より一層高い密着性が得られる。
【0138】
本発明の積層体は、金属基材が腐食しにくいとともに、塗膜の高い透明性により金属基材の有する美観を充分に発揮でき、防汚性及び密着性にも優れることから、異種金属接合部用、海洋構造物用、キッチン家電用、自動車用金属配管用、意匠性の高いエクステリア用、上下水処理施設内配管用、各種発電設備内配線若しくは配管用の積層体として、好適に使用できる。
【0139】
すなわち、異種金属接合部、海洋構造物、キッチン家電、自動車用金属配管、意匠性の高いエクステリア、上下水処理施設内配管、又は、各種発電設備内配線若しくは配管の腐食を防止するための、上述の積層体の使用も、本発明の好適な態様の1つである。
【0140】
異種金属接合部を有し、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有する電線も本発明の1つである。
異種金属接合部を有する電線は、電流が流れるため、わずかな水分や酸素によって腐食が発生しやすく、特に異種金属接合部の腐食を抑制することが求められる。
本発明の電線は、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有することによって、異種金属接合部の腐食を抑制することができる。
本発明の電線は、金属(A)からなる第1芯線と、金属(A)とは異なる金属(B)からなる第2芯線とを含み、上記第1芯線と第2芯線との異種金属接合部を含み、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有することが好ましい。
上記異種金属接合部は、金属(A)と金属(B)とが接合されていればよく、機械的に接合されていてもよいし、金属(A)と金属(B)とが化学的に接合されていてもよい。
本発明の電線において、金属(A)と金属(B)との組合せは特に限定されず、上述した異種金属の組合せが挙げられるが、特に、アルミニウムと銅、アルミニウムと金、アルミニウムとニッケル、アルミニウムと錫、又は、アルミニウムと銀が好ましい。
本発明の電線は、必要に応じて、上記第1芯線及び第2芯線を被覆する被覆層を有することが好ましい。上記第1芯線及び第2芯線における被覆層の材料、厚み等は特に限定されず、電線において使用される従来公知の樹脂、厚み等を採用できる。
【0141】
本発明の電線の具体的な態様としては、例えば、
図2に示すように、金属(A)からなる第1芯線A1と、金属(A)とは異なる金属(B)からなる第2芯線B1とが接合された異種金属接合部D1を含み、異種金属接合部D1上に上記防錆塗料から形成される塗膜C1を有する形態が挙げられる。
【0142】
異種金属接合部を有し、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有する配管も本発明の好適な態様の1つである。
異種金属接合部を有する配管は、接合部において腐食が発生すると内部流体が漏れたり、外気が内部流体に作用したりするため、特に異種金属接合の腐食を抑制することが求められる。
本発明の配管は、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有することによって、異種金属接合部の腐食を抑制することができる。
本発明の配管は、金属(A)からなる第1の管と、金属(A)とは異なる金属(B)からなる第2の管とを含み、上記第1の管と第2の管との異種金属接合部を含み、異種金属接合部上に上記防錆塗料から形成される塗膜を有することが好ましい。
上記異種金属接合部は、金属(A)と金属(B)とが接合されていればよく、機械的に接合されていてもよいし、金属(A)と金属(B)とが化学的に接合されていてもよい。
本発明の配管において、金属(A)と金属(B)との組合せは特に限定されず、上述した異種金属の組合せが挙げられるが、特に、アルミニウムと銅、SUSと鉄、又は、アルミニウムと鉄が好ましい。
第1の管及び第2の管の構造、厚み等は特に限定されるものではなく、従来公知の構造、厚み等を採用できる。
【0143】
本発明の配管の具体的な態様としては、例えば、
図3に示すように、金属(A)からなる第1配管A2と、金属(A)とは異なる金属(B)からなる第2配管B2とが接合された異種金属接合部D2を含み、異種金属接合部D2上に上記防錆塗料から形成される塗膜C2を有する形態が挙げられる。
【実施例】
【0144】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0145】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0146】
(1)ヘイズ値、全光線透過率
ヘイズメーターを用いてJIS K7136に準じてフィルムのヘイズ、透過率を測定した。
(2)NMRによる交互率の測定
下記条件でNMR測定を行い、その結果から交互率を算出した。
1H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
(3)重量平均分子量、分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、Shodex社製のカラム(GPC LF−Gを1本、Shodex GPC LF−604を2本、GPC LF−601を2本直列に接続)を使用し、溶媒としてTHFを流速1ml/minで流して測定したデータより、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
(4)熱分解温度
示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用い、air雰囲気の条件で昇温速度10℃/minの条件で測定し、1%質量減の温度で評価した。
(5)ガラス転移温度Tg、融点Tm
示差走査熱量測定により、−30℃〜150℃の温度範囲で昇温(降温)速度 20℃/minの条件で昇温(ファーストラン)−降温−昇温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とした。セカンドランの吸熱ピークの値をTm(℃)とした。
(6)密着性
JIS K5600−5−6クロスカット法に準じて、碁盤目試験(1mm×1mm×25マス)を行い、残ったマス数で評価した。
(7)水蒸気透過試験
カップ法(JIS Z0208−1976)条件B(温度 40±0.5℃ 相対湿度 90±2%)に準じて行った。得られた値(R)と実測の厚み(t(μm))から100μmあたりの水蒸気透過度(P)に以下の式を用いて換算した。
P(100μm)=R×100/t
(8)防錆試験
試験条件A
ガルバリウム鋼板(登録商標)に作製した塗料を塗装後30分間常温で風乾後、80℃2時間の条件で加熱乾燥し、塗板を作成した。塗板の周囲をアルミテープで保護し、板上に食塩水(50g/L)を5ヶ所に滴下し、35℃90%RTの条件で4日間保持後、表面の状態を目視で確認した。基準は、食塩水を滴下した下地が、○は変化なし、△は下地の一部に錆が発生、×は下地全体に錆が発生である。
試験条件B
ガルバリウム鋼板(登録商標)に作製した塗料を塗装後30分間常温で風乾後、80℃2時間の条件で加熱乾燥し、塗板を作成した。塗板の周囲をアルミテープで保護し、板上に全体が濡れる程度に食塩水(50g/L)を霧吹きし、35℃90%RTの条件で4日保持後、表面の状態を目視で確認した。基準は、下地が、○は変化なし、△は下地の一部に錆が発生、×は下地全体に錆が発生、である。
(9)吸水率
フィルム片を室温23℃において水中に浸漬させ、数日間重量変化を測定し、吸水量が前日比で飽和したところを測定し、吸水率(Q)を下式にて求めた。
Q(%)=(飽和吸水重量−初期重量)/初期重量×100
(10)温水試験
ガラス板に作製した塗料を塗装後30分間常温で風乾後、80℃2時間の条件で加熱乾燥し、塗板を作成した。塗膜を塗布したガラス板を50℃の温水に4日間浸漬し、前後のヘイズを測定した。
(11)酸素透過係数
差圧式ガス・蒸気透過率測定装置を用いて、JIS K 7126−1に準じて測定を行った。
(12)溶剤溶解性
固体状のポリマーを溶液に対して約5質量%入れ、常温(23℃)で振り混ぜ、24時間後、目視で状態を確認した。○は溶解した、△は防潤、×は溶解しない、である。
(13)マジック汚染性
JIS K6902に準拠し、赤、黒、青のマジックインキを塗布し、16時間後にエタノールにて拭き取り、汚染の状態を目視で確認した。○は完全に拭き取れる、△は拭き取り残りあり、×はほぼ拭き取れず、である。
【0147】
各実施例において、使用した重合体は以下の通りである。
重合体1:テトラフルオロエチレン(TFE)/ビニルアルコール(VOH)共重合体(TFE/VOH=23.8/76.2(モル%)、重量平均分子量:46,000、分子量分布(Mw/Mn):2.01、交互率(VTV):5.4%、熱分解温度:256℃、Tg:79℃、Tm:192℃、水酸基価:761mgKOH/g
それぞれの値は上述に記載の方法で測定した。
さらに重合体2、3を用いた。各重合体の物性値を表2にまとめる。
【表2】
【0148】
比較ポリマーとして以下のものを用いた。
比較重合体1:テトラフルオロエチレン(TFE)/ビニルアルコール(VOH)共重合体(TFE/VOH=11/89(モル%)、重量平均分子量:252,000、分子量分布(Mw/Mn):2.20、交互率(VTV):0.9%、熱分解温度:238℃、Tg:87℃、Tm:204℃、水酸基価:995mgKOH/g
比較重合体2:テトラフルオロエチレン(TFE)/ビニルアルコール(VOH)共重合体(TFE/VOH=47.8/52.2(モル%)、重量平均分子量:40,000、分子量分布(Mw/Mn):1.77、交互率(VTV):49.1%、熱分解温度:321℃、Tg:79℃、Tm:206℃、水酸基価:413mgKOH/g
エバール(R)L104B:クレハ社製、エチレン(E)/ビニルアルコール(VOH)共重合体(E/VOH=27/73(モル%))、Tg:60℃、Tm:165℃
ポバール:ポリビニルアルコール、アルドリッチ社により購入した試薬
【0149】
参考例1−1〜1−3及び参考比較例1−1〜1−4:溶剤溶解性
重合体1〜3および比較重合体1および2に関して溶剤溶解性を測定した。結果を表3にまとめる。
【0150】
【表3】
エバール(R)L104Bおよびポバール(ポリビニルアルコール)はメタノールへ溶解しない。
【0151】
実施例1−1〜1−3及び比較例2:
重合体1のジメチルアセトアミド15質量%溶液を作製し、PP(ポリプロピレン)板上に10ミルのドクターブレードを用いて製膜した。室温で30分間風乾後、80℃、2時間の条件で乾燥させ、塗膜を得た。その後、PP板より塗膜を剥離させ、フィルムを得た。
重合体2、3及び比較重合体1、2に関しても同様にフィルムを作製した。
【0152】
酸素透過率、水蒸気透過度、吸水率の測定
実施例1−1〜1−3及び比較例2で得られたフィルムを用いて酸素透過率、水蒸気透過度、吸水率の測定をおこなった。結果を表4にまとめる。
【0153】
【表4】
【0154】
また比較重合体1およびエバール(R)L104Bの吸水率はそれぞれ20.6%および20.3%であった。またポバール(ポリビニルアルコール)は水溶性を示すため、試験をおこなわなかった。
【0155】
光学特性
実施例1−1〜1−2及び比較例2で得られたフィルムに関して全光線透過率およびヘイズの測定をおこなった。結果を表5にまとめる。
【表5】
【0156】
マジック汚染性
実施例1−1〜1−3で得られたフィルムに関してマジック汚染性を評価した。結果を表6にまとめる。
【表6】
【0157】
実施例2−1及び2−2
重合体1のジメチルアセトアミド15質量%溶液を作製し、硬化剤として住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300を重合体に対して20質量%添加し、塗料を作製した。各種基板に10ミルのドクターブレードを用いて製膜後、室温で30分風乾後、80℃で4時間乾燥させた後に、密着性を評価した。
重合体2についても同様に製膜して密着性評価を行った。結果を表7に示す。
【表7】
【0158】
実施例2−1及び2−2に関し、酸素透過率、水蒸気透過度、吸水率の測定をおこなった。その結果を表8にまとめる。
【表8】
【0159】
実施例3−1、3−2及び比較例3−1〜3−3:防錆試験1
重合体1のジメチルアセトアミド15質量%溶液を作製し塗料とした。その塗料を用いて防錆試験をおこなった。重合体2、比較重合体1、L104B、ポバールについても同様に防錆試験をおこなった。結果を表9に示す。
【表9】
【0160】
実施例4−1及び4−2:温水試験
実施例2−1及び2−2で作製した硝子板上に製膜したサンプルを用いて温水試験をおこなった。結果を表10にしめす。
【表10】
【0161】
実施例5及び比較例5−1〜5−3:防錆試験2
重合体2のジメチルアセトアミド15質量%溶液を作製し、硬化剤として住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300を重合体に対して20質量%添加し、塗料を作製した。各種金属板の上に10ミルのドクターブレードを用いて製膜後、室温で30分風乾後、80℃で4時間乾燥させ金属塗板を得た。その後、周辺の影響を除くため、金属塗板の周囲をアルミテープで保護した。5%の塩水に浸漬し、50℃で7日間保持後、外観を目視で評価した。各評価基準は以下の通りである。
○:変化なし、△:一部に錆が発生、×:全体に錆が発生
同様に比較重合体1、2、L104Bに関しても防錆を評価した。結果を表11にまとめる。
【表11】
【0162】
異種金属接合(銅板−アルミ箔)
図1で示すように、厚さ0.5mmの銅板1に3mmφの穴をドリルで加工し、厚み50μmのアルミ箔2を4mm角に切り出し、中央に3mmφの穴をあけ、先の銅板1とSUS製のネジ3とナット4でかしめてアルミ箔2が一部露出するように銅板1上に密着固定した。その後、ネジ3、ナット4、アルミ箔2、銅板1を完全に覆うように実施例5及び比較例5−2で作製した塗料を塗布し、室温で30分風乾後、80℃で4時間乾燥させた。その後、塗膜5上に食塩水6(50g/L)を滴下し、35℃90%RTの条件で4日間保持後、アルミ箔2と銅板1の界面7の状態を目視で確認した。結果を表12に示す。表12中の基準は、食塩水を滴下したアルミ箔と銅板の表面が、○は変化なし、△は一部に錆が発生、×は全体に錆が発生、である。
【表12】
【0163】
異種金属接合(FC200−アルミ箔)
また、銅板の代わりに、FC200を用いたこと以外は銅板−アルミ箔の場合と同様にして異種金属接合の外観評価を行った。結果を表13に示す。
【表13】